説明

シュー生地と共に配して焼成するクッキー生地、これを用いたシューパフ、更にこの製造方法

【課題】 本発明は、シュー生地と共に配して焼成した時にも、焼け焦げが生じることが低減されたクッキー生地、これを使用したシューパフ、さらにはこの製造方法を提供することを目的とする。また、これを用いた作業性の良い製造方法を提供することも目的とする。
【解決手段】 小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むことを特徴とする、シュー生地と共に配して焼成するクッキー生地を提供した。また、このクッキー生地とシュー生地を配して焼成してなるシューパフを提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクッキーシューを製造する時の様に、シュー生地と共に配して焼成する必要のあるクッキー生地、これらを用いて製造したシューパフ、更にこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シューパフは、通常練り上げた生地をそのまま絞った後に焼成して製造されていたが、最近の傾向としては、様々の形状(パイシュー、クッキーシュー、トッピングシュー等)にした多様化シューが多く販売されるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その中でクッキーシューの製造については、一般的には、天板に絞ったシュー生地の上に、予め薄く延ばして所定のサイズに成型したクッキー生地をのせて焼成し製造されている。この場合、シュー生地が焼き上がる温度とクッキー生地が焼き上がる温度を比べた場合、その組成の違いからシュー生地が焼き上がる温度の方が高いために、クッキー生地が焦げ過ぎる、或いはシュー生地が生焼けとなるという問題があった。また、手作業で生地をのせる等、製造作業には多くの工程が必要で有り、作業性もよいものでは無かった。
【0004】
また、包餡機を使用して製造する場合には作業性は向上できるが、通常の包餡機を用いると外生地(通常はクッキー生地となる)が外面の大半、又は全面を覆う為に特に底部、更に底部近傍の焼け焦げが顕著となり、商品価値のあるクッキーシューを製造することができなかった。
【特許文献1】登録実用新案第3086215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シュー生地と共に配して焼成した時にも、焼け焦げが生じることが低減されたクッキー生地、これを使用したシューパフ、さらにはこの製造方法を提供することを目的とする。また、これを用いた作業性の良い製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、クッキー生地を特定の配合とすることで、シュー生地と共に配して焼成した場合でも、焼け焦げが生じることが低減できること、更に、この生地を用いれば一般的な包餡機を用いて商品価値のあるシューパフを製造することができることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むことを特徴とする、シュー生地と共に配して焼成するクッキー生地を提供した。
【0008】
また、前記クッキー生地とシュー生地を配して焼成してなることを特徴とするシューパフを提供した。
【0009】
また、小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むクッキー生地とシュー生地を配して焼成することを特徴とするシューパフの製造方法を提供した。
【0010】
また、包餡機を用いてシュー生地の上面又は外周にクッキー生地を配することを特徴とする前記シューパフの製造方法を提供した。
【0011】
また、冷凍保存された生地を使用する場合は、シュー生地とクッキー生地が配された生地を、一旦10〜30℃に解凍した後、生地を上面から押さえて圧縮した状態で焼成することを特徴とする、前記シューパフの製造方法を提供した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クッキー生地とシュー生地の両方を配して焼成したシューパフであっても、焼け焦げを低減することが可能となる。また、包餡機を用いた場合でも、商品価値のあるシューパフが得られることから、効率よく生産することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0014】
本発明は、第1には、小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むことを特徴とする、シュー生地と共に配して焼成するクッキー生地に関するものである。また、このクッキー生地と共に用いられるシュー生地は、小麦粉100重量部に対して、卵150〜200重量部、水80〜150重量部、油脂50〜150重量部、膨張剤0.5〜2重量部を含んでなることが好ましい。
【0015】
本発明で使用する小麦粉は、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、特級薄力粉等が挙げられるが、中でも薄力粉、特級薄力粉が好ましい。
【0016】
また、本発明で使用する卵は、特に限定はしないが、液全卵、生卵黄、生卵白、凍結卵黄、凍結卵白等が挙げられ、中でも液全卵を用いることが好ましい。またシュー生地における卵の割合は、小麦粉100重量部に対して、150〜200重量部、更には150〜180重量部であることが好ましい。シュー生地における卵の割合が200重量部より多いと、生地が軟化しすぎ、焼成中、充分に膨らまない場合がある。また、逆に150重量部より少ない場合は、風味は乏しく、生地が硬くなり焼成後の形状が歪になる場合があり好ましくない。一方、クッキー生地における卵の割合は、0〜10重量部、更には0〜5重量部であることが好ましい。クッキー生地における卵の割合が10重量部より多いと、生地が軟化しすぎる場合がある。
【0017】
また、本発明において使用する油脂の種類は、特に限定されないが、例えば牛脂、豚脂、バターなどの動物油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油などの植物油、又はそれらをエステル交換、分別、硬化したものを、単独或いは2種以上混合したものが挙げられる。これらの中でも常温で固体の油脂が特に好ましい。尚、クッキー生地における油脂の割合は、小麦粉100重量部に対して、50〜150重量部、更には80〜120重量部、特に90〜100重量部であることが好ましい。50重量部より少ないと、生地がまとまりにくく、食感も硬くなり過ぎる場合がある。150重量部より多いと、生地がべたつき作業性が悪くなる場合がある。一方、シュー生地における油脂の割合は、小麦粉100重量部に対して、50〜150重量部、更には80〜120重量部、特に90〜100重量部であることが好ましい。50重量部より少ないと、風味が乏しく、膨らみの悪いシューパフとなる場合がる。150重量部より多いと、味が濃厚となり、生地もべたつき作業性が悪くなる場合がある。
【0018】
本発明においては、クッキー生地中に糖アルコールが含まれている必要がある。一般に使用される糖質、例えば上白糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、液糖等では、メイラード反応による褐変、カラメル化による焼け焦げが生じるが、糖アルコールを用いることにより、焼け焦げを低減することが可能となる。この様な観点から、糖アルコールの中でも特に焼け焦げの無い、或いは少ない糖アルコールが好ましく、この観点から特にマルチトールが好ましい。クッキー生地中における糖アルコールの割合は、小麦粉100重量部に対して、50〜120重量部、更に60〜110重量部、特に70〜100重量部の範囲内であることが好ましい。80重量部より少ないと、甘さの足りない、淡白な味になる場合がある。150重量部より多いと、甘さが強く、濃厚な味になりすぎる場合がある。
【0019】
また、本発明においては、必要に応じて、クッキー生地、シュー生地の各生地、特にクッキー生地に香料を添加することができる。添加する香料は特に限定されるものではないが、例えば、バニラオイル、バニラエキス、バターオイル、ミルクオイル等を用いることが可能である。本発明においては、特にクッキー生地中に小麦粉100重量部に対して、0.3〜1重量部の割合で香料が含まれていることが好ましい。0.3重量部より少ない場合は、風味が弱くなることがあり好ましくなく、また1重量部より多い場合は、風味が強すぎて好ましくない。
【0020】
また、本発明において使用するシュー生地には、小麦粉100重量部に対して、更に水80〜150重量部、膨張剤0.5〜2重量部が添加されていることが好ましい。水の量が上記範囲を下回ると糊化が十分とならず膨らみが不十分となる可能性があり、逆に上まわると生地の粘度が低くなりすぎ、やはり膨らみが不十分となる可能性がある。また、膨張剤の量が上記範囲を下回ると十分な膨張を得ることができない可能性があり、逆に上まわると、膨張剤の風味が残り好ましくない可能性がある。
【0021】
本発明のシューパフは、クッキー生地とシュー生地を配して焼成して製造されることが好ましく、特にシュー生地の上面又は外周にクッキー生地を配して焼成されていることが好ましい(尚、本願では、クッキー生地とシュー生地を配して形成した焼成前の加工物を、単に生地と言うことがある。)。例えば、従来のクッキーシューでは、クッキー生地部分に焼け焦げが生じやすい為に、クッキー生地をシュー生地の上面に配置して少しでも焼け焦げを低減する等の工夫が必要があったが、本発明によれば、クッキー生地をシュー生地の上面だけでなく、外周、特に下面側にも配置することが可能である。尚、シュー生地の外周全体又はその大半(例えば表面積の70%以上)をクッキー生地で覆うことにより、二次的な効果として、生地を冷凍保存する際でも、冷凍障害(乾燥、風味の低下等)の生じやすいシュー生地を冷凍障害から保護することが可能となる。但し、クッキー生地の配置は、その菓子のデザインや、食感等の点から、各種の好ましい配置を取ることができる。
【0022】
上記の様なシュー生地とクッキー生地が配された生地は、手作業で形成しても良いが、作業性、生産性、更に製造するシューパフの形状ばらつき低減の点から、包餡機を用いて形成することが好ましい。包餡機を用いた場合に、通常外生地とされることの多いクッキー生地が下面や下面周辺へ配されることが多いが、本発明によれば焼け焦げを低減することが可能であり、商品価値のあるシューパフを得ることが可能である。
【0023】
また、包餡機を用いる場合は、特に包餡機に供する生地の温度は、シュー生地、クッキー生地共に5℃〜20℃に温調されていることが好ましい。この温度域を外れると、装置中で生地がべた付いたり、特定の成分が溶出する等、継続して安定的に生産することが難しくなることがある。
【0024】
また、例えば上記の様にして形成された生地は、上面から押さえて圧縮した状態で焼成することが好ましい。これにより、焼成後のシューパフの形状の均一性を高めることが可能となる。
【0025】
一方、生地を一旦冷凍保存(一般的には、緩慢冷凍時では−5〜−15℃、急速冷凍時では−15〜−30℃。)した後に使用する場合は、焼成の前に室温近傍の10〜30℃、特に15〜25℃に解凍しておくことが好ましい。生地温度が10℃より低い温度で焼成すると、生地内部が昇温する前に表面が硬化してしまい膨らみが十分得られない可能性がある。尚、逆に30℃より高いと、生地の形状が崩れる可能性がある。また、生地を上面から押さえて圧縮した状態で焼成することが好ましい。これにより、焼成後のシューパフの形状の均一性を高めることが可能となる。尚、その際の圧縮幅は、使用する生地の量にもよるが、2〜10mm、更には3〜7mmであることが好ましい。
【0026】
本発明における包餡時の内生地、外生地の割合は、特に制限はないが、1:1(重量:重量)が一般的で、重量も特に制限はないが、内生地と外生地を合わせて45g〜55g程度が焼成した際の形状として好ましい。
【0027】
本発明における生地の製法は、例えば以下の手順で行うことができる。まず外生地として使用するクッキー生地を先に調製しておく。即ち、油脂、糖アルコールを擦り合わせる。次に、予め篩った小麦粉、必要に応じて、膨張剤、香料を順次加え、均一に混合する。包餡機で包餡しやすい固さまで冷却する。次に内生地として使用するシュー生地を調製する。即ち、まず油脂と水を沸騰させる。次に、予め篩った小麦粉を加え、均一に混合する。次に、卵と膨張剤を加え充分に混合する。外生地同様、包餡機で包餡しやすい固さまで冷却する。次に包餡機で所定の割合、大きさに包餡する。包餡された生地は一旦冷凍して固める。次に包餡された生地を天板に並べ室温で解凍し、上から少し抑えてから、温度185〜195℃のオーブンで、15〜20分焼成してクッキーとシューの2層構造のシューパフを得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0029】
(実施例1)
マーガリン(商品名:アラアルデンヌガトー、(株)カネカ社製)83部(油脂のみの部数は81.7部)、糖アルコール(マルチトール)83部を擦り合わせる。次に、薄力粉(商品名:バイオレット、日清製粉(株)社製)100部を篩いに通し混合する。この生地を冷却(15℃)して包餡用の外材(クッキー生地)とする。次に、包餡用内材(シュー生地)として、シュー用ファットスプレッド(商品名:シューエクセルクリア、(株)カネカ社製)80部(油脂のみの部数は77.1部)、水100部を加え沸騰させる。次に、薄力粉(商品名:バイオレット、日清製粉(株)社製)100部を篩いに通し混合する。次に、卵180部、アンモニア1部を数回に分けて加え混合する。冷却後(15℃)包餡用内材(シュー生地)とする。これを先ほどの外材と共に包餡機を使って、約50g(外材部約25g、内材部約25g)に包餡し、一旦冷凍して固めた後、天板に並べて室温で解凍し、上から約5mm押さえ185℃で20分焼成した。焼成後のシューパフは、外生地であるクッキーの底部の焦げが少なく、均一に生地が広がった形状の整った2層構造のシューパフが得られた。
【0030】
(実施例2)
実施例1において、外生地(クッキー生地)/内生地(シュー生地)の包餡の割合を外生地(クッキー生地)/内生地(シュー生地)=1/2にした以外は、同様の方法にて焼成してなる2層構造のシューパフを作製した。形状、食感、口溶けは良好で、底部の焦げは少なかったが、シューの膨らみが大きく、クッキーが全面に広がらない構造のシューパフとなった。
【0031】
(実施例3)
実施例1において、外生地(クッキー生地)/内生地(シュー生地)の包餡の割合を外生地(クッキー生地)/内生地(シュー生地)=2/1にした以外は、同様の方法にて焼成してなる2層構造のシューパフを作製した。形状、食感、口溶けは良好で、底部の焦げは少なかったが、膨らみが小さい構造のシューパフが得られた。
【0032】
(実施例4)
実施例1において、外生地(クッキー生地)、内生地(シュー生地)を冷却しない以外は、同様の方法にて焼成してなるシューパフを作製した。包餡時の生地がべたつき、更に内材、外材の粘度が低い為に重量のばらつきがみられたが、外生地であるクッキーの底部の焦げが少なく、均一に生地が広がった形状2層構造のシューパフが得られた。
【0033】
(比較例1)
実施例1の包餡用の外材(クッキー生地)の組成において、糖アルコール(マルチトール)83部を上白糖83部に変更した以外は、実施例1と同一の方法でシューパフを製造した。焼成後のシューパフは、均一に生地が広がった形状の整った2層構造のシューパフであったが、外生地であるクッキーの底部にひどい焼け焦げが生じ、商品価値のあるシューパフとはならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むことを特徴とする、シュー生地と共に配して焼成するクッキー生地。
【請求項2】
請求項1に記載のクッキー生地とシュー生地を配して焼成してなることを特徴とするシューパフ。
【請求項3】
シュー生地の上面又は外周にクッキー生地を配して焼成してなることを特徴とする請求項2に記載のシューパフ。
【請求項4】
小麦粉100重量部に対して、油脂50〜150重量部、糖アルコール50〜120重量部を含むクッキー生地とシュー生地を配して焼成することを特徴とするシューパフの製造方法。
【請求項5】
シュー生地が、小麦粉100重量部に対して、卵150〜200重量部、水80〜150重量部、油脂50〜150重量部、膨張剤0.5〜2重量部を含んでなることを特徴とする請求項4に記載のシューパフの製造方法。
【請求項6】
シュー生地の上面又は外周にクッキー生地を配して焼成することを特徴とする請求項4又は5の何れか1項に記載のシューパフの製造方法。
【請求項7】
包餡機を用いてシュー生地の上面又は外周にクッキー生地を配することを特徴とする請求項6に記載のシューパフの製造方法。
【請求項8】
5℃〜20℃に温調されたシュー生地とクッキー生地を包餡機に供することを特徴とする請求項7に記載のシューパフの製造方法。
【請求項9】
シュー生地とクッキー生地が配された5℃〜20℃の生地を、上面から押さえて圧縮した状態で焼成することを特徴とする、請求項4〜8の何れか1項に記載のシューパフの製造方法。
【請求項10】
冷凍保存された、シュー生地とクッキー生地が配された生地を、一旦10〜30℃に解凍した後、生地を上面から押さえて圧縮した状態で焼成することを特徴とする、請求項4〜8の何れか1項に記載のシューパフの製造方法。

【公開番号】特開2008−271810(P2008−271810A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117398(P2007−117398)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】