説明

シクロペンテノンの製造方法及びベンズインデンプロスタグランジン合成のためのシクロペンテノン

【課題】ベンズインデンプロスタグランジンの製造に有用な新規シクロペンテノンの製造方法を提供する。
【解決手段】下式Vで示される保護された3−ヒドロキシフェニル酢酸とフランを反応させて下式IVで示される2−アシルフランを生成させ、次いで該アシルフランを還元剤と反応させて下式IIIで示されるフランカルビノールを生成させ、さらに該フランカルビノールを転位、異性化させることによる下式Iで示されるラセミ型シクロペンテノンの製造方法、及び該ラセミ体をリパーゼを用いて分割することによる光学活性シクロペンテノンの製造方法。


[式中、P1は、フェノール基の保護基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズインデンプロスタグランジンの製造に有用な、式I:
【化1】

で表されるシクロペンテノンを製造するための新規方法に関する。本発明は、また、本方法により製造される新規シクロペンテノンに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンズインデンプロスタグランジンは、様々な病状の治療に有用であることが知られている。式I:
【化2】

(式中、P1は、フェノール基の保護基を表す)で表されるシクロペンテノンは、ベンズインデンプロスタグランジン合成のための重要な中間体であり、同日出願の同時係属特許出願(発明の名称、INTERMEDIATES FOR THE SYNTHESIS OF BENZINDENE PROSTAGLANDINS AND PREPARATIONS THEREOF)においても開示されている。式Iで表されるラセミ又は光学活性なシクロペンテノンは、先行技術で開示されていなかった。次のスキーム1に示すように、サトーはJ.Org.Chem.、59、21、6153(1994)において、式Bで表される光学活性シクロペンテノン及びその製造方法を開示している。
スキーム1
【化3】

【0003】
しかし、この製造方法における収率は10%と低いものであった。更に、この製造に用いられる式Aで表される出発物質は高価であり、また、通常次のスキーム2に示すように式Cで表される高価なD−エリスロ−ペント−1−エントールから出発する11ステップの合成プロセスから得られるため入手は容易ではない[J.Org.Chem.、53、23、5590(1994);特開平07−252276号公報]。
スキーム2
【化4】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、少ないステップ数で操作がより簡単な、式Iで表されるシクロペンテノンの製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式Iで表されるラセミ及び光学活性シクロペンテノンを製造する新規方法を提供する。
【0006】
本発明は、また、ラセミ又は光学活性型の式Iで表される新規シクロペンテノンを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によれば、次のスキームAに示す通り式I:
【化5】

で表されるシクロペンテノン(式中、P1は、フェノール基の保護基を表す)は、式Vで表される保護された2−(3−ヒドロキシフェニル)酢酸から製造される。フェノール基に対して適切な保護基は酸に安定であることが好ましく、C18アルキル、アリル、非置換又は置換ベンジル、アセチル、C18アルキルカルボニル、メトキシメチル、メトキシチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、トリフェニルメチル及びSiRabc(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルを表す)を含むが、これらに限定されない。上に定義された基が置換されている場合の置換基は、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、チオアルコキシル、チオアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル及びニトロからなる群から選択される。好ましくは、保護基は非置換又は置換ベンジル、SiRabc基(式中、Ra、Rb及びRcが、特にそれぞれC18アルキルである)、C18アルキル、アセチル又はC18アルキルカルボニルである。
スキームA
【化6】

【0008】
スキームAにおいて、ステップ(a)は、フリーデル・クラフツアシル化である。ステップ(a)において、フラン及び式Vで表される酸化合物であるアシル供与体がフリーデル・クラフツアシル化を行い、式IVで表される2−アシルフランが得られる。例えば、ステップ(a)は、式Vで表される保護された2−(3−ヒドロキシフェニル)酢酸とフランとを適切な溶媒中で混合することと、無水物を添加すること、必要に応じて触媒の存在下で混合物を反応させて、式IVで表される2−アシルフランを得ることとを含む。ステップ(a)の反応に適切な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン又はこれらの混合物が好ましく、適切な無水物としては、無水クロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸又はこれらの混合物とすることができる。触媒が存在する場合、この触媒は、三フッ化ホウ素、トリフルオロ酢酸、塩化スズ(IV)又は塩化亜鉛等のルイス酸とすることができる。
【0009】
スキームAのステップ(b)は、式IVで表される2−アシルフランを適切な溶媒中で還元剤によって還元し、式IIIで表されるフランカルビノールを生成することを含む。本発明における還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH42)、水素化トリアセトキシホウ素テトラメチルアンモニウム(Me4NBH(OAc)3)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(s−Bu)3)、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素ナトリウム(NaBH(s−Bu)3)、水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム(KBH(s−Bu)3)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBHEt3)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ジイソブチルアルミニウム((iso−Bu)2AlH)、水素化リチウムトリ−tert−ブトキシアルミニウム(LiAlH(t−BuO)3)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(NaAlH2(OCH2CH2OCH32)及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ジイソブチルアルミニウム((iso−Bu)2AlH)又はこれらの混合物である。還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)がより好ましい。
【0010】
スキームAのステップ(c)は、変換(即ち、転位)反応であり、100%水である水媒体中、或いは少量の有機溶媒が混合された水を含む水媒体中で実施することができる。反応のpHは、有機又は無機の酸性物質又は塩基性物質、好ましくはリン酸水素二カリウム/リン酸緩衝溶液により約2.5〜約6.5の範囲に維持される。転位反応の温度は、好ましくは約60℃〜約200℃、より好ましくは約80℃〜140℃である。
【0011】
一実施形態においては、ステップ(c)の転位反応で生成した式II及びIで表されるシクロペンテノンの混合物は、更に精製されることなく直接ステップ(d)に付される。ステップ(d)は、抱水クロラール及びトリエチルアミンの存在下でなし得る異性化反応である。この異性化反応により、式IIで表されるシクロペンテノンは、式Iで表されるシクロペンテノンへと異性化される。得られる式Iで表される粗シクロペンテノンはラセミ体である。
【0012】
本発明は、式Iで表される光学活性シクロペンテノンの製造方法を更に提供する。
【0013】
本発明の一実施形態における、(R)−エナンチオマーリッチであり95%以上の鏡像体過剰率の光学純度を有する式I:
【化7】

(式中、P1は、上述と同様に定義される)で表される化合物の製造方法は、
(e)アシル供与体及び第一のリパーゼにより、式Iで表される化合物のラセミアルコール混合物をエナンチオ選択的に(R)−エステル化するステップと、
(f)未反応の(S)−アルコールを除去するステップ又は未反応の(S)−アルコールを対応する(R)−エステルへと転換するステップと、
(g)得られる(R)−エステルを脱アシル化するステップと、を含む。
【0014】
スキームBのステップ(e)に示すように、式Iで表されるラセミ型シクロペンテノンは、エナンチオ選択的リパーゼの存在下で式D:
【化8】

(式中、R1及びR2は、独立してC1〜C6低級アルキル又はHを表す)で表されるアシル供与体と反応し、該アシル供与体は、(R)−型のシクロペンテノンと選択的に反応し、これにより式(R)−VIIIで表される光学活性エステル及び式(S)−Iで表される未反応のアルコールからなる混合物が生成する。
スキームB
【化9】

【0015】
本発明において得られる式(R)−VIIIで表されるエステルは、少なくとも85%e.e.、好ましくは少なくとも90%e.e.、より好ましくは少なくとも95%e.e、最も好ましくは最大99%e.e.の光学活性を有する。
【0016】
本発明の一実施形態においては、ブタ肝臓、ブタの膵臓又は微生物から得られるエナンチオ選択的リパーゼを用いる。微生物の例としては、アクロモバクター(Achromobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・リポリティカ(Candida lypolytica)、クロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterium viscosum)、ムコール・ジャンバニカス(Mucor janvanicus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillum Camenberti)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforteii)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence)、シュードモナス(Pseudomonas spp.,)属、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzri)、リゾプス・デルマー(Rhizopus Delmar)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus Niveus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryze)及びリゾプス(Rhizopus spp.,)属が挙げられる。エナンチオ選択的リパーゼは、アクロモバクター属(Achromobacter spp,)、アルカリゲネス属(Alcaligenes spp., )、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence)、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzri)又はシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来することがより好ましい。
【0017】
本発明の実施形態において、アシル供与体は、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、吉草酸ビニル、吉草酸イソプロペニル、酪酸ビニル、酪酸イソプロペニル又はこれらの混合物であることができる。
【0018】
エナンチオ選択的なエステル化は、有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル及びこれらの混合物から選択することができる。
【0019】
本発明のリパーゼは、エステル化における光学選択性が維持される限りにおいて、精製型、未精製型、該リパーゼを産出する微生物自身に関する天然型等、任意の形態で本発明の方法に存在させることができる。リパーゼの化学的安定性、活性又はエナンチオ選択性は、遺伝子改変、DNA組換え又は固定化により更に増強することができる。
【0020】
用いるリパーゼの量は、リパーゼの活性や反応物の量、用いる溶媒等、多くの要因によって変動する。本発明の一実施形態においては、リパーゼは、式Iで表されるシクロペンテノン1質量当量当り0.01質量当量〜10質量当量の範囲で用いられる。
【0021】
反応混合物は、絶えず攪拌、振盪又は超音波処理をすることにより、反応物とリパーゼの十分な接触を確実にすべきである。更に、反応に適切な温度は、5℃〜50℃であり、反応は室温で行うことができる。エナンチオマー選択的なエステル化は、出発材料の所望の転換が達成された時点で、反応混合物からリパーゼを除去することにより停止することができる。一実施形態においては、30%〜70%、より好ましくは約50%の転化率が達成された時点でリパーゼを除去し、酵素によるエステル化を停止する。
【0022】
ステップ(f)の反応混合物における式(R)−VIIIで表されるエステルと未反応のアルコール(S)−1は、直接分離することができる。式(R)−VIIIで表されるエステルの構造及び性質は、式(S)−1で表されるアルコールの構造及び性質と異なり区別できるため、式(R)−VIIIで表されるエステルは、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー等、任意の適切な従来方法により混合物から容易に単離することができる。
【化10】

【0023】
また、本発明の一実施形態においては、次のスキームに示すように、未反応のアルコール(S)−Iは、適切な溶媒(トルエン等)にアゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジベンジル又はこれらの混合物等のアゾジカルボン酸ジアルキル及びトリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィンを存在させて、式R3COOH(式中、R3はR1と同様に定義される)で表されるアシルオキシ供与体によりOH基をアシルオキシ基に転換することにより、式(R)−VIII’で表される対応するエステルへと転換される。ステップ(f−2)において、混合物中の式(S)−1で表されるアルコールのほぼ100%が式(R)−VIII’で表されるエステルへと転換される。
【化11】

【0024】
本発明の式(R)−Iで表される光学活性シクロペンテノンを得るために、ステップ(e)において得られた混合物から式(R)−VIIIで表されるエステルを単離する必要はなく、式(S)−Iで表されるアルコールを除去する必要もない。代わりに、該混合物を直接ステップ(f−2)の転化反応に付すことにより、式(R)−VIII及び(R)−VIII’で表されるエステルの混合物を得ることができる。
【0025】
次のスキームに示すように、式(R)−VIII又は/及び(R)−VIII’で表されるエステルは、ステップ(g)における脱アシル化反応に更に付される。
【化12】

【0026】
本発明の一実施形態においては、脱アシル化反応は、酸による加水分解か塩基による加水分解のいずれかの化学的加水分解である。加水分解が酸加水分解である場合、(R)−VIII又は/及び(R)−VIII’で表されるエステルを開裂して式(R)−1で表されるシクロペンテノンを得るためにアルコール及び酸触媒(リン酸、p−トルエンスルホン酸、臭化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸又はこれらの混合物等)の存在下で加水分解を行う。例えば、酸加水分解は、硫酸及びメタノール又はエタノールの存在下で行われる。加水分解が塩基性加水分解である場合、塩基(LiOH、NaOH、KOH又はこれらの混合物等)の存在下で加水分解を行う。
【0027】
本発明の他の一実施形態においては、ステップ(e)における脱アシル化反応は、酵素による開裂反応である。酵素による開裂反応は、加水分解又はアルコール分解のいずれかであり、水、緩衝液、水又は緩衝液飽和した有機溶媒、又は水溶液系又は非水溶液系を含有するアルコールの存在下で行うことができる。更に、酵素による脱アシル化のための反応系は、均一系、或いは水又は緩衝液と水不溶性溶媒とを含有する二相系とすることができる。エステルは、反応系中のリパーゼと十分に接触するように、反応系に溶解させるか、或いは微細に分散させるべきである。必要であれば、相間移動触媒(例えば、塩又は界面活性剤)を反応速度増加のために反応系に添加することができる。適切な有機溶媒は、水と非混和性の有機溶媒、水又は緩衝液で飽和された有機溶媒、又はアルコール等の水混和性有機溶媒であることができる。適切な緩衝液として、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩及び/又は酢酸塩から製造された緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。緩衝液のpH範囲は、5〜8が好ましい。反応に用いられる適切な有機溶媒は、アルキルアルコール、アリールアルコール、アルケニルアルコール、メチルスルホキシド、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。更に水非混和性溶媒の例としては、ヘキサン、トルエン、エーテル、石油エーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明で使用される酵素は、エステルの加水分解に適切なリパーゼである。ステップ(e)において用いられるリパーゼは、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、アクロモバクター属(Achromobacter spp.,)、アルカリゲネス属(Alcaligenes spp., )、シュードモナス属(Pseudomonas spp.,)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence)、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzri)又はシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来することが好ましい。リパーゼは、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.,)又はアクロモバクター属(Achromobacter spp.,)に由来することが更に好ましく、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)由来が最も好ましい。
【0029】
反応は、キラルカラムを用いたHPLCによりモニターされ、好ましくは転化率が約90%に達したときにリパーゼを除去することにより停止される。必要に応じて、(R)−VIII及び/又は(R)−VIII’で表される未反応のエステルは、脱アシル化後に除去することができる。本発明において、式(R)−1で表されるアルコールは、少なくとも95%e.e.、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.9e.e.の光学活性で生成される。
【0030】
本発明は、式I:
【化13】

で表されるラセミ又は光学活性化合物
【0031】
(式中、R1は、フェノール基の保護基であり、C18アルキル、アリル、非置換又は置換ベンジル、アセチル、C18アルキルカルボニル、メトキシメチル、メトキシチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、トリフェニルメチル及びSiRabc(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルを表す)からなる群から選択される)を更に提供する。定義された基が置換されている場合、置換基は、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、チオアルコキシル、チオアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル及びニトロからなる群から選択される。保護基は、非置換又は置換のベンジル、SiRabc基(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキルを表す)、C18アルキル、アセチル又はC18アルキルカルボニルであることが好ましい。
【0032】
本発明の一実施形態においては、式Iで表される化合物は、(R)−エナンチオマーリッチとされ、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.9鏡像体過剰率の光学純度を有する。
【0033】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。当業者が為し得る改変や変更は本明細書の開示及び添付の請求の範囲に含まれる。
実施例1
1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オン
【化14】

【0034】
3−メトキシフェニル酢酸(20g、120.35mmol)をジクロロメタン(CH2Cl2)(200mL)に溶解し、フラン(24.6g、361.39mmol)及び無水トリフルオロ酢酸(37.8g、180mmol)をその溶液に添加した。反応生成物を室温で一晩連続して攪拌した。この反応生成物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)でクエンチして、pH=6.9とし、混合物中の有機試薬を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オンを黄色油状物として得た(20g、収率:77%)。
【0035】
1H NMR (300 MHz, CDCl3 ) ( 3.76 (3H, s), 4.07 (2H, s), 6.50 (1H, dd, J = 1.7, 3.6 Hz), 6.76-6.89 (3H, m), 7.19 -7.26 (2H, m), 7.57 (1H, dd, J = 0.7, 1.7 Hz).
実施例2
1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オン
【化15】

【0036】
3−ベンジルオキシフェニル酢酸(3.5kg、14.45mol)をジクロロメタン(CH2Cl2)(35L)に溶解し、フラン(3.0kg、44mol)及び無水トリフルオロ酢酸(4.55kg、21.65mol)をその溶液に添加した。この反応生成物を室温で2日間連続して攪拌した。この反応生成物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)でクエンチしてpH=6.9とし、混合物中の有機試薬を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製してて、1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オンを黄色油状物として得た(4kg、収率:95%)。
【0037】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 4.08 (2H, s), 5.03 (2H, s), 6.50 (1H, dd, J = 1.71, 3.59 Hz), 6.86-6.97 (3H, m), 7.19-7.44 (7H, m), 7.51 (1H, dd, J = 0.76, 1.7 Hz)
【0038】
13C NMR (75 MHz, CDCl3) ( 45.3, 69.8, 112.3, 113.3, 115.9, 118.0, 122.0, 127.4, 127.9,128.5, 129.6, 135.5,136.8, 146.6, 152.2, 158.9, 186.3
実施例3
1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オール
【化16】

【0039】
1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オン(20g、92.56mmol)をメタノール(MeOH)(200mL)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)(3.5g、92.52mmol)をその溶液に5℃でゆっくりと添加した。反応終了後、この溶液を水(H2O)でクエンチし、メタノール(MeOH)を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させて、1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オールを黄色油状物として得た(20g、粗収率:98%)。
【0040】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 2.12 (1H, s), 3.15 (2H, m), 3.79 (3H, s), 4.93 (1H, s), 6.25 (1H, s), 6.35 (1H, s), 6.74 (1H, s), 6.81 (2H, m), 7.23 (1H, t, J= 7.9 Hz), 7.43 (1H, s)
実施例4
1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オール
【化17】

【0041】
1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オン(4kg、13.69mol)をメタノール(MeOH)(35L)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)(520g、13.75mol)をその溶液に5℃でゆっくりと添加した。反応終了後、この溶液を水(H2O)でクエンチし、メタノール(MeOH)を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させて、1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オールを黄色油状物として得た(3.97kg、粗収率:98%)。
【0042】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 2.07 (1H, br), 3.13 (2H, m), 4.92 (1H, dd, J = 5.47, 7.94 Hz), 5.04 (2H, s), 6.23 (1H, d, J = 3.23 Hz), 6.34 (1H, dd, J = 1.82, 3.22 Hz), 6.80-6.89 (3H, m), 7.23 (1H, t, J = 7.89 Hz), 7.31-7.46 (6H, m)
【0043】
13C NMR (75 MHz, CDCl3) ( 42.2, 68.6, 69.9, 106.4, 110.2, 113.1, 115.9, 122.0, 127.5, 127.9, 128.5, 129.5, 136.9, 138.9, 141.9, 155.6, 158.9
実施例5
4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化18】

【0044】
1−(フラン−2−イル)−2−(3−メトキシフェニル)エタン−1−オール(20g、91.7mmol)及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)(0.4g、0.02mmol)を水(H2O)(400mL)に添加し、リン酸(H3PO4)をpH=3.0となるまでその溶液に添加した。反応生成物を120℃で一晩連続して攪拌した。冷却後、溶液に塩化ナトリウム(NaCl)(300g)を添加し、反応生成物を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し、液体を蒸発させて、未精製の4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黒色油状物として得た(19g、粗収率:95%)。
実施例6
4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化19】

【0045】
1−(フラン−2−イル)−2−(3−ベンジルオキシフェニル)エタン−1−オール(3.97kg、13.49mol)及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)(120g、0.88mol)を水(H2O)(120L)に添加し、リン酸(H3PO4)をpH=3となるまでその溶液に添加した。反応生成物を120℃で5時間連続して攪拌した。冷却後、塩化ナトリウム(NaCl)(25kg)を添加し、反応生成物を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させて、未精製の4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黒色油状物として得た(3.4kg、粗収率:85%)。
実施例7
2−(3−メトキシベンジル)−4−ヒドロキシシクロペンタ−2−エノン
【化20】

【0046】
未精製の4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(19g、87.12mmol)をトルエン(PhCH3)(100mL)に溶解し、抱水クロラール(0.6g、4.11mmol)及びトリエチルアミン(Et3N)(5.6g、55.34mmol)をその溶液に添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。この反応生成物の液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを褐色油状物として得た(15.32g、収率:81%)。
【0047】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 2.317 (1H, br), 2.324 (1H, dd, J= 2.0, 18.6 Hz), 2.83 (1H, dd, J= 6.0, 18.6), 3.48 (2H, s), 3.78 (3H, s), 4.90 (1H, m), 6.73- 6.79 (3H, m), 67.0 (1H, m), 7.21 ( 1H, t, J= 7.9 )
実施例8
4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化21】

【0048】
未精製の4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン及び4−ヒドロキシ−5−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(3.4kg、15.6mol)をトルエン(PhCH3)(20L)に溶解し、クロラール(91g、0.62mol)及びトリエチルアミン(Et3N)(827g、8.17mol)をその溶液に添加し、混合物を室温で4時間攪拌した。この反応生成物の液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを褐色油状物として得た(2.1kg、収率:62%)。
【0049】
1H NMR (500 MHz, CDCl3) ( 2.29 (1H, br), 2.30 (1H, dd, J = 2, 19 Hz), 2.8 (1H, dd, J = 6, 18.5 Hz), 3.46 (2H, ab), 4.84-4.87 (1H, m), 5.04 (2H, s), 6.19-6.81 (2H, m), 6.85 (1H, dd, J = 2, 8.5 Hz) 6.96 (1H, m), 7.22 (1H, t, J = 8 Hz), 7.33 (1H, m), 7.40 (4H, m)
【0050】
13C NMR (125 MHz, CDCl3) ( 30.9, 44.7, 68.3, 69.9, 112.7, 115.6, 121.6, 127.5, 127.9, 128.5, 129.6, 136.8, 139.4, 147.1, 157.3, 158.9, 205.6
実施例9
(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート
【化22】

【0051】
4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(9g、41.26mmol)をイソブチルメチルケトン(90mL)に溶解し、酢酸ビニル(8.4g、97.57mmol)及びリパーゼ(アルカリゲネス属(Alcaligenes spp. )由来:0.9g)をその溶液に添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートを黄色油状物として(4.29g、キラルカラムを用いたHPLCにより95%ee)、(S)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として(4.05g:キラルカラムを用いたHPLCにより100%ee)得た。
【0052】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 2.04 (3H, s), 2.38 (1H, dd, J= 2, 18.8 Hz), 2.88 (1H, dd, J= 6.3, 18.9 Hz), 3.48 (2H, s), 3.78 (3H, s), 5.73 (1H, m), 6.72-6.78 (3H, m), 6.99 (1H, m), 7.21 (1H, t, J= 8.1 Hz)
実施例10
(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート
【化23】

【0053】
4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(9g、41.26mmol)をイソブチルメチルケトン(90mL)に溶解し、酢酸ビニル(8.4g、97.57mmol)及びリパーゼ(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)由来:0.9g)をその溶液に添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を蒸発させた。得られた残渣をトルエン(PhCH3)(150mL)に溶解し、トリフェニルホスフィン(6.5g、24.78mmol)及び酢酸(AcOH)(1.61g、26.81mmol)をこの溶液に添加した。次に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(5g、24.72mmol)をこの混合物に5℃で添加した。反応終了後、この反応混合物を濾過して沈殿を除去し、濾液を蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートを黄色油状物として得た(10g、収率:93%、キラルカラムを用いたHPLCにより95%ee)。
実施例11
(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化24】

【0054】
(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート(0.1g、0.38mmol)をリン酸二水素カリウム(KH2PO4)−リン酸(H3PO4)緩衝液(1mL)に添加した。この混合物にリパーゼ(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来)を添加し、この溶液に1N水酸化ナトリウム(NaOH)を室温でゆっくりと添加してpH=7〜7.5を維持した。3時間後、約10%の(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートが維持された。この反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として得た(58mg、収率:70%、キラルカラムを用いたHPLCにより>99.5%ee)。
実施例12
(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化25】

【0055】
(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート(0.1g、0.38mmol)をTHF(1mL)に溶解し、3N塩酸(HCl)(5mL)をその溶液に添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。反応生成物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)でクエンチしてpH=6.9とし、酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として得た(71mg、収率:85%)。
実施例13
(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート
【化26】

【0056】
4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(5.73g、19.48mmol)をイソブチルメチルケトン(60mL)に溶解し、酢酸ビニル(11.2g、13.01mmol)及びリパーゼ(アルカリゲネス属(Alcaligenes spp )由来;0.6g)をその溶液に添加し、この混合物を室温で1日間攪拌した。反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートを黄色油状物として(2.51g、収率:38%、キラルカラムを用いたHPLCにより96%ee)、(S)−4−ヒドロキシ−2−(3−(ベンジルオキシ)ベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として(2.68g、収率:47%、キラルカラムを用いたHPLCにより>99%ee)得た。
実施例14
(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート
【化27】

【0057】
4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン(2.1kg、7.14mol)をイソブチルメチルケトン(21L)に溶解し、酢酸ビニル(4.2kg、51.16mol)及びリパーゼ(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)由来;210g)をその溶液に添加し、この混合物を室温で1日間攪拌した。反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を蒸発させた。得られた残渣をトルエン(PhCH3)(20L)に溶解し、トリフェニルホスフィン(625g、2.38mol)及び酢酸(AcOH)(145g、2.41mol)をその溶液に添加した。次に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(413g、2.04mol)をこの混合物に5℃で添加した。反応終了後、反応混合物を濾過して沈殿を除去し、濾液を蒸発させた。残渣を酢酸エチル(EtOAc)(5L)に溶解し、ヘキサン(5L)を添加した。この混合物を室温で一晩攪拌した。混合物を濾過して沈殿を除去し、濾液を蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートを黄色油状物として得た(1.8kg、収率:75%、キラルカラムを用いたHPLCにより97%ee)。
【0058】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) ( 2.07 (3H, s), 2.39 (1H, dd, J= 2.1, 18.8 Hz), 2.89 (1H, dd, J= 6.3, 18.9), 3.49 (2H, m), 5.06 (2H, s), 5.72 (1H, m), 6.79- 6.88 (3H, m), 6.98 (1H, m), 7.21- 7.45 (6H, m)
実施例15
(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化28】

【0059】
(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート(1.8kg、5.35mol)をリン酸二水素カリウム(KH2PO4)−リン酸(H3PO4)緩衝溶液(20L)に添加した。この混合物にリパーゼ(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来)を添加し、この溶液に1N水酸化ナトリウム(NaOH)を室温でゆっくりと添加してpH=7〜7.5を維持した。8時間後、(R)−3−(3−ベンジルオキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテートは約10%のままであった。この反応混合物を濾過してリパーゼを除去し、濾液を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−ベンジルオキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として得た(1.3kg、収率:83%、キラルカラムを用いたHPLCにより>99%ee)。
実施例16
(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノン
【化29】

【0060】
(R)−3−(3−メトキシベンジル)−4−オキソシクロペンタ−2−エニルアセテート(0.5g、1.48mmol)をメタノール(MeOH)(5mL)に溶解し、7%水酸化カリウム(KOH)/メタノール(CH3OH)(5mL)をその溶液に添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。この混合物を蒸発させ、得られた残渣を塩酸(HCl)により中和してpH=6.5とし、酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し、液体を蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(R)−4−ヒドロキシ−2−(3−メトキシベンジル)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として得た(0.4g、収率:92%)。[α]D20=+3.5〜5.7o
実施例17
(R)−2−(3−tert−ブチルジメチルシロキシベンジル)−4−テトラヒドロフラニルオキシシクロペンタ−2−エノン
【化30】

【0061】
(R)−2−(3−(ベンジルオキシ)ベンジル)−4−ヒドロキシシクロペンタ−2−エノン(0.5g、1.7mmol)及びジヒドロピラン(0.34g、4mmol)をジクロロメタン(CH2Cl2)(5mL)に溶解し、p−トルエンスルホン酸(0.2g)をその溶液に10℃で添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。反応終了後、この混合物を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。得られた残渣を水素下でエタノール(EtOH)(5mL)に溶解し、パラジウム炭素(Pd/C)(0.15g)をその溶液に添加し、この混合物を室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を濾過してパラジウム炭素(Pd/C)を除去し、濾液を蒸発させた。得られた残渣を酢酸エチル(EtOAc)(5mL)に溶解し、イミダゾール(0.24g、3.5mmol)及びtert−ブチルジメチルシリルクロリド(0.38g、2.55mmol)をその溶液に添加し、この混合物を50℃で4時間攪拌した。反応終了後、この反応混合物を濾過して沈殿を除去し、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)で洗浄し、酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、液体を蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル(EtOAc))により精製して、(4R)−2−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル)−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)シクロペンタ−2−エノンを黄色油状物として得た(0.47g、収率:69%)。
【0062】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 0.18 (6H, s), 0.97 (9H, s), 1.51 (4H, m), 1.75 (3H, m), 2.32 (3H, m), 2.28 (2H, m),2.60 (1H, m), 3.12 (1H, m), 3.48 (1H, m), 3.83 (1H, m), 4.37 (1H, sept, J=7.0 Hz), 4.66 (1H, m), 6.66 (2H, m), 6.74 (1H, m), 7.12 (1H, t, J=7.5 Hz)
【0063】
13C NMR (CDCl3, 500 MHz) δ -4.46, 18.16 (18.12), 19.33 (19.43), 25.29 (25.31), 25.63, 30.72 (30.77), 34.34, 35.64 (35.89), 44.73 (46.26), 49.88 (50.36), 62.37 (62.50), 71.56 (72.07), 97.33 (97.53), 117.88 (117.93), 120.64 (120.70), 121.85 (121.88), 129.28 (129.32), 141.09 (141.12), 155.62 (155.65), 216.14 (216.55)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、P1は、フェノール基の保護基を表す)で表されるラセミ型シクロペンテノンの製造方法であって、該方法は、
(a)フランを式V:
【化2】

で表される酸化合物であるアシル供与体と反応させて、式IV:
【化3】

で表される2−アシルフランを生成するステップと、
(b)式IVで表される2−アシルフランを還元剤と反応させて、式III:
【化4】

で表される対応するフランカルビノール化合物を生成するステップと、
(c)式IIIで表されるフランカルビノール化合物を転位及び異性化させて、式Iで表されるラセミ化合物を生成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
1は、C18アルキル、アリル、非置換又は置換ベンジル、アセチル、C18アルキルカルボニル、メトキシメチル、メトキシチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、トリフェニルメチル又はSiRabc(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルを表す)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1は、C18アルキル、アリル又は非置換若しくは置換ベンジルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アシル供与体は、無水クロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ジイソブチルアルミニウム((iso−Bu)2AlH)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式I:
【化5】

(式中、P1は、請求項1の定義と同様)で表される化合物であって、(R)−エナンチオマーリッチとされ、少なくとも95%鏡像体過剰率の光学純度を有する化合物の製造方法であって、該方法は、
(e)式D:
【化6】

(式中、R1及びR2は、独立してC16アルキル又はHを表す)で表されるアシル供与体及び第一のリパーゼを用いて式Iで表される化合物のラセミアルコール混合物をエナンチオ選択的に(R)−エステル化するステップと、
(f)未反応の(S)−アルコールを除去するステップと、
(g)得られる(R)−エステルを脱アシル化するステップと、を含む方法。
【請求項7】
式Dで表されるアシル供与体は、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、吉草酸ビニル、吉草酸イソプロペニル、酪酸ビニル、酪酸イソプロペニル又はこれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第一のリパーゼは、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、アクロモバクター属(Achromobacter spp.,)、アルカリゲネス属(Alcaligenes spp., )、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence)、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzri)又はシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)に由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
脱アシル化ステップ(g)は、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.,)、アクロモバクター属(Achromobacter spp.,)又はこれらの混合物に由来する第二のリパーゼを用いる酵素による開裂反応を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
第二のリパーゼは、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarcitica)に由来する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
脱アシル化ステップ(g)は、化学的加水分解である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(f)は、アゾジカルボン酸ジアルキル及びトリアリールホスフィンの存在下で(S)−アルコールを式R3COOH(式中、R3は、請求項5におけるR1の定義と同様)で表されるアシルオキシ供与体と反応させることにより、未反応の(S)−アルコールを対応する(R)−エステルへと転換することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
アゾジカルボン酸ジアルキルは、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジベンジル又はこれらの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トリアリールホスフィンは、トリフェニルホスフィンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
式I:
【化7】

(式中、P1は、C18アルキル、アリル、非置換又は置換ベンジル、アセチル、C18アルキルカルボニル、メトキシメチル、メトキシチオメチル、2−メトキシエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、トリフェニルメチル及びSiRabc(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルを表す)からなる群から選択されるフェノールの保護基を表す)で表されるラセミ又は光学活性化合物。
【請求項16】
1は、ベンジル又は置換ベンジルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
1は、SiRabc(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルを表す)である、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
a、Rb及びRcは、それぞれ独立してC18アルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
1は、C18アルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
1は、アセチル又はC18アルキルカルボニルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
(R)−エナンチオマーリッチとされ、少なくとも95%鏡像体過剰率の光学純度を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項22】
(R)−エナンチオマーリッチとされ、少なくとも99%鏡像体過剰率の光学純度を有する、請求項15に記載の化合物。
【請求項23】
(R)−エナンチオマーリッチとされ、少なくとも99.9%鏡像体過剰率の光学純度を有する、請求項15に記載の化合物。

【公開番号】特開2013−43890(P2013−43890A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−180636(P2012−180636)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(512213583)チャイロゲート インターナショナル インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】CHIROGATE INTERNATIONAL INC.
【Fターム(参考)】