説明

シャドーマスク

【課題】真空蒸着やスパッタリングなどの過程においてシャドーマスクの表面に累積した薄膜の剥離によって生じる粉塵による欠陥を防止して、長期間安定して用いることができるシャドーマスクを提供する。
【解決手段】シャドーマスク200は、基板210と、マスク220と、剥離防止用の高分子層240とを備える。マスク220は、基板210の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有して形成される。剥離防止用の高分子層240は、マスクの上に形成される。マスク220は、金属からなることが好ましい。また、高分子層240は、40℃〜250℃の範囲のガラス転移温度を有することが好ましい。さらに、高分子層240は、非結晶性PET、可塑化PVC、高密度PE、PP及びPEIのいずれか1つの材料からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャドーマスクに関し、より詳しくは、真空蒸着やスパッタリングなどの過程でシャドーマスクの表面に累積した薄膜の剥離によって生じる粉塵による欠陥を防止し、長期間安定して用いることができるシャドーマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子またはディスプレイ素子に金属層を設ける方法として、CVD工程などによって、全体構造の上に金属膜を蒸着した後、感光膜マスクを用いた湿式エッチングまたは乾式エッチングを施し、該金属膜の一部を除去して金属層を設ける方法が知られている。
【0003】
一方、近年、感光膜マスクを用いることができない大きな面積を必要とする半導体素子またはディスプレイ素子の製造工程においては、工程を容易にするために、マスクの作成のみで成膜及びパターンの両方を同時に形成することができるシャドーマスクが適用されている。
【0004】
以下、図1と図2−1及び図2−2とを参照して、従来技術によるシャドーマスクについて説明する。
【0005】
図1は、従来技術によるシャドーマスクの構造を示す概略図である。図1において、シャドーマスク100は、基板110と、基板110の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有するマスク120とを含んで構成されている。マスク120は、金属性の材料で形成されている。
【0006】
以下、図2−1及び図2−2を参照して、従来技術によるシャドーマスクについてより具体的に説明する。
【0007】
図2−1及び図2−2は、従来技術によるシャドーマスクを用いて金属層を形成する方法を説明するための概念的断面図である。
【0008】
まず、図2−1に示すように、蒸発器(evaporator)を用いた真空蒸着のために、基板110と、基板110の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有するマスク120とを含んで構成されるシャドーマスク100を用意する。
【0009】
続いて、図2−2に示すように、真空蒸着によってマスク120の配置されている基板110、即ちシャドーマスク100の上に、薄膜130を形成する。ここで、薄膜130はニッケル(Ni)などの金属から成る。
【0010】
ところが、ニッケルなどのような金属からなる薄膜130の真空蒸着により蒸着を行うためには、約700℃以上の高温で金属を加熱し、蒸発させなければならない。
【0011】
一方、一般に、薄膜130は気相から固相へ変形する時、熱エネルギーを失って収縮するが、その下に位置するシャドーマスク100のマスク120は、熱膨張率または収縮率が薄膜130と異なるため、マスク120と薄膜130との界面に応力が累積することになる。
【0012】
しかし、シャドーマスク100の上に累積する薄膜130が厚くなるほど応力も増加し、接着力より応力が大きくなれば、図3の“A”に示されるように、シャドーマスク100から薄膜130が剥離することにより、粉塵による欠陥が発生するという問題がある。図3は、従来技術によるシャドーマスクの使用時に発生する問題を説明するための図面であって、薄膜の剥離された状態を示す写真である。
【0013】
このように発生した粉塵による欠陥により、薄膜の品質が低下し、望ましくない欠陥が発生し、製造される素子の信頼性が低下してしまう、という問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、金属からなるマスクの上に高分子層を形成することによって、該マスクの上に形成された薄膜が剥離することを防止して、耐久性の向上したシャドーマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるシャドーマスクは、基板と、該基板の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有して形成されたマスクと、該マスクの上に形成された剥離防止用の高分子層とを備える。
【0016】
また、本発明のシャドーマスクにおいて、該マスクは金属からなることが望ましい。
【0017】
また、本発明のシャドーマスクにおいて、該高分子層は、40℃〜250℃の範囲のガラス転移温度を有する非結晶性PET、可塑化PVC、高密度PE、PP及びPEIなどからなることが望ましい。
【0018】
また、本発明のシャドーマスクは、該マスクと該高分子層との界面に形成された表面エネルギー調節層を、さらに備えることが望ましい。
【0019】
該表面エネルギー調節層は、5000〜10000g/molの範囲の分子量及び−100℃〜100℃の範囲のガラス転移温度を有する有機物からなることが望ましい。該有機物は、ポリアクリレート、ポリウレタン及びエポキシ系オリゴマーなどの化学構造からなってもよい。
【0020】
また、本発明のシャドーマスクにおいて、該表面エネルギー調節層には、シリコン及びフッ素化合物が添加されていることが望ましく、添加量は1〜20wt%の範囲であることが望ましい。
【0021】
また、本発明のシャドーマスクにおいて、該表面エネルギー調節層は、単層または2層以上の多層によって構成されることが望ましい。
【0022】
また、本発明のシャドーマスクにおいて、該高分子層と該表面エネルギー調節層との界面に、接着層をさらに備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
前述のように、本発明は、金属からなるマスクの上に高分子層を形成することによって、該マスクの上に形成された薄膜が剥離することを防止して、粉塵の発生による欠陥を防ぐことができる。
【0024】
また、該マスクと該高分子層との間に表面エネルギー調節層を備えて、金属などの薄膜が蓄積される該高分子層を容易に除去することができるため、シャドーマスクを容易に再利用することができるようになり、シャドーマスクの長期使用が可能となる。
【0025】
従って、本発明によれば、耐久性の向上したシャドーマスクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施の形態を、当業者が容易に実施できるように、図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図中において、幾つかの層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示している。明細書全体に亘り、類似部分に対しては同じ符号を付して説明する。
【0028】
まず、本発明にかかるシャドーマスクの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図4は、本発明にかかるシャドーマスクの実施例1の構造を示す概略図である。
【0030】
図4に示すように、実施例1によるシャドーマスク200は、基板210と、基板210の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有して形成されたマスク220と、マスク220の上に形成された剥離防止用の高分子層240とを備える。
【0031】
マスク220は、金属からなることが望ましい。
【0032】
剥離防止用の高分子層240は、40℃未満のガラス転移温度を有する場合、金属などの薄膜形成工程中に発生する熱によって歪みやすい。また、ガラス転移温度が250℃より高ければ、高分子層240の硬度が高すぎることによりクラックが発生したり、マスク装置(図示されず)の曲線部分で接着したマスク220と脱離現象が発生するという問題があるので、40℃〜250℃の範囲のガラス転移温度を有することが望ましい。
【0033】
このため、高分子層240は、100℃〜200℃の範囲のガラス転移温度を有する高分子からなることが、より望ましく、このような高分子としては非結晶性PET、可塑化PVC、高密度PE、PP及びPEIなどがある。
【0034】
従って、本発明は、金属からなるマスク220の上に高分子層240を備え、その上にパターンを形成するために蒸着される金属などの薄膜との化学的または物理的な結合を強くすることにより、従来マスクから薄膜が剥離して生じる粉塵による欠陥を防止し、それによって生じる問題を防ぐことができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図5を参照して本発明の実施例2について説明する。ただし、実施例2の構成のうち、実施例1と同じ部分に関する説明は省略し、異なる構成のみに対して説明する。
【0036】
図5は、本発明にかかるシャドーマスクの実施例2の構造を示す概略図である。
【0037】
図5に示すように、実施例2によるシャドーマスク200は、実施例1によるシャドーマスクと大部分の構成が同一であり、マスク220と剥離防止用の高分子層240との界面に、表面エネルギー調節層300がさらに形成されている点が、実施例1と異なる。
【0038】
表面エネルギー調節層300は、後続するマスク220と高分子層240との分離工程時、化学的及び物理的に強い結合力を有するこれらの分離を容易にする役割を果たす。
【0039】
より詳しくは、表面エネルギー調節層300は、5000〜10000g/molの範囲の分子量を有する有機物からなることが望ましい。
【0040】
また、表面エネルギー調節層300は、−100℃未満のガラス転移温度を有する場合、表面エネルギー調節層300と接するマスク220と高分子層240との結合力を保持することができない。また、100℃以上のガラス転移温度を有する場合には、表面エネルギー調節層300と接するマスク220と高分子層240との接着力を発現させることができないので、−100℃〜100℃の範囲のガラス転移温度を有することが望ましい。
【0041】
このため、より詳しくは、表面エネルギー調節層300は、−50℃〜0℃の範囲のガラス転移温度を有する有機物からなることが望ましく、このような有機物はポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ系オリゴマーなどの化学構造を有していてもよい。
【0042】
また、表面エネルギー調節層300には、マスク220から、薄膜蒸着工程によって薄膜が累積形成された高分子層240を容易に除去するために、表面エネルギーを下げる場合、シリコン及びフッ素化合物を添加することができる。その添加量は1〜20wt%の範囲であることが望ましい。これは、添加量が1wt%以下の場合、表面エネルギーが低くならず、20wt%以上の場合、高分子層240とマスク220との接着力が弱くなり、剥離しやすいためである。
【0043】
また、表面エネルギー調節層300は、実施例2を示す図5では単層として示されているが、これに限定されず、必要に応じて2層以上の多層として構成されてもよい。
【0044】
さらに、表面エネルギー調節層300と高分子層240との界面には、図6に示すように、これらの接着力を向上することができる接着層400をさらに設けてもよい。図6は、本発明にかかるシャドーマスクの実施例2の構造の変形例を示す概略図である。
【0045】
本発明の好適な実施例に関し詳細に説明したが、当業者であれば、該説明から多様な変形及び同等の実施が可能であることは理解できるものである。従って、本発明の権利範囲は、該説明に限定されず、請求の範囲で定義されている本発明の基本概念を用いた当業者による変形及び改良の形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術によるシャドーマスクの構造を示す概略図である。
【図2−1】従来技術によるシャドーマスクを用いて金属層を形成する方法を説明するための概念的断面図である。
【図2−2】従来技術によるシャドーマスクを用いて金属層を形成する方法を説明するための概念的断面図である。
【図3】従来技術によるシャドーマスクの使用時に発生する問題を説明するための図である。
【図4】本発明にかかるシャドーマスクの実施例1の構造を示す概略図である。
【図5】本発明にかかるシャドーマスクの実施例2の構造を示す概略図である。
【図6】本発明にかかるシャドーマスクの実施例2の構造の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
100,200 シャドーマスク
110,210 基板
120,220 マスク
130 薄膜
240 高分子層
300 表面エネルギー調節層
400 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に所望の形状に薄膜を転写するための開口部を有して形成されたマスクと、
前記マスクの上に形成された剥離防止用の高分子層と、を備えることを特徴とするシャドーマスク。
【請求項2】
前記マスクが、金属からなることを特徴とする請求項1に記載のシャドーマスク。
【請求項3】
前記高分子層が、40℃〜250℃の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシャドーマスク。
【請求項4】
前記高分子層が、非結晶性PET、可塑化PVC、高密度PE、PP及びPEIのいずれか1つの材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシャドーマスク。
【請求項5】
前記マスクと前記高分子層との界面に形成された表面エネルギー調節層を、さらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシャドーマスク。
【請求項6】
前記表面エネルギー調節層が、5000〜10000g/molの範囲の分子量を有する有機物からなることを特徴とする請求項5に記載のシャドーマスク。
【請求項7】
前記表面エネルギー調節層が、−100℃〜100℃の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項5または6に記載のシャドーマスク。
【請求項8】
前記表面エネルギー調節層が、ポリアクリレート、ポリウレタン及びエポキシ系オリゴマーのいずれか1つの化学構造からなることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載のシャドーマスク。
【請求項9】
前記表面エネルギー調節層には、シリコン及びフッ素化合物が添加されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つに記載のシャドーマスク。
【請求項10】
前記シリコン及び前記フッ素化合物が、1〜20wt%の範囲の量で添加されていることを特徴とする請求項9に記載のシャドーマスク。
【請求項11】
前記表面エネルギー調節層が、単層または2層以上の多層によって構成されることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1つに記載のシャドーマスク。
【請求項12】
前記高分子層と前記表面エネルギー調節層との界面に、接着層をさらに備えることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1つに記載のシャドーマスク。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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