説明

シェル−チューブタイプ熱交換器の製造に使用される予備成形品

【課題】熱交換器の製造に使用されることに特に適合させた非晶質金属薄片の予備成形品。
【解決手段】ろう付け接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品の製造方法であって、前記熱交換器又は他の組み立て品の1つ又はそれを超える構成材と接触する非晶質合金のろう付け薄片組成物で形成された予備成形品を提供する加工工程を含む方法である。なお非晶質合金はNiベース又はNi/Crベースとする合金である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ろう付け用薄片で形成された予備成形品、並びに前記予備成形品を含む組み立て品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付けは、しばしば非類似組成の部品を互いに接合するプロセスである。典型的には、一緒に接合される部品よりも低い融点を有するフィラー金属がそれら部品の間に挿入されて組み立て品が形成される。次いで、組み立てられた部品とフィラー金属の接合部は、フィラー金属を溶融するのに十分であるが、それら部品の融点よりも概して低い温度まで加熱される。冷却すると、理論的には強くて空隙のない接合部が形成される。
【0003】
様々な組み立て品の製造に広く使用されるろう付けは、それら自体が使用されたり販売され得る最終製品である得るし、その組み付け品はそのような製品の構成体であり得る。ろう付けプロセスにより製造された製品の一クラスは熱交換器である。そのようなものは、多種多様な外形をとるが、シェル−チューブタイプ(shell-and-tube type)と呼ばれるもの、及びプレートタイプ熱交換器が通常最もよく見られる。前者の外形では、典型的にはシェルと呼ばれる大きな直径のハウジングがあり、1つ又はそれを超える小さな直径の“チューブ”又はパイプを包囲している。この外形によると、第1の流体(液体、気体)がそのシェルを通じてチューブの外部まわりを通り、それと同時に、第2の流体(液体、気体)がそれらチューブの内部を通る。第1と第2の流体との間に物理的接触は許されず、熱伝導がそれらチューブを横切って生じる。プレート熱交換器では、1つ又はそれを超えるプレートが第1の流体を第2の流体から隔離させており、熱伝導はそのプレートを横切って生じる。これらのタイプの熱交換器(並びに他の組み立て品において)において、金属は、それらの高い強度及び優れた熱伝導特性のために最も一般に使用されている。典型的には、これらのタイプの熱交換器を作り上げるのに使用される個々の部品は、ろう付けにより接合される。かくして、ろう付けは、高い強度を示し且つ流体の一方又は双方との接触から生じるかも知れない起こりうる有害な作用に耐えることが必要である。
【0004】
これらの要求を満たすために、熱交換器の組み立ての材料は注意深く選択されるであろう。ステンレススチールは、それらが優れた機械的強度及び優れた腐食耐性を含む有利な特性を発揮するので、熱交換器において非常に良く見られる。その他、他の金属も同じく熱交換器中における使用が見出される。
【0005】
熱交換器の製造、特にシェル−チューブタイプ種類のものは、頻繁に非常に手間がかかり、しばしばかなりの数の手作業組み立て工程を要求する。例えば、シェル及びチューブの熱交換器内には、複数のチューブがそれらチューブを受け入れるために適切な大きさの孔を有するプレートを通して挿入される。チューブとプレートとの間の圧力耐シールを形成するために、これら構成材の間の接合部はろう付けされる必要がある。典型的には、ろう付け用“ペースト”組成物が使用される。そのような通例的なろう付け用ペースト組成物は、ろう付けフィラー金属を、キャリヤーとしての有機バインダーと結合させた粉体をベースとした形態で含む。使用に際して、このろう付け用ペースト組成物は、各チューブとプレートとの間の接合部の領域に置かれる。続いて、前記ろう付け用ペースト組成物の適用が完了したら、次いで、その組み立て品は、有機バインダーが無くなるのと同時にそのシェル−チューブ熱交換器内において使用されている個々のチューブとプレートとの間のろう付け接合部が形成されるために適切な条件下でろう付けされる。しかし、この作業は、各々別個の接合領域内に等しい量のろう付け用ペースト組成物を置くことが難しいので、確実とはいかない。それは、それら粉体粒子の不十分な溶融に起因して実質的な接合部有孔質をも生じさせる。加えて、この手動制御の適用プロセスはときとして時間がかかり、かなりの熟練を要求し、その完璧なプロセスに際しては非常に制御の効いた操作を要求する。多くのリスクがそのような組み立てプロセスに関与しており、それらの各々は、ろう付け組み立て品内の接合の失敗をもたらすこととなる。
【0006】
一つの可能性あるリスクは、使用されるろう付け用フィラー金属組成物の性質そのものにある。これは接合部で広がりそこに維持されなければならないので、増粘剤、典型的には1つ又はそれを超える有機材料が存在する必要があることは避けられない。これらは、理想的には実際にろう付けが起きるときにその加熱工程で消失するが、そのろう付け接合部内に気泡、割れ、又は他の不連続性を非常に頻繁に生じることが当該技術分野において良く知られている。当然、そのようなものは、完成したろう付け組み立て品内の欠陥である。そのような欠陥を補修するためには、再度のろう付け工程が特定の欠陥を直すためにやむなく実施される。現行の製造法に付随する他の技術的リスクは、ろう付け材料の非常に均一な分布が各チューブ及びプレートの接合部に配置されるべきであるということにある。このことは理想的に必要とされ、ろう付けの厚みは、熱交換器の有用な使用寿命の間に加圧作動条件下において弱い接合部が出来ないように本質的に均一であるべきである。当然ながら、当該技術分野において現在知られているような手作業適用プロセスでの信頼性のある実施は難しいであろう。偶発的な過剰ペースト堆積がチューブの薄い壁部の過度の腐食又は溶解をもたらし、そしてそれらチューブ壁における孔の形成さえも導き得る。存在する更なる技術的リスクは、ろう付け用フィラー金属の適用の後又はその際のシェル−チューブ組み立て品の取り扱い、並びにろう付け用フィラーの組成に関する。典型的には、そのような手作業に使用されるろう付け用フィラー金属は、最少量の有機結合剤及び/又は他の有機材料を含む。そのような有機材料の存在と関係する既知の問題に起因して、それらの存在量の最少化は望ましいことである。不都合なことに、そのような望ましくない有機材料の最少化は、そのようなろう付け用フィラー金属構成組成の塗布性並びに接着特性に悪影響を与える。かくして、組み立てプロセスの間にろう付け接合の形成までに至るいかなる時点でもプレート上の1つ又はそれを超えるチューブのずれも移動も生じてよいとは考えられない。このことは、多数のチューブが組み付けられ、特にチューブの反対側端部に2つのプレートが同時に組み付けられる必要がある場合に特に起こりがちである。やはり、ろう付け接合の実際の形成までのろう付け用フィラー金属組成物の配置及び保持のいかなる失敗も、それ自体がそのような熱交換器内のろう付け接合部の失敗に顕在化する。存在するまた更なる技術的リスクは、小型熱交換器の形成における困難性であり、そこでは1つ又はそれを超える比較的小さな直径の薄壁チューブを1つ又はそれを超える端部プレートにろう付けする必要がある。小さな直径で薄壁なチューブの組み立て品の作製は、それらが各チューブと各プレートとの間の接合部でのろう付け用フィラー金属組成物の非常に厳密な適用を要求するので厄介である。同時に、そのような小型熱交換器では、極めて最少限ではあるが、各接合を形成するのには十分な量のろう付け用フィラー金属のみを使用することも非常に望ましいことである。不都合なことに、厳密な量のろう付け用フィラー金属を厳密な位置に配置することは、シリンジ又は他のタイプの移送装置の使用でもってでさえ難しいことが知られている。上記のことから、ろう付け組み立て品、特にシェル−チューブ熱交換器の製造に関連する当該技術分野において現実且つ未解決のニーズが存在することは明らかである。
【0007】
したがって、本発明は、1つ又はそれを超えるこれら技術的ニーズに向けられている。
【発明の開示】
【0008】
第1の側面において、本発明は、ろう付け接合部を有する組み立て品、特に熱交換器の製造に使用されることに特に適合した非晶質合金の予備成形体を提供する。
第2の側面において、本発明は、ろう付け接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品の製造方法であって、前記熱交換器又は他の組み立て品の1つ又はそれを越える構成材と接触する非晶質合金の予備成形体を提供する加工工程を含む方法に関する。
【0009】
本発明の第3の側面において、本明細書に記載されるような非晶質合金の予備成形体を使用して作られるろう付け接合部を有する熱交換器及び他の組み立て品が提供される。
本発明の第4の側面において、ろう付け接合部を有する熱交換器及び他の組み立て品であって、その接合部は前記熱交換器及び他の組み立て品の1つ又はそれを超える構成材と接触する非晶質合金の予備成形体を提供する加工工程を含む方法により作られる、熱交換器及び他の組み立て品が提供される。
【0010】
本明細書中及び特許請求の範囲中、“予備成形品”という用語は“予備成形体”という用語と交換可能に使用され、“予備成形品”とは、本発明により記述されるろう付け用薄片予備成形体を示す。
【0011】
本発明の更なる特徴は、以下の記載からより明らかになるであろう。
【0012】
本発明は、ろう付けされた金属構成材を含む組み立て品の製造方法、及びろう付け用フィラー金属の予備成形体を提供する。
当該技術分野において理解されている通り、如何なるろう付け加工においても、ろう付けフィラー金属は、互いにろう付けされた金属部品の用役上の要求を満たす強度を提供できるよう十分に高い融点を有しなければならない。しかし、その融点は、ろう付け作業が困難になるほど高いものであってはならない。さらに、そのフィラー材料は、ろう付けされる材料と化学的にも冶金学的にも適合性でなければならない。
【0013】
本発明による方法及び組み立て品に特に有用なろう付け用フィラー金属は、様々な形態、つまり粉末、薄片、リボン、又は周知の技法による他の形態で製造されることができる合金である。合金を粉末形態に作製するのに一般に使用される方法には、ガス又は水の噴霧化並びに機械的微粉砕が含まれる。本発明の合金は、最も好ましくは、急速固化法によって延性薄片、リボン又はワイヤーに形成される。そのような急速固化法は、溶融化材料の溶融物を少なくとも1×103℃/秒の速度(より高い速度が知られ且つより一般的に使用されてはいるが)で急激に冷やして急冷することにより固化することによる方法である。今日使用可能な様々な急速固化法の中で、最も好ましい方法は、その上へ溶融金属が置かれる急速回転冷却ホイールを使用する。そのような方法はそれ自体、当該技術分野において知られている。
【0014】
理想的には、本発明により使用されるろう付け用フィラー金属は、たやすく取り扱うことができ且つ3次元形状の予備成形体に屈曲させることができる延性薄片の形態の非晶質合金である。そのような屈曲可能な予備成形体は、平面な延性ろう付け用薄片の部分を、製造される組み立て品の組み付けに使用される金属部品の外形と合致するように適合した非平面3次元形状に折り曲げることにより形成される。そのような非平面で複雑な形状への形成は、延性薄片の変形が不可逆となるように延性薄片を曲げるか又は型押しすることにより起こす。さらに理想的には、そのろう付け用薄片は、それの組成において本質的に均質であるべきであり、すなわち、それは、ろう付けの間の空隙形成又は混入残留物の析出についての可能性を与えるであろう有機結合剤のようなバインダーを含有しない。
【0015】
それら合金の均質溶融物から生成される急速固化生成物は、通常、固体状態の均質物である。それら生成物は、合金組成及び加工パラメーターに依存して、ガラス質又は結晶質であり得る。加えて、少なくとも約90%ガラス質の生成物は、通常、それら合金の薄片又はリボン形態がそれらの厚みの10倍も小さな半径にまで破断せずに屈曲可能であるために十分な延性を示す。好ましくは、本発明のろう付けフィラー金属は、合金であって、少なくとも約1×105℃/秒の急冷速度で該合金の溶融物を急速固化することにより形成されるものである。そのような急冷速度生成合金は、少なくとも約90%ガラス質な合金であり、その結果、それらを複雑な形状へ型押し可能にするのに十分に延性なものとなる。より好ましくは、本発明の合金は、少なくとも約92%ガラス質であり、最も好ましくは、実質的にガラス質な合金が最も高い延性度を示すので実質的にガラス質(すなわち、少なくとも約95%ガラス質)である。
【0016】
既に示したように、本発明による予備成形体は、平面で延性なろう付け用薄片の一部を、製造される組み立て品の組み付けに使用される金属部品の外形と合致するように適合した非平面3次元形状に折り曲げることにより形成される。そのような非平面で複雑な形状への形成は、延性薄片の変形が不可逆であるような延性薄片を屈曲させるか又は型押しすることによるようなことによって、予備成形体を平面で延性なろう付け用薄片から機械的に形成するためのあらゆる適切な手段により生じさせることができ、すなわち、離型後に予備成形体が2次元平面状態に戻らず、さらに、それらろう付け用薄片が離型工程の間に破断したり壊れることがないということである。本発明に有用な合金は、ろう付け用フィラー金属として、本明細書に記載された方法に特に適しものである。最も好ましくは、それら合金は、薄片形態で製造され、且つその薄片がガラス質であるか微細結晶質であるにかかわらず有用である。本発明の薄片は、典型的には、約0.0007インチ〜約0.004インチ(約18〜100マイクロメーター)厚である。多くの場合、薄片厚は、ろう付けされる部品の間に所望される間隙に対応する。
【0017】
本発明のろう付けフィラー金属は、金属部品、特にステンレススチール部品の接合部に特に有用である。そのようなステンレススチールの例示的グレードには、UNS分類によるスチールS31603、並びに典型的には約0.03wt%炭素、2.00wt%マンガン、1.0wt%シリコン、16〜18wt%クロム、10〜14wt%ニッケル、2〜3wt%モリブデン、0.1wt%窒素、及び100wt%までの残部としての鉄を含有するものとして記述されているタイプ316Lステンレススチールが含まれる。勿論、他の材料も本明細書に記載された本発明からの利益を受けることができ、本明細書に説明されているそれら有益性を享受し得ると考えられる。非制限的な実施例によると、これらは、他のグレードのステンレススチール、並びにニッケル又はクロムを含むような他の腐食耐性合金を含む。
【0018】
本発明のろう付け用フィラー金属の1つのクラスには、ニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属及びニッケル/コバルト/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属が含まれる。そのようなろう付け用フィラー金属には、ステンレススチール部品のろう付けに一般に使用されるもので、American Welding Society specification ANSI/A5.8によりBNi−及びBCo−シリーズろう付け用フィラー金属として指定された最も知られているNiをベースとする合金及びNi/Crをベースとする合金が包含されると考えられる。本発明による方法及び製造品に有用なニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属として特に有用なものには、式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(ここにおいて、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”は約0〜75、“c”は0〜約25、“d”は0〜約4、“e”は0〜約11、“f”は0〜約10、“g”は0〜約5、且つ“h”は0〜約5、“X”は他の元素を表し、約1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量への残部である。)
により表され得る合金組成物が含まれる。好ましくは、これらニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属は、上記したそれら元素から本質的になる。“ニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属”という用語はクロムが存在していない合金を包含するが、典型的にはクロムが存在するので、この用語の使用が採用されている、と理解されるべきである。
【0019】
好ましくは、ニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属は、少なくとも約90%ガラス質構造を有する、より好ましくは少なくとも約92%ガラス質構造を有する、最も好ましくは少なくとも約95%ガラス質構造を有する準安定構造状態(metastable structural state)にある合金をベースとする。そのような合金は、当該技術分野において“非晶質(アモルファス)合金”とも良く呼ばれている。本明細書に記載されるろう付け用フィラー金属として使用し得る合金をベースとし且つ現在商業的に入手可能であるニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属の更なる例は、ANSI分類A5.8(The American Welding Societyによる)に従ってフィラー金属BNi−1、BNi−1a、BNi−2、BNi−5、BNi−7、BNi−9、BNi−10、BNi−11、及びBCo−1と呼ばれるもの並びに各々のサブカテゴリーが含まれる。上記化学組成を有し且つ現在商業的に入手可能なニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属として有用な好ましいNiをベースとする及びNi/Crをベースとする合金の例には、上記のANSI/A5.8分類によるBNi−2、BNi−5a、及びBNi−5b組成物が含まれる。理想的には、本発明により使用されるニッケル/クロムをベースとするろう付け用フィラー金属は、取り扱い容易であり、必要であれば外形に適合するように形作ることもできるし、所要の複雑な形状へ形作ることもできる延性薄片形態である。さらに理想的には、そのニッケル/クロムをベースとする非晶質ろう付け用フィラー金属は、組成において本質的に均一であり、且つろう付けに際し空隙形成又は混入残留物の析出についての可能性を与えるであろう有機結合剤のような有機結合剤を含まない。
【0020】
本発明の好ましい側面において、ろう付け接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品の製造方法が提供され、その方法は、非晶質合金を含んでなるろう付け用薄片予備成形体を、前記熱交換器又は他の組み立て品の1つ又はそれを超える構成材と接触させて提供し、並置した部品とろう付け用材料をそのろう付け用材料の溶融を引き起こすために適切な条件下で加熱すること;及び、その後、溶融したろう付け用フィラー合金を冷却してろう付け接合部を作る加工工程を含む。
【0021】
上記の工程において好ましくは、並置した部品を加熱してそれら部品のろう付けを生じさせることは、アルゴン又は窒素のような保護性ガスの存在下の密閉オーブン内で起こす。別のやり方では、加熱をさらに減圧条件下の密閉オーブン内で起こしてもよく、これは一定の事例において好ましい。これらろう付け条件は、典型的には、ホウ素、ケイ素、及びリンのような酸素活性元素を含有するフィラー金属を使用する場合に高い接合強度と結着性を達成する産業に使用される。
【0022】
本発明の第1の好ましい態様によるろう付け用薄片予備成形体は、概して円形状を有し、そこから1つ又はそれを超えるタブが伸びている。この好ましい態様によると、円の直径は、その上にろう付け用薄片予備成形体が設置されることとなるプレートの直径に対応しており、複数のタブは、ろう付け用薄片予備成形体の一部である。これらのタブは折るか曲げられて、その折曲又は屈曲線がプレートのエッジにも対応する円形形状とほぼ一致するように意図されている。これらのタブのサイズと直径は、プレートと適切に適応するように相応に決定されるべきである。そのろう付け用薄片予備成形体は、ろう付け用薄片予備成形体を貫通スリットにより好都合に形成された少なくとも1つで好ましくは複数の穿孔も含む。これら穿孔の各々が同一であり、個々の穿孔は、3つのスリットで各々ほぼ同一長さの各スリットがそれらの中間点で交差して各々等しく放射状に分かれるスリットにより形成されている。しかし、これは、それら穿孔が薄片を貫通する不連続性でさえあればよい場合には必要とされないことが明確に理解されており、それらの幾何学形態は必ずしも円ではない。しかし、好ましい態様によると、穿孔は、1つ又はそれを超えるスリットの形態であり、それらが屈曲又は折り曲げられるのに適した1つ又はそれを超えるフラップを形成するものであって、1つ又はそれを超えるシェルがプレートと組み立てられその後にろう付け用薄片予備成形体がそのプレートの表面(及びチューブの端部)に施される場合に、当該1つ又はそれを超えるフラップを、1つ又はそれを超えるチューブの内部の内側に曲げ入れることができる。当該態様によると、複数のこれらフラップは、それが曲げられるときに非晶質金属薄片の割れ又は破れの可能性が低いことも保証されている。当業者に知られているように、非晶質金属の薄片は、典型的には脆性であり、典型的には被削することも切断することもかなり難しい。このことは、これら金属薄片の尋常でなく高い硬度に起因して現実に存在することである。しかし、本願では、小さな半径でゆっくりと曲げる場合、折り目を典型的には破れない非晶質金属薄片に形成可能である、ことが見出された。かくして、それら非晶質薄片のあらゆる折り曲げ又は屈曲の間、ろう付け用薄片予備成形体を、実質的に平面な2次元形状から3次元形状へ割れないように曲げる場合、比較的小さな半径が維持されることが特に望ましい。理想的には、曲げるところの半径は、約1ミリメートル以下に維持されるとよい。上記のように小さな半径が維持される場合に、効果的な折り目及び折り曲げを非晶質金属に導入することができ、それと同時にその非晶質金属薄片の部分は、それらの以前の未屈曲形態にスプリングバックしたり又は逆戻りしたりする特に強い傾向を持たなかった。
【0023】
穿孔具は、穿孔をろう付け用薄片予備成形体へ導入するのに好都合に使用される。その穿孔具はプランジャーを含みその上に複数の切断刃を有する。プランジャーの外形並びにいずれの切断刃の配置も、ろう付け用薄片予備成形体に導入される1つ又はそれを超えるスリット、及び得られる穿孔の所望の数とサイズに対応する。
【0024】
穿孔具の第2部分は、それの一端で凹部を有する受け止めカップであり、これが切断刃及びプランジャーの半面像との嵌め合い対応を有する。常に凹部の内側のいかなる半面像であっても、理想的には切断刃の半面像と対応すべきである。非晶質金属の難しい取り扱い特性に起因して、本発明者は、2つの部分で構成される穿孔具を好都合に使用することを見出した。操作において、プランジャーと受け止めカップは引っ込んで、それらの間にろう付け用薄片予備成形体の少なくとも一部の導入を可能にするスペースを形成する。切断操作において、次いでプランジャーと受け止めカップはろう付け用金属予備成形体の変形及び切断が生じるように相対して対抗的に動かされる。続いて、プランジャーと受け止めカップは、互いから後退し、その時ろう付け用薄片予備成形体が穿孔具から取り外し可能になる。
【0025】
特定の穿孔及び特定の外形に関して説明したが、勿論、穿孔具の外形は、最終的には各種の配置及び/又は外形を有する穿孔を提供することに適合させることができると理解されるものである。更に、穿孔具は、1つではなく、複数のプランジャー及び対応する複数の受け止めカップを含むことも企図されている。そのような配置では、自動化又は少なくとも半自動化製造作業の間、ろう付け用薄片予備成形体は幾つかの穿孔、好ましくは必要とされるすべての穿孔を1回の型押し(stamping)操作で与えられ得ることが明らかに企図されている。一定の特に好ましい態様では、その穿孔具構成材は、ダイ組み付け体の一部を形成するもので、それは非晶質合金のシートを貫通する穿孔を同時に型押しするだけでなく、その周縁外形全体を同時に、即ち1回の型押し工程で複数のタブを型押しすることにも適合させている。そのような操作では、ろう付け用薄片予備成形体の正確な製造が保証される。
【0026】
穿孔操作に続き、ろう付け用薄片予備成形体のシェル及びチューブ組み立てへの導入の前にタブが、好ましくは、ろう付け薄片予備成形体の主要平面に実質的に垂直になるように曲げられる。非晶質金属薄片加工品の形成された個々のフラップに関して、つまりスリットについて、これらは必ずしも主要平面と角度を形成するように曲げられる必要はないが、望ましくは、その結果生じる角度は、ろう付け用薄片予備成形体の主要平面に関して約0°〜90°である。
【0027】
上記の観点において、本願により提供されるろう付け用薄片予備成形体は、ろう付けされた組み立て品、特にシェル−チューブ種類の熱交換器の製造に関連する技術分野における実質的な技術進歩を提供することが分かる。本明細書に記載されるようなろう付け薄片予備成形体の使用は、チューブ及びプレートの特定のサイズと配置に寸法取りされたろう付け用薄片予備成形体の、再現可能性及び信頼性のある製造を可能にする。かくして、複数の、特に多数のシェルとチューブの特定形状の熱交換器が作製されるあらゆる製造作業のために、本明細書に記載されたろう付け用薄片予備成形体の使用は、特に好都合な方法を提供し、それによって製造を行うことができる。同時に、本明細書に記載されるろう付け薄片予備成形体の組成と、粉末形態のろう付け用フィラー金属組成物に関する現在の技術状態との間に、特に非晶質金属ペースト組成物及びシェル−チューブタイプの熱交換器の組み立て品との関連において実質的な相違を見逃さないことも重要である。好ましい態様によると、失敗の原因であると知られている有機結合剤又は他の有機材料は、本発明によるろう付け用薄片予備成形体中に存在しないことは特に意義がある。このことは、接合の失敗の可能性を実質的に減少させるので、多数のろう付け接合部が同時に生じる場合に特に意義がある。このことは、特に多数のチューブが1つ又はそれを超えるプレートに確実にろう付けされるべきシェルーチューブ熱交換器において特に重要な利点である。この技術的利点は、小さなサイズのシェル−チューブ熱交換器に関する公知の製造技術の点から見てもより有益である。実質的に均一な厚みのろう付け薄片予備成形体であって、チューブのプレートへの配置に対応するスリット(又は他の穿孔部)の正確な配置を伴うろう付け用薄片予備成形体は、公知の製造技術において頻繁に経験される起こりうるあらゆる製造エラーを実質的に最小化する。すべてではないにしても多くの公知の技術的リスクが、本明細書に記載されているろう付け用薄片予備成形体及び製造プロセスの使用で実質的に又は完全に除去される。
【0028】
ろう付け用薄片予備成形体の別の態様では周縁タブが存在しない。ろう付け用薄片予備成形体は、典型的には、ろう付け用薄片予備成形体板状片と共に使用されることが意図されている。ろう付け用薄片予備成形体板状片の長さは、プレートの円周に対応し、その上にろう付け用薄片予備成形体板状片が取り付けられると意図される。加えて、好ましい態様では、そのろう付け用薄片予備成形体板状片は、それの一方の側から伸びる複数のタブを含んでもおり、それらは第1の円形形状の態様のタブと同じ機能を果たすことが意図されている。これらタブは“ノコギリ”側面形状を有し、すなわち各々が本質的に、折り目又は折り線と一致する基部を有する三角形状である。他の側面形状が使用されてもよい。
【0029】
型押しプレートは、シェル−チューブ熱交換器が組み立てられるときにシェルの内壁内に嵌合可能であるように適合したエッジを含む。ここでも、概ね記載してきたように、ろう付け薄片予備成形体は、チューブ端部の配置及び型押し端面プレートに対応する適切に寸法取りされ且つ適切に位置づけられた複数の穿孔を含む。区別可能な点は、ろう付け用薄片予備成形体が周縁タブを含まず、ろう付け薄片予備成形体の直径が型押しプレートの境界内に適合することが意図されることである。その直径は重要ではない。要求されることは、ろう付け薄片予備成形体の一部がチューブ端部及び型押しプレートを貫通する孔と同時に接触することだけである。さらに、ろう付け薄片予備成形体板状片は、型押しプレートの直径と等しいか又はそれより大きい長さを有することも企図されている。ろう付け用薄片予備成形体板状片は、概して輪を形成するように配置されるもので、前記ろう付け用薄片予備成形体板状片の少なくとも一部が、シェルの少なくとも一部と型押しプレートとの間に挟まれ得るように置かれることに適合している。そのようなやり方では、加熱及びろう付け工程の間、ろう付け接合部がシェルと型押しプレートとの間に確保されることができる。
【0030】
ろう付け薄片予備成形体は、型押しプレートの少なくとも一部及びチューブの端部と同時に接触する。ここでも、穿孔により形成されたフラップの部分は、チューブの内部へ内方へ向くように反らせて曲げられる。ろう付け薄片予備成形体板状片は、型押しプレートの部分とシェルとの間に並置されることも分かる。
【0031】
上記配置に従ったこれら構成材の位置づけに続いて、通例的なろう付け工程が、ろう付け薄片予備成形体及びろう付け薄片予備成形体板状片を少なくとも部分的に溶融させ冷却時にそれぞれの構成材の間にろう付け接合が形成されるように実施される。
【0032】
本発明は、ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品の製造方法であって、下記工程:
前記熱交換器又は他の組み立て品の少なくとも1つの又はそれを超える構成材とそれらの作製の間に接触している非晶質合金のろう付け用薄片組成物の予備成形体を提供すること;及び
次いで、その熱交換器又は他の組み立て品を、ろう付け薄片組成物で形成された予備成形体の少なくとも部分的な溶融を実施するために適切な条件にさらして、ろう付け接合部を形成すること;
を含む方法も提供する。
【0033】
本発明によるろう付け用薄片予備成形体を使用するシェル−チューブタイプ熱交換器の作製のための1つの技法はろう付け用薄片予備成形体の配置を含んで部分的に組み立てられたシェル−チューブ熱交換器に関係する。この技法によると、プレートには、ろう付け用薄片予備成形体が提供される。このプレートは、タブがプレートのエッジとシェルの内径との間に配置されることが確実となるようにシェルの一端部内に挿入される。ろう付け用薄片予備成形体は、シェルの内部から外側へ向くプレートの面上に配置される。次の製造工程において、チューブは、チューブの各々の少なくとも1つの端部がプレート内に挿入されることが確実となるようにシェルの開放端を通じて挿入される。また、第2のプレートが提供され、ろう付け用薄片予備成形体がそれの一面に適用される。その面はシェルの内部から外側へ向くものであると意図されている。チューブの端部のこのプレート内への配置を容易にし且つチューブの端部とプレートとシェルとの間の良き整列を確かなものにするためにガイド手段を使用することが好都合であり得る。例示的なガイド手段には、チューブの各々の内部に適切に挿入されてからプレート内の適切な孔を貫通するロッドが含まれる。このやり方では、それぞれのチューブ端部及びプレート内の孔の適正な整列は、次にプレートがシェルの端部内に挿入された時に確保されることができる。これらのガイド手段は、ろう付け工程の前に引き出される。勿論、ガイド手段の使用は、本明細書に記載された技法に任意なものであることが理解されている。
【0034】
本法の次の工程として、そのようにして組み立てられた組み立て品は、次いでチューブとプレートとシェルの少なくとも一部との間のろう付け接合部の形成が確実となるように適切なろう付け条件にさらされる。
【0035】
シェル−チューブ熱交換器において有用な組み立て品の第2の作製技法によると、類似するが若干変更した順序の組み立て工程が実施される。この技法によると、最初にチューブの端部がプレート内の適切な孔へ挿入される。その後、組み立てられたシェル−チューブ熱交換器から最終的に外部の方へ向けられることになる面上に、ろう付け用薄片予備成形体が配置される。他のプレート上にも、シェルから最終的に外部の方へ向けられる前記プレートの表面上へろう付け用薄片予備成形体が配置される。その後、第1のプレート、組み付けられたチューブ及び第2のプレートが適切なサイズのシェルの一端部で挿入され、次いで、シェルを通してそれらの最終的な位置まで移動させる。そのような方法では、それらプレート、チューブ及びろう付け用薄片予備成形体の組み立ては、シェルを通って移動するときにプランジャー又はピストンのように動く。第2のプレートのシェルへのろう付けを確実にするために、プレートのエッジをろう付け用薄片予備成形体板状片又は他のやり方ではろう付け用薄片予備成形体リングのいずれかで取り囲むことが好都合である。このやり方では、組み立て品が完成したとき、ろう付け用薄片予備成形体は、プレートの各々のエッジ並びにプレートの外側面上及びチューブの各々の端部の間で接触する。
【0036】
その後、その組み立て品は、次いでろう付けを確実にするために適切な条件にさらされる。
簡潔に言及したように、別のろう付け用薄片予備成形体リングは、ろう付け用薄片予備成形体板状片の代わりに使用することができる。そのろう付け用薄片予備成形体リングは、内側円形領域から伸びる一連の周縁タブを含む。タブが円形面の平面から曲げられて、ろう付け用薄片予備成形体と共に特に有用である3次元予備成形体を形成することができるおおよその箇所に、折り目が存在する。
【0037】
シェル内チューブ(shell-in-tube)熱交換器の製造に有用な組み立て品の作製のための第3の技法を説明する。部分的に組み立てられたシェル内チューブ熱交換器は、2つの端部プレートの各々の上のろう付け用薄片予備成形体、並びにシェルの各端部で、各端部と前記プレートの1つとの間にあるろう付け用薄片予備成形体の配置を含む。ろう付け用薄片予備成形体の外形は、ろう付け用薄片予備成形体板状片又はろう付け用薄片予備成形体リングのいずれかによることができる。
【0038】
この技法によると、好都合に使用されるガイド手段もあり、これらは各チューブの端部と各プレートとの間の良い整列を確実にすることに有益である。この技法によると、各チューブはそれらと関わる1つ又はそれを超えるガイド手段を有する。それらガイド手段は、プレートの各々内の適切な寸法をした孔を貫通する。シェル内チューブ熱交換器の内部から最終的に外方へ向けられることとなるプレートの各々の面上には、ろう付け用薄片予備成形体が位置づけられる。続いて、プレートを、それがシェル内へほぼ挿入されさらに各チューブの端部がプレート内の適切な寸法の孔内へ挿入されるように移動する。更に、ろう付け用薄片予備成形体がプレートのテーパー状エッジとシェルの内壁との間に位置づけられることも確実となるように注意を払う。同様の様式で、第2のプレートもシェルの内部へ同様にして挿入され、チューブの反対端部が前記第2のプレート内の適切なサイズの孔内へ挿入され、またろう付け用薄片予備成形体がテーパー状エッジとシェルの内壁との間に位置づけられる。ガイド手段がそのようにして組み立てられたシェル内チューブ熱交換器から取り外され、その後、前記シェル内チューブ熱交換器は、ろう付け用薄片予備成形体を溶融させてろう付け接合部を形成するために適切な条件にさらされる。
【0039】
勿論のこと、本発明の有用性は、熱交換器の製造に限定されず、2つ又はそれを超える金属部品をろう付けにより接合することが望まれるあらゆる用途における使用が見出されると理解されるであろう。
【実施例】
【0040】
実施例1
ろう付け用薄片予備成形体を製造する。ろう付け用薄片予備成形体を型押しするのに適切な外形を有する金属切断ダイが製造される。次いで、このダイは、ろう付け用薄片予備成形体を一回の型押し操作で型押成形するために使用される。この実施例によると、穿孔もこの一回の型押し操作において同時に型押しされる。
【0041】
実施例2
上記ろう付け用薄片予備成形体を2段階型押し操作で製造する。最初に、穿孔が存在しないろう付け薄片予備成形体を型押しするための外形を有する金属切断ダイを使用して、シート、リボン又は板片の非晶質合金から予備成形体を型押しする。次に、穿孔具を使用して、穿孔を形成する。
【0042】
実施例3
上記ろう付け薄片予備成形体を、実施例1で概説されるプロセスに従って製造する。但し、本実施例によると、その金属切断ダイの外形はろう付け薄片予備成形体の形状に対応する。
【0043】
実施例4
上記ろう付け用薄片予備成形体を、概して実施例2に記載した加工工程に従って製造する。但し、本実施例によると、そのろう付け用薄片予備成形体の形状は所望の外形に従う。
【0044】
シェル内チューブのチューブ熱交換器組み立て品は、2つの端部を有する複数のチューブ、チューブの一端部を受け入れる寸法でそれを貫通する少なくとも1つの孔を有する第1のプレート、及びそのチューブの他端部を受け入れる寸法の孔を有する第2のプレート、それら端部と適合する寸法のシェル、及び複数のチューブ、及びろう付け用薄片予備成形体から製造される。それら適切なチューブ端部は、プレートの各々の適切な孔内へ挿入され、ろう付け薄片予備成形体がシェルの内部から外方へ向くそれら面上に配置される。次いで、ろう付け用薄片予備成形体、プレート及び複数のチューブの組み立て品はシェルの内部に入れられ、続いて、この組み立て品は、そのろう付け用薄片予備成形体が少なくとも部分的に溶融してシェル内チューブ熱交換器の構成材の間でろう付け接合が行なわれるのに適切なろう付け条件にさらされる。続いてその組み立て品は冷却される。
【0045】
実施例5
ろう付け薄片予備成形体を、概して実施例2に記載された加工工程に従って製造する。但し、本実施例によると、そのろう付け薄片予備成形体の形状は別の所望の配置に従う。
【0046】
シェル内チューブのチューブ熱交換器組み立て品は、2つの端部を有する複数のチューブ、チューブの一端部を受け入れる寸法でそれを貫通する少なくとも1つの孔を有する第1のプレート、及びそのチューブの他端部を受け入れる寸法の孔を有する第2のプレート、それら端部と適合する寸法のシェル、及び複数のチューブ、及びろう付け用薄片予備成形体から製造される。それら適切なチューブ端部は、プレートの各々の適切な孔内へ挿入され、ろう付け用薄片予備成形体がシェルの内部から外方へ向くそれら面上に配置される。次いで、ろう付け用薄片予備成形体、プレート及び複数のチューブの組み立て品はシェルの内部に入れられ、続いて、この組み立て品は、そのろう付け用薄片予備成形体が少なくとも部分的に溶融してシェル内チューブ熱交換器の構成材の間でろう付け接合が行なわれるのに適切なろう付け条件にさらされる。続いてその組み立て品は冷却される。
【0047】
加えて、ろう付け用薄片予備成形体板状片もそれらプレートの各々のエッジとシェルの内壁との間に導入される。
以下に、本発明の好ましい態様を列挙する。
1.ろう付けされた接合部を有する組み立て品の製造に使用されることに特に適合した非晶質金属ろう付け用薄片で形成された予備成形品であって、前記予備成形品が非平面状3次元形態を有することを特徴とする予備成形品。
2 前記非晶質合金がNiをベースとする又はNi/Crをベースとする合金である、上記第1項による予備成形品。
3.前記非晶質合金が、下式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が約0〜75、“c”が0〜約25、“d”が0〜約4、“e”が0〜約11、“f”が0〜約10、“g”が0〜約5、“h”が0〜約5、且つ“X”が他の元素を表し、約1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
により表しうる組成を有する、上記第1項による予備成形品。
4.複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用されることに適合した外形を含み、前記プレートを、前記複数のチューブと少なくとも1つのプレートとを入れるシェルへろう付けするための、上記第1項による予備成形品。
5.前記予備成形品の外形が、主要平面、前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔を含む、上記第4項による予備成形品。
6.前記予備成形品の外形が、主要平面、前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔、及び前記主要平面から伸びる少なくとも1つの屈曲可能なタブを含む、上記第4項による予備成形品。
7.複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用されることに適合した外形を有するろう付け用薄片予備成形体;及び
前記プレートを、前記複数のチューブ及び少なくとも1つのプレートを入れる円筒状シェルへろう付けするために使用されることに適合した外形を有するろう付け用薄片予備成形体板状片;
を含んでなる、上記第1項による予備成形体。
8.ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品の製造方法であって、下記工程:
非晶質合金のろう付け用薄片組成物で形成された予備成形品であって、前記熱交換器又は他の組み立て品の少なくとも1つの又はそれを超える構成材とその作製に際して接触する非平面状3次元形態を有する予備成形品を提供すること;及び
次いで、該熱交換器又は他の組み立て品を、ろう付け用薄片組成物で形成された該予備成形品の少なくとも部分的な溶融を実施するために適切な条件にさらすこと;
を含む方法。
9.前記予備成形品が、Niをベースとする又はNi/Crをベースとする合金である非晶質合金で形成されている、上記第8項による方法。
10.前記非晶質合金が、下式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が約0〜75、“c”が0〜約25、“d”が0〜約4、“e”が0〜約11、“f”が0〜約10、“g”が0〜約5、“h”が0〜約5、且つ“X”が他の元素を表し、約1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
により表しうる組成を有する、上記第9項による方法。
11.前記予備成形品が、複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用されることに適合した外形を含み、前記プレートを前記複数のチューブと少なくとも1つのプレートを入れるシェルへろう付けするためのものである、上記第8項による方法。12.前記予備成形品の外形が、主要平面、前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔を含む、上記第8項による方法。
13.前記予備成形品の外形が、主要平面、前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔、及び前記主要平面から伸びる少なくとも1つの屈曲可能なタブを含む、上記第8項による方法。
14.ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品であって、上記第1項による非晶質合金のろう付け用薄片で形成された少なくとも1つの予備成形品を含む熱交換器又は他の組み立て品。
15.上記第14項による非晶質合金のろう付け用薄片で形成された少なくとも1つの予備成形品を含む、ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品であって、該非晶質合金が、下式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が約0〜75、“c”が0〜約25、“d”が0〜約4、“e”が0〜約11、“f”が0〜約10、“g”が0〜約5、“h”が0〜約5、且つ“X”が他の元素を表し、約1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
により表しうる組成を有する熱交換器又は他の組み立て品。
16.ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品であって、前記熱交換器又は他の組み立て品の少なくとも1つ又はそれを超える構成材と接触している非晶質合金のろう付け用薄片組成物で形成された予備成形品を提供する工程を含む方法により製造された熱交換器又は他の組み立て品。
17.上記第16項による方法により製造された、ろう付けされた接合部を有する熱交換器又は他の組み立て品であって、非晶質合金のろう付け用薄片で形成された前記予備成形品が、下式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が約0〜75、“c”が0〜約25、“d”が0〜約4、“e”が0〜約11、“f”が0〜約10、“g”が0〜約5、“h”が0〜約5、且つ“X”が他の元素を表し、約1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
により表しうる組成を有する熱交換器又は他の組み立て品。
【0048】
現在の好ましい態様について記載されているが、本開示は例証のためのものとして解釈され、限定のためのものとして解釈されるべきではないこと、及び当業者に明らかな様々な修飾と変更が本発明の範囲と精神から逸脱せずになされ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル−チューブタイプ熱交換器の製造に使用される予備成形品であって、
前記予備成形品が主要平面及び前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔を含む不可逆的に変形した非平面状形態を有する非晶質合金のろう付け用薄片を含み、
前記非平面状形態が、複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用され、かつ、前記複数のチューブと前記プレートとを入れるシェルに前記少なくとも1つのプレートをろう付けするために使用される、
予備成形品。
【請求項2】
前記非晶質合金がNiをベースとする又はNi/Crをベースとする合金である、請求項1による予備成形品。
【請求項3】
前記非晶質合金が、式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が0〜75、“c”が0〜25、“d”が0〜4、“e”が0〜11、“f”が0〜10、“g”が0〜5、“h”が0〜5、且つ“X”が他の元素を表し、1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
で表される組成を有する、請求項1記載の予備成形品。
【請求項4】
前記予備成形品の非平面状形態が、前記主要平面から伸びる少なくとも1つの屈曲可能なタブを含む、請求項1記載の予備成形品。
【請求項5】
複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用される円形形状を有するろう付け用薄片予備成形体、及び
前記チューブ及び前記プレートを入れる円筒状シェルに前記プレートをろう付けするために使用される形態を有するろう付け用薄片予備成形体板状片
を含む、請求項1記載の予備成形体。
【請求項6】
シェル−チューブタイプ熱交換器の製造方法であって、該方法が下記工程:
主要平面及び前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔を含む不可逆的に変形した非平面状形態を有する非晶質合金のろう付け用薄片で形成された予備成形品であって、前記熱交換器又はその他の組み立て品の1つ以上の構成要素とその作製に際して接触する予備成形品を提供すること、ここで前記非平面状形態が、複数のチューブの少なくとも1つのプレートへのろう付けに使用され、かつ、前記複数のチューブと前記プレートとを入れるシェルに前記少なくとも1つのプレートをろう付けするために使用される;及び
次いで、前記熱交換器又は前記組み立て品を加熱し、それによって前記予備成形品を少なくとも部分的に溶融させ、前記熱交換器又は前記組み立て品の構成要素の間にろう付けされた接合部を形成させること;
を含むことを特徴とする前記製造方法。
【請求項7】
前記非晶質合金はNiをベースとする又はNi/Crをベースとする合金である、請求項7記載の方法。
【請求項8】
前記非晶質合金が、式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が0〜75、“c”が0〜25、“d”が0〜4、“e”が0〜11、“f”が0〜10、“g”が0〜5、“h”が0〜5、且つ“X”が他の元素を表し、1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
で表される組成を有する、請求項8記載の方法。
【請求項9】
前記予備成形品の非平面状形態が、主要平面及び前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記予備成形品の非平面状形態が、主要平面、前記主要平面を貫通する少なくとも1つの穿孔、及び前記主要平面から伸びる少なくとも1つの屈曲可能なタブを含む、請求項6記載の方法。
【請求項11】
ろう付けされた接合部を有する熱交換器又はその他の組み立て品であって、請求項1記載の非晶質合金のろう付け用薄片で形成された少なくとも1つの予備成形品を用いて形成された少なくとも1つのろう付け接合部を含む、前記熱交換器又は前記組み立て品。
【請求項12】
請求項11記載の非晶質合金のろう付け用薄片で形成された少なくとも1つの予備成形品を用いて形成された少なくとも1つのろう付け接合部を含む、ろう付けされた接合部を有する熱交換器又はその他の組み立て品であって、
該非晶質合金が、式:
NiaCobCrcdSieFefMogh
(式中、下付文字“a”、“b”、“c”、“d”、“e”、“f”、“g”、及び“h”は、すべて重量パーセントにして、“b”が0〜75、“c”が0〜25、“d”が0〜4、“e”が0〜11、“f”が0〜10、“g”が0〜5、“h”が0〜5、且つ“X”が他の元素を表し、1重量パーセントまで存在し得る不純物を含み、そして“a”は100までの全量の残部である)
で表される組成を有する、前記熱交換器又は前記組み立て品。

【公開番号】特開2012−187637(P2012−187637A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105822(P2012−105822)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2007−183080(P2007−183080)の分割
【原出願日】平成13年11月20日(2001.11.20)
【出願人】(503393227)メトグラス・インコーポレーテッド (45)