説明

シャッタ

【課題】高い質感を有するようにする。
【解決手段】シャッタSは、ガイドレールGR1,GR2に相対する端部10A,端部10Bに設けた摺動支持部30,30が対応の該ガイドレールGR1,GR2にスライド移動可能に支持され、直線部と曲線部とが連なる該ガイドレールGR1,GR2に合わせて屈伸変形するシャッタ基材SBと、シャッタ基材SBの一面に配設されるパッド部材PDとを備える。パッド部材PDは、シャッタ基材SBの一面に設けられて弾力性を有する発泡体40と、この発泡体40の表面を被覆するように配設されて可撓性を有する表皮材50とから構成される。パッド部材PDは、スライド方向に沿う左側面PD2および右側面PD3が、シャッタ基材SBから離れるにつれて互いに離れるよう斜めに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向設置された一対のガイドレールに沿ってスライド移動可能に配設されるシャッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図10に示すように、自動車の乗員室内に設置されるフロアコンソールFCでは、上方に開口した物品収納部102がコンソール本体100の内部に画成されており、該物品収納部102の上部開口104を開閉する蓋部材としてシャッタS1を採用したものがある。前記シャッタS1は、フロアコンソールFC内において物品収納部102を挟んで左右に対向して配設された一対のガイドレールGR1,GR2に、一端部に設けた摺動支持部74および他端部に設けた摺動支持部74を夫々係合させることで、該ガイドレールGR1,GR2に沿って前後方向のスライド移動が可能となっている。
【0003】
前記一対のガイドレールGR1,GR2は、図10に示すように、幅方向において対称形状に形成されており、物品収納部102の上部開口104の側縁に前後方向へ水平に延在する直線部110と、該直線部110の後部から所定の曲率で物品収納部102の後側下方へ円弧状に湾曲する曲線部112とを備えている。従って前記シャッタS1は、物品収納部102を閉じた状態ではコンソール本体100の上面に略水平かつ平坦状に延在し、該物品収納部102を開いた状態では該コンソール本体100の後側内部に湾曲状態で収納されるため、平坦状態と湾曲状態とに変形することが要求される。またシャッタS1は、物品収納部102を閉じた状態において、上面に物品や腕(肘)を載せたり、乗員室に乗降する際に手を着く等の使用態様が起こり得る。このためシャッタS1は、湾曲状態への変形を可能とする可撓性および荷重を支える剛性の両方を兼備する必要がある。そこで、従来のシャッタS1は、図11および図12に示すように、軟質樹脂(熱可塑性エラストマ等)により成形されたプレート部材60と、この軟質樹脂より硬い硬質樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等)から成形されたリブ部材70とを備えている。すなわち、従来のシャッタS1は、所謂多色成形方法により製造されて、硬さが異なる2種類以上の樹脂から形成されたものが多く採用されている。
【0004】
前記プレート部材60は、セル部62と該セル部62より薄いヒンジ部64とがスライド方向に交互に形成されており、各ヒンジ部64において弾力的な湾曲変形が可能となっている。また、各リブ部材70は、前記セル部62に沿って延在するリブ部72と、該リブ部72の一端部および他端部の夫々に設けた摺動支持部74,74とを備えている。各リブ部材70は、スライド方向で互いに個々が分離しており、リブ部72がプレート部材60のセル部62に接合され、各摺動支持部74がプレート部材60より側方へ延出している。従ってシャッタS1は、各リブ部材70の各摺動支持部74,74を、対応するガイドレールGR1,GR2の溝部114に係合させることで、該ガイドレールGR1,GR2に沿ったスライド移動が可能となる。このようなシャッタS1は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−24099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来のシャッタS1は、図11および図12に示すように、ヒンジ部64を形成することによる凹凸がプレート部材60の表面に形成されているので質感が高くない。また、プレート部材60を形成する前記軟質樹脂は、内部に空隙を有さない所謂ソリッドタイプであるから、荷重が加わった際に圧縮変形するほどの柔軟性は備えていない。このため、物品収納部102を閉じた平坦状態のシャッタS1の上面に腕(肘)を載せた場合には、プレート部材60が殆ど圧縮変形しないから該シャッタS1をアームレストとして使用するには硬すぎる問題がある。
【0007】
なお、前記シャッタS1におけるプレート部材60の表面に、適宜の表皮材を直接貼付けるようにすることも考えられる。しかし、このような表皮材を装着するシャッタでは、プレート部材60を内側にして湾曲状態に変形するに際して内側の該プレート部材60と外側の表皮材との間に周長差があることから、ゴムの如く伸縮変形に富む素材から形成された表皮材を使用しなければならない。換言すると、伸縮変形し難い素材からなる表皮材をプレート部材60に装着した場合には、シャッタの湾曲状態への変形が阻害されたり、当該表皮材がプレート部材60から剥離する問題が発生する。また、伸縮変形に富む素材から形成された表皮材を使用した場合には、シャッタS1が湾曲状態と平坦状態との間で変形を繰り返すと該表皮材が伸びた状態となって弛みや皺が発生する問題が発生する。
【0008】
従って本発明では、高い質感を有するシャッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、対向設置された一対のガイドレールに沿ってスライド移動可能に配設されるシャッタであって、
前記ガイドレールに相対する各端が対応の該ガイドレールにスライド移動可能に支持され、直線部と曲線部とが連なる該ガイドレールに合わせて屈伸変形するシャッタ基材と、前記シャッタ基材の一面に配設されるパッド部材とを備え、
前記パッド部材は、前記シャッタ基材の一面に設けられて弾力性を有する発泡体と、この発泡体の表面を被覆するように配設されて可撓性を有する表皮材とから構成されることを特徴とする。
【0010】
従って、請求項1に係る発明によれば、シャッタ基材の一面に、弾力性を有する発泡体および可撓性を有する表皮材から構成されたパッド部材が配設されているので、シャッタ基材がパッド部材で隠れて表皮材が表側に露出し、発泡体による弾力性によりシャッタの質感が高くなる。また、シャッタがガイドレールの曲線部に沿って湾曲状態に変形する際には、弾力性を有する発泡体が変形することで該シャッタの湾曲状態への変形が阻害され難い。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記パッド部材は、スライド方向に沿う両側面が、前記シャッタ基材から離れるにつれて互いに離れるよう斜めに形成されることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、パッド部材のスライド方向に沿う両側面は、シャッタ基材から離れるにつれて互いに離れるよう斜めに設けられているから、該パッド部材の両側面はシャッタ基材側へ沈み込むように変形し易くなっている。従って、シャッタがガイドレールの曲線部に移動して湾曲状態となる際には、パッド部材のスライド方向に沿う両側面がシャッタ基材側へ沈み込んでパッド部材が圧縮変形し易くなり、表皮材がシャッタのスライド方向へ突っ張り難くなるので該シャッタの湾曲状態への変形が阻害され難い。また、表皮材がシャッタのスライド方向へ突っ張り難いから、パッド部材がシャッタ基材から剥離することも防止し得る。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記パッド部材は、スライド方向と交差する方向に沿う両端面の少なくとも一方が、前記シャッタ基材から離れるにつれて他方から離れるよう斜めに形成されることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、パッド部材のスライド方向と交差する方向に沿う両端面の少なくとも一方は、シャッタ基材から離れるにつれて他方から離れるよう斜めに設けられているから、該パッド部材の斜めに設けられた端面はシャッタのスライド方向における反対側の端面側へ近づくように変形し易くなっている。従って、シャッタがガイドレールの曲線部に移動して湾曲状態となる際には、パッド部材の斜めに形成された端面がシャッタのスライド方向における反対側の端面側へ変形するから表皮材がスライド方向へ突っ張り難くなり、該シャッタの湾曲状態への変形が阻害されない。また、表皮材がシャッタのスライド方向へ突っ張らないから、パッド部材がシャッタ基材から剥離することも防止し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシャッタによれば、表皮材および発泡体からなるパッド部材を備えるので高い質感を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例のシャッタの斜視図である。
【図2】平坦状態となった実施例のシャッタの側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】シャッタ基材の1つの支持体部を示す斜視図である。
【図5】シャッタ基材の各支持体部の両端に設けた支持部を示す部分拡大図である。
【図6】湾曲状態に変形した実施例のシャッタの側面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】実施例のシャッタをフロアコンソールの蓋部材として実施した状態を示す説明斜視図である。
【図9】パッド部材の別形態例を示す部分断面図である。
【図10】従来のシャッタをフロアコンソールの蓋部材として実施した状態を示す説明斜視図である。
【図11】従来のシャッタの斜視図である。
【図12】従来のシャッタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るシャッタにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、図8に示すように、フロアコンソールFCの蓋部材として実施されるシャッタを例示して説明するが、本願のシャッタが実施される対象は、このフロアコンソールFCに限定されない。なお実施例では、図1に示すように、シャッタSが水平かつ平坦状態において、該シャッタSのスライド方向を「長さ方向」、スライド方向と水平に直交する方向(両ガイドレールGR1,GR2の対向方向)を「幅方向」、スライド方向と垂直に直交する方向を「厚み方向」と指称する。また、厚み方向においては、上側をシャッタSの表側、下側を該シャッタSの裏側とする。
【実施例】
【0016】
実施例のシャッタSが配設されるフロアコンソールFCは、図8に示すように、コンソール本体100における前後方向の後側内部に、上方に開口した物品収納部102が画成されており、該物品収納部102の上部開口104を該シャッタSで開閉可能に覆蓋するようになっている。実施例のシャッタSは、コンソール本体100内に、該コンソール本体100の前後方向に延在すると共に物品収納部102を挟んで該コンソール本体100の幅方向に対向するよう配設された一対のガイドレールGR1,GR2に、後述する各摺動支持部30,30を各々係合させることで、該ガイドレールGR1,GR2に沿ったスライド移動が可能となっている。
【0017】
各ガイドレールGR1,GR2は、図8に示すように、幅方向において対称形状に形成されており、物品収納部102の上部開口104の側縁に前後方向へ水平に延在する直線部110と、該直線部110の後部から所定の曲率で物品収納部102の後側下方へ円弧状に湾曲する曲線部112とを備えている。各ガイドレールGR1,GR2は、互いに対向する内側面に、直線部110から曲線部112に亘って延在する溝部114が形成されており、各溝部114に前記摺動支持部30,30が突入して係合する。
【0018】
実施例のシャッタSは、図1〜図7に示すように、スライド方向に沿う各端が対応のガイドレールGR1,GR2にスライド移動可能に支持され、該ガイドレールGR1,GR2に合わせて伸びた状態と曲がった状態とに屈伸変形するシャッタ基材SBと、前記シャッタ基材SBの表面側に装着されるパッド部材PDとを備えている。そして、実施例のシャッタSは、シャッタ基材SBが屈伸変形すると共にパッド部材PDが該シャッタ基材SBに追従して変形することで、平坦状態と湾曲状態とに変形するようになっている。
【0019】
前記シャッタ基材SBは、長さ方向に並べて設けられて、当該シャッタに加わる荷重を支える支持体部10と、隣り合う支持体部10の間に両支持体部10,10を繋ぐように形成されたヒンジ部20と、各支持体部10における一方のガイドレールGR1に対向する一端部10Aおよび他方のガイドレールGR1に対向する他端部10Bの夫々に設けた摺動支持部30,30とを備えている。そしてシャッタ基材SBは、前記支持体部10、ヒンジ部20および摺動支持部30を、1種類の同一の成形材料によりインジェクション成形型を用いて1工程で一体成形された成形部材である。なお成形材料としては、熱可塑性エラストマより硬質のポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成樹脂が好適に採用される。
【0020】
シャッタ基材SBは、合計21個の支持体部10が長さ方向に並べて設けられており、幅方向において対称形状に形成されている。各支持体部10は、図3、図4および図7に示すように、両ガイドレールGR1,GR2の間隔に適合する長さで、幅方向へ細長い形状でヒンジ部20からシャッタSの裏側へ突出した形状に形成されている。各支持体部10は、シャッタSの表面を構成する板部12と、シャッタSの幅方向へ延在する第1梁部14および該第1梁部14と長さ方向へ離間しかつ平行に延在する第2梁部16と、第1梁部14および第2梁部16を連設する複数の連設部18とを備えている。各連設部18は、第1梁部14および第2梁部16の間において幅方向へ所要間隔毎に配設されている。従って支持体部10は、第1梁部14と第2梁部16との間に空間が画成された所謂梯子状のリブ構造体として構成されている。
【0021】
第1梁部14および第2梁部16は、図3および図4に示すように、シャッタSの長さ方向において対称となる形状に形成されており、該シャッタSの長さ方向での幅寸法に対して該シャッタSの厚み方向での高さ寸法が大きく設定されている。そして、第1梁部14および第2梁部16は、幅方向において4等分に便宜的に区切った場合に、中央寄りの2区分に対応する部分において高さが最大に形成され、当該支持体部10の一端部10A側および他端部10B側において高さが最小に形成されている。更に、第1梁部14および第2梁部16における一端部10A側の部分では、中央側から該一端部10Aに近づくにつれて高さが徐々に小さくなるように傾斜状に形成されていると共に、他端部10B側の部分では、中央側から該他端部10Bに近づくにつれて高さが徐々に小さくなるように傾斜状に形成されている。従って、リブ構造体として構成された支持体部10は、両梁部14,16間が硬質樹脂で埋まった形状の場合と同等の剛性が確保されており、幅方向における中間部に対し上方から荷重が加わっても、幅方向での撓み変形や捻れ変形が発現し難い。そして各支持体部10は、図2に示すように、シャッタSの長さ方向での幅寸法が、ヒンジ部20側(板部12側)が最大となるように形成され、厚み方向においてヒンジ部20から離れるにつれて徐々に小さくなり、ヒンジ部20と反対側の端部が最小となるように形成されている。すなわち支持体部10は、シャッタSの幅方向の外方から見た形状が、ヒンジ部20から離れるにつれて先細となる台形形状をなし、シャッタSの裏側へ突出して形成されている。
【0022】
ヒンジ部20は、図1〜図3に示すように、長さ方向で隣り合う支持体部10,10の板部12と一体的に形成され、各支持体部10を、厚み方向の表側で横並び状に連設している。そしてヒンジ部20は、支持体部10より薄肉に形成されて長さ方向で弾性的な撓曲変形または折曲変形が可能となっており、支持体部10の表側から離間した裏側が近接して、隣り合う一方の支持体部10における第1梁部14と他方の支持体部10における第2梁部16とが接触するまで変形が可能となっている。ヒンジ部20を挟んで隣り合う両支持体部10,10の間隔は、前述したように該支持体部10が台形形状に形成されていることで、シャッタSの平坦状態において、ヒンジ部20側が最も狭く、該ヒンジ部20から離れるにつれて徐々に大きくなっている(図2)。そしてヒンジ部20は、厚みが0.5mm程度に設定されており、必要な剛性を有する硬質の合成樹脂からなる成形材料により形成されていても、隣り合う支持体部10,10が互いに接触するまで弾性的に撓曲変形または折曲変形し得ると共に、隣り合う支持体部10,10が互いに接触するまで折曲させた際でも塑性変形による破断が発生しないよう構成されている。
【0023】
各支持体部10の両端部10A,10Bに設けた各摺動支持部30は、図1、図4および図5に示すように、厚み方向においてヒンジ部20より裏側に設けられ、第1当接部32と、この第1当接部32に対し長さ方向に離間して設けた第2当接部34とを備えている。なお、両端部10A,10Bに設けた各支持部30は幅方向で対称形状に形成されており、ここでは同一部位は同一符号を付して説明する。各摺動支持部30の第1当接部32は、支持体部10における第1梁部14の端部から水平に延出するように形成されて、幅方向において同一の軸線上に位置しており、第1梁部14の端部に連設された腕部32Aと、該腕部32Aの先端に形成された当接突部32Bとを備えている。当接突部32Bは、図3および図4に示すように、長さ方向から見た形状が円形で前記ガイドレールGR1,GR2の溝部114に突入可能な直径に形成されており、長さ方向の両端面が平面状に形成されると共に外周面が外方へ膨出する曲面状に形成され、溝部114の底面114A、上面114Bおよび側面114Cの夫々に外周面が点接触するようになっている。腕部32Aは、縦断面形状が略矩形に形成されて、第1梁部14に対して長さ方向および厚み方向の撓み変形が起こり難く構成されている。
【0024】
各摺動支持部30の第2当接部34は、第1当接部32と長さ方向において対称となる形状に形成されて、第2梁部16の端部に連設された腕部34Aと、該腕部34Aの先端に形成された当接突部34Bとを備えている。各第2当接部34は、支持体部10における第2梁部16の端部から水平に延出するように形成されて、幅方向において同一の軸線上に位置しており、第2梁部16の端部に連設された腕部34Aと、該腕部34Aの先端に形成された当接突部34Bとを備えている。当接突部34Bは、長さ方向から見た形状が円形で前記ガイドレールGR1,GR2の溝部114に突入可能な直径に形成されており、長さ方向の両端面が平面状に形成されると共に外周面が外方へ膨出する曲面状に形成され、溝部114の底面114A、上面114Bおよび側面114Cの夫々に外周面が点接触するようになっている。腕部34Aは、縦断面形状が略矩形に形成されて、第2梁部16に対して長さ方向および厚み方向の撓み変形が起こり難く構成されている。
【0025】
そして各支持体部10は、図5に示すように、一端部10Aに設けた摺動支持部30の第1当接部32および第2当接部34と他端部10Bに設けた摺動支持部30の第1当接部32および第2当接部34との計4つの当接部による4点支持態様により、一対のガイドレールGR1,GR2に支持される。すなわち、一方の摺動支持部30の各当接部32,34が一方のガイドレールGR1における溝部114の底面114Aに当接する当接ポイントP1,P2と、他方の摺動支持部30の各当接部32,34が他方のガイドレールGR2における溝部114の底面114Aに当接する当接ポイントP3,P4とは、四角形に延在するライン(図5に一点鎖線で表示)の各角部に位置する関係となっている。従って各支持体部10は、板部12に対して厚み方向から荷重が加わった際に、幅方向に延在する軸線Jを中心とした回転変位が規制されて安定的に支持される構造となっている。なお、計4つの前記当接部うちの少なくとも3つ以上の当接部が一対のガイドレールGR1,GR2に当接すれば、支持体部10は軸線Jを中心として回転変位することが規制されて安定的に支持される。
【0026】
前記パッド部材PDは、図1〜図3に示すように、前記シャッタ基材SBの一面である表面側に設けられて弾力性を有する発泡体40と、この発泡体40の該シャッタ基材SBと相対しない表面を被覆するように配設されて可撓性を有する表皮材50とから構成され、前記スライド基材SBより弾力性および柔軟性が高く構成されている。発泡体40は、シャッタ基材SBの表面と相対する部分が該シャッタ基材SBに接着されている。また表皮材50は、発泡体40と相対する部分が該発泡体40に接着され、シャッタ基材SBと相対する部分が該シャッタ基材SBに接着されている。
【0027】
発泡体40は、例えば連続気泡構造をなす軟質のポリウレタンフォームであって、曲げや捻りおよび圧縮に対して軟らかく、かつ充分な復元性を有しており、前記シャッタ基材SBよりかなり軟らかく形成されている。この発泡体40は、図1および図2に示すように、シャッタ基材SBの表面前部に配設される把持部材58を除く部分に整合する大きさに形成され、長さがシャッタ基材SBより該把持部材58の分だけ短く、幅が支持体部10の幅と同じく、厚みはシャッタ基材SBの厚みと略同じで、全体が略同じ厚みの矩形板状となっている。そして、発泡体40の幅方向の左側面は、シャッタ基材SBに近づくにつれて右方へ変位する傾斜面となっていると共に、該発泡体40の幅方向の右側面は、シャッタ基材SBに近づくにつれて左方へ変位する傾斜面となっている。また、発泡体40の長さ方向の前端面は、シャッタ基材SBに近づくにつれて後方へ変位する傾斜面となっていると共に、該発泡体40の長さ方向の後端面は、シャッタ基材SBに近づくにつれて前方へ変位する傾斜面となっている。
【0028】
前記発泡体40は、(1)注型発泡成形方法により前記形状に発泡成形したもの、(2)予め発泡成形された発泡製造体(スラブ)を後加工により前記形状に裁断したもの、(3)シャッタ基材SBと予め所要形状に成形した表皮材50とを発泡成形型内にセットして、該発泡成形型にインサートされたシャッタ基材SBと表皮材50との間に発泡材料を注入して発泡成形したもの等、様々な製造方法により成形されたものが実施可能である。なお、前記(1)および(2)の発泡体40は、接着剤や両面テープ等を利用してシャッタ基材SBの表面に接着固定される。また、前記(3)の発泡体40は、発泡材料が有する接着力を利用して発泡成形時にシャッタ基材SBへ装着される。
【0029】
表皮材50は、パッド部材PDの表側を構成する上表皮部51と、該パッド部材PDの幅方向における左側面を構成する左表皮部52および右側面を構成する右表皮部53と、該パッド部材PDの長さ方向における前端面を構成する前表皮部54および後端面を構成する後表皮部55とを有している。前記左表皮部52は、上表皮部51からシャッタ基材SBに近づくにつれて右方へ変位するよう傾斜状に形成されていると共に、右表皮部53は、上表皮部51からシャッタ基材SBに近づくにつれて左方へ変位するよう傾斜状に形成されている。また、前記前表皮部54は、上表皮部51からシャッタ基材SBに近づくにつれて後方へ変位するよう傾斜状に形成されていると共に、後表皮部55は、上表皮部51からシャッタ基材SBに近づくにつれて前方へ変位するよう傾斜状に形成されている。また表皮材50は、これら左表皮部52、右表皮部53、前表皮部54および後表皮部55の上表皮部51と反対側の端縁には、シャッタ基材SBの表面に接着される周縁部56が設けられている。
【0030】
前記表皮材50は、ポリ塩化ビニル(PVC)や熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の合成樹脂製のもの、ファブリックやトリコット等の布製のもの、本革製のもの等が選択的に実施可能である。なお合成樹脂製の表皮材50は、樹脂シートから真空成形したもの、樹脂粉末からパウダースラッシュ成形したもの、ウレタンをスプレー成形したものが採用可能である。また布製や本革製の表皮材50は、前記形状に立体的に縫合したものが採用可能である。このような表皮材50は、前記発泡体40よりは硬く、前記シャッタ基材SBよりはかなり軟らかく形成されている。また表皮材50は、厚み方向へは容易に撓曲変形および屈曲変形するが、面方向へは伸縮変形し難いものを採用できる。
【0031】
前記発泡体40および表皮材50から構成された前記パッド部材PDは、長さ方向に沿う左側面PD2および右側面PD3が、前記シャッタ基材SBから離れるにつれて(上面PD1に近づくにつれて)互いに離れるように斜めに設けられており、上面PD1がシャッタ基材SB側より広くなっている。すなわち左側面PD2は、パッド部材PDの上面PD1の左縁よりもシャッタ基材SB側が右方に位置していると共に、右側面PD3は、上面PD1の右縁よりも基材SB側が左方に位置している。
【0032】
また前記パッド部材PDは、長さ方向と交差する幅方向に沿う前端面PD4および後端面PD5が、前記シャッタ基材SBから離れるにつれて(上面PD1に近づくにつれて)互いに離れるように斜めに設けられており、上端面PD1がシャッタ基材SB側より長くなっている。すなわち前端面PD4は、パッド部材PDの上面PD1の前縁よりもシャッタ基材SB側が後方に位置していると共に、後端面PD5は、上面PD1の後縁よりもよりもシャッタ基材SB側が前方に位置している。
【0033】
そして実施例のシャッタSは、シャッタ基材SBにおけるフロアコンソールFCの前側となる支持体部10上に、指先を引っ掛けることが可能な指掛け部59を設けた把持部材58が固定されている。従って、把持部材58の指掛け部59を指先で把持することで、シャッタSのスライド操作を簡易に行ない得る。
【0034】
前述のように構成された実施例のシャッタSは、各支持体部10の一端部10Aに設けた各摺動支持部30の第1当接部32および第2当接部34を一方のガイドレールGR1の溝部114に各々突入して係合させると共に、各支持体部10の他端部10Bに設けた各摺動支持部30の第1当接部32および第2当接部34を他方のガイドレールGR2の溝部114に各々突入して係合させることで、スライド移動が可能にコンソール本体100に配設される。そしてシャッタSは、図1〜図3に示すように、物品収納部102の上部開口104に臨ませるようにコンソール本体100の前方向へスライド移動させると、各支持体部10の摺動支持部30,30が各ガイドレールGR1,GR2の直線部110に位置するので、シャッタ基材SBおよび該シャッタ基材SBの上に位置するパッド部材PDは何れも平坦状となり、全体が一枚の平板の如く平坦状態となって上部開口104を全体的に覆蓋する。そして、シャッタSの平坦状態では、パッド部材PDの発泡体40および表皮材50は自然状態となって特に応力が加わっていない。
【0035】
そして実施例のシャッタSは、物品収納部102の上部開口104を全体的に覆蓋した平坦状態において、上方に位置しているパッド部材PDに物品や腕(肘)を載せたり手を着く等により上方から荷重が加わると、シャッタ基材SBは該荷重を受け止めて平坦状態が維持され、パッド部材PDは荷重が加わった部分およびその周囲が圧縮変形する。すなわち、上方からの荷重を受けたシャッタ基材SBの各支持体部10では、両摺動支持部30,30の第1当接部32,32および第2当接部34,34の少なくとも3つ以上が各ガイドレールGR1,GR2における溝部114の底面114Aに当接するようになり、回転変位することなく安定的に姿勢保持される。また各支持体部10は、第1梁部14、第2梁部16および連設部18からなるリブ構造体に構成されて剛性を有しているから、板部12の上方から荷重が加わっても、幅方向での撓み変形および捻り変形が起こらない。一方、前記パッド部材PDが発泡体40の圧縮変形および表皮材50の変形により適度に変形するので、腕(肘)を載せた際に弾力性を伴った触感が向上してアームレストとして適切に機能する。なお、前述したように、パッド部材PDの左側面PD2および右側面PD3が前記シャッタ基材SBから離れるにつれて(上面PD1に近づくにつれて)互いに離れるように斜めに設けられているため、上面PD1の左縁および右縁を押すと適切に圧縮変形し、当該パッド部材PDは左縁および右縁が硬くならず全体が一様の硬さになっている。
【0036】
また実施例のシャッタSは、コンソール本体100の後方に向けてスライド移動させると、図6に示すように、長さ方向における後側の支持体部10から各ガイドレールGR1,GR2の曲線部112に順次移動するようになる。これにより、シャッタ基材SBの前記曲線部112に位置する部位では、各ヒンジ部20が弾性的に屈曲変形することで、一方の支持体部10に対して他方の支持体部10が互いに近づくように姿勢変位し、該シャッタ基材SBは曲線部112の曲率に合わせて湾曲状態に変形するようになる。
【0037】
そして、シャッタ基材SBより軟らかいパッド部材PDは、該シャッタ基材SBの湾曲状態への変形に追従して湾曲状態に変形する。ここでシャッタSは、シャッタ基材SBを内側にして湾曲状態に変形するため、該シャッタ基材SBより外側に位置するパッド部材PDは、両部材の間の周長差により長さ方向へ引っ張られる。これにより、図6および図7に示すように、パッド部材PDを構成する表皮材50は、シャッタ基材SBに近づく方向へ引っ張られるようになると共に、パッド部材PDを構成する発泡体40は、シャッタ基材SB側と反対側がシャッタSの長さ方向へ引っ張られると共に表皮材50により厚み方向へ押される。従ってパッド部材PDは、表皮材50に押されて発泡体40が圧縮変形することで、厚みが減少するようになる。
【0038】
ここで、表皮材50の左表皮部52および右表皮部53は、図7に示すように、幅方向において側方へ倒れ込むように変形すると共に、該表皮材50の前表皮部54および後表皮部55は、図6に示すように、シャッタ基材SB側と反対側(上表皮部51側)が長さ方向(湾曲方向)において互いに近づく方向に変形する。従って、パッド部材PDの左側面PD2、右側面PD3、前端面PD4および後端面PD5の全てが沈み込むように変形するから、パッド部材PDは全体が一様に圧縮変形する。しかも、前表皮部54および後表皮部55が互いに近づく方向へ立ち上がるように変形することで、該上表皮部51に作用する引張り力が大幅に減少するから、パッド部材PDがシャッタSの湾曲状態への変形を阻害しない。これにより実施例のシャッタSは、ガイドレールGR1,GR2の曲線部112と同じ曲率の湾曲状態にスムーズに変形する。
【0039】
従って、実施例のシャッタSによれば、シャッタ基材SBの表面側に、弾力性を有する発泡体40および可撓性を有する表皮材50から構成されたパッド部材PDが配設されているので、シャッタ基材SBがパッド部材PDで隠れると共に、表面に露出した表皮材50および弾力性を有する発泡体40によりシャッタSの質感が高くなっている。そして、シャッタSがガイドレールGR1,GR2の直線部110に移動して平坦状態になった際には、弾力性を有するパッド部材PDがシャッタ基材SBの上方に位置するため、腕(肘)を載せた際には適度の弾力性を伴って触感が向上して、該シャッタSをアームレストとして実施することが可能である。
【0040】
また、実施例のシャッタSによれば、ガイドレールGR1,GR2の曲線部112に移動して、シャッタ基材SBを内側として湾曲状態に変形する際には、弾力性を有するパッド部材PDのスライド方向に沿う左側面PD2および右側面PD3がシャッタ基材SB側へ沈み込むように変形すると共に、該パッド部材PDのスライド方向と交差する幅方向に沿う前端面PD4および後端面PD5が互いに近づく方向へ変形することで、該パッド部材PDはシャッタ基材SB側へ沈み込むように変形する。従って、パッド部材PDが適切に変形することで、シャッタSの湾曲状態への変形が阻害されず、該シャッタSのスムーズな開閉が可能となる。また、表皮材50が長さ方向へ突っ張り難くなり、パッド部材PDがシャッタ基材SBから剥離することも防止し得る。更に、表皮材50や発泡体40に亀裂が発生し難くなると共に、該表皮材50と発泡体40との剥離および該発泡体40とシャッタ基材SBとの剥離も防止し得る。
【0041】
また実施例のシャッタSでは、厚み方向から荷重が加わった際に、該シャッタSを構成する各支持体部10が、一端部10Aおよび他端部10Bの夫々に設けた摺動支持部30,30における長さ方向に並べて2つずつ設けた各第1当接部32および各第2当接部34の計4つのうちの3つ以上で一対のガイドレールGR1,GR2に支持されるため、該支持体部10は幅方向に延在する軸線Jを中心として回転変位し難い。すなわち実施例のシャッタSは、各支持体部10に荷重が加わった際に、該支持体部10を繋ぐヒンジ部20に応力が集中し難く、よって該ヒンジ部20を薄く形成することが可能となる。
【0042】
(変更例)
(1)実施例では、パッド部材PDを構成する発泡体40としてポリウレタンフォームを例示したが、弾力性を有して外力により好適に圧縮変形すると共に適切な復元性を有するものであれば、該発泡体40はスポンジやゴム等であってもよい。
(2)実施例では、パッド部材PDの前端面PD4および後端面PD5の両方を、シャッタ基材SBから離れるにつれて互いに離れるよう斜めに形成した形態を例示したが、前端面PD4または後端面PD5の何れか一方は、シャッタ基材SBに対して鉛直に形成するようにしてもよい。
(3)実施例では、パッド部材PDの左側面PD2、右側面PD3、前端面PD4および後端面PD5が、シャッタ基材SBから離れるにつれて直線状に傾斜する形態を示したが、例えば図9(a)に示すような凸曲面状に傾斜する形態、図9(b)に示すような凹曲面状に傾斜する形態、図9(c)に示すような階段状に傾斜する形態、または蛇腹状に傾斜する形態等であってもよい。
(4)シャッタ基材SBの支持体部10の配設数は、実施例に例示の数に限定されず、上部開口104の開口サイズに応じて増減する。
(5)シャッタ基材SBは、支持体部10、ヒンジ部20および摺動支持部30が一体成形されたものに限定されず、図11および図12に例示した従来のシャッタS1のような構成であってもよい。
(6)本願のシャッタSは、実施例で例示した自動車の乗員室内に設置されるフロアコンソールFC以外にも実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
40 発泡体,50 表皮材,110 直線部,112 曲線部
GR1,GR2 ガイドレール,PD パッド部材,PD2 左側面,PD3 右側面
PD4 前端面,PD5 後端面,SB シャッタ基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向設置された一対のガイドレールに沿ってスライド移動可能に配設されるシャッタであって、
前記ガイドレールに相対する各端が対応の該ガイドレールにスライド移動可能に支持され、直線部と曲線部とが連なる該ガイドレールに合わせて屈伸変形するシャッタ基材と、前記シャッタ基材の一面に配設されるパッド部材とを備え、
前記パッド部材は、前記シャッタ基材の一面に設けられて弾力性を有する発泡体と、この発泡体の表面を被覆するように配設されて可撓性を有する表皮材とから構成される
ことを特徴とするシャッタ。
【請求項2】
前記パッド部材は、スライド方向に沿う両側面が、前記シャッタ基材から離れるにつれて互いに離れるよう斜めに形成される請求項1記載のシャッタ。
【請求項3】
前記パッド部材は、スライド方向と交差する方向に沿う両端面の少なくとも一方が、前記シャッタ基材から離れるにつれて他方から離れるよう斜めに形成される請求項1または2記載のシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−91706(P2012−91706A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241485(P2010−241485)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】