説明

シアン化合物の無害化剤及び無害化方法

【課題】猛毒である遊離シアン、土壌に吸着した安定な金属シアノ錯体を効率よく迅速に無害化することができるシアン化合物の無害化剤及び無害化方法を提供する。
【解決手段】例えばペプトン、グルコン酸、グルコース、リン酸ナトリウムから構成されている浄化剤とエチレンジアミン四酢酸と硫化物とからなる一例のシアン化合物の無害化剤を水に溶解した後、シアン化合物と混合することによりシアン化合物を無害化することができ、汚染土壌に存在し、一般的な微生物と同様の方法で増殖させることができ、無機塩、窒素源、その他栄養源を含む無機栄養培地、有機栄養培地等において増殖できるシアン分解微生物を利用することによって対象とする土壌が広範な領域である場合でも、その広範な領域で効率よくシアン化合物の無害化を工業的に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化合物の無害化剤及び無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン化合物は、反応性に富み、銀、銅、ニッケルまたはコバルト等の重金属、石炭、化成品などの製造或いは工程などに利用されている。このシアン化合物は生物に対し毒性を示すことから、環境中に排出されたシアン化合物は迅速に無害化されることが望まれている。シアン化合物は、遊離シアン、金属シアノ錯体として存在するが、遊離シアンは、金属シアノ錯体より、約500〜1000倍の毒性を示す猛毒である。
【0003】
一方、金属シアノ錯体は、シアンと重金属が結合し、安定化し環境中に長期間残存する。このため、土壌、地下水或いは底質土おけるシアン汚染が問題となっている。現在、このようなシアン化合物により汚染された土壌、地下水或いは底質土の無害化方法としては、物理的手法、化学的手法及び生物学的手法が報告されている。物理的手法としては、汚染土壌の掘削処理などがあげられ、また化学的処理については、オゾンなどによる酸化処理などが報告されている。
【0004】
しかし、いずれも初期設備投資や動力コストなどのコスト面などの問題点が挙げられる。そこで微生物を活用して土壌、地下水或いは底質土などに含まれるシアン化合物を分解して汚染を除去するバイオレメディエーション技術の開発が期待されている。シアン分解微生物としては、工場排液を処理する過程において活性汚泥法が報告されており、またバチルス属(特許文献1)、クレブシエラ属(特許文献2)、ロドコッカス属(特許文献3)、ボークホルデリア属(特許文献4)、アルカリゲネス属(特許文献5)さらにフザリウム属(特許文献6)などの微生物においてシアン分解が報告されているが、シアン化合物の汚染浄化に関する報告は少ない。また微生物的手法では、猛毒である遊離シアン、土壌に吸着した安定な金属シアノ錯体の迅速な分解が困難であり、技術の開発が期待されている。
【0005】
特許文献7には ロダナーゼ生産細菌の菌体若しくはその培養物又はロダナーゼ酵素とチオ硫酸塩を用いてシアン化合物を無害化することを特徴とするシアン化合物の無害化方法が開示された。この特許文献7に示されたシアン化合物の無害化方法はチオ硫酸塩によってシアン化合物無害化細菌(ロダナーゼ生産細菌)の増殖を促進し、またシアン化合物の無害化を促進するとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−293195号公報
【特許文献2】特開2002−210491号公報
【特許文献3】特開平12−270848号公報
【特許文献4】特開2001−245655号公報
【特許文献5】特開2003−009847号公報
【特許文献6】特開平10−262651号公報
【特許文献7】特開2006−281053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献7に開示されたシアン化合物の無害化方法では、シアン化合物無害化菌としてロダナーゼ生産細菌及びチオ硫酸塩を特定して用いるものであり、実験室的にはこれが有効であるとしても、例えば対象とする土壌が広範な領域である場合には、その広範な領域で効率よくシアン化合物の無害化を工業的に行うことは困難である。
【0008】
そこで本発明では、猛毒である遊離シアン、土壌に吸着した安定な金属シアノ錯体を効率よく迅速に無害化することができるシアン化合物の無害化剤及び無害化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシアン化合物の無害化剤は、ペプトン、酵母エキスの1つ以上とグルコン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アスコルビン酸、クエン酸、りんご酸、コハク酸、ピルビン酸の1つ以上とグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グリセロール、マンニトール、ソルビトールの1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成されている浄化剤とエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジヒドロキシフェニル酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、S,S−エチレンジアミンコハク酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッド、ロードトルリン酸、フェリクローム類、コプロゲン、フェリオキサミン、リゾフェリン、N, N’,N” −トリアセチルフサリニンCの1つ以上と硫化物と多硫化物、メチオニン、システイン、シスチンの1つ以上を用いてなることを特徴とする。
【0010】
係る本発明のシアン化合物の無害化剤により、吸着したシアン化合物を溶出させ、シアン化合物の微生物分解を促進し、また一時的に嫌気状態にすることにより、嫌気性のシアン分解微生物により高濃度のシアン汚染物質を毒性の低い化合物に変化させ、その後、好気状態に切り替えるシアン化合物の無害化方法を実施することによって、好気性のシアン分解微生物を増殖、活性化させてシアン化合物を迅速に無害化することができる。
【0011】
嫌気状態を溶存酸素濃度で1mg/L以下、ORP値50mV以下とし、1〜45日後に溶存酸素濃度が20mg/L以上の高濃度酸素水または10〜1000mg/Lの過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウム、の過酸化化合物の1つ以上を使用することにより、溶存酸素濃度で5mg/L以上、ORP値が50mV以上の好気状態にする様にしてもよい。
【0012】
さらに0.1〜3mg/Lの銅化合物、マンガン化合物、鉄化合物、クロム化合物の1つ以上を加える様にしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシアン化合物の無害化剤及びシアン化合物を無害化方法によって、シアン化合物を低コストでかつ迅速に無害化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のシアン化合物の無害化剤は、例えば、水に溶解した後、シアン化合物と混合することにより無害化を行う。
この他にもシアン化合物に直接散布や回収したシアン化合物に本発明のシアン無害化剤を混合し、機械などにより撹拌し、好気状態にすることでも同等の効果を得ることができる。
本発明のシアン化合物の無害化剤は、シアン化合物に接触でき、かつ一定量のシアン分解微生物が存在している環境であれば、これらの方法に限らず使用することができる。
【0015】
本発明により利用されるシアン分解微生物とは、汚染土壌に存在し、一般的な微生物と同様の方法で増殖させることができる微生物であり、無機塩、窒素源、その他栄養源を含む無機栄養培地、有機栄養培地等において増殖できるシアン分解微生物であり、例えば特にロダナーゼ生産細菌等に限定はされない。
この様なシアン分解微生物を利用することによって本発明のシアン化合物の無害化剤及び無害化方法によれば対象とする土壌が広範な領域である場合でも、その広範な領域で効率よくシアン化合物の無害化を工業的に行うことが可能となる。
【0016】
また外来微生物を混合したり、シアン化合物分解微生物より抽出した遺伝子により作成した組み換え微生物を使用したり、これらシアン分解微生物を単体に固定化した場合も本発明のシアン化合物の無害化剤及び無害化方法は使用できる。また他の物質との複合汚染でないことが好ましいが、例えば、油などがあげられるが、適度な濃度であれば本発明のシアン化合物の無害化剤及び無害化方法は可能である。
【0017】
本発明のシアン化合物の無害化剤を用いる本発明のシアン化合物の無害化方法では、シアン化合物を溶出させ、種々の微生物により迅速にシアン化合物の無害化を促すため、シアン分解微生物として報告されているバチルス属、クレブシエラ属、ロドコッカス属、ボークホルデリア属、アルカリゲネス属、さらにフザリウム属などの微生物が存在することが必須ではない。しかし、これら微生物が存在することが好ましい。
【0018】
また本発明において無害化できるシアン化合物としては、遊離シアンと金属シアノ錯体である。遊離シアンは、一般的にA(CN)で示され、Aはカリウム(K)、水素(H)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、アンモニウム(NH4)などである。また金属シアノ錯体は、一般的にA[M(CN)]で示され、Mは、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)などの金属である。
【0019】
本発明のシアン化合物の無害化剤及び無害化方法は、例えば、シアン化合物濃度、シアン化合物の形態、汚染土壌の地質、地下水の水質または、微生物の種類、微生物量により、シアン化合物の無害化剤濃度及び無害化方法の期間を変更でき、また硫酸塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、微量金属、ビタミン、アミノ酸、有機酸、糖類などを適量添加してもよい。
【0020】
本発明のシアン化合物の無害化剤において硫化物と多硫化物とメチオニン、システイン、シスチンを使用するが、硫化物とは、硫黄化合物のうち硫黄原子が最低酸化数である−2であり、S−で示され、例えば、NaS、KSなどである。また多硫化物とは、Sn−で示され、例えば、二硫化ナトリウム(Na)や、五硫化カルシウム(CaS)、二硫化鉄(FeS)などである。また約0.01〜約1mg/L程度の範囲となるように添加することが好ましい。
【0021】
本発明では、シアン分解微生物を利用することによりシアン化合物の無害化を迅速に行う為、15〜30℃、pH6〜10になるようにすることが好ましい。
【0022】
本発明のシアン化合物の無害化方法は、嫌気状態を溶存酸素濃度で1mg/L以下、ORP値50mV以下とし、その後1〜45日後に溶存酸素濃度で5mg/L以上、ORP値が50mV以上の好気状態にする。
この方法としては、20mg/L以上の高濃度酸素水または10〜1000mg/Lの過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウムの過酸化化合物を使用することが好ましい。
【0023】
本発明では、シアン分解微生物を利用することによりシアン化合物の無害化を迅速に行う為、0.1〜3mg/Lの銅化合物、マンガン化合物、鉄化合物、クロム化合物の1つ以上を加えることで、シアン化合物分解微生物の活性化を促す。
【0024】
本発明のシアン化合物の無害化剤は、例えば、地下に注入するため、シアン化合物の無害化終了後は、分解し、環境負荷が小さいことが好ましい。本発明のシアン化合物の無害化剤は、1g/L溶液においては、約30日において全有機炭素濃度で、10mg/L以下になり、完全に生分解した。
【0025】
以上の条件で、本発明はシアン化合物を無害化することができる。従って、毒性の高いシアン化合物を含んだシアン汚染媒体においても環境負荷、短工期、コスト面での負担を小さくし浄化できる浄化方法である。
以下、実施例を用いて本方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
本実施例において、吸着したシアン化合物の溶出について確認した。
塩化ビニル管に200gのシアン化合物汚染土壌を詰め、1.5g/Lの濃度でエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジヒドロキシフェニル酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、S,S−エチレンジアミンコハク酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッドを200ml流した。その時に溶出したシアン化合物濃度を測定した結果、各溶液においてシアン化合物が溶出していた。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。
これらの結果より、以下の溶液において吸着しているシアン化合物を溶出する効果が認められた。
【0027】
【表1】

【実施例2】
【0028】
本実施例では、各成分におけるシアン化合物の無害化作用について確認した。
シアン化合物汚染土壌より、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウムで溶出させた液150mlに表2に示す各成分を0.5g/L濃度となるように加え、定期的にシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。また、各成分については、7日に1回追加した。
これらの結果より、以下の成分においてシアン化合物を無害化する作用について認められた。また、これらの成分を組み合わせ使用した場合においても、同等の効果を得ることが示された。
【0029】
【表2】



【実施例3】
【0030】
本実施例では、高濃度のシアン化合物の場合において、硫化物と多硫化物の添加におけるシアン化合物の無害化が効果的であったことを示す。
シアン化合物汚染地下水5Lに0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウムとなるように加え、0.1mg/Lの二硫化ナトリウムまたは、二硫化鉄を添加したもの、添加しないサンプルを作成し、定期的にシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。また、各成分については、7日に1回追加した。
これらの結果より、高濃度のシアン化合物の場合、硫化物を添加した場合においてシアン化合物の無害化が効果的であったことが示された。
【0031】
【表3】

【実施例4】
【0032】
本実施例では、嫌気状態にし、その後、好気状態に切り替えることにより、シアン化合物の無害化が効果的であったことを示す。
シアン化合物地下水5Lに0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウム、0.1mg/L 二硫化ナトリウムを添加し、定期的にシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。また、各成分については、7日に1回追加した。振とうにおいて好気状態を維持し、また、静置することにより、嫌気状態を形成した。好気状態の目安としては、試験水中の溶存酸素濃度を5mg/L以上とし、また、嫌気状態は、1mg/L以下とした。
これらの結果より、高濃度のシアン化合物の場合、硫化物を添加した場合においてシアン化合物の無害化が効果的であったことが示された。
【0033】
【表4】

【実施例5】
【0034】
本実施例では、シアン化合物汚染サイトにおいて、シアン化合物の無害化が効果的であったことを示す。
シアン化合物汚染サイトの地下水中のシアン化合物濃度は2.0mg/L程度であった。シアン化合物汚染サイトの中央部に50mmのPVC注入管(オールストレーナー)を用いて、1.5g/L 3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム、0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウム、0.1mg/L 二硫化ナトリウム溶液を1mあたり、300Lとなるように注入した。また、3m(MW1)と4m(MW2)下流側に50mmのPVC注入管を設置し、観測孔とし、定期的にシアン化合物濃度、溶存酸素濃度(DO)、酸化還元電位(ORP)を測定した。注入終了から、3日後の各観測孔の溶存酸素濃度は、1mg/L程度であり、またORP値は、0mV程度であった。溶存酸素濃度が20mg/L以上の高濃度酸素水を約10L/分、8時間/日、1.5ヶ月間注入した。2週間毎に0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウムを1mあたり、300Lとなるように追加注入した。3m下流側にある観測孔MW1においては、1.5ヶ月間において、DO値が5mg/L程度、ORP値が約50mVであった。また、4m下流側にある観測孔MW2においては、DO値が2mg/L程度、ORP値が、約0mVであった。1.5ヶ月後に地下水中のシアン化合物濃度をJIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。
これらの結果より、DO値が5mg/L以上、ORP値が50mV以上を維持することでシアン化合物の無害化が効果的であったことが示された。
【0035】
【表5】

【実施例6】
【0036】
本実施例では、嫌気状態にし、その後、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウムにより好気状態に切り替えた時のシアン化合物の無害化が効果的であったことを示す。
【0037】
シアン化合物地下水5Lに0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウム、0.1mg/L 二硫化ナトリウムを添加し、定期的にシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。また、各成分については、7日に1回追加した。試験開始より7日間静置して、嫌気状態を形成させ、その後、10mg/Lの過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウムを添加することにより好気状態を形成、維持した。嫌気状態の目安としては、試験水中の溶存酸素濃度を1mg/L以下とし、好気状態は溶存酸素濃度を5mg/L以上とした。
これらの結果より、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウムによりを添加した場合においてシアン化合物の無害化が効果的であったことが示された。
【0038】
【表6】

【実施例7】
【0039】
本実施例では、0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウム、0.1mg/L 二硫化ナトリウム等と一緒に、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸鉄、クロム酸カリウムを微量に添加することによりシアン化合物の無害化が効果的であったことを示す。
【0040】
シアン化合物地下水5Lに0.2g/L酵母エキス、0.2g/Lプロピオン酸ナトリウム、0.2g/Lグルコース、0.2g/Lリン酸水素二カリウム、0.1mg/L 二硫化ナトリウムを添加し、1mg/L硫酸銅または、1mg/L塩化マンガン、1mg/L硫酸鉄、0.1mg/Lクロム酸カリウムを追加した。
【0041】
定期的にシアン化合物濃度を測定した。シアン化合物濃度は、JIS K0102 38.1.2で前処理を行い、4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度法JIS K0102 38.3にて発色し測定した(定量下限値0.1mg/L)。また、各成分については、7日に1回追加した。試験開始より7日間静置して、嫌気状態を形成させ、その後、過酸化カルシウムを添加することにより好気状態を形成、維持させた。
これらの結果より、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸鉄、クロム酸カリウムの添加した場合においてシアン化合物の無害化が効果的であったことが示された。
【0042】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプトン、酵母エキスの1つ以上とグルコン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アスコルビン酸、クエン酸、りんご酸、コハク酸、ピルビン酸の1つ以上とグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グリセロール、マンニトール、ソルビトールの1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成されている浄化剤とエチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジヒドロキシフェニル酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、S,S−エチレンジアミンコハク酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッド、ロードトルリン酸、フェリクローム類、コプロゲン、フェリオキサミン、リゾフェリン、N, N’,N” −トリアセチルフサリニンCの1つ以上と硫化物と多硫化物、メチオニン、システイン、シスチンの1つ以上を用いてシアン化合物を無害化することを特徴とするシアン化合物の無害化剤。
【請求項2】
さらに0.1〜3mg/Lの銅化合物、マンガン化合物、鉄化合物、クロム化合物の1つ以上を加えることを特徴とする請求項1記載のシアン化合物の無害化剤。
【請求項3】
請求項1記載の無害化剤を用いて、嫌気状態にし、その後、好気状態に切り替えるシアン化合物の無害化方法。
【請求項4】
請求項3記載の無害化方法において、嫌気状態を溶存酸素濃度で1mg/L以下、ORP値50mV以下とし、1〜45日後に溶存酸素濃度が20mg/L以上の高濃度酸素水または10〜1000mg/Lの過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過酸化マグネシウム、の過酸化化合物の1つ以上を使用することにより、溶存酸素濃度で5mg/L以上、ORP値が50mV以上の好気状態にすることによるシアン化合物の無害化方法。


【公開番号】特開2010−235796(P2010−235796A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85803(P2009−85803)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(302008467)エコサイクル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】