説明

シャフトツールおよび同シャフトツールを備えた装置

【課題】 最少量潤滑で用いられる、冷却剤/潤滑剤供給点に対する境界部に結合する際にとりわけ適したシャフトツールが開示される。
【解決手段】 本発明のシャフトツールは、機械部から離れた側にオリフィスをもつ、少なくとも1個の全体的に偏心した内部冷却ダクトを備える。前記オリフィスは、例えばチャック内において、最少量潤滑をもたらす同軸配設された供給部へのシャフトの接続を可能にする円錐状嵌合エリアと連通し、同エリアにおいて円錐状凹部に嵌入するシャフトの円錐台の高さは円錐台面上の径方向スリットの深さより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部冷却ダクトを備え、経済的に製造され、かつカッタへの冷却剤/潤滑剤の供給に適する方法であり、例えば、穴あけ、フライス削り、リーマ仕上げ、ねじ山形成、あるいはねじ切りツールといったシャフトツールの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
概して、このようなタイプのシャフトツールには、例えば、中心冷却剤/潤滑剤供給ダクトを備える接続片の形態により冷却剤/潤滑剤供給点まで冷却剤/潤滑剤が供給される。多くの場合、最少量潤滑システムの供給部への接続はチャック内で大きな場所を占める。最少量潤滑技術、すなわち潤滑剤を最少量に、もしくは少なくする技術は、とりわけ、切削工具を用いる加工技術において重要さを増しつつある。この技術の基本原理は、作動するカッタに対して、できるだけ同等の濃度と質で最少量の潤滑剤と、かなり過剰な空気とを含む潤滑剤ミスト(エアロゾルタイプ)を供給するというものである。質の変動、例えば、加圧下で供給されるエアロゾルの周期的もしくは突発的な偏析による変動があると、予測不能なツール破損が起こり、これにより、生産が中断されることからかなりの損失になる虞がある。
【0003】
このような境界部について既知の配置が、例えば、図1で示されており、この段階で参照がすでになされる。
図1において、参照番号10はツール保持固定具を示しており、この固定具は、一端に、ツールシステムモジュールもしくは機械ツールスピンドル内に収容するための中空シャフト円錐11を備えるとともに、他端に、ツール14、ここで示した例では内部冷却穴あけツールを実際に調節するための円筒状チャック部13を備える。しかしながら、このツールは、例えば、フライス削りツール、もしくは精密中ぐりツールといった他の回転駆動ツールであってもよいことはすでに指摘している。参照番号68で指定された内部ダクトに冷却剤および潤滑剤を供給するため、ツール保持固定具10は、止めねじ形態の差込み工具12がねじ込まれるねじ付き穿孔20をもつ。ねじ孔20は、中空シャフト円錐11の凹部26の底面25から、ツール14を収容するための円筒状穿孔30の基底エリア28まで、軸Aに対して同軸的に延伸する。
【0004】
差込み工具12はツールに対向した面で、ツール先端(図示せず)から離れた円筒状チャック部13の面32によりかかる。中心穿孔24は差込み工具12の全長に沿って延伸し、ここで前記中心穿孔24の直径は、ツール14の隣接面32において直径方向に延伸するスリット36の幅の大きさにほぼ等しい。直径方向スリット36は、2つの内部ダクト68のオリフィス上で延伸するよう調整される。
【0005】
差込み工具12を軸方向に設定するため、ツール14から離れた端部に六角ソケット凹部40が設けられる。これにより、止めねじ12が調節されると、ツール14の面32に対向する限界止めも調節され、ツール保持固定具10の面42に対向する(図示せず)ツールカッタの軸方向位置が微調節できる。
【0006】
ツールを固定するため、例えば、まず、調整ねじ12を特定の所望寸法までねじ付き穿孔20内にねじ込ませる。その後、ツール14が止めねじ12に対して静止するまで、前記ツールが円筒状穿孔30内に挿入され、その後、図示例では拡張チャック44であるクランプ装置が起動される。冷却剤/潤滑剤がクランプシステムのモジュールにより供給され、このモジュールが中空シャフト円錐を収容する場合、六角ソケット凹部40により冷却剤/潤滑剤が入り込むよう冷却剤チャネル68での供給も行われ、穿孔24と同一面に調整されたスリット36まで前記穿孔24により冷却剤/潤滑剤が流れ、このスリット36から前記冷却剤/潤滑剤が内部ダクト68のオリフィスに向かって径方向外側に流れるということが図示されている。
【0007】
特にツールがいわゆる最少量潤滑で作動される場合、所望の冷却もしくは潤滑の満足な効果が現れることをこの設計では確実に保証できないということが示されている。最少量潤滑の場合、内部ダクトを通して運ばれる潤滑剤ミストが所望の同等な一貫性でカッタに届かないことが詳細に示されている。
【0008】
こういった問題に対する改良制御を行うため、さまざまな取り組みが行われてきた。例えば、特許文献1では、流れ、もしくは部分流で複数の鈍角偏差が起こらないよう、混合の安定化がなされ、これにより潤滑剤ミストの制御不能状態の偏析が効果的に相殺される概念が提案されている。
【0009】
しかしながら、この既知の解決策では、ツールシャフトと供給部との間の嵌合接続面で比較的複雑な形状が必要とされ、その結果、ツールの費用が上昇し、ツールは加工の難しい高強度材で作製されることが多いことから、なおさら費用がかかることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第DE10157450A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、容易に製造されるものでありながら、シャフトツール内に冷却剤/潤滑剤を供給する際に効果的な境界部の一部を構成できる、導入部で記述したシャフトツールを生成することである。本発明のさらなる目的は、このようなツールに対して冷却剤/潤滑剤移送を行うことであり、経済的に作製可能な構成で、差込み工具を通じて、ツールの対応する内部ダクトまで冷却剤/潤滑剤を確実に供給できるようにすることであって、このダクトが少なくとも1つあり、このような送り込みにより、可能な限りの最大範囲まで圧力損失がなく、この冷却剤/潤滑剤がカッタまで均質に供給されることを特徴とする冷却剤/潤滑剤移送を行うことである。本発明のさらなる目的は、冷却剤および潤滑剤が供給される中空の領域を形成すべく、頂部を切断された円錐状嵌合面が内円錐に嵌入する場合に、円錐状嵌合面の対向する側面が頂点においてなす角度、即ち円錐角を、内円錐を密封するために十分な大きさにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
シャフトツールに関しては、これらの特徴は請求項1による特性に合致する。
シャフトは、少なくとも1個のオリフィスを含む。本発明により、カッタから離れたシャフト端部が新たに設計される。これまで、このシャフト端部は軸に対して垂直に調整される平坦面を備えていたが、本発明によれば、シャフトは円錐嵌合面を形成する。シャフトの頂部を切断された円錐状嵌合面は、接続片の内円錐に嵌入する。内円錐は、頂部を切断された円錐状嵌合面および内円錐によって形成される中空の頂領域を有する。頂部を切断された円錐状嵌合面の対向する側面が頂点においてなす角度は、内円錐を密封するために十分大きい。これにより、ツールの作製プロセスの費用を大きく増加させることなく、例えば潤滑剤供給片といった隣接構成要素に対する接触面と密封面を効果的に増大させるオプションをもたらすことができる。最新の工作機械は、付加的な手間なしに1個の作業ステップで円錐嵌合面を簡単に作製し、これにより、面取りのある場合と同様、即座にかつ経済的に円錐嵌合面を作製するものと位置づけられる。
【0013】
しかしながら、さらに、円錐嵌合面により、ツールまでの冷却剤/潤滑剤の移送を設計する範囲が大きく拡大されるという大きな追加利点が得られる。特に、ツールが、少なくとも1個の偏心配設された内部冷却ダクトを備える場合、冷却ダクト出口まで潤滑剤を軸方向・径方向に導くために円錐面を用いることが可能になり、このことは、ツール先端もしくはカッタまで、不要な偏析なしに油/空気混合物を均一に導くことが重要な最少量潤滑システムで特に有利である。
【0014】
この時点では、一方でシャフト端部領域におけるツールの設計、他方で関連接続片の設計のおのおのが別個の発明を示しており、それぞれの発明に対して、別々に保護が請求されるという点を強調しておく必要がある。
【0015】
冷却剤/潤滑剤の供給で用いられる接続片の具体的な幾何学的形状により、シャフト端部の円錐形状が、流れの誘導を改善する、すなわち一様にするための追加の加工ステップの対象になりうる。
【0016】
少なくとも1個の内部冷却ダクトがシャフト軸に対して偏っている場合、請求項3に従ってツールが設計されると有利になる。径方向にお互い偏った形の偶数個の内部冷却剤/潤滑剤ダクトがさらに容易に作製できる場合、すなわち、実質的に直径方向に延伸するスルースリットとして、径方向延伸スリットが非常に簡単に作製できる。潤滑剤供給のための接続片はその際、単純な内円錐として設計できる。
【0017】
シャフトの外円錐と接続片の内円錐の間の対応許容値を特定することで、円錐面対の最大径領域において周方向に確実に閉止される密封面が得られる。さらに、冷却剤/潤滑剤移送に対してこのように設計することにより、非常に好ましい流動状態が得られるということが示されている。
【0018】
円錐の接触面により、例えばツールチャックのクランプ領域もしくは内部KSK空間内へ冷却剤/潤滑剤が入り込むといった望ましくない問題が避けられるよう冷却剤/潤滑剤移送点が容易に密閉できる。同時に、ツールと冷却剤/潤滑剤移送部の間の接続の取り扱いが非常に簡単になるが、ここで広範な流れ技術での試行により、境界部領域で制御不能な潤滑剤媒体の蓄積が発生しない比較的単純な幾何学的設計であることが示されている。このように、所望の量の潤滑剤が所望の質でカッタに達するが、ここで、ツールや、潤滑剤供給境界部の他の構成要素について、特に経済的な作製が確実となる。
【0019】
ツールが、まっすぐ、あるいはらせん状のいずれでも可能な複数偏心内部冷却剤ダクトを備えるような場合において、本発明が特に有利に利用可能である。
スリットもしくはスリット状凹部はシャフトツール内および/または接続片内にあってもよい。
【0020】
スリットが丸溝基部を備える場合、冷却剤/潤滑剤移送領域における渦形成が特に効果的に抑えられる。さらに、この試行によって、スリットの幅が広いほど渦形成を抑える傾向があることが分かり、このような改善策が最少量潤滑システムで用いられるツールで特に適していることが示されている。
【0021】
潤滑剤供給面、好ましくは最少量潤滑剤供給部の反対側のツール面の本発明による単純化設計も、特にカッタヘッドあるいはツール用硬質材で用いられる際に適している。特に、本発明によるツールを用いて、硬質材、特に、いわゆるサーメット材を含む焼結材が特に経済的に用いられる。ツール内において本発明により凹部が作製される冷却剤/潤滑剤用凹部が、その後の加工、特に仕上げ部に対するその後の内部加工を行う必要なく焼結ブランク内ですでにできているためであるが、その理由は、この点において、寸法、形状および/または位置に関する正確な許容量に合致する必要がないためである。
【0022】
切断機能および使用期間を改善するため、カッタヘッドあるいはツールは、少なくともその一部において、被覆、好ましくは硬質材被覆を備えることができる。これは、例えば、ダイヤモンド被覆、好ましくはナノ結晶質ダイヤモンド、窒化チタン、窒化チタン・アルミニウムであってもよい。
【0023】
さらに、本発明によるツール用焼結ブランクは本発明の別個の対象物であり、ここで、焼結ブランクが円錐シャフト端部を備えることによって、シャフトあるいは円錐嵌合面を所望の寸法まで最終加工する必要性を最小限に抑えることができる。焼結ブランクで形成されるこれらのシャフト構成要素は、半製品として製造者から入手できる。有利な点として、これらの形状ヘッドが、ツールの規定直径に対してわずか0.5mmだけ大きい寸法で購入できる。
【0024】
本発明のさらに有利な実施例が残りの従属請求項の一部をなしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術を示す側面図。
【図2】内部冷却剤ダクトまでの冷却剤/潤滑剤の供給がツールシャフトの円錐嵌合面との境界をなす供給境界部により行われる、特に高性能リーマとして設計される穴あけ仕上げツール、例えば、回転駆動シャフトツールの側面図。
【図3】図2の実施例における冷却剤/潤滑剤移送境界部の部分拡大図。
【図4】図3の『IV』の方向から見た図。
【図5】図4の『V』の方向から見た図。
【図6】冷却剤/潤滑剤移送境界部の変形実施例。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下において、図面を参照しながら、本発明の代表的実施例がさらに詳細に説明される。
図2で例が示されている本発明の実施例は、第1ツールシャフト部412と、切断部を形成する、あるいは切断部をもつ第2シャフト部414との間の接続により示される、特別設計の最少量潤滑剤供給境界部を用いて有利に利用可能なシャフトツールの本発明による設計を示している。
【0027】
冷却剤/潤滑剤の供給は、第1シャフト部412に配設された中心ダクト424から、第2シャフト部414の偏心配設された内部冷却剤ダクト468に向けて行われる。2つの冷却剤ダクトは、お互いに直径方向に相殺するよう共通目盛環上に冷却剤ダクトが位置する軸方向の直線上で延伸するよう設けられる。しかしながら、この段階においては、以下でさらに詳細に説明する冷却剤/潤滑剤供給は内部冷却剤ダクトの特定の形式や設計だけに限定されるものではなく、例えば、外周の周りに不均一に分布する、および/またはさまざまな目盛環上に位置するらせん状穴あけのランドにおける、例えば、らせん形状まで拡張できるということはすでに指摘している。内部冷却剤ダクトの出口位置は個々の要求に応じて選択可能であるため、本文書ではその詳細を説明しない。このため、切削ヘッド414の図は図面から削除されている。
【0028】
切断部414を保持するシャフト部の第1シャフト部412への接続は、円錐面対480によって行われ、ここで、シャフト部の円錐側部、すなわち円錐台470が結合嵌合のために加工される円錐側部、すなわち円錐台470は、第1シャフト部412の内円錐472においてロックするよう収容される、すなわち正確に嵌合される。中心冷却剤/潤滑剤ダクト424は前記第1シャフト部412の基部につながる。
【0029】
言い換えると、カッタから離れた端部でカッタを保持する第2シャフト部414は、内部冷却剤ダクトのオリフィスを覆う、すなわち囲む円錐嵌合面470,480を備える。図示された実施例において、冷却剤/潤滑剤の内部ダクト468への供給は、2つのオリフィスを含む面上スリット474によりさらに行われる。
【0030】
スリット474は、例えば、丸状スリット基部をもち、好ましくは、接続片、すなわち第1シャフト部412からつながる冷却剤/潤滑剤供給ダクト424の内幅LWに一致する幅をもつ。
【0031】
このスリットは、例えば、実質的に半円状断面をもつ。必要な場合に外部からの冷却剤/潤滑剤の密閉が可能になるようにするため、円錐台470の高さは、切断部414からの径方向出口領域におけるスリット474深さより大きく、これにより、スリット径方向外側に向けて、カッタ部の円錐台470と接続片412の内円錐との間で対になっているロックする円錐面が残る。スリット深さはまた、径方向に沿って大きくすることも可能である。
【0032】
図2で示されているとおり、内部冷却剤ダクト468への冷却剤/潤滑剤の供給は、損失がなく、プロセス信頼性の良好な、中心供給ダクトのある接続片からツール内の偏心冷却剤ダクトまでの最少量潤滑技術で用いられるような、特にわずかな比率の潤滑剤だけで冷却剤/潤滑剤を設置する事例といった、基本的に特別な利点のために用いられる。したがって、本発明はまた、冷却剤/潤滑剤移送用境界部専用の対象物と、それに組み込まれた構成要素のおのおのについて特別な設計を扱うよう意図されたものである。
【0033】
本発明の特定観点を図示するため、図3乃至5が参照されるが、これらの図では、例えばいわゆる最少量潤滑剤調節部で構成できるツールシャフト514と接続片512間の冷却剤/潤滑剤移送の境界部といった、図1を参照しながらすでに説明され、内部において、点破線で示された最少量潤滑管576を調節するものが示されている。
【0034】
シャフトツール514は少なくとも1個の冷却剤ダクト568を備え、このダクトは基本的に偏心であり、内部に置かれ、前記シャフトツール514は、例えば、水圧拡張チャックもしくは締まり嵌めチャックといった、(詳細は図示せず)例えばチャック内で固定される。接続片512に対向する側において、各内部冷却剤/潤滑剤ダクト568はオリフィス578を備え、このオリフィスがさらに円錐嵌合面570で覆われる。言い換えると、ツールのシャフト端部は円錐状であり、ここで、円錐が、少なくともオリフィス578から径方向外部に向けた領域で正確に規定された形状をもち、この形状により、接続片との作用のための嵌合面がもたらされる。好ましくは、嵌合面が精密加工面で形成される。この面はまた、オリフィス578内における径方向領域まで伸びる。
【0035】
さらに、本実施例において、オリフィスは関連する前部の実質的に径方向調節されたスロット574領域内にある。
図示された実施例のオリフィス578がお互いに直径方向に相殺されるため、本実施例において、1個の直径方向スリットで十分である。接続片512についても、内円錐572の頂領域が出口となる中心冷却剤/潤滑剤供給ダクト524を備える。内円錐572は、ロックするよう結合嵌合でツールシャフト514の面端部、すなわち円錐台570を収容する。図示目的のため、図3においては嵌合ギャップが過剰に大きく示されている。実際上、径方向密閉が行われるよう、嵌合面はお互いに接触してよりかかるよう設けられる。対向円錐面は好ましくは、外円錐、つまり円錐台570の円錐角がどの場合でも内円錐572の円錐角よりも大きくならないような許容値であるため、お互いに軸方向に接触してよりかかるよう置かれる円錐面により、径方向外側に向いた領域における接触が確実に行われる。
【0036】
接続片512は好ましくは、軸方向調節可能にチャック内に収容される。
プロセス信頼性を確実にするため、すなわち、ツールの切断面において漏洩がなく、潤滑剤の質に変動がないよう、接続片から内部冷却ダクトまでの冷却剤/潤滑剤の移送が可能になるようにするため、境界部は以下で述べるように設計される。
【0037】
まず何よりも、スリット574が丸状基部582を備える。好ましくは、スリット574はさらに、接続片512からつながる冷却剤/潤滑剤供給ダクト524の内幅LWに実質的に等しい、あるいはこの幅が前記内幅よりも狭い幅をもつ。試行により、スリット574が実質的に半円状断面である場合、渦形成が特に効果的に抑えられるということが示された。
【0038】
接続片512の内円錐572に収容されるシャフト端部570が円錐台形状であるため、また円錐台570の高さHKが、ツールシャフト514からの径方向出口領域におけるスリット574深さTSよりも大きいため、スリット574の径方向外側に向けて、ツール514の円錐台570と接続片512の内円錐572間でロックする円錐面対580が残り、この円錐面対580により、冷却剤/潤滑剤がぶつかる内部空間に対して信頼性の高い径方向密閉が行われる。この配設において、ツールシャフト端部の形状は非常に経済的に作製できる。
【0039】
スリット574の形状により、供給流の最適化を行うことができる。丸状であるが比較的広いスリットで、深さが一定であることが可能なスリット574により、特に良好な結果が達成された。
【0040】
代替法として、スリットもしくはスリット状凹部で区切られるダクト深さTSも径方向に沿って大きくすることができる。
接続片として多数のさまざまな構成要素を用いることができる。冷却剤/潤滑剤移送境界部がチャック内に位置するよう設計される場合、前記接続片は、例えば実質的にシリンダ形状のねじとして設計された軸方向調節可能アダプタで形成され、ここでは大径断面が内円錐572を形成する。ツールに対向する端部において、アダプタ512は、短軸延伸の中心多角凹部584を備えることができる。
【0041】
安定性の最大化を確実に行うため、ツールが全て、あるいは好ましくは少なくとも切削ヘッドの領域が、例えば、硬質金属、HSS,HSSE,もしくはHSSEBMといった高速度鋼、セラミックス、サーメット、あるいは他の焼結材から作製される。特に好ましいものは、焼結材サーメットであり、特に、微細粒精密構造、良好な高温硬化性、良好な粘着性をもつサーメット材である。
【0042】
さらに処理の質を上げるため、少なくとも負荷に対して最も大きく露出する部分領域、つまり刃先や研削食い付き部の領域における切削ヘッドは、好ましくは硬質材被覆である被覆を備えることが可能である。例えば、ダイヤモンド、好ましくはナノ結晶質ダイヤモンドは、窒化チタンあるいは窒化チタン・アルミニウムと同様に、この硬質材層とみなすことができる。この中で特に適したものは、窒化チタン・アルミニウム被覆や、『ファイヤI』として指定され、グーリングOHG社による商標をもついわゆる多層被覆である。これはTiN−/(Ti,Al)Nの多層被覆である。
【0043】
特に好ましいのは、実質的に金属構成要素Cr、Ti、Alとの窒化物であり、好ましくは結晶微細化のための元素を少量含む耐摩耗性被覆を用いることであり、ここで、Cr含有量は30乃至65%、好ましくは30乃至60%、とりわけ好ましくは40乃至60%;Al含有量は15乃至35%、好ましくは17乃至25%;Ti含有量は16乃至40%、好ましくは16乃至35%、とりわけ好ましくは24乃至35%であり、それぞれの例において、これは全被覆における全金属原子に対する比率である。この配設において、被覆構成は、均一混合相をもつ単層、もしくは被覆構成がそれぞれの内部で均一な複数層をもつが、その他の場合、一方で、x=0.38乃至0.5、y=0.48乃至0.6、z=0乃至0.04とした場合に(TixAlyYz)Nを、他方で、CrNをもつものであり、ここで、好ましくは耐摩耗性被覆の最上層がCrN被覆で形成される。
【0044】
図示された実施例のカッタを保持する部分414はまた、硬質材、特に、例えば硬質金属あるいはサーメット材といった焼結材をもつ。リーマが用いられる場合、特に、耐摩耗性や高温硬度の基準値が決定的に重要である。ケナメタル・ヘルテル社が販売するサーメットブランドの『HTX』が特に有利に用いられることが示されている。さらに、セラシブ社(フェルトミューレ)のブランド『SC30』や東芝欧州社のブランド『タンガリーNS530』でも良好な結果が得られている。
【0045】
図6を参照すると、シャフトツールおよび冷却剤/潤滑剤供給の変形例がさらに説明されている。この配設においても、前述の実施例の構成要素に対応する構成要素は、『6』の添え字をつけていることを除き、対応する参照番号が指定されている。
【0046】
前述の実施例と同じく、例えば偏心配置された1個の冷却剤/潤滑剤ダクト668だけ
をもつシャフト614は、冷却剤/潤滑剤ダクト668のオリフィスを覆う円錐嵌合面670をもつ円錐状テーパのある端部を備える。しかしながら、円錐嵌合面670はまっすぐに延伸する、すなわちスリットで遮られない。
【0047】
シャフト614の円錐端部に対する補足として、接続片612は、中心冷却剤/潤滑剤ダクト624が開口する内円錐627を備える。部品が結合される、すなわち嵌合面670が内円錐672に当接して、中心内部ダクト624と内部冷却剤/潤滑剤ダクト668との間の流れ手段接続が確立されていることを確認するため、接続片612は、半径方向延伸ERが接続に達する、すなわちオリフィス678を覆うのに十分な長さである半径方向延伸スリット状凹部674を備える。この配設において、スリット底部形状は、図3乃至5による実施例の形状と同一である。
【0048】
当然ながら、本発明の基本的概念から離れることなく、このツールが上述の変形例から逸脱することも可能である。
例えば、図6における変形例において、シャフトがスリット状圧痕を有する、あるいはこれを追加的に有することも可能である。
【0049】
ツールと最少量潤滑剤供給部の間の連結のための構成は、大きさや円錐角に応じて変形の対象になりうる。当然ながら、円錐面対の場合においても、さらに、たとえば、面積圧痕といったロックする接続も利用可能である。
【0050】
シャフト内における冷却剤ダクトも、当然ながら中心配設できる。さらに、接続片の中心冷却剤ダクトの直径は、シャフト内に少なくとも1個の冷却剤/潤滑剤ダクトを覆うよう十分大きくできる。もしくは、代替法として、分岐ダクトへの流れの分岐が接続片内ですでに行われ、ここで前記分岐ダクトが同一平面内になるようシャフト内の冷却剤/潤滑剤ダクト内につながる。
【0051】
ツール内の凹部が焼結プロセス前に作製される必要はない。また、この凹部を、最終寸法まで、あるいは原則として焼結プロセス後のいずれかで、ツール内もしくは切削ヘッド内のいずれか好ましく行われる方で作製することも可能である。
【0052】
同様に、本発明の適用範囲は、例えば高性能リーマといった回転駆動ツールに限定されるものではない。駆動式、あるいは非駆動式の他のシャフトツールも、例えばタップ立て、あるいはフライス削りツール、あるいはねじりのある、もしくはねじりのない他のリーマといったものを場合に応じて設けることができ、ここで、これらのツールについても、例えば穿孔機器あるいは旋盤の据付ツールとして用いることができる。
【0053】
当然ながら、いかなる共通利用手段も冷却剤/潤滑剤として用いることが可能である。最少量潤滑剤手段だけに限定する必要はない。その代わり、いわゆる『湿式』潤滑剤、すなわち潤滑乳剤あるいは油、もしくはそれらの混合物を用いることも可能である。
【0054】
接続片からツールシャフト内の冷却剤ダクトまでの流れ手段接続をもたらすためのシャフト内および接続片内もしくはシャフト内または接続片内における凹部がこの実施例のスリットとして示される。しかしながら、この凹部の形状は広範囲にわたって変えることができる。例えば、この凹部は、例えば、2つの並行円間の球状区画面といった凹部内面をもつ円形球状キャップの形状、すなわちシャフト端部の同心圧痕であってもよい。
【0055】
このように本発明は、特に、最少量潤滑で用いられる、冷却剤/潤滑剤供給点に対する境界部に結合する際にとりわけ適したシャフトツールを提供する。本発明によるシャフトツールは、機械部から離れた側にオリフィスをもつ、少なくとも1個の全体的に偏心した内部冷却ダクトを備える。前記オリフィスは、例えばチャック内において、最少量潤滑をもたらす同軸配設された供給部へのシャフトの接続を可能にする円錐状嵌合面で囲まれる。
【0056】
本発明により、単純な嵌合面、すなわち円錐面が用いられるが、ここで、作製が難しい内円錐面が最少量潤滑供給部として、すなわち原則として加工の容易な部分で作製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械部と、同機械部から離間する側の端部にオリフィス(578;678)を備えた少なくとも1個の内部冷却剤および潤滑剤ダクト(468;568;668)を有する円筒状シャフトとが具備されるシャフトツールであって、同シャフト(414;514;614)が、円錐状嵌合面(470;570;670)を形成し、少なくとも1つ個のオリフィス(578;678)を有することと、同円錐状嵌合面(470;570;670)は先端を切断されることと、
該シャフト(414;514;614)の、頂部を切断された円錐状嵌合面(470;570;670)は、接続片(412;512;612)の内円錐(472;572;672)に嵌入することと、該内円錐(472;572;672)は、該頂部を切断された円錐状嵌合面(470;570;670)および該内円錐(472;572;672)によって形成される中空の頂領域を有することと、
該頂部を切断された円錐状嵌合面(470;570;670)の対向する側面が頂点においてなす角度は、該内円錐(472;572;672)を密封するために十分大きいこととを特徴とするツール。
【請求項2】
少なくとも1個の冷却剤および潤滑剤ダクト(468;568;668)のオリフィス(578;678)がシャフト軸(A)外にあることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項3】
少なくとも1個のオリフィス(578)が、径方向に配向された前部スリット(474;574)領域内に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のツール。
【請求項4】
スリット(474;574)が丸状基部を備えることを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項5】
スリットが、接続片(414;514)から続く冷却剤および潤滑剤供給ダクト(424;524)の内幅(LW)に等しい幅(BS)である、もしくは、前記内幅(LW)よりも狭いことを特徴とする請求項3または4に記載のツール。
【請求項6】
スリットが半円状断面をもつことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のツール。
【請求項7】
円錐嵌合面(470;570;670)が、円錐台の側面エリアで形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のツール。
【請求項8】
ツールであって、円錐台の高さ(HK)が、シャフト(414;514)からの径方向出口領域内の、少なくとも1個のオリフィス(578)を含む径方向スリット深さ(TS)よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のツール。
【請求項9】
スリット深さ(TS)が径方向に沿って大きくなることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載のツール。
【請求項10】
少なくとも1個の内部冷却剤および潤滑剤ダクトがらせん状に延伸することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のツール。
【請求項11】
請求項1に記載のシャフトツールおよび接続片(512;612)を備える装置であって、同接続片(412;512;612)は、内円錐(472;572;672)に対向するシャフトの円錐状嵌合面(470;570;670)がロックされるべく収容されるように嵌入する内円錐(472;572;672)の頂領域が出口となる中央部の冷却剤および潤滑剤供給ダクト(424;524;624)からなることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記シャフトツールは、チャックに収容されることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記チャックは水圧拡張チャックであることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記チャックは締まりばめチャックであることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記接続片の内円錐(472;572;672)に収容される前記シャフトツールの端部は、円錐台であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記接続片は、チャックに収容される軸方向調節可能アダプタ(512)から形成されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記ツールシャフト(514;614)内のオリフィス(578;678)と連通するスリット(574;674)は、丸状基部(582)を備えることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記スリット(574)が、冷却剤および潤滑剤供給ダクト(524)の内幅(LW)に等しいかより狭い幅(BS)を有することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記スリット(574)が、半円状断面を有することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記スリット深さ(TS)が、径方向に沿って大きくなることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記アダプタ(512)が、段付きシリンダ形状のねじで形成され、最大径断面により内円錐(572;672)の底面が形成されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項22】
ツールに対向する端部において、前記アダプタ(512)が軸方向に凹んだ中央部の凹部を備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83893(P2011−83893A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21755(P2011−21755)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2006−534691(P2006−534691)の分割
【原出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505226585)ギューリング,イェルク (18)
【氏名又は名称原語表記】GUEHRING,Joerg
【Fターム(参考)】