説明

シクロヘキシルメチルホスホナート誘導体

【課題】(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン誘導体を効率的に製造する方法及び該製造法に有用な中間体を提供すること。
【解決手段】一般式(III)で表されるシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体に、一般式(IV)で表されるアルデヒドを強塩基条件下反応させることにより、(E)-1,2-ビス(シクロヘキシル)エチレン誘導体を製造することが出来る。




[式中、R1はアルキル基等を、Aは弗素化されていても良いフェニレン基を、Yは弗素原子等を、n,o,pは整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料の製造中間体として有用な、シクロヘキシルメチルホスホナート誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。これに用いられる液晶材料として、正又は負の誘電率異方性を有する液晶材料が電場応答する為に必須であるが、併せて応答速度を向上させる等のため、組成物の粘性を下げる働きを有する液晶材料(減粘剤)を用いることが一般的である。減粘剤には同時に優れた液晶性を有することが求められているが、(E)-1,2-ビス(シクロヘキシル)エチレン誘導体はこの目的のために極めて有用である(非特許文献1参照)。その製造法については、幾つかが知られている(特許文献1、特許文献2及び非特許文献2参照)。しかしながら、これらの製造方法は必ずしも実用的なものではない。例えば特許文献1及び特許文献2では、(Z)-体を過酸化物で酸化し、次いでジブロモトリフェニルホスホランで臭素化した後、亜鉛で還元することによって(E)-体を得ているが、その収率は低い。また、非特許文献2では、1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エタン-1,2-ジケトンをジヒドラゾンとし、これを1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)アセチレンに変換した後、これを還元することによって(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン誘導体を得ているが、毒性の高いヒドラジン及びヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)を用いている他、発火性の金属リチウムを用いており、実用的なものではない。一方、実用的な製造法として、(Z)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン誘導体を異性化することによる製造方法が知られているが、工程数が多いという問題があった (特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−92924号公報(19頁)
【特許文献2】特許第3418398号公報(5頁)
【特許文献3】特許公開2006−89432号公報
【非特許文献1】液晶 第1巻 第一号 19頁(1997年)
【非特許文献2】Chemiker−Zeitung, 104, p.269(1980年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン誘導体を製造する上で有用な製造中間体を提供し、併せて当該化合物の効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シクロヘキシルメチルホスホナート誘導体とアルデヒドによるHorner-Wadsworth-Emmons型反応を行い、得られた付加生成物から加熱によりリン酸ジエステルを脱離させることにより、(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン誘導体が高選択的に得られ、煩雑な異性化処理を省略した短工程で合成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の製造方法及び製造中間体を提供する。すなわち、一般式(I)
【0006】
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、nは1又は2を表し、Xは塩素、臭素、よう素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基又はトリフロオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)で表される化合物に、一般式(II)
【0007】
【化2】

(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)で表される化合物を塩基条件下反応させ、一般式(III)
【0008】
【化3】

【0009】
(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、nは1又は2を表す。)で表される化合物の製造方法及び当該化合物を提供するとともに、一般式(III) で表される化合物に、一般式(IV)
【0010】
【化4】

【0011】
(式中、o及びpはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、1≦o+p≦3であり、Aはフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、Yはフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を強塩基条件下に反応させることによる一般式(V)
【0012】
【化5】

【0013】
(式中、nは0、1又は2を表し、o及びpはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、1≦o+p≦3であり、Aはフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、Yはフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法により(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン構造を有する液晶性化合物を製造するために有用なシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体を効率的に製造可能である。本願発明のシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体を用いることにより、E型の2重結合を高選択的に形成可能で、煩雑な異性化処理を省略した短工程で(E)-1,2-ビス(トランス-4-アルキルシクロヘキシル)エチレン構造を有する液晶性化合物を簡便且つ効率的に製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明について詳細に説明する。
一般式(I)においてR1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、具体的には−CH2CH3、−(CH2)2CH3、−(CH2)3CH3、−(CH2)4CH3を表すことが好ましい。nは0、1又は2を表し、Xは塩素、臭素、よう素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基又はトリフロオロメタンスルホニルオキシ基を表すが、臭素が好ましい。
【0016】
一般式(II)において、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表すことが好ましく、具体的には−CH3、−CH2CH3、−(CH2)2CH3、−CH2 (CH3)2、−(CH2)3CH3を表すことが好ましい。
【0017】
一般式(III)は、一般式(I)と一般式(II)を塩基存在下に反応させるが、塩基として金属アルコキシドを用いることが好ましく、具体的にはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドが好ましく、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシドがより好ましい。
【0018】
溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒や、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒を単独又は混合して用いることができるが、ジメチルホルムアミド(DMF)を用いることが好ましい。
反応温度は溶媒の凝固点から還流温度範囲で行うことができるが、50℃から70℃が好ましい。
【0019】
一般式(IV)において、o及びpはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、o+p≦3が好ましく、Aはフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基を表すことが好ましい。Yはフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、具体的には−F、−OCF3、−OCF2H、−CF3、−(CH2)2CH3、−(CH2)3CH3、−(CH2)4CH3、−CH=CH2、−CH=CHCH3(E体)、−OCH3、−OCH2CH3、−O(CH2)2CH3、−O(CH2)3CH3、−O(CH2)2CH=CH2を表すことが好ましい。
【0020】
一般式(III)と一般式(IV)の反応は、強塩基条件下に反応させるが、塩基としてアルキル金属又は金属アミドを用いることが好ましく、具体的にはn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)等が好ましく、n-ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミド(LDA)がより好ましい。
【0021】
溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒や、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒等を単独又は混合して用いることができるが、トルエンを用いることが好ましい。
反応温度は溶媒の凝固点から還流温度範囲で行うことができるが、-70℃から-40℃が好ましい。
【0022】
本願発明は、一般式(V)で表される化合物を効率的に製造することができるが、次に示す化合物の製造がより好適である。
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Rは炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表す。)特に好ましい化合物として次に示す化合物を挙げることができる。
【0025】
【化7】

(式中Rは炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表す。)
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)により確認した。
化合物記載に下記の略号を使用する。
【0027】
DMF :ジメチルホルムアミド
Pr :プロピル基
Bu :ブチル基
(実施例1)ジメチル(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチル)ホスホナートの合成
【0028】
【化8】

【0029】
t-BuOK 71 g (0.632 mol)のDMF溶液(500 mL)に対し、10℃以下が保たれる速度で亜リン酸ジメチル 73 g (0.663 mol)を滴下(約20分間)する。続いて10℃以下が保たれる速度でトランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルブロミド100 g (0.456 mol)を滴下(約20分間)した後、反応温度を上げ、60℃で3時間攪拌後、室温まで放冷する。水500 mL、トルエン500 mLを加え有機層を分離する。水層に対しトルエン300 mLで2回抽出操作を行う。有機層をすべて合わせ、これを水250 mLで3回洗浄し、溶媒を留去する。得られた粗生成物約110 gの蒸留を行い、無色透明液体92.5 g (147-152 oC, 7 mmHg)のジメチル(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチル)ホスホナートを得る。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):0.851.30 (m, 11H), 1.501.91 (m, 8H), 3.74 (s,3H), 3.74 (s,3H).
(実施例2)(E)-トランス-4-[2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エテニル]-トランス-4'-(3,4-ジフルオロフェニル)ビシクロヘキサンの合成
【0030】
【化9】

【0031】
ジメチル(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチル)ホスホナート10.6 g (42.69 mmol)のトルエン溶液(65 mL)を-55℃まで冷却し、-50℃以下が保たれる速度で1.60 M BuLiヘキサン溶液 26.5 mL (42.40 mmol)を滴下(約15分間)し、-55℃で1時間攪拌する。続いて-50℃以下が保たれる速度でシクロヘキサンカルバルデヒド誘導体 (10 g, 32.63 mmol)のトルエン溶液(65 mL)を滴下(約30分間)し、-55℃で1時間攪拌する。酢酸 30 mLを一度に加えた後、冷却を止め、室温まで反応温度を徐々に上げる。ここでTLCサンプルとして一部反応溶液を抜き取った後、加熱を開始し、還流温度まで昇温する。3時間後、TLC測定(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行い、ホスホナート付加体が残っていれば加熱還流を継続する。反応終了を確認後、室温まで放冷する。1%塩酸100 mLを加え、有機層を分離する。得られた有機層を1%塩酸100 mL、飽和炭酸ナトリウム水溶液100 mLで2回、飽和食塩水50 mLで3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を留去し、得られた粗生成物約16.57 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶10.51 g (E/Z=92/8)を得る(収率75%)。さらに再結晶(MEK 40 mL)を行い、白色結晶9.74 g (E/Z=99.7/0.3)を得る(収率70%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3):0.851.37 (m, 28H), 1.681.90 (m, 12H), 2.362.44 (m, 1H), 5.30 (d, J = 4.8Hz, 2H),7.056.89 (m, 3H).
(実施例3)(E)- 1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレンの合成
【0032】
【化10】

【0033】
ジメチル(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチル)ホスホナート21 g (84.58 mmol)のトルエン溶液(130 mL)を-60℃まで冷却し、-60℃以下が保たれる速度で1.59 M BuLiヘキサン溶液 53 mL (84.27 mmol)を滴下(約15分間)し、-60℃で1.5時間攪拌する。続いて-55℃以下が保たれる速度でトランス-4-プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド誘導体 (10 g, 64.83 mmol)のトルエン溶液(30 mL)を滴下(約30分間)し、-55℃で1時間攪拌する。酢酸 30 mLを一度に加えた後、冷却を止め、室温まで反応温度を上げる。ここでTLCサンプルとして一部反応溶液を抜き取った後、加熱を開始し、還流温度まで昇温する。3時間後、TLC測定(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行い、ホスホナート付加体が残っていれば加熱還流を継続する。必要に応じてトルエン・酢酸を追加する。8時間後、室温まで放冷する。1%塩酸100 mLを加え、有機層を分離する。得られた有機層を1%塩酸100 mL、水100mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100 mL、10%食塩水100 mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を留去し、得られた粗生成物約28.51 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色結晶13.29 g (E/Z=93/7)を得る。再結晶(Acetone 26 mL)を行い、白色結晶10.12 g (E/Z=99.5/0.5)を得、さらに再結晶(Acetone 40 mL)を行い、白色結晶9.75 g (E/Z=100/0)を得る(収率54%)。
(比較例1)(E)-1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレンの合成
【0034】
【化11】

【0035】
トランス-4-プロピルシクロヘキサンカルバルデヒド(196.2g)とトランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(673.7g)とから1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレン(313.4g)を得た。本品における(E)-1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレン(以下(E)-体と呼ぶ)と(Z)-1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレン(以下(Z)-体と呼ぶ)との比は5:95であり、以下本品を(Z)-体とみなして扱った。
【0036】
ギ酸2000mLに30%過酸化水素水186.5gを加え38℃に加温し、(Z)-体の303.4gを系内が50℃以下を保つように滴下し、更に45〜50℃で9時間攪拌した。室温まで冷却し、水500mLを加え暫時攪拌後、トルエンで抽出を行った。分離した有機層を水、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、423.32gの固体状の反応混合物を得た。得られた反応混合物の全量を、室温下に激しく攪拌しながらエタノール500mLに分散させ、ここに30%水酸化ナトリウム水溶液600gを加え、2時間激しく攪拌した。次いで、氷浴上で濃塩酸400mLを反応液が40℃以下を保つように加え、系を酸性にした。白色の析出物を濾別し、これをテトラヒドロフラン(THF)1500mLとトルエン100mLの混合溶媒に溶解した。水層を分離し、有機層を飽和食塩水で中性になるまで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮し、337.6gの1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)-1,2-エタンジオールを得た。
【0037】
得られた1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)-1,2-エタンジオールの全量とオルトギ酸トリメチル1000mLと濃塩酸2mLを混合し、2時間還流した。冷却後、過剰のオルトギ酸トリメチルを減圧下に留去し、黄色油状の2-メトキシ-4,5-ジ(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)-1,3-ジオキサン粗生成物400.4gを得た。
得られた粗生成物と無水酢酸1200mLを混合し、5時間還流した。室温まで冷却し、ヘキサンで抽出を行った。分離した有機層を水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、301.4gの反応混合物を得た。本反応混合物における(E)-体と(Z)-体の比は95:5であった。
【0038】
次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)を行った後、アセトンから再結晶させ、243.1gの(E)-1,2-ビス(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチレンを得た。(収率69%)
本願発明の合成経路がトランス-4-プロピルシクロヘキサンカルバルデヒドから一工程であるのに対して、比較例の方法では四工程であり工程数の点で本願発明の方法に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(III)
【化1】

(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、nは1又は2を表す。)で表されるシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体。
【請求項2】
一般式(I)
【化2】

(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、nは1又は2を表し、Xは塩素、臭素、よう素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基又はトリフロオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)で表される化合物に、一般式(II)
【化3】

(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)で表される化合物を塩基条件下反応させることによる、一般式(III)
【化4】

(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、nは1又は2を表す。)で表されるシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(III)
【化5】

(式中、R1は炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基を表し、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、nは0、1又は2を表す。)で表されるシクロヘキシルメチルホスホナート誘導体を得た後、一般式(III)で表される化合物に、一般式(IV)
【化6】

(式中、o及びpはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、1≦o+p≦3であり、Aはフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、Yはフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物を強塩基条件下に反応させることによる一般式(V)
【化7】

(式中、nは0、1又は2を表し、o及びpはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、1≦o+p≦3であり、Aはフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基を表し、Yはフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(II)で表される化合物の反応時に、塩基として金属アルコキシドを用いる請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(III)で表される化合物の反応時に、塩基としてアルキル金属を用いる請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
塩基としてリチウムアミドを用いる請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
Aが1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を表す請求項3記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−7312(P2009−7312A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172080(P2007−172080)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】