説明

シャツ

【課題】厚すぎることのない自然なシルエットを有し、且つ、シャツの用途において適切な発熱機能を有するシャツを提供することである。
【解決手段】前身頃2と、後身頃3と、肩ヨーク4と、衿5と、袖6とを少なくとも有するドレスシャツ等のシャツ1において、前記肩ヨーク4の幅方向の長さを8cm以上とする。そして、肩ヨーク4の内側部分に吸湿発熱素材を含有する生地を配する。このとき、吸湿発熱素材を含有する生地で肩ヨーク4自身を形成してもよく、肩ヨーク4を2層構造とし、吸湿発熱素材を含有する生地でその裏地を形成してもよい。また、肩ヨーク4を3層以上の構造とし、通常の布地で吸湿発熱素材を含有する生地を挟み込んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保温機能を有する衣服に関するものであり、さらに詳細には、保温機能を有したシャツ(所謂ワイシャツ、ドレスシャツと称されるシャツや所謂ネルシャツと称されるシャツ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱機能を有する衣服として、水分子を吸着して発熱する吸湿発熱素材を利用したものが多数提供されている。
【0003】
具体的には、例えば、マリンスポーツで着用するウェットスーツや運動終了後に着用する衣服を2層構造とし、中地又は裏地に吸放湿吸水発熱性繊維を使用する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−59762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで本発明者らは、ワイシャツやカッターシャツ、ドレスシャツ等と呼ばれるシャツに発熱機能を付加することを企画した。しかしながら、従来知られていた方策のように、シャツの略全ての部分に一般的なシャツ生地と比較して非常に高価な吸湿発熱素材を使用したのでは、シャツ製品そのものが高価になってしまうという問題があった。また、従来知られていた方策のように、シャツの略全ての部分を2層構造として裏地に吸放湿吸水発熱性繊維を配したのでは、シャツが非常に厚くなってしまうため、デザイン上好ましくないという問題があった。
さらにまた、従来知られていた方策で発熱機能を付加すると、シャツの用途で使用するには発熱温度が高くなりすぎてしまうという問題があった。即ち、シャツはジャケット、ブレザー、学生服、背広等の下に着用する場合が多く、その場合に従来知られていた方策で発熱機能を付加すると、シャツの内側の温度が高くなりすぎてしまい、着用者が蒸し暑く感じてしまうという問題である。
【0006】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、デザインの自由度が高く、且つ、シャツの用途に適した発熱機能を付加したシャツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、鋭意研究したところ、シャツに発熱機能を付加する場合、真に発熱機能が必要な部位は限定されることが判った。即ち、肩回りを温めることにより、体感温度が効率よく上昇することが判明した。
つまり、本発明者らの研究によると、着用時において脇や腕回り等はあまり肌(又は下着)に接触しておらず、肩回りは比較的長い時間に亘って肌(又は下着)に接触していた。そして、この肩回りを温めることで最も効率よく着用者の体感温度を上昇させることができた。
【0008】
上記研究を鑑みてなされた請求項1に記載の発明は、前身頃と、後身頃と、肩ヨークと、衿と、袖とを少なくとも有するドレスシャツ等のシャツであって、前記肩ヨークの幅方向の長さが8cm以上であり、前記肩ヨークの内側部分に吸湿発熱素材を含有する生地を備えたことを特徴とするシャツである。
【0009】
請求項1に記載の発明では、従来のシャツに比べて肩ヨークの幅が大きくなっている。つまり、従来のシャツと比べて、シャツの前面側と背面側のいずれか一方又は両方における肩ヨークが占める面積が大きくなっている。さらに、肩ヨークの内側部分には吸湿発熱素材を含有する生地を備えている。このことにより、着用者の肩回りを確実に温めることができ、着用者の体感温度を効率よく上昇させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記肩ヨークの部分が2層構造となっており、裏地部分が吸湿発熱素材を含有する生地で形成されることを特徴とする請求項1に記載のシャツである。
【0011】
かかる構成によると、シャツの肩部分において表面で露出する部分と、裏面で肌(又は下着)と接触する部分で異なる生地を使用することができる。そのため、表面側に意匠性の高い生地を使用することにより、デザイン性が高く暖かいシャツを提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記肩ヨークの部分が複数層構造となっており、中地部分が吸湿発熱素材を含有する生地で形成されることを特徴とする請求項1に記載のシャツである。
【0013】
かかる構成によると、通常の布地によって吸湿発熱素材を含有する生地を挟んで配置することができる。このことにより、肌(又は下着)と直接接触する部分に吸湿発熱素材を含有する生地が位置しないので、着用者の体感温度が上昇しすぎることがない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記肩ヨークは、背面側において衿部分の下端から下方へ6.5cm以上の部分に亘って両袖間に配されており、前面側において肩部分の上端から下方へ3.5cm以上の部分に亘って衿と袖の間に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツである。
【0015】
かかる構成によると、シャツの前面側及び背面側において、肩ヨークの占める面積を従来のシャツより大きくすることができる。このことにより、肩ヨークの内側部分に位置する吸湿発熱素材がシャツの前面側と背面側において十分に広い面積に配される。加えて、吸湿発熱素材がシャツの前面側と背面側から着用者の肩部分を挟むように配される。このことにより、着用者の体感温度を効率よく上昇させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、厚すぎることのない自然なシルエットを有し、且つ、シャツの用途において十分な発熱機能を有するシャツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るシャツを示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図2】図1(b)の一部破断背面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1の肩ヨーク部分を示す平面図である。
【図5】図1とは異なる実施形態の本発明のシャツを示す断面図である。
【図6】図1,図5とは異なる実施形態の本発明のシャツを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、本発明のシャツの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0019】
シャツ1は長袖シャツであって、図1(a),(b)に示すように、前身頃2と、後身頃3と、肩ヨーク4と、衿5と、袖6と、袖口7と、前立て8とを少なくとも有している。そしてこれらの各部分に裁断された布地を縫製して形成される。
なお、このシャツ1の構成している布地の形状は立体裁断により決められた形状であるが、通常の裁断による形状でもよい。また、プリーツ、ダーツ等は図示しないが、形成されていてもよい。
【0020】
肩ヨーク4は、図2,3で示されるように、2層構造となっており、表地20と裏地21(吸湿発熱素材)によって形成されている。そして、表地20と裏地21は略同じ面積を有している。
裏地21は、繊維自身が水分を吸着し発熱する生地で形成されている。この繊維は特に限定されるものでないが、天然繊維の綿、絹、麻、再生セルロース繊維のレーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル等を好適に用いることができる。また、発熱繊維であるeks(東洋紡社製)を好適に用いることができる。
なお、裏地21はこれらの繊維を単独で使用した生地であってもよく、複数組み合わせて使用した生地であってもよい。
【0021】
また本実施形態では、図4で示されるように、肩ヨーク4の幅方向の長さWが10cmとなっている。なお幅方向の長さWとは、図1で示されるように、肩ヨーク4の最も袖6よりの部分において、シャツ1の前面側における肩の頂点部分(図4の破線で示す部分)から下端までの長さw1と、シャツ1の背面側における肩の頂点部分から下端までの長さw2との合計の長さとなっている。そして、この肩ヨーク4の幅方向の長さWは8cm以上であることが望ましい。またこのとき、シャツ1の前面側において肩ヨーク4の肩の頂点部分から下端までの長さh(w1)は3.5cm以上が望ましく、本実施形態では3.5cmとなっている。加えて、シャツ1の背面側において、肩ヨーク4の衿5と接触している部分から下端までの長さの内、最も短い部分の長さHは4cm以上が望ましく、本実施形態では4cmとなっている。
【0022】
上記した実施形態では、肩ヨーク4を2層構造とし、その裏地21を繊維自身が水分を吸着し発熱する生地で形成したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図5に示されるように、肩ヨーク30を表地31、中地32、裏地33から形成される3層構造とし、その中地32を繊維自身が水分を吸着し発熱する生地で形成してもよい。また同様に、肩ヨークを4層以上の構造とし、繊維自身が水分を吸着し発熱する生地が通常の布地で挟み込まれる構造としてもよい。
さらにまた、図6に示されるように、肩ヨーク40は、繊維自身が水分を吸着し発熱する生地で形成された1層構造のものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 シャツ
4 肩ヨーク
30 肩ヨーク
40 肩ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃と、肩ヨークと、衿と、袖とを少なくとも有するドレスシャツ等のシャツであって、
前記肩ヨークの幅方向の長さが8cm以上であり、
前記肩ヨークの内側部分に吸湿発熱素材を含有する生地を備えたことを特徴とするシャツ。
【請求項2】
前記肩ヨークの部分が2層構造となっており、裏地部分が吸湿発熱素材を含有する生地で形成されることを特徴とする請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
前記肩ヨークの部分が複数層構造となっており、中地部分が吸湿発熱素材を含有する生地で形成されることを特徴とする請求項1に記載のシャツ。
【請求項4】
前記肩ヨークは、背面側において衿部分の下端から下方へ4cm以上の部分に亘って両袖間に配されており、前面側において肩部分の上端から下方へ3.5cm以上の部分に亘って衿と袖の間に配されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140730(P2012−140730A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261(P2011−261)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(591160811)山喜株式会社 (5)
【Fターム(参考)】