説明

シュレッダーバサミ

【課題】被切断材Wを十分な細片にすることのできるシュレッダーバサミ10を提供すること。
【解決手段】一方の指掛けハンドル13aに3枚以上が一体化される連続切断刃11と、これらの連続切断刃11の間に収納されて、他方の指掛けハンドル13bに一体化される複数枚の細片刃12とを、擦り合い開閉されるように枢軸14によって連結し、細片刃12については、切断刃部12aと落とし部12bとを交互に形成するとともに、細片刃12の間に位置する連続切断刃11の先端部にのみ、切断刃部12aが両側になる位置に補助落とし部11aを形成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハサミに関し、特に、被切断材Wを略長方形状の細片に分割するシュレッダーバサミに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙やプラスチックフィルムからなる葉書や封筒には、住所や氏名等の秘密にすべき事項が記載してあり、不要になった葉書や封筒を捨てる際には、これらの住所や名前を削除しておきたい。また、コピー機が発達して、家庭内にも入ってきている現状では、秘密にすべき事項をコピーしてこれを捨てる際にも、その秘密にすべき事項を削除したい。
【0003】
重要書類の内容が外部に漏れ出ないようにするには、一般的には「シュレッダー」と言われる専用機械を導入すればよいが、全ての書類等がシュレッダーに掛けなければならない訳でもなく、また、各家庭にシュレッダーを置くことも憚れることではある。
【0004】
そこで、特許文献1に示されたような「ハサミ」が提案されたのである。この特許文献1の「ハサミ」は、「封筒や名刺などを廃棄する際、住所や氏名の個人情報の部分などを判読困難にするため、ハサミで切り刻む際、判読不明の細さに切り刻むためには、従来のハサミでは、通常、二回以上の動作が必要であり、一定の極細い細さで切るには、慎重にハサミを入れる必要があった」ことを解決するために提案されたものである。
【特許文献1】特開2006−346408号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載された「ハサミ」は、図9の(a)に示すように、「二枚の小刃を持つ一枚の刃と、その刃とその外側の二枚の刃」で構成された構造を持つものであり、図9の(b)に示すよう切断が行えるものである。この図9の(b)に示してあるのは、当該ハサミにより1回の動作で切った名刺の例であるが、切られた細片が元の名刺にくっついたままになっていて、完全には切断されていない。
【0006】
要するに、この特許文献1のハサミでは、「短冊状」の切断は行えるが、「細片」にして、しかも元の被切断材から完全に分離したものとすることができないため、十分なシュレッダー機能を有しているとは思えない。
【0007】
そこで、本発明者等は、被切断材Wを十分な細片にすることのできるシュレッダーバサミ10とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0008】
すなわち、本発明の目的とするところは、被切断材Wを十分な細片にすることのできるシュレッダーバサミ10を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「被切断材Wを略長方形状の細片に分割するシュレッダーバサミ10であって、
一方の指掛けハンドル13aに3枚以上が一体化される連続切断刃11と、これらの連続切断刃11の間に収納されて、他方の指掛けハンドル13bに一体化される複数枚の細片刃12とを、擦り合い開閉されるように枢軸14によって連結し、
細片刃12については、切断刃部12aと落とし部12bとを交互に形成するとともに、細片刃12の間に位置する連続切断刃11の先端部にのみ、切断刃部12aが両側になる位置に補助落とし部11aを形成したことを特徴とするシュレッダーバサミ10」
である。
【0010】
すなわち、本発明に係るシュレッダーバサミ10は、葉書や封筒等の被切断材Wを、細片と、細い短冊状物とに細かく切断することのできるものである。例えば、被切断材Wとして「葉書」を例に採って、この細片化の様子を、構成との関係で説明すると、次の通りである。
【0011】
まず、通常のハサミ、つまり刃が2枚のハサミで「葉書」を1回切断すると、ただの直線状の切れ目が1本葉書に入るだけである。ところが、本発明のシュレッダーバサミ10では、連続切断刃11が3本以上あって、これらの間に細片刃12がそれぞれ入っているから、通常のハサミで切ったときの切れ目に該当する線は、図6に示すように、少なくとも「4本」入るのである。つまり、本発明に係るシュレッダーバサミ10で被切断材Wを一回切断すると、図6に示すように、中央の細い短冊状物が一本と、その両側に細片の列が二本形成される。
【0012】
ここで、もし各細片刃12が切断刃部12aや落とし部12bを有さない連続切断刃11と同様な形状のものであれば、図6中に示した4本の縦の切れ目しかできない、つまり3本の短冊状物ができることになるのであるが、細片刃12には切断刃部12aや落とし部12bが交互に形成してあるから、中央の一本の短冊状物の両側に細片の列が二本形成されるのである。
【0013】
細片の列が二本形成されるのは、次の理由によるが、これを図5を参照して説明する。まず、図5の右端にある切断刃部12aの右角に被切断材Wが来る間に、当該細片刃12の両側にある各連続切断刃11によって「切れ目」が入れられている。その各切れ目の先端が図5の右端にある切断刃部12aの右角に被切断材Wが来ると、この右角によって、図6中に示した破り目が強制的に形成される。つまり、このとき、二本の切れ目の間の葉書には、図5中の切断位置L1にて示す位置で、図6で示した切れ目に直行する方向の破り目が形成されて、先の(ハサミによる切断が進行する先)部分から破り取られるのである。
【0014】
切断が進行して、図5中の切断位置L1から切断位置L2にて示す間では、被切断材Wは通常のハサミのように切断がなされるが、切断位置L2の位置になると落とし部12bになるから、切断量は急に少なくなり、これまでにできた細片の部分は切断刃部12aの外面に押されて両連続切断刃11間に押し込まれる。ここで、各細片刃12の切断刃部12aが重要な働きをする。各切断刃部12aが、図4及び図5に示すように、その端面が四角形の平面となっているから、これまでにできた細片の部分は、この切断刃部12aの四角形の外面によって確実に両連続切断刃11間に押し込まれるのである。
【0015】
次に、切断位置が切断位置L3の位置に来ると、図5の右から2番目の切断刃部12aの右角の被切断材Wが当たり、ここで最初の切断刃部12aと同様な破り目が形成されようとする。さらに、シュレッダーバサミ10による切断が進行すると、切断位置L2と切断位置L3との間で開口していた落とし部12bの底部が被切断材Wに当接し始めるから底部線での切断がなされ始め、この切断が終了したとき、一つの細片が被切断材Wから切り離されることになるのである。この細片は、実際上は、両側の連続切断刃11の間を押し出されていき、各切断刃部12aが図2に示すように、各連続切断刃11の間から突出したときシュレッダーバサミ10から排出されるのである。
【0016】
各細片の列については、以上の通りであるが、図6に示した中央の短冊状物については、通常であれば、従来例を示す図9の(b)に示したように、被切断材Wに繋がったままとなる。ところが、本発明のシュレッダーバサミ10では、図1〜図3、図7及び図8に示すように、細片刃12の間に位置する連続切断刃11の先端部にのみ、切断刃部12aが両側になる位置に補助落とし部11aが形成してあるから、この補助落とし部11aによって当該短冊状物は被切断材Wから破り取られる。
【0017】
短冊状物が被切断材Wから破り取られる様子をさらに詳しく説明すると、図7には、各連続切断刃11の先端部を、各細片刃12が対向する側から見た斜視図が示してあるが、図示中央の連続切断刃11の先端部にのみ補助落とし部11aが形成してある。この補助落とし部11aは、図1及び図2に示す位置にあって、図8に示すように、細片刃12側の切断刃部12aが左右に位置するように配置してある。この連続切断刃11側の補助落とし部11aは、細片刃12側の落とし部12bと同様な働きをし、この補助落とし部11aの先にある部分は細片刃12側の切断刃部12aの役割を果たすことになるものである。
【0018】
このため、図6の中央に示した短冊状物の先が、中央の連続切断刃11側の補助落とし部11aに位置することになると、左右の切断刃部12aの側面が当該補助落とし部11aの側面線(順に奥まっていく)に沿って擦れ合うことによって、短冊状物の先を更に伸ばすような切断を行う。換言すれば、順次出来上がっていく短冊状物の先は補助落とし部11a内に落とし込まれるようになる一方、補助落とし部11aの先に位置する端線によって落とし込まれないように保持されるから、結果的に、短冊状物の先には図6に示したような破れ線が形成されて、被切断材Wから引き離されるのである。
【0019】
以上のような当該シュレッダーバサミ10による一回の切断作業が行われれば、図6に示したような、多数の細片と一本の短冊状物が形成され、被切断材Wの細片化が完了するのである。この一回の切断作業によって、葉書である被切断材Wの住所及び氏名箇所の細断はほぼ完了するが、まだ見える文字があるのであれば、そこをターゲットにして再び当該シュレッダーバサミ10によるハサミ入れを行えばよい。
【0020】
従って、本発明に係るシュレッダーバサミ10は、被切断材Wを十分な細片にすることができるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、
「被切断材Wを略長方形状の細片に分割するシュレッダーバサミ10であって、
一方の指掛けハンドル13aに3枚以上が一体化される連続切断刃11と、これらの連続切断刃11の間に収納されて、他方の指掛けハンドル13bに一体化される複数枚の細片刃12とを、擦り合い開閉されるように枢軸14によって連結し、
細片刃12については、切断刃部12aと落とし部12bとを交互に形成するとともに、細片刃12の間に位置する連続切断刃11の先端部にのみ、切断刃部12aが両側になる位置に補助落とし部11aを形成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、被切断材Wを十分な細片にすることのできるシュレッダーバサミ10を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、上記のように構成した本発明を、図面に示した最良の形態であるシュレッダーバサミ10について説明すると、図1には、本発明に係るシュレッダーバサミ10の、連続切断刃11及び細片刃12を開いた状態の側面図が示してある。このシュレッダーバサミ10は、図1〜図4に示したように、一方の指掛けハンドル13aに3枚以上が一体化される連続切断刃11と、これらの連続切断刃11の間に収納されて、他方の指掛けハンドル13bに一体化される複数枚の細片刃12とを、擦り合い開閉されるように枢軸14によって連結したものである。
【0023】
各連続切断刃11は、通常のハサミを構成しているものとほぼ同様なものであるが、その側面形状が同じ3枚のものを、指掛けハンドル13aと一体的に連結したものであり、各連続切断刃11間には、細片刃12が擦り合いながら移動できる空間が形成してある。細片刃12は、本最良形態の場合、3枚の連続切断刃11によって形成されている上記空間内に入るものであるから、同じ形状の2枚が採用されるものであり、これら2枚の細片刃12は、指掛けハンドル13bに対して一体化してある。
【0024】
勿論、連続切断刃11と細片刃12とは、図1〜図4に示したように、枢軸14によって開閉可能に連結してあり、これらの連続切断刃11と細片刃12とは互いに擦り合いながら切断が行えるようにしてある。
【0025】
連続切断刃11を3枚、これらの隙間に入る細片刃12を2枚としたのは、被切断材Wに図6に示したような一本の短冊状物と、その両側に多数の細片の列を形成したいからである。従って、細片の列の外隣に短冊状物を作りたい場合には、連続切断刃11または細片刃12を設けるようにすればよいが、細片刃12は、後述するように、切断刃部12aと落とし部12bとを交互に形成したものであって側面がギザギザになっていて手触りが悪いため、側面が滑らかな連続切断刃11と組み合わせて使用するのがよい。
【0026】
3本の連続切断刃11の内の中央に位置するものについては、図1、図3、図7、及び図8に示したように、その先端部分に補助落とし部11aが形成してある。この補助落とし部11aは、図6に示した中央の短冊状物を被切断材Wから切り離すのに必要なものであり、後述する細片刃12側の落とし部12bと同様な機能を、落とし部12bとは反対側から発揮するものである。
【0027】
細片刃12は、図1、図2、図5、及び図8に示したように、その補助落とし部11aに対向する側に、切断刃部12aと落とし部12bとを交互に形成したものである。
【0028】
各切断刃部12aは、図1等に示したように、側面形状が四角形であり、端面も四角形状であるが、このようにしたのは、当該切断刃部12aの端面によって被切断材Wの切断部分を連続切断刃11間に確実に押し込めるようにするためである。
【0029】
一方、細片刃12の各落とし部12bは、被切断材Wの細片化された部分がこの中に入って、先の切断刃部12aの後縁によって破り目を形成し易くするものである。従って、形成された細片は、この落とし部12bの底面の面積と、切断刃部12aの端面の面積とを合わせた面積のものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るシュレッダーバサミを開いた状態の側面図である。
【図2】同シュレッダーバサミの閉じた状態の側面図である。
【図3】同シュレッダーバサミの平面図である。
【図4】同シュレッダーバサミの底面図である。
【図5】細片刃12における切断刃部12aと落とし部12bの、被切断材との位置関係を示す部分拡大側面図である。
【図6】当該シュレッダーバサミを使用して1回の切断を行ったときに被切断材Wにできる細片と短冊状物の状態を示す部分拡大平面図である。
【図7】3本の連続切断刃の先端部分を示す部分拡大斜視図である。
【図8】連続切断刃の先端に形成した補助落とし部と細片刃との関係を示す部分側面図である。
【図9】従来技術に係るシュレッダーバサミを示すもので、(a)はその斜視図、(b)はこのシュレッダーバサミによって出来た短冊状物の様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 シュレッダーバサミ
11 連続切断刃
11a 補助落とし部
12 細片刃
12a 切断刃部
12b 落とし部
13a 一方の指掛けハンドル
13b 他方の指掛けハンドル
14 枢軸
L1 切断位置
L2 切断位置
L3 切断位置
W 被切断材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材を略長方形状の細片に分割するシュレッダーバサミであって、
一方の指掛けハンドルに3枚以上が一体化される連続切断刃と、これらの連続切断刃の間に収納されて、他方の指掛けハンドルに一体化される複数枚の細片刃とを、擦り合い開閉されるようにの枢軸によって連結し、
前記細片刃については、切断刃部と落とし部とを交互に形成するとともに、前記細片刃の間に位置する前記連続切断刃の先端部にのみ、前記切断刃部が両側になる位置に補助落とし部を形成したことを特徴とするシュレッダーバサミ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−206746(P2008−206746A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46614(P2007−46614)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(397044902)ニッケン刃物株式会社 (5)
【Fターム(参考)】