シザーズ構造体
【課題】シザーズ構造体をさらに小さく折りたたむことができるようにする。
【解決手段】 2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズの複数個を備えている。隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されている。各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されることによって、シザーズ構造体を構成している。
各ジョイントのそれぞれの片が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線からジョイント片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されている。そのために、片と片やストラットとストラットが重なり合うまで小さく折りたたむことができる。即ち、単位シザーズの2本のストラットが同一直線状に重なり合うまで小さく折りたたむことができる。
従来の折りたたみ状態に比して、長さで約1/2であり面積で約1/4の小さなサイズに折りたたむことができる。
【解決手段】 2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズの複数個を備えている。隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されている。各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されることによって、シザーズ構造体を構成している。
各ジョイントのそれぞれの片が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線からジョイント片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されている。そのために、片と片やストラットとストラットが重なり合うまで小さく折りたたむことができる。即ち、単位シザーズの2本のストラットが同一直線状に重なり合うまで小さく折りたたむことができる。
従来の折りたたみ状態に比して、長さで約1/2であり面積で約1/4の小さなサイズに折りたたむことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開するとドームやアーチやタワー等の様々な形状の骨組みを提供し、折りたたむとコンパクトに収納できるシザーズ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記機能を有するシザーズ構造体が提案されている。シザーズ構造体は、単位シザーズの集合体であり、隣接する単位シザーズの端部同士がジョイントによって接続された構造を備えている。単位シザーズは、2本のストラットを交点で開閉可能に接続したものであり、開閉可能なX形状となっている。交点の位置は中点に限られず、展開したときの形状に応じて選択される。各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットの端部が回転可能に接続されている。隣接する単位シザーズのストラットの端部が同一のジョイントに接続されることによって、ストラットの端部同士が回転可能に接続されている。
単位シザーズの交点の位置と同一のジョイントに接続する単位シザーズの数を選択することによって、展開したときの形状を自在に決定することができる。
ジョイントは幾何学的中心から放射状に拡がる複数枚(原則として3枚以上であることが必要であるが、立体形状の端部に用いるジョイントであれば2枚であることもある)の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転可能であってもよいし、回転不能であってもよい。前者のシザーズ構造体が特許文献1に開示されており、後者のシザーズ構造体が特許文献1と特許文献2に開示されている。前者のシザーズ構造体の方が、展開したときの形状自由度が高いが、後者のシザーズ構造体でも、コンパクトに収納しておいて展開することによって予定している形状を実現することができる。
シザーズ構造体は、地上作業で組立てておくことができ、コンパクトに収納して施工地に運搬することができ、地上で展開作業することによって短時間のうちに予定している立体形状に展開することができる。大規模な場合には、クレーン作業等を利用することになるが、基本的には骨組みの一部を引くことによって予定している立体形状に展開することができるために、簡単な作業で短時間のうちに予定している立体形状出現させることができる。
展開したシザーズ構造体は、骨組みの一部を拘束することによって展開した形状に維持できる。必要に応じてワイヤを併用することによって、強度を増大することができる。また拘束を解くことによって再びコンパクトに収納することもできる。
【0003】
【特許文献1】特許第3455221号公報
【特許文献2】特開2002−309674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシザーズ構造体は、幾何学的中心から放射状に拡がる複数枚の片を持つジョイントを利用しており、隣接するジョイントの片と片が当接してしまうと、それ以上には小さく折りたたむことができなかった。それでも、小さく折りたたんだ状態から巨大な形状に展開することができたが、さらに小さく折りたたみたいという要求が存在する。
本発明は、さらに小さく折りたたむことができるシザーズ構造体を提供するために、創作された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシザーズ構造体は、従来のシザーズ構造体の基本構造を備えており、2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズの複数個を利用する。隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されている。正確にいうと、各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されることによって、シザーズ構造体を構成している。
本発明のシザーズ構造体は、各ジョイントのそれぞれの片が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されていることを特徴とする。
(その作用と効果)
本発明のシザーズ構造体によると、隣接するジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがなく、片と片やストラットとストラットが重なり合うまで小さく折りたたむことができる。単位シザーズの2本のストラットが同一直線状に重なり合うまで小さく折りたたむことができる。
従来の折りたたみ状態に比して、長さで約1/2であり面積で約1/4の小さなサイズに折りたたむことができる。
オフセット距離は、少なくとも片の厚みの半分以上であればよい。ここでいうオフセット距離とは、片の中心線と隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線の間の距離を言う。片の外側にストラットを接続する構造を採用すると、片の厚みの半分に等しい距離だけオフセットすれば、ジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがない。
【0006】
(一つの好ましい手段)
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有しており、その間隙に他方の部材が挿入されている構造が好ましい。
例えばストラットの端部が厚み方向に2分割されており、その間の間隙にジョイント片が挿入されている構造、あるいは、ジョイント片が厚み方向に2分割されており、その間の間隙にストラットの端部が挿入されている構造が好ましい。
(その作用と効果)
この構造によると、ストラットとジョイントを回転可能に接続するピンないしボルトに引き抜き力が作用しづらい。このために、例えばストラットとジョイントを接続するピンにCリングを嵌めるといった簡単な作業でピンの抜けどめすることができる。
【0007】
(一つの好ましい関係)
ストラットの2分割された間隙にジョイント片が挿入される場合には、オフセット距離をストラットの端部の厚みの半分以上とすることが好ましい(当然にジョイント片の厚みの半分以上の距離をオフセットすることになる)。その条件であれば、隣接するジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがない。ストラットの断面が長さ方向に一様である場合には、オフセット距離をストラットの厚みの半分に等しくすることが好ましい。この場合、ストラットの交点において2本のストラットの面と面が接触する位置関係となり、ストラットに曲げ応力をかけて接続する必要がなくなる。
ジョイント片の2分割された間隙に、端部において扁平化されたストラットが挿入される場合には、オフセット距離を扁平化されていないストラットの厚みの半分に等しくすることが好ましい。この場合、ストラットの交点において2本のストラットの面と面が接触する位置関係となり、ストラットに曲げ応力をかけて接続する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)
ジョイントは幾何学的中心から略放射状(正確にはオフセットされた放射状であり、いわゆる「マンジ」形状に近似する)に拡がる複数の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転可能である。
(形態2)
ジョイントは幾何学的中心から略放射状(正確にはオフセットされた放射状であり、いわゆる「マンジ」形状に近似する)に拡がる複数の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転不能である。
(形態3)
2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズを複数備えており、
隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されており、
各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されており、
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有し、
その間隙に他方の部材が挿入されていることを特徴とするシザーズ構造体。
この構造によると、ストラットとジョイントを回転可能に接続するピンないしボルトに引き抜き力が作用しづらい。ストラットとジョイントを接続するピンにCリングを嵌めることで簡単に抜けどめすることができる。
ストラットとジョイントをそれぞれの片側から重ね合わせてボルトで連結する構造によると、ボルトを引き抜く力が作用しやすい。抜けどめのためにはボルトを強く締めることが必要であり、回転可能に維持するためにはボルトを強く締められないというディレンマが存在する。
一方の部材の間隙に他方の部材を挿入する構造は、ジョイント片をオフセットしてコンパクトに折りたたむ技術と組合わせて実施することができるが、独立に実施することもでき、この構造自体で有用性を備えている。
【実施例】
【0009】
図1は、シザーズ構造体の一部を分解して斜視している。ストラット2bとストラット6bが、交点でピン12bによって開閉可能に接続されており、単位シザーズ10bを構成している。単位シザーズ10bはX字形状をしており、その広がり角が可変である。隣接する単位シザーズ10aも、2本のストラット2aとストラット6aが交点でピン12aによって開閉可能に接続されている。
隣接する単位シザーズ10a,10bのストラット2a、6bの端部同士は、ジョイント20aによって接続されている。
ジョイント20aは、略放射状に拡がる複数の片を備えており、それぞれの片にストラットがピン(図1では図示されていない)によって回転可能に接続されている。
隣接する単位シザーズがジョイント20によって接続されている構造は、X方向とY方向の双方に繰返されている。
このシザーズ構造体は、小さく折りたたむことができ、いずれかの単位シザーズを拡げると、それによってすべての単位シザーズが拡げられ、大きな立体形状を実現する。
単位シザーズにおける交点12の位置(中点には限られない)と、ジョイントに接続する単位シザーズの数と、単位シザーズの集合で構成する閉ループの辺の数等を調整することによって、展開したときの形状を自在に選択することができる。予め用意しておいたシザーズ構造体をコンパクトに収納した状態で施工地に運搬し、そこで展開することによって短時間のうちに大規模な立体形状を出現させることができる。逆に、短時間のうちに小さく折りたたんでしまうこともできる。
【0010】
図2は、折りたたんだシザーズ構造体を、ストラットの長手方向から見た図を示している。ジョイント20a、20b等は、すべて同じ形状を備えており、以下では添え字を省略して共通に説明する。
ジョイント20は、ほほ放射状に拡がる4片22,24,26,28を備えている。これらの片22,24,26,28は、ピン21の周りに回転可能であり、ピン21を幾何学的中心としている。
片22,24,26,28は、隣接するジョイント(例えば20aと20b)の中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されている。
【0011】
図1によく示されているように、ストラットの端部は厚み方向に2分割され、厚み方向の中央位置に間隙を備えている。その間隙の幅はジョイントの片22,24,26,28の厚みよりも大きく、間隙にジョイントの片22,24,26,28を挿入することができる。その状態で、ジョイント片22にストラット4がピン23によって回転自在に接続され、ジョイント片24にストラット6がピン25によって回転自在に接続され、ジョイント片26にストラット8がピン27によって回転自在に接続され、ジョイント片28にストラット2がピン29によって回転自在に接続されている。
ジョイント片22,24,26,28が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されているために、小さく折りたたんでも隣接するジョイントの片(24と28、22と26)同士が当接することがない。あるいは隣接するストラット(2と6、4と8)が当接することもない。隣接するジョイントの片(24と28、22と26)あるいは隣接するストラット(2と6、4と8)が重なりあうまでコンパクトに折りたたむことができる。ジョイント20a,20bの関係に見ると、ジョイント片24aと28bが重なり合い、ストラット2bと6bが重なり合っていることがわかる。単位シザーズ10bを構成する2本のストラット2bと6bが同一直線状に重なり合うまでコンパクトに折りたためることが確認できる。
【0012】
ジョイント片22,24,26,28が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されていると、単位シザーズ10を構成する2本のストラット(2と6、4と8)は、交点において面と面が接触する関係におかれる。交点において接続するために2本のストラットに曲げ応力を加える必要もなく、空間を充填するためのスペーサを利用する必要もない。
またストラットの端部が厚み方向に2分割され、その間隙にジョイントの片22,24,26,28が挿入され、その状態を維持するようにピン23,25,27,29が利用されているために、隣接するストラット同士を離反させるような力が加わっても、ピン23,25,27,29を引き抜く力にはならない。そのために、ピン23,25,27,29は、ジョイント片22,24,26,28とストラット2,4,6,8を通過させてからCリングを嵌めるという簡単な操作で抜けどめすれば足りている。
【0013】
以下では各種の変形を示す。以下の変形例のいずれも本発明に属するが、本発明がこれらの変形例に限られるものではない。
図3のように、ジョイント片42,44,46,48を厚み方向に2分割し、厚み方向の中央位置に確保された間隙に、ストラット2,4,6,8を挿入してもよい。ジョイント片42,44,46,48が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されていれば、折りたたんだときに片と片が当接することがない。
ストラット2,4,6,8がパイプ材で構成されている場合には、パイプ端部をつぶすことによって、ジョイント片の間隙に挿入できる端部とすることができる。
ジョイント片42,44,46,48の厚みよりもパイプ材のほうが太い場合には、パイプ材の厚みの半分に等しい距離だけオフセットさせることが好ましい。パイプ材に曲げ応力を加えないで交点で接続することができる。
図4のように、ジョイント片52,54,56,58と、ストラット2,4,6,8を、それぞれの片側から重ね合わせた状態で、ピン53,55,57,59で回転可能としてもよい。長手方向に断面が一様なストラット2,4,6,8を用いる場合には、ジョイント片52,54,56,58が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みにジョイント片52,54,56,58の厚みの半分を加えた距離だけオフセットした直線上に配置しておく。小さく折りたたんでも、隣接するストラット(2と6、4と8)同士が当接することがない。隣接するストラット(2と6、4と8)が同一直線状に重なるまでコンパクトに折りたたむことができる。
ジョイント片52,54,56,58の外側にストラット2,4,6,8を配置してもよい。この場合には、ジョイント片52,54,56,58の厚みの半分に等しい距離だけオフセットすればよい。隣接するジョイント片52,54,56,58が当接することがない。隣接するストラットが同一直線状に重なるまでコンパクトに折りたたむことができる。
図5に示すように、ジョイント20はピン21の周りに回転可能である。片22,24,26,28同士のなす角を自在に調整することができる。この性質を利用すると、展開することによって非常に複雑な立体形状を出現させることが可能となる。
図6に示すように、ジョイント60の片62,64,66,68同士のなす角が固定されていてもよい。実現可能な形状は制約されるが、それでも小さく折りたたんでおいて大きく展開することができる。コスト的には、片が固定されているジョイントのほうが有利なこともある。
図7と図8に示すように一つのジョイントに用意しておく片の数は6枚でもよく、図9と図10に示すように片の数は5枚でもよく、図11と図12に示すように片の数は3枚でもよい。3枚以上であればよい。
いずれの枚数でも、図7、図9、図11に示すように片同士のなす角が固定されていてもよいし、図8、図10、図12に示すように片同士のなす角が可変であってもよい。
一つのシザーズ構造体の中で、片の数を異にするジョイントを使い分けてもよく、あるいは、片同士のなす角が固定されているジョイントと片同士のなす角が可変であるジョイントを使い分けてもよい。
これらの自由度を活用すると、極めて複雑な立体形状すら折りたたみ可能となり、展開することにって極めて複雑な立体形状を短時間で出現させることができる。
【0014】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シザーズ構造体の一部を分解して斜視した図。
【図2】折りたたんだシザーズ構造体をストラットの長手方向から見た図。
【図3】ジョイントの変形例1を示す図。
【図4】ジョイントの変形例2を示す図。
【図5】ジョイントの変形例3を示す図。
【図6】ジョイントの変形例4を示す図。
【図7】ジョイントの変形例5を示す図。
【図8】ジョイントの変形例6を示す図。
【図9】ジョイントの変形例7を示す図。
【図10】ジョイントの変形例8を示す図。
【図11】ジョイントの変形例9を示す図。
【図12】ジョイントの変形例10を示す図。
【符号の説明】
【0016】
2,4,6,8:ストラット
10:単位シザーズ
12:ピン
20:ジョイント
22,24,26,28:ジョイント片
23,25,27,29:ピン
21:ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開するとドームやアーチやタワー等の様々な形状の骨組みを提供し、折りたたむとコンパクトに収納できるシザーズ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記機能を有するシザーズ構造体が提案されている。シザーズ構造体は、単位シザーズの集合体であり、隣接する単位シザーズの端部同士がジョイントによって接続された構造を備えている。単位シザーズは、2本のストラットを交点で開閉可能に接続したものであり、開閉可能なX形状となっている。交点の位置は中点に限られず、展開したときの形状に応じて選択される。各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットの端部が回転可能に接続されている。隣接する単位シザーズのストラットの端部が同一のジョイントに接続されることによって、ストラットの端部同士が回転可能に接続されている。
単位シザーズの交点の位置と同一のジョイントに接続する単位シザーズの数を選択することによって、展開したときの形状を自在に決定することができる。
ジョイントは幾何学的中心から放射状に拡がる複数枚(原則として3枚以上であることが必要であるが、立体形状の端部に用いるジョイントであれば2枚であることもある)の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転可能であってもよいし、回転不能であってもよい。前者のシザーズ構造体が特許文献1に開示されており、後者のシザーズ構造体が特許文献1と特許文献2に開示されている。前者のシザーズ構造体の方が、展開したときの形状自由度が高いが、後者のシザーズ構造体でも、コンパクトに収納しておいて展開することによって予定している形状を実現することができる。
シザーズ構造体は、地上作業で組立てておくことができ、コンパクトに収納して施工地に運搬することができ、地上で展開作業することによって短時間のうちに予定している立体形状に展開することができる。大規模な場合には、クレーン作業等を利用することになるが、基本的には骨組みの一部を引くことによって予定している立体形状に展開することができるために、簡単な作業で短時間のうちに予定している立体形状出現させることができる。
展開したシザーズ構造体は、骨組みの一部を拘束することによって展開した形状に維持できる。必要に応じてワイヤを併用することによって、強度を増大することができる。また拘束を解くことによって再びコンパクトに収納することもできる。
【0003】
【特許文献1】特許第3455221号公報
【特許文献2】特開2002−309674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシザーズ構造体は、幾何学的中心から放射状に拡がる複数枚の片を持つジョイントを利用しており、隣接するジョイントの片と片が当接してしまうと、それ以上には小さく折りたたむことができなかった。それでも、小さく折りたたんだ状態から巨大な形状に展開することができたが、さらに小さく折りたたみたいという要求が存在する。
本発明は、さらに小さく折りたたむことができるシザーズ構造体を提供するために、創作された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシザーズ構造体は、従来のシザーズ構造体の基本構造を備えており、2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズの複数個を利用する。隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されている。正確にいうと、各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されることによって、シザーズ構造体を構成している。
本発明のシザーズ構造体は、各ジョイントのそれぞれの片が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されていることを特徴とする。
(その作用と効果)
本発明のシザーズ構造体によると、隣接するジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがなく、片と片やストラットとストラットが重なり合うまで小さく折りたたむことができる。単位シザーズの2本のストラットが同一直線状に重なり合うまで小さく折りたたむことができる。
従来の折りたたみ状態に比して、長さで約1/2であり面積で約1/4の小さなサイズに折りたたむことができる。
オフセット距離は、少なくとも片の厚みの半分以上であればよい。ここでいうオフセット距離とは、片の中心線と隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線の間の距離を言う。片の外側にストラットを接続する構造を採用すると、片の厚みの半分に等しい距離だけオフセットすれば、ジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがない。
【0006】
(一つの好ましい手段)
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有しており、その間隙に他方の部材が挿入されている構造が好ましい。
例えばストラットの端部が厚み方向に2分割されており、その間の間隙にジョイント片が挿入されている構造、あるいは、ジョイント片が厚み方向に2分割されており、その間の間隙にストラットの端部が挿入されている構造が好ましい。
(その作用と効果)
この構造によると、ストラットとジョイントを回転可能に接続するピンないしボルトに引き抜き力が作用しづらい。このために、例えばストラットとジョイントを接続するピンにCリングを嵌めるといった簡単な作業でピンの抜けどめすることができる。
【0007】
(一つの好ましい関係)
ストラットの2分割された間隙にジョイント片が挿入される場合には、オフセット距離をストラットの端部の厚みの半分以上とすることが好ましい(当然にジョイント片の厚みの半分以上の距離をオフセットすることになる)。その条件であれば、隣接するジョイントの片と片、あるいは隣接するストラットとストラットが当接してしまうことがない。ストラットの断面が長さ方向に一様である場合には、オフセット距離をストラットの厚みの半分に等しくすることが好ましい。この場合、ストラットの交点において2本のストラットの面と面が接触する位置関係となり、ストラットに曲げ応力をかけて接続する必要がなくなる。
ジョイント片の2分割された間隙に、端部において扁平化されたストラットが挿入される場合には、オフセット距離を扁平化されていないストラットの厚みの半分に等しくすることが好ましい。この場合、ストラットの交点において2本のストラットの面と面が接触する位置関係となり、ストラットに曲げ応力をかけて接続する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)
ジョイントは幾何学的中心から略放射状(正確にはオフセットされた放射状であり、いわゆる「マンジ」形状に近似する)に拡がる複数の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転可能である。
(形態2)
ジョイントは幾何学的中心から略放射状(正確にはオフセットされた放射状であり、いわゆる「マンジ」形状に近似する)に拡がる複数の片を持ち、各片は幾何学的中心の周りに回転不能である。
(形態3)
2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズを複数備えており、
隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されており、
各ジョイントは複数の片を備えており、その片にストラットが回転可能に接続されており、
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有し、
その間隙に他方の部材が挿入されていることを特徴とするシザーズ構造体。
この構造によると、ストラットとジョイントを回転可能に接続するピンないしボルトに引き抜き力が作用しづらい。ストラットとジョイントを接続するピンにCリングを嵌めることで簡単に抜けどめすることができる。
ストラットとジョイントをそれぞれの片側から重ね合わせてボルトで連結する構造によると、ボルトを引き抜く力が作用しやすい。抜けどめのためにはボルトを強く締めることが必要であり、回転可能に維持するためにはボルトを強く締められないというディレンマが存在する。
一方の部材の間隙に他方の部材を挿入する構造は、ジョイント片をオフセットしてコンパクトに折りたたむ技術と組合わせて実施することができるが、独立に実施することもでき、この構造自体で有用性を備えている。
【実施例】
【0009】
図1は、シザーズ構造体の一部を分解して斜視している。ストラット2bとストラット6bが、交点でピン12bによって開閉可能に接続されており、単位シザーズ10bを構成している。単位シザーズ10bはX字形状をしており、その広がり角が可変である。隣接する単位シザーズ10aも、2本のストラット2aとストラット6aが交点でピン12aによって開閉可能に接続されている。
隣接する単位シザーズ10a,10bのストラット2a、6bの端部同士は、ジョイント20aによって接続されている。
ジョイント20aは、略放射状に拡がる複数の片を備えており、それぞれの片にストラットがピン(図1では図示されていない)によって回転可能に接続されている。
隣接する単位シザーズがジョイント20によって接続されている構造は、X方向とY方向の双方に繰返されている。
このシザーズ構造体は、小さく折りたたむことができ、いずれかの単位シザーズを拡げると、それによってすべての単位シザーズが拡げられ、大きな立体形状を実現する。
単位シザーズにおける交点12の位置(中点には限られない)と、ジョイントに接続する単位シザーズの数と、単位シザーズの集合で構成する閉ループの辺の数等を調整することによって、展開したときの形状を自在に選択することができる。予め用意しておいたシザーズ構造体をコンパクトに収納した状態で施工地に運搬し、そこで展開することによって短時間のうちに大規模な立体形状を出現させることができる。逆に、短時間のうちに小さく折りたたんでしまうこともできる。
【0010】
図2は、折りたたんだシザーズ構造体を、ストラットの長手方向から見た図を示している。ジョイント20a、20b等は、すべて同じ形状を備えており、以下では添え字を省略して共通に説明する。
ジョイント20は、ほほ放射状に拡がる4片22,24,26,28を備えている。これらの片22,24,26,28は、ピン21の周りに回転可能であり、ピン21を幾何学的中心としている。
片22,24,26,28は、隣接するジョイント(例えば20aと20b)の中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されている。
【0011】
図1によく示されているように、ストラットの端部は厚み方向に2分割され、厚み方向の中央位置に間隙を備えている。その間隙の幅はジョイントの片22,24,26,28の厚みよりも大きく、間隙にジョイントの片22,24,26,28を挿入することができる。その状態で、ジョイント片22にストラット4がピン23によって回転自在に接続され、ジョイント片24にストラット6がピン25によって回転自在に接続され、ジョイント片26にストラット8がピン27によって回転自在に接続され、ジョイント片28にストラット2がピン29によって回転自在に接続されている。
ジョイント片22,24,26,28が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されているために、小さく折りたたんでも隣接するジョイントの片(24と28、22と26)同士が当接することがない。あるいは隣接するストラット(2と6、4と8)が当接することもない。隣接するジョイントの片(24と28、22と26)あるいは隣接するストラット(2と6、4と8)が重なりあうまでコンパクトに折りたたむことができる。ジョイント20a,20bの関係に見ると、ジョイント片24aと28bが重なり合い、ストラット2bと6bが重なり合っていることがわかる。単位シザーズ10bを構成する2本のストラット2bと6bが同一直線状に重なり合うまでコンパクトに折りたためることが確認できる。
【0012】
ジョイント片22,24,26,28が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されていると、単位シザーズ10を構成する2本のストラット(2と6、4と8)は、交点において面と面が接触する関係におかれる。交点において接続するために2本のストラットに曲げ応力を加える必要もなく、空間を充填するためのスペーサを利用する必要もない。
またストラットの端部が厚み方向に2分割され、その間隙にジョイントの片22,24,26,28が挿入され、その状態を維持するようにピン23,25,27,29が利用されているために、隣接するストラット同士を離反させるような力が加わっても、ピン23,25,27,29を引き抜く力にはならない。そのために、ピン23,25,27,29は、ジョイント片22,24,26,28とストラット2,4,6,8を通過させてからCリングを嵌めるという簡単な操作で抜けどめすれば足りている。
【0013】
以下では各種の変形を示す。以下の変形例のいずれも本発明に属するが、本発明がこれらの変形例に限られるものではない。
図3のように、ジョイント片42,44,46,48を厚み方向に2分割し、厚み方向の中央位置に確保された間隙に、ストラット2,4,6,8を挿入してもよい。ジョイント片42,44,46,48が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分に等しい距離だけオフセットした直線上に配置されていれば、折りたたんだときに片と片が当接することがない。
ストラット2,4,6,8がパイプ材で構成されている場合には、パイプ端部をつぶすことによって、ジョイント片の間隙に挿入できる端部とすることができる。
ジョイント片42,44,46,48の厚みよりもパイプ材のほうが太い場合には、パイプ材の厚みの半分に等しい距離だけオフセットさせることが好ましい。パイプ材に曲げ応力を加えないで交点で接続することができる。
図4のように、ジョイント片52,54,56,58と、ストラット2,4,6,8を、それぞれの片側から重ね合わせた状態で、ピン53,55,57,59で回転可能としてもよい。長手方向に断面が一様なストラット2,4,6,8を用いる場合には、ジョイント片52,54,56,58が、隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から、ストラット2,4,6,8の厚みにジョイント片52,54,56,58の厚みの半分を加えた距離だけオフセットした直線上に配置しておく。小さく折りたたんでも、隣接するストラット(2と6、4と8)同士が当接することがない。隣接するストラット(2と6、4と8)が同一直線状に重なるまでコンパクトに折りたたむことができる。
ジョイント片52,54,56,58の外側にストラット2,4,6,8を配置してもよい。この場合には、ジョイント片52,54,56,58の厚みの半分に等しい距離だけオフセットすればよい。隣接するジョイント片52,54,56,58が当接することがない。隣接するストラットが同一直線状に重なるまでコンパクトに折りたたむことができる。
図5に示すように、ジョイント20はピン21の周りに回転可能である。片22,24,26,28同士のなす角を自在に調整することができる。この性質を利用すると、展開することによって非常に複雑な立体形状を出現させることが可能となる。
図6に示すように、ジョイント60の片62,64,66,68同士のなす角が固定されていてもよい。実現可能な形状は制約されるが、それでも小さく折りたたんでおいて大きく展開することができる。コスト的には、片が固定されているジョイントのほうが有利なこともある。
図7と図8に示すように一つのジョイントに用意しておく片の数は6枚でもよく、図9と図10に示すように片の数は5枚でもよく、図11と図12に示すように片の数は3枚でもよい。3枚以上であればよい。
いずれの枚数でも、図7、図9、図11に示すように片同士のなす角が固定されていてもよいし、図8、図10、図12に示すように片同士のなす角が可変であってもよい。
一つのシザーズ構造体の中で、片の数を異にするジョイントを使い分けてもよく、あるいは、片同士のなす角が固定されているジョイントと片同士のなす角が可変であるジョイントを使い分けてもよい。
これらの自由度を活用すると、極めて複雑な立体形状すら折りたたみ可能となり、展開することにって極めて複雑な立体形状を短時間で出現させることができる。
【0014】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シザーズ構造体の一部を分解して斜視した図。
【図2】折りたたんだシザーズ構造体をストラットの長手方向から見た図。
【図3】ジョイントの変形例1を示す図。
【図4】ジョイントの変形例2を示す図。
【図5】ジョイントの変形例3を示す図。
【図6】ジョイントの変形例4を示す図。
【図7】ジョイントの変形例5を示す図。
【図8】ジョイントの変形例6を示す図。
【図9】ジョイントの変形例7を示す図。
【図10】ジョイントの変形例8を示す図。
【図11】ジョイントの変形例9を示す図。
【図12】ジョイントの変形例10を示す図。
【符号の説明】
【0016】
2,4,6,8:ストラット
10:単位シザーズ
12:ピン
20:ジョイント
22,24,26,28:ジョイント片
23,25,27,29:ピン
21:ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズを複数備えており、
隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されており、
各ジョイントは複数の片を備えており、それぞれの片は隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されており、
その片にストラットが回転可能に接続されていることを特徴とするシザーズ構造体。
【請求項2】
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有し、
その間隙に他方の部材が挿入されていることを特徴とする請求項1のシザーズ構造体。
【請求項1】
2本のストラットが交点で開閉可能に接続されている単位シザーズを複数備えており、
隣接する単位シザーズのストラットの端部同士がジョイントによって接続されており、
各ジョイントは複数の片を備えており、それぞれの片は隣接するジョイントの中心同士を結ぶ直線から片の厚みの半分以上の距離だけオフセットした直線上に配置されており、
その片にストラットが回転可能に接続されていることを特徴とするシザーズ構造体。
【請求項2】
ストラットの端部又はジョイントの片のいずれかは、厚み方向に分割されるとともに、その間に間隙を有し、
その間隙に他方の部材が挿入されていることを特徴とする請求項1のシザーズ構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−28957(P2006−28957A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211570(P2004−211570)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(504276750)有限会社阿竹研究所 (1)
【出願人】(501280389)有限会社内山協一デザインスタジオ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(504276750)有限会社阿竹研究所 (1)
【出願人】(501280389)有限会社内山協一デザインスタジオ (1)
【Fターム(参考)】
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