説明

シクロヘキサンの触媒酸化

本発明は、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物を製造する方法に関する。本発明に従って、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物は、少なくとも1.2のシクロヘキサノン/シクロヘキサノールのモル比およびシクロヘキサン転化率5モル%未満で製造される。この方法は、液相中でシクロヘキサンを酸化する工程を含み、前記酸化は、コバルト化合物およびクロム化合物によって触媒され、コバルトとクロムの原子比は、0.05〜0.8の範囲にあり、コバルトとクロムの濃度の合計は、反応混合物の全重量に対して0.05〜0.9重量ppmであり、かつコバルト化合物およびクロム化合物は、液相に溶解される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物を製造する方法に関する。
【0002】
シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンは、シクロヘキサンから工業的に製造することができる。かかるプロセスの最初の工程は、シクロヘキサノール、シクロヘキサノンおよびシクロヘキシルヒドロペルオキシドを製造するための、酸素含有ガスによるシクロヘキサンの酸化である。シクロヘキサノール(A)とシクロヘキサノン(K)の混合物は一般に、「KA」と呼ばれる。従来から、この最初の工程において、シクロヘキサンは、液相において空気で酸化される。この酸化は通常、工業的規模で、触媒されない状態で、または可溶性コバルト触媒を用いて、1つまたは複数の反応器内で範囲130〜200℃の温度にて行われる。ガス状排出物中の気化されたシクロヘキサンおよび他の生成物を凝縮し、回収し、そのオフガスがシステムから出る。KA生成物は、反応器からの液状排出物から回収され、未反応シクロヘキサンは再循環される(Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,John−Wiley & Sons,New York,1979,3rd Edition,Vol.7,pp.410−416およびUllmanns,Encyklopadie der technischen Chemie,Verlag Chemie,Weinheim,1975,4th Edition,Vol.9,pp.689−698)。
【0003】
シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールから本質的になる生成物を生成するために、コバルトおよびクロムの二元触媒システムの存在下にて、シクロヘキサンを酸化するプロセスは、米国特許第3987100号明細書から公知である。シクロヘキサンが酸化される工程に関して開示されている、コバルトとクロムの比のみが、好ましい実施形態(実施例,表2)にあり、コバルト濃度0.1ppm、クロム濃度0.04ppmと記載されており、それはコバルトとクロムの原子比2.2に相当する。したがって、クロムよりも常に多くのコバルトが存在する。さらに、コバルトとクロムの比が酸化プロセスに影響を与えるかどうかは明記されていない。
【0004】
米国特許第3598869号明細書には、コバルトおよびクロムの群のうちの少なくとも1種類の触媒の存在下にてナイロン塩へとさらに転化するために、シクロヘキサンを酸化して、COP酸とKAの特に適切な比で、(a)シクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物(KA)および(b)シクロヘキサンのカルボン酸誘導体の混合物(COP酸)を得るプロセスが記載されている。触媒濃度は、金属として計算された1ppm〜200ppm、またはそれ以上である。好ましい実施形態では、クロムを使用し、コバルトは使用しない。さらに、この文書には、約14〜30モル%など、高いシクロヘキサン転化率が開示されていることが注目される。
【0005】
欧州特許出願公開第A−0063931号明細書は、コバルト化合物とクロム化合物との組み合わせを含む酸化触媒の存在下にて、分子酸素含有ガスを炭素原子5〜12個のシクロパラフィンに導入する工程を含む、液体シクロパラフィンをその部分酸化生成物へと触媒酸化するプロセスであって、前記酸化触媒がシクロパラフィンに可溶性であり、前記コバルト化合物が、ジアルキルホスフェート、ジシクロアルキルホスフェートおよびアルキルシクロアルキルホスフェート、およびその混合物からなる群から選択される配位子を有し、コバルト化合物とクロム化合物との比が、原子比で1:1を超える、プロセスに関する。これは、クロムよりもコバルトが多く存在することを意味する。
【0006】
SU−A−929213には、純粋なシクロヘキサンを酸化するための触媒が記載されている。異なるコバルトとクロムの比(それぞれ、ナフテネート38%対62%;23%対77%)を用いた2つの実験が示されているが、どちらの実験も実質的に同じ選択性を示す。さらに、反応媒体におけるコバルトとクロムの合計濃度は、これらの実験それぞれにおいて1重量ppmであり、シクロヘキサンの転化率は、5モル%を超える。さらに、最も高いK/A比は1.05である。
【0007】
シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物を製造する新規なプロセスであって、目的の生成物、つまりシクロヘキシルヒドロペルオキシド、シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンに対して向上した選択性を有し、同時に先行技術に記載のプロセスと比較して高モルのシクロヘキサノン/シクロヘキサノール比(K/A比)が得られるプロセスを提供することが本発明の目的である。本明細書で使用される「選択性」という用語の正確な定義は以下に記載する。
【0008】
本発明に従って達成される1つまたは複数の目的は、以下の説明および/または特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0009】
特定の形態の触媒コバルトおよび特定の形態の触媒クロムの存在下にて、シクロヘキサンを酸化し、特定の比で特定の条件下にて前記触媒を用いることによって、前記の目的のうちの少なくとも1つを満たすことが可能であることが分かった。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも1.2のシクロヘキサノン/シクロヘキサノールモル比で、かつ5モル%未満のシクロヘキサン転化率で、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物を目的の生成物に対して高い選択性で製造する方法であって、液相中でシクロヘキサンを酸化する工程であって、前記酸化が、コバルト化合物およびクロム化合物によって触媒され、コバルトとクロムの原子比が0.05〜0.8の範囲であり、コバルトとクロムの濃度の合計が、反応混合物の全重量に対して0.05〜0.9重量ppmであり、かつコバルト化合物およびクロム化合物が液相に溶解される工程を含む、方法に関する。
【0011】
本発明者らは、特定のコバルトクロム触媒がシクロヘキサン転化率5モル%未満で用いられる本発明のプロセスは有利なことに、特定の転化率レベル(例えば3モル%または4モル%)で、K/Aの高い値と先行技術のプロセスで達成されるよりも高い選択性の両方を達成することを可能にすることを見出した。これに関して選択性は、転化されたシクロヘキサンの総量(モル)で割られた目的の生成物(シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、およびシクロヘキシルヒドロペルオキシド)の総量(モル)として定義される。さらに、本発明のプロセスでは同時に、有利に高いK/A比(例えば、K/Aモル比1.2以上、またはさらにK/Aモル比1.4以上)が得られる。残存するシクロヘキサノールを最終生成物のシクロヘキサノンへと後に転化する必要性が最小限に抑えられることから、高いK/A比が望ましい。K/A比は例えば、1.6と高い比であることができる。
【0012】
本発明のプロセスで使用される触媒は、コバルト化合物とクロム化合物の組み合わせである。この文脈で使用される「化合物」という用語には、錯体、塩等が含まれる。コバルト化合物において、コバルトは、コバルト(II)またはコバルト(III)として存在する。溶解性に関しては、コバルトがコバルト(II)として存在する化合物が好ましい。クロム化合物において、クロムは、クロム(III)として、またはそれより高い酸化状態で存在する。実際には、クロムは通常、クロム化合物においてクロム(III)として存在する。
【0013】
適切には、コバルト化合物および/またはクロム化合物は、ポルフィリン、フタロシアニン、1,3−ビス(アリールイミノ)イソインドリン、シッフ塩基、水酸化物、カルボキシレート(アセテート、プロパノエート、ブチレート、オクタノエート、ベンゾエート、ナフテネート、およびステアレート)、ピコリネート、アセチルアセトネートおよび他のβ−ジケトン、1,3−ビス(アリールイミノ)イソインドリネート、サレン、サレフ(saleph)、ポルフィリネート、ポルフィセネート、ポルフェネート、フタロシアネート、ビピリジン、ターピリジン、フェナントロリン、ジチオカルバメート、ザンテート、サリチルアルジミン、シクラム、ジオキソシクラム、ピラゾイルボレート、およびテトラアザ大環状化合物から選択される1つまたは複数の配位子を含み得る。特に、コバルト化合物および/またはクロム化合物は、アセチルアセトネート、オクタノエート、ナフテネート、ビピリジン、ポルフィリネート、およびフタロシアネートからなる群から選択される1つまたは複数の配位子を含み得る。コバルト化合物および/またはクロム化合物が1つまたは複数のリガンドを含む場合には、その1つまたは複数のリガンドは過剰に存在し得る。
【0014】
本発明のプロセスにおいて、シクロヘキサンの酸化触媒におけるコバルトとクロムの原子比は、0.05〜0.8の範囲にある。詳細には、コバルトとクロムの比は、0.1〜0.5の範囲、さらに詳細には0.15〜0.35の範囲にあることができる。触媒におけるコバルトとクロムの原子比は、高い選択性と共に高いK/A比を有する生成物を得るのに特に重要である。コバルトとクロムの原子比が0.8を超える場合、かつ/または総金属濃度が0.9ppmより高い場合には、K/A比または選択性のいずれかがかなり低下することが判明した。一方、コバルトの量が低くなりすぎた場合には、触媒におけるコバルトとクロムのかかる原子比は0.05より低くなり、K/A比は高い状態のままであるが、選択性は低すぎる値(例えば、それぞれ、転化率3モル%で86%未満;転化率4モル%で84%未満)に低下する。
【0015】
さらに、コバルト化合物およびクロム化合物は液相に溶解される。これは、コバルト/クロム触媒が均一系触媒であることを意味する。有利な実施形態において、本発明のシクロヘキサン酸化プロセスは、均一系触媒プロセスである。
【0016】
一般にコバルトとクロムの濃度合計の減少値にて、範囲0.05〜0.8のコバルトとクロムの原子比にて、かつ3モル%から5モル%直前までの範囲の転化率にて、選択性および/またはK/A比が増加することが判明した。コバルトとクロムの総濃度の最適値は、0.05〜0.9ppmの範囲である。
【0017】
したがって、本発明によれば、コバルトとクロムの濃度の合計は、反応混合物の全重量に対して0.05〜0.9(重量)、詳細には0.1〜0.7重量ppm、さらに詳細には0.2〜0.6重量ppm、とりわけ約0.5ppmである。
【0018】
酸化反応中のコバルト濃度は適切には、反応混合物全体に対して0.01〜0.4重量ppm、詳細には0.05〜0.2重量ppmであり得る。酸化反応中のクロム濃度は適切には、反応混合物全体に対して0.04〜0.8重量ppm、詳細には0.1〜0.5重量ppmであり得る。環境面ならびに汚染問題を減らすことを考慮すると、このように少ない量のコバルトおよびクロムは有利である。さらに、これらの比較的少ない量の触媒によって依然として、許容可能な滞留時間で十分に高い転化率(例えば、2モル%〜5モル%直前まで)が得られることが判明した。
【0019】
本発明のプロセスは、5モル%未満、詳細には2.5〜4.5モル%、さらに詳細には3〜4モル%のシクロヘキサン転化率を有する。転化率は、酸化反応器における反応生成物の滞留時間によって大きく影響を受け得る。5モル%以上の転化率で選択性が急速に低下するため、5モル%未満のシクロヘキサン転化率は有利である。2.5モル%未満の転化率、詳細には2モル%未満の転化率では、気化されるシクロヘキサンの量はむしろ多くなる。
【0020】
本発明のシクロヘキサン酸化は適切には、1つまたは複数の酸化反応器(3〜8個など)を含む反応器で行われ得、そのシステムは好ましくは、直列の複数の反応器、例えば直列の複数のCSTR(連続攪拌タンク反応器)または直列の複数のバブルカラムなどの栓流特性を有する。通常、反応温度は少なくとも130℃、詳細には少なくとも140℃である。温度が高いほど、シクロヘキシルヒドロペルオキシドの分解が多くなり、選択性が低下するため、反応温度が180℃、詳細には170℃を超えるのは好ましくない。反応中の温度および圧力に応じて、滞留時間は通常、1〜120分の範囲、例えば5〜90分、詳細には10〜60分の範囲である。
【0021】
適切に精製した後(多くの蒸留工程を通常含む)、シクロヘキサノン/シクロヘキサノール混合物はアジピン酸の製造に使用され得る。さらに、得られた混合物からシクロヘキサノンを適切に単離した後、単離されたシクロヘキサノンは、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタムおよびナイロンの製造に使用され得る。
【0022】
本発明は、以下の実施例および比較例によってさらに実証される。実験的部分では、以下の略語が用いられる:
acac:アセチルアセトネート
EH:しばしばオクタノエートとも呼ばれる2−エチルヘキサノエート
CH:シクロヘキサン
NL/hr:1時間当たりの標準リットル
【0023】
[実施例]
[比較例A]
シクロヘキサン酸化プラントで使用されるシクロヘキサン供給材料(以降、「CH供給材料」と呼ばれる)96.26g、ビフェニル(内標準)1.0326g、およびシクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.1673g(Cr249.9ppm)の混合物をハステロイ(Hastelloy)供給バッチ反応器に入れた。この比較例では、CH供給材料において濃度0.43ppmでクロムのみを使用した。Nでシステムに10〜11バールまで圧力をかけ、速度1300rpmで攪拌しながら窒素フロー30NL/h下にて156℃まで加熱した。反応温度にて、窒素フローをN中O14%の30NL/hフローに変更した。試料を一定の間隔で採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。反応中、オフガスにおいてCOおよびCOを継続的にモニターした。
【0024】
[比較例B]
CH供給材料97.80g、ビフェニル(内標準)1.0090g、およびシクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.3364g(Cr249.9ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、CH供給材料において濃度0.86ppmでクロムのみを使用した。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0025】
[比較例C]
CH供給材料98.20g、ビフェニル(内標準)1.0254g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.34901g(Cr249.9ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.67525g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.88ppmおよび1.02ppmであり、Co/Cr原子比は1.02であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0026】
[比較例D]
CH供給材料96.97g、ビフェニル(内標準)1.0880g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.9147g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.6716g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.57ppmおよび0.35ppmであり、モル比は1.60であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0027】
[比較例E]
CH供給材料99.21g、ビフェニル(内標準)1.0002g、シクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.0389g(Co637ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、CH供給材料において濃度0.25ppmでコバルトのみを使用した。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0028】
[比較例F]
CH供給材料98.85g、ビフェニル(内標準)1.0074g、シクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.33g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、CH供給材料において濃度0.50ppmでコバルトのみを使用した。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0029】
[比較例G]
CH供給材料95.66g、ビフェニル(内標準)1.0186g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.1798g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.1716g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.75ppmおよび0.27ppmであり、モル比は0.32であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0030】
[比較例H]
CH供給材料101.90g、ビフェニル(内標準)1.0345g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.086g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.2130g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.65ppmおよび0.31ppmであり、モル比は0.42であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0031】
[比較例I]
CH供給材料99.85g、ビフェニル(内標準)1.2357g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液7.849g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.725g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この比較例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ4.4ppmおよび1.0ppmであり、モル比は0.2であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0032】
[実施例1]
CH供給材料95.52g、ビフェニル(内標準)1.0189g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.74260g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.10880g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.47ppmおよび0.07ppmであり、モル比は0.13であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0033】
[実施例2]
CH供給材料96.02g、ビフェニル(内標準)1.0041g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.6913g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.16721g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.44ppmおよび0.26ppmであり、モル比は0.52であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0034】
[実施例3]
CH供給材料101.02g、ビフェニル(内標準)1.4460g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.10698g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.0629g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.66ppmおよび0.09ppmであり、モル比は0.12であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0035】
[実施例4]
CH供給材料97.82g、ビフェニル(内標準)0.9932g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.10045g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.09878g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.68ppmおよび0.15ppmであり、モル比は0.19であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0036】
[実施例5]
CH供給材料96.00g、ビフェニル(内標準)1.0330g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.0675g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.06899g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.67ppmおよび0.10ppmであり、モル比は0.13であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0037】
[実施例6]
CH供給材料93.70g、ビフェニル(内標準)1.0192g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液0.7500g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.01931g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.48ppmおよび0.03ppmであり、モル比は0.06であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0038】
[実施例7]
CH供給材料95.73g、ビフェニル(内標準)0.9900g、シクロヘキサン中のCr(acac)の溶液1.13181g(Cr60.52ppm)、およびシクロヘキサン中のCo(EH)の溶液0.0236g(Co149ppm)の混合物を比較例Aと同じ反応器に入れた。この実施例では、使用されたクロムおよびコバルト濃度は、CH供給材料中でそれぞれ0.72ppmおよび0.04ppmであり、モル比は0.05であった。比較例Aと同じ条件を用いて、同じ方法で、反応を行った。
【0039】
上記のすべての比較例および実施例において、転化率および選択性を決定するために分析され、含まれる主要生成物は:
シクロヘキシルヒドロペルオキシド(CHHP)
シクロヘキサノン
シクロヘキサノール
アジピン酸
ヒドロキシカプロン酸
カプロン酸
吉草酸
酪酸
ペンタノール
ブタノール
カプロラクトン
ギ酸
CO
CO
【0040】
3つの異なる転化レベル(利用可能な一連の実験データから補間することによって得られる、3モル%、4モル%、および5モル%)について、上記の実施例および比較例で得られた結果を以下の表1〜3に示す。転化レベル5モル%での結果はすべて、比較例の結果である。
【0041】
【表1】



【0042】
【表2】



【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相中でシクロヘキサンを酸化する工程を含む、少なくとも1.2のシクロヘキサノン/シクロヘキサノールのモル比およびシクロヘキサン転化率5モル%未満で、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンを含む混合物を製造する方法であって、前記酸化が、コバルト化合物およびクロム化合物によって触媒され、コバルトとクロムの原子比が、0.05〜0.8の範囲であり、かつコバルトとクロムの濃度の合計が、反応混合物の全重量に対して0.05〜0.9重量ppmであり、かつ前記コバルト化合物および前記クロム化合物が前記液相中に溶解される、方法。
【請求項2】
前記コバルト化合物が、アセチルアセトネート、オクタノエート、ナフテネート、ビピリジン、ポルフィリネート、およびフタロシアネートの群から選択される少なくとも1つの配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロム化合物が、アセチルアセトネート、オクタノエート、ナフテネート、ビピリジン、ポルフィリネート、およびフタロシアネートの群から選択される少なくとも1つの配位子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
コバルトとクロムの前記原子比が、0.1〜0.5の範囲、詳細には0.15〜0.35の範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コバルトとクロムの濃度の前記合計が、前記反応混合物の全重量に対して0.1〜0.7重量ppm、詳細には0.2〜0.6重量ppmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コバルト濃度が、前記反応混合物の全重量に対して0.01〜0.4重量ppm、詳細には0.05〜0.2重量ppmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロム濃度が、前記反応混合物の全重量に対して0.04〜0.8重量ppm、詳細には0.1〜0.5重量ppmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シクロヘキサン転化率が、2.5〜4.5モル%、詳細には3〜4モル%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512225(P2012−512225A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541352(P2011−541352)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066919
【国際公開番号】WO2010/069870
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】