説明

シミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法

【課題】広角レンズの歪みに対応したシミュレーション画像の精度を保ちながら且つ処理負荷を軽減できる。
【解決手段】シミュレーション装置1は、3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像生成部11と、作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属するデータに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出部12と、算出された各画像領域の曲率に基づいて、視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整部13と、調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、撮像部に用いられる広角レンズの収差データを撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両や建物等に、広い範囲を写すことができる広角レンズを取り付けたカメラが広く普及している。広角レンズを取り付けたカメラの配置設計では、当該カメラが障害物等に遮られないように適切な位置や方向に配置されることが重要となる。
【0003】
ところが、広角レンズの歪みの特性は、レンズ毎に異なるものである。このため、例えばOpenGL(Open Graphics Library)やDirectX等の3DグラフィックAPI(Application Program Interface)を用いても、広角レンズを通した動画像のシミュレーションを簡易的に行うことが困難であった。
【0004】
そこで、従来から、広角レンズを通した画像を再現するために、例えばキューブマップ等のテクスチャマッピング機能を用いて、適当な大きさに分割したメッシュに6方向の透視画像(テクスチャ)を貼り付ける技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、広角レンズを通した画像をシミュレーションする従来の技術では、メッシュを細かく分割すればする程、シミュレーション処理に負荷がかかるので、シミュレーションの処理時間が相当かかる。一方、メッシュを大きく分割すればする程、シミュレーションの処理結果を示す画像が粗くなるという問題があった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、広角レンズの歪みに対応したシミュレーション画像の精度を保ちながら且つ処理負荷を軽減できるシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するシミュレーションプログラムは、一つの態様において、3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像作成手順と、前記撮像画像作成手順によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出手順と、前記曲率算出手順によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整手順と、前記精粗調整手順によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示するシミュレーションプログラムの一つの態様によれば、広角レンズの歪みに対応したシミュレーション画像の精度を保ちながら且つ処理負荷を軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1に係るシミュレーション装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係るシミュレーション装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、レンズ収差記憶部のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】図4は、仮想平面の具体例を示す図である。
【図5】図5は、撮像画像生成の具体例を示す図である。
【図6】図6は、曲率算出及び画像領域調整の具体例を示す図である。
【図7】図7は、仮想平面精粗調整及び広角画像生成の具体例を示す図である。
【図8】図8は、シミュレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、画像領域調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、従来技術におけるキューブマップを用いた画像生成を示す図である。
【図11】図11は、シミュレーション装置の別の用途を示す図である。
【図12】図12は、画像領域調整の具体例を示す図である。
【図13】図13は、シミュレーションプログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示するシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例では、3次元(3dimension)モデル上に設置される仮想的な広角レンズの映像シミュレーションに適用する場合を示す。また、本実施例を実現するために、キューブマップのテクスチャマッピング機能を用いた技術を採用するものとして説明する。しかし、本実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例1に係るシミュレーション装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、シミュレーション装置1は、撮像画像生成部11、曲率算出部12、精粗調整部13及び広角画像生成部14を有する。
【0013】
撮像画像取得部11は、3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を当該3Dモデルのデータに基づいて作成する。曲率算出部12は、撮像画像生成部11によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属するデータに基づいて各画像領域の曲率を算出する。ここで、算出される曲率の値が小さい画像領域は、凹凸の差が小さい平坦な粗い領域であり、算出された曲率の値が大きい画像領域は、凹凸の差が大きい密な領域である。
【0014】
精粗調整部13は、曲率算出部12によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する。広角画像生成部14は、精粗調整部13によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、撮像部に用いられる広角レンズの収差データを撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する。
【0015】
このようにして、シミュレーション装置1は、撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、分割した画像領域毎に曲率を算出し、算出した画像領域毎の曲率に基づいて、仮想平面のメッシュの精粗を調整する。仮に、シミュレーション装置1が、曲率の小さい画像領域に対応する仮想平面のメッシュを粗くし、曲率の大きい画像領域に対応する仮想平面のメッシュを密にするとする。この場合、シミュレーション装置1は、曲率に無関係にメッシュを一様に密にする場合と比較して、ある程度の画像の精度を保ちながら、且つ処理負荷を軽減できる。また、シミュレーション装置1は、曲率に無関係にメッシュを一様に粗くする場合と比較して、画像全体が粗くなることから軽減でき、画像の精度を保つことができる。
【実施例2】
【0016】
[実施例2に係るシミュレーション装置の構成]
図2は、本実施例2に係るシミュレーション装置2の構成を示す機能ブロック図である。シミュレーション装置2は、入力部21、出力部22、記憶部23及び制御部24を有する。
【0017】
入力部21は、ユーザが操作データを入力するための装置であり、例えば、キーワード、マウスまたはタッチパネル型ディスプレイ等を含む。出力部22は、制御部24によって生成された画像を出力する装置であり、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、タッチパネル型ディスプレイ等を含む。
【0018】
記憶部23は、3次元データ記憶部231及びレンズ収差記憶部232を有する。なお、記憶部23は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置を含む。
【0019】
3次元データ記憶部231は、キューブマップのテクスチャマッピング機能環境を整えるための3Dモデルのデータを記憶する。具体的には、3次元データ記憶部231は、広角カメラを取り付けた製品やシミュレーションを行う撮影環境を3Dモデルのデータとして予め記憶する。広角カメラを取り付けた製品の1つの例として、バックアイカメラを取り付けた車両があり、この車両の撮影環境の1つの例として、道路、街灯や通行者の人体モデルがある。また、広角カメラを取り付けた製品の別の例として、広角カメラを監視カメラとして取り付けた監視システムがあり、この監視システムの撮影環境の1つの例として、建物、侵入者の人体モデルがある。
【0020】
なお、実施例では、キューブマップのテクスチャマッピング機能を用いるために、キューブマップに貼り付ける6方向の画像(撮像画像)を、撮影環境の3Dモデルのデータとして予め記憶するようにしても良い。また、後述する仮想平面生成部241によって生成される仮想平面の仮想的平面データを3Dモデルのデータとして予め記憶する。
【0021】
レンズ収差記憶部232は、広角レンズの収差データとして、実像高と広角レンズ上の像高とを対応付けて記憶する。また、レンズ収差記憶部232は、予め実験等で調べられた各値を3Dモデル内の仮想的に配置される仮想レンズに対応した広角レンズの種類毎に記憶する。ここで、レンズ収差記憶部232について図3を参照しながら説明する。図3は、レンズ収差記憶部のデータ構造の一例を示す図である。図3に示すように、レンズ収差記憶部232は、実像高232a及び画面像高232bを対応付けて記憶する。
【0022】
実像高232aは、視点位置から所定の距離だけ離れた位置に配置される実像を、広角レンズを通さないで撮像した場合の当該実像の画角を示す。画面像高232bは、視点位置から所定の距離だけ離れた位置に配置された実像を、広角レンズを通して撮像した場合の当該実像の画角を示す。例えば、実像高232aが0.15度の場合、画面像高232bは0.1度を示し、実像高232aが0.23度の場合、画面像高232bは0.2度を示し、画面像高232bは、広角レンズの歪みにより実像高232aより画角が小さくなる。
【0023】
制御部24は、入力部21からの操作データに基づいて、3Dモデル内に配置される仮想的な広角レンズの映像シミュレーション処理を行う。さらに、制御部24は、仮想平面生成部241、撮像画像生成部242、曲率算出部243、精粗調整部244及び広角画像生成部245を有する。また、精粗調整部244は、画像領域調整部251及び仮想平面精粗調整部252を有する。なお、制御部24は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路またはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0024】
仮想平面生成部241は、3Dモデル内の視点位置から所定の距離だけ離れた位置に配置される仮想平面を生成する。なお、この仮想平面は、キューブマップに貼り付けられる6方向の画像を投影(テクスチャマッピング)する画面となる。具体的には、仮想平面生成部241は、視点位置から所定の距離だけ離れた位置に配置される仮想平面の仮想的平面データを3次元データ記憶部231から取得する。この仮想的平面データは、2次元平面を同一の形状で分割したときの該分割形状の頂点の位置座標を含む。この各形状は、キューブマップに貼り付けられる6方向の画像を投影する際の投影単位となる。以降、仮想的平面データで表される各形状をメッシュというものとする。メッシュの形状は、例えば3角形であるが、4角形であっても良いし、投影単位となる形状であればこれらに限定されるものではない。また、この視点位置から所定の距離とは、例えば視点位置からキューブマップの中心までの距離であり、レンズ収差記憶部232に記憶された収差データが実験等で調べられる際の視点から実像までの距離と同一であっても良い。
【0025】
ここで、仮想平面の具体例について図4を参照しながら説明する。図4は、仮想平面の具体例を示す図である。図4に示すように、正面図によって表される仮想平面Kは、同一の3角形の形状で分割されたメッシュで形成される。仮想平面生成部241は、これら3角形の形状の頂点の位置座標を3次元データ記憶部231から取得する。
【0026】
なお、図4に示すように、側面図によって表される仮想平面Kは、視点vpから所定の距離だけ離れた位置に配置される。そして、後述する広角画像生成部245が、Pの位置にある実像高の法線vを、画面像高の法線wを平行移動した法線w‘に変換し、法線w’を用いてキューブマップに貼り付けられた6方向の画像からPの位置のメッシュに投影し、広角画像を生成する。
【0027】
撮像画像生成部242は、3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された仮想レンズによって撮像される撮像画像を当該3Dモデルのデータに基づいて作成する。具体的には、撮像画像生成部242は、3次元データ記憶部231から撮影環境の3Dモデルのデータを取得し、当該3Dモデルのデータに基づいてキューブマップに貼り付ける6方向の撮像画像を作成する。すなわち、撮像画像生成部242は、広角カメラから仮想的に撮像される前後上下左右6方向の透視投影画像を作成する。なお、キューブマップに貼り付ける6方向の撮像画像が予め3次元データ記憶部231に3Dモデルのデータとして記憶されている場合には、撮像画像生成部242は、これら6方向の撮像画像を取得するようにすれば良い。
【0028】
ここで、撮像画像生成部242による撮像画像作成の具体例について図5を参照しながら説明する。図5は、撮像画像生成の具体例を示す図である。図5に示すように、撮像画像生成部242は、3Dモデル内の撮影環境に対して、3Dモデル内に仮想的に配置された広角カメラc1を前後上下左右6方向に向けて撮影した透視投影画像z1〜z6をキューマップm1のテクスチャとして作成する。撮影環境は、3Dモデルのデータとして、3次元データ記憶部231に予め記憶される。このキューマップm1は、3Dモデル内の視点vpを中心として、3Dモデルを仮想的に囲む無限大の立方体を指す。また、z1が視点vpから上面に向けた透視投影画像であり、z2が視点vpから下面に向けた透視投影画像である。また、z3が視点vpから前面に向けた透視投影画像であり、z4が視点vpから左面に向けた透視投影画像である。さらに、z5が視点vpから右面に向けた透視投影画像であり、v6が視点vpから後面に向けた透視投影画像である。
【0029】
曲率算出部243は、撮像画像生成部242によって作成された複数方向の画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する3Dモデルのデータに基づいて各画像領域の曲率を算出する。具体的には、曲率算出部243は、広角カメラから仮想的に撮像される前後上下左右6方向の各透視投影画像を所定の大きさの小矩形の画像領域に分割する。また、曲率算出部243は、該分割した小矩形の画像領域毎に、画像領域に属する複数のポリゴンに分解し、分解した各ポリゴンの曲率を算出する。また、曲率算出部243は、算出したポリゴンの曲率からポリゴンが属する小矩形の画像領域の曲率を、小矩形の画像領域毎に算出する。
【0030】
例えば、曲率算出部243は、小矩形の画像領域に属する複数のポリゴンについて、各ポリゴンの法線の微分を算出する。そして、曲率算出部243は、隣接するポリゴンAとポリゴンBの隣接曲率ベクトルvabを、ポリゴンAの法線の微分f、ポリゴンBの法線の微分f及びポリゴンAの重心とポリゴンBの重心との距離dabを用いて、式(1)のように算出する。
ab=(f−f)/dab・・・・・・・・・・・(1)
【0031】
そして、曲率算出部243は、ポリゴンAの曲率pを、ポリゴンAと隣接する全て(例えばn個)のポリゴンの隣接曲率ベクトルvax(x=a、b・・・、n)を用いて、式(2)のように算出する。
=|(vab+vac+・・・+van)/n|・・・(2)
【0032】
そして、曲率算出部243は、小矩形の画像領域毎の曲率r(y=1、2、・・・、m)を、小矩形に属する全て(例えば3個)のポリゴンの曲率p、p、pを用いて、式(3)のように算出する。
=(p+p+p)/3・・・・・・・・・・・(3)
【0033】
画像領域調整部251は、6方向の透視投影画像毎に、透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出する。また、画像領域調整部251は、小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合する。また、画像領域調整部251は、小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように1個の画像領域を複数の画像領域に分割する。
【0034】
具体的には、画像領域調整部251は、6方向のうち1方向の透視投影画像を選択する。また、画像領域調整部251は、選択した透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出する。また、画像領域調整部251は、選択した透視投影画像に含まれる小矩形を順に選択し、選択した小矩形の曲率値と平均値との偏差(単一曲率偏差)を算出する。また、画像領域調整部251は、選択小矩形の曲率値に隣接する4個の小矩形を合わせた合算曲率値を算出し、該合算曲率値と平均値との偏差(合算曲率偏差)を算出する。また、画像領域調整部251は、選択小矩形を4分割した分割曲率値を算出し、該分割曲率値と平均値との偏差(分割曲率偏差)を算出する。
【0035】
また、画像領域調整部251は、合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さい場合には、合算曲率偏差の対象となった4個の小矩形を1個の矩形として併合する。つまり、画像領域調整部251は、曲率が極端に小さい平坦な小矩形をこの曲率が平均値に近似するように隣接する小矩形を併合し、小矩形の画像領域の粗密を密から粗にすることで、ある程度の画像の精度を保ちながら、処理負荷を軽減する。また、画像領域調整部251は、分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さい場合には、分割曲率偏差の対象となった選択小矩形を4個の矩形に分割する。つまり、画像領域調整部251は、曲率が極端に大きい凹凸の激しい小矩形をこの曲率が平均値に近似するように分割し、小矩形の画像領域の粗密を粗から密にすることで、画像の精度を保つ。このように、画像領域調整部251は、順次または同時に6方向の透視投影画像毎に含まれる小矩形の画像領域の粗密を調整する。
【0036】
ここで、曲率算出部243による曲率算出及び画像領域調整部251による画像領域調整の具体例について図6を参照しながら説明する。図6は、曲率算出及び画像領域調整の具体例を示す図である。図6に示すように、6方向の透視投影画像のうち前面の透視投影画像の画像領域の粗密を調整する。具体的には、曲率算出部243は、前面の透視投影画像を小矩形の画像領域に分割する。そして、曲率算出部243は、該分割した小矩形の画像領域毎に、画像領域に属する複数のポリゴンに分解する。ここでは、曲率算出部243は、小矩形a0の画像領域に属する複数の3角形のポリゴンt1〜t3に分解する。そして、曲率算出部243は、分解した、小矩形a0の画像領域に属する複数のポリゴンt1〜t3の法線の微分を用いて各ポリゴンの曲率を算出し、算出した各ポリゴンの曲率から小矩形a0の画像領域の曲率を算出する。
【0037】
次に、画像領域調整部251は、前面の透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出する。ここでは、前面の透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値を1、1、1、1、1、6、3、6及び10とすると、曲率の平均値は、「3.3」と算出される。
【0038】
次に、画像領域調整部251は、前面の透視投影画像に含まれる小矩形を順次選択し、選択した小矩形の画像領域の粗密を調整する。例えば、画像領域調整部251は、前面の透視投影画像に含まれる小矩形a1を選択し、該小矩形a1の曲率値「1」と平均値「3.3」との単一曲率偏差を算出する。ここでは、単一曲率偏差は、「2.2」と算出される。また、画像領域調整部251は、選択小矩形a1の曲率値「1」に隣接する4個の小矩形a1〜a4を合わせた合算曲率値「4」を算出し、該合算曲率値「4」と平均値「3.3」との合算曲率偏差を算出する。ここでは、合算曲率偏差は、「0.7」と算出される。また、画像領域調整部251は、選択小矩形a1を4分割した分割曲率値「0.25」を算出し、該分割曲率値「0.25」と平均値「3.3」との分割曲率偏差を算出する。ここでは、分割曲率偏差は、「3.05」と算出される。単一曲率偏差が「2.2」、合算曲率偏差が「0.7」、分割曲率偏差が「3.05」となるので、合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さい場合であり、且つ分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さくない場合である。よって、画像領域調整部251は、合算曲率偏差の対象となった4個の小矩形a1〜a4を1個の矩形a10として併合する。
【0039】
次に、画像領域調整部251は、前面の透視投影画像に含まれる小矩形a5を選択し、該小矩形a5の曲率値「10」と平均値「3.3」との単一曲率偏差を算出する。ここでは、単一曲率偏差は、「6.7」と算出される。また、画像領域調整部251は、選択小矩形a5の曲率値「10」に隣接する4個の小矩形(図示せず)を合わせた合算曲率値を算出し、該合算曲率値と平均値「3.3」との合算曲率偏差を算出する。ここでは、合算曲率偏差は、単一局率偏差「6.7」より大きい値となる。また、画像領域調整部251は、選択小矩形a5を4分割した分割曲率値「2.5」を算出し、該分割曲率値「2.5」と平均値「3.3」との分割曲率偏差を算出する。ここでは、分割曲率偏差は、「0.8」と算出される。単一曲率偏差が「6.7」、合算曲率偏差が「6.7より大」、分割曲率偏差が「0.8」となるので、合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さくない場合であり、且つ分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さい場合である。よって、画像領域調整部251は、分割曲率偏差の対象となった選択小矩形a5を4個の小矩形a20に分割する。
【0040】
図2に戻って、仮想平面精粗調整部252は、広角レンズの収差データに基づいて、画像領域調整部251によって調整された画像領域を仮想レンズから撮像されるべき高さに変換し、変換した画像領域の粗密に応じて仮想平面のメッシュの精粗を調整する。具体的には、仮想平面精粗調整部252は、レンズ収差記憶部232を参照し、視点から前面の透視投影画像を分割した矩形毎に各矩形の頂点座標を広角レンズ上の像高に変換し、各矩形の大きさを調整する。そして、仮想平面精粗調整部252は、視点から前面以外の6方向の透視投影画像についても、前面と同様に、各矩形の大きさを調整する。また、仮想平面精粗調整部252は、仮想平面のメッシュの大きさを、6方向の透視投影画像の調整された矩形の大きさに応じて調整する。つまり、仮想平面精粗調整部252は、仮想平面のメッシュの精粗を、6方向の透視投影画像の各矩形の粗密(曲率)に応じて調整する。
【0041】
広角画像生成部245は、仮想平面精粗調整部252によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、3Dモデル上の仮想レンズに用いられる広角レンズの収差データを透視投影画像に適用し、広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する。具体的には、広角画像生成部245は、レンズ収差記憶部232を参照し、仮想平面の各メッシュの法線を実像高のものから画面像高のものに変換する。そして、広角画像生成部245は、この法線の延長がキューブマップと交わる位置の透視投影画像のテクスチャを当該メッシュに投影し、広角画像を生成する。そして、出力部22が、広角画像生成部245によって仮想平面に生成された広角画像をメッシュ毎に、例えばモニターに表示する。
【0042】
ここで、仮想平面精粗調整部252による仮想平面精粗調整及び広角画像生成部245による広角画像生成の具体例について図7を参照しながら説明する。図7は、仮想平面精粗調整及び広角画像生成の具体例を示す図である。図7(A)は、仮想平面精粗調整の具体例を示し、図7(B)は、広角画像生成の具体例を示す。図7(A)に示すように、3Dモデル上の視点vpから所定の距離だけ離れた仮想平面Kの粗密が、キューブマップm1に貼り付けられた透視投影画像の各矩形の粗密に応じて決定される。ここでは、仮想平面精粗調整部252は、仮想平面Kの点Aの実像高の法線vを画面像高に変換した法線wがキューブマップm1と交わる透視投影画像の位置の小矩形を、点Aを中心とした位置に対応させる。仮想平面精粗調整部252は、仮想平面Kの各点について、点Aと同様に、キューブマップm1に貼り付けられた6方向の透視投影画像の各小矩形を対応させる。つまり、仮想平面Kのメッシュの粗密は、透視投影画像の各小矩形の粗密(曲率)に対応することになる。
【0043】
図7(B)に示すように、仮想平面Kのメッシュの粗密に応じて、キューブマップm1に貼り付けられた透視投影画像のテクスチャを投影し、広角画像が生成される。具体的に、広角画像生成部245は、仮想平面Kのメッシュの粗密に応じて、各メッシュの法線の延長がキューブマップm1と交わる位置の透視投影画像のテクスチャを当該メッシュに投影する。これにより、仮想平面Kの粗の部分には、粗いメッシュに対応した曲率が小さい平坦な画像が生成される。一方、仮想平面Kの密の部分には、細かいメッシュに対応した曲率が大きい凹凸の激しい画像が生成される。
【0044】
[実施例2に係るシミュレーション処理の手順]
次に、実施例2に係るシミュレーション処理の手順を、図8を参照して説明する。図8は、シミュレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【0045】
まず、シミュレーション処理の前準備として、3次元データ記憶部231及びレンズ収差記憶部232に各種データが予め格納される(ステップS11)。3次元データ記憶部231は、キューブマップのテクスチャマッピング機能環境を整えるための3Dモデルのデータを記憶する。レンズ収差記憶部232は、広角レンズの収差データとして、実像高と広角レンズ上の像高とを対応付けて記憶する。
【0046】
続いて、仮想平面生成部241は、3Dモデル内の視点位置から所定の距離だけ離れた位置に配置される仮想平面を生成する(ステップS12)。そして、撮像画像生成部242は、3Dモデル内の視点位置に仮想的に配置された仮想レンズによって撮像される6方向の透視投影画像を、前記3次元データ記憶部231に記憶された3Dモデルのデータに基づいて作成する(ステップS13)。
【0047】
その後、曲率算出部243は、撮像画像生成部242によって作成された6方向の透視投影画像を小矩形の画像領域に分割する(ステップS14)。そして、曲率算出部243は、分割した小矩形の画像領域毎に、画像領域に属する複数のポリゴンに分解し、分解した各ポリゴンの曲率を算出する。そして、曲率算出部243は、ポリゴンの曲率からポリゴンが属する小矩形の画像領域の曲率を、小矩形の画像領域毎に算出する(ステップS15)。
【0048】
次に、画像領域調整部251は、6方向の透視投影画像毎に、透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出する(ステップS16)。そして、画像領域調整部251は、透視投影画像毎に、曲率の平均値に近似するように矩形を調整する(ステップS17)。
【0049】
続いて、仮想平面精粗調整部252は、レンズ収差記憶部232を参照し、透視投影画像毎に、調整した矩形毎に各矩形の頂点座標を広角レンズ上の像高に変換し、各矩形の大きさを調整する。そして、仮想平面精粗調整部252は、仮想平面のメッシュの大きさを、6方向の透視投影画像の調整された矩形の大きさに応じて調整する(ステップS18)。つまり、仮想平面精粗調整部252は、仮想平面のメッシュの精粗を、6方向の透視投影画像の各矩形の粗密(曲率)に応じて調整する。
【0050】
その後、広角画像生成部245は、レンズ収差記憶部232に参照し、仮想平面の各メッシュの法線を実像高のものから画面像高のものに変換する。そして、広角画像生成部245は、この法線の延長がキューブマップと交わる位置の透視投影画像のテクスチャを当該メッシュに投影し(ステップS19)、広角画像を生成する。
【0051】
[画像領域調整処理の手順]
次に、実施例2に係る画像領域調整処理の手順を、図9を参照して説明する。図9は、画像領域調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、画像領域調整部251は、透視投影画像に含まれる1個の小矩形を選択する(ステップS21)。そして、画像領域調整部251は、選択した小矩形の曲率値と平均値との偏差(単一曲率偏差)を算出する(ステップS22)。
【0053】
次に、画像領域調整部251は、選択した小矩形に隣接する4個の小矩形を合わせた合算曲率値を算出する(ステップS23)。そして、画像領域調整部251は、算出した合算曲率値と平均値との偏差(合算曲率偏差)を算出する(ステップS24)。
【0054】
次に、画像領域調整部251は、選択した小矩形を4分割した分割曲率値を算出する(ステップS25)。そして、画像領域調整部251は、算出した分割曲率値と平均値との偏差(分割曲率偏差)を算出する(ステップS26)。
【0055】
続いて、画像領域調整部251は、合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さいか否かを判定する(ステップS27)。そして、画像領域調整部251によって合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さいと判定された場合には(ステップS27Yes)、画像領域調整部251は、合算曲率偏差の対象となった4個の小矩形を1個の矩形として併合する(ステップS28)。
【0056】
一方、画像領域調整部251によって合算曲率偏差が単一曲率偏差より小さいと判定されなかった場合には(ステップS27No)、画像領域調整部251は、分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さいか否かを判定する(ステップS29)。そして、画像領域調整部251によって分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さいと判定された場合には(ステップS29Yes)、画像領域調整部251は、選択した小矩形を4個の矩形に分割する(ステップS30)。一方、画像領域調整部251によって分割曲率偏差が単一曲率偏差より小さいと判定されなかった場合には(ステップS29No)、ステップS31に移行する。
【0057】
その後、画像領域調整部251は、小矩形を全て選択したか否かを判定する(ステップS31)。なお、4個の小矩形を1個の矩形として併合した場合には、画像領域調整部251は、これらの小矩形を既に選択したものとみなし、選択対象としないものとする。画像領域調整部251によって小矩形を全て選択していなかった場合には(ステップS31No)、画像領域調整部251は、選択されていない次の小矩形を選択する(ステップS32)。そして、画像領域調整部251は、ステップS22に移行する。一方、画像領域調整部251によって小矩形を全て選択した場合には(ステップS31Yes)、画像領域調整部251は、画像領域調整処理を終了する。
【0058】
[実施例2の効果]
上記実施例2によれば、画像領域調整部251は、透視投影画像の小矩形の画像領域毎の曲率値から曲率の平均値を算出する。そして、画像領域調整部251は、画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合し、または画像領域の曲率値が該平均値に近似するように1個の画像領域を複数の画像領域に分割する。そして、仮想平面精粗調整部252は、広角レンズの収差データを参照し、画像領域調整部251によって調整された画像領域を仮想的な広角レンズから撮像されるべき高さに変換し、変換した画像領域に応じて仮想平面のメッシュの精粗を調整する。
【0059】
かかる構成によれば、小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように小矩形の大きさを調整するようにしたので、調整された小矩形の大きさに応じて仮想平面のメッシュの大きさを調整できる。すなわち、曲率値のバラツキの少ない小矩形の大きさに応じて仮想平面のメッシュの大きさを調整できる。このため、小矩形の画像領域の曲率値が大きい場合には、当該小矩形の大きさを分割して小さくし、この小矩形に対応する仮想平面のメッシュの大きさを小さくできるので、メッシュの粗密を密にでき、メッシュに投影される画像の精度を保つことができる。一方、小矩形の画像領域の曲率値が小さい場合には、当該小矩形の大きさを併合して大きくし、この小矩形に対応する仮想平面のメッシュの大きさを大きくできるので、メッシュの粗密を粗にでき、メッシュに投影される画像のある程度の精度を保つことができる。この結果、メッシュを一様に密にする場合と比較して、全体的にある程度の画像の精度を保ちながら、且つ処理負荷を軽減できる。
【0060】
ここで、従来技術においてキューブマップから仮想平面に画像を生成する場合について説明する。図10は、従来技術におけるキューブマップを用いた画像生成を示す図である。図10に示すように、仮想平面Kのメッシュは一様の大きさとなっている。そして、仮想平面Kのメッシュ毎に、各メッシュの法線の延長がキューブマップと交わる位置の透視投影画像のテクスチャを当該メッシュに投影する。ここでは、仮想平面Kの点Aの実像高の法線vを画面像高に変換した法線wがキューブマップm1と交わる位置のテクスチャA‘を、点Aを中心としたメッシュに投影する。したがって、メッシュが一様に密である場合には、画像生成の処理負荷が増大し、メッシュが一様に粗である場合には、画像生成の結果生成される画像が粗くなる。
【0061】
ところが、実施例2では、仮想平面精粗調整部252が、画像領域調整部251によって画像領域の曲率から調整された画像の粗密からメッシュの大きさをカスタマイズし、メッシュに投影される画像の粗密を調整する。この結果、メッシュが一様に密である場合と比較して、全体的にある程度の画像の精度を保ちながら、画像生成の処理負荷を軽減できる。一方、メッシュが一様に粗である場合と比較して、画像生成の結果生成される画像の精度を保つことができる。
【0062】
また、実施例2によれば、出力部22は、広角画像生成部245によって仮想平面に生成された画像をメッシュ毎に出力する。かかる構成によれば、仮想平面に生成された画像をメッシュ毎に出力するようにしたので、メッシュを一様に密にした場合と比較して、出力処理を高速化できる。
【0063】
[シミュレーション装置の用途]
ここで、シミュレーション装置2の用途について説明する。実施例2では、3Dモデル内の視点位置を固定した場合に仮想的な広角レンズから見える画像を生成するようにした。しかしながら、シミュレーション装置2は、3Dモデル内の視点位置を移動した場合であっても、仮想的な広角レンズから撮像される画像を、当該視点位置を固定した場合と同様に生成するようにしても良い。この場合、シミュレーション処理(図8参照)において、広角画像生成部245によって視点位置における仮想レンズから撮像される広角画像が生成された(ステップS19)後、広角画像生成部245は、視点位置が移動したか否かを判定する。そして、視点位置が移動したと判定された場合には、移動した視点位置において撮像されるべき6方向画像を作成する処理(ステップS13)に移行するようにすれば良い。これにより、例えば車両のバックアイカメラの設計において、該バックアイカメラの配置設計を効率的に行うことができる。また、広角カメラを用いた監視システム等において、該広角カメラの適切な設置位置を事前に検証することができる。
【0064】
[シミュレーション装置の別の用途]
また、シミュレーション装置2の別の用途について説明する。3Dモデル内の視点位置を経時的に移動させる場合、例えば動画表示のような場合には、画像の精度より高速な処理スピードが要求されることがある。この場合には、画像領域調整部251は、小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合のみすれば良い。また、画像領域調整部251は、透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率の平均値に代えて、透視投影画像を複数個に分割した分割画像毎の曲率の平均値を用いて、分割画像毎に小矩形の画像領域を調整しても良い。これにより、例えば車両のバックアイカメラの設計において、該バックアイカメラの配置設計をさらに効率的に行うことができる。また、広角カメラを用いた監視システム等において、該広角カメラの適切な設置位置を事前に効率的に検証することができる。なお、視点位置を経時的に変化させる場合とは、例えばユーザが入力部21(例えばマウス)から手動で視点位置を移動させる場合や、一定の時間間隔で、自動で視点位置を移動させる場合があるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
また、3Dモデル内の視点位置を移動させないで透視投影画像に含まれた対象物を移動させる場合、例えばユーザが入力部21(例えばマウス)から特定の対象物を操作させる場合がある。この場合について、シミュレーション装置2の別の用途として、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、シミュレーション装置の別の用途を示す図であり、図12は、画像領域調整の具体例を示す図である。透視投影画像に含まれた特定の対象物を移動させるとき、図11に示すように、該対象物を仮想平面Kに投影した移動前のメッシュが例えば密である場合には、移動後のメッシュを移動前のメッシュの密に合わせる。図12に示すように、画像領域調整部251は、透視投影画像に含まれる小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように画像領域を併合したり分割したりする。このとき、画像領域調整部251は、特定の対象物を包含する小矩形、すなわちバウンディングボックス(Bounding Box)a20を取得する。そして、画像領域調整部251は、バウンディングボックスa20内の小矩形の粗密(曲率)を記憶部23に一時的に保持する。そして、特定の対象物が移動したとき、画像領域調整部251は、該対象物の移動先のバウンディングボックスa21内の小矩形の粗密(曲率)を記憶部23に保持された粗密(曲率)に置換する。そして、仮想平面精粗調整部252は、該対象物の移動前後のメッシュの粗密を同一にする。これにより、操作された対象物の一定の画質を保ちつつ、動画表示を高速化することができる。
【0066】
[その他]
なお、上記実施例2では、画像領域調整部251は、複数個の小矩形を1個の矩形として併合したり、1個の小矩形を複数個に分割したりする単位を「4」であるものとして説明した。しかし、画像領域調整部251は、これに限定されず、併合及び分割する単位を「2」にしても、「3」にしても、「5」にしても良いし、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、シミュレーション装置1、2は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーションなどの情報処理装置に、上記した制御部24及び記憶部23の各機能を搭載することによって実現することができる。
【0068】
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的態様は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、曲率算出部243と精粗調整部244とを1つの部として統合しても良く、一方、画像領域調整部251を、透視投影画像毎の小矩形の画像領域の曲率の平均値を算出する曲率平均算出部と、小矩形の画像領域の曲率値が該平均値に近似するように小矩形の画像領域を分割したり併合したりする画像分割併合部等とに分散しても良い。また、記憶部23をシミュレーション装置2の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。また、入力部21、出力部22を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上述したシミュレーション装置2の機能を実現するようにしても良い。
【0069】
[プログラム]
また、上記実施例で説明した各種の処理は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図13を用いて、図2に示したシミュレーション装置2と同様の機能を有するシミュレーションプログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
【0070】
図13は、シミュレーションプログラムを実行するコンピュータを示す図である。図13に示すように、コンピュータ1000は、RAM(Random Access Memory)1010と、キャッシュ1020と、HDD1030と、ROM(Read Only Memory)1040と、CPU(Central Processing Unit)1050、バス1060とを有する。RAM1010、キャッシュ1020、HDD1030、ROM1040、CPU1050は、バス1060によって接続されている。
【0071】
ROM1040には、図2に示したシミュレーション装置2と同様の機能を発揮するシミュレーション処理プログラム1041が予め記憶されている。具体的には、シミュレーション処理プログラム1041には、仮想平面生成プログラム、画像取得プログラム、曲率算出プログラム、精粗調整プログラム及び画像生成プログラムが含まれる。
【0072】
そして、CPU1050は、このシミュレーション処理プログラム1041を読み出して実行する。これにより、図13に示すように、シミュレーション処理プログラム1041は、シミュレーション処理プロセス1051になる。なお、シミュレーション処理プロセス1051は、図2に示した制御部24に対応する。
【0073】
また、HDD1030には、図13に示すようにシミュレーション処理関連情報1031が設けられる。シミュレーション処理関連情報1031は、例えば、図2に示した記憶部23に記憶される各種データ(3次元データ記憶部231及びレンズ収差記憶部232)に対応する。
【0074】
なお、上述したプログラム1041については、必ずしもROM1040に記憶させなくても良い。例えば、コンピュータ1000に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」にプログラム1041を記憶させても良い。又は、コンピュータ1000の内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などの「固定用の物理媒体」にプログラム1041を記憶させても良い。又は、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ1000に接続される「他のコンピュータ(又はサーバ)」にプログラム1041を記憶させても良い。そして、コンピュータ1000は、上述したフレキシブルディスクなどから各プログラムを読み出して実行するようにしても良い。
【0075】
以上の実施例に係る実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0076】
(付記1)3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像作成手順と、
前記撮像画像作成手順によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出手順と、
前記曲率算出手順によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整手順と、
前記精粗調整手順によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。
【0077】
(付記2)前記精粗調整手順は、
各画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出し、画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合し、または画像領域の曲率値が該平均値に近似するように1個の画像領域を複数の画像領域に分割する画像領域調整手順と、
前記収差データに基づいて、前記画像領域調整手順によって調整された画像領域を前記撮像部から撮像されるべき高さに変換し、変換した画像領域に応じて前記仮想平面のメッシュの精粗を調整する仮想平面精粗調整手順と
を含むことを特徴とする付記1に記載のシミュレーションプログラム。
【0078】
(付記3)前記画像領域調整手順は、
前記視点位置を経時的に移動させる場合に、各画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出し、画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合することを特徴とする付記2に記載のシミュレーションプログラム。
【0079】
(付記4)前記画像領域調整手順は、
前記視点位置を移動させないで前記撮像画像に含まれた対象物を移動させる場合に、移動後の当該対象物を包含する画像領域の曲率を、移動前の当該対象物を包含する画像領域の曲率に置換することを特徴とする付記2に記載のシミュレーションプログラム。
【0080】
(付記5)前記広角画像生成手順によって前記仮想平面に生成された広角画像をメッシュ毎に出力する画像出力手順を含むことを特徴とする付記1から付記4のいずれか1つに記載のシミュレーションプログラム。
【0081】
(付記6)3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像生成部と、
前記撮像画像生成部によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出部と、
前記曲率算出部によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整部と、
前記精粗調整部によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成部と
を有することを特徴とするシミュレーション装置。
【0082】
(付記7)コンピュータが動画像のシミュレーションを実行するシミュレーション方法であって、
3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像作成ステップと、
前記撮像画像作成ステップによって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出ステップと、
前記曲率算出ステップによって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整ステップと、
前記精粗調整ステップによって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成ステップと
を含むことを特徴とするシミュレーション方法。
【符号の説明】
【0083】
1、2 シミュレーション装置
11 撮像画像生成部
12 曲率算出部
13 精粗調整部
14 画像生成部
21 入力部
22 出力部
23 記憶部
231 3次元データ記憶部
232 レンズ収差記憶部
24 制御部
241 仮想平面生成部
242 撮像画像生成部
243 曲率算出部
244 精粗調整部
245 広角画像生成部
251 画像領域調整部
252 仮想平面精粗調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像作成手順と、
前記撮像画像作成手順によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出手順と、
前記曲率算出手順によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整手順と、
前記精粗調整手順によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。
【請求項2】
前記精粗調整手順は、
各画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出し、画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合し、または画像領域の曲率値が該平均値に近似するように1個の画像領域を複数の画像領域に分割する画像領域調整手順と、
前記収差データに基づいて、前記画像領域調整手順によって調整された画像領域を前記撮像部から撮像されるべき高さに変換し、変換した画像領域に応じて前記仮想平面のメッシュの精粗を調整する仮想平面精粗調整手順と
を含むことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項3】
前記画像領域調整手順は、
前記視点位置を経時的に移動させる場合に、各画像領域の曲率値から曲率の平均値を算出し、画像領域の曲率値が該平均値に近似するように隣接する複数の画像領域を1個の画像領域として併合することを特徴とする請求項2に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記画像領域調整手順は、
前記視点位置を移動させないで前記撮像画像に含まれた対象物を移動させる場合に、移動後の当該対象物を包含する画像領域の曲率を、移動前の当該対象物を包含する画像領域の曲率に置換することを特徴とする請求項2に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項5】
3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像生成部と、
前記撮像画像生成部によって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出部と、
前記曲率算出部によって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整部と、
前記精粗調整部によって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成部と
を有することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項6】
コンピュータが動画像のシミュレーションを実行するシミュレーション方法であって、
3Dモデル内の所定の視点位置に仮想的に配置された撮像部によって撮像される撮像画像を前記3Dモデルのデータに基づいて作成する撮像画像作成ステップと、
前記撮像画像作成ステップによって作成された撮像画像を所定角形状の画像領域に分割し、各画像領域に属する前記データに基づいて各画像領域の曲率を算出する曲率算出ステップと、
前記曲率算出ステップによって算出された各画像領域の曲率に基づいて、前記視点位置から所定の距離に仮想的に配置される仮想平面のメッシュの精粗を調整する精粗調整ステップと、
前記精粗調整ステップによって調整された仮想平面のメッシュの精粗に応じて、前記撮像部に用いられる広角レンズの収差データを前記撮像画像に適用し、当該広角レンズを通して撮像される広角画像を生成する広角画像生成ステップと
を含むことを特徴とするシミュレーション方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−238000(P2011−238000A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108443(P2010−108443)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】