説明

シフトレバー

【課題】簡素な構造としつつも、操作部を押圧操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することのできるシフトレバーを提供する。
【解決手段】このシフトレバーは、ベースプレートに揺動可能に支持されて車両に搭載される変速機のシフトレンジの切り替え操作に供されるレバー本体1と、ベースプレートに形成されたディテント孔に係合してレバー本体1の揺動を規制するディテントロッド4とを有する。そして、レバー本体1に設けられたボタン40の押圧操作に伴い、ディテント孔とディテントロッド4との係合が解除されてレバー本体1の揺動が可能となる。ここでは、操作部2を構成するホルダ30に、ディテントロッド4が摺動する傾斜面35aと、矢印cで示す押圧操作方向に付勢して操作部2にディテントロッド4を当接させた状態で保持するコイルばね34と、このコイルばね34を収容、装着するための装着部33とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される変速機のシフトレンジを切り替える際に操作されるシフトレバーに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、変速機が搭載される車両には、そのシフトレンジを切り替えるためのシフトレバーが設けられている。このようなシフトレバーには通常、例えば車両の駆動輪を反転駆動させるリバースレンジや、駆動輪をロックするパーキングレンジなどへのシフトレバーの不要な移動を規制する、いわゆるディテント機構が設けられている。そして従来、このようなディテント機構を有するシフトレバーとしては、例えば特許文献1に記載のシフトレバーが知られている。図14(a),(b)に、この特許文献1に記載のシフトレバーの概要を示す。
【0003】
同図14(a),(b)に示されるように、このディテント機構は、基本的には、レバー本体50の内部に挿入されるディテントロッド51と、ディテント孔52aが形成されたベースプレート52とから構成されている。ここで、ディテントロッド51の基端部には、ディテント孔52aに挿入されるディテントピン51aが形成されている。また、ディテント孔52aの内壁面のうちの上方に位置する面には、各シフトレンジに対応した深さの異なる複数の段差を有するガイド溝52bが形成されている。そして、ディテントロッド51の基端部がコイルばね53によって付勢されることで、ディテントピン51aがガイド溝52bに係合した状態で保持されている。また、このようにディテントピン51aがガイド溝52bに係合することで、その段差部分によってレバー本体50の回転軸54を中心とする揺動が規制されている。一方、レバー本体50の先端部には、ユーザによって押圧操作される操作部55が設けられている。なお、この操作部55は、コイルばね56によって押圧操作方向と逆方向(図中の矢印dで示す方向)に付勢されている。
【0004】
そして、このシフトレバー装置では、操作部55がユーザによって押圧操作されたとすると、同操作部55の基端部がディテントピン51aの先端部を押圧して、ディテントピン51aがコイルばね53の付勢力に抗して押し下げられる。これにより、ディテントピン51aとガイド溝52bとの係合が解除されて、レバー本体50の揺動の規制が解除される。
【0005】
ところで、このようなディテント機構を有するシフトレバー装置にあっては、図14(b)に示されるように、例えばディテントピン51aが係合しているガイド溝52bの段差の位置が図中の位置から段差D1に移ると、ディテントロッド51が図中の位置よりも下方に変位して、ディテントロッド51の先端部と操作部55との間に隙間が形成される。そしてこのような隙間が形成されている状況では、ユーザが操作部55を押圧操作したとすると、次のような操作感を感じることとなる。まず、操作部55がディテントピン51aに接触するまでは、コイルばね56の付勢力に抗す力のみが必要となるため、ユーザは比較的軽い操作感を感じる。その後、操作部55がディテントピン51aに接触すると、今度はコイルばね56の付勢力に加えてコイルばね53の付勢力に抗す力も必要となるため、ユーザは比較的重い操作感を感じる。すなわち、操作感が途中で変化するため、このことにユーザが違和感を覚えるおそれがある。
【0006】
そこで従来は、例えば特許文献2に見られるように、操作部を押圧操作方向と同じ方向に付勢するといった方法も提案されている。図15に、この特許文献2に記載のシフトレバーの断面構造を示す。
【0007】
同図15に示されるように、このシフトレバーは、大きくは、レバー本体60の内部に嵌挿されるホルダ61と、同ホルダ61に設けられている第1のシャフト65によって回動可能に支持される操作部62と、同じくホルダ61に設けられている第2のシャフト66によって回動可能に支持されるリンク部材64とから構成されている。これらのうち、第1のシャフト65には、捩りコイルばね67が取り付けられており、この捩りコイルばね67によって、操作部62がその押圧操作方向(図中の矢印eで示す方向)に付勢されている。また、この操作部62には、円弧状の長孔62aが形成されており、この長孔62aに、リンク部材64に設けられている第3のシャフト68が挿通されている。
【0008】
そして、このシフトレバーでは、操作部62が矢印eで示す方向に押圧操作されたとすると、同操作部62が第1のシャフト65を中心に回動して第3のシャフト68を矢印eで示す方向に押圧する。これにより、第3のシャフト68が長孔62a内を移動しつつ、リンク部材64が矢印fで示す方向に回動してディテントロッド63の先端部を押圧し、ディテントロッド63が押し下げられる。一方、このシフトレバーでは、捩りコイルばね67によって操作部62が矢印eで示す方向に付勢されているため、リンク部材64が矢印fで示す方向に常時付勢されている。このため、ディテントロッド63が図中の位置よりも下方に移動したとしても、リンク部材64とディテントロッド63とが互いに接触した状態で保持される。したがって、ユーザが操作部62を押圧操作する際には、その押圧力として、捩りコイルばね67による付勢力と、ディテントロッド63を上方に付勢する付勢力との合力に抗す力が常に必要となる。このため、操作部62を操作する際にその操作感が大きく変化することがないため、上述したユーザの違和感を好適に払拭することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第300631号公報
【特許文献2】特開2006−51862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、操作部を押圧操作方向と同じ方向に付勢することで、ユーザが操作部を押圧操作する際に感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。ただし、このようなシフトレバーにあっては、リンク部材が必須となるため、シフトレバー全体としての部品点数の増大や構造上の複雑化が避けられず、実用上はなお改良の余地を残すものとなっている。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造としつつも、操作部を押圧操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することのできるシフトレバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ベースプレートに揺動可能に支持されて車両に搭載される変速機のシフトレンジの切り替え操作に供されるレバー本体と、前記ベースプレートに形成されたディテント孔に係合して前記レバー本体の揺動を規制するディテントロッドとを有し、前記レバー本体に設けられた操作部の押圧操作に伴い、前記ディテント孔と前記ディテントロッドとの係合が解除されて前記レバー本体の揺動の規制が解除されるシフトレバーにおいて、前記操作部には、その押圧操作に伴い前記ディテントロッドが摺動してこれを前記ディテント孔との係合が解除される方向に変位させる傾斜面と、当該操作部をその押圧操作方向と同じ方向に付勢して前記傾斜面に前記ディテントロッドを当接させた状態で保持するコイルばねと、該コイルばねを装着するための装着部とが設けられてなることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、操作部が押圧操作されると、同操作部に設けられている傾斜面をディテントロッドが摺動することによって同ロッドとディテント孔との係合が解除されるため、前述したリンク部材を設けることなく、操作部の押圧操作に基づいてディテントロッドによる規制を解除することができるようになる。また、装着部に装着されるコイルばねによって、操作部とディテントロッドとを互いに当接させた状態で保持することができるため、ユーザが操作部を押圧操作する際にその操作感が途中で大きく変化することもない。したがって、部品点数を削減して構造の簡素化を図りながらも、操作部を操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシフトレバーにおいて、前記装着部は、一側面が開口された箱状に形成されていることを要旨としている。
同構成によれば、装着部の開口部分からコイルばねを挿入するだけで同コイルばねを操作部に装着することができるため、コイルばねの装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。
【0015】
そしてこの場合、請求項3に記載の発明によるように、前記装着部の側壁に、同装着部の内部から外部に貫通する態様にてスリットを形成するとともに、前記レバー本体の前記操作部が挿入される部分の内壁に、前記スリットを介して前記装着部の内部に挿入される突出部を設け、前記コイルばねを、前記装着部の側壁と前記突出部とによって圧縮した状態で挟持する、といった構成を採用することが有効である。同構成によれば、コイルばねによって操作部を押圧操作方向と同じ方向に付勢することができるため、請求項1に記載のシフトレバーを容易に実現することができるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のシフトレバーにおいて、前記装着部は、棒状に形成されてなることを要旨としている。
同構成によれば、棒状に形成された装着部にコイルばねを挿入するだけで、同コイルばねを操作部に装着することができるため、コイルばねの装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。また、装着部にコイルばねを挿通することで、コイルばねの位置ずれを抑制することができるため、操作部の操作感を的確に確保、維持することができるようになる。
【0017】
そしてこの場合、請求項5に記載の発明によるように、前記レバー本体の前記操作部が挿入される部分の内壁に、前記装着部を挿通するための突出部を設け、前記コイルばねを、前記操作部の前記装着部が導出される面と前記突出部とにより圧縮した状態で挟持する、といった構成を採用することが有効である。同構成によれば、コイルばねによって操作部を押圧操作方向と同じ方向に付勢することができるため、請求項1に記載のシフトレバーを容易に実現することができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるシフトレバーによれば、簡素な構造としつつも、操作部を押圧操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるシフトレバーの第1の実施形態についてその概要を示す分解斜視図。
【図2】同第1の実施形態のシフトレバーについてその分解斜視構造を示す斜視図。
【図3】同第1の実施形態のシフトレバーのホルダについてその平面構造を示す平面図。
【図4】図3のC−C線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】図3のD−D線に沿った断面構造を示す断面図。
【図6】図3のE−E線に沿った断面構造を示す断面図。
【図7】(a),(b)は、図1のA−A線に沿った断面構造、及びB−B線に沿った断面構造をそれぞれ示す断面図。
【図8】(a),(b)は、同第1の実施形態のシフトレバーについてその動作例を示す断面図。
【図9】同第1の実施形態のシフトレバーについてレバー本体に操作部を組み付ける際のプロセスの一部を示す断面図。
【図10】同第1の実施形態のシフトレバーについてレバー本体に操作部を組み付ける際のプロセスの一部を示す断面図。
【図11】本発明にかかるシフトレバーの第2の実施形態についてその分解斜視構造を示す斜視図。
【図12】図11のF−F線に沿った断面構造を示す断面図。
【図13】同第2の実施形態のシフトレバーについてその断面構造を示す断面図。
【図14】(a),(b)は、従来のシフトレバーについてその断面構造、及びその基端部分の側面構造をそれぞれ示す断面図及び側面図。
【図15】従来のシフトレバーの他の例についてその断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるシフトレバーの第1の実施形態について図1〜図10を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態にかかるシフトレバーの概要について説明する。
【0021】
同図1に示されるように、このシフトレバーも、その基本構成は、先の図14に例示したシフトレバーと同様である。すなわち、このシフトレバーも、ディテント機構を有するものであって、大きくは、車両に搭載された変速機のシフトレンジを切り替える際に操作されるレバー本体1と、車両に固定されるベースプレート3とから構成されている。ここで、レバー本体1の基端部には、軸部1aが形成されており、この軸部1aの両端部がベースプレート3に形成されている軸孔3aに係合されることで、レバー本体1が矢印a1,a2で示す方向に揺動可能に支持される。また、このレバー本体1は筒状に形成されるものであって、その内部には、棒状のディテントロッド4、及び同ディテントロッド4を上方に付勢するコイルばね5が収容されている。これらのうち、ディテントロッド4の基端部には、レバー本体1の側面に形成されているスリット1bを通じて外部に突出するディテントピン4aが設けられており、このディテントピン4aが、ベースプレート3に形成されているディテント孔3bに挿通される。ちなみに、ディテント孔3bの内壁面のうちの上方に位置する面には、各シフトレンジに対応した深さの異なる複数の段差を有するガイド溝3cが形成されている。そして、このガイド溝3cに上記ディテントピン4aが係合することで、その段差部分によってレバー本体1の揺動が規制される。なお、ディテントロッド4は、ディテントピン4aが係合しているガイド溝3cの段差の位置によってその長手方向(図中の矢印b1,b2で示す方向)に変位する。
【0022】
一方、レバー本体1の先端部には、ユーザによって把持される部分となるT字状の把持部6が設けられている。ちなみに、この把持部6は、例えばゴムなどの弾性部材からなるものである。また、この把持部6の一方の端部には、ユーザによって矢印cで示す方向に押圧操作される操作部2が設けられている。そして、このシフトレバーでは、操作部2が押圧操作されると、ディテントロッド4がコイルばね5の付勢力に抗して矢印b2で示す方向に押し下げられる。そしてこのとき、ディテントピン4aがスリット1bに沿って矢印b2で示す方向に移動して、ディテントピン4aとガイド溝3cとの係合が解除される。これにより、レバー本体1の揺動の規制が解除されるため、レバー本体1をシフトパネル7に印字された各シフト位置に操作することができるようになる。すなわち、車載変速機のシフトレンジを切り替えることができるようになる。
【0023】
次に、図2を参照して、レバー本体1及び操作部2の構造について詳述する。図2は、レバー本体1の分解斜視構造を示したものである。なお、この図2では、便宜上、レバー本体1及び把持部6の一部を破断して示している。
【0024】
同図2に示されるように、レバー本体1は、基本的には、上記ディテントロッド4が挿通される筒状の棒状部10と、上記操作部2を収容するための筒状のノブ部20とから構成されている。これらのうち、棒状部10には、ディテントロッド4が挿通される部分として、ノブ部20の内部まで延びる挿通孔11が形成されている。すなわち、この挿通孔11に挿通されるディテントロッド4の先端部は、ノブ部20の内部に突出するようになっている。また、ノブ部20の内壁面の上方に位置する面及びその側方に位置する面には、矢印cで示す方向に延びる溝21がそれぞれ形成されている。また、ノブ部20の内壁面の下方に位置する面には、同内壁面から直立する部分と矢印cで示す方向に延びる部分とからなるL字状の突出部22が設けられている。ちなみに、ノブ部20の一方の開口端23にはパネル25が組み付けられるとともに、その他方の開口端24には、パネル26が組み付けられる。
【0025】
一方、操作部2は、ユーザによって押圧操作されるボタン40と、上記ノブ部20に収容されるホルダ30といった2つの部分からなる分割体として構成されている。ここで、ホルダ30の右側面には、ボタン40を一体的に組み付けるための連結部31が形成されている。また、ホルダ30の正面、背面、及び上面には、凸部32がそれぞれ形成されており、この凸部32がノブ部20の溝21に係合することで、操作部2の矢印cで示す方向への移動がガイドされるようになっている。また、このホルダ30の正面側の部分には、上面側が開口された箱状の装着部33が形成されており、この装着部33の開口部分からその内部にコイルばね34を収容することができるようになっている。
【0026】
次に、図3〜図6を参照して、この装着部33を含めて、ホルダ30の構造について詳述する。図3は、ホルダ30の上面構造を、また、図4は、図3のC−C線に沿った断面構造をそれぞれ示したものである。さらに、図5は、図3のD−D線に沿った断面構造を、また、図6は、図3のE−E線に沿った断面構造をそれぞれ示したものである。
【0027】
同図3及び図4に示されるように、装着部33の右側壁及び下壁には、矢印cで示す方向に延びる態様にて同装着部33の内部から外部に貫通するスリット33aが形成されている。また、装着部33の左側壁には、同じくその内部から外部に貫通する貫通孔33bが形成されている。そして、図5に示されるように、このホルダ30では、装着部33の底面に上記コイルばね34が着座することで、装着部33の内部にコイルばね34が収容される構造となっている。また、図6に示されるように、ホルダ30の装着部33に隣接する部分には、下側に開口部を有する凹部35が形成されるとともに、この凹部35の内壁面のうちの連結部31側に位置する部分には、上記矢印cで示す方向と鋭角をなす傾斜面35aが形成されている。
【0028】
こうした構成によれば、装着部33の開口部分からコイルばね34を挿入するだけで、ホルダ30にコイルばね34を装着することができるため、コイルばね34の装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。
【0029】
続いて、図7及び図8を参照して、本実施形態にかかるシフトレバーの構造、動作について詳述する。なお、図7(a)及び図8(a)は、先の図1のA−A線に沿った断面構造を、また図7(b)及び図8(b)は、先の図1のB−B線に沿った断面構造をそれぞれ示したものである。
【0030】
図7(a)に示されるように、このシフトレバーでは、上記ノブ部20に設けられている突出部22がスリット33aを介してホルダ30の装着部33の内部に挿入されるとともに、その先端部が、ホルダ30の貫通孔33bに挿通されている。また、突出部22においてその矢印cで示す方向に延びる部分には、コイルばね34が挿通されており、これによりコイルばね34の位置ずれを抑制するようにしている。そして、このコイルばね34が装着部33の側壁と突出部22とによって挟持されて圧縮されることで、ホルダ30は矢印cで示す方向に付勢力F1をもって付勢されている。一方、図7(b)に示されるように、ホルダ30の傾斜面35aには、上記ディテントロッド4の先端部が当接しており、同ディテントロッド4を上方に付勢する上記コイルばね5の付勢力が傾斜面35aを介してホルダ30に付与されている。すなわち、ホルダ30は矢印cで示す方向と逆方向にも付勢力F2をもって付勢されている。ここで、本実施形態では、コイルばね34による矢印cで示す方向の付勢力F1よりも、コイルばね5による付勢力F2の方が大きくなるようにそれらの弾性力が予め設定されている。このため、通常時は、ホルダ30が矢印cで示す方向と逆方向に付勢力(F2−F1)をもって付勢されて同図に示される位置で保持されている。すなわち、操作部2のボタン40がレバー本体1から突出した状態で保持されている。なおこのとき、上記ディテントピン4aがガイド溝3cに係合した状態となり、レバー本体1の揺動は規制されている。
【0031】
シフトレバーとしてのこのような構成によれば、上記ディテントピン4aが係合している溝の位置に応じてディテントロッド4が矢印b1,b2で示す方向に変位したとしても、コイルばね34の付勢力によってホルダ30の傾斜面35aにディテントロッド4を当接させた状態で保持することができる。このため、ユーザが操作部2を押圧操作する際には、その押圧力として上記付勢力(F2−F1)が常に必要となるため、ユーザが操作部2を操作する際にその操作感が大きく変化することがない。このため、操作部2を押圧操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。
【0032】
そして、このようなシフトレバーにあって、ユーザが操作部2のボタン40を矢印cで示す方向に押圧操作したとすると、同シフトレバーは次のように動作する。
すなわち、図8(a)に示されるように、突出部22がスリット33a及び貫通孔33b内をスライド移動しつつ、ホルダ30がレバー本体1に対して矢印cで示す方向に相対移動する。このとき、図8(b)に示されるように、ディテントロッド4の先端部がホルダ30の傾斜面35aを摺動しながら同ディテントロッド4が下方に押圧されて、同ディテントロッド4が下方に変位する。そしてこのようにディテントロッド4が下方に変位することで、上記ディテントピン4aとガイド溝3cとの係合が解除されて、レバー本体1の揺動の規制が解除される。したがって、前述したリンク部材を排除して構造の簡素化を図りながらも、操作部2の押圧操作に基づいてディテントロッド4による規制を解除することができるようになる。
【0033】
続いて、図9及び図10を参照して、操作部2をレバー本体1に組み付ける方法について説明する。図9及び図10は、操作部2のレバー本体1への組み付けのプロセスを示したものである。なおここでは、レバー本体1の挿通孔11にディテントロッド4が挿入されていないとする。
【0034】
同図9に示されるように、レバー本体1に操作部2を組み付ける際にはまず、ホルダ30の装着部33にコイルばね34を収容することで、同コイルばね34をホルダ30に装着する。その後、ホルダ30を、ノブ部20の開口端24の側からその内部に挿入する。そうすると、図10に示されるように、突出部22がスリット33aを介して装着部33の内部に挿入されて、突出部22の先端部がコイルばね34及び貫通孔33bに挿入される。その後、ノブ部20の開口端23の側からボタン40を挿入してこれをホルダ30の連結部31に組み付けるとともに、ノブ部20の開口端24に上記パネル25を組み付けることで、レバー本体1に操作部2が組み付けられることとなる。
【0035】
このような構成によれば、コイルばね34が装着されたホルダ30をノブ部20に挿入するだけで、コイルばね34をレバー本体1に組み付けることができる。したがって、ノブ部20にコイルばね34を組み付ける際に、コイルばね34の脱落などが発生することを未然に防止することができるため、コイルばね34をノブ部20に容易に組み付けることができるようになる。このため、操作部2をレバー本体1に組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0036】
ところで、ノブ部20の内壁に突出部22を設けるようにした場合には、この突出部22が、レバー本体1に操作部2を組み付ける際の障害物になるおそれがある。具体的には、例えば操作部2として、ホルダ30及びボタン40が予め一体となっているものを採用した場合には、同操作部2を開口端24の側からノブ部20の内部に挿入しようとしたときに、ボタン40と突出部22とが互いに干渉するおそれがある。この点、本実施形態では、操作部2をボタン40とホルダ30との分割体として構成しているため、レバー本体1に操作部2を組み付ける際に、操作部2をボタン40とホルダ30とに分けて組み付けることができる。このため、ノブ部20の内部に突出部22を設けた場合であれ、操作部2をレバー本体1に容易に組み付けることができるようになる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態にかかるシフトレバーによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)操作部2に、その押圧操作に伴いディテントロッド4の先端部が摺動する傾斜面35aと、同傾斜面35aにディテントロッド4を当接させた状態で保持するコイルばね34とを設けるようにした。また、操作部2に、コイルばね34を装着するための装着部33を設けるようにした。これにより、前述したリンク部材を排除して構造の簡素化を図りながらも、操作部2を操作する際にユーザが感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。また、操作部2をレバー本体1に組み付ける際の作業効率を向上させることができるようになる。
【0038】
(2)ホルダ30の装着部33を、上面側が開口された箱状に形成するようにした。これにより、装着部33の開口部分からコイルばね34を挿入するだけで、コイルばね34をホルダ30に装着することができるため、コイルばね34の装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。
【0039】
(3)装着部33の側壁には、その内部から外部に貫通するスリット33aを形成するようにした。また、ノブ部20の内壁には、スリット33aを介して装着部33の内部に挿入される突出部22を設けるようにした。そして、装着部33の側壁と突出部22とによってコイルばね34を圧縮した状態で挟持するようにした。これにより、コイルばね34によって操作部2を矢印cで示す押圧操作方向と同じ方向に付勢するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0040】
(4)突出部22を、ノブ部20の内壁面から直立する部分と、矢印cで示す方向に延びる部分とによって、L字状に形成するようにした。これにより、矢印cで示す方向に延びる部分にコイルばね34を挿通することができるため、コイルばね34の位置ずれを抑制することができるようになる。このため、操作部2の操作感を的確に確保、維持することができるようになる。
【0041】
(5)操作部2を、ホルダ30とボタン40の分割体として構成するようにした。これにより、レバー本体1に操作部2を組み付ける際に、操作部2をホルダ30とボタン40とに分けて組み付けることができるため、ノブ部20の内壁に突出部22を設けた場合であれ、操作部2をレバー本体1に容易に組み付けることができるようになる。
【0042】
<第2の実施形態>
続いて、本発明にかかるシフトレバーの第2の実施形態について図11〜図13を参照して説明する。なお、この第2の実施形態もシフトレバーとしての基本構造は先の図1及び図2に示した構造に準ずるものであり、ここでは、先の図2に対応する図として、シフトレバーの分解斜視構造を図11に示している。また、この図11において、先の図2に示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では、両者の相違点を中心に説明する。
【0043】
同図11に示されるように、このシフトレバーでは、ノブ部20の内壁面の下方に位置する面に、同内壁面から直立する態様で突出部27を設けるとともに、この突出部27に、矢印cで示す方向に貫通する貫通孔27aを形成するようにしている。一方、同図のF−F線に沿った断面構造を図12に示すように、ホルダ30の正面部分には、矢印cで示す方向と直交する平面37が形成されるとともに、この平面37には、矢印cで示す方向に凹む態様にて溝38が形成されている。また、この溝38の底面には、矢印cで示す方向と逆の方向に棒状に延びる装着部36が導出されており、この装着部36にコイルばね34が挿通されている。なお、図示は割愛するが、このホルダ30にも、先の第1の実施形態のホルダと同様に、凹部35や傾斜面35aが設けられている。
【0044】
このような構成によっても、装着部33にコイルばね34を挿入するだけで、ホルダ30にコイルばね34を装着することができるため、コイルばね34の装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。
【0045】
次に、図13を参照して、本実施形態にかかるシフトレバーの構造について詳述する。なお、図13は、先の図7(a)に対応する図として、シフトレバーの断面構造を示したものである。
【0046】
同図13に示されるように、このシフトレバーでは、上記ホルダ30に設けられている装着部36が、ノブ部20に設けられている突出部27の貫通孔27aに挿通されている。そして、コイルばね34が、ホルダ30の溝38の底面と突出部27とにより挟持されて圧縮されることで、ホルダ30は矢印cで示す方向に付勢されている。このため、ホルダ30の傾斜面35aにディテントロッド4を当接させた状態で保持することができるため、上記第1の実施形態のシフトレバーと同様に、ユーザが操作部2を操作する際に感じる違和感を好適に払拭することができるようになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態にかかるシフトレバーによれば、先の第1の実施形態のシフトレバーによる上記(1)及び(5)の効果と同等、もしくはそれら効果に準じた効果が得られるとともに、上記(2)〜(4)の効果に代わる効果として、次のような効果が得られるようになる。
【0048】
(6)ホルダ30の装着部36を棒状に形成するようにした。これにより、装着部36にコイルばね34を挿入するだけで、コイルばね34をホルダ30に装着することができるため、コイルばね34の装着を容易に行うことができるようになる。このため、シフトレバーの組み立てに際しての利便性を向上させることができるようになる。また、コイルばね34の位置ずれを抑制することができるため、操作部2の操作感を的確に確保、維持することができるようになる。
【0049】
(7)ノブ部20の内壁には、装着部36を挿通するための突出部27を設けるようにした。そして、ホルダ30の装着部36が導出される面と突出部27とによってコイルばね34を圧縮した状態で挟持するようにした。これにより、コイルばね34によって操作部2を矢印cで示す押圧操作方向と同じ方向に付勢するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0050】
(8)ホルダ30の装着部36が導出される面には、同装着部36が導出される部分に対応して溝38を形成するようにした。これにより、装着部36にコイルばね34を挿通した際に、コイルばね34の一端部が溝38内に挿入されることで、コイルばね34の位置ずれをより確実に抑制することができるようになる。このため、操作部2の操作感についてもこれをより的確に確保、維持することができるようになる。
【0051】
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、突出部22をL字状に形成したが、これに代えて、例えばノブ部20の内壁面から直立する部分のみからなる部材として形成してもよい。
【0052】
・上記第1の実施形態では、装着部33の上面側に開口部を設けたが、これに代えて、例えば装着部33の側面側に開口部を設けてもよい。
・上記第2の実施形態では、ホルダ30の装着部36が導出される部分に対応して溝38を形成したが、この溝38を割愛することも可能である。
【0053】
・上記各実施形態では、操作部2をホルダ30及びボタン40の分割体として構成した。これに代えて、例えばボタン40の大きさを小さくしたり、あるいは突出部22,27の配置を適宜変更するなどして、ボタン40を開口端24の側から挿入する際に同ボタン40と突出部22,27との干渉を回避することができる場合には、ホルダ30及びボタン40を一体のものとして形成してもよい。
【0054】
・上記各実施形態では、突出部22,27を、ノブ部20の内壁面のうちの下方に位置する面に形成したが、これに代えて、例えばノブ部20の内壁面のうちの上方に位置する面やその側方に位置する面に形成してもよい。
【0055】
<付記>
次に、上記各実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項3に記載のシフトレバーにおいて、前記突出部は、前記レバー本体の前記操作部が挿入される部分の内壁面から直立する部分と前記押圧操作方向に延びる部分とによりL字状に形成された部材からなることを特徴とするシフトレバー。同構成によれば、L字状に形成された突出部の押圧操作方向に延びる部分にコイルばねを挿通することができるため、コイルばねの位置ずれを的確に抑制することができ、ひいては操作部の操作感を的確に確保、維持することができるようになる。
【0056】
(ロ)請求項5に記載のシフトレバーにおいて、前記操作部の前記装着部が導出される面には、同装着部が導出される部分に対応して溝が形成されてなることを特徴とするシフトレバー。同構成によれば、棒状に形成された装着部にコイルばねを挿通した際に、同コイルばねの一端部が溝内に挿入されることで、コイルばねの位置ずれをより確実に抑制することができるようになる。このため、操作部2の操作感についてもこれをより的確に確保、維持することができるようになる。
【0057】
(ハ)請求項3,5、及び付記イ,ロのいずれか一項に記載のシフトレバーにおいて、前記操作部は、押圧操作される部分となるボタンと、該ボタンに一体的に組み付けられるとともに前記傾斜面及び前記装着部が形成されるホルダとの分割体からなることを特徴とするシフトレバー。前述のように、レバー本体の操作部の挿入される部分の内壁に突出部を形成した場合には、この突出部が、レバー本体に操作部を組み付ける際の障害物になるおそれがある。この点、上記構成によるように、操作部をボタンとホルダとの分割体として構成することとすれば、レバー本体に操作部を組み付ける際に、操作部をボタンとホルダとに分けて組み付けることができるため、レバー本体の操作部が挿入される部分の内壁に突出部を設けた場合であれ、操作部をレバー本体に容易に組み付けることができるようになる。
【符号の説明】
【0058】
D1…段差、F1…付勢力、F2…付勢力、1,50,60…レバー本体、1a…軸部、1b…スリット、2,55…操作部、3,52…ベースプレート、3a…軸孔、3b,52a…ディテント孔、3c,52b…ガイド溝、4,51,63…ディテントロッド、4a,51a…ディテントピン、5,53,56…コイルばね、6…把持部、7…シフトパネル、10…棒状部、11…挿通孔、20…ノブ部、21…溝、22,27…突出部、23,24…開口端、25,26…パネル、27a…貫通孔、30…ホルダ、31…連結部、32…凸部、33…装着部、33a…スリット、33b…貫通孔、34…コイルばね、35…凹部、35a…傾斜面、36…装着部、37…平面、38…溝、40…ボタン、54…回転軸、61…ホルダ、62…操作部、62a…長孔、64…リンク部材、65…第1のシャフト、66…第2のシャフト、67…捩りコイルばね、68…第3のシャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートに揺動可能に支持されて車両に搭載される変速機のシフトレンジの切り替え操作に供されるレバー本体と、前記ベースプレートに形成されたディテント孔に係合して前記レバー本体の揺動を規制するディテントロッドとを有し、前記レバー本体に設けられた操作部の押圧操作に伴い、前記ディテント孔と前記ディテントロッドとの係合が解除されて前記レバー本体の揺動の規制が解除されるシフトレバーにおいて、
前記操作部には、その押圧操作に伴い前記ディテントロッドが摺動してこれを前記ディテント孔との係合が解除される方向に変位させる傾斜面と、当該操作部をその押圧操作方向と同じ方向に付勢して前記傾斜面に前記ディテントロッドを当接させた状態で保持するコイルばねと、該コイルばねを装着するための装着部とが設けられてなる
ことを特徴とするシフトレバー。
【請求項2】
前記装着部は、一側面が開口された箱状に形成されてなる
請求項1に記載のシフトレバー。
【請求項3】
前記装着部の側壁には、同装着部の内部から外部に貫通する態様にてスリットが形成されるとともに、前記レバー本体の前記操作部が挿入される部分の内壁には、前記スリットを介して前記装着部の内部に挿入される突出部が設けられ、前記コイルばねは、前記装着部の側壁と前記突出部とによって圧縮された状態で挟持されてなる
請求項2に記載のシフトレバー。
【請求項4】
前記装着部は、棒状に形成されてなる
請求項1に記載のシフトレバー。
【請求項5】
前記レバー本体の前記操作部が挿入される部分の内壁には、前記装着部を挿通するための突出部が設けられ、前記コイルばねが、前記操作部の前記装着部が導出される面と前記突出部とにより圧縮された状態で挟持されてなる
請求項4に記載のシフトレバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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