説明

シャワー装置

【課題】湯水に混合する適正な空気導入量を確保しながら、外気の導入に伴って発生する空気音を低減することができるシャワー装置を提供する。
【解決手段】本発明は、シャワーホース(2)から供給された湯水に空気を混合させて散水するシャワー装置(1)であって、シャワーヘッド本体(4)と、このシャワーヘッド本体の内部に配置された通水路形成部(10,12)と、通水路形成部に導入された湯水を吐出させる散水板(6)と、通水路形成部の内部に配置されたオリフィス部(14)と、を有し、シャワーヘッド本体には、外部の空気を、シャワーヘッド本体内に導入する第1空気導入孔(28)が設けられ、通水路形成部には、シャワーヘッド本体内の空気を通水路形成部内に導入する第2空気導入孔(20)が設けられ、この第2空気導入孔は、オリフィス部よりも下流側に配置され、第1空気導入孔よりも断面積が小さく形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャワー装置に関し、特に、シャワーホースから供給された湯水に空気を混合させて散水するシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−239106号公報(特許文献1)には、シャワーヘッドが記載されている。このシャワーヘッドは、供給された湯水に空気を混入して散水孔から吐出させるように構成されている。このような空気混入型のシャワーヘッドは、湯水に空気を混入させることにより、実際に吐出される湯水の量を見かけよりも少なくすることができるので、環境に優しい節水型のシャワーヘッドとして期待されている。このようなシャワーヘッドでは、湯水に混合する外気を取り込むための空気導入孔をシャワーヘッド本体に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−239106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外気を取り込むための空気導入孔は、湯水に適量の空気を混入するために適正な大きさがある。即ち、空気導入孔が小さすぎると、導入できる空気が少なくなり、湯水に十分な量の空気を混合することができない。また、空気導入孔が大きすぎると、湯水の通路に導入される空気量が多くなりすぎ、湯水に空気を均一に混合することが困難になり、たくさんの気泡を含んだきれいな吐水を形成することができなくなる。
【0005】
一方、空気導入孔から導入される空気の流速が速くなると、空気の流れに伴って不快な空気音が発生するという問題が発生する。しかしながら、上記のように、湯水に空気を適正に混合するためには、空気導入孔の大きさを任意に設定することができないという問題がある。
【0006】
特開2006−239106号公報に記載されたシャワーヘッドでは、シャワーヘッドの本体と、シャワーヘッドの本体内で湯水が流れる通水路との間に、空気流入室が設けられた二重構造が採用されている。この構成では、外気は一旦空気流入室に導入され、空気流入室から空気導入孔を介して通水路内に空気が導入される。このため、空気流入室から空気導入孔を介して通水路内に流入する空気の流れによる空気音は、シャワーヘッドの本体内で発生することになり、外部には聞こえにくくなる。
【0007】
しかしながら、実際には、空気流入室から空気導入孔を介して通水路内に流入するのと同量の空気を、外気からシャワーヘッドの本体内に取り込む必要がある。従って、外気からシャワーヘッドの本体内に空気を導入する空気導入孔において空気音が発生してしまい、結局、空気音低減効果を得ることはできない。
【0008】
従って、本発明は、湯水に混合する適正な空気導入量を確保しながら、外気の導入に伴って発生する空気音を低減することができるシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、シャワーホースから供給された湯水に空気を混合させて散水するシャワー装置であって、シャワーヘッド本体と、このシャワーヘッド本体の内部に配置され、シャワーホースから供給された湯水が内部に導入される通水路形成部と、この通水路形成部に取り付けられ、通水路形成部に導入された湯水を吐出させる複数の散水孔が形成された散水板と、通水路形成部の内部に配置され、通水路形成部内を流れる湯水の流路を絞るオリフィス部と、を有し、シャワーヘッド本体には、外部の空気を、シャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間に導入する第1空気導入孔が設けられ、通水路形成部には、シャワーヘッド本体と通水路形成部との間の空間内の空気を通水路形成部内に導入する第2空気導入孔が設けられ、この第2空気導入孔は、オリフィス部よりも下流側に配置され、第1空気導入孔よりも断面積が小さく形成されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、シャワーホースから供給された湯水は、通水路形成部に流入し、オリフィス部によって流路が絞られる。シャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間内の空気は、オリフィス部の下流側において、第2空気導入孔を介して通水路形成部内に導入される。第2空気導入孔から導入された空気は、湯水と混合され、散水板に設けられた複数の散水孔から吐出される。外部の空気は、第1空気導入孔を介してシャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間に一旦導入され、この空間内の空気は、第2空気導入孔を介して通水路形成部内に導入される。
【0011】
このように構成された本発明によれば、第2空気導入孔の断面積を適正な大きさに設定することにより、通水路形成部内に適量の空気を導入することができる。この第2空気導入孔を流れる空気の流速が速くなり、第2空気導入孔において空気音が発生したとしても、空気音はシャワーヘッド本体の内部で発生するものであるため、大きな音が外部に漏れることはない。また、第2空気導入孔から通水路形成部内に導入されるのと同量の空気が、外部から第1空気導入孔を介してシャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間に導入されるが、第1空気導入孔の断面積は第2空気導入孔よりも大きく形成されているので、第1空気導入孔を流れる空気の流速は遅くなり、第1空気導入孔において大きな空気音が発生することはない。このため、本発明のシャワー装置によれば、湯水に混合する適正な空気導入量を確保しながら、外気の導入に伴って発生する空気音を低減することができる。なお、第1空気導入孔は、複数形成してもよく、複数形成した場合は、ここでいう第1空気導入孔の断面積は、複数の第1空気導入孔の総断面積になる。
【0012】
本発明において、好ましくは、第1空気導入孔は、第2空気導入孔よりも、シャワーホースが接続されるシャワー装置の基端側に位置決めされている。
このように構成された本発明においては、第1空気導入孔が基端側に位置決めされているので、シャワー装置をシャワーハンガー等に掛けたとき、第1空気導入孔は第2空気導入孔よりも下方に位置する。これにより、第2空気導入孔からシャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間に逆流した湯水は、第1空気導入孔を通って排水されるので、この空間に湯水が留まることはなく、また、空間内に混入した異物を洗い流して外部に排出すことができる。逆に、シャワーヘッド本体と通水路形成部の間の空間に湯水が留まる構造であると、空間内の異物は、シャワー装置使用時に、第2空気導入孔を介して通水路形成部内に侵入し、オリフィス部や散水孔を目詰まりさせるという問題が発生する。上記構成の本発明によれば、このような不具合を回避することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1空気導入孔は、シャワーヘッド本体の、散水板が配置されている側に向けて開口するように形成されている。
このように構成された本発明によれば、第1空気導入孔がシャワーヘッド本体の散水板側に配置されているので、使用者がシャワー装置を把持したとき、使用者が掌で誤って第1空気導入孔を塞いでしまうという不都合を、減少させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、第1空気導入孔は、シャワーヘッド本体の、シャワーホースが接続されるシャワー装置の基端部に配置されている。
このように構成された本発明によれば、使用者がシャワー装置を把持したとき、使用者が掌で誤って第1空気導入孔を塞いでしまうという不都合を、さらに減少させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、さらに、シャワー装置の非使用時において第2空気導入孔が水没するように、第2空気導入孔を取り囲む留水室を有する。
このように構成された本発明によれば、シャワー装置をシャワーハンガー等に掛けて非使用状態にしたときには第2空気導入孔が水没しているので、第2空気導入孔が乾燥することにより異物が付着し、第2空気導入孔が目詰まりするのを防止することができる。これにより、第2空気導入孔の実際の開口面積を常に適正に保つことができ、初期の空気導入性能を維持することができる。また、第2空気導入孔の上流側に配置されたオリフィス部も水没しているので、オリフィス部が乾燥することにより異物が付着し、流路断面積の小さいオリフィス部が目詰まりするのを防止することができ、初期の吐水性能を維持することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、留水室は、第2空気導入孔よりも、シャワー装置の先端側に位置決めされた留水室連通孔により、シャワーヘッド本体と通水路形成部との間の空間に連通されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、留水室の留水室連通孔が第2空気導入孔よりもシャワー装置の先端側に位置決めされているので、シャワー装置をシャワーハンガー等に掛けて非使用状態としたときでも、留水室内に湯水が留まり、第2空気導入孔、オリフィス部を水没した状態に維持することができる。これにより、第2空気導入孔、オリフィス部への異物の付着を、より抑制することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、通水路形成部は2以上の部材に分割可能に形成されており、オリフィス部は、通水路形成部を構成する2つの部材の結合部に配置され、結合部を分割するとオリフィス部が外部に露出される。
このように構成された本発明によれば、オリフィス部が通水路形成部を構成する2つの部材の結合部に配置されているので、流路断面積の小さいオリフィス部が目詰まりを起こした場合でも、簡単にオリフィス部を露出させ、清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシャワー装置によれば、湯水に混合する適正な空気導入量を確保しながら、外気の導入に伴って発生する空気音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態によるシャワー装置を、シャワーハンガーに掛けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態によるシャワー装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるシャワー装置の部分拡大断面図である。
【図4】シャワーヘッドカバーに内蔵された部品を示す分解斜視図である。
【図5】オリフィス形成部材の(a)斜視図、及び(b)上面図である。
【図6】押さえリングの上面図である。
【図7】継手とシャワーヘッドカバーの接続部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるシャワー装置を、シャワーハンガーに掛けた状態を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態によるシャワー装置の断面図であり、図3は、図2の一部を拡大して示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態によるシャワー装置1は、シャワーホース2に接続して使用される。シャワーホース2から供給された湯水は、シャワーヘッドカバー4の内部で外気と混合され、気泡を含んだ湯水が、散水板6に設けられた複数の散水ノズル6aの散水孔から吐出されるように構成されている。
【0023】
また、図2に示すように、シャワー装置1は、壁面Wに取り付けられたシャワーハンガー8に掛けられた状態では、シャワーホース2の軸線が鉛直軸線に対して角α傾くように配置され、本実施形態においては角αは約15゜である。
【0024】
次に、図4乃至5を新たに参照して、本発明の実施形態によるシャワー装置の内部構造を説明する。
図4は、シャワーヘッドカバー4に内蔵された部品を示す分解斜視図である。図5は、オリフィス形成部材の(a)斜視図、及び(b)上面図である。図6は押さえリングの上面図である。図7は、継手16とシャワーヘッドカバー4の接続部分を拡大して示す図である。
【0025】
図4に示すように、シャワーヘッドカバー4の内部には、第1通水部材10と、この第1通水部材10に連結される第2通水部材12と、第1通水部材10と第2通水部材12の結合部に挿入されるオリフィス形成部材14が内蔵されている。さらに、シャワー装置1は、第1通水部材10の基端部とシャワーホース2を結合する継手16と、第1通水部材10と継手16の間に配置された押さえリング18を有する。なお、本実施形態において、第1通水部材10及び第2通水部材12は、通水路形成部を構成する。
【0026】
シャワーヘッドカバー4は、第1通水部材10及び第2通水部材12を包囲するように形成された筒状の部材である。このシャワーヘッドカバー4と散水板6により、シャワー装置1の外観が概ね構成される。
【0027】
第1通水部材10は、第1通水管10aと、その周囲に形成された複数のリブ10bを有する。第1通水部材10は、その基端部が継手16と螺合されるように構成されており、シャワーホース2、継手16を介して供給された湯水が、第1通水管10a内を流れるように構成されている。また、第1通水部材10は、シャワーヘッドカバー4の内部に配置され、シャワーヘッドカバー4の内側と、第1通水部材10の外側の間に空間4a(図2)が形成される。第1通水管10aの周囲に形成された複数のリブ10bにより、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間に空間4aを確保しながら、第1通水部材10がシャワーヘッドカバー4の内部で位置決めされるようになっている。さらに、第1通水部材10の先端部には、オリフィス形成部材14を受け入れる第1オリフィス受入凹部10cが設けられている。
【0028】
第2通水部材12は、第1通水部材10の先端側に結合される箱状の部材である。第2通水部材12の基端部には、オリフィス形成部材14を受け入れる第2オリフィス受入凹部12a(図3(a))が設けられている。第2オリフィス受入凹部12aの先端側には、第2オリフィス受入凹部12aと連通して、先端に向かってテーパ状に流路が広がった空気混合室12b(図2)が形成されている。さらに、空気混合室12bの先端側には、空気混合室12bと連通して、散水板6が取り付けられた散水室12c(図2)が形成されている。散水室12cは、その前面側が開放されており、その開放部に散水板6が取り付けられている。第2通水部材12と散水板6の間の水密性は、パッキン(図示せず)により確保されている。
【0029】
散水板6は、シャワーヘッドカバー4と共にシャワー装置1の外観の一部を構成する多孔板6bと、複数の散水ノズル6aが設けられたゴム製のノズル形成部材6cから構成されている。ノズル形成部材6c上に形成された各散水ノズル6aは、多孔板6bに形成された複数の孔と夫々整合するように配置されており、ノズル形成部材6cと多孔板6bを重ねると、各散水ノズル6aが多孔板6bの各孔から突出するように構成されている。また、ノズル形成部材6c及び多孔板6bを第2通水部材12に取り付けると、散水室12c内に設けられた複数のピン12d(図2)の先端が、ノズル形成部材6cの裏面を押してノズル形成部材6cを多孔板6bに密着させるようになっている。
【0030】
図5に示すように、オリフィス形成部材14は、長円形断面の筒状の部材であり、その外周を取り囲むようには4本のリブ14a、14b、14c、14dが順に形成されている。リブ14aとリブ14bの間、及びリブ14cとリブ14dの間には、夫々Oリング(図3(a))が配置されている。これらのOリングにより、第1オリフィス受入凹部10cとオリフィス形成部材14の間、及び2オリフィス受入凹部12aとオリフィス形成部材14の間の水密性が確保されている。また、リブ14bとリブ14cの間にはスリット状の第2空気導入孔20が形成され、オリフィス形成部材14の外周側と内周側を連通させている。さらに、オリフィス形成部材14の内部には隔壁22が設けられ、この隔壁に複数のオリフィス孔22aが形成されている。第2空気導入孔20は、隔壁22直近の下流側に形成されており、オリフィス孔22aを通って流速が高められた湯水が、第2空気導入孔20から空気を導入するようになっている。なお、本実施形態において、隔壁22及びオリフィス孔22aは、オリフィス部を構成する。
【0031】
また、リブ14bとリブ14cの間の空間は、第1オリフィス受入凹部10c及び第2オリフィス受入凹部12aと共に、留水室24を形成している。後述するように、シャワー装置1の非使用時には留水室24に湯水が滞留し、第2空気導入孔20と、隔壁22に設けられたオリフィス孔22aが水没されるようになっている。さらに、第1通水部材10の先端部には、切欠26(図4)が形成されており、この切欠26は、第1通水部材10と第2通水部材12が結合されたとき、第1通水部材10と第2通水部材12の間に留水室連通孔を形成する。即ち、留水室24は、切欠26(留水室連通孔)を介して、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10との間の空間4aと連通する。
【0032】
さらに、オリフィス形成部材14は、第1通水部材10と第2通水部材12結合部に配置されているので、この結合部を分割することによりオリフィス孔22aが外部に露出され、オリフィス孔22aのメンテナンスを行うことができる。
【0033】
図6に示すように、押さえリング18は、シャワーヘッドカバー4の下端部に配置されるリング状の部材である。押さえリング18には、第1空気導入孔28が形成され、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10との間の空間4aは、この第1空気導入孔28を介して外気と連通される。即ち、外気は、図3(b)の矢印Aで示すように、押さえリング18とシャワーホース2の間の隙間、第1空気導入孔28、押さえリング18とシャワーヘッドカバー4の間の隙間を通って空間4aと連通するように構成されている。従って、第1空気導入孔28は、第2空気導入孔20よりもシャワー装置1の基端側、即ち、シャワー装置1のシャワーホース2が接続される側に位置決めされる。また、第1空気導入孔28は、シャワー装置1の基端部、即ち、シャワー装置1のシャワーホース2が接続される部分に配置される。なお、本実施形態において、シャワーヘッドカバー4及び押さえリング18は、シャワーヘッド本体を構成する。
【0034】
また、第1空気導入孔28の断面積は、第2空気導入孔20の断面積よりも大きく形成されている。本実施形態においては、第1空気導入孔28の断面積は、第2空気導入孔20の断面積の約2倍に構成されている。なお、本実施形態では、第1空気導入孔を1つ形成しているが、必ずしも第1空気導入孔は、1つでなくてもよく、複数形成しても良い。第1空気導入孔を複数形成した場合は、複数の第1空気導入孔の総断面積が、第2空気導入孔の断面積よりも大きくなるように、第1空気導入孔を形成する。
【0035】
また、押さえリング18の回転位置は、押さえリング18に形成された切欠18aと、第1通水部材10に設けられた突起(図示せず)により、シャワーヘッドカバー4に対して位置決めされるようになっている。これにより、押さえリング18の第1空気導入孔28は、シャワーヘッドカバー4の前面側、即ち、散水板6が配置されている側に位置決めされる。このため、第1空気導入孔28は、常に、シャワーヘッドカバー4の前面側に向けて開口されるように位置決めされる。
【0036】
次に、図7を参照して、シャワーヘッドカバー4の取り付け構造を説明する。
図7に示すように、継手16の先端側に形成された雄ネジ16aは、第1通水部材10の基端部に形成された雌ネジ10dと螺合され、継手16と第1通水部材10は結合される。また、継手16の段部16bは、押さえリング18の凹部18bと係合している。また、押さえリング18の円周上には、4つのスプリング配置孔18c(図6)が設けられており、各スプリング配置孔18cにはコイルスプリング30が夫々配置されている。各コイルスプリング30の先端は、シャワーヘッドカバー4の基端に当接されており、シャワーヘッドカバー4をシャワー装置1の先端側に向かって付勢している。一方、シャワーヘッドカバー4の先端は、多孔板6bの折曲部6d(図2)に当接されている。この構造により、シャワーヘッドカバー4は、コイルスプリング30の付勢力により折曲部6dに押し付けられ、シャワーヘッドカバー4の位置が固定される。即ち、シャワーヘッドカバー4は、散水板6の折曲部6dと押さえリング18の間に挟み付けられることにより固定される。
【0037】
次に、本発明の実施形態によるシャワー装置1の作用を説明する。
まず、シャワーホース2から供給された湯水は、継手16、第1通水部材10を通って、オリフィス形成部材14に到達する。オリフィス形成部材14に到達した湯水は、隔壁22に設けられた複数のオリフィス孔22aに流入する。オリフィス孔22aによって流路断面積が絞られた湯水は、流速が上昇し、隔壁22の下流側では、湯水の圧力が低下する。湯水の圧力が低下すると、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内の空気が、エジェクター効果により第2空気導入孔20を介して通水路内に導入される。即ち、外気は、シャワーヘッドカバー4と押さえリング18の間の隙間から、第1空気導入孔28を通ってシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内に流入する。空間4a内の空気は、切欠26によって形成された留水室連通孔を通って留水室24に流入し、留水室24に流入した空気は第2空気導入孔20を通って通水路内に導入される。
【0038】
ここで、第1空気導入孔28は、シャワーヘッドカバー4の前面側に配置されているため、使用者がシャワー装置1を把持することにより、第1空気導入孔28を偶発的に塞いでしまう状態は発生しにくい。また、第1空気導入孔28はシャワー装置1の下端部に配置されているので、使用者の手指により第1空気導入孔28が塞がれる確率はさらに低くなる。
隔壁22の下流側で第2空気導入孔20を通って通水路内に導入された空気は、下流側に向かって流路断面積が広がった空気混合室12b内で十分に湯水と混合される。空気が混合された湯水は、散水室12cに流入し、散水板6に設けられた複数の散水ノズル6aの散水孔から、気泡を含む湯水として吐水される。
【0039】
また、空気が第2空気導入孔20を介して通水路内に導入される際、空気が第2空気導入孔20の断面積が小さいため、空気音が発生する場合があるが、この空気音は、シャワーヘッドカバー4の内部で発生するものであるため、外部に漏れる音は非常に小さなものになる。さらに、外気が第1空気導入孔28を介してシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内に流入する際には、第1空気導入孔28の断面積が大きく形成されているため、空気の流速は遅く、空気音の発生を抑制することができる。これにより、通水路内を流れる湯水に、適量の空気を混合しながら、シャワー装置1の外部に漏れる空気音を低減することができる。
【0040】
次いで、シャワーホース2から供給される湯水が停止され、図2に示すようにシャワー装置1が壁面Wに取り付けられたシャワーハンガー8に掛けられると、第2通水部材12内に滞留していた湯水は、第1空気導入孔28を通ってシャワー装置1の外部に排出される。即ち、第2通水部材12内の湯水は、第2空気導入孔20を通って留水室24内に逆流し、留水室24内の湯水は、切欠26(留水室連通孔)を通ってシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4aに流れ込む。空間4aに流れ込んだ湯水は、シャワー装置1の基端部に設けられた第1空気導入孔28を通ってシャワー装置1の外部に排出される。また、図2に示すシャワーハンガー8に掛けられた状態において、第1通水部材10はシャワー装置1の最下部に位置するので、空間4a内の湯水は残留することなくシャワー装置1の外部に排出される。
【0041】
一方、留水室24内の湯水は、図2に示す状態において、切欠26が第2空気導入孔20よりも上方に位置するので、全てが排出されることなく一部が残留する。このため、シャワーホース2からの湯水が停止されたシャワー装置1の非使用状態において、シャワー装置1内の湯水の水面は、概ね図3(a)の直線Lに示す位置になる。このため、隔壁22に設けられたオリフィス孔22aは、シャワー装置1の非使用状態においても水没した状態に維持される。オリフィス孔22aが水没した状態に維持されると、オリフィス孔22aが乾燥して湯水に含まれるカルシウム分等がオリフィス孔22aに堆積し、オリフィス孔22aを詰まらせるのを防止することができる。
【0042】
本発明の実施形態のシャワー装置によれば、第2空気導入孔20の断面積を適正な大きさに設定することにより、第2通水部材12の空気混合室12bに適量の空気を導入することができる。第2空気導入孔20は比較的断面積が小さいので、第2空気導入孔20を流れる空気の流速は速くなるが、第2空気導入孔20において空気音が発生したとしても、空気音はシャワーヘッドカバー4の内部で発生するものであるため、大きな音が外部に漏れることはない。また、第2空気導入孔20から空気混合室12b内に導入されるのと同量の空気が、外気から第1空気導入孔28を介してシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4aに導入されるが、第1空気導入孔28の断面積は第2空気導入孔20よりも大きく形成されているので、第1空気導入孔28を流れる空気の流速は遅くなり、第1空気導入孔28において大きな空気音が発生することはない。このため、本実施形態のシャワー装置1によれば、湯水に混合する適正な空気導入量を確保しながら、外気の導入に伴って発生する空気音を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態のシャワー装置1によれば、第1空気導入孔28が第2空気導入孔20よりも基端側に位置決めされているので、シャワー装置1をシャワーハンガー8に掛けたとき、第1空気導入孔28は第2空気導入孔20よりも下方に位置する。これにより、第2空気導入孔20からシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4aに逆流した湯水は、第1空気導入孔28を通って排水されるので、この空間4aに湯水が留まることはなく、また、シャワーヘッドカバー4内に混入した異物を洗い流して外部に排出すことができる。従来のシャワー装置のように、シャワーヘッドカバー4の内部の空間に湯水が留まる構造であると、空間内の異物は、シャワー装置使用時に、第2空気導入孔を介して通水路内に侵入し、オリフィスや散水孔を目詰まりさせるという問題が発生する。本実施形態のシャワー装置1によれば、このような不具合を回避することができる。
【0044】
さらに、本実施形態のシャワー装置1によれば、第1空気導入孔28が、シャワー装置1の散水板6が配置されている側に配置されているので、使用者がシャワー装置1を把持したとき、使用者が掌で誤って第1空気導入孔28を塞いでしまうという不都合を、減少させることができる。
また、本実施形態のシャワー装置1によれば、第1空気導入孔28は、シャワー装置1の、シャワーホース2が接続される基端部に配置されているので、使用者がシャワー装置を把持したとき、使用者が掌で誤って第1空気導入孔を塞いでしまうという不都合を、さらに減少させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のシャワー装置1によれば、留水室24がオリフィス形成部材14と第1オリフィス受入凹部10cの間に形成され、留水室24に溜まった湯水が第2空気導入孔20を水没させるように構成されている。これにより、シャワー装置1の非使用時においても第2空気導入孔20が水没しているので、第2空気導入孔20が乾燥することにより異物が付着し、第2空気導入孔20が目詰まりするのを防止することができる。これにより、第2空気導入孔20の実際の開口面積が異物により狭くされ、十分な空気を導入できなくなるのを防止することができ、初期の空気導入性能を維持することができる。
【0046】
また、本実施形態のシャワー装置1によれば、留水室24は切欠26を介して第1通水部材10の外部と連通されており、切欠26は第2空気導入孔20よりも、シャワー装置1の先端側に位置している。このため、シャワー装置1をシャワーハンガー8に掛けて非使用状態としたときでも、留水室24内に湯水が留まり、第2空気導入孔20を水没した状態に維持することができる。これにより、第2空気導入孔への異物の付着を、より抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態のシャワー装置1によれば、オリフィス形成部材14は、第1通水部材10と第2通水部材12の結合部の、第1オリフィス受入凹部10c及び第2オリフィス受入凹部12aの中に配置されているので、第1通水部材10と第2通水部材12を分解すれば、オリフィス形成部材14に設けられたオリフィス孔22aを外部に露出させることができる。これにより、流路断面積の小さいオリフィス孔22aが目詰まりを起こした場合でも、簡単にオリフィス部を露出させ、清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シャワー装置
2 シャワーホース
4 シャワーヘッドカバー
4a 空間
6 散水板
6a 散水ノズル
6b 多孔板
6c ノズル形成部材
6d 折曲部
8 シャワーハンガー
10 第1通水部材
10a 第1通水管
10b リブ
10c 第1オリフィス受入凹部
10d 雌ネジ
12 第2通水部材
12a 第2オリフィス受入凹部
12b 空気混合室
12c 散水室
12d ピン
14 オリフィス形成部材
14a、14b、14c、14d リブ
16 継手
16a 雄ネジ
16b 段部
18 押さえリング
18a 切欠
18b 凹部
18c スプリング配置孔
20 第2空気導入孔
22 隔壁
22a オリフィス孔
24 留水室
26 切欠
28 第1空気導入孔
30 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーホースから供給された湯水に空気を混合させて散水するシャワー装置であって、
シャワーヘッド本体と、
このシャワーヘッド本体の内部に配置され、上記シャワーホースから供給された湯水が内部に導入される通水路形成部と、
この通水路形成部に取り付けられ、上記通水路形成部に導入された湯水を吐出させる複数の散水孔が形成された散水板と、
上記通水路形成部の内部に配置され、上記通水路形成部内を流れる湯水の流路を絞るオリフィス部と、を有し、
上記シャワーヘッド本体には、外部の空気を、上記シャワーヘッド本体と上記通水路形成部の間の空間に導入する第1空気導入孔が設けられ、
上記通水路形成部には、上記シャワーヘッド本体と上記通水路形成部との間の空間内の空気を上記通水路形成部内に導入する第2空気導入孔が設けられ、この第2空気導入孔は、上記オリフィス部よりも下流側に配置され、上記第1空気導入孔よりも断面積が小さく形成されていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
上記第1空気導入孔は、上記第2空気導入孔よりも、上記シャワーホースが接続されるシャワー装置の基端側に位置決めされている請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
上記第1空気導入孔は、上記シャワーヘッド本体の、上記散水板が配置されている側に向けて開口するように形成されている請求項1又は2記載のシャワー装置。
【請求項4】
上記第1空気導入孔は、上記シャワーヘッド本体の、上記シャワーホースが接続されるシャワー装置の基端部に配置されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のシャワー装置。
【請求項5】
さらに、シャワー装置の非使用時において上記第2空気導入孔が水没するように、上記第2空気導入孔を取り囲む留水室を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のシャワー装置。
【請求項6】
上記留水室は、上記第2空気導入孔よりも、シャワー装置の先端側に位置決めされた留水室連通孔により、上記シャワーヘッド本体と上記通水路形成部との間の空間に連通されている請求項5記載のシャワー装置。
【請求項7】
上記通水路形成部は2以上の部材に分割可能に形成されており、上記オリフィス部は、上記通水路形成部を構成する2つの部材の結合部に配置され、結合部を分割すると上記オリフィス部が外部に露出される請求項1乃至6の何れか1項に記載のシャワー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−161083(P2011−161083A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28718(P2010−28718)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【特許番号】特許第4632106号(P4632106)
【特許公報発行日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】