説明

シャッター装置およびそれを備えた露光装置

【課題】迅速に正確な露光動作を行う。
【解決手段】ワークに対して露光する際に光束を開閉するシャッター装置26を、エアシリンダ33でスライドされる一枚のスライド板32で上記光束を開閉するスライドシャッター30と、サーボモータ37で回転される回転板36で上記光束を開閉する回転シャッター31とを、併設して構成している。そして、サーボモータ37によって回転板36を回転する回転シャッター31側で露光時間を設定する一方、スライドシャッター30側で露光のタイミングを設定するようにしている。こうして、迅速に正確な露光動作を行うことができる。さらに、回転板36によって、フライアイレンズ25を開放した側から閉鎖することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面29での積算光量を一定にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばFPD(Flat Panel Display)等に用いられるプリント基板,半導体装置,液晶基板等の製造に使用される露光装置のシャッター装置、および、それを備えた露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板,半導体装置,液晶基板等に対して露光を行う各種露光装置に内蔵されて、光源からの光束を通過遮断するシャッター装置として、特開平11‐338005号公報(特許文献1)に開示された「光照射装置のシャッター機構」がある。
【0003】
上記特許文献1に開示されたシャッター機構においては、図5に示すように、円盤状のアルミ板の両側を90度の角度で扇形に切り欠いて、2個の対称形の切欠き部で構成された光通過部2と、同じく扇形を有する2個の対称形の非切欠き部で構成された遮光部3とを有するシャッター板1を、光源からの光路上に配置している。このシャッター板1は、駆動手段および制動手段(図示せず)によって回転軸4を中心にして一定方向に回転され、所定位置で停止する。あるいは、連続回転される。
【0004】
上記シャッター板1が回転を開始すると、遮光部3の縁が光束に差し掛かって光の照射が始まり、さらにシャッター板1が90度回転すると、図5(a)に示すように、完全なシャッタ開状態となる。こうして、全ての光束が光通過部2を通過する。そして、この状態からシャッター板1がさらに90度回転すると、図5(b)に示すように、シャッター閉状態となり、光束が再び遮光部3によって遮断される。
【0005】
すなわち、上記シャッター板1が180度回転することによって、シャッター閉→シャッター開→シャッター閉の1サイクルが終了し、その間にワークが1回露光される。このように、1サイクルにおける2個の遮光部3の回転方向を同方向にすることによって、照射開始から照射終了までの間における被照射面での積算光量を一定にできるのである。
【0006】
また、光源からの光束を通過遮断するシャッター装置の他の例として、図6に示すようなスライドシャッター5がある。このスライドシャッター5は、同一の単レンズを縦横に配列したレンズアレイであって多重光源像を形成するフライアイレンズ6からの光束を遮蔽する第1スライド板7および第2スライド板8を有しており、この2つのスライド板7,8の一端同士を連結部材9で連結して構成されている。つまり、2つのスライド板7,8は所定幅の空間でなる光通過部10を介して並列に配置されている。このスライドシャッター5は、駆動手段(図示せず)によってスライド板7,8の配列方向に往復動され、所定位置で停止される。
【0007】
上記スライドシャッター5が、動作1において、図6の状態から矢印11の方向に移動すると、第1スライド板7における内側の縁がフライアイレンズ6からの光束に差し掛かって、光の照射が開始される。さらに、スライドシャッター5が矢印11の方向に移動すると完全なシャッタ開状態となり、上記光束の全てが光通過部10を通過する。そして、動作2において、この状態からスライドシャッター5がさらに矢印11の方向に移動するとシャッター閉状態となり、上記光束が第2スライド板8によって再び遮断される。
【0008】
また、動作3において、上記スライドシャッター5が矢印12の方向に移動すると完全なシャッタ開状態となり、動作4において、スライドシャッター5がさらに矢印12の方向に移動するとシャッター閉状態となって図6の状態に戻る。
【0009】
すなわち、上記スライドシャッター5が一方向に端まで移動することによって、シャッター閉→シャッター開→シャッター閉の1サイクルが終了し、その間にワークが1回露光される。このように、1サイクルにおける2個のスライド板7,8の移動方向を同方向にすることによって、上記光束を開放した側から閉鎖することができ、照射開始から照射終了までの間における被照射面での積算光量を一定にできるのである。
【0010】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された光照射装置のシャッター機構には、以下のような問題がある。
【0011】
上記シャッター板1は、ワークが所定の位置にセットされるまで光束を遮断し続ける必要がある。さらに、所定の露光時間が経過するまで光束を通過させ続ける必要がある。そして、ワークのセットに要する時間と露光時間とは同一ではない。したがって、シャッター板1は、光束を通過・遮断させる毎に停止されるようになっている。
【0012】
一方において、最近、スループット向上の要請から、例えば半導体装置の製造においては、ワークに塗布されるレジストの高感度化や光源の高照度化によってワークの露光時間を短縮するようにしている。そして、露光時間の短縮には、シャッター板1を高速で回転させると共に所定位置に急速に精度良く停止させる必要がある。
【0013】
そのため、上記従来の光照射装置のシャッター機構においては、回転モーメントを減少して慣性力を小さくするために、シャッター板1を薄肉化して軽量化している。しかしながら、シャッター板1の遮光部3は扇形を有しているために各遮光部3の重心は「半径/2」よりも外側にあり、内側にある場合に比して大きな遠心力(つまり慣性力)が作用することになる。したがって、シャッター板1を高速回転および急速停止を行うには起動停止に大きなパワーが必要となるため、サーボモータ等で成る駆動手段が大型化すると共に、微妙な露光量の制御が困難になるという問題がある。
【0014】
さらに、露光以外のワーク供給等の準備プロセスの時間が長い場合には、シャッター板1の遮光部3は光束を遮断した状態で長時間停止することになる。したがって、光源からの200℃程度の熱が遮光部3に蓄積されて高温になり、変形する場合がある。
【0015】
そのため、上記従来の光照射装置のシャッター機構においては、遮光部3の光入射面を鏡面にして入射した光を反射させる一方、遮光部3の裏面には赤外線放射膜を形成して熱エネルギーを上記裏面から効率良く放射して、シャッター板1に蓄積される熱エネルギーを少なくしている。しかしながら、スループット向上のために光源の高照度化が図られた場合には、遮光部3に入射される光エネルギーが大きくなり、遮光部3に蓄積される熱量も大きくなる。したがって、遮光部3の光入射面を鏡面にし、裏面に赤外線放射膜を形成したとしても、遮光部3は高温になり、上記駆動手段が破損し易いという問題がある。
【0016】
以上のことより、上述したように、上記シャッター板1を、上記一定方向に連続回転することが考えられる。しかしながら、その場合には、ワークのセットに要する時間と露光時間とは同一ではないため、ワークの露光時間を短縮する場合には、シャッター板1の回転速度を所望の露光時間が得られるように設定すると、露光のタイミングがワークのセット完了のタイミングよりも早くなり、所望の露光のタイミングが得られない。そのため、ワークの露光時間を短縮することができないという問題がある。
【0017】
また、図6に示すスライドシャッター5の場合にも、上記スライドシャッター5は、光束を通過・遮断させる毎に停止されるようになっており、然もスライドシャッター5は、一方向に往復動される。したがって、スライドシャッター5の場合にも、スループット向上のために光源の高照度化が図られた場合には、上記従来の特許文献1に開示された光照射装置のシャッター機構の場合と同様の問題が発生する。
【0018】
特に、上記駆動手段としてエアシリンダーを用いた場合には、スライドシャッター5からの熱によってエアシリンダーが劣化して動きが鈍くなり、所望の露光速度が得られなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11‐338005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、この発明の第1の課題は、迅速且つ正確な露光動作を行うことができるシャッター装置を提供することにある。
【0021】
また、この発明の第2の課題は、光の熱で駆動手段が劣化し難いシャッター装置を提供することにある。
【0022】
また、この発明の第3の課題は、上記シャッター装置を備えた露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、この発明のシャッター装置は、
光源からの光束を通過および遮蔽して、上記光源からの光束による露光のタイミングを設定するスライド板と、上記スライド板をスライドさせるスライド板駆動部とを含むスライドシャッターと
光通過部を有すると共に、一方向に回転されて光源からの光束を通過および遮蔽して、上記光源からの光束による露光時間を設定する回転板と、上記回転板を上記一方向に回転させる回転板駆動部とを含む回転シャッターと
を備え、
上記スライドシャッターと上記回転シャッターとは、上記スライド板と上記回転板とを互いに対向させて配置されている
ことを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、一方向に回転される回転板を含んでいる回転シャッターによって、光源からの光束による露光時間を設定する一方、スライド板を含んでいるスライドシャッターによって、上記光源からの光束による露光のタイミングを設定するようにしている。このように、シャッター開閉動作に対する慣性力の影響が往復動よりも少ない一方向への回転によってシャッターの開閉を行う上記回転シャッター側で露光時間を設定するので、迅速且つ正確な露光動作を行うことができる。したがって、スループットの向上に伴う露光時間の短縮化に対処することができる。
【0025】
さらに、一方向に回転される上記回転板によって光源からの光束を通過および遮蔽するので、常に一方向に回転する光通過部によって上記光束を通過させた側から遮断することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面での積算光量を一定にすることができる。
【0026】
また、1実施の形態のシャッター装置では、
上記スライドシャッターと上記回転シャッターとのうち、上記スライドシャッターを上記光源側に配置している。
【0027】
この実施の形態によれば、上記光源からの光束による露光のタイミングを設定する上記スライドシャッターを上記光源側に配置しているので、上記スライド板は、露光面に対して実際に露光を行う場合以外には、長時間に亘って上記光源からの光束を受けることになる。しかしながら、上記スライド板における上記光束の入射位置を上記スライド板駆動部から離れた位置に設定することによって、上記スライド板の熱が上記スライド板駆動部に伝わり難くできる。したがって、上記スライド板駆動部が、上記光源からの光の熱によって劣化して、動きが鈍くなることを防止できる。
【0028】
尚且つ、上記回転シャッターの上記回転板が上記光源からの光束を受けることを防止して、上記回転板駆動部が上記光源からの光の熱によって劣化するのを防止できる。
【0029】
また、1実施の形態のシャッター装置では、
上記回転シャッターの上記回転板には、上記光通過部がただ一つだけ設けられている。
【0030】
この実施の形態によれば、上記回転板には上記光通過部がただ一つだけ設けられているので、上記光通過部が形成されていない領域である非光通過部の角度を大きく設定することができる。したがって、上記回転板が回転し始めてから上記光通過部における回転方向前側の縁が所望の一定回転速度になるまでの時間を十分に確保することができ、上記光通過部が上記光束を通過させる際における上記回転板の回転速度を常に上記一定回転速度にすることができる。そのため、上記スライドシャッターの動作と上記回転シャッターの動作との同期を容易に取ることが可能になる。
【0031】
また、1実施の形態のシャッター装置では、
上記光通過部がただ一つだけ設けられた上記回転板を2枚積層し、
上記積層された2枚の回転板における上記光通過部同士の重なり量を変更可能にしている。
【0032】
この実施の形態によれば、積層された2枚の上記回転板における上記光通過部同士の重なり量を変更可能にしたので、2枚の上記回転板で形成される光束を通過させる切欠き部の角度を微少角度から大きな角度まで切り換え可能にできる。したがって、露光量が微少な場合や露光量を頻繁に変化させる必要がある場合に、対処することができる。
【0033】
また、この発明の露光装置は、
光源と、
上記光源からの光束の照度分布を略均一するためのフライアイレンズと、
上記光源からの光束を上記フライアイレンズの入射面に集光する集光部と、
上記フライアイレンズの出射面からの光束を平行光束にして露光面を照射するコリメーション部と、
上記フライアイレンズと上記コリメーション部との間に配置されて、上記フライアイレンズからの光束を通過および遮蔽する上記この発明のシャッター装置と
を備えたことを特徴としている。
【0034】
上記構成によれば、フライアイレンズからの光束を通過および遮蔽するシャッター装置として、スライドシャッターと回転シャッターとを併設して構成されたシャッター装置を用い、上記回転シャッターによって露光時間を設定する一方、上記スライドシャッターによって露光のタイミングを設定するようにしている。したがって、迅速且つ正確な露光動作を行うことができる。さらに、常に一方向に回転する上記回転板の光通過部によって上記光束を通過させた側から遮断することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面での積算光量を一定にすることができる。すなわち、この発明によれば、スループットの向上に伴う露光時間の短縮化に対処可能な露光装置を提供することができる。
【0035】
さらに、上記回転板に上記光通過部を1つだけ設けた場合には、上記回転板が回転し始めてから上記光通過部における回転方向前側の縁が所望の一定回転速度になるまでの時間を十分に確保することができる。したがって、上記スライドシャッターの動作と上記回転シャッターの動作との同期を容易に取ることができる。
【0036】
また、1実施の形態の露光装置では、
上記シャッター装置を構成する上記スライドシャッターと上記回転シャッターとの夫々の動作を、互いの同期を取って制御する制御部
を備えている。
【0037】
この実施の形態によれば、制御部によって、上記スライドシャッターと上記回転シャッターとの夫々の動作を互いの同期を取って制御するので、正しく、上記回転シャッターによって露光時間を設定し、上記スライドシャッターによって露光のタイミングを設定することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上より明らかなように、この発明のシャッター装置は、一方向に回転される回転板を含む回転シャッターによって、光源からの光束による露光時間を設定する一方、スライド板を含むスライドシャッターによって、上記光源からの光束による露光のタイミングを設定するようにしたので、シャッター開閉動作に対する慣性力の影響が往復動よりも少ない一方向への回転によってシャッターの開閉を行う上記回転シャッター側で、露光時間を設定することができる。したがって、迅速且つ正確な露光動作を行うことができる。
【0039】
さらに、常に一方向に回転する光通過部によって上記光束を通過させた側から遮断することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面での積算光量を一定にすることができる。
【0040】
また、この発明の露光装置は、フライアイレンズからの光束を通過および遮蔽するシャッター装置として、スライドシャッターと回転シャッターとを併設したシャッター装置を用い、上記回転シャッターによって露光時間を設定する一方、上記スライドシャッターによって露光のタイミングを設定するので、迅速且つ正確な露光動作を行い、露光期間における露光面での積算光量を一定にすることができる。したがって、スループットの向上に伴う露光時間の短縮化に対処可能な露光装置を提供することができる。
【0041】
さらに、上記回転板に上記光通過部を1つだけ設けた場合には、上記回転板が回転し始めてから上記光通過部における回転方向前側の縁が所望の一定回転速度になるまでの時間を十分に確保することができる。したがって、上記スライドシャッターと上記回転シャッターとの同期を容易に取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明のシャッター装置を備えた露光装置における構成図である。
【図2】図1におけるシャッター装置の構成図である。
【図3】図2におけるスライドシャッターの正面図および側面図である。
【図4】図2における回転シャッターの正面図および側面図である。
【図5】従来のシャッター機構の説明図である。
【図6】従来のスライドシャッターの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態のシャッター装置を備えた露光装置における概略構成図である。
【0044】
図1の露光装置21において、紫外線ランプ22から出射された紫外線を含む光束は、楕円集光ミラー23によって集光されて第1平面ミラー24に入射される。第1平面ミラー24で反射されて光軸が略直角に曲げられた光束は、露光面での照度分布を均一化するためのフライアイレンズ25の入射面に収束される。フライアイレンズ25から出射した光束は、フライアイレンズ25の後方に配置されたシャッター装置26が開くと、シャッター装置26を通過し、第2平面ミラー27で反射されて、光束が広がらないように光軸に平行に反射する鏡面を有するコリメーションミラー28に入射される。そして、コリメーションミラー28で光軸に平行となった光束は露光面29を照射する。一方、シャッター装置26が閉じると、露光面29の照射を終了する。
【0045】
図2は、上記シャッター装置26の正面図(図2(a))および側面図(図2(b))である。以下、図2に従って、シャッター装置26について説明する。
【0046】
上記シャッター装置26は、フライアイレンズ25側に位置するスライドシャッター30と、スライドシャッター30に併設された回転シャッター31との、2つのシャッターによって構成されている。ここで、図2(a)の正面図においては、前側に位置している回転シャッター31を通して、後側に位置しているスライドシャッター30が見えるように表現している。
【0047】
上記スライドシャッター30は、図1中上下方向にスライドしてフライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断するスライド板32と、このスライド板32を上下方向にスライドさせる上記スライド板駆動部としてのエアシリンダ33とを有している。エアシリンダ33はトリプルロッド型であり、3本のピストンロッド33a,33b,33cの先端にはスライド板32の上端が取り付けられている。さらに、エアシリンダ33は取付板34に取り付けられており、この取付板34は、紫外線ランプ22および第1平面ミラー24の収納ケース35の側壁35aに台座を介して取り付け固定されている。
【0048】
上記回転シャッター31は、切欠き部を有すると共に、回転してフライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断する回転板36と、この回転板36を図2中の矢印方向に回転する上記回転板駆動部としてのサーボモータ37とを有している。
【0049】
上記収納ケース35の側壁35aに取り付けられている取付板34を跨ぐように、スライド板32とは所定の間隔を空けて、取付板34と平行にモータ取付板38が配設されており、側壁35aに台座を介して取り付け固定されている。そして、モータ取付板38の表面には、サーボモータ37が、モータ取付板38に穿たれた貫通穴(図示せず)に回転軸を裏面側に向かって挿通させて取り付けられている。スライド板32とモータ取付板38との間には、回転板36が取付板34と平行に配設されており、この回転板36はサーボモータ37の上記回転軸に取り付けられている。
【0050】
図3は、上記スライドシャッター30の正面図および側面図である。図3(a)は側面図であり、図3(b)は正面図である。
【0051】
上記スライドシャッター30のスライド板32は、図3に示すように、フライアイレンズ25のサイズに比べて、十分に大きな矩形の板の両側をフライアイレンズ25側に折り曲げて、横断面が「コ」字状に形成されている。このように、シャッター装置26が閉じている間にフライアイレンズ25から出射した光束を遮断しているスライド板32の面積を大きく、且つ厚みを薄く形成して、熱伝導性と放熱性とを高め、伝達された熱を速やかに放出してスライド板32の温度が上がり難くしている。但し、両側を折り曲げて横断面を「コ」字状に形成することによって、スライド板32の剛性を高めるようにしている。
【0052】
また、上記スライド板32の面積を大きくすることによって、フライアイレンズ25からの光束が入射される箇所を上記スライド板駆動部としてのエアシリンダ33から離すことができ、スライド板32の熱がエアシリンダ33に伝わり難くしている。
【0053】
さらに、上記スライド板32を3本のピストンロッド33a,33b,33cを有するトリプルロッド型のエアシリンダ33でスライドさせるので、高い不回転精度と先端触れ精度とを得ると共に、高い推力を得ることができる。したがって、スライド板32が薄板で軽量に構成されていることと相俟って、スライド板32を正確且つ迅速に移動させることができ、迅速なシャッター動作を行うことができる。また、エアシリンダ33を薄く構成してスペース効率を高めることができる。また、トリプルロッド型のエアシリンダ33を用いることによって、スライド板32からエアシリンダ33の本体へ熱を伝達するピストンロッドの本数を3本にして熱の放熱性を高め、エアシリンダ33の本体への熱の伝達量を抑制することができる。
【0054】
図4は、上記回転シャッター31の正面図および側面図である。図4(a)は側面図であり、図4(b)は正面図である。
【0055】
上記回転シャッター31の回転板36には、開き角度が略90度の扇型の切欠き部でなる光通過部39をただ一つだけ設けて、光通過部39が形成されていない非光通過部の角度を大きく設定するようにしている。このように、光通過部39を1つだけ設けて、非光通過部の角度を大きく設定することによって、回転板36が回転し始めてから光通過部39における回転方向前側の縁39aが所望の一定回転速度になるまでの時間を十分に確保することができる。したがって、縁39aがフライアイレンズ25の位置に至る前に回転板36の回転速度が上記一定回転速度になるようにすることができ、回転板36が所望の回転速度になっている期間に光通過部39がフライアイレンズ25の位置を通過するようにできる。
【0056】
その場合の光通過部39の開き角度は、上記90度に限定されるものではなく、所望の回転速度で回転板36を回転させた場合に、少なくとも所望の露光時間だけフライアイレンズ25からの光束を通過させることができる角度であればよい。
【0057】
上記構成を有するスライドシャッター30のエアシリンダ33は、図1に示すように、シリンダ駆動部40によって駆動されてスライド板32を上下方向にスライドさせて、フライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断する。一方、回転シャッター31のサーボモータ37は、モータ駆動部41によって駆動されて回転板36を上記矢印方向に回転させて、フライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断する。制御部42は、シリンダ駆動部40およびモータ駆動部41の動作を同期を取って制御することにより、以下のようなシャッター開閉動作を行う。
【0058】
・第1シャッター開閉動作
この第1シャッター開閉動作では、回転シャッター31側で露光時間を設定し、スライドシャッター30側で露光のタイミングを設定する。
【0059】
先ず、上記制御部42により、回転シャッター31における回転板36の回転速度を、所望の露光時間だけフライアイレンズ25からの光束を通過できるように設定する。さらに、回転板36における光通過部39の縁39aの回転開始位置を、上記設定した回転速度になった後に縁39aがフライアイレンズ25の位置に到達するように設定し、上記回転速度と共に内部メモリ等に格納する。そして、モータ駆動部41に対して制御信号を出力して、縁39aの回転開始位置を上記予め設定した位置に位置決めさせる。
【0060】
次に、外部からの信号によってワークが所定の位置にセットされたことを制御部42が検知すると、制御部42によって、シリンダ駆動部40に対して制御信号を出力して、スライドシャッター30のスライド板32を上方にスライドさせる。そして、スライド板32が確実にフライアイレンズ25からの光束を通過させるまでの時間が経過すると、モータ駆動部41に対して制御信号を出力して、回転板36の上記設定した回転速度での回転を開始させる。
【0061】
次に、上記制御部42によって、回転板36における光通過部39の回転方向後側の縁39bがフライアイレンズ25の位置を通り過ぎるまでの時間が経過すると、シリンダ駆動部40に対して制御信号を出力して、スライドシャッター30のスライド板32を下方にスライドさせる。そして、スライド板32が確実にフライアイレンズ25からの光束を遮断するまでの時間が経過すると、モータ駆動部41に対して制御信号を出力して、回転板36の回転を停止させて、光通過部39の縁39aを回転開始位置に位置させる。
【0062】
以後、上述した動作を、ワークが所定の位置にセットされる毎に繰り返して行う。
【0063】
・第2シャッター開閉動作
この第2シャッター開閉動作では、回転シャッター31側で露光時間を設定し、スライドシャッター30側で露光のタイミングを設定する。
【0064】
先ず、上記制御部42により、回転シャッター31における回転板36の回転速度を、所望の露光時間だけフライアイレンズ25からの光束を通過できるように設定し、上記内部メモリ等に格納する。そして、モータ駆動部41に対して制御信号を出力して、回転板36の上記設定した回転速度での回転を開始させる。以後、回転板36を、上記設定した回転速度で回転し続ける。
【0065】
次に、外部からの信号によってワークが所定の位置にセットされたことを上記制御部42が検知すると、回転板36の回転速度が上記設定した回転速度に到達した以降に、回転板36がフライアイレンズ25を閉鎖している期間において(つまり、光通過部39の縁39aがフライアイレンズ25の位置に到達する前に)、制御部42によって、シリンダ駆動部40に対して制御信号を出力して、スライドシャッター30のスライド板32を上方にスライドさせる。その場合、回転板36がフライアイレンズ25を閉鎖している期間にスライド板32がフライアイレンズ25を完全に解放するように、スライド板32のスライド開始時点を設定しておく。そして、回転板36における光通過部39の回転方向後側の縁39bがフライアイレンズ25の位置を通り過ぎるまでの時間が経過すると、シリンダ駆動部40に対して制御信号を出力して、スライドシャッター30のスライド板32を下方にスライドさせる。
【0066】
以後、上述した制御部42によるシリンダ駆動部40に対する制御を、ワークが所定の位置にセットされる毎に繰り返して行う。その間、回転板36は上記設定した回転速度での回転を続行する。そして、全てのワークに対する露光処理が終了したことを制御部42が検知すると、制御部42によってモータ駆動部41に対して制御信号を出力して、回転板36の回転を停止させるのである。
【0067】
上記第2シャッター開閉動作の場合には、回転シャッター31の回転板36を常時一定の回転速度で回転するので、回転板36を回転駆動するサーボモータ37は大きな駆動力を必要とはせず、小型で安価なモータを使用することができる。また、制御部42によるシリンダ駆動部40およびモータ駆動部41に対する制御も簡単になる。
【0068】
上述したように、上記第1シャッター開閉動作および第2シャッター開閉動作においては、何れも回転シャッター31側で露光時間を設定するようにしている。したがって、常に一方向に回転する光通過部39によってフライアイレンズ25を開放した側から閉鎖することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面29での積算光量を一定にできるのである。
【0069】
尚、上記スライドシャッター30のスライド板32に、一つの光通過穴とこの光通過穴の両側に設置された2つの光遮光部とを設けて、スライドシャッター30を図6に示す従来のスライドシャッター5の場合と同様に動作させれば、フライアイレンズ25を開放した側から閉鎖して照射開始から照射終了までの間における露光面29での積算光量を一定にすることが可能になる。その場合は、スライドシャッター30側で露光時間を設定し、回転シャッター31側で露光のタイミングを設定することが可能になる。
【0070】
しかしながら、上記サーボモータ37によって回転板36を回転する回転シャッター31側で露光時間を設定する方が、シャッター開閉動作に対する慣性力の影響を少なくすることができ、迅速且つ正確に露光時間を設定することができるので好ましい。
【0071】
以上のごとく、本実施の形態においては、ワークに対して紫外線ランプ22からの光束を露光するに際して上記光束を通過・遮断するシャッター装置26を、エアシリンダ33でスライドされる一枚のスライド板32で上記光束を通過・遮断するスライドシャッター30と、サーボモータ37で回転される回転板36で上記光束を通過・遮断する回転シャッター31とを、併設して構成している。
【0072】
そして、上記サーボモータ37によって回転板36を回転する回転シャッター31側で露光時間を設定する一方、スライドシャッター30側で露光のタイミングを設定するようにしている。したがって、迅速に正確な露光動作を行うことができる。さらに、回転板36によって、フライアイレンズ25を開放した側から閉鎖することができ、照射開始から照射終了までの間における露光面29での積算光量を一定にできる。
【0073】
また、互いに併設されている上記スライドシャッター30と回転シャッター31とのうち、スライドシャッター30をフライアイレンズ25側に位置させている。そして、スライドシャッター30は、回転シャッター31の回転板36によってフライアイレンズ25からの光束を通過させる必要がある場合のみ開放して、露光のタイミングを設定するようにしている。したがって、非露光期間中は、フライアイレンズ25からの光束をスライドシャッター30のスライド板32で遮ることになる。
【0074】
その場合、上記スライドシャッター30のスライド板32は、フライアイレンズ25のサイズに比べて大きな矩形の薄板の両側を折り曲げて形成されている。このように、スライド板32の面積を大きく且つ厚みを薄くすることによって、熱伝導性と放熱性とを高めて、伝達された熱を速やかに放出してスライド板32の温度が上がり難くできる。また、スライド板32の面積を大きくすることによって、フライアイレンズ25からの光束の入射位置をピストンロッド33a,33b,33cを介してエアシリンダ33から離すことができ、スライド板32の熱がエアシリンダ33に伝わり難くできる。また、トリプルロッド型のエアシリンダ33を用いることにより、スライド板32から3本のピストンロッド33a,33b,33cを介してエアシリンダ33の本体へ伝達される熱の放熱性を高めることができる。したがって、エアシリンダ33が、フライアイレンズ25からの入射光の熱によって劣化して、動きが鈍くなることを防止できる。
【0075】
さらに、上記フライアイレンズ25からの光束をスライドシャッター30のスライド板32で受けることによって、非露光期間中に回転シャッター31の回転板36がフライアイレンズ25からの光束を受ける量を少なくすることができる。したがって、回転板36を直接駆動するサーボモータ37が回転板36からの熱で劣化することを防止できる。
【0076】
また、上記回転シャッター31の回転板36には、扇型の切欠き部でなる光通過部39を1つだけ設け、光通過部39が形成されていない非光通過部の角度を大きく設定している。このように、光通過部39を1つだけ設けことによって、回転板36が回転し始めてから光通過部39における回転方向前側の縁39aが所望の一定回転速度になるまでの時間を十分に確保することができる。したがって、光通過部39が、常時所望の回転速度でフライアイレンズ25の位置を通過するようにできる。そのため、制御部42によってシリンダ駆動部40およびモータ駆動部41の動作を制御して上記第1,第2シャッター開閉動作を行う場合に、スライドシャッター30と回転シャッター31との同期を容易に取ることができる。
【0077】
尚、上記実施の形態においては、スライドシャッター30は、スライド板32を図1中上下方向にスライドして、フライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断するようにしているが、スライド板を図2(a)中左右にスライドさせて、フライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断してもよい。あるいは、スライド板を揺動させて、フライアイレンズ25からの出射光を通過・遮断することも可能である。
【0078】
また、上記露光量が微少であったり、露光量を頻繁に変化させる必要がある場合には、回転シャッター31の回転板36を2枚重ねて用い、2枚の回転板36における光通過部39同士の重なり量を変更可能に構成する。そして、光通過部39の重なり量を変更することによって、光束を通過させる切欠き部の角度を微少角度から90度まで切り換え可能にしても差し支えない。尚、その場合における上記光通過部39同士の重なり量の変更方法は、特に限定するものではない。例えば、2枚の回転板36の内面に周方向に沿って複数の係合部あるいは連結穴を設け、両回転板36の係合箇所あるいは連結箇所を換えることによって行ってもよい。尚、上記係合部としては機械式係合部や電磁式係合部がある。
【0079】
また、上記スライドシャッター30のスライド板32をスライドさせる上記スライド板駆動部として、エアシリンダ33を用いている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、油等の液体シリンダを用いてもよい。また、回転シャッター31の回転板36を回転する上記回転板駆動部として、サーボモータ37を用いている。しかしながら、ロータリーシリンダを用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
21…露光装置、
22…紫外線ランプ、
23…楕円集光ミラー、
25…フライアイレンズ、
26…シャッター装置、
28…コリメーションミラー、
29…露光面、
30…スライドシャッター、
31…回転シャッター、
32…スライド板、
33…エアシリンダ、
33a,33b,33c…ピストンロッド、
34…取付板、
35…収納ケース、
35a…収納ケースの側壁、
36…回転板、
37…サーボモータ、
38…モータ取付板、
39…光通過部、
39a…光通過部の回転方向前側の縁、
39b…光通過部の回転方向後側の縁、
40…シリンダ駆動部、
41…モータ駆動部、
42…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光束を通過および遮蔽して、上記光源からの光束による露光のタイミングを設定するスライド板と、上記スライド板をスライドさせるスライド板駆動部とを含むスライドシャッターと
光通過部を有すると共に、一方向に回転されて光源からの光束を通過および遮蔽して、上記光源からの光束による露光時間を設定する回転板と、上記回転板を上記一方向に回転させる回転板駆動部とを含む回転シャッターと
を備え、
上記スライドシャッターと上記回転シャッターとは、上記スライド板と上記回転板とを互いに対向させて配置されている
ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシャッター装置において、
上記スライドシャッターと上記回転シャッターとのうち、上記スライドシャッターを上記光源側に配置した
ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載のシャッター装置において、
上記回転シャッターの上記回転板には、上記光通過部がただ一つだけ設けられている
ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシャッター装置において、
上記光通過部がただ一つだけ設けられた上記回転板を2枚積層し、
上記積層された2枚の回転板における上記光通過部同士の重なり量を変更可能にした
ことを特徴とするシャッター装置。
【請求項5】
光源と、
上記光源からの光束の照度分布を略均一するためのフライアイレンズと、
上記光源からの光束を上記フライアイレンズの入射面に集光する集光部と、
上記フライアイレンズの出射面からの光束を平行光束にして露光面を照射するコリメーション部と、
上記フライアイレンズと上記コリメーション部との間に配置されて、上記フライアイレンズからの光束を通過および遮蔽する請求項1から請求項4までの何れか一つに記載のシャッター装置と
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置において、
上記シャッター装置を構成する上記スライドシャッターと上記回転シャッターとの夫々の動作を、互いの同期を取って制御する制御部
を備えたことを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38357(P2013−38357A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175618(P2011−175618)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(592152303)株式会社太陽機械製作所 (3)
【Fターム(参考)】