説明

シュードモナス外毒素ACD4+T細胞エピトープ

本発明は、PE CD4+ T細胞エピトープ、ならびに、親PEと比較して、低下した免疫原性応答を示す新規変異体を提供する。本発明は、新規PE変異体をコードするDNA分子、新規PE変異体をコードするDNAを含む宿主細胞、ならびにPEを低免疫原性にするための方法をさらに提供する。さらに、本発明は、野生型PEより低免疫原性の前記PE変異体を含む種々の組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュードモナス外毒素A (PE) CD4+ T細胞エピトープ、ならびに、親シュードモナス外毒素Aと比較して、低下した免疫原性応答を示す新規変異体を提供する。本発明は、新規シュードモナス外毒素A (PE)変異体をコードするDNA分子、および新規PE変異体をコードするDNAを含む宿主細胞、ならびに低免疫原性のシュードモナス外毒素Aを作製するための方法をさらに提供する。さらに、本発明は、野生型シュードモナス外毒素Aより低免疫原性の前記シュードモナス外毒素A変異体を含む種々の組成物を提供する。いくつかの具体的実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して特定および/または特徴付けられる、低下した免疫原性を有するシュードモナス外毒素A変異体を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
シュードモナス外毒素Aは、緑膿菌(P. aeruginosa)によって生産される酵素である。それはいくつかの非ヒト動物にとって致死であり、ヒト疾患においてある役割を果たし得る。外毒素A産生シュードモナス株を有する菌血症の患者が、非外毒素A産生生物を有する患者より高い死亡率を有するからである。該毒素は、613アミノ酸からなる単一ポリペプチド鎖である。該毒素の結晶学的研究および突然変異解析により、特有の機能を有する3ドメインからなることが示されている(例えばChaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:308-312 [1990]; およびPastan et al., Meth. Mol. Biol., 248:503-518 [2003]を参照のこと)。アミノ末端ドメインの細胞受容体結合性ドメイン(ドメインI)、真ん中のトランスロケーションドメイン(ドメインII)、およびカルボキシ末端の活性ドメイン(ドメインIII)が存在する。ドメインIIIは、ADP-リボシル化を触媒し、伸長因子2を不活性化することによって働く。これにより、細胞内のタンパク質合成が阻害され、細胞死に至る。
【非特許文献1】Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:308-312 [1990]
【非特許文献2】Pastan et al., Meth. Mol. Biol., 248:503-518 [2003]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近、組換え免疫毒素におけるPEの用途が見出された。ほとんどの場合、これらのキメラタンパク質は、PEの一部分に融合されているモノクローナル抗体のFv部分からなる。該Fvは該毒素の細胞結合性ドメインに取って代わり、標的抗原を発現する癌細胞へ該毒素を指向するのに役立つ。標準的化学療法に耐性の細胞を死滅させるそれらの効力および能力のために、組換え免疫毒素は非常に魅力的な癌処置用物質である。実際、これらの複雑な分子は癌治療試験で効果を示している。しかし、すべてのタンパク質ベースの薬物療法と同様に、該免疫毒素自体の免疫原性についての懸念が存在する。ゆえに、当技術分野において、低下した免疫原性を有するPEを作製および使用する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シュードモナス外毒素A (PE) CD4+ T細胞エピトープ、ならびに、親シュードモナス外毒素Aと比較して、低下した免疫原性応答を示す新規変異体を提供する。本発明は、新規PE変異体をコードするDNA分子、および新規PE変異体をコードするDNAを含む宿主細胞、ならびにPEを低免疫原性にするための方法をさらに提供する。さらに、本発明は、野生型PEより低免疫原性の前記PE変異体を含む種々の組成物を提供する。いくつかの具体的実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して特定および/または特徴付けられる、低下した免疫原性を有するPE変異体を提供する。
【0005】
本発明は、PEの少なくとも1つのT細胞エピトープを特定するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する: (a)単一のヒト血液供給源から、樹状細胞の溶液およびナイーブCD4+および/またはCD8+ T細胞の溶液を取得するステップ; (b)樹状細胞を分化させて、分化した樹状細胞の溶液を生産するステップ; (c)分化した樹状細胞およびナイーブCD4+および/またはCD8+ T細胞の溶液をPEのペプチド断片と混合するステップ; および(d)ステップ(c)のT細胞の増殖を測定するステップ。いくつかの別の実施形態では、該PEは、配列番号1に記載の配列の少なくとも一部分を含む。本発明は、上記方法を使用して特定されるエピトープをさらに提供する。
【0006】
本発明はまた、PEの免疫原性を低減するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する: (a) (i)インビトロで少なくとも1つのサイトカインに曝露することによって分化させた付着性単球由来の樹状細胞を、T細胞エピトープを含む少なくとも1つのペプチドと接触させ; かつ(ii) 樹状細胞およびペプチドをナイーブT細胞と接触させる(該ナイーブT細胞は該付着性単球由来の樹状細胞と同一供給源から取得されたものであり、それによって該T細胞は該ペプチドに応答して増殖する)によって、PE中の少なくとも1つのT細胞エピトープを特定するステップ; および(b) T細胞エピトープを中和するためにPEを改変して変異体PEを生産し、該変異体PEが、ナイーブT細胞の増殖をベースラインより低レベルに、またはベースラインと実質的に等しいレベルに誘発するステップ。いくつかの別の実施形態では、該PEは、配列番号1に記載の配列の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、低下した免疫原性を有するPEを生産するための上記方法を使用して生産されたPE変異体を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、以下のステップによってPEのエピトープを改変する:(a) T細胞エピトープのアミノ酸配列をPEのホモログ由来の類似の配列で置換(該置換はT細胞エピトープの主要な三次構造の属性を実質的に模倣する)するステップ。いくつかの好ましい実施形態では、配列番号2、3、4、5、および6からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープを改変することによってPEを改変する。いくつかの実施形態では、該エピトープの少なくとも1つに対応する残基のアミノ酸配列を置換することによって該エピトープを改変し、他の実施形態では、該エピトープの少なくとも1つに対応する残基のアミノ酸配列を欠失させることによって該エピトープを改変し、さらに別の実施形態では、該エピトープの少なくとも1つに対して、あるアミノ酸を付加することによって該エピトープを改変する。本発明は、上記方法を使用して生産されるPEをさらに提供する。
【0008】
本発明はまた、アミノ酸配列を含む少なくとも1つのエピトープ中に少なくとも1つの改変を含む変異体PEを提供する。いくつかの特に好ましい実施形態では、変異体PEによって引き起こされる免疫原性応答は、野生型PEによって引き起こされる免疫原性応答より低レベルである。しかし、いくつかの他の実施形態では、該変異体によって引き起こされる免疫原性応答は、野生型PEによって引き起こされる免疫原性応答より高レベルである。
【0009】
本発明は、変異体PEをコードする核酸配列を含む組成物、ならびに、該核酸を含む発現ベクター、および該発現ベクターで形質転換された宿主細胞をさらに提供する。
【0010】
本発明は、さらになお、医薬および消費者関連製品を提供し、それには、非限定的に、本発明の変異体PEを含む組成物等が含まれる。いくつかの実施形態では、異常な細胞(例えば癌細胞)を処置するために使用される組成物等に該PE変異体の用途を見出せる。しかし、抗体および/または抗体成分の使用に依存しない標的化された治療方法において本発明の用途を見出せることも意図される。実際、本発明は、種々の用途、設定、および組成物における使用に好適な変異体PEを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の説明
本発明は、PE CD4+ T細胞エピトープ、ならびに、親PEと比較して、低下した免疫原性応答を示す新規変異体を提供する。本発明は、新規PE変異体をコードするDNA分子、および新規PE変異体をコードするDNAを含む宿主細胞、ならびにPEを低免疫原性にするための方法をさらに提供する。さらに、本発明は、野生型PEより低免疫原性の前記PE変異体を含む種々の組成物を提供する。いくつかの具体的実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して特定および/または特徴付けられる、低下した免疫原性を有するPEペプチドおよび変異体を提供する。
【0012】
「PE38」外毒素はシュードモナス外毒素Aの組換え変異体である(例えばRoscoe et al., Eur. J. Immunol., 27:1459-1468 [1997]を参照のこと)。それは、該分子の細胞結合性ドメインを除去することによってその本来の毒性を低減するように改変されている。このトランケート型毒素分子は、細胞を死滅させる点で非常に有効であるが、それは該分子が内部移行された場合のみである。インタクトの抗体または抗体断片にカップリングされたPE38毒素を含有する免疫毒素構築物が作製されている。該抗体または抗体断片は該毒素に特異性を付与し、内部移行を受ける細胞表面構造への結合によって、該毒素が該細胞内に入り、それによって該細胞を死滅させることができる機構が提供される。このストラテジーは、血液学的悪性腫瘍、例えば有毛細胞白血病(HCL)に対して極めて有効である(例えばKreitman et al., J. Clin. Oncol., 18:1622-1636 [2000]を参照のこと)。
【0013】
HCLの場合の成功と対照的に、免疫毒素ストラテジーは他の形式の癌を処置する際の有効性が低かった。例えば、固形腫瘍を保有する患者に関して、該毒素分子に対する重大な中和性免疫応答がPE38免疫毒素構築物の効力を制限することが見出された(例えばKreitman et al., J. Clin. Oncol., 上記を参照のこと)。本発明が任意の具体的機構に限定されることを意図しないが、血液学的腫瘍と固形腫瘍とで有効性に差異が存在する理由として可能性が高いのはHCLの標的がB細胞抗原であることであると考えられる。ゆえに、該免疫毒素は処置患者を免疫抑制したが、一方、固形腫瘍を有する患者は大部分が免疫的に無傷のまま(immuno-intact)であった。本発明は、両血液学的癌患者において、および他の疾患領域中へ、免疫毒素の用途を拡張するための手段を提供する。これらの用途において、低い免疫原性型の該毒素の用途を見出せることが考えられるからである。
【0014】
本明細書中で詳細に説明するように、タンパク質毒素PE38のエピトープマップは下記I-MUNE (登録商標)アッセイ系を使用して作製された。1つのメジャーエピトープおよび2つのマイナーエピトープが特定された。データセット内の総合のバックグラウンドレートは、ドナー集団における該タンパク質に対する免疫学的前曝露を示す。また、I-MUNE (登録商標)アッセイデータドナーをHLA-DRおよびDQに関してHLA型判定した。特定のHLAクラスII対立遺伝子の存在とすべての3つの顕著な領域に対する応答の間の関連性をさらに評価した。
【0015】
定義
本明細書中で特に定義しない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2d Ed., John Wiley and Sons, NY (1994); およびHale and Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明で使用される多数の用語についての一般的辞書を当業者に供給している。本明細書中に記載の方法および材料と同様または等価の任意の方法および材料は本発明の実施にその用途を見出せるが、好ましい方法および材料は本明細書中に記載されるものである。したがって、以下で定義される用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に記載される。また、本明細書中で使用される単数形には、文脈で明らかにそうでないと指定されない限り、複数への言及が含まれる。
【0016】
本明細書中で使用される「PE」とは、一般にシュードモナス外毒素Aとして知られている酵素を表す。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のPEはネイティブ酵素であり、いくつかの他の好ましい実施形態では、本発明のPEは組換え酵素である。いくつかの別の好ましい実施形態では、PEは、66 kDaシュードモナス外毒素PEの38 kDa誘導体である「PE38」であり、該誘導体では、PEの細胞結合性ドメイン(アミノ酸1-252)およびアミノ酸365-380が欠失している(例えばRoscoe et al., 上記を参照のこと)。いくつかのさらなる好ましい実施形態では、本発明のPEを改変して、該PEがネイティブPEより低い免疫原性反応しか刺激しないようにする。
【0017】
いくつかのPE突然変異体がWO2005/052006およびBang et al. Clinical Cancer Research 1545 Vol. 11, 1545-1550, February 15, 2005に開示されている。そのような突然変異体、例えばPEが、成熟PEの490位(GenBankエントリーAAB59097 (11 February 2002)の505位(25アミノ酸リーダー配列を含むため)) (本明細書中の配列番号1のPE38の224位である)に対応する位置にアルギニンの代わりにグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシンを有する突然変異体、特にアラニンが490位のアルギニンと置換している突然変異体(R490A)は本発明に従属している。本発明は、野生型であろうと突然変異体であろうと、任意の親PEの改変を可能にする。ただし、異なる突然変異が、PE活性、毒性または他の特性に関して、種々の潜在的に独立した影響を有し得ることに留意されたい。例えば、WO2005/052006では、R490A突然変異はPEの毒性を2倍にすることができ、この突然変異は、容易に操作して、当技術分野で以前に開発された種々の形態の改変型PE(例えばPE40、PE38、PE37、PE35、PE4E、PE38QQR、およびPE38KDEL)内にその効力および活性を増加させるために導入することができる。このことは、所望の臨床結果を生じさせるために必要とされるPEベースの免疫毒素の用量の低減を可能にし、それは望ましくない副作用の可能性を低減するものと予測される。逆に、同用量のPEベースの免疫毒素を投与して、より強力な効果を得ることができる。本発明は、PE、例えばPE38を改変して、異なる影響、すなわち低下した免疫原性応答を達成することに関し、野生型PEまたは任意の他の親PE分子、例えば490位または対応する残基に改変を有するPE、例えば224位に改変を有する本明細書中の配列番号1のPE38に適用することができる。
【0018】
本明細書中で使用される用語「組換えオリゴヌクレオチド」とは、分子生物学的操作を使用して作製されるオリゴヌクレオチドを表す。該操作には、非限定的に、ポリヌクレオチド配列の制限酵素消化によって生じた2以上のオリゴヌクレオチド配列のライゲーション、オリゴヌクレオチドの合成(例えばプライマーまたはオリゴヌクレオチドの合成)等が含まれる。
【0019】
本明細書中で使用される「組換えPE」とは、PEをコードするDNA配列が、天然に存在するアミノ酸配列中に1以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入をコードする変異体(または突然変異体) DNA配列を生じるように改変されているPEを表す。そのような改変を生じさせるための好適な方法は当業者に周知である。
【0020】
本明細書中で使用される用語「組換えDNA分子」とは、分子生物学的技術を用いてともに連結されているDNAのセグメントからなるDNA分子を表す。
【0021】
本明細書中で使用される用語「酵素による変換」とは、基質または中間産物を酵素と接触させることによる、炭素基質から中間産物への改変または中間産物から最終産物への改変を表す。いくつかの実施形態では、基質または中間産物を適切な酵素に直接曝露することによって接触を施す。他の実施形態では、接触は、該酵素を発現および/もしくは排出し、ならびに/または所望の基質および/または中間産物を代謝して、それぞれ所望の中間産物および/または最終産物にする生物に、基質または中間産物を曝露することを含む。
【0022】
本明細書中で使用される「野生型」および「ネイティブ」タンパク質は天然に見出されるタンパク質である。用語「野生型配列」および「野生型遺伝子」は本明細書中で交換可能に使用され、ネイティブであるか、宿主細胞中に天然に存在する配列を表す。いくつかの実施形態では、野生型配列とは、タンパク質工学プロジェクトの出発点である目的の配列を表す。天然に存在する(すなわち前駆体)タンパク質をコードする遺伝子は当業者に公知の一般的方法により得ることができる。該方法は、概して、目的タンパク質の領域をコードする推定配列を有する標識プローブを合成するステップ、該タンパク質を発現している生物からゲノムライブラリーを調製するステップ、およびプローブに対するハイブリダイゼーションによって、ライブラリーを目的の遺伝子についてスクリーニングするステップを含む。そしてポジティブにハイブリダイズするクローンをマップし、配列決定する。
【0023】
本明細書中で使用される用語「サンプル」は、その最も広義で使用される。しかし、好ましい実施形態では、該用語は、分析、特定、改変、および/または他のペプチドとの比較の対象であるペプチド(すなわち、ペプセット(pepset)内の、目的のタンパク質の配列を含むペプチド)を含むサンプル(例えばアリコート)に関して使用される。ゆえに、ほとんどの場合、この用語は、目的のタンパク質またはペプチドを含む材料に関して使用される。
【0024】
本明細書中で使用される「刺激指数(Stimulation Index)」(SI)とは、コントロールと比較された、ペプチドのT細胞増殖応答の尺度を表す。SIは、ペプチドを含有するCD4+ T細胞および樹状細胞培養の検査において取得された平均CPM (カウント/分)を、樹状細胞およびCD4+ T細胞を含有するが、該ペプチドを含まないコントロール培養の平均CPMで除算することによって算出される。この値は各ドナーおよび各ペプチドに関して算出される。陽性応答を示すために約1.5〜4.5の間のSI値を使用してよいが、陽性応答を示すための好ましいSI値は2.5〜3.5 (両端を含む)の範囲であり、好ましくは2.7〜3.2 (両端を含む)の範囲であり、より好ましくは2.9〜3.1 (両端を含む)の範囲である。本明細書中で記載される最も好ましい実施形態では2.95のSI値を使用する。
【0025】
本明細書中で使用される用語「データセット」とは、各タンパク質に関するペプチドセットおよびドナーセットに関してまとめられているデータを表す。
【0026】
本明細書中で使用される用語「ペプセット」とは、各試験タンパク質(すなわち目的のタンパク質)から取得されたペプチドセットを表す。ペプセット(すなわち「ペプチドセット」)中のこれらのペプチドを各ドナー由来の細胞で試験する。
【0027】
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」とは、サンプルから混入物を除去することを表す。例えば、溶液または調製物内のPEでない混入タンパク質および他の化合物を除去することによってPEを精製する。いくつかの実施形態では、組換えPEを細菌宿主細胞中で発現させ、他の宿主細胞構成要素を除去することによってこれらの組換えPEを精製する; それによって該サンプル中の組換えPEポリペプチドの割合が増加する。
【0028】
本明細書中で使用される「バックグラウンドレベル」および「バックグラウンド応答」とは、任意の試験タンパク質に関するデータセット中の任意の特定ペプチドに対するレスポンダーの平均の割合を表す。この値は、すべての被験ドナーに関してまとめられた該セット中のすべてのペプチドに関するレスポンダーの割合を平均することによって決定される。例として、3%のバックグラウンド応答であれば、100ドナーに関して試験された場合に、データセット中の任意のペプチドに関して、平均で、3つの陽性(2.95を超えるSI)応答が存在することを示す。
【0029】
本明細書中で使用される「抗原提示細胞」(「APC」)とは、その表面に抗原を提示し、T細胞の表面上の受容体によって該抗原が認識可能であるようにする免疫系の細胞を表す。抗原提示細胞には、非限定的に、樹状細胞、指状かん入細胞、活性化B細胞およびマクロファージが含まれる。
【0030】
用語「リンパ性(lymphoid)」とは、細胞系統または細胞に関して使用される場合、該細胞系統または細胞がリンパ系に由来することを意味し、BおよびTリンパ球の両系統の細胞が含まれる。
【0031】
本明細書中で使用される用語「Tリンパ球」および「T細胞」は、T細胞前駆体(T細胞受容体遺伝子を再編成していないThy1陽性細胞を含む)から成熟T細胞(すなわちCD4またはCD8のいずれかに関してシングルポジティブの表面TCR陽性細胞)までのTリンパ球系統内の任意の細胞を包含する。
【0032】
本明細書中で使用される用語「Bリンパ球」および「B細胞」は、B細胞前駆体、例えばプレB細胞(Ig重鎖遺伝子の再編成を開始しているB220+細胞)から成熟B細胞および形質細胞までのB細胞系統内の任意の細胞を包含する。
【0033】
本明細書中で使用される「CD4+ T細胞」および「CD4 T細胞」はヘルパーT細胞を表し、「CD8+ T細胞」および「CD8 T細胞」は細胞障害性T細胞を表す。
【0034】
本明細書中で使用される「B細胞増殖」とは、抗原の有無にかかわらず、B細胞と抗原提示細胞のインキュベーション中に生産されるB細胞の数を表す。
【0035】
本明細書中で使用される「ベースラインB細胞増殖」とは、ペプチドまたはタンパク質抗原の不存在下で抗原提示細胞への曝露に応じて個体中で通常観察されるB細胞増殖の程度を表す。本明細書中の目的では、ベースラインB細胞増殖レベルは、サンプルあたりで見て、各個体に関して、抗原の不存在下でのB細胞の増殖として決定される。
【0036】
本明細書中で使用される「B細胞エピトープ」とは、該抗原を含むペプチド(すなわち免疫原)に対する免疫原性応答においてB細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴を表す。
【0037】
本明細書中で使用される「改変B細胞エピトープ」とは、前駆体ペプチドまたは目的のペプチドと異なり、目的の該変異体ペプチドがヒトまたは別の動物において異なる(すなわち改変された)免疫原性応答を引き起こすようになっているエピトープアミノ酸配列を表す。改変された免疫原性応答には、改変された免疫原性および/またはアレルゲン性(すなわち増加または減少した全体的な免疫原性応答)が含まれることが考慮される。いくつかの実施形態では、改変B細胞エピトープは、特定されたエピトープ内の残基から選択されるアミノ酸の置換および/または欠失を含む。別の実施形態では、改変B細胞エピトープはエピトープ内の1以上の残基の付加を含む。
【0038】
本明細書中で使用される「T細胞エピトープ」は、該抗原を含むペプチドに対する免疫応答の開始中にT細胞受容体によって認識されるペプチドまたはタンパク質の特徴を意味する。T細胞によるT細胞エピトープの認識は、概して、T細胞が、抗原提示細胞上で発現されるクラスIまたはクラスII主要組織適合複合体(MHC)分子に結合している抗原のペプチド断片を認識する機構を介すると考えられる(例えばMoeller (ed.), Immunol. Rev., 98:187 [1987]を参照のこと)。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるように特定されたエピトープまたはエピトープ断片は、エピトープまたは断片を拘束および提示可能なMHC分子を有する抗原提示細胞の検出にその用途を見出せる。いくつかの実施形態では、エピトープ/エピトープ断片は、目的のエピトープ/エピトープ断片を拘束および/または提示する細胞の特定を容易にする検出可能な標識(すなわちマーカー)をさらに含む。
【0039】
本明細書中で使用される「T細胞増殖」とは、抗原の有無にかかわらず、T細胞と抗原提示細胞のインキュベーション中に生産されるT細胞の数を表す。
【0040】
本明細書中で使用される「ベースラインT細胞増殖」とは、ペプチドまたはタンパク質抗原の不存在下で抗原提示細胞への曝露に応じて個体中で通常観察されるT細胞増殖の程度を表す。本明細書中の目的では、ベースラインT細胞増殖レベルは、サンプルあたりで見て、各個体に関して、抗原の不存在下での抗原提示細胞に応答したT細胞の増殖として決定される。
【0041】
本明細書中で使用される「改変免疫原性応答」とは、増加または低下した免疫原性応答を表す。タンパク質およびペプチドは、それらが誘起するT細胞および/またはB細胞応答が、親(例えば前駆体)タンパク質またはペプチド(例えば目的のタンパク質)によって誘起される応答より高レベルである場合に「増加した免疫原性応答」を示す。この高い応答の正味の結果は、変異体タンパク質またはペプチドに指向される増加した抗体応答である。タンパク質およびペプチドは、それらが誘起するT細胞および/またはB細胞応答が、親(例えば前駆体)タンパク質またはペプチドによって誘起される応答より低レベルである場合に「低下した免疫原性応答」を示す。好ましい実施形態では、この低い応答の正味の結果は、変異体タンパク質またはペプチドに対して向けられる低下した抗体応答である。いくつかの好ましい実施形態では、該親タンパク質は野生型タンパク質またはペプチドである。
【0042】
本明細書中で使用される「免疫原性のインビボ低下」とは、生存生物内で、少なくとも部分的に行われる(例えば生存動物の使用を必要とする)アッセイによって決定される、免疫原性応答における減少を表す。典型的な「インビボ」アッセイには、マウスモデルにおける改変免疫原性応答の決定が含まれる。
【0043】
本明細書中で使用される「免疫原性のインビトロ低下」とは、生存生物の外側の人工環境で行われる(すなわち生存動物の使用を必要としない)アッセイによって決定される、免疫原性応答における減少を表す。典型的なインビトロアッセイには、目的のペプチドに対するヒト末梢血単核細胞による増殖応答の検査が含まれる。
【0044】
本明細書中で使用される用語「有効なエピトープ(significant epitope)」とは、被験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率の約3倍に等しいか、またはバックグラウンド応答率の約3倍より高レベルであるエピトープ(すなわちT細胞および/またはB細胞エピトープ)を表す。
【0045】
本明細書中で使用される用語「弱く有効なエピトープ(weakly significant epitope)」とは、被験ドナープール内の応答率がバックグラウンド応答率より高レベルであるが、バックグラウンドレートの約3倍より低レベルであるエピトープ(すなわちT細胞および/またはB細胞エピトープ)を表す。
【0046】
本明細書中で使用される「目的のタンパク質」とは、分析、特定および/または改変対象のタンパク質を表す。天然に存在するタンパク質、ならびに組換えタンパク質は、本発明においてその用途を見出せる。
【0047】
本明細書中で使用される「タンパク質」とは、アミノ酸から構成され、タンパク質として当業者に認識される任意の組成物を表す。用語「タンパク質」、「ペプチド」およびポリペプチドは本明細書中で交換可能に使用される。ペプチドがタンパク質の一部分である場合、当業者は文脈内での該用語の使用を理解する。用語「タンパク質」は、成熟型のタンパク質、ならびにプロおよびプレプロ型の関連タンパク質を包含する。プレプロ型のタンパク質は、該タンパク質のアミノ末端に作動可能に連結されているプロ配列、および該プロ配列のアミノ末端に作動可能に連結されている「プレ」または「シグナル」配列を有する成熟型のタンパク質を含む。
【0048】
本発明の変異体には、成熟型のタンパク質変異体、ならびにプロおよびプレプロ型の前記タンパク質変異体が含まれる。プレプロ型は好ましい構築物であり、その理由は、該タンパク質変異体の発現、分泌および成熟を容易にするからである。
【0049】
本明細書中で使用される「プロ配列」とは、成熟型のタンパク質のN末端部分に結合しているアミノ酸の配列であって、除去されると、「成熟」型のタンパク質を生じる配列を表す。多数の酵素は翻訳プロ酵素産物として天然に見出され、翻訳後プロセシングの不存在下では、この形態で発現される。
【0050】
本明細書中で使用される「シグナル配列」および「プレ配列」とは、成熟またはプロ型のタンパク質の分泌に関与する、タンパク質のN末端部分またはプロタンパク質のN末端部分に結合しているアミノ酸の任意の配列を表す。このシグナル配列の定義は機能的なものであり、ネイティブ条件下でのタンパク質の分泌の実行に関与するタンパク質遺伝子のN末端部分によってコードされるすべてのアミノ酸配列が含まれることを意図する。本発明では、本明細書中に記載のタンパク質変異体の分泌を実行するためにそのような配列を利用する。
【0051】
本明細書中で使用される「プレプロ」型のタンパク質変異体は、該タンパク質のアミノ末端に作動可能に連結されているプロ配列および該プロ配列のアミノ末端に作動可能に連結されている「プレ」または「シグナル」配列を有する成熟型のタンパク質からなる。
【0052】
本明細書中で使用される機能的に類似のタンパク質は「関連タンパク質」であると考えられる。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質は異なる属および/または種に由来し、生物の分類間の差異を含む(例えば細菌タンパク質および真菌タンパク質)。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質は異なる属および/または種に由来し、生物の分類間の差異を含む。さらなる実施形態では、関連タンパク質は同一種から提供される。
【0053】
本明細書中で使用される用語「誘導体」とは、CおよびN末端の一端または両端に1以上のアミノ酸を付加、アミノ酸配列中の1または複数の異なる部位の1以上のアミノ酸を置換、および/またはタンパク質の一端または両端の、またはアミノ酸配列中の1以上の部位の1以上のアミノ酸を欠失させ、および/またはアミノ酸配列中の1以上の部位で1以上のアミノ酸を挿入することによって前駆体タンパク質から誘導されたタンパク質を表す。タンパク質誘導体の調製は、好ましくは、ネイティブタンパク質をコードするDNA配列を改変し、該DNA配列を好適な宿主に形質導入し、改変DNA配列を発現させて誘導体タンパク質を形成させることによって達成される。
【0054】
関連(および誘導体)タンパク質は「変異体タンパク質」を含む。好ましい実施形態では、変異体タンパク質は、少数のアミノ酸残基だけ、親タンパク質と異なり、かつ互いに異なる。異なるアミノ酸残基の数は、1以上の、好ましくは1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、またはそれ以上のアミノ酸残基であってよい。好ましい一実施形態では、変異体間で異なるアミノ酸の数は1〜10の範囲である。特に好ましい実施形態では、関連タンパク質および特に変異体タンパク質は、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を含む。さらに、本明細書中で使用される関連タンパク質または変異体タンパク質とは、別の関連タンパク質または親タンパク質と、重要な領域の数が異なるタンパク質を表す。例えば、いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、親タンパク質と異なる1、2、3、4、5、または10個の対応する重要な領域を有する。
【0055】
一実施形態では、変異体の重要な対応領域はバックグラウンドレベルの免疫原性応答しか引き起こさない。置換、挿入または欠失に関して特定されるいくつかの残基は保存残基であり、一方、他の残基はそうでない。非保存残基の場合、1以上のアミノ酸の置換は、天然に見出されるアミノ酸配列と一致しないアミノ酸配列を有する変異体を生じさせる置換に限定される。保存残基の場合、そのような置換は天然に存在する配列を生じない。
【0056】
いくつかの実施形態では、好ましくは、前駆体酵素のアミノ酸配列をコードする「前駆体DNA配列」に改変を施すが、該前駆体タンパク質の操作による改変でありうる。非保存残基の場合、1以上のアミノ酸の置換は、天然に見出されるアミノ酸配列と一致しないアミノ酸配列を有する変異体を生じさせる置換に限定される。保存残基の場合、そのような置換は天然に存在する配列を生じない。本発明によって提供される誘導体には、PEの特性を変化させる化学的改変がさらに含まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、変異体PEの特性は当業者に公知の方法によって決定される。典型的な特性には、非限定的に、熱安定性、アルカリ安定性、および特定のPE、種々の基質、緩衝液および/または製品製剤の安定性が含まれる。酵素安定性アッセイと組み合わせて、酵素活性を維持しつつ、増加または減少したアルカリまたは熱安定性を示す、ランダムな突然変異誘発によって取得される変異体PEを特定することができる。
【0058】
アルカリ安定性は公知の手順または本明細書中に記載の方法によって測定することができる。アルカリ安定性の実質的変化は、前駆体タンパク質と比較された場合に、突然変異体の酵素活性の半減期の少なくとも約5%以上の増加または減少(ほとんどの実施形態では、好ましくは増加である)によって立証される。
【0059】
熱安定性は公知の手順または本明細書中に記載の方法によって測定することができる。熱安定性の実質的変化は、前駆体タンパク質と比べて比較的高温かつ中性pHに曝露された場合に、突然変異体の触媒活性の半減期の少なくとも約5%以上の増加または減少(ほとんどの実施形態では、好ましくは増加である)によって立証される。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、PE遺伝子を適切な発現プラスミド中にライゲートする。そしてクローニングされたPE遺伝子を使用し、宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトして、PE遺伝子を発現させる。このプラスミドは、それがプラスミドの複製に必要な周知のエレメントを含有する場合に、宿主中で複製しできるか、または該プラスミドは宿主染色体に融合するように設計することができる。必要なエレメントは効率的な遺伝子発現のために提供される(例えば目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター)。いくつかの実施形態では、これらの必要なエレメントは、該遺伝子独自の相同プロモーター(それが認識される(すなわち宿主によって転写される)ならば)として、転写ターミネーター(真核宿主細胞用のポリアデニル化領域) (外因性であるか、またはPE遺伝子の内因性ターミネーター領域によって供給される)として供給される。いくつかの実施形態では、選択遺伝子、例えば抗菌剤含有培地中での成長によってプラスミド感染宿主細胞の継続培養による保持を可能にする抗生物質耐性遺伝子がさらに含まれる。
【0061】
以下のカセット突然変異誘発法を使用して、本発明のPE変異体の構築を容易にしてよいが、他の方法を使用してもよい。まず、PEをコードする天然に存在する遺伝子を取得し、全体、または部分的に配列決定する。そして、コードされるPE中の1以上のアミノ酸について突然変異(欠失、挿入または置換)を施すのに望ましい箇所について該配列を走査する。この箇所に隣接する配列を、発現時に種々の突然変異体をコードするオリゴヌクレオチドプールで該遺伝子の短いセグメントを置換するための制限部位の存在について調べる。そのような制限部位は、遺伝子セグメントの置換を容易にするために該タンパク質遺伝子内の特有の部位であることが好ましい。しかし、制限消化によって生じる遺伝子断片を適正な配列で再び組み立てることができる場合、PE遺伝子中にあまり豊富でない任意の好都合な制限部位を使用することができる。選択した箇所から好都合な距離(10〜15ヌクレオチド)内の位置に制限部位が存在しない場合、そのような部位は、最終構築物中でリーディングフレームも、コードされるアミノ酸も変化しないような様式で、該遺伝子中のヌクレオチドを置換することによって作製される。所望の配列に一致するようにその配列を変化させるための該遺伝子の突然変異は、一般的に公知の方法に従って、M13プライマー伸長によって達成される。好適なフランキング領域の位置を突き止め、かつ必要な変化を見積もって、2つの好都合な制限部位配列を見出すといった作業は、遺伝暗号の重複性、該遺伝子の制限酵素地図および多数の異なる制限酵素を用いて所定のとおりに行うことができる。留意すべきは、好都合なフランキング制限部位が利用可能であれば、上記方法は、ある部位を含有しないフランキング領域に関連してしか使用する必要がないことに留意する。
【0062】
天然に存在するDNAまたは合成DNAのクローニング後、突然変異される位置に隣接する制限部位を、同起源の制限酵素で消化し、複数の末端相補的オリゴヌクレオチドカセットを該遺伝子中にライゲートする。突然変異誘発はこの方法によって簡易化される。その理由は、同一の制限部位を有するようにすべてのオリゴヌクレオチドを合成することができ、かつ該制限部位を創出するための合成リンカーが必要でないからである。
【0063】
本明細書中で使用される「に対応する」とは、タンパク質またはペプチド中の列挙される位置の残基、またはタンパク質またはペプチド中の列挙される残基と類似、相同、または等価な残基を表す。
【0064】
本明細書中で使用される「対応領域」とは、概して、関連タンパク質または親タンパク質上の類似の位置を表す。
【0065】
用語「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」、および「をコードするDNA」とは、デオキシリボ核酸の鎖に沿うデオキシリボヌクレオチドの整列または配列を表す。これらのデオキシリボヌクレオチドの整列はポリペプチド(タンパク質)鎖に沿うアミノ酸の整列を決定する。ゆえにDNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0066】
本明細書中で使用される用語「類似の配列」とは、目的のタンパク質(すなわち典型的には目的の元のタンパク質)と類似の機能、三次構造、および/または保存残基を提供するタンパク質内の配列を表す。特に好ましい実施形態では、類似の配列は、エピトープ位置の、またはその付近の配列を含む。例えば、アルファヘリックスまたはベータシート構造を含有するエピトープ領域では、類似の配列中の置換アミノ酸は好ましくは同一の特定構造を維持する。該用語はまた、ヌクレオチド配列、ならびにアミノ酸配列を表す。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸が、エピトープ位置で、またはエピトープ付近で、目的のタンパク質中のアミノ酸と類似の機能、三次構造および/または保存残基を示すように類似の配列を開発する。ゆえに、エピトープ領域が例えばアルファヘリックスまたはベータシート構造を含有する場合、置換アミノ酸は、好ましくは、該特定構造を維持する。
【0067】
本明細書中で使用される「相同タンパク質」とは、目的のタンパク質(例えば別の供給源、例えば別のシュードモナス系統由来のPE)と類似の作用、構造、抗原性、および/または免疫原性応答を有するタンパク質(例えばPE)を表す。ホモログが必ずしも進化的に関連しているとはされない。ゆえに、該用語は、異なる種から取得される同一の機能的タンパク質を包含するものとする。いくつかの好ましい実施形態では、目的のタンパク質と類似の三次および/または一次構造を有するホモログを特定することが望ましい。目的のタンパク質中のエピトープを、該ホモログ由来の類似のセグメントで置換した場合、該変化による破壊が低減されるからである。ゆえに、ほとんどの場合、厳密に相同なタンパク質は最も望ましいエピトープ置換の供給源を提供する。あるいは、特定タンパク質のヒトアナログを考慮することが有益である。例えば、いくつかの実施形態では、あるPE中の特定のエピトープを別のPEまたは他の種のPE由来の配列で置換すると、低下した免疫原性を有するPEが生じる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明のPEホモログは野生型PEと実質的に類似の三次および/または一次構造を有する。有効なPEエピトープを、相同な酵素由来の類似のセグメントで置換してよい。このタイプの置換は親PEの該変化による破壊を低減することができる。ほとんどの場合、厳密に相同なタンパク質は最も望ましいエピトープ置換の供給源を提供する。
【0068】
本明細書中で使用される「相同遺伝子群」とは、異なるが通常近縁の種由来の少なくとも一対の遺伝子であって、互いに対応し、かつ互いに同一であるか、または非常に類似している一対の遺伝子を表す。該用語は、種分化(すなわち新規種の発生)によって分離される遺伝子(例えばオーソロガス遺伝子)、ならびに遺伝子複製によって分離された遺伝子(例えばパラロガス遺伝子)を包含する。これらの遺伝子は「相同タンパク質」をコードする。
【0069】
本明細書中で使用される「オーソログ」および「オーソロガス遺伝子」とは、種分化によって共通の先祖遺伝子から進化した異なる種の遺伝子(すなわち相同遺伝子)を表す。典型的に、オーソログは進化の過程中に同一の機能を保持する。オーソログの特定は、新たにシークエンシングされたゲノム中の遺伝子機能を確実に予測する際にその用途を見出せる。
【0070】
本明細書中で使用される「パラログ」および「パラロガス遺伝子」とは、ゲノム内の複製によって関連付けられる遺伝子を表す。オーソログは進化の過程を通して同一の機能を保持するのに対し、パラログは、いくつかの機能は元の機能に関連していることが多いにしても、新規機能を生じる。パラロガス遺伝子の例には、非限定的に、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、およびトロンビン(すべてセリンプロテイナーゼであり、同一種内にともに存在する)をコードする遺伝子が含まれる。
【0071】
配列間のホモロジーの程度は、当技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して決定することができる(例えばSmith and Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482 [1981]; Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443 [1970]; Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 [1988]; GAP, BESTFIT, FASTA, およびTFASTA等のプログラム(the Wisconsin Genetics Software Package (Genetics Computer Group, Madison, WI)); およびDevereux et al., Nucl. Acid Res., 12:387-395 [1984]を参照のこと)。
【0072】
例えば、PILEUPは配列ホモロジーレベルを決定するために有用なプログラムである。PILEUPは、プログレッシブ、ペアワイズアライメントを使用して関連配列の群からマルチプル配列アライメントを作成する。また、該アライメントの作成に使用されるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることができる。PILEUPは、Feng and Doolittleのプログレッシブアライメント法(Feng and Doolittle, J. Mol. Evol., 35:351-360 [1987])の簡易法を使用する。該方法はHiggins and Sharpによって報告される方法(Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-153 [1989])と類似している。有用なPILEUPパラメータは、デフォルトギャップウェイト3.00、デフォルトギャップ長ウェイト0.10、および加重エンドギャップを含む。有用なアルゴリズムの別の例はBLASTアルゴリズムであり、Altschulらによって報告されている(Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410, [1990]; およびKarlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 [1993])。特に有用なBLASTプログラムの1つはWU-BLAST-2プログラムである(Altschul et al., Meth. Enzymol.,, 266:460-480 [1996]を参照のこと)。パラメータ「W」、「T」、および「X」はアライメントの感度および速度を決定する。該BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W) 11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 [1989]を参照のこと)、アライメント(B) 50、期待値(E) 10、M'5、N'-4、および両鎖の比較を使用する。
【0073】
本明細書中で使用される「核酸配列同一性パーセント(%)」は、該配列のヌクレオチド残基と同一の、候補配列中のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。
【0074】
本明細書中で使用される用語「ハイブリダイゼーション」とは、当技術分野において公知のように、核酸の鎖が塩基対形成によって相補鎖と結び付くプロセスを表す。
【0075】
本明細書中で使用される「ハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション反応が行われる条件を表す。これらの条件は、典型的に、ハイブリダイゼーションが測定される条件下の「ストリンジェンシー」の程度によって分類される。ストリンジェンシーの程度は、例えば、核酸結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)に基づきうる。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、典型的に、約Tm-5℃(プローブのTmの5℃下)で生じ; 「高ストリンジェンシー」はTmの約5-10℃下であり; 「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmの約10-20℃下であり; および「低ストリンジェンシー」はTmの約20-25℃下である。代替的に、または追加的に、ハイブリダイゼーション条件はハイブリダイゼーションおよび/または1以上のストリンジェンシー洗浄の塩またはイオン強度条件に基づきうる。例えば、6xSSC = 非常に低ストリンジェンシー; 3xSSC = 低〜中ストリンジェンシー; 1xSSC = 中ストリンジェンシー; および0.5xSSC = 高ストリンジェンシーである。機能的に、最大ストリンジェンシー条件を使用して、ハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性または厳密に近い同一性を有する核酸配列を特定し得る; 高ストリンジェンシー条件を使用して、プローブと約80%以上の配列同一性を有する核酸配列を特定する。
【0076】
高い選択性を必要とする用途では、典型的に、ハイブリッドを形成させるために比較的ストリンジェントな条件を使用する(例えば比較的低い塩および/または高温条件を使用する)ことが望まれる。
【0077】
少なくとも2つの核酸またはポリペプチドに関連して、フレーズ「実質的に類似の」および「実質的に同一の」は、典型的に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、参照(すなわち野生型)配列と比較して、少なくとも60%同一性、好ましくは少なくとも75%配列同一性、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは95%、最も好ましくは97%、時には98%および99%もの配列同一性を有する配列を含むことを意味する。公知のプログラム、例えばBLAST、ALIGN、およびCLUSTALを使用し、標準パラメータを使用して、配列同一性を決定することができる。(例えばAltschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 [1990]; Henikoff et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 89:10915 [1989]; Karin et al., Proc. Natl Acad. Sci USA 90:5873 [1993]; およびHiggins et al., Gene 73:237-244 [1988]を参照のこと)。BLAST解析を実行するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationから公的に入手可能である。また、FASTAを使用してデータベースを検索し得る(Pearson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-2448 [1988])。2ポリペプチドが実質的に同一である1つの証拠は、第一のポリペプチドが第二のポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。典型的に、保存的アミノ酸置換によって異なるポリペプチドは免疫学的に交差反応性である。ゆえに、例えば、2ペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは第二のポリペプチドと実質的に同一である。2核酸配列が実質的に同一である別の証拠は、ストリンジェントな(例えば中〜高ストリンジェンシーの範囲内の)条件下で2分子が互いにハイブリダイズすることである。
【0078】
本明細書中で使用される「等価な残基」とは、特定のアミノ酸残基を共有するタンパク質を表す。例えば、等価な残基は、三次構造がX線結晶構造解析によって決定されているタンパク質(例えばIFN-β)に関する三次構造のレベルでホモロジーを決定することによって特定してよい。等価な残基は、推定の等価な残基を有するタンパク質および目的のタンパク質の特定のアミノ酸残基の2以上の主鎖原子の原子座標(N対N、CA対CA、C対CおよびO対O)がアライメント後に0.13 nmおよび好ましくは0.1 nm以内である残基として定義される。分析対象のタンパク質の非水素タンパク質原子の原子座標の最大オーバーラップが得られるようにベストモデルの方向および位置を定めた後に、アライメントが達成される。好ましいモデルは、結晶学およびタンパク質特徴付け/解析分野の当業者に公知の方法を使用して決定される、利用可能な最高分解能での実験回折データに関する最低R因子を提供する結晶学的モデルである。
【0079】
本発明は、上記特定の微生物株に由来するPEと等価な改変された免疫原性を有するPEを包含する。この関連で「等価」であるとは、PEが、中〜高ストリンジェンシーの条件下で、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによってコードされ、かつ依然としてヒトT細胞に対する改変された免疫原性応答を保持していることを意味する。ゆえに、いくつかの実施形態では、等価なPEは、エピトープ配列に対して少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%の同一性およびそのようなエピトープを有する変異体PEを含む。
【0080】
本明細書中で使用される用語「ハイブリッドPE」および「融合PE」とは、少なくとも2つの異なるタンパク質または「親」タンパク質から操作されたタンパク質を表す。好ましい実施形態では、これらの親タンパク質は互いにホモログである。例えば、いくつかの実施形態では、好ましいハイブリッドPEまたは融合タンパク質は、タンパク質のN末端および該タンパク質のホモログのC末端を含有する。いくつかの好ましい実施形態では、2つの末端を組み合わせて、完全長の活性タンパク質に対応するようにする。別の好ましい実施形態では、該ホモログは実質的な類似性を共有するが、同一のT細胞エピトープを有さない。したがって、一実施形態では、本発明は、C末端に1以上のT細胞エピトープを有するが、該C末端が、低効力のT細胞エピトープを有するホモログのC末端で置換されているか、またはC末端に少数のT細胞エピトープしか有さないか、またはT細胞エピトープを有さない目的のPEを提供する。ゆえに、当業者は、ホモログ間のT細胞エピトープが特定可能であることによって、異なる免疫原性応答を引き起こす種々の変異体が形成されうることを理解する。さらに、内部部分、および2以上のホモログを使用して本発明の変異体を生産できることが理解される。
【0081】
本明細書中で使用される用語「調節要素」とは、核酸配列の発現の何らかの態様をコントロールする遺伝子要素を表す。例えば、プロモーターは、作動可能に連結されているコード領域の転写の開始を促進する調節要素である。さらなる調節要素には、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナルおよび終結シグナルが含まれる。
【0082】
本明細書中で使用される「発現ベクター」とは、好適な宿主中でDNAの発現を実行可能な好適な制御配列に作動可能に連結されているDNA配列を含有するDNA構築物を表す。そのような制御配列には、転写を実行するためのプロモーター、オプションの、そのような転写をコントロールするためのオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列ならびに転写および翻訳の終結をコントロールする配列が含まれる。該ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、または単に潜在的なゲノム挿入物であってよい。好適な宿主内に形質導入されると、該ベクターは、宿主ゲノムと無関係に複製および機能し得、または、いくつかの場合には、ゲノム自体に融合し得る。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は時に交換可能に使用される。プラスミドは現在最も一般的に使用されるベクター形態であるからである。しかし、本発明は、等価な機能を供給し、かつ当技術分野において公知であるか、または公知になるそのような他の形態の発現ベクターを含むものとする。
【0083】
本明細書中で使用される「宿主細胞」は、一般に、当技術分野において公知の方法(例えばU.S. Patent 4,760,025 (RE 34,606)を参照のこと)によって操作され、酵素的に活性なエンドプロテアーゼを分泌不可能にし得る原核生物または真核生物宿主である。いくつかの好ましい実施形態では、タンパク質の発現に使用される宿主細胞はバシラス株BG2036であり、該株は、酵素的に活性な中性タンパク質およびアルカリプロテアーゼ(サブチリシン)が欠損している。BG2036株の構築はUS Patent 5,264,366 (参照により本明細書中に組み入れられる)に詳細に説明されている。タンパク質を発現させるための他の宿主細胞には、枯草菌(Bacillus subtilis) I168 (US Patent 4,760,025 (RE 34,606)およびUS Patent 5,264,366 (その開示内容は参照により本明細書中に組み入れられる)に同様に記載されている)、ならびに任意の好適なバシラス株が含まれ、該好適なバシラス株には、非限定的に、バシラス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バシラス・レンタス(B. lentus)、および他のバシラス種、等の種に含まれる株が含まれる。しかし、本発明は、宿主細胞としてバシラス種に限定されないものとする。他の生物が好適な宿主細胞であることが当技術分野において知られているからである(例えば大腸菌(E. coli)、等)。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は、内因性PEが該宿主細胞によって生産されないように改変されている。
【0084】
当技術分野において公知の組換えDNA技術を使用して構築されたベクターで宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする。形質転換宿主細胞は、タンパク質変異体をコードするベクターを複製するか、または所望のタンパク質変異体を発現することが可能である。プレまたはプレプロ型のタンパク質変異体をコードするベクターの場合、そのような変異体は、発現されると、典型的に宿主細胞から宿主細胞培地中に分泌される。
【0085】
細胞内に核酸配列を挿入する関連において、用語「導入された」とは形質転換、形質導入またはトランスフェクションを意味する。形質転換の手段には、当技術分野において公知のプロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、裸のDNA等が含まれる。(Chang and Cohen, Mol. Gen. Genet., 168:111-115 [1979]; Smith et al., Appl. Env. Microbiol., 51:634 [1986]; およびFerrariらのレビュー論文(Bacillus Harwood (ed.), Plenum Publishing Corporation, pp. 57-52 [1989])を参照のこと)。
【0086】
用語「プロモーター/エンハンサー」とは、プロモーターおよびエンハンサーの両機能を提供可能な配列を含有するDNAのセグメントを示す(例えばレトロウイルスの長末端反復配列はプロモーターおよびエンハンサーの両機能を含有する)。エンハンサー/プロモーターは「内因性」または「外因性」または「異種性」であってよい。内因性エンハンサー/プロモーターは、ゲノム中の特定遺伝子と天然に連結されているエンハンサー/プロモーターである。外因性(異種性)エンハンサー/プロモーターは、遺伝的操作(すなわち分子生物学的技術)を用いて遺伝子の近位に配置されるエンハンサー/プロモーターである。
【0087】
発現ベクター上の「スプライシングシグナル」の存在は組換え転写物の高レベルの発現をしばしば生じさせる。スプライシングシグナルは、一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライスドナーおよびアクセプター部位からなる(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York [1989], pp. 16.7-16.8)。一般に使用されるスプライスドナーおよびアクセプター部位はSV40の16S RNA由来のスプライス結合部位である。
【0088】
用語「安定なトランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」とは、トランスフェクト細胞のゲノムへの外来性DNAの導入および組み込みを表す。用語「安定なトランスフェクタント」とは、トランスフェクト細胞のゲノムDNA内に外来性または外因性DNAが安定に組み込まれている細胞を表す。
【0089】
本明細書中で使用される用語「選択マーカー」または「選択遺伝子産物」とは、選択マーカーが発現されている細胞に対して抗生物質または薬物に対する耐性を付与する酵素活性をコードする遺伝子の使用を表す。
【0090】
本明細書中で使用される用語「増幅」および「遺伝子増幅」とは、特定のDNA配列が過剰に複製されて、該増幅遺伝子が、ゲノム中に最初に存在したコピー数より高コピー数で存在するようになるプロセスを表す。いくつかの実施形態では、薬物(例えば阻害可能な酵素のインヒビター)の存在下での成長に基づく細胞の選択により、該薬物の存在下での成長に必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち入力)配列の増幅による増幅または両者が生じる。遺伝子増幅は、両生類卵母細胞中のリボソーム遺伝子の増幅等の特定の遺伝子の発生中に天然に生じる。遺伝子増幅は培養細胞を薬物で処理することによって誘発してよい。薬物誘発による増幅の例は、哺乳類細胞における内因性dhfr遺伝子のメトトレキセート誘発による増幅である(Schmike et al., Science 202:1051 [1978])。薬物(例えば阻害可能な酵素のインヒビター)の存在下での成長に基づく細胞の選択により、該薬物の存在下での成長に必要とされる遺伝子産物をコードする内因性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外因性(すなわち入力)配列の増幅による増幅または両者が生じ得る。
【0091】
「増幅」は、鋳型特異性が関与する核酸複製の特殊な事例である。それは非特異的鋳型複製(すなわち鋳型依存的であるが、特定の鋳型に依存しない複製)と対比されるべきであろう。ここに鋳型特異性は、複製の忠実度(すなわち適正なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)特異性と区別される。鋳型特異性は「標的」特異性の点から見て説明されることが多い。標的配列は、それらを他の核酸から選別しようとする意味での「標的」である。増幅技術は、主に、この選別のために設計されている。
【0092】
本明細書中で使用される用語「同時増幅」とは、増幅性マーカーを他の遺伝子配列(すなわち発現ベクター内に含有されている非選択性遺伝子等の1以上の非選択遺伝子を含む)と組み合わせて単一細胞内に導入し、かつ適切な選択圧を適用して、該細胞が該増幅性マーカーおよび該他の非選択性遺伝子配列をともに増幅するようにすることを表す。該増幅性マーカーを該他の遺伝子配列に物理的に連結してよく、あるいは、一方が該増幅性マーカーを含有し、他方が該非選択マーカーを含有する2つの別々のDNA片を同一細胞内に導入してもよい。
【0093】
本明細書中で使用される用語「増幅性マーカー(amplifiable marker)」、「増幅性遺伝子(amplifiable gene)」、および「増幅性ベクター(amplification vector)」とは、適切な成長条件下で該遺伝子の増幅を可能にする遺伝子をコードするマーカー、遺伝子またはベクターを表す。
【0094】
本明細書中で使用される用語「増幅性核酸(amplifiable nucleic acid)」とは、任意の増幅方法によって増幅することができる核酸を表す。「増幅性核酸」は通常「サンプル鋳型」を含むことが意図される。
【0095】
本明細書中で使用される用語「サンプル鋳型」とは、「標的」(以下で定義される)の存在について分析されるサンプルに由来する核酸を表す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、サンプル中に存在しても、しなくてもよい、サンプル鋳型以外の核酸を参照して使用される。ほとんどの場合、バックグラウンド鋳型は故意ではない。それは持ち越し汚染の結果であるか、またはサンプルから精製して除去しようとされる核酸混入物の存在に起因する。例えば、検出対象のもの以外の生物由来の核酸はバックグラウンドとして試験サンプル中に存在する。
【0096】
「鋳型特異性」はほとんどの増幅技術において酵素の選択によって達成される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、不均質な核酸混合物中で特定の核酸配列のみを処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAは該レプリカーゼの特異的鋳型である(例えばKacian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:3038 [1972]を参照のこと)。他の核酸はこの増幅酵素によって複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は自身のプロモーターに関してストリンジェントな特異性を有する(Chamberlin et al., Nature 228:227 [1970]を参照のこと)。T4 DNAリガーゼの場合、該酵素は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質および鋳型間にライゲーション結合部位でミスマッチが存在する場合、2オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをライゲートしない(Wu and Wallace, Genomics 4:560 [1989]を参照のこと)。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力のおかげで、プライマーによって境界を定められ、ゆえに規定される配列に関して高い特異性を示すことがわかっている; 高温により、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに好都合であり、非標的配列とのハイブリダイゼーションに好都合でない熱力学的条件が生じる。
【0097】
本明細書中で使用される用語「プライマー」とは、精製した制限消化物等のように天然に存在しようと、合成によって生産されようと、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘発される条件(すなわち、ヌクレオチドおよび誘発物質、例えばDNAポリメラーゼの存在下で、かつ好適な温度およびpHの条件)下に配置された場合に合成の開始点として働くことが可能なオリゴヌクレオチドを表す。増幅の最大効率のためにプライマーは好ましくは一本鎖であるが、代替的に二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは、まず、その鎖を分離するために処理された後、伸長産物の調製に使用される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘発物質の存在下で伸長産物の合成を開始するために十分な長さである必要がある。プライマーの厳密な長さは多数の要因に依存する。該要因には、温度、プライマーの供給源および該方法の用途が含まれる。
【0098】
本明細書中で使用される用語「プローブ」とは、精製した制限消化物等のように天然に存在しようと、合成、組換えまたはPCR増幅によって生産されようと、目的の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)を表す。プローブは一本鎖または二本鎖であり得る。プローブは特定の遺伝子配列の検出、特定および単離に有用である。本発明において使用される任意のプローブを任意の「レポーター分子」で標識して、任意の検出系で検出可能であるようにすることが考慮される。該検出系には、非限定的に、酵素(例えばELISA、ならびに酵素ベースの組織化学的アッセイ)、蛍光性、放射性、および発光性の系が含まれる。本発明は任意の特定の検出系または標識に限定されないものとする。
【0099】
本明細書中で使用される用語「標的」とは、ポリメラーゼ連鎖反応に関して使用される場合、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーによって境界を定められる核酸の領域を表す。ゆえに、「標的」は他の核酸配列から選別しようとされる。「セグメント」は標的配列内の核酸の領域として定義される。
【0100】
本明細書中で使用される用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)とは、U.S. Patent Nos. 4,683,195、4,683,202、および4,965,188 (参照により本明細書中に組み入れられる)の方法を表し、該方法には、クローニングまたは精製を行うことなく、ゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を増加させるための方法が含まれる。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、所望の標的配列を含有するDNA混合物に大過剰の2オリゴヌクレオチドプライマーを導入するステップ、その後、DNAポリメラーゼの存在下で厳密な順序のサーマルサイクルを行うステップからなる。2プライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を実行するために、混合物を変性させ、そしてプライマーを標的分子内の相補的配列とアニーリングさせる。アニーリング後、新規ペアの相補鎖を形成させるために該プライマーをポリメラーゼで伸長させる。変性、プライマーアニーリングおよびポリメラーゼ伸長のステップを多数回繰り返して(すなわち変性、アニーリングおよび伸長が1「サイクル」を構成し; 多数の「サイクル」が存在しうる)、所望の標的配列の高濃度の増幅セグメントを取得することができる。所望の標的配列の増幅セグメントの長さは、相互のプライマーの相対的位置によって決定され、したがって、この長さは調節可能なパラメータである。該プロセスの反復態様に基づいて、該方法を「ポリメラーゼ連鎖反応」(以後「PCR」)と称する。標的配列の所望の増幅セグメントが混合物中で(濃度に関して)最も多数を占める配列になるため、それらは「PCR増幅されている」と言われる。
【0101】
本明細書中で使用される用語「増幅試薬」とは、プライマー、核酸鋳型および増幅酵素を除き、増幅に必要とされる試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、バッファー、等)を表す。典型的に、増幅試薬は、他の反応成分とともに、反応容器(試験管、マイクロウェル、等)に配置および含有される。
【0102】
PCRでは、複数の異なる方法論(例えば標識プローブとのハイブリダイゼーション; ビオチン化プライマーの取り込み、その後のアビジン-酵素コンジュゲートによる検出; 増幅セグメントへの32P-標識デオキシヌクレオチド三リン酸、例えばdCTPまたはdATPの取り込み)によって、ゲノムDNA中の単一コピーの特定の標的配列を、検出可能なレベルに増幅することが可能である。ゲノムDNAに加え、適切なセットのプライマー分子を用いて任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を増幅することができる。特に、PCRプロセス自体によって作製された増幅セグメントは、それら自体が、以後のPCR増幅の効率的な鋳型である。
【0103】
本明細書中で使用される用語「PCR産物」、「PCR断片」および「増幅産物」とは、変性、アニーリングおよび伸長からなるPCRステップの2以上のサイクルが完了した後に得られる化合物の混合物を表す。これらの用語は、1以上の標的配列の1以上のセグメントの増幅が存在している場合を包含する。
【0104】
本明細書中で使用される用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」とは、各々が二本鎖DNAを特定のヌクレオチド配列の位置で、またはその付近で切断する細菌の酵素を表す。
【0105】
本明細書中で使用される「PE酵素の有効量」とは、特定の用途に必要とされる酵素活性を得るために必要なPE酵素の量を表す。当業者はそのような有効量を容易に確定することができ、該有効量は、多数の要因、例えば使用される特定の酵素変異体、関与する用途、全組成中の特定の組成、等に基づく。
【0106】
本明細書中で使用される「製薬的に許容される」とは、該用語が説明する対象の薬物、医薬品および/または不活性成分が、ヒトおよび他の動物の組織と接触させて使用するために適していて、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー応答、等を伴わず、合理的な損益比に見合うことを意味する。
【0107】
上記のように、本発明のPEは、それらの前駆体DNAによってコードされるネイティブPEと比較した場合に、改変された免疫原性応答(例えば抗原性および/または免疫原性)を示す。いくつかの好ましい実施形態では、該タンパク質(例えばPE)は低下したアレルゲン性/免疫原性を示す。当業者は、本発明のPEの用途が、主に、該タンパク質の免疫学的特性に基づいて決定されることを容易に認識する。
【0108】
本発明の一実施形態では、本明細書中で特定されるエピトープを使用して、(例えばPEに対して抗体を産生させることが所望される場合に)免疫応答を誘発する。該エピトープには、本明細書中に記載のエピトープのいずれか、ならびに当技術分野において公知の他のエピトープが含まれる。そのような抗体は、少なくとも1つの前記領域、またはそれと非常に相同な領域を含む他のPEに関するスクリーニングにその用途を見出せる。さらに、本発明のPEは、特定のエピトープ領域を代表する単離された天然エピトープ、組換えタンパク質、または合成ペプチドを、これらの領域または非常に相同な領域を含むタンパク質に対する感作に関してヒトを評価するために利用する、免疫アッセイ等の種々のアッセイにおいて、試薬としてのその用途を見出せる。
【0109】
別の実施形態では、本明細書中のエピトープ断片を、そのような断片を拘束および提示可能なMHC分子を有する抗原提示細胞の検出に使用する。例えば、エピトープ断片は検出可能な標識(例えば放射性標識)を含みうる。そして標識断片を目的の細胞とインキュベートし、該標識断片を拘束(または提示)する細胞を検出する。
【0110】
さらなる実施形態では、低下したアレルゲン性/免疫原性を有する関連PEおよび/または変異体PEの用途は、他の適用、例えば、医薬用途、薬物送達用途、癌処置計画、および他のヘルスケア用途に見出せる。
【0111】
さらに、低下したアレルゲン性/免疫原性を有する関連タンパク質および/または変異体タンパク質の用途は、他の適用、例えば、医薬用途、薬物送達用途、癌処置計画、および他のヘルスケア用途に見出せる。実際、本発明のPEは多数の組成物および適用に広範囲の用途を見出せることが考慮される。
【0112】
発明の詳細な説明
本発明は、PE CD4+ T細胞エピトープ、ならびに、親PEと比較して、低下した免疫原性応答を示す新規変異体を提供する。本発明は、新規PE変異体をコードするDNA分子、および新規PE変異体をコードするDNAを含む宿主細胞、ならびにPEを低免疫原性にするための方法をさらに提供する。さらに、本発明は、野生型PEより低免疫原性の前記PE変異体を含む種々の組成物を提供する。いくつかの具体的実施形態では、本発明は、本発明の方法を使用して特定および/または特徴付けられる、低下した免疫原性を有するPE変異体を提供する。
【0113】
PE38 T細胞エピトープの全般的評価にしたがって、本発明の方法を使用して、記載のように、PE38中の4つのT細胞エピトープをさらに分析した。興味深いことが決定された以下のエピトープ(1つのメジャーエピトープおよび2つのマイナーエピトープ)を下記表1に挙げる。ペプチド75は配列ARGRIRNGALLRVY (配列番号5)を有し、ペプチド76は配列RIRNGALLRVYVPRS (配列番号6)を有する。ペプチド「75-76」は表1で指定されるペプチド75と76の組み合わせである。
【0114】
表1. PE中の目的のペプチド
【表1】

【0115】
いくつかの実施形態では、本発明は、PEの免疫原性を減少させる残基の特定をさらに含む。いくつかの実施形態では、野生型または親PE配列の少なくとも1つのT細胞エピトープ中に少なくとも1つのアミノ酸置換を施す。いくつかの好ましい実施形態では、親PE配列中の複数のアミノ酸を変化させて、低下したアレルゲン性/免疫原性を有するPE変異体を得る。別の好ましい実施形態では、親PE配列中にアミノ酸の欠失、挿入および/または置換を施して、低下したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体PEを得る。いくつかの実施形態では、このPEは野生型であり、他の実施形態では、目的のエピトープ中のアミノ酸置換を有する突然変異体、コンジュゲート変異体、またはハイブリッド変異体である。
【0116】
低下したアレルゲン性/免疫原性を有するPEに加えて、本発明は、増加した免疫原性を有する変異体PE、ならびに親PEと同程度のアレルゲン性/免疫原性を有するが、他の改変された特性を有する変異体PEを包含する。別の好ましい実施形態では、親PE配列中にアミノ酸の欠失、挿入および/または置換を施して、増加または減少したアレルゲン性/免疫原性を有する変異体PEを得る。さらなる実施形態では、変異体PEはアミノ酸配列の非T細胞エピトープ領域中の改変を含む。ゆえに、本発明は、T細胞に対する同一の反応性を有するが、他の改変された特性を有するPEを包含する。好ましい実施形態では、これらの改変された特性は変異体PEに有益な特徴を提供する。いくつかの実施形態では、親PEは野生型であり、他の実施形態では、目的のエピトープ中にアミノ酸置換を有する突然変異体、コンジュゲート変異体、またはハイブリッド変異体である。
【0117】
本発明の好ましい一実施形態では、改変された免疫原性応答(例えば増加または減少した免疫原性応答)を有するペプチドを目的のPEから誘導する。いくつかの実施形態では、以下のようにエピトープおよび非エピトープを特定するアッセイによってエピトープを特定する: 分化した樹状細胞をナイーブヒトCD4+および/またはCD8+ T細胞および目的のペプチドと組み合わせる。より具体的には、いくつかの実施形態では、目的の、低下した免疫原性応答ペプチドを提供し、その場合、以下のステップを含んでT細胞エピトープを認識する: (a)単一血液供給源から樹状細胞の溶液およびナイーブCD4+および/またはCD8+ T細胞の溶液を取得するステップ; (b)樹状細胞を分化させるステップ; (c)分化した樹状細胞およびナイーブCD4+および/またはCD8+ T細胞の溶液を目的のペプチドと組み合わせるステップ; および(d)ステップ(c)のT細胞の増殖を測定するステップ。
【0118】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、目的のPEの全体または部分に対応する一連のペプチドオリゴマーを調製する。いくつかの特に好ましい実施形態では、該タンパク質の関連部分または全体をカバーするペプチドライブラリーを生産する。以下の実施例に記載のように、3アミノ酸ずれた15量体のペプチドセットを使用して目的のエピトープを特定した。本明細書中で提供されるアッセイにおいて各ペプチドを個別に分析することによって、本発明の方法は、T細胞によって認識されるエピトープの正確な特定を容易にする。上記例では、1つの特定ペプチドの反応がその隣のペプチドより大きいことによって、3アミノ酸以内までのエピトープアンカー領域の特定が促される。いくつかの実施形態では、これらのエピトープの位置を決定した後、少なくとも1エピトープ内の1以上のアミノ酸を改変して、該ペプチドが元のタンパク質と異なるT細胞応答を引き起こすようにする。
【0119】
本発明は、それに対する免疫原性応答をモジュレートすることが望ましいすべてのタンパク質におよぶ。当業者は、本発明のタンパク質およびペプチドが必ずしもネイティブのタンパク質およびペプチドではないことを容易に認識する。実際、本発明の一実施形態では、改変された免疫応答を有するシャッフルされた遺伝子を考慮する(遺伝子シャフリングおよびそのような遺伝子の発現の説明に関して、例えばStemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747 [1994]; Patten et al., Curr. Op. Biotechnol. 8:724 [1997]; Kuchner and Arnold, Trends Biotechnol., 15:523 [1997]; Moore et al., J. Mol. Biol., 272:336 [1997]; Zhao et al., Nature Biotechnol., 16:258 [1998]; Giver et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:12809 [1998]; Harayama, Trends Biotechnol., 16:76 [1998]; Lin et al., Biotechnol., Prog., 15:467 [1999]; およびSun, Comput. Biol., 6:77 [1999]を参照のこと)。いくつかの実施形態では、PEを改変して、動物が該PEに対して引き起こす免疫応答を改変する。
【0120】
好ましくは、本発明のPEを単離または精製する。「精製」(または「単離」)とは、PEが天然に付随しているいくつかまたはすべての天然に存在する構成要素からPEを分離することに基づいて、PEをその天然状態から改変することを意味する。この精製は、最終組成物中で望ましくない全細胞、細胞片、不純物、外来性タンパク質、および/または酵素を除去するための、当技術分野において公知の任意の好適な手段によって達成されるものとし、該手段には、非限定的に、当技術分野において公認の分離技術、例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性分離、透析、硫安塩析または他のタンパク質塩析、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、ろ過、精密ろ過、ゲル電気泳動または勾配分離が含まれる。いくつかの実施形態では、PE含有組成物に構成要素を加えて、追加の利益を提供する。該構成要素は、例えば、活性化剤、抗阻害剤、望ましいイオン、pHを調節するための化合物、および/または他の酵素である。別の実施形態では、組換えPEを精製する。
【0121】
上記タンパク質およびペプチドに加えて、本発明は、野生型PE、ならびに改変された免疫原性応答(例えば増加または低下した免疫原性応答)を示す変異体PEを包含する。いくつかの実施形態では、変異体PEは、それらが誘起するT細胞応答が親(すなわち前駆体) PEによって誘起される応答より大きい場合に、増加した免疫原性応答を示す。この高い応答の正味の結果は、変異体PEに対する抗体の増加である。これらの抗体の用途は、種々の設定、例えば、非限定的に、PE、PE変異体、等を検出するための方法に見出せる。別の実施形態では、変異体PEは、それらが誘起するT細胞応答が親(すなわち前駆体) PEによって誘起される応答より小さい場合に、減少した免疫原性応答を示す。この高い応答の正味の結果は、変異体PEに対する抗体の減少である。これらの変異体PEの用途は、種々の設定、例えば、非限定的に、追加のタンパク質の有無にかかわらず、ヒトおよび/または他の動物への投与に見出せる。
【0122】
変異体タンパク質の低下した免疫原性応答を確かめるために有用な典型的なアッセイには、非限定的に、PEおよび/またはPE変異体のサンプルに対するインビボアッセイ(例えばHLA-DR3/DQ2マウスT細胞応答、およびインビトロアッセイ(例えばヒト末梢血単核細胞(PBMC))が含まれる。低下した免疫原性応答を確かめるために有用なインビボアッセイには、非限定的に、トランスジェニックマウス、例えば、ラット(Taurog et al., Immunol. Rev., 169:209-223 [1999])、ウサギ、またはブタの使用が含まれる。目的の改変タンパク質および変異体をインビボで検査し、低下した免疫原性応答を決定するための好ましいトランスジェニックマウスモデルは、当技術分野において公知のHLA-DR3/DQ2マウスモデルである。
【0123】
天然に存在するアミノ酸配列に対する動物、例えばヒトの免疫原性応答の改変(例えば増加または減少)に加えて、本発明は、突然変異タンパク質(例えばタンパク質の機能的活性を変化させるように改変されているPE)の免疫原性応答を低減するための手段を提供する。いくつかの実施形態では、何らかの有益な特性を提供するために突然変異を施す。該特性には、非限定的に、増加した活性、増加した熱安定性、増加したアルカリ安定性、および/または酸化安定性、等が含まれる。いくつかの実施形態では、該突然変異は、突然変異PE中に新規T細胞エピトープを取り込ませる。本明細書中でより詳細に考察されるように、本発明は、突然変異タンパク質の免疫原性応答を改変するアミノ酸改変を有するPE T細胞エピトープおよび変異体PEを提供する。
【0124】
本発明は上記タンパク質および多数の他のタンパク質を包含するが、簡略化のために、以下、本発明の特に好ましい実施形態を記載する。該実施形態はPEの改変を含む。
【0125】
本明細書中で使用されるアミノ酸位置の数字は、配列番号1に記載のPE38配列に割り当てられた数字を表す。しかし、本発明は、この特定のPEの突然変異に限定されず、配列番号1のPE中の特に特定される残基と「等価な」位置にアミノ酸残基を含有する前駆体PEにおよぶ。
【0126】
前駆体PEの残基(アミノ酸)は、親PE中の特定の残基または該残基の部分と相同(すなわち一次または三次構造中の位置が対応している)または類似であれば(すなわち、結合、反応、または化学的に相互作用する同一または類似の機能的能力を有すれば)、親PEの残基と等価である。本明細書中で使用される「対応する」とは、概して、該ペプチド上の類似の位置を表す。
【0127】
いくつかの好ましい実施形態では、一次構造に対するホモロジーを確立するために、前駆体PEのアミノ酸配列を親PEの一次配列および特に、配列が既知であるPE中で不変であることが知られている残基のセットと直接比較する。保存残基をアライメントし、アライメントを維持するために必要な挿入および欠失を可能にし(すなわち任意の欠失および挿入による保存残基の除去を回避し)た後、親PEの一次配列中の特定のアミノ酸に等価な残基を規定する。保存残基のアライメントは、好ましくは、そのような残基を100%保存すべきであろう。しかし、75%を超えるか、またはわずか50%の保存残基のアライメントでも、等価な残基を規定するために適切である。これらの保存残基は、ゆえに、好ましい親PEに非常に相同な他のPE中の、対応する等価な、親PEのアミノ酸残基を規定するために使用できる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明は、前駆体PE(群)と比較して、改変された免疫原性応答の潜在能力を有する変異体PEを提供する。本発明は免疫原性応答を低下させるために有用である一方、本明細書中で特定される突然変異の用途は、前駆体と比較して、改変された熱安定性および/または改変された基質特異性、改変された活性、改善された比活性または改変されたアルカリ安定性を生じさせるための、当技術分野において公知の突然変異との組み合わせにおいて見出せる。
【0129】
さらなる実施形態において、少なくとも1つのT細胞エピトープを排除するために2つの相同タンパク質を融合する。以下に記載のように、T細胞エピトープが存在しているタンパク質の領域を、該T細胞エピトープを有さない相同タンパク質中の同一の領域で置換する。例えば、親PEおよびホモログで融合タンパク質を作製し、得られたタンパク質が該親PE中に存在するT細胞エピトープを有さないようにする。所望の活性が維持される限り、任意のアミノ酸長(エピトープのみ〜タンパク質の大部分)を親タンパク質中への融合に使用することができる。しかし、元のレベルの活性が維持される必要はない。タンパク質のアレルゲン性/免疫原性の低下のために、いくつかの実施形態では、同一の活性レベルを達成するために、親タンパク質より多くのハイブリッドタンパク質が使用される。
【0130】
いくつかの実施形態では、変異体PE活性を決定し、PEと種々の市販の基質の相互作用を試験することによって目的のPEと比較する。所望されるように、当業者に公知の任意の好適な方法によってPE活性を決定することができる。さらなる実施形態では、当業者に公知の好適な方法を使用して変異体PEの他の特性を決定する。典型的な特性には、非限定的に、熱安定性、アルカリ安定性、および種々の基質または緩衝液または製品製剤中の特定のPEの安定性が含まれる。本明細書中で開示される酵素安定性アッセイ手順と組み合わせると、ランダムな突然変異誘発によって取得された突然変異体であって、酵素活性を維持しつつ、増加または減少したアルカリまたは熱安定性を示した突然変異体が特定される。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明は低下した免疫原性を有するPE組成物であって、抗体および/または細胞受容体の認識部位をさらに含む組成物を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、低免疫原性PEを別の分子、例えば、抗体、例えば抗CD22抗体、抗メソテリン(anti-mesothelin)抗体、抗CD25抗体、または抗ルイスY抗体の少なくとも一部分にコンジュゲートする。この実施形態は、標的化された細胞認識に具体的用途を見出せる。いくつかの実施形態では、抗体によって認識される細胞は異常な細胞であり、それには、非限定的に、悪性細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの癌ターゲティング配列を含有するようPEを改変する。この実施形態では、異常な(例えば癌)細胞を直接認識するよう改変されたPE配列を患者(例えば癌患者)に投与する。ゆえに、本発明は、細胞を、直接、破壊および除去の標的にするための手段を提供する。
【0132】
本発明のPEを伴うコンジュゲートに有用な好適な抗CD22抗体分子には、RFB4およびその変異体が含まれる(例えばWO98/41641、WO03/027135、Salvatore et al. Clin Cancer Res 2002;8:995-1002、Bang et al. Clinical Cancer Research 1545 Vol. 11, 1545-1550, February 15, 2005およびKreitman et al. J Clin Oncol 2005: 23: 6719-6729に記載される)。
【0133】
本発明のPEを伴うコンジュゲートに有用な好適な抗メソテリン抗体分子には、SSおよびSS1が含まれる(WO99/28471、WO00/073346およびKreitman et al 2002: Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 21, 22bに記載される)。
【0134】
本発明のPEを伴うコンジュゲートに有用な好適な抗CD25抗体分子には、抗tacが含まれる(Chaudhary et al 1989: Nature 339: 394-397に記載される)。
【0135】
本発明のPEを伴うコンジュゲートに有用な好適な抗ルイスY抗体には、MAb B3およびBR96が含まれる(Pai et al 1996: Nature Med 2: 350-353およびPosey et al 2002: Clin. Cancer Res. 8: 3092-3099に記載される)。
【0136】
癌ターゲティングに好適な他の分子には、成長因子またはサイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、TGFα、GMCSF、またはIL-13が含まれる。
【0137】
コンジュゲートは当業者に公知の方法によって調製できる。本発明のPEと抗体分子等の分子のカップリングは、直接カップリングであるか、またはスペーサー基または連結基、例えばポリアルデヒド、例えばグルタルアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレン-トリアミン五酢酸(DPTA)の仲介によるカップリングであってよい。コンジュゲーションは、化学的カップリングに基づくか、または共有結合、例えばジスルフィド結合またはペプチド結合を介してよく、直接的であるか、ペプチドリンカーを介するかにかかわらない。本発明のコンジュゲートは、コード核酸からの発現による融合タンパク質として生産してよい。コンジュゲートの1成分が複数鎖の分子、例えばFabおよびIgG等の抗体形態である場合、コンジュゲーション(ペプチド結合を介するか、それ以外であるかにかかわらず)は該複数鎖の分子の1、2以上またはすべてのポリペプチド鎖に対するコンジュゲーションであり得る。
【0138】
癌のコンジュゲート療法についてのレビューに関しては、例えばPastan et al 2006: Nature Reviews Cancer 6: 559-565を参照のこと。それには、異なる抗体および、ターゲティングに使用される他の分子、異なるコンジュゲートおよび異なる毒素についての考察が含まれる。
【実施例】
【0139】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を説明するためのものであり、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0140】
以下の実験の開示では、以下の略語が使用される: sdおよびSD (標準偏差); M (モル濃度); mM (ミリモル濃度); μM (マイクロモル濃度); nM (ナノモル濃度); mol (モル); mmol (ミリモル); μmol (マイクロモル); nmol (ナノモル); gm (グラム); mg (ミリグラム); μg (マイクログラム); pg (ピコグラム); L (リットル); ml (ミリリットル); μl (マイクロリットル); cm (センチメートル); mm (ミリメートル); μm (マイクロメートル); nm (ナノメートル); LF (致死因子); ℃(摂氏温度); cDNA (コピーまたは相補的DNA); DNA (デオキシリボ核酸); ssDNA (一本鎖DNA); dsDNA (二本鎖DNA); dNTP (デオキシリボヌクレオチド三リン酸); RNA (リボ核酸); PBS (リン酸緩衝食塩水); g (重力); OD (光学密度); CPMおよびcpm (カウント/分); rpm (回転/分); ダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS); HEPES (N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N-[2-エタンスルホン酸]); HBS (HEPES緩衝食塩水); SDS (ドデシル硫酸ナトリウム); Tris-HCl (トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン-塩酸); 2-ME (2-メルカプトエタノール); EGTA (エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル) N, N, N', N'-四酢酸); EDTA (エチレンジアミン四酢酸); SI (刺激指数); PBMC (末梢血単核細胞); Endogen (Endogen, Woburn, MA); CytoVax (CytoVax, Edmonton, Canada); Wyeth-Ayerst (Wyeth-Ayerst, Philadelphia, PA); NEN (NEN Life Science Products, Boston, MA); Wallace Oy (Wallace Oy, Turku, Finland); Pharma AS (Pharma AS, Oslo, Norway); Dynal (Dynal, Oslo, Norway); Abbott (Abbott Laboratories, Abbott Park, IL); Bio-Synthesis (Bio-Synthesis, Lewisville, TX); ATCC (American Type Culture Collection, Rockville, MD); Gibco/BRL (Gibco/BRL, Grand Island, NY); Insightful (Insightful, Seattle, WA); Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO); Pharmacia (Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ); およびStratagene (Stratagene, La Jolla, CA)。
【0141】
ペプチド
すべてのペプチドを商業的な供給元から入手した(Mimotopes, San Diego, CA)。本明細書中に記載のI-MUNE (登録商標)アッセイ系用に、目的のタンパク質の配列全体を表現する3アミノ酸ずれた15量体ペプチドをマルチピン(multipin)形式で合成した(Maeji et al., J. Immunol. Meth., 134:23-33 [1990]を参照のこと)。DMSO中に約1〜2 mg/mlの濃度でペプチドを再懸濁し、使用時まで-70℃で保存した。各ペプチドを少なくとも2回試験した。各ペプチドに関する結果を平均した。いくつかの場合、各ペプチドに関して刺激指数(SI)を算出した。
【0142】
ヒトドナー血液サンプル
商業的な2供給元からボランティアドナーのヒト血液バフィーコートサンプルを入手した(Stanford Blood Center, Palo Alto, CA, およびthe Sacramento Medical Foundation, Sacramento, CA)。バフィーコートサンプルを密度分離によってさらに精製した。市販のPCRベースのキット(Bio-Synthesis)を使用して、HLA-DRおよびHLA-DQに関して各サンプルをHLA型判定した。該ドナープール中のHLA DRおよびDQ発現がNorth American参照標準とあまり差異がないことを決定した(Mori et al., Transplant., 64:1017-1027 [1997])。しかし、該ドナープールは、実際、San Francisco Bay Areaに共通する民族性に関するわずかな濃縮の証拠を示した。
【0143】
データ解析
個々の各バフィーコートサンプルに関して、すべてのペプチドに関する平均CPM値を解析した。各ペプチドに関する平均CPM値を、コントロール(DMSOのみ)ウェルに関する平均CPM値で除算して、「刺激指数」(SI)を決定した。各ペプチドセットを用いてドナーを試験し、ペプチドあたり少なくとも2応答の平均をまとめた。各タンパク質に関するデータをグラフで示した。該グラフは該セット内の各ペプチドに対する応答者の割合を示す。陽性応答は、SI値が2.95に等しいか、または2.95より大きい場合に照合した。この値を選択した理由は、それがおおよそ正規母集団分布中の3標準偏差の差異になるからである。評価された各タンパク質に関して、個々のドナーによる個々のペプチドに対する陽性応答をまとめた。特定のタンパク質に関するバックグラウンド応答を決定するために、セット中の各ペプチドに関する応答者の割合を平均し、標準偏差を算出した。統計学的有意性は、データセット内の各ペプチドに対する応答者の数に関するポアソン統計学を使用して算出した。本明細書中に記載のように、種々の統計学的方法を使用した。ペプチドに対して応答するドナーの数が、p<0.05で、データセットによって規定されるポアソン分布と異なり、かつ/または応答の割合がバックグラウンドより少なくとも3倍高い場合に、該ペプチドに対する応答を有意とみなした。
【0144】
統計学的方法
ペプチド応答の統計学的有意性をポアソン統計学に基づいて算出した。応答者の平均頻度を使用して、応答の総数およびセット中のペプチドの数に基づくポアソン分布を算出した。応答はp < 0.05の場合に有意とみなした。さらに、両側スチューデントt検定を不等分散(unequal variance)で実施した。低いバックグラウンド応答率を有するデータを使用するエピトープ決定では、古典的なポアソンベースの式を適用した:
【数1】

【0145】
式中、n = セット中のペプチドの数、x = 目的のペプチドでの応答の頻度、およびλ= データセット内の応答の中央値頻度である。高いバックグラウンド応答率を有するデータに基づくエピトープ決定では、厳密性の低いポアソンベースの決定を使用した:
【数2】

【0146】
式中、λ= データセット中の応答の中央値頻度、およびx = 目的のペプチドでの応答の頻度である。
【0147】
さらなる実施形態では、以下の式に基づいて構造決定を計算する:
【数3】

【0148】
式中、Σ(大文字のシグマ)は各ペプチドに対する応答の頻度からセット中の該ペプチドの頻度を減算した値の絶対値の和であり; f(i)は個々のペプチドに関する応答の頻度として定義され; およびpはペプチドセット中のペプチドの数である。
【0149】
この式は0〜2の範囲の値を生じ、それは「構造値(Structure Value)」に等しい。値0は、結果が完全に構造を有さないことを示し、値2.0は、すべての構造が単一領域を中心にして高度に構造化されていることを示す。値が2.0に近いほど、タンパク質はより免疫原性である。ゆえに、低い値は低免疫原性タンパク質を示す。
【0150】
ドナープール内のHLA型
HLA-DRおよびDQ型を規定のエピトープペプチドに対する応答との関連に関して分析した。カイ二乗解析を1自由度で使用して有意性を決定した。応答者および非応答者の両プール中に対立遺伝子が存在した場合、相対的リスクを算出した。
【0151】
約84のランダムな個体に関してHLA-DRB1対立遺伝子の発現を決定した。低ストリンジェンシーPCR決定を使用してHLA型判定を実施した。製造元(Bio-Synthesis)の指示にしたがってPCR反応を実施した。StanfordおよびSacramentoサンプルに関するデータをまとめ、公開されている「Caucasian」HLA-DRB1頻度(Marsh et al., HLA Facts Book, The, Academic Press, San Diego, CA [2000], page 398, Figure 1を参照のこと)と比較した。これらの共同体のドナー集団はHLA-DR4およびHLA-DR15が豊富である。しかし、これらの集団中のこれらの対立遺伝子の頻度は、これらの2対立遺伝子に関して報告されている範囲(HLA-DR4については5.2〜24.8%およびHLA-DR15については5.7〜25.6%)内に十分に入る。同様に、HLA-DR3、-DR7およびDR11に関して、頻度は平均Caucasian頻度より低いが、該対立遺伝子に関して報告されている範囲内である。同様に注目すべきは、San Francisco Bay Areaに密に代表される民族集団中で高頻度でHLA DR15が認められることである。
【0152】
実施例1
ヒトT細胞を使用してPE中のペプチドT細胞エピトープを特定するためにI-MUNE (登録商標)アッセイ系において使用される細胞の調製
PEに対する曝露状態が未知の69人のヒトから新鮮なヒト末梢血細胞を回収した。これらの細胞を試験して、実施例3に記載のようにPE中の抗原性エピトープを決定した。
【0153】
末梢性単核血液細胞(室温で保存、24時間より新鮮)を調製し、以下のように使用した。各サンプルでは、1単位の全血由来のバフィーコート調製物の溶液約30 mlをダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS)で50 mlにし、2試験管に分けた。サンプルを12.5 mlの室温のLymphoprep密度分離媒体(Nycomed; Pharma AS; Density 1.077 g/ml)で支持した。試験管を600 xgで30分間遠心分離した。二相の界面を回収し、プールし、DPBSで洗浄した。当技術分野において知られているように、血球計数器によって、得られた溶液の細胞密度を測定した。当技術分野において知られているように、トリパンブルー排除によって生存度を測定した。
【0154】
得られた溶液から、下記のように75 ml培養フラスコ中の溶液あたり108細胞の密度を有する末梢血単核細胞サンプルから、分化した樹状細胞培養を調製した:
(1) 血清を含まないAIM V培地(Gibco) 50 mlに1:1000希釈ベータ-メルカプトエタノール(Gibco)を補充した。該フラスコを5% CO2中で37℃で2時間水平に置き、単球をフラスコ壁に付着させた。
【0155】
(2) 単球細胞から樹状細胞への分化は以下のように実施した: 非付着細胞を除去し、得られた付着細胞(単球)を30 mlのAIM V、800単位/mlのGM-CSF (Endogen)および500単位/mlのIL-4 (Endogen)と混合した; 得られた混合物を5% CO2中で37℃で5日間培養した。5日間のインキュベーション後、サイトカインTNFα(Endogen)を0.2単位/mlまで加え、サイトカインIL-1α(Endogen)を加えて50単位/ml終濃度にし、混合物を5% CO2中で37℃でさらに2日間インキュベートした。
【0156】
(3) 7日目に、100 mM EDTA含有PBS中に50マイクログラム/mlの濃度までマイトマイシンCを加え、今や分化した樹状細胞培養物の成長を停止させた。該溶液を5% CO2中で37℃で60分間インキュベートした。フラスコを穏やかにたたくことによって樹状細胞をプラスチック表面からはがした。そして樹状細胞を600 xgで5分間遠心分離し、DPBSで洗浄し、上記のようにカウントした。
【0157】
(4) 96ウェル丸底プレートに、1ウェルあたり100マイクロリットル総容量のAIM V培地中、2x104細胞/ウェルの濃度で、調製した樹状細胞を入れた。
【0158】
Dynal CD4+ T細胞濃縮キット(Dynal)によって供給される試薬を使用して、樹状細胞の調製に使用される末梢血細胞サンプルの凍結アリコートからCD4+ T細胞を調製した。得られたCD4+ 細胞溶液を遠心分離し、AIM V培地に再懸濁し、当技術分野において公知の方法を使用して細胞密度を決定した。そしてCD4+ T細胞懸濁液をAIM V培地中の2x106/mlのカウントまで再懸濁し、96ウェルプレートの効率的操作を容易にした。
【0159】
実施例2
PE中のT細胞エピトープの特定
実施例3に記載のI-MUNE (登録商標)アッセイで使用するためのペプチドは、PE GenBank Accession No.AAB59097から入手したPE-38の配列に基づいて調製したが、該寄託配列のアミノ酸251位から出発し、該寄託配列中のアミノ酸365-380の欠失を有した。ゆえに、これらの実験で使用される配列は以下の配列を有するものであった:

【0160】
(配列番号1)。
【0161】
上記PE38のアミノ酸配列に基づいて、PEの配列全体を含む3アミノ酸ずれた15量体のセットをMimotopesによって合成的に製造した。さらなるペプチドはこの表に含まれる。これらのペプチドの配列を以下に挙げる:
【表2】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】
DMSO中の2 mg/ml原液としてペプチド抗原を調製した。まず、0.5マイクロリットルの原液を96ウェルプレートの各ウェルに入れ、該プレートには、分化した樹状細胞をあらかじめ入れた。そして、上で調製された100マイクロリットルの希釈CD4+ T細胞溶液を各ウェルに加えた。有用なコントロールには、希釈DMSOブランク、およびテタヌストキソイドポジティブコントロールが含まれる。
【0170】
20マイクロリットル総容量での各ウェルの終濃度は以下の通りである:
2x104 CD4+
2x105樹状細胞(R:S 10:1)
5μMペプチド。
【0171】
実施例3
ヒトT細胞を使用してPE中のペプチドT細胞エピトープを特定するためのI-MUNE (登録商標)アッセイ
アッセイ試薬(すなわち細胞、ペプチド、等)を調製し、96ウェルプレート中に分配した後、I-MUNE (登録商標)アッセイを行った。コントロールは、樹状細胞を、CD4+ T細胞のみを(DMSO担体とともに)加えて、およびテタヌストキソイド(Wyeth-Ayerst)とともに、約5 Lf/mLで含んでいた。
【0172】
培養物を5% CO2中で37℃で5日間インキュベートした。0.5マイクロCi/ウェルでトリチウム化チミジン(NEN)を加えた。培養物を回収し、翌日、Wallac TriBetaシンチレーション検出系(Wallace Oy)を使用して、取り込みを評価した。
【0173】
すべての試験を少なくとも2回実施した。報告されたすべての試験は、抗原テタヌストキソイドに対して活発なポジティブコントロール応答を示した。各実験内で応答を平均し、そしてベースライン応答に対して標準化した。応答がベースライン応答の少なくとも2.95倍であれば、陽性イベント(すなわち増殖応答)を記録した。
【0174】
PEから調製されたペプチドに対する免疫原性応答(すなわちT細胞増殖)を集計した。このペプチドセットに対する応答の総バックグラウンドレートは被験ドナーに関して5.60±3.64であった。これらの方法を使用して、潜在的に目的の種々のペプチドを特定した。該ペプチドには、以下の表3中のペプチドが含まれる。ペプチド75は配列ARGRIRNGALLRVY (配列番号5)を有し、ペプチド76は配列RIRNGALLRVYVPRS (配列番号6)を有する。ペプチド「75-76」は表3で指定されるペプチド75と76の組み合わせである。
【0175】
表3. PE中の目的のペプチド
【表3】

【0176】
ペプチド#75-76、#15および#65を目的のペプチドとして特定した。該ペプチドは、それぞれ22.62%、14.29%および14.29%の応答者を有した。ゆえに、ペプチド75-76をメジャー(すなわち有効な)エピトープとして特定し、ペプチド15および65をマイナーエピトープとして特定した。
【0177】
本明細書中にさらに記載されるように、これらのペプチド中またはその周囲のアミノ酸改変によって、低アレルゲン性/免疫原性PEとしての使用に好適な変異体PEが得られることが考慮される。
【0178】
実施例4
エピトープペプチドとHLAの関連性
市販のPCRベースのHLA型判定キット(Bio-Synthesis)を使用して、上記アッセイ検査の全ラウンドにおける被験84ドナーのHLA-DRおよびDQ発現を評価した。目的のエピトープ(すなわちペプチド#75、#76、#75-76、#15、および#65)に対する応答者および非応答者間の個々のHLAクラスII DRB1およびDQB1抗原の表現型頻度を、カイ二乗解析を1自由度で使用して試験した。
【0179】
カイ二乗検定(1自由度)およびフィッシャーの正確検定の両検定を使用して、エピトープ反応性および非反応性ドナー間の個々のDRおよびDQ抗原の表現型頻度(存在または不存在)を試験した。反応性および非反応性の両ドナー中にHLA抗原が存在する場合はいつでも、相対的リスク(すなわちHLA抗原の存在を条件とする反応を示す可能性の増加または減少)を計算した。特定のエピトープに対するそれらの反応によって階層化されたドナー間の対立遺伝子頻度をさらに計算した。刺激指数が遺伝子型間で異なるかどうかを評価するために、S-Plus 6 (Insightful)を使用して単一要因分散分析(ANOVA)を実行した。
【0180】
#15および#65に対する両応答および定量的増殖応答とDR15の存在の非常に重大な関連性が観察された。さらに、#75に対する両応答および刺激指数間の重大な関連性がDQ9に関して観察され、DR15に関して低い程度に観察された。#76に関して見出された唯一のHLA関連性は応答者間のDR4の不存在と関連していた。#75および#76に関して観察された同関連性が、組み合わせの#75-76エピトープに関して観察された(#76または#75のいずれかに対する応答として規定される)が、p値はすべての場合で高くなった(より弱い関連性を示す)。
【0181】
つまり、ペプチド#15 (2% vs 25%; p<7 x 10-6)および#65 (75% vs 28%; p<0.0014)に反応した個体間でDR15が非常に増加していることが見出された。両ペプチドに関して、定量的増殖応答(SI)もまた、非キャリア間よりDR15キャリア間で有意に高かったが、それはすべてのサンプルが研究された場合のみであった。応答者および非応答者を別々に分析した場合に傾向は同じであったが、比較は統計学的有意性に達しなかった。
【0182】
また、一般にDR15と同じハプロタイプ中に見出されるDQ6が、#15に対する応答者間で有意に増加していることが見出された(83% vs 40%; p<0.006)。さらに、#15に対する有意に高いSIがこの抗原のキャリア間で観察された(p<0.05)。しかし、この抗原の存在は#65に対する応答と関連しなかった(R+において58% vs R-において45%)。
【0183】
DQ5は#15に対する応答者間で減少した(8% vs 39%; p<0.04)が、キャリアは、非キャリアより有意に低いSIを示さなかった。DQ9は、ペプチド#75に反応した個体間で有意に増加した(26% vs 3%; p<0.0013)。DR14 (26% vs 6%; p<0.015)およびDR9 (16% vs 2%; p<0.011)に関しても同じ結果であったが、程度は低かった。DR14およびDQ9の両キャリアは、すべてのドナーを分析した場合に、非キャリアより有意に高い定量的増殖応答を示した(それぞれp<0.001およびp<0.0001)。
【0184】
DQ8は#75に対する応答者間で不存在であった(非応答者間では26%)。この差異は統計学的に有意であり、p<0.013であったが、この抗原の存在は有意に低いSIを決定付けなかった。
【0185】
DR4は、#76に対する応答者より非応答者間で高頻度で見出された(R+において8% vs R-において32%; p<0.07)。この抗原のキャリアは非キャリアより低いSIを有した(p<0.057)が、この差異は統計学的に完全に有意というわけではなかった。
【0186】
#75および#76に関して観察されたHLA抗原(DR4、DR9、DQ8、DQ9、DR14)との同関連性が、組み合わせの#75-76エピトープに関して観察された(#76または#75のいずれかに対する応答として規定される)。しかし、すべての場合で、p値は高くなり、DR9、DQ9、およびDR14に関する相対的リスクはすべて低くなった。このことは、これらのHLA抗原および該組み合わせペプチドに対する応答間の弱い関連性を示す。これらの実験で得られた結果は、HLA抗原がPE38中で研究されたすべてのエピトープに対する増殖応答を調節するようであることを示す。これらのうち最強のものは、DR15およびペプチド#15および#65ならびにDQ9およびペプチド#75間である。
【0187】
ゆえに、エピトープ関連HLA対立遺伝子を発現している応答者および非応答者における個々のペプチドに対する増殖応答の大きさを分析した。「ペプチドに対する個々の応答者」は2.95を超える刺激指数によって規定される。HLA対立遺伝子と関連しているエピトープを発現しているドナーにおける増殖応答は、関連対立遺伝子を発現していないペプチド応答者より高いことが考慮される。
【0188】
上記から、本発明が野生型PE中のT細胞エピトープを特定するための方法および組成物を提供することが明らかである。抗原性エピトープを特定した後、該エピトープを所望されるように改変し、改変したエピトープのペプチド配列を野生型PEに組み入れて、該改変配列がもはやCD4+ T細胞応答を開始可能でないようにするか、またはCD4+ T細胞応答が野生型の親と比較して顕著に低下するようにする。特に、本発明は、PEの免疫原性を低減するために好適な手段、例えば方法および組成物を提供する。
【0189】
実施例5
重要な残基の検査
この実施例では、ペプチド#75-76、#15、および#65の変異体の重要な残基を検査する実験を記載する。これらの実験では、親ペプチド(すなわちペプチド#15、#75-76および#65)の各々の変異体を生産するために、各ペプチドに関してアラニン走査を実施する。当技術分野において公知のマルチピン合成技術を使用して、これらの変異体ペプチドを合成する(例えばMaeji et al., J. Immunol. Meth., 134:23-33 [1990]を参照のこと)。
【0190】
ドナーサンプルのセットに対して、変異体ペプチドを利用して、実施例3に記載のようにアッセイを実施する。増殖応答をそろえ、結果を分析する。
【0191】
実施例6
エピトープ改変
上記のように、アラニン走査突然変異ペプチドとともに追加セットのドナーに対するI-MUNE (登録商標)アッセイ(上記参照のこと)において、目的の種々のペプチド中の特定のアミノ酸置換を試験する。そして、エピトープ##75-76、#15および#65を包含するPEのペプチド配列にわたる3アミノ酸ずれた15量体ペプチドとしてこれらのペプチドを試験する。該アミノ酸変異体が別のフレームで新規CD4+ T細胞エピトープを導入しなかったことを保証するために、これらの試験を実施する。
【0192】
実施例7
PBMC増殖アッセイ
この実施例では、PBMCを刺激するPEおよびエピトープ改変PEの能力を評価するために行われる実験を記載する。すべてのタンパク質を精製し、約2 mg/mlにする。
【0193】
これらの実験で使用される血液サンプルは上記(すなわち上記実施例1)と同じである。当技術分野において知られているように、Lymphoprepを使用してPBMCを分離する。PBMCをPBSで洗浄し、Cell Dyn (登録商標) 3700血液分析計(Abbott)を使用してカウントする。細胞数および差異を記録する。熱で不活性化されたヒトAB血清、RPMI 1640、pen/strep、グルタミン、および2-MEの溶液中に4 x 106細胞/mlでPBMCを再懸濁する。そして、24ウェルプレートにウェルあたり2 mlを入れる。2ウェルを無酵素コントロールとして使用する。そして、10 ug/ml、20 ug/ml、および40 ug/mlの濃度で未改変PEおよび改変PEをウェルに加える。プレートを、5% CO2、加湿雰囲気中で37℃で6-7日間インキュベートする。回収日に、各ウェル中の細胞を混合し、ウェル中で再懸濁する。そして、各ウェル由来の100 ulからなる8アリコートを96ウェルマイクロタイタープレートに移す。これらのウェルに、0.25 uCiのトリチウム化チミジンを加える。これらのプレートを6時間インキュベートし、細胞を回収し、カウントする。分析のために、各ウェル由来の8複製物のデータを平均する。コントロール用に2ウェルをサンプリングし、トータルで32の複製物を得る。8コントロールウェルの各セットを平均し、4平均値を使用して、各ドナーに関する変異係数(CV)を算出する。各サンプルに関する8ウェルの各セットの平均をコントロールウェルの平均CPMで除算することによってSI値を算出する。各ドナーおよび各酵素に関して達成された最高SI値を表すデータセットを作成することによってデータを解析する。
【0194】
上記明細書中に記載のすべての刊行物および特許は参照により本明細書中に組み入れられる。本発明の上記方法および系についての種々の改変およびバリエーションは当業者に自明であり、本発明の範囲および思想から逸脱することはない。特定の好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、分子生物学、免疫学、製剤化、および/または関連分野の当業者に自明の、本発明を実行するための上記様式についての種々の改変は、本発明の範囲内であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親シュードモナス外毒素A (PE)と比較して少なくとも1つの突然変異を含むPE変異体であって、少なくとも1つの該突然変異が、親PE内の配列番号2、3、4、5、および6のうちの1つ以上に対応する少なくとも1つのペプチド配列内にあり;
ただし、変異体が、配列番号2および6内の配列番号1の224位に対応するアルギニン残基の位置にアミノ酸置換を含む場合、親PE内の配列番号2、3、4、5、および6のうちの1つ以上に対応する少なくとも1つのペプチド配列内に少なくとも1つのさらなる突然変異が存在することを条件とする、上記PE変異体。
【請求項2】
少なくとも1つの突然変異が、配列番号2に対応するペプチド配列内にある、請求項1に記載のPE変異体。
【請求項3】
親PEが野生型PEである、請求項1または請求項2に記載のPE変異体。
【請求項4】
親PEがPE38である、請求項1または請求項2に記載のPE変異体。
【請求項5】
配列番号1の224位に対応するアルギニン残基の位置に突然変異を含む、請求項4に記載のPE変異体。
【請求項6】
親PEが、配列番号1の224位に対応するアルギニン残基の位置に突然変異を有するPE38である、請求項1または請求項2に記載のPE変異体。
【請求項7】
アルギニンの位置の突然変異がアラニンへの突然変異である、請求項5または請求項6に記載のPE変異体。
【請求項8】
親PEと比較して低下した免疫原性を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のPE変異体。
【請求項9】
抗体分子にコンジュゲートされている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のPE変異体。
【請求項10】
抗体分子が、抗CD22、抗メソテリン(mesothelin)、抗CD25および抗ルイスY抗体分子からなる群から選択される、請求項9に記載のPE変異体。
【請求項11】
抗体分子が抗CD22抗体分子である、請求項10に記載のPE変異体。
【請求項12】
癌ターゲティング分子にコンジュゲートされている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のPE変異体。
【請求項13】
癌ターゲティング分子が、成長因子およびサイトカインからなる群から選択される、請求項12に記載のPE変異体。
【請求項14】
抗体分子もしくは癌ターゲティング分子またはそれらのポリペプチド鎖を含む融合タンパク質の部分として、ペプチド結合によって、抗体分子または癌ターゲティング分子にコンジュゲートされている、請求項9〜13のいずれか一項に記載のPE変異体。
【請求項15】
請求項1〜8、または請求項14のいずれか一項に記載のPE変異体をコードする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項1〜8、または請求項14のいずれか一項に記載のPE変異体をコードする核酸を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項18】
PE変異体を製造する方法であって、請求項17に記載の宿主細胞を培養するステップおよびコード核酸から発現された変異体を精製するステップを含む方法。
【請求項19】
製薬的に許容される成分を含む組成物中に変異体を製剤化するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のPE変異体を製造する方法であって、親PEをコードする核酸配列を突然変異させてPE変異体をコードする核酸を得るステップ、該PE変異体をコードする突然変異核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換するステップ、および該コード核酸から発現されたPE変異体を精製するステップを含む方法。
【請求項21】
親PEと比較して免疫原性に関してPE変異体を検査するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PE変異体が、親PEと比較して低下した免疫原性を有する、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
製薬的に許容される成分を含む組成物中に変異体を製剤化するステップをさらに含む、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
配列番号2、3、4、5、および6のいずれかのアミノ酸配列からなる、単離されたペプチド。

【公表番号】特表2009−511000(P2009−511000A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530608(P2008−530608)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003384
【国際公開番号】WO2007/031741
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(506042265)メディミューン リミテッド (11)
【Fターム(参考)】