説明

シェルフ構造体および無線基地局装置

【課題】効率のよい放熱が可能となり、装置の小型化に寄与し、かつ、経済性に優れた、シェルフ構造体および無線基地局装置を提供する。
【解決手段】シェルフ構造体100は、複数のプリント基板2と、側面の一部を開口した箱形のシェルフ1と、シェルフ1の上下の面の対向する位置の開口面に対して垂直方向に、プリント基板2を縦置きに支持するガイドレール3、4と、シェルフ1の上面のガイドレール3と平行方向に形成された放熱フィン5および開口部6と、プリント基板2をシェルフ1に固持する挟持部と、を備える。プリント基板2は、端部に電子集積回路部品からの熱を伝導する基板放熱部と、電子集積回路部品からの熱を伝導する放熱パターン層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルフ構造体および無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に取り付けられて回路を構成する集積回路等の電子部品で使用時に発熱が著しいものについては冷却する必要がある。また、集積回路等の電子部品はより小型化されたものが好まれるため、コンパクトであって、かつ、効率よく冷却することが求められる。小型化を目的とし、複数のプリント基板を備えるために、シェルフ型の容器に収納する方法が採られている。
【0003】
しかしながら部品の実装密度が大きくなるにつれて、効率よく冷却する必要がある。たとえば特許文献3のような、安価な構成で、発熱部に対して集中的に冷却を可能とするプリント板ユニットの技術が公開されている。その方法は、プリント板に搭載される発熱素子で発生する熱は、熱的に接続されるプリント板の反対面のアースパターンに伝熱し、アースパターンと接触するように配置された伝熱性の嵌合部材と、嵌合部材によって嵌合される伝熱部材を介して、バックワイヤードボードに備えられた放熱フィンに伝熱して放熱される仕組みである。
【0004】
また、特許文献1や特許文献2も同様に、プリント基板の組み立て品をシェルフの固定溝に配設すると共に複数枚のプリント基板をシェルフ内に並列収納している。また特許文献1では、収納の際に、バネを用いてプリント基板を伝導ブロックに圧接させ、放熱させている。特許文献2では、収納時のプリント基板の配置により通風性を考慮することで、放熱を行いやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−53295号公報
【特許文献2】特開平11−74666号公報
【特許文献3】特開2006−140291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
関連する技術において、放熱の効率化について改善が図られているが、装置が複雑となったり、コストがかかったり、また、備える装置に対して充分な放熱には至らない場合がある。
【0007】
また、より装置の小型化、高密度化が進み、さらなる放熱の効率化が求められている。それと同時に、低コスト化も重要な課題となっている。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、効率のよい放熱が可能となり、装置の小型化に寄与し、かつ、経済性に優れた、シェルフ構造体および無線基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係るシェルフ構造体は、
電子集積回路部品が実装されて、該電子集積回路部品から発生する熱を伝導する基板放熱部を端部に有するプリント基板と、
側面の一部を開口した箱形のシェルフと、
前記シェルフの上下の面の対向する位置に、前記開口した面に対して垂直方向に、少なくとも1以上の前記プリント基板を縦置きに支持するガイドレールと、
前記シェルフの上面に、前記ガイドレールと平行方向に形成された放熱フィンと、
前記ガイドレールに支持した状態で、前記基板を前記シェルフに固持する固持部と、
を備え、
前記シェルフは、該シェルフの上面に、長径が前記ガイドレールと平行な孔が形成され、
前記プリント基板は、前記電子集積回路部品から発生する熱を、該電気集積回路部品から前記基板放熱部に伝導する放熱パターン層を含む
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点に係る無線基地局装置は、
本発明の第1の観点に係るシェルフ構造体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率のよい放熱が可能となり、装置の小型化に寄与し、かつ、経済性に優れたシェルフ構造体および無線基地局装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す構成斜視図である。
【図2】実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。
【図3】実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。
【図4】プリント基板の一例を示す分解斜視図である。
【図5】プリント基板の一例を示す図であり、(a)は構成斜視図、(b)は概略平面図、(c)は構成断面図である。
【図6】実施の形態に係るシェルフ構造体の効果の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の変形例に係るシェルフ構造体の一例を示す構成斜視図である。
【図8】実施の形態の変形例に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す構成斜視図である。図2は、実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。図2は、図1のX−Y平面での断面を示す。図3は、実施の形態に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。図3は、図1のY−Z平面での断面を示す。
【0015】
大気中では、熱せられた空気は重力場の上方向に移動する。基板の発熱によってシェルフの中の空気は上に移動しようとするので、シェルフの上に孔を設けると、空気の対流が生じる。そのため、冷却効果が向上するので、一般的にはシェルフを図1のY方向が重力場の上方になるように向けて設置する。本発明においては、シェルフ構造体100を図1のY方向が重力場の上方になるように向けて設置する。
【0016】
シェルフ構造体100は、シェルフ1と複数のプリント基板2で構成される。シェルフ構造体100は、シェルフユニットやプリント基板ユニットなどで称されることがあるが、本発明において、シェルフ構造体100と称する。
【0017】
シェルフ1は、側面の一部を開口した箱下部11と、上部を開放した箱上部12とが一体形成された形状で構成される。シェルフ1の箱下部11の内部に、プリント基板2を収納する。
【0018】
箱下部11は、棚天井11a、棚床11b、バックボード11cおよびサイドプレート11dで形成される。箱上部12は、フロント部12a、上サイド部12b、上バック部12cで形成される。バックボード11cと上バック部12c、サイドプレート11dと上サイド部12b、の各々は連続して一体形成されていてもよい。
【0019】
シェルフ1の箱下部11は、バックボード11cおよびサイドプレート11dが、棚床11bより下方にはみ出して形成される。これは、シェルフ構造体100を配設したときに、シェルフ1と設置場所に間隙を設けることで、シェルフ1を介して、通風可能とするためである。
【0020】
シェルフ1の箱上部12は、箱上部12の上方は開放し、箱上部12の底面を箱下部11で覆われた四角筒形状で構成され、四方を側壁で覆う空間となっている。箱上部12は、筒形状の開口部の一方を箱下部11で覆われているが、箱下部11が通風可能となることで、箱上部12は、筒形状と同様に煙突効果を有し、空気の対流を促進させることができる。煙突効果を高めるために、箱上部12のフロント部12a、上サイド部12b、上バック部12cの各々は真っ直ぐ上方へ伸びることが好ましい。煙突効果は、長さは長い方が、断面積は広い方が効果を得られるが、シェルフ構造体1は小型であることが好ましく、長さは少なくとも放熱フィン5をこえる程度であればよく、また、断面積は箱下部11の棚天井11aと同程度とする。
【0021】
シェルフ構造体100は、シェルフ1に、複数のプリント基板2を一定間隔毎に多数枚並列させて固定し収納する。シェルフ1は、ガイドレール3、4、放熱フィン5、開口部6、7、挟持部(クリップ)9および固持部(コネクタ)10を備える。
【0022】
ガイドレール3、4は、プリント基板2を嵌合可能であり、シェルフ1の対向する位置に上下に備えられる。プリント基板2をシェルフ1に縦置きに収納したときに、プリント基板2がバックボード11c、棚天井11aおよび棚床11のそれぞれに垂直となるように、ガイドレール3は箱下部11の棚天井11aに、ガイドレール4は箱下部11の棚床11bに取付される。
【0023】
ガイドレール3、4は、鋼性や機械加工性に優れ、かつ、熱伝導率の高い素材で形成されており、プリント基板2はガイドレール3、4に接して嵌合する。プリント基板2がガイドレール3、4に接して嵌合することで、プリント基板2とガイドレール3、4が接する面積が増えて放熱経路が多くなり、プリント基板2が発する熱をガイドレール3、4へ伝導しやすくする。例えば、ガイドレール3、4は、アルミ、マグネシウム、クロムの合金からなるアルミ合金板(A5052P)や、鉄、クロムの合金からなるフェライト系ステンレス(SUS430)などを用いる。
【0024】
棚天井11aに設けられた切り起こしの、切り起こされた部分は放熱フィン5、欠いた部分は開口部6となる。先に棚天井11aに、切り起こしにより放熱フィン5および開口部6を形成しておき、開口部6を避けて、開口部6と平行にガイドレール3を備える。また、棚床11の、開口部6と対向する位置に、開口部7を形成する。
【0025】
棚天井11aを切り起こして放熱フィン5を一体形成することで、放熱フィン5への熱伝導を効率よく行うことができる。また、放熱フィン5と同時に開口部6を形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0026】
放熱フィン5は棚天井11aを切り起こさずに、別途形成して棚天井11aに備えてもよい。この場合は、棚天井11aに、長径がガイドレール3と平行になるようにして、開口部6も形成しておく。
【0027】
ガイドレール3と接して放熱フィン5が形成されることで、放熱するための表面積が増え、よりガイドレール3の放熱効率を高めることができる。ガイドレール3と放熱フィン5を熱抵抗が小さくなるように接続することで、より効率的に伝導し放熱することができる。
【0028】
また、対向する位置に形成された開口部6、7により、シェルフ1を介して通風が可能となり、周囲空気の熱伝達が生じ、空気の対流が促進され、放熱効率を向上させることができる。さらに、プリント基板2をシェルフ1へ収納したときに、プリント基板2の上下に開口部6、7が形成されるような形となり、開口部7からシェルフ1内へ入った空気は、プリント基板2に沿って流れ、対向する開口部6からシェルフ1の外へ出ていく。その結果、空気の対流が生じ、放熱効率を高めることができる。さらに、シェルフ1の箱上部12が筒形状に形成されており煙突効果を有するので、より効果的に空気の対流を促進させることができる。
【0029】
シェルフ1内を通り抜ける空気は、必ずしも、シェルフ1の棚床11bに形成された開口部7を通るとは限らず、シェルフ1の前面の開口面からシェルフ1内に流入する場合もある。この場合、シェルフ1前面からシェルフ1内へ入った空気は、シェルフ1を介して、開口部6からシェルフ1の外へ出ていくため、シェルフ1の棚床11bに開口部7を備えなくてもシェルフ1は通風機能を有することが可能となる。ただし、プリント基板2周辺に空気の対流を生じさせ、効率よく空気の対流を生じさせるためには、開口部6に対向する位置に、開口部6を備えておくことが好ましい。
【0030】
挟持部9および固持部10は、ガイドレール3、4で張られる平面とシェルフ1の開口した面に対向する面であるバックボード11cとが交わる部分の、バックボード11cに上下に並べて取付される。挟持部9はガイドレール3側に、固持部10はガイドレール4側に上下に並べて取付する。
【0031】
挟持部9は、シェルフ1のバックボード11cに取付され、少なくとも一部をガイドレール3と接する、もしくは、熱伝導率の高い部材を介してガイドレール3と機械的に接するようにしておく。具体的には、挟持部9は、溶着や、ネジ・リベットなどの締結部材でバックボード11cに締結され、シェルフ1を介して、ガイドレール3へ熱が伝導するようにしておく。挟持部9の一端をガイドレール3と溶着しておき、熱伝導への影響を最小限に留めてもよい。プリント基板2をシェルフ1へ収納したときに、挟持部9でプリント基板2を固持することができ、また、プリント基板2からシェルフ1へ向けて熱を伝導することができる。
【0032】
このとき、挟持部9は、例えば、ベリリウム銅などの金属の、バネ特性に優れたクリップなどを用いておく。挟持部9を熱抵抗の少ない部材で形成することで、挟持部9は、プリント基板2からガイドレール3への熱伝導の放熱経路としても機能し、放熱効果を向上させることができる。また、挟持部9をクリップ形状とすることで、容易にプリント基板2を挟持することができる。
【0033】
固持部10も挟持部9と同様にバックボード11cに取付され、プリント基板2を収納したときに、固持部10によりプリント基板2を締結し固持することができる。固持部10は、また、プリント基板2と固持部10を機械的に接続しており、バックボード11cを介して相互に電気的接続を得ることができる。
【0034】
挟持部9は、バックボード11cに取付せずに、直接シェルフ1に取付られていてもよい。具体的には、ガイドレール3、4で張られる平面の、バックボード11cとガイドレール3との間の、シェルフ1の棚天井11a部分に挟持部9を取付する。このとき、挟持部9とガイドレール3が接するように取付することで、挟持部9を介して、プリント基板2の熱を効率よくガイドレール3へ伝導することができる。具体的には、挟持部9は、溶着や、ネジ・リベットなどの締結部材で棚天井11a部分またはガイドレール3に取付することで、熱伝導への影響を最小限に留めることができる。
【0035】
本実施の形態に係るプリント基板について、図4および図5を用いて説明する。図4は、プリント基板の一例を示す分解斜視図である。図5は、プリント基板の一例を示す図であり、(a)は構成斜視図、(b)は概略平面図、(c)は構成断面図である。
【0036】
プリント基板2は、電子集積回路部品21が実装された多層からなる基板である。図4(a)は実装する電子集積回路部品21、図4(b)はベース基板2a、図4(c)は放熱パターン2b、図4(d)は回路パターン2cであり、図4(a)ないし図4(d)を、順に組み立ててプリント基板2を構成する。組み立てた完成品であるプリント基板2は、図5(a)および図5(b)に示す。
【0037】
ベース基板2aは、一端に、電子集積回路部品21から伝導された熱を集約する基板放熱部22、シェルフ1と電気的に接続するための基板接続部(コネクタ)23を備える。また、ベース基板2aは、放熱パターン2bと接続するためのサーマル・ビア24、および電子集積回路部品21と回路パターン2cを接続するための層間接続ビア25を備える。ベース基板2aは、表面は例えばシリコンなどの絶縁部材を塗布して形成された絶縁被膜であり、導体層である銅箔層20aと絶縁体層20bが多層で形成される。
【0038】
ベース基板2aの電子集積回路部品21が実装される面とは反対側の面に、放熱パターン2bと回路パターン2cを設ける。放熱パターン2bは、サーマル・ビア24によりベース基板2aと接続され、効果的に電子集積回路部品21から発生する熱を基板放熱部22へ伝導させることができる。また、放熱パターン2bは、電子集積回路部品21から発生する熱をガイドレール3、4へ伝導させる。
【0039】
回路パターン2cは、外部との信号のやりとりをするための外部インターフェースコネクタと接続する回路を備える。ベース基板2aに実装された電子集積回路部品21は、銅箔層20aおよび層間接続ビア25を介して、回路パターン2cと電気的に接続し、外部との信号のやりとりを行う。
【0040】
図5(c)は、プリント基板2の構成を部分的に示す断面図である。図示するように、放熱パターン2bは、基板放熱部22およびサーマル・ビア24と直接に接続させ、層間接続ビア25および層間接続ビア25と接続する回路パターン2cとは接しないように所定の間隙を設けておく。なお、図5(c)のように、放熱パターン2bと層間接続ビア25および層間接続ビア25と接続する回路パターン2cとを接しないように、プリント基板2を接続することで、静電気などの外乱の影響を受けにくい構造にすることができる。
【0041】
なお、図2では図示していないが、シェルフ1へプリント基板2を収納する際は、シェルフ1の挟持部9でプリント基板2の基板放熱部22を挟持するように接続することで、プリント基板2の熱をシェルフ1へ向けて効果的に伝導することが可能となる。また、図2では図示していないが、シェルフ1の固持部10とプリント基板2の基板接続部23を接続させ、確実にシェルフ1とプリント基板2を電気的に接続させておく。このとき、基板接続部23は、シェルフ1とプリント基板2を電気的だけでなく、機械的に接続可能であってもよい
【0042】
図1ないし図6を参照して、実施の形態に係るシェルフ構造体の効果について説明する。図6は、実施の形態に係るシェルフ構造体の効果の一例を示す概略断面図である。
【0043】
なお、プリント基板2の電子集積回路部品21が発生する熱と、その周囲の空気との温度差には以下の式が成り立つ。
(温度差)=(部品の消費電力)/(放熱面積 × 熱伝達率)
ここでの熱伝達率とは、空気の対流の促進度合いをいう。
【0044】
プリント基板2の電子集積回路部品21に発生した熱は、図6の点線矢印で示すように、電子集積回路部品21側の面に接続したサーマル・ビア24を介して基板放熱部22に伝導する。また、同時に、同図中の一点鎖線矢印で示すように、電子集積回路部品21に発生した熱は、サーマル・ビア24および放熱パターン2bを介して基板放熱部22に伝導する。さらに、同図中の中白抜き矢印で示すように、電子集積回路部品21に発生した熱は、放熱パターン2bを介してガイドレール3、4、棚天井11aおよび棚床11bに伝導する。
【0045】
同図中の黒矢印で示すように、ガイドレール3、4、棚天井11aおよび棚床11bに伝導した熱の一部は、そのままシェルフ1の外部へ向けて放熱し、シェルフ構造体100の冷却を行う。
【0046】
また、同図中の斜線模様の矢印で示すように、基板放熱部22に伝導した熱は、挟持部9を介して、ガイドレール3および棚天井11aへ向けて伝導する。挟持部9とガイドレール3が接続する場合は直接に、また、熱伝導率の高い材料を介して機械的に接続する場合は、その部材を介して、熱伝導が行われる。なお、挟持部9を介して、ガイドレール3および棚天井11aへ向けて伝導した基板放熱部22の熱の一部も、同図中の黒矢印で示すように、そのままシェルフ1の外部へ向けて放熱し、シェルフ構造体100の冷却を行う。
【0047】
ガイドレール3および棚天井11aへ向けて伝導した熱の大部分は、同図中の黒矢印で示すように、放熱フィン5を介して放熱される。プリント基板2の電子集積回路部品21が発生する熱とその周囲の空気との温度差の関係式より、放熱フィン5の表面積が大きいほど、温度差を小さくし、効率よく冷却することができる。
【0048】
また、プリント基板2は、シェルフ1の棚天井11a側の、基板放熱部22を備える上方に熱が伝導しやすい構造のため、プリント基板2からシェルフ1へ熱伝導した場合に、棚天井11aが棚床11bより温度が高くなる。並列するプリント基板2に挟まれた空間内に温度差が生じ、結果として棚床11b側の開口部7から棚天井11a側の開口部6へ向けて、シェルフ1内に空気の対流が生じ、放熱効果を高める。
【0049】
さらに、シェルフ1を介して下方から上方へ対流した空気は、シェルフ1上部、すなわち箱上部12の煙突効果により、空気の対流が促進される。また、箱上部12の内部に放熱フィン5を備えるため、空気の対流を促進することで、放熱効果を高めることができる。このようにして、シェルフ1のガイドレール3、棚天井11aおよび放熱フィン5の放熱を効率よく行うことができるので、シェルフ構造体100を効率よく冷却することができる。
【0050】
なお、箱上部12の煙突効果により、シェルフ構造体100における空気の対流を促進させることができるので、ファンなどの強制空冷装置を備えなくてもよく、シェルフ構造体100の小型化や、経済性および生産性の向上に寄与する。また、ファンなどの強制空冷装置を用いないので、装置の発生音を小さくでき、騒音を低減したシェルフ構造体100を実現することができる。
【0051】
(実施の形態の変形例)
図7は、本発明の実施の形態の変形例に係るシェルフ構造体の一例を示す構成斜視図である。図8は、実施の形態の変形例に係るシェルフ構造体の一例を示す概略断面図である。図8は、図7のY−Z平面での断面を示す。本発明の実施の形態の変形例に係るシェルフ構造体101は、実施の形態に係るシェルフ構造体100の、箱上部12の開口を覆うようにして、箱上部12に強制空冷装置(ファン)8を備え、強制的に空気の対流を生じさせることで、効率よく冷却することができる。
【0052】
本発明に係るシェルフ構造体101を用いることで、箱上部12側への熱の伝導を高めることができ、その熱が伝導する箇所を強制空冷装置8で直接冷却することで、効率よく放熱させることができる。特に、プリント基板2に、放熱パターン2bおよび基板放熱部22を設けることで、電子集積回路部品21で生じる熱を効果的にプリント基板2からシェルフ1へ伝導させやすく、さらに放熱フィン5を備えることで表面積が大きくなり放熱しやすくなるので、シェルフ構造体101を直接冷却したときに、冷却の効果が得られやすい。
【0053】
なお、シェルフ構造体101は、空気の対流を促進させる効果を有するシェルフ構造体100を用いているので、シェルフの上面に単に孔を開けただけの構造で強制空冷する場合より、強制空冷装置8の能力が小さくても、シェルフ構造体101の冷却効果を充分に得ることができる。そのため、強制空冷装置8を小型化したり、稼働を低減させることができ、シェルフ構造体101の小型化や騒音の低減が可能となる。
【0054】
以上、説明したように、本発明に係るシェルフ構造体によれば、効率のよい放熱が可能となり、装置の小型化に寄与し、かつ、経済性に優れたものを提供することができる。
【0055】
シェルフの上部に筒形状の側壁を形成することで、煙突効果により、空気の対流を促進できる。その結果、熱伝達率が向上し、シェルフ構造体を効率よく放熱させ冷却することができ、シェルフ構造体の小型化や、構造の簡易化、経済性の向上につながる。さらに、条件によっては、ファンを用いなくても必要な冷却効果を得ることができ、少なくともファンの能力を小さくできるので、騒音を低減できる。
【0056】
プリント基板を、放熱パターン層を間に備える多層からなるプリント基板とすることで、電子集積回路部品で生じる熱を効果的にプリント基板からシェルフへ伝導させることができる。また、放熱フィンを備えることで表面積が大きくなり放熱しやすくなるので、効率よくシェルフ構造体を冷却することができる。
【0057】
なお、電子集積回路部品を実装したプリント基板が実装された無線基地局装置を、本発明に係るシェルフ構造体を用いて構成することができる。本発明に係るシェルフ構造体を用いることで、電子集積回路部品が高集積化したプリント基板を実装することができ、無線基地局装置を小型化することができる。また、高速化を可能とする電子集積回路部品を用いたり、電子集積回路部品の高集積化により、プリント基板の発熱量の増大を伴う場合であっても、効率よく放熱が可能となり、冷却することができるので、小型化かつ高性能化した無線基地局装置を提供することができる。また、無線基地局装置にファンを備えなくてもよいので、装置音などによる騒音の低減が可能となる。
【0058】
上述したプリント基板の構造は一例であり、電子集積回路部品の配置や、多層の層構成などは任意に設定可能である。また、プリント基板は、片面実装に限らず、両面実装でもよく、放熱パターン層を間に備える多層からなる基板であればよい。
【0059】
上述したシェルフ構造体の構造は一例であり、シェルフ構造体に備えるプリント基板の数や、並列の間隔など、任意に設定可能である。また、シェルフ構造体の、シェルフに備えた放熱フィンは、平面形状に限らず、凹凸を有した形状、例えば複数枚の放熱フィンを形成しており表面積の大きな形状であってもよい。
【0060】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0061】
(付記1)
電子集積回路部品が実装されて、該電子集積回路部品から発生する熱を伝導する基板放熱部を端部に有するプリント基板と、
側面の一部を開口した箱形のシェルフと、
前記シェルフの上下の面の対向する位置に、前記開口した面に対して垂直方向に、少なくとも1以上の前記プリント基板を縦置きに支持するガイドレールと、
前記シェルフの上面に、前記ガイドレールと平行方向に形成された放熱フィンと、
前記ガイドレールに支持した状態で、前記基板を前記シェルフに固持する固持部と、
を備え、
前記シェルフは、該シェルフの上面に、長径が前記ガイドレールと平行な孔が形成され、
前記プリント基板は、前記電子集積回路部品から発生する熱を、該電気集積回路部品から前記基板放熱部に伝導する放熱パターン層を含む
ことを特徴とするシェルフ構造体。
【0062】
(付記2)
前記シェルフは、該シェルフの下面に、長径が前記ガイドレールと平行な孔が形成されることを特徴とする付記1に記載のシェルフ構造体。
【0063】
(付記3)
前記放熱フィンは、前記シェルフの上面の前記ガイドレールと一体形成されることを特徴とする付記1または2に記載のシェルフ構造体。
【0064】
(付記4)
前記プリント基板の前記基板放熱部を挟持し、該プリント基板を前記シェルフに固持し、かつ、前記ガイドレールを介して、該基板放熱部の熱を前記放熱フィンへ伝導させる挟持部を備えることを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載のシェルフ構造体。
【0065】
(付記5)
前記挟持部は、前記ガイドレールと少なくとも一部を接し、または、熱伝導補助部を介して前記ガイドレールと機械的に接し、前記シェルフに溶着または締結部材で接続されることを特徴とする付記4に記載のシェルフ構造体。
【0066】
(付記6)
前記シェルフの上方であって、前記放熱フィンの周辺部に、少なくとも前記放熱フィンの高さを越え、該放熱フィンの四方を囲み、上部を開放した側壁を備えることを特徴とする付記1ないし5のいずれかに記載のシェルフ構造体。
【0067】
(付記7)
前記プリント基板は、前記電子集積回路が実装されている面と前記放熱パターン層を接続し、熱伝導させるサーマル・ビアを備えることを特徴とする付記1ないし6のいずれかに記載のシェルフ構造体。
【0068】
(付記8)
前記放熱フィンは、前記シェルフの上面を切り起こして形成されることを特徴とする付記1ないし7のいずれかに記載のシェルフ構造体。
【0069】
(付記9)
前記側壁に囲まれた空間の前記シェルフの上面に強制空冷装置を備えることを特徴とする付記1ないし8のいずれかに記載のシェルフ構造体。
【0070】
(付記10)
付記1ないし9のいずれかに記載のシェルフ構造体を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【符号の説明】
【0071】
1 シェルフ
2 プリント基板
2a ベース基板
2b 放熱パターン
2c 回路パターン
3、4 ガイドレール
5 放熱フィン
6、7 開口部
8 強制空冷装置(ファン)
9 挟持部(クリップ)
10 固持部(コネクタ)
11 箱下部
11a 棚天井
11b 棚床
11c バックボード
11d サイドプレート
12 箱上部
12a フロント部
12b 上サイド部
12c 上バック部
20a 銅箔層
20b 絶縁体層
21 電子集積回路部品
22 基板放熱部
23 基板接続部(コネクタ)
24 サーマル・ビア
25 層間接続ビア
100、101 シェルフ構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子集積回路部品が実装されて、該電子集積回路部品から発生する熱を伝導する基板放熱部を端部に有するプリント基板と、
側面の一部を開口した箱形のシェルフと、
前記シェルフの上下の面の対向する位置に、前記開口した面に対して垂直方向に、少なくとも1以上の前記プリント基板を縦置きに支持するガイドレールと、
前記シェルフの上面に、前記ガイドレールと平行方向に形成された放熱フィンと、
前記ガイドレールに支持した状態で、前記基板を前記シェルフに固持する固持部と、
を備え、
前記シェルフは、該シェルフの上面に、長径が前記ガイドレールと平行な孔が形成され、
前記プリント基板は、前記電子集積回路部品から発生する熱を、該電気集積回路部品から前記基板放熱部に伝導する放熱パターン層を含む
ことを特徴とするシェルフ構造体。
【請求項2】
前記シェルフは、該シェルフの下面に、長径が前記ガイドレールと平行な孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載のシェルフ構造体。
【請求項3】
前記放熱フィンは、前記シェルフの上面の前記ガイドレールと一体形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のシェルフ構造体。
【請求項4】
前記プリント基板の前記基板放熱部を挟持し、該プリント基板を前記シェルフに固持し、かつ、前記ガイドレールを介して、該基板放熱部の熱を前記放熱フィンへ伝導させる挟持部を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシェルフ構造体。
【請求項5】
前記挟持部は、前記ガイドレールと少なくとも一部を接し、または、熱伝導補助部を介して前記ガイドレールと機械的に接し、前記シェルフに溶着または締結部材で接続されることを特徴とする請求項4に記載のシェルフ構造体。
【請求項6】
前記シェルフの上方であって、前記放熱フィンの周辺部に、少なくとも前記放熱フィンの高さを越え、該放熱フィンの四方を囲み、上部を開放した側壁を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシェルフ構造体。
【請求項7】
前記プリント基板は、前記電子集積回路が実装されている面と前記放熱パターン層を接続し、熱伝導させるサーマル・ビアを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシェルフ構造体。
【請求項8】
前記放熱フィンは、前記シェルフの上面を切り起こして形成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のシェルフ構造体。
【請求項9】
前記側壁に囲まれた空間の前記シェルフの上面に強制空冷装置を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のシェルフ構造体。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のシェルフ構造体を備えることを特徴とする無線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243798(P2012−243798A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109379(P2011−109379)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】