説明

システム規模推計システム、システム規模推計方法及びシステム規模推計プログラム

【課題】開発するシステムの規模を的確かつ効率的に算出するためのシステム規模推計システム、システム規模推計方法及びシステム規模推計プログラムを提供する。
【解決手段】演算処理部20のFP数推計式パラメータ生成処理部23は、案件実績データ記憶部21に記憶されている案件実績データを取得し、パラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数及び他システム連携数)毎に集計を行なう。そして、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、集計した各パラメータを用いて各ファンクション(EI、EO、EQ、ILF、EIF)の表現式を算出する。次に、ファンクション数の統計的平均比率を用いてパラメータの係数(A,B,C,D)を算出し、推計式パラメータ記憶部24に記憶する。見積対象システムの各パラメータを取得した演算処理部20は、この係数を用いてFP数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開発するシステムの規模を、簡易かつ効率的に推定するためのシステム規模推計システム、システム規模推計方法及びシステム規模推計プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
システム開発を行なう場合、システムの規模を定量化し、この規模に基づいて、開発計画を立てたり、開発費を算定したりすることがある。この算定を行なうために、従来は、ソフトウェアのソースコードの行数(SLOC; Source Lines of Code)やファイルサイズなどをソフトウェアの規模の尺度として用いることがある。更に、より客観的・定量的にソフトウェアの規模を算出するために、FP法(ファンクションポイント法)も開発されている。このFP法では、ソフトウェア内の入出力など機能(ファンクション)毎に分類する。そして、ファンクション毎にレコードの種類の数やデータ項目数などからファンクションの「複雑さ」を定義し、個別のファンクションの評価値を算出する。
【0003】
更に、精度を向上して効率的にFP数(ファンクションポイント数)を算出するための見積支援システムも検討されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、関係近似式データベースに、要因情報毎に、対応する実績情報から予め算出した関係近似式を格納する。そして、制御装置が、開発上の条件と仕様情報の入力を受けてFP数を算出し、条件に合致する要因情報に対応する関係近似式に算出したFP数を当てはめて見積工程数を算出する。
【0004】
また、FP法の1つであるNESMA法(Netherlands Software Metrics Association)では、次の式(6)によりFP数を算出する。
FP数=4×EI+5×EO+4×EQ+7×ILF+5×EIF …(6)
ここで、EIは入力処理機能の数、EOはデータ加工出力機能の数、EQはデータ参照機能の数、ILFは内部論理ファイルの数、EIFは外部インターフェースファイルの数である。
【特許文献1】特開2000−339147号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなFP数を用いることにより、システムの規模を評価するための指標を共通化することができる。例えば、企業内におけるユーザ部門と開発部門との間においても規模や開発費用に関して意識合わせを行なうことができる。しかし、FP数を算定するためには、情報システム及びFP法に対する知識が必要とされるため、FP法に関するスキルに乏しいユーザ部門が直接算定することは困難な状況であった。このため、実際には、開発部門が工数の見積やFP数の算定を行ない、それをベースにユーザ部門が開発費用を見積もるといった作業を行なっていた。この場合、次の3点の課題が生じることがある。
【0006】
第1の課題は、システム設計の早い段階、例えばシステム開発計画書の段階では、FP数や予算の算定が困難であるというものである。この段階では、詳細な仕様が確定しておらず、FP法が要求するファンクションをカウントすることは困難である。従って、FP法による予算算定手法は確立されていても、その前提となるFP数が算出できないため、ユーザ部門では予算算定が困難となっていた。
【0007】
第2の課題は、FP数や工数の妥当性を評価することができないことである。ユーザ部
門は予算化のために、開発部門に参考見積を依頼する。その場合、ユーザ部門は予算額の妥当性を確認するために提示された工数の妥当性を評価する必要があるが、先の第1の課題と同様に評価が困難となっていた。また、ユーザ部門にFP法を理解している担当者がいない場合、要件を定義した後の開発段階に移行しても、開発部門が提示するFP数の妥当性を検証することが困難である。
【0008】
第3の課題は、システムの規模の修正が困難なことである。本来、FP法を用いた場合、ユーザ部門において、機能を増減させることにより開発費を調整できる。しかし、上述のように、詳細な仕様が確定していない計画段階ではFP数の算出が困難であり、開発段階に移行してもユーザ部門の担当者のスキルでは、当初のシステム開発規模からどの機能を削減すればFP数が削減でき、開発費が低減できるかを容易に把握できないことが多い。このため、開発費の調整が困難になっていた。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされ、この目的は、開発するシステムの規模を的確かつ効率的に算出するためのシステム規模推計システム、システム規模推計方法及びシステム規模推計プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する手段と、前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する手段と、入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5)に前記集計パラメータセットを代入する手段と、ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する手段と、前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成手段と、新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシステム規模推計システムにおいて、前記FP数算出手段がFP数の推計指示を受けた場合には、前記推計式生成手段が、前記案件実績毎のパラメータセットを取得し、前記パラメータセットを用いて推計式を生成し、前記FP数算出手段はこの推計式を用いてFP数を推定することを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシステム規模推計システムにおいて、設計したシステムのソフトウェアのプログラムを分析し、各システムに用いられている画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数からなるパラメータから構成されたパラメータセットをシステム毎に算出する分析手段を更に備えたことを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム規模推計システムにおいて、前記算出した推計式を前記案件実績に適用して、FP数を算出し、入力された工数と推計式により算出されたFP数とを用いて生産性指標を算出し、前記生産性指標をFP数算出手段において推定されたFP数に乗算して工数見積を算出する手段を、更に備えたことを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のシステム規模推計システムにおいて、入力
された人件費単価と前記工数見積とを乗算して開発見積を算出する手段を、更に備えたことを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する段階と、前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する段階と、入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5)に前記集計パラメータセットを代入する段階と、ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する段階と、前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成段階と、新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出段階と
を備えたことを要旨とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する手段と、前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する手段と、入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5)に前記集計パラメータセットを代入する手段と、ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する手段と、前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成手段と、新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出手段と
を実行させることを要旨とする。
入力処理機能=fd×p×画面数 …(1)
データ加工出力機能=(fd×q×画面数)+帳票数 …(2)
データ参照機能=fd×(1−p−q)×画面数 …(3)
内部論理ファイル=内部ファイル数 …(4)
外部インターフェースファイル=sf×他システム連携数 …(5)
【0017】
(作用)
請求項1、6又は7に記載の発明によれば、新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を推計式に代入してFP数を算出する。この推計式では、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数をパラメータとしており、詳細な仕様が確定していない段階であっても、FP法の知識がない場合でもあっても、FP数を算定することができる。この画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式で算出したFP数は、従来のFP法により算出したFP数が示すシステムの規模とほぼ等しい精度である。従って、開発するシステムの規模を的確かつ効率的に算出することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、FP数算出手段がFP数の推計指示を受けた場合には、推計式生成手段が、案件実績毎のパラメータセットを取得する。そして、パラメータセ
ットを用いて推計式を生成し、FP数算出手段はこの推計式を用いてFP数数を推定する。これにより、最新の実績を考慮して、推計式パラメータを算出し、これを用いてシステムの規模を算出することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、ソフトウェアのプログラムを分析して、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を算出するので、より効率的に推計式パラメータを算出することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、推計式を案件実績に適用して、FP数を算出し、入力された工数とFP数とを用いて生産性指標を算出する。これにより、生産性指標をFP数算出手段において推定されたFP数に乗算して工数見積を算出することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、システムは、見積対象システムに関して算出したFP数を、生産性指標を用いて工数に換算し、更に従来から利用されている人件費単価を用いて開発費を算出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、開発するシステムの規模を的確かつ効率的に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化したシステム規模推計システムの一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のシステム規模推計システムは、入力部10、演算処理部20及び出力部30を備えている。
【0024】
入力部10は、演算処理部20に各種データを入力するための手段であり、例えば、キーボードやポインティング・デバイスなどを用いる。そして、入力部10は、入力された案件実績データや人件費単価データなどを演算処理部20に供給する。
【0025】
演算処理部20は、後述するように、パラメータセットを取得する段階、集計パラメータセットを算出する段階、ファンクションパラメータを用いて表現する段階、ファンクション別の統計的平均比率を取得する段階、推計式生成段階及びFP数算出段階を行なう。本実施形態では、FP数(ファンクションポイント数)は、システムの規模を示す指標を意味する。そして、このシステム規模推計プログラムを実行することにより、演算処理部20は、パラメータセットを取得する手段、集計パラメータセットを算出する手段、ファンクションパラメータを用いて表現する手段、ファンクション別の統計的平均比率を取得する手段、推計式生成手段及びFP数算出手段として機能する。以下、この演算処理部20について詳述する。
【0026】
演算処理部20は、案件実績データ記憶部21及び人件費単価データ記憶部22を備えている。
案件実績データ記憶部21には、既に開発されたシステムの案件毎の案件実績データ210が記録される。この案件実績データ210は、図2に示すように、開発したシステムにおける案件番号、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数及び工数に関するデータを含んで構成される。
【0027】
案件番号データ領域には、開発されたシステムの各案件を特定するための整理番号に関するデータが記録される。
画面数データ領域には、この案件のシステムにおいて用いられている画面の数に関するデータが記録される。
【0028】
帳票数データ領域には、この案件のシステムにおいて出力される帳票の数に関するデータが記録される。
内部ファイル数データ領域には、この案件のシステムにおいて使用される内部ファイルの数に関するデータが記録される。
【0029】
他システム連携数データ領域には、この案件のシステムにおいて、他のシステムと連携する数に関するデータが記録される。
工数データ領域には、この案件のシステムの開発において要した工数に関するデータが記録される。
【0030】
人件費単価データ記憶部22には、単位工数(1人につき1ヶ月)あたりの人件費単価に関するデータが記録される。
また、演算処理部20は、FP数推計式パラメータ生成処理部23、推計式パラメータ記憶部24及びFP数算出処理部25を備えている。
【0031】
FP数推計式パラメータ生成処理部23は、案件実績データ記憶部21に記憶している案件実績データ210に基づいて、後述するFP数推計式パラメータ生成処理によりFP数推計式パラメータの係数を算出する。ここで、FP数推計式パラメータとは、このFP数を算出するためのパラメータである。本発明では、このパラメータとして、上述した式(6)で用いた入力処理機能数EI、データ加工出力機能数EO、データ参照機能数EQ、内部論理ファイル数ILF及び外部インターフェースファイル数EIFの代わりに、画面数、帳票数、内部ファイル数及び他システム連携数を用いる。この場合、FP数は、次の式(7)を用いて算出することができる。
【0032】
FP数=A×画面数+B×帳票数+C×内部ファイル数+D×他システム連携数 …(7)
ここで、係数「A」は画面数、係数「B」は帳票数、係数「C」は内部ファイル数、係数「D」は他システム連携数に、それぞれ乗算する数値である。
【0033】
推計式パラメータ記憶部24は、FP数推計式パラメータ生成処理部23において生成されたパラメータの係数を記憶する。具体的には、図3に示すように、FP数を算出するときの各パラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数及び他システム連携数)毎に、各係数(A,B,C,D)に関するデータが記録される。
【0034】
FP数算出処理部25は、推計式パラメータ記憶部24に記録された係数を用いて、見積対象システムの画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の各パラメータからFP数を算出する。
【0035】
更に、演算処理部20は、生産性指標生成処理部26、生産性指標データ記憶部27、工数見積処理部28及び開発費見積処理部29を備えている。
生産性指標生成処理部26は、案件実績データ記憶部21に記憶された案件実績データ210を用いて生産性指標を算出する。ここで、生産性指標とは、単位FP数あたりの工数を意味する。
【0036】
生産性指標データ記憶部27には、生産性指標生成処理部26において生成された生産性指標(工数)に関するデータが記録される。
工数見積処理部28は、FP数算出処理部25において算出されたFP数と、生産性指標データ記憶部27に記憶された生産性指標とから、見積対象のシステム開発に必要な工数を算出する。
【0037】
開発費見積処理部29は、工数見積処理部28において算出された工数と、人件費単価データ記憶部22に記憶されている人件費単価とから、見積対象のシステムの開発費を算出する。
出力部30は、開発費見積処理部29が算出したシステムの開発費を出力するための手段であり、例えば表示装置又は印刷装置などを用いる。
【0038】
次に、上述のように構成されたシステムにおいて、開発費の見積を算出する場合の処理手順について、図4〜図6を用いて説明する。この処理を行なう場合には、過去に開発したシステムについての案件実績データ210を案件実績データ記憶部21に記憶させておく。具体的には、既に開発したシステムの案件番号、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数及び工数に関するデータを、案件実績データ210として記憶させる。更に、人件費単価データ記憶部22には人件費単価データを記憶させておく。
そして、入力部10からの指示に基づいて、演算処理部20のFP数推計式パラメータ生成処理部23は、図4に示すFP数推計式パラメータ生成処理を行なう。
【0039】
(FP数推計式パラメータ生成処理)
まず、演算処理部20は、FP数推計式を生成するためのパラメータを取得する(ステップS1−1)。具体的には、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、案件実績データ記憶部21に記憶されている案件実績データ210を取得する。
【0040】
次に、演算処理部20は、パラメータ毎に集計を行なう(ステップS1−2)。具体的には、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、取得したすべての案件実績データ210のパラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル及び他システム連携数)を、パラメータ毎に合計する。
【0041】
そして、演算処理部20のFP数推計式パラメータ生成処理部23は、集計した各パラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数)を、次の式(1)〜(5)に代入する(ステップS1−3)。
【0042】
EI=fd×p×画面数 …(1)
EO=(fd×q×画面数)+帳票数 …(2)
EQ=fd×(1−p−q)×画面数 …(3)
ILF=内部ファイル数 …(4)
EIF=sf×他システム連携数 …(5)
ここでは、まず一画面あたりの機能数を「fd」とする。そして、1画面に含まれる機能のうち、入力処理機能数EI、データ加工出力機能数EO、データ参照機能数EQに相当する割合をそれぞれ「p」,「q」,「1−p−q」とする。また、他システム連携数と外部インターフェースファイル数EIFとは比例すると仮定して、その比例係数を「sf」とする。
【0043】
次に、演算処理部20のFP数推計式パラメータ生成処理部23は、各ファンクション(EI、EO、EQ、ILF、EIF)の統計的平均比率を取得する(ステップS1−4)。各ファンクションの統計的平均比率は、例えば、ISBSG(International Software Benchmarking Standards Group)から発行された「The Benchmark-Release6」(19
99)に記載されている。これによると、入力処理機能数EIが33%、データ加工出力機能数EOが24%、データ参照機能数EQが16%、内部論理ファイル数ILFが33%、外部インターフェースファイル数EIFが5%とされている。そして、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、統計的平均比率に関するデータを記憶した所定のデータ記憶部から取得する。
【0044】
そして、演算処理部20は、上記係数(fd、p、q、sf)を算出する(ステップS1−5)。具体的には、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、ステップS1−3において算出した式(1)〜(5)が、ステップS1−4において取得した統計的平均比率となるように連立方程式を解いて、各係数(fd、p、q、sf)を算出する。
【0045】
次に、演算処理部20は、パラメータの係数(A,B,C,D)を算出し、推計式パラメータ記憶部24に記憶する(ステップS1−6)。具体的には、FP数推計式パラメータ生成処理部23は、算出した各係数(fd、p、q、sf)を、式(1)〜(5)に代入することにより、各ファンクション(EI、EO、EQ、ILF、EIF)をパラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数)を用いて表現する。次に、各ファンクション(EI、EO、EQ、ILF、EIF)を式(6)に代入することにより、FP数をパラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数)を用いて表現する。そして、各パラメータの係数(A,B,C,D)を特定して、各係数を各パラメータに対応付けて推計式パラメータ記憶部24に記憶する。
【0046】
(生産性指標生成処理)
次に、図5に示す生産性指標生成処理を説明する。
この処理で、まず、演算処理部20は、案件実績データ210を用いて、FP数算出処理を行なう(ステップS2−1)。具体的には、演算処理部20の生産性指標生成処理部26は、推計式パラメータ記憶部24に記憶された各パラメータの係数(A,B,C,D)を適用した式(7)に、案件実績データ記憶部21に記憶された画面数、帳票数、内部ファイル数及び他システム連携数を代入してFP数を算出する。ここでは、ステップS1−2において算出したパラメータ毎の集計値を用いる。
【0047】
次に、演算処理部20は、FP数と工数とを用いて生産性指標を算出し記録する(ステップS2−2)。具体的には、演算処理部20の生産性指標生成処理部26は、ステップS2−1で算出したFP数を、案件実績データ記憶部21に記憶された工数で除算して生産性指標を算出する。そして、生産性指標生成処理部26は、算出した生産性指標を生産性指標データ記憶部27に記録する。
【0048】
(開発費見積処理)
次に、演算処理部20における開発費見積処理を説明する。
開発費の見積を行なう場合には、入力部10を用いて、開発費の見積を行なうシステム(見積対象システム)で用いられる各パラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル数及び他システム連携数)を入力する。
【0049】
見積対象システムの各パラメータを取得した演算処理部20はFP数算出処理を行なう。具体的には、図6に示すように、演算処理部20のFP数算出処理部25は、取得した各パラメータに、推計式パラメータ記憶部24に記憶された係数(A,B,C,D)を、パラメータ毎に乗算し、その総和をFP数として算出する。
【0050】
次に、演算処理部20の工数見積処理部28は、FP数算出処理部25において算出されたFP数と、生産性指標データ記憶部27に記憶された生産性指標とを乗算することにより、見積対象システムの開発における見積工数を算出する。
【0051】
次に、演算処理部20の開発費見積処理部29は、工数見積処理部28において算出された見積工数と、人件費単価データ記憶部22に記憶された人件費単価とを乗算することにより、開発費見積を算出する。そして、演算処理部20の開発費見積処理部29は、算出した開発費見積を、出力部30を介して出力する。以上により、開発するシステムの費
用の見積を算出することができる。
【0052】
本実施形態のシステム規模推計システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 本実施形態では、式(7)を用いてFP数を算出する。この式では、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数をパラメータとしており、詳細な仕様が確定していない段階であっても、FP法の知識がない場合でもあっても、FP数を算定することができる。
【0053】
この式(7)の係数の算出に当たっては、式(1)〜(6)を用いる。このような係数算出方法の妥当性は、従来のFP法で算出したFP数を縦軸に、今回の式(7)式で算出したFP数を横軸にした回帰分析により検証した。この結果、複雑度を考慮したときの係数は1.20、複雑度を考慮しなかったときの係数は1.13と、両者ともほぼ1に等しい。係数が1であれば、従来の式(6)で算出したFP数と今回の式(7)で算出したFP数とが一致していることを意味することになる。このため、今回の式(7)で算出したFP数は、従来のFP数が示すシステムの規模とほぼ等しい精度であることがわかる。
【0054】
・ 本実施形態では、演算処理部20がFP数推計式パラメータ生成処理を実行し、FP数を推計するための算出式を生成する。この場合、演算処理部20が生成したFP数推計式について、案件実績データ記憶部21に記憶された案件実績データ210を用いて算出する。これにより、既存のシステムの開発実績を考慮したFP数推計式を算出することができる。特に、FP数推計式に用いるパラメータ(画面数、帳票数、内部ファイル及び他システム連携数)は、システム開発の背景(企業や開発組織、システム開発における技術動向)に応じて変化する。このような開発背景を考慮したFP数推計式を算出することができる。
【0055】
・ 本実施形態では、演算処理部20が生産性指標生成処理を実行し、FP数から工数を算出するための生産性指標を生成する。この場合、演算処理部20が生成したFP数推計式について、案件実績データ記憶部21に記憶された案件実績データ210を用いて算出する。これにより、既存のシステムの開発実績を考慮した生産性指標を算出することができる。
【0056】
・ 本実施形態では、人件費単価データ記憶部22には人件費単価が記録されている。これにより、見積対象システムに関して算出したFP数を、生産性指標を用いて工数に換算し、更に従来から利用されている人件費単価を用いて開発費を算出することができる。
【0057】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態では、FP数算出処理部25が用いる推計式パラメータは、見積対象システムの開発費を算出する前に予め推計式パラメータ記憶部24に記憶させた。推計式パラメータの算出のタイミングは、これに限定されるものではなく、システムの開発費見積処理を実行する度に実行してもよい。これにより、最新の実績を考慮して、推計式パラメータを算出し、これを用いてFP数に基づくシステムの規模や開発費を算出することができる。
【0058】
○ 上記実施形態では、案件実績データ記憶部21には、既に開発されたシステムの案件毎の案件実績データ210が記録される。この案件実績データ210は、開発したシステムにおける案件番号、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数及び工数に関するデータを含んで構成される。この案件実績データ210は、演算処理部20が、開発されたシステムを分析して記録してもよい。この場合、演算処理部20に、プログラム分析部を設けておく。そして、このプログラム分析部が、既に開発したシステムのプログ
ラムを取得し、このプログラムを分析して、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を算出する。これにより、より効率的に推計式パラメータを算出することができる。
【0059】
○ 上記実施形態では、FP数推計式パラメータ生成処理において、演算処理部20は、FP数推計式を生成するためのパラメータを取得し(ステップS1−1)、パラメータ毎に集計を行なう(ステップS1−2)。そして、演算処理部20は、集計した各パラメータを用いてパラメータの係数(A,B,C,D)を算出する。この係数(A,B,C,D)の算出においては、既に開発したシステムに関するパラメータ毎の集計値に限定されるものではなく、案件実績データ210を用いて各パラメータを代表する統計値(例えば、平均値、中央値や最頻値等)を用いることができる。この場合には、演算処理部20のFP数推計式パラメータ生成処理部23が、所定の関数を保持し、この関数に案件実績データ210を代入して統計値を算出する。
【0060】
○ 上記実施形態では、生産性指標生成処理において、演算処理部20は、案件実績データ210を用いて、FP数算出処理を行なう(ステップS2−1)。そして、演算処理部20は、FP数と工数とを用いて生産性指標を算出し記録する(ステップS2−2)。この生産性指標の生成においては、既に開発したシステムに関するパラメータ毎の集計値に限定されるものではなく、案件実績データ210を用いてFP数と工数の関係を算出すればよい。例えば、まず、各案件実績データ210に記録されたパラメータを用いて既に開発したシステム毎にFP数を算出する。そして、このFP数を用いて、案件実績データ210の工数を表わす近似式を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のシステム規模推計システムの概略構成図。
【図2】案件実績データ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図3】推計式パラメータ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図4】FP数推計式パラメータ生成処理の処理手順を説明するための説明図。
【図5】生産性指標生成処理の処理手順を説明するための説明図。
【図6】FP数算出処理の処理手順を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0062】
10…入力部、20…演算処理部、21…案件実績データ記憶部、22…人件費単価データ記憶部、23…FP数推計式パラメータ生成処理部、24…推計式パラメータ記憶部、25…FP数算出処理部、26…生産性指標生成処理部、27…生産性指標データ記憶部、28…工数見積処理部、29…開発費見積処理部、30…出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する手段と、
前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する手段と、
入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5)に前記集計パラメータセットを代入する手段と、
ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する手段と、
前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成手段と、
新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出手段と
を備えたことを特徴とするシステム規模推計システム。
入力処理機能=fd×p×画面数 …(1)
データ加工出力機能=(fd×q×画面数)+帳票数 …(2)
データ参照機能=fd×(1−p−q)×画面数 …(3)
内部論理ファイル=内部ファイル数 …(4)
外部インターフェースファイル=sf×他システム連携数 …(5)
【請求項2】
前記FP数算出手段がFP数の推計指示を受けた場合には、前記推計式生成手段が、前記案件実績毎のパラメータセットを取得し、前記パラメータセットを用いて推計式を生成し、前記FP数算出手段はこの推計式を用いてFP数を推定することを特徴とする請求項1に記載のシステム規模推計システム。
【請求項3】
設計したシステムのソフトウェアのプログラムを分析し、各システムに用いられている画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数からなるパラメータから構成されたパラメータセットをシステム毎に算出する分析手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム規模推計システム。
【請求項4】
前記算出した推計式を前記案件実績に適用して、FP数を算出し、
入力された工数と推計式により算出されたFP数とを用いて生産性指標を算出し、
前記生産性指標をFP数算出手段において推定されたFP数に乗算して工数見積を算出する手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム規模推計システム。
【請求項5】
入力された人件費単価と前記工数見積とを乗算して開発見積を算出する手段を、更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のシステム規模推計システム。
【請求項6】
開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する段階と、
前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する段階と、
入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5
)に前記集計パラメータセットを代入する段階と、
ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する段階と、
前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成段階と、
新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出段階と
を備えたことを特徴とするシステム規模推計方法。
入力処理機能=fd×p×画面数 …(1)
データ加工出力機能=(fd×q×画面数)+帳票数 …(2)
データ参照機能=fd×(1−p−q)×画面数 …(3)
内部論理ファイル=内部ファイル数 …(4)
外部インターフェースファイル=sf×他システム連携数 …(5)
【請求項7】
開発したシステムの案件実績毎に画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数から構成されるパラメータセットを取得する手段と、
前記パラメータセットにおけるパラメータ毎に合計値を算出した集計パラメータセットを算出する手段と、
入力処理機能、データ加工出力機能、データ参照機能、内部論理ファイル、外部インターフェースファイルからなるファンクションパラメータについて、以下の式(1)〜(5)に前記集計パラメータセットを代入する手段と、
ファンクションパラメータについてファンクション別の統計的平均比率を取得する手段と、
前記統計的平均比率になるように各係数(fd、p、q、sf)を算出し、画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数の関数として各ファンクションを算出する方程式を生成し、この方程式をファンクションパラメータから構成された既存のFP数算出式に代入して、FP数を画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を用いて表現した推計式を生成して記憶する推計式生成手段と、
新たに開発するシステムにおける画面数、帳票数、内部ファイル数、他システム連携数を前記推計式に代入してFP数を算出するFP数算出手段と
を実行させることを特徴とするシステム規模推計プログラム。
入力処理機能=fd×p×画面数 …(1)
データ加工出力機能=(fd×q×画面数)+帳票数 …(2)
データ参照機能=fd×(1−p−q)×画面数 …(3)
内部論理ファイル=内部ファイル数 …(4)
外部インターフェースファイル=sf×他システム連携数 …(5)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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