説明

ショートニング用乳化剤組成物

本発明は、ドウ脂肪またはフィリング脂肪として使用するためのショートニング系、例えば、未水素添加または非水素添加の植物油、例えば、高度不飽和の未水素添加または非水素添加植物油(例えば、大豆油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、米ぬか油、または綿実油)と、最少量または少量(重量で約3〜10%、有利には約3〜7%、より有利には約3〜6%または約3〜5%または約6%未満または約8%未満)の乳化剤組成物を含むか、これらから本質的になるか、あるいはこれらからなるショートニング系に関し、この乳化剤組成物は、モノグリセリドおよび/またはジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤およびイオン性乳化剤を含み、本発明はまた、このようなショートニング系を製造および使用する方法、ならびにこのようなショートニング系を用いて得た製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、乳化剤組成物、このような乳化剤を含むショートニング組成物、ドウ脂肪またはフィリング脂肪としてのショートニング組成物の使用(例えば、高度不飽和の未水素添加(unhydrogenated)または非水素添加(non−hydrogenated)の植物油(例えば、大豆油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、米ぬか油、または綿実油)のような未水素添加または非水素添加の植物油と、最少量または少量(例えば、重量で約3〜10%、有利には約3〜7%、より有利には約3〜6%または約3〜5%または約6%未満または約8%未満)の乳化剤組成物とを含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなるショートニング系であって、この乳化剤組成物が、このモノグリセリドおよび/またはジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤(alpha tending emulsifier)、およびイオン性乳化剤を含むか、これらから本質的になるか、あるいはこれらからなる、ショートニング系)に関し、そして本発明は、このようなショートニング系を製造および使用する方法、ならびにこのようなショートニング系を用いて得た製品に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
脂肪酸は、カルボキシル基および炭化水素鎖から構成される。個々の脂肪酸は、炭化水素鎖の性質によって互いに区別される。この鎖は、長さが炭素原子4個から24個まで変化し得、飽和であっても、一不飽和(1つの二重結合、MUFA)であっても、または多価不飽和(2つ以上の二重結合、PUFA)であってもよい。食用油脂で最も一般的な脂肪酸は、18個の炭素を含む脂肪酸である。これらの脂肪酸としては、ステアリン酸(飽和脂肪酸)、オレイン酸(一不飽和脂肪酸)、ならびにリノール酸およびリノレン酸(それぞれ、2個の二重結合を含む多価不飽和脂肪酸および3個の二重結合を含む多価不飽和脂肪酸)が挙げられる。オクタデカン酸脂肪酸の構造は以下のとおりである:
【0003】
【化1】

脂肪酸の略号は、分子中の炭素原子の数およびシスエチレン性二重結合の数に従ってつくられる。一般に、複数の二重結合がすべてメチレン中断型であることを前提としている。化学命名法では、炭素原子は脂肪酸のカルボキシル末端から数えられる必要がある。しかしながら、生物活性については、炭素原子は末端メチル基からエチレン性結合の1番目の炭素まで番号付けされる。このような分類は、以下の記号によって命名される:
【0004】
【化2】

ここで、xは末端メチル基に最も近い二重結合の位置を示す。例えば、2つの二重結合を有し、1つはメチル基から数えて6番目の炭素原子上に位置するリノール酸は、C18:2n−6と略記される。
【0005】
不飽和脂肪酸の場合、炭素鎖は二重結合で定位置に曲がり、いくつかの可能な幾何異性体を生じる。炭素鎖の各部分が互いの方へ曲がっている場合、これらの異性体はシスと呼ばれる;そして互いに離れて曲がっている場合、トランスと呼ばれる。脂肪酸の天然の配置は、オレイン酸について示されるように、シスである。対応するトランス配置(エライジン酸)は、直鎖となる。
【0006】
現在米国において、部分水素添加脂肪は、多くの化学的に発酵させたベーカリー製品および酵母で膨らませたベーカリー製品(例えば、ケーキ、クラッカー、クッキー、シリアルバーなど)の製造に用いられている。大豆、綿実、トウモロコシ、ヒマワリ、および/またはアブラナに由来する国産品油の部分水素添加により、不飽和脂肪酸を、酸化安定性がさらに大きい飽和脂肪酸へと化学環元することが可能になる。
【0007】
飽和脂肪酸は室温で固体であるが不飽和脂肪酸は室温で液体であるので、水素添加は、これらの液体油に固形脂肪分および融点の上昇を付与する、液体油の物理的改変である。結果として、天然には液体である油が、特定の融解曲線を有する半固体の脂肪に変換され得る。この形態の脂肪に最大の食べる楽しみを提供するために、これらの脂肪の水素添加プロセスは、部分的にのみ進行するように高度に制御されてそのように進行させる(すなわち、不飽和脂肪酸および/またはその結合の一部のみを還元して飽和形態にさせる)。これらのタイプの脂肪および脂肪酸は、「部分水素添加脂肪」または「部分水素添加油」または「部分水素添加脂肪酸」と呼ばれる。
【0008】
部分水素添加では、不飽和脂肪酸の飽和形態への還元に加えて、天然の形態の不飽和結合(シス異性体と呼ばれる)が平面でねじれる副反応が生じて、トランス異性体と呼ばれる不飽和脂肪酸の結合を形成する。
【0009】
一般に、シス異性体は食用油脂中に天然に存在するものである。非常に少量のトランス異性体が、反芻動物由来の脂肪中に存在するかまたは植物油脂の精製における脱臭工程により生じ得るが、ほとんどのトランス異性体は、油脂の部分水素添加により生じる。また、不飽和結合は、脂肪酸鎖に沿って横方向に移動することが可能であり、これは位置異性体と呼ばれる。これらの異性体は、水素添加反応の間に、および水素添加反応の間に代表的に用いられるニッケル触媒が不飽和結合の両側に水素原子をうまく導入することができない場合に、共通して高温(例えば、180℃〜240℃)で形成される。これらの異性体はかなり安定であり、その後、不飽和脂肪酸の還元が完了するまで水素添加反応が継続されなければ残存する。従って、部分水素添加脂肪は、常に、ある割合でこれらの位置異性体および幾何異性体を含み;そして、これらの異性体(特に、脂肪中に天然に存在しない異性体)が問題となり得る。
【0010】
例えば、代表的には、ベーカリー製品中に使用されるショートニングは、15〜35%のトランス異性体を含み得る。これらの異性体の使用は、この数年間で、栄養学に基づいてより詳細に検査されるようになった。油の部分水素添加の間に形成されるトランス脂肪酸の存在に関連して観察された健康へのネガティブな影響(例えば、冠状動脈性心疾患との正相関、血漿低密度リポタンパク質(LDL)の高密度リポ蛋白質(HDL)に対する割合の増加、従って、冠状動脈性心疾患のリスク増加の可能性)を報告する臨床研究がなされてきた(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3を参照のこと)。
【0011】
しかしながら、すべてのトランス脂肪酸が必ずしも「悪い」とは限らず、他の研究(より最近の研究を含む)は、トランス脂肪酸が、冠状動脈性心疾患とこのような相関を有さない場合があること、および/または、飽和脂肪酸、脂肪もしくは油に類似し得ることを示している。以下を参照のこと:非特許文献4(40の固形食実験により、トランス一不飽和脂肪、主にトランスC18:1(エライデート)の食事摂取に関する以下の情報を得た:トランス脂肪酸は英国の食事中のカロリーの2%しか占めないので、半分を等カロリーの炭水化物に置き換えても、血中総コレステロールはわずかに0.05(0.01)mmol/lしか減少しないと予想される;しかしながら、一不飽和脂肪の摂取は、多価不飽和脂肪とほぼ同程度だけ高密度リポタンパク質コレステロールを増加させるにもかかわらず、総コレステロールにも低密度リポタンパク質コレステロールにも有意な影響を及ぼさなかった;「食事性カロリーの10%を飽和脂肪から一不飽和脂肪(5%)および多価不飽和脂肪(5%)に置き換えることによって食事脂肪の量ではなく種類を変化させることと、食事コレステロールの消費を200mg少なくすることとの併用効果は、約0.8mmol/lの血中コレステロールの減少、主に低密度リポタンパク質コレステロールの減少である」);非特許文献5(パルミチン酸に富む食餌およびエライジン酸に富む食餌は、低レベルのコレステロールを含む食餌を与えた正常コレステロール値のオマキザル属サルにおけるLDL代謝に対して、同一の影響を及ぼした);非特許文献6(ウサギにおいて、トランス脂肪酸は、コレステロール値を上昇させるが、アテローム性動脈硬化症の重症度を増大させないことが示されている);非特許文献7(血漿リン脂質中のトランス脂肪酸のパーセンテージと血漿LDLコレステロール値またはHDLコレステロール値との間に、有意な相関は見出されなかった;すなわち、研究結果は、トランス脂肪酸摂取と冠状動脈性心疾患のリスクとの間の相関を支持しない);非特許文献8(トランス脂肪酸(TFA)の高い摂取量は、血清脂質プロフィールに対して望ましくない影響を及ぼすことが他の研究者らによって主張されているが、心血管系危険因子を合わせた後の総TFA摂取量とLDL、HDLまたはLDL/HDL比との間に相関は認められなかった;他の脂肪酸クラスターについてさらに合わせることにより、総TFA摂取量と総コレステロールとの間に有意な逆の傾向を生じた(Ptrend<0.03)−最も大量に生じるTFA異性体である、C18:1tが、この逆相関に実質的に寄与した;すなわち、トランス脂肪酸は、現在のヨーロッパ人のトランス脂肪酸摂取レベルでは、好ましくない血清脂質プロフィールに関係していない)。
【0012】
さらに、植物油脂の部分水素添加の間に形成されるトランス異性体の大部分は、動物の脂肪(バクセン酸)中に天然に存在するトランス異性体とは脂肪酸骨格(主にエライジン酸)に沿って異なる位置にあること、および反芻動物由来の脂肪は、報告によるとTFA(トランス脂肪酸)摂取量の20%〜25%の割合を占めることに留意することが重要である。従って、動物源に由来するトランス脂肪と植物源に由来するトランス脂肪は、心疾患の危険因子に対して異なる関係を示し得る。実際に、脂肪のトランス型は、飽和型と同じ性質の多くをもたらし得るので、一般にステルス脂肪と呼ばれている。
【0013】
従って、「トランス脂肪問題」の両方の立場で検討して報告がなされているようであり、かつ、トランス脂肪の供給源(動物 対 植物)が危険因子に影響を及ぼし得るので、食品中に大量またはかなりの量の部分水素添加油脂を使用する技術分野において、問題が存在し得る;そして、米国心臓病協会は、可能であれば天然に存在する未水素添加油を用いることを推奨している。
【0014】
さらに、部分水素添加脂肪または油によって生じる問題は、単に天然の飽和脂肪または天然の飽和油を使用するだけでは解決することができず;かつ、天然の飽和油脂の使用には問題がある。
【0015】
例えば、多くの栄養学者が、食餌中のTFAを飽和物に(特にパルミチン酸に)置き換えることに対して警告しているので、今やトランス油脂を飽和油脂に置き換えることは推奨されておらず;かつ、置換は生物学的重要性をほとんどもたらさないかもしれない(前出の引用文献を参照のこと)。実際に、飽和脂肪酸(すなわち、パルミチン酸)は、主に飽和脂肪酸由来の低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの増加によって総コレステロールを上昇させ得るので、飽和脂肪酸はTFAよりもさらに大きな健康問題を引き起こし得る。
【0016】
部分水素添加脂肪または部分水素添加油の別の可能な代替は、完全精製液体油および完全水素添加脂肪から処理され得る、エステル交換脂肪である。これらの処理されたエステル交換脂肪は、2つの脂肪のトリグリセリド上の脂肪酸が化学触媒または酵素によってランダム化され、その結果、適切な融解曲線をもたらし得るトリグリセリド組成物を生じるプロセスから得られる。理想的には、このプロセスのための油の選択は、非水素添加油、および天然に高度に飽和している熱帯性脂肪(例えば、ココナッツ油、パーム核油、および/またはパーム油あるいはそれらの画分)、または完全飽和でかつTFAを含まない完全水素添加脂肪のいずれかを含み得る。油と脂肪の割合は、部分水素添加脂肪の性質を模倣するように選択され得る。さらに、これらの処理脂肪はTFAを保存するために加工され得る。しかしながら、処理脂肪の残念な欠点は、その用途によって飽和脂肪が増加する可能性があることである。さらに、食品製造者または食品加工業者は、製品ラベルに完全水素添加脂肪または熱帯性脂肪を明記することが求められ、これらの脂肪は、TFAの形成および/または高い飽和物含有量に関連しているので、消費者に好まれないかもしれない。
【0017】
多価不飽和脂肪酸は、米国食品栄養委員会の推奨栄養所要量(第10版、1989年)によれば、健康食の非常に重要な成分であると考えられる(例えば、ヒトについての食事性リノール酸の量は、食事のカロリーの最低2%、好ましくは3%であるべきである;そして、リノレン酸の所要量は、カロリーの0.54%であると推定されている)。
【0018】
天然の植物油は、多価不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸に対する割合が比較的高いので、部分水素添加脂肪を単に天然の植物油に置き換えることが望ましいが、これを行う試みは、食品の加工面または官能面(例えば、味、テクスチャー、食感)のいずれかに関しても全く不満足であることもこれまでに証明されている。例えば、ドウまたはバッター中の油の保持が不十分であり得、その結果、油の分離を引き起こし得る。あるいは、液体油は、ドウなどのテクスチャーを粘着性またはだれ(long)にし得、その結果、加工の間に必要なシーティング、切断、成形、または押出し成形を妨げ得る。さらに、油は、口の中であまりにも速く食品から分離し得、その結果、消費される際に、味の変質および感触の変化を製品にもたらし得る。
【0019】
食品の調製における別の関連する問題は、「ブルーム」、すなわち、一部の脂肪または油が食品(例えばクッキー)の表面に浸透して、食品の表面上にスコーリングを残す現象である。この「ブルーム」は、食品の視覚的な魅力を損なわせ、それゆえ消費可能ではなくする。「ブルーム」の被害を受けないショートニング系を提供することが望ましい。
【0020】
食品界面活性剤または乳化剤の製造において、トリグリセリドはグリセロールと反応してモノグリセリドとジグリセリドの混合物を生成し得る。従って、この反応の生成物は、代表的には、ジグリセリドおよびトリグリセリドの生成物からモノグリセリド生成物を単離するための処理を受ける;ジグリセリドおよびトリグリセリドの生成物は、界面活性剤または乳化剤用のモノグリセリドを得るための、グリセロールとトリグリセリドとの反応の副産物と考えられる。ジグリセリドおよびトリグリセリド生成物は、ある場合には廃棄され、またある場合には反応器に戻して再循環され、この反応器中でモノグリセリドの生成を向上させるためにグリセロールとの反応が生じる(例えば、非特許文献9、およびその中に引用される参考文献を参照のこと)。
【0021】
脂肪または油として機能するかあるいは脂肪または油を含む系が提案されてきた(例えば、特許文献1〜特許文献20を参照のこと)。さらに、特許文献21および特許文献22、ならびにその中に引用される特許文献23〜特許文献51を含む参考文献;ならびに、非特許文献10〜非特許文献13が参照される。
【0022】
しかしながら、これらの系は当該分野における問題に十分に対処しておらず;かつ、これらの系は、相乗的でかつ驚くほど優れた本発明の加工特性(食料品の官能特性の改善を含む)をもたらすとは報告されていない。さらに、これらの系は、当該分野で生じている新しい問題にもさらなる問題にも十分には対処しないかもしれない。
【0023】
さらには特に、部分水素添加(PH)脂肪は、ベーカリーおよびベーカリー関連食品中にショートニング(例えば、ドウ脂肪またはフィリング脂肪)として用いられる。これらの脂肪は、空気混和性、乳化特性、滑らかさ、官能特性、構造安定性、および貯蔵寿命の延長のような特定の機能特性を食品にもたらし得る。
【0024】
例えば、PH脂肪は、ドウなどを滑らかにして良好な官能特性を与え得る。すなわち、PH脂肪は、食品のテクスチャーを脆くさせるのを補助して、焼成品の嗜好性を高めるのに利用される。さらに、PH脂肪は、ドウなどを滑らかにして加工の間に必要なショートネスを与え、食品があまり変形および欠陥を示さないように、発酵ガスの均一な分布をもたらす。
【0025】
また、PH脂肪は、製造中の食品構造の発達または安定に、あるいは様々な焼成品(ケーキ、押出し成形した焼成品およびシート状にした焼成品、型にはめて作ったかまたは機械により配置した(deposit)(ワイヤーカットした)クッキーを含む)の完成品に役立つ。
【0026】
これらの機能特性は、ショートニングのタイプ(すなわち、固形脂肪指数、乳化剤の存在)、ショートニングのレベル、および添加様式(例えば、脂肪がいかによく分散または適用されるか)によって制限され得る。
【0027】
さらに、乳化剤は、かなり前からベーカリー関連品、例えば、クッキー、ケーキ、および他の化学的に発酵させたベーカリー品に利用されてきた。例えば、モノグリセリドおよびジグリセリドならびにレシチンは、クリーム状にするのを促進し、かつショートニング効果を高めるために(すなわち、脂肪をさらに分散させるために)、ベーカリーショートニングに用いられてきた。また、このような乳化剤は、滑らかさを高めるために部分水素添加したベーカリー脂肪に用いられてきた。さらなる例として、乳化剤(例えば、モノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、乳酸エステル、ポリソルベート、ならびにソルビタンエステル)は、空気混和を補助するために、調製中のケーキバッターを強化するのに利用されてきた。このバッターを強化することによって、最終的なケーキがより細かいセル構造を有し、その結果、官能特性がより良好になり、そして全体の外観がより良好になる。
【0028】
トランス脂肪の新しい表示要件(「栄養パネル問題」)が提唱されており、その結果、製造者は、現在の部分水素添加脂肪を以下のような選択肢で置き換えることによって、トランスのレベルを維持するかまたは減少させることを試みようとする:(1)完全精製油と完全水素添加脂肪とのブレンド;(2)完全精製油と完全水素添加油および/または熱帯性脂肪もしくは熱帯性脂肪画分とのエステル交換;ならびに(3)国産品油と熱帯性脂肪および/または熱帯性脂肪画分とのブレンド。
【0029】
これらの選択肢の不利点としては、あり得る機能的問題またはマーケティング問題が挙げられる。
【0030】
例えば、選択肢(1)または(2)では、水素添加脂肪の公表が、トランス脂肪酸と水素添加との関連に起因して、マーケティング問題になる。さらに機能的観点から、選択肢(1)は、口の中で蝋質および/または乾燥を引き起こし得る高融点の固体を生じ、フレーバー放出が悪くなる。さらに、選択肢(2)および(3)については、完全水素添加油および/または熱帯性脂肪の公表が、飽和脂肪と熱帯性脂肪との関連に起因して、マーケティング問題になる。
【0031】
従って、例えば、特許文献21および特許文献22は、ショートニング系を提供する。このショートニング系は、少なくとも1つの非水素添加植物油と脂肪または油のグリセロール分解/エステル交換により得られる少なくとも1つの単離されたステアリン画分との混合物を含み、この単離されたステアリン画分は、高濃度のジグリセリドを有する。
【0032】
これらの文献において、ショートニング系のモノグリセリドは、室温で通常固体のモノグリセリドであるか、またはステアリン画分のモノグリセリドであるか、またはジグリセリドを含みかつステアリン画分であるかもしくは室温で通常固体であるモノグリセリド(例えば、飽和脂肪酸の含有量が多いパームステアリンのような油脂に由来する、モノグリセリドおよびジグリセリド)である。飽和脂肪および熱帯性脂肪に関連するマーケティング問題は、これらの文献では対処されていない。
【特許文献1】中国特許第1078353号明細書
【特許文献2】米国特許第5,458,910号明細書
【特許文献3】米国特許第5,612,080号明細書
【特許文献4】米国特許第5,306,514号明細書
【特許文献5】米国特許第5,306,515号明細書
【特許文献6】米国特許第5,306,516号明細書
【特許文献7】米国特許第5,254,356号明細書
【特許文献8】米国特許第5,061,506号明細書
【特許文献9】米国特許第5,215,779号明細書
【特許文献10】米国特許第5,064,670号明細書
【特許文献11】米国特許第5,407,695号明細書
【特許文献12】米国特許第4,865,866号明細書
【特許文献13】米国特許第4,596,714号明細書
【特許文献14】米国特許第4,137,338号明細書
【特許文献15】米国特許第4,226,894号明細書
【特許文献16】米国特許第4,234,606号明細書
【特許文献17】米国特許第4,335,157号明細書
【特許文献18】米国特許第3,914,452号明細書
【特許文献19】米国特許第3,623,888号明細書
【特許文献20】ドイツ国特許出願公開第291240号明細書
【特許文献21】米国特許第5,908,655号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第1057887号明細書
【特許文献23】米国特許第2,132,437号明細書
【特許文献24】米国特許第2,442,534号明細書
【特許文献25】米国特許第3,943,259号明細書
【特許文献26】米国特許第4,018,806号明細書
【特許文献27】米国特許第4,055,679号明細書
【特許文献28】米国特許第4,154,749号明細書
【特許文献29】米国特許第4,263,216号明細書
【特許文献30】米国特許第4,366,181号明細書
【特許文献31】米国特許第4,386,111号明細書
【特許文献32】米国特許第4,425,371号明細書
【特許文献33】米国特許第4,501,764号明細書
【特許文献34】米国特許第4,510,167号明細書
【特許文献35】米国特許第4,567,056号明細書
【特許文献36】米国特許第4,596,714号明細書
【特許文献37】米国特許第4,656,045号明細書
【特許文献38】米国特許第4,732,767号明細書
【特許文献39】米国特許第4,889,740号明細書
【特許文献40】米国特許第4,961,951号明細書
【特許文献41】米国特許第5,110,509号明細書
【特許文献42】米国特許第5,211,981号明細書
【特許文献43】米国特許第5,316,927号明細書
【特許文献44】米国特許第5,434,280号明細書
【特許文献45】米国特許第5,439,700号明細書
【特許文献46】米国特許第5,458,910号明細書
【特許文献47】米国特許第5,470,598号明細書
【特許文献48】米国特許第5,589,216号明細書
【特許文献49】米国特許第5,612,080号明細書
【特許文献50】米国特許第5,718,938号明細書
【特許文献51】米国特許第5,756,143号明細書
【非特許文献1】Elias,B.A.,Food Ingredients Europe:Conference proceedings,London,1994年10月(Publisher:Process Press Europe、Maarssen)
【非特許文献2】Willet,W.C.ら、Lancet 341(8845);581〜585(1993)
【非特許文献3】Khosla,P.ら、J.Am.Col.of Nutrition、1996年8月、15(4):325−339(American College of Nutrition,NY,N.Y.)
【非特許文献4】Clarkeら、“Dietary lipids and blood cholesterol:quantitative meta−analysis of metabolic ward studies”BMJ 1997;314:112(1月11日)
【非特許文献5】Khoslaら“Replacing Dietary Palmitic Acid with Elaidic Acid(t−C18:1Δ9) Depresses HDL and Increases CETP Activity in Cebus Monkeys”、The Journal of Nutrition Vol.127 No.3,1997年3月、pp.531S−536S
【非特許文献6】McMillanら“Elaidinized olive oil and cholesterol atherosclerosis”、B.I.Arch.Pathol.76:106−12(1963)
【非特許文献7】van de Vijverら“Trans unsaturated fatty acids in plasma phospholipids and coronary heart disease:a case−control study”,Atherosclerosis 1996年9月27日;126(1):155−61
【非特許文献8】van de Vijverら“Association between trans fatty acid intake and cardiovascular risk factors in Europe:the TRANSFAIR study”,Eur J Clin Nutr 2000年2月;54(2):126−35
【非特許文献9】Lauridsen,“Food Surfactants,Their Structure And Polymorphism”Technical Paper TP 2−1e Danisco Ingredients,Braband Denmark
【非特許文献10】Feugeら、Modification of Vegetable Oils VI:The Practical Preparation of Mono and Diglycerides,Oil and Soap,23(259−264),1946
【非特許文献11】Handbook of Food Additives,第2版,vol.1、Chapter 9,Surface Active Agents,pp.397−429
【非特許文献12】Bailey’s Industrial Oil and Fat Products,第4版,vol.2,Chapter4,pp.130−147
【非特許文献13】Krog,“Interactions of Surface−Active Lipids with Water,Protein and Starch Components in Food Systems”, Technical Paper TP 3−1e,Danisco Ingredients,Braband,Denmark
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
当該分野における問題に対処し、かつベーカリー関連製品(例えば、クッキー、クラッカー、ならびにシート状にされた、押出し成形された、および/または積層した、多種多様な焼成品)の製造および安定化に有用なショートニング系(例えば、ドウ油脂またはフィリング油脂)を提供することは、有利でありかつ当該分野において進歩的である。
【課題を解決するための手段】
【0034】
(発明の目的および/または要旨)
TFAに関する文献の水準、およびTFAを飽和物で置き換えることに対する警告を考慮して、少量の飽和物およびTFAを含むかまたはこれらから実質的になる本発明の乳化剤組成物を、例えば、非水素添加植物油または高度不飽和植物油の官能特性および物理的特性を改善するために使用することは、重大な健康上のリスクを示すことなく、当該分野における問題に対処し得る(van de Vijverら.,1996,前出;van de Vijverら,2000,前出もまた参照のこと)。さらに、本明細書中に実証されるように、保存量のトランス脂肪を含む本発明のショートニング系は、水素添加脂肪または水素添加油よりも全体として少ないトランス脂肪および飽和脂肪、ならびに有利な栄養パネルを提供し得る;従って本発明は、栄養パネル問題のみならず、もし「トランス脂肪問題」が問題であるならば、この問題にも対処し得る。
【0035】
本発明は、非水素添加油を含むショートニング系、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤(例えば、プロピレングリコールエステル、乳酸エステル、酢酸エステルまたはそれらの組み合わせ)およびイオン性共乳化剤(ionic co−emulsifier)(例えば、ステアロイル乳酸ナトリウム(「SSL」)、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(「DATEM」)、レシチン、またはそれらの組み合わせ)を含む乳化剤組成物に関する。
【0036】
モノグリセリドおよびジグリセリドはさらに、認識し得る量または少量のグリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノエレジエートの両方とともに、飽和エステル(例えば、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルまたはそれらの組み合わせ)を主要画分として含み得る。モノグリセリドは、大豆脂肪、アブラナ脂肪、綿実脂肪、ヒマワリ脂肪、ヤシ脂肪またはそれらのブレンドなどの高度不飽和脂肪から得られ得、この高度不飽和脂肪は、完全に精製されたものであるか、部分水素添加されたものであるか、完全に水素添加されたものであるか、あるいはそれらのブレンドである。
【0037】
アルファ傾向性乳化剤は、少量のグリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノエレジエートの両方とともに、飽和エステル(例えば、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルまたはそれらの組み合わせ)を主要画分として含み得る。アルファ傾向性乳化剤は、大豆脂肪、アブラナ脂肪、綿実脂肪、ヒマワリ脂肪、ヤシ脂肪またはそれらのブレンドなどの高度不飽和脂肪から得られ得、この高度不飽和脂肪は、完全に精製されたものであるか、部分水素添加されたものであるか、または完全に水素添加されたものであるか、あるいはそれらのブレンドである。
【0038】
イオン性共乳化剤は、大豆脂肪、アブラナ脂肪、綿実脂肪、ヒマワリ脂肪、ヤシ脂肪またはそれらのブレンドなどの高度不飽和脂肪から得られ得、この高度不飽和脂肪は、完全に精製されたものであるか、部分水素添加されたものであるか、完全に水素添加されたものであるか、またはそれらのブレンドである。さらに、レシチンは、大豆油およびトウモロコシ油などの油から粘性物質を除去することによって得られ得る。次いで、レシチン(リン脂質および糖脂質を主に含む)は、さらに処理および精製され得る。
【0039】
本発明のショートニング系は、いくつかの方法から調製され得る。1つの方法は、非水素添加油と乳化剤組成物の成分とを物理的にブレンドするかまたは混合することである。この混合物を加熱して、非水素添加油中における乳化剤組成物の融解および可溶化を促進し得る。このような方法は、各乳化剤成分を1箇所に1工程で添加するかまたは複数箇所に段階的様式で添加して実施され得る。例えば、モノグリセリドおよびアルファ傾向性乳化剤(すなわち、モノグリセリドのプロピレングリコールエステルまたは乳酸エステル)は、1箇所にイオン性共乳化剤(すなわち、SSL、DATEMまたはレシチン)を添加し、その後に別の位置に添加して、可溶化され得る。SSLの安定性は高温では制限されるので、後者が場合によっては好ましい。
【0040】
別の調製方法は、乳化剤組成物の成分を別々にかまたは一緒に、流動性を与えるのに十分な高温(例えば、その融点±10℃以内)に加熱し、次いでこの成分混合物を未水素添加油(これは予め加熱され得る)に直接添加することである。乳化剤成分が完全に溶解状態になるまで、すなわち、非水素添加油に完全に溶解するまで、ブレンドを継続する。
【0041】
次いで、いずれかの方法によって調製された本発明のショートニングは、食料品に直接添加する前に、可溶化を維持するのに十分な温度で維持され得る。その結果、ショートニング系は、食物系の他の成分と接触する際に、より低い温度に冷却され得る。本発明のショートニングはまた、食料品への添加の前に乳化剤成分の結晶化を誘導するために冷却させてもよい。このような冷却は、同様に乳化剤の迅速な結晶化を誘導するために熱交換器によって促進され得る。
【0042】
本発明のショートニング組成物は、液体として(例えば、スプレーとして、またはエアロゾル形態もしくは噴霧形態で)有利に保存されかつ使用される。従って、本発明のショートニング組成物は、調製の後、この組成物を液体状態に維持する(すなわち、溶液を維持する)温度で保存され得、そして、溶液を維持するのに必要とされる温度かまたはそれよりも低い温度で食料品の調製に直接使用され得る。さらに、液体状態の本発明のショートニング組成物は、約65〜90°F(約18℃〜32℃)の温度に急速に冷却され得、その後、食料品の他の成分へ添加する前に、油の中に安定な分散型の脂肪結晶の形成を開始するのに十分な時間の機械的撹拌からなるポストテンパリング工程が続く。
【0043】
例えば、ショートニング系は、例えば、重量で(組成物または系の総重量を基準として)約3〜約10%または約3〜約7%または約4〜約6%または約5%;あるいは、乳化剤組成物の6〜8%未満、例えば、約6%未満または約8%未満、例えば、約1%または約2%または約3%〜約5%または約7%、あるいは6%未満または8%未満、例えば、約2%または約3%または約4%〜約5%のような少量の乳化剤組成物を含むか、または本質的にこれからなるか、またはこれからなることが有利である。
【0044】
本発明の乳化剤組成物は、約10〜70重量部のモノグリセリドおよびジグリセリド、約20〜70重量部のアルファ傾向性乳化剤および約15重量部未満のイオン性共乳化剤を含み得る。
【0045】
このショートニング系は、同様に、重量で(組成物または系の総重量を基準として)94〜92%より多い量の、または約97%〜約90%の量の、または約97%〜約93%の量の、または約96%〜約94%の量の、または約95%の量の、または約94%より多い量の、または約92%より多い量の、不飽和または未水素添加もしくは非水素添加油(有利には高度不飽和の非水素添加油)を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなることが有利である。例えば、重量で(組成物または系の総重量を基準として)約99%〜約95%の油、または約98%〜約95%の油、または約97%〜約95%の油、または約99%〜約93%の油、または約98%〜約93%の油、または約97%〜約93%の油、または約96%〜約93%の油、または約95%〜約93%の油、または約99%〜約94%の油、または約98%〜約94%の油、または約97%〜約94%の油、または約97%〜約95%の油(例えば、92%より多い、94%より多い、約93%、例えば、約99%または約98%または約97%または約96%または約95%の油)を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる系であることが有利である。
【0046】
ショートニング系は、好ましくは多成分系である。第1の成分は完全に精製された非極性油(トリグリセリド)であり、そして第2の成分はモノグリセリドおよび/またはジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤、およびイオン性共乳化剤を含む乳化剤組成物である。しかしながら、本発明のショートニング系はこの多成分系が有利であるが、さらなる成分が本発明の新規性または基本特性を損ねず、かつ先行技術において見出される実施形態にまで広げられないという了解の下であれば、ショートニング系に代表的に用いられるこのようなさらなる成分を含んで使用され得る。
【0047】
従って、例えば、本発明のショートニング系は、多成分系であることが有利であるが、酸化反応に対するショートニング系の安定性を増加させるために、ショートニング系中でまたはショートニング系とともに代表的に用いられるさらなる成分(例えば、抗酸化系(例えば、トコフェロール、TBHQ、BHT、または没食子酸プロピルのような任意の所望の抗酸化剤系))を単独で、またはクエン酸、リン酸、EDTAなどのような金属スカベンジャーと組み合わせて使用してもよく、またはこれらの成分を含んでもよく、またはこれらの成分から本質的になってもよく、またはこれらの成分からなってもよい。このような抗酸化剤は、当該分野で代表的に用いられる量(例えば、全脂肪組成物または脂肪系の約0.05重量%〜約0.3重量%、例えば約0.1重量%〜約0.3重量%、例えば約0.2重量%)で用いられる。
【0048】
本明細書中に引用されるかまたは本明細書中に参考として援用される文献および当該分野における知見(例えば、Ratnayake、“Determination of trans unsaturation by infrared spectrophotometry and determination of fatty acid composition of partially hydrogenated vegetable oils and animal fats by gas chromatography/infrared spectrophotometry:collaborative study”, J AOAC Int 1995 May−June;78(3):783−802を参照のこと)から、過度の実験を何ら行なうことなく脂肪酸のトランス不飽和の量を決定し得る。また、当業者は、過度の実験を行なうことなくモノグリセリドおよびジグリセリドの組成物中の飽和モノグリセリド(例えば、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート、およびそれらの組み合わせ)の含有量を、例えば本開示中に引用されるかまたは本開示中に参考として援用される文献および当該分野における知見(例えば、ガスクロマトグラフィー、赤外分光法/分光光度法および他の分析手順)を用いることによって決定し得る。
【0049】
さらに、ショートニング系により、有利には、最終的な食品の成分表示が水素添加した脂肪または油、あるいは熱帯性の脂肪または油(例えばパーム油)の記載、あるいは高度に飽和した脂肪または油の記載を回避することが可能になる。すなわち、最終的な食品は、このショートニング系により、水素添加した脂肪または油、あるいは熱帯性の脂肪または油(例えばパーム油)、あるいは高度に飽和した脂肪または油をその成分表示に記載する必要が無い;すなわち、先行技術(例えば、米国特許第5,908,655号および欧州特許1057887A1ならびに当該分野の他の先行文献)よりも明らかに有利な点は、このような成分を記載または表示する必要性を回避することを必ずしも求めないことである(そして実際に、当該分野における一部の文献は、本発明とは対照的に、水素添加した脂肪または油、あるいは熱帯性の脂肪または油(例えばパーム油)の使用、あるいは高度に飽和した脂肪または油の使用、あるいはステアリン画分の使用に直接関するものでさえあり得る)。
【0050】
本発明のショートニング系により、トランス脂肪またはトランス油の保存、ならびに有利には飽和脂肪(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸)の保存が可能になる。
【0051】
大豆油、キャノーラ油のような多価不飽和度が高い植物油は、本発明の実施における使用に有利であり、特定の実施形態において、部分的におよび選択的に水素添加されたこのような油が用いられ得る。
【0052】
本発明により、シート状にした(積層した)、押出し成形した、および/または型にはめて作ったかもしくは機械により配置した、クッキー、フィリング、および関連の焼成品中の液体油の安定化および混入が可能になる。このように、本発明は本発明のショートニング系の使用を提供する。
【0053】
従って、本発明は、本発明のショートニング系を含む、食料品または食品(例えば、シート状にした、押出し成形した、および/または積層した、クッキー、クラッカー、焼成したトルティーヤ(有利には柔らかいもの)、ならび多種多様な焼成食品、あるいは他の関連の焼成品および/またはフィリング)、ならびに本発明のショートニングをブレンドまたは混合して食料品または食品を形成する工程を含むか、この工程から本質的になるか、またはこの工程からなる、このような食料品または食品を調製するための手段、ならびに本発明のショートニング系を含むかまたはこれから本質的になるこのような食料品または食品について、加工性を可能にするかまたは改善するための、あるいは貯蔵寿命を改善または延長するための、あるいは官能特性または口当たりまたは食味を改善または向上させるための、改善された方法を包含する。
【0054】
より詳細には、ショートニング(例えば、ドウ油脂またはフィリング油脂)は、前記ベーカリー関連品の配合に用いられる。加工中、このショートニング系を他の成分(すなわち、砂糖、小麦粉、水、膨張剤、香料など)とともに8〜70%(小麦粉を基準として)に相当するレベルで添加し、混合してドウを形成する。本発明のショートニング系は、部分水素添加ショートニングを模倣し、PH脂肪に関連する欠点を有することなく、必要な機能特性を与えて必要な取扱適性および機械適性を可能にする。
【0055】
本開示において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(contains)」、「含んでいる(containing)」などのような用語は、米国特許法においてこれらの用語に帰する意味を有し得る;例えば、これらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」などを意味し得ることが留意されるべきである。「から本質的になっている(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」のような用語は、米国特許法においてこれらの用語に帰する意味を有し、例えばこれらの用語は、本発明の新規性または基本特性を損なわせないさらなる成分または工程を含むことを許容する。すなわち、これらの用語は、本発明の新規性または基本特性を損なわせる、記載されていないさらなる成分または工程を除外し、特に、特許性のある(先行技術を越える(例えば、本明細書中に引用されるかまたは本明細書中に参考として援用される文献を超える)新規性、非自明性、進歩性を有する)実施形態を規定することが本書の目的であるので、先行技術(例えば、本明細書中に引用されるかまたは本明細書中に参考として援用される当該分野の文献)の成分または工程を除外する。さらに、用語「からなる」および「からなっている」は、米国特許法においてこれらの用語に与えられた意味を有する;すなわち、これらの用語はクローズドエンドである。
【0056】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明に開示されるか、または以下の詳細な説明から自明であり、かつ以下の発明の詳細な説明に含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
(詳細な説明)
本発明は、非水素添加油および乳化剤組成物を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなるショートニング系に関する。乳化剤組成物は、モノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤、およびイオン性共乳化剤を含み得る。
【0058】
本発明のショートニング系は、部分水素添加されたショートニングを模倣し、必要な機能特性を与えて、部分水素添加された脂肪に関連する欠点を有することなく、必要な取扱適性および機械適性を可能にする。
【0059】
モノグリセリドは、種々の結晶形(例えば、α、βなど)で存在することを可能にする多形性を有する。すなわち、モノグリセリドは1つの形態で結晶化し、その後、別の形態に変化し得る。より詳細には、モノグリセリドは、最もエネルギー保存状態であるβ型に変化する。β型はより安定であるが、α型のモノグリセリドはベーキング産業にとって望ましい特性を有する。モノグリセリドは、非多形性である、より大きな極性ヘッドを有する他の極性脂質の存在下で影響を受けてα型のままであり得る。
【0060】
従って、アルファ傾向性乳化剤およびイオン性乳化剤の適切な比率での組み合わせは、モノグリセリドに影響を与えてα型のままにし得る。例えば、本発明のショートニングを、配合物中に直接添加する前かまたは添加中のいずれかに、融解した状態から冷却すると、本発明の乳化剤組成物(極性脂質)は不溶性になり、その結果、非水素添加油マトリックス全体に分散したα型で安定した結晶が形成される。これらの結晶状態において、極性脂質は、極性ヘッド基がヘッドとヘッドを向いて、固体の炭化水素鎖(脂肪酸鎖)の層で隔てられて配向されたを含む二重層の構造になる。乳化剤は、配合工程の間に水と混合される場合、自発的に膨潤してゲルになり、α型のままとなる。アルファゲルの形成により、二重層中に水が固定化されて粘性およびボディを形成する。アルファゲルの形成は、モノグリセリドに影響を与えてα型のままとなり得る。さらに、液体油はゲルに付着して移動性が低下する。
【0061】
本発明のアルファ傾向性乳化剤は、α型にとどまる「傾向」があり、適切な比率で、モノグリセリドおよびジグリセリドの多形型に影響を与えてα型のままになり得る。これらのアルファ傾向性乳化剤は、膨潤して上記のアルファゲル状態になる能力を示す。このアルファ傾向性乳化剤としては、プロピレングリコールエステル、乳酸エステルおよび酢酸エステルまたはそれらの組み合わせ、ならびに当業者に公知のこの目的に適した他の乳化剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0062】
さらに、イオン性共乳化剤は、二重層中に組み込まれた場合、静電反発力を生じ、これによって膨潤作用がさらに増大して、より多くの水を固定化する。このイオン性共乳化剤としては、SSLおよびDATEMまたはそれらの組み合わせならびに当業者に公知のこの目的に適した他の乳化剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0063】
モノグリセリドおよびジグリセリドは、トリグリセリドの通常の消化の結果として腸管内で形成され、また全ての植物油中にも天然に少量見出される。その結果、これらのモノグリセリドおよびジグリセリドは、一般に安全と認められる(GRAS)。特に、極めて親油性であるジエステルは、液体植物油のトリグリセリドネットワーク内で共結晶化し得る。グリセリドのモノエステルは、脂肪中で溶解度が低下し、高温(例えば、120°〜130°F)でも結晶化が始まり、結晶シード添加を生じる。
【0064】
モノグリセリドおよびジグリセリドは、動物または野菜起源の食用油脂から商業的に調製され得る。製造プロセスは、代表的には熱および触媒の存在下で、以下の脂肪(トリグリセリド)とグリセリンまたはグリセロールとの反応に関与する:
【0065】
【化3】

従って、上記の反応は、熱および触媒作用によって、トリグリセリド、1,3−ジグリセリド、1,2−ジグリセリド、1−モノグリセリド、2−モノグリセリド、およびグリセロールを生成する。本明細書中に述べたような特性を有する生じたモノグリセリド画分の、この反応物からの選択は、当該分野における知見および本開示(本明細書中に引用されるかまたは本明細書中に参考として援用される文献を含む)から、過度の実験を行なうことなく実施され得る。より詳細には、この反応は、約200℃(392°F)にて、アルカリ触媒のような触媒の存在下で行われる(例えば、Lauridsen,前出;Feuge and Bailey:Modification of Vegetable Oils. VI, The Practical Preparation of Mono− and Diglycerides.Oil and Soap 23:259−264(1946)を参照のこと)。反応生成物は、上記およびLauridsen(前出)に示されるように、少量の遊離グリセロールおよび遊離脂肪酸を含む、モノグリセリドおよびジグリセリドとトリグリセリドとの混合物である。次いで、反応混合物は、残存するグリセロールを除去し、かつ遊離脂肪酸のレベルを下げるために加工される。この加工は蒸留を含み得る。その後、酸を添加して触媒を中和する。平衡の際のグリセロール分解/エステル交換の程度は、トリグリセリド対グリセロールの比率によって決定される。
【0066】
上記の反応による生成物、ならびに/または本発明のモノグリセリドおよびジグリセリド、ならびに本発明の実施に有用なものは、好ましくは約45重量%より大きいかまたはそれ以下の、有利には70重量%より大きいかまたはそれ以下の、より好ましくは80重量%より大きいかまたはそれ以下のモノグリセリド最少含有量を含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなる。これらの仕様を満たすかまたはこれらのモノグリセリドおよびジグリセリドを使用する生成物は、例えばショートニング系において、例えば部分水素添加脂肪または部分水素添加油の代わりに、「保存されたトランス」と考えられ得る。このようなモノグリセリドおよびジグリセリドは、植物油(例えば、未水素添加もしくは非水素添加植物油および/または高度不飽和植物油)のような油とブレンドされるか、あるいは、例えば本明細書中に述べたように、モノグリセリドおよびジグリセリドを使用する際に使用されることが有利である。さらに、本明細書中で実証されているように、飽和脂肪も本発明によって保存される。
【0067】
植物油(例えば、未水素添加もしくは非水素添加植物油および/または高度不飽和植物油)のような油とブレンドされる場合、この系または組成物は、ショートニング系またはショートニング組成物と考えられ得る。本発明のショートニング系またはショートニング組成物は、3〜10重量%、有利には3〜7重量%、好ましくは4〜6重量%(例えば、5重量%)の本明細書中に記載される乳化剤組成物を含むことが有利である。乳化剤組成物は、液体油を混入および懸濁させる結晶ネットワークの形成によって、ショートニング系中の液体油を安定化させ、それによってさっぱりした口離れ、口溶け、およびフレーバー放出のような好ましい口当たり特性をもたらす。本発明のショートニング系は、水素添加された脂肪もしくは油、または飽和脂肪が多いヤシ油のような熱帯性脂肪の記載を回避する成分表示を可能にし得、かつ、トランス脂肪および飽和脂肪の保存をもたらし得る。従って、本発明は、少なくとも1つの非水素添加植物油と乳化剤組成物との混合物を含むショートニング系を提供する。乳化剤組成物のモノグリセリドおよびジグリセリドは、脂肪または油のグリセロール分解から有利に得られ得る。本発明のショートニング系中には、部分的にかつ選択的に水素添加された大豆油またはキャノーラ油のような多価不飽和の多い植物油からなる群より選択される植物脂肪が存在し得る。そして、本発明のショートニング系において、植物油は、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、サフラワー油、キャノーラ油およびオリーブ油からなる群から選択され得る。
【0068】
モノグリセリドおよび/またはジグリセリドあるいはショートニング系のモノグリセリドおよびジグリセリドは、約45重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約50重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約55重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約60重量%より大きいかまたはそれ以下の、有利には約65重量%より大きいかまたはそれ以下の、好ましくは約70重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約75重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約80重量%より大きいかまたはそれ以下のモノグリセリド最少含有量、最も有利にはモノグリセリドとみなされる生成物を含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなることが有利である。従って、モノグリセリドおよび/またはジグリセリドは、主にモノグリセリドであることが好ましく、より好ましくはモノグリセリドであることが好ましいと言える。
【0069】
モノグリセリドおよび/またはジグリセリドあるいはショートニング系のモノグリセリドおよびジグリセリドは、以下のものを含むかまたは以下のものから本質的になるエステルの混合物を含むか、あるいはこの混合物から本質的になる:(a)飽和モノグリセリド(例えば、グリセロールモノステアレート(C18:0)またはグリセロールモノパルミテートあるいはそれらの組み合わせ);(b)グリセロールモノオレエート(C18:1シス);および(c)グリセロールモノエラジエート(C18:1トランス)。
【0070】
本発明のモノグリセリドおよびジグリセリドは、他のモノグリセリドおよびジグリセリドと同じ様式で用いられ得る。
【0071】
本発明のアルファ傾向性乳化剤は、プロピレングリコールエステル、乳酸エステル、酢酸エステル、またはそれらの組み合わせを含み得る。脂肪酸のプロピレングリコールエステルまたは脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルは、約50重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約60重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約70重量%より大きいかまたはそれ以下の、例えば約80重量%より大きいかまたはそれ以下の、有利には約90重量%より大きいかまたはそれ以下のプロピレングリコールモノエステル最少含有量、最も有利には脂肪酸のプロピレングリコールエステルとみなされる生成物を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなることが有利である。従って、脂肪酸のプロピレングリコールエステルは、主に脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルであることが好ましく、より好ましくはプロピレングリコールモノエステルであることが好ましいと言える。
【0072】
ショートニング系中の脂肪酸のプロピレングリコールエステルまたは脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルは、エステルの混合物を含むかまたはエステルの混合物から本質的になり、この混合物は、低レベルのオレイン酸エステル(C18:1シス);およびエライジン酸エステル(C18:1トランス)を含む飽和物(例えば、ステアリン酸エステル(C18:0)またはパルミチン酸エステル(C16:0)あるいはそれらの組み合わせ)を含むかまたはこの飽和物から本質的になる。
【0073】
プロピレングリコールエステルは、減圧下で約200℃にてアルカリ触媒下でプロピレングリコールと食用脂肪酸をエステル化することによって製造され得る。過剰のプロピレングリコールを除去した後、反応ブレンドは約55〜72%のプロピレンモノエステルを含んでいる。代替方法は、プロピレングリコールモノエステルおよびプロピレングリコールジエステルとともに、少量のジグリセリドおよびトリグリセリドに加えて8〜12%のモノグリセリドを含む反応混合物を生成する、トリグリセリドとプロピレングリコールとのエステル交換であり得る。いずれかのプロセスで製造されたプロピレングリコールモノエステルは、90%以下かまたは90%より大きいまで分子蒸留によって濃縮され得る。
【0074】
酢酸エステルは、酢酸および脂肪酸の混合グリセロールエステルを含み得る。具体的には、酢酸エステルは、脂肪酸とそれ自体が部分的にアセチル化されたグリセロールとのモノエステルおよびいくらかのジエステルを含む、アセチル化モノグリセリドおよびアセチル化ジグリセリドであり得る。
【0075】
乳酸エステルは、乳酸および脂肪酸の混合グリセロールエステルを含み得る。
【0076】
イオン性乳化剤は、SSLおよびDATEMを含み得る。SSLは、水酸化ナトリウムの存在下で乳酸を用いたステアリン酸のエステル化(結果として、ステアロイル−ラクチレート(ナトリウム塩)、脂肪酸塩、および遊離脂肪酸の混合物を生成する)によって製造され得る。
【0077】
さらに、DATEMは、ジアセチル酒石酸無水物とモノグリセリドとの相互作用、あるいはジアセチル酒石酸無水物と食用油、脂肪またはそれらから誘導される脂肪酸で作られたモノグリセリド−ジグリセリド混合物との相互作用によって製造されるエステルを含み得る。
【0078】
上記化合物の、プロピレングリコールエステル、乳酸エステル、酢酸エステル、SSLおよびDATEMは、当該技術分野の技術者に周知であり、商業的に入手可能であるか、またはChemical Abstracts(当該分野の技術者に周知であり、かつ使用される供給源)に見出されるような公知の合成技術の改変によってのいずれかで入手可能である。
【0079】
本発明の乳化剤組成物は、約10〜70重量部のモノグリセリドおよびジグリセリド、約20〜70重量部のアルファ傾向性乳化剤および約15重量部未満のイオン性共乳化剤を含み得る。
【0080】
本発明のショートニング系は、種々のタイプの食料品または食品中において従来の部分水素添加脂肪または部分水素添加油の代わりに使用され得、かつ、乳化剤の送達系として使用され得る。
【0081】
本明細書と同一の発明者が共有している、本明細書中に参考として援用される米国特許出願第60/475,590号(2003年6月4日出願)は、飽和エステル(グリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート)とともに結晶を形成するグリセロールモノエレジエートの役割に関するものであり、その中で、この系から形成される低固形分ゲルは、液体油を混入させるだけでなく、急速に融解して所望の食感特性(例えば、フレーバー放出、柔らかさ、および急速な/すっきりした口溶け)を与える。
【0082】
さらに、本明細書と同一の発明者が共有している、本明細書中に参考として援用される米国特許出願第60/496,804号(2003年8月21日出願)は、主要画分として飽和エステル(例えば、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、それらの組み合わせ)を、相当な量のグリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノエラジエートの両方とともに含む、モノグリセリドおよびジグリセリドに関するものである。モノグリセリドの不飽和エステルの添加は、飽和エステルの核形成を抑えるのに役立ち、製品の保存中の油の加工および安定性を可能にする。不飽和エステルがなければ、結晶化によって形成される低固形分ゲルは不安定であり得る。
【0083】
本発明は、例示の目的で与えられる以下の実施例にさらに記載され、これらの実施例により、本発明およびその多くの利点がより良く理解される。
【実施例】
【0084】
(実施例1:乳化剤組成物)
本発明の乳化剤組成物は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって調製され得る。個々の成分は、商業的に入手可能であるか、またはChemical Abstracts(当該分野の技術者に周知であり、かつ使用される供給源)に見出される技術のような公知の合成技術の改変によって入手可能であるかのいずれかである。例えば、乳化剤組成物は、モノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤(例えば、プロピレングリコールエステル、乳酸エステル、酢酸エステルまたはそれらの組み合わせ)、ならびにイオン性共乳化剤(例えば、SSL、DATEM、レシチン、またはそれらの組み合わせ)を含み得る。
【0085】
50重量部のモノグリセリド、45重量部の脂肪酸のプロピレングリコールエステルおよび5重量部のSSLからなる乳化剤組成物についての物理的特性および化学的特性は、代表的には以下からなる:
(物理的特性および化学的特性)
モノグリセリド含有量(%) 47.0
プロピレングリコールモノエステル(%) 44.1
ステアロイル乳酸ナトリウム(%) 5.0
遊離脂肪酸(オレイン酸としての%) 1.6
遊離プロピレングリコール(%) 0.2
遊離グリセロール(%) 0.2
トランス脂肪酸(%) <5.0。
【0086】
(実施例2:乳化剤組成物を含むショートニング)
95重量%の完全精製大豆油を含む本発明のショートニングを、実施例1のとおりの乳化剤組成物5重量%と組み合わせた。本発明のショートニングは、当業者に公知の任意の適切な方法によって生成され得る。本発明のショートニングについての物理的性質および化学的性質は、代表的には以下からなる:
(物理的性質および化学的性質)
遊離脂肪酸(オレイン酸としての%) 0.089
モノグリセリド含有量(%) 2.35
プロピレングリコールモノエステル(%) 2.20
ステアロイル乳酸ナトリウム(%) 0.25。
【0087】
本発明のショートニングは、完全精製大豆油を、モノグリセリドおよびジグリセリド、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、およびステアロイル乳酸ナトリウムと、温度65℃で物理的にブレンドして乳化剤成分を可溶化させることによって調製される。次いで、このブレンドを表面かき取り式熱交換器に通し、温度20℃まで冷却して、乳化剤成分を迅速に結晶化させる。表面かき取り式熱交換器を出る際に、このブレンドを、最低1時間穏やかに攪拌しながらポストテンパリングタンクに通過させて、安定でありかつ分散した結晶ネットワークを形成させる。
【0088】
(実施例3:クッキーの配合)
一般に、配合および加工に関して多種多様なクッキーを製造し得る。脂肪およびショートニングは、加工の間に重要な役割を果たすだけでなく、滑らかさ、ショートニングテクスチャー、および広がりの制御のような機能をもたらすことによって、最終製品の食感品質および安定性にも重要な役割を果たす。クッキーの種類によって、ドウの機械加工は、ワイヤー切断、シーティング、押出し成形、または回転式成形を含む種々の方法を含み得る。従来、バターおよび部分水素添加ショートニングは、加工の容易さから脂肪源として利用されてきた。さらに、モノグリセリドおよびジグリセリドならびに/またはレシチンのような乳化剤は、これらのショートニングとともに、またはこれらのショートニング中に含まれて、滑らかさおよびショートネスを改善し得る。商業的製造者にとって、配合中のこれらのショートニングを非水素添加油または液体油で置き換えると、ドウが非常に柔らかく粘着性になり機械加工が難しくなるので、多くの加工上の難題を生じる。また、この油はドウなどから非常に容易に分離し得る。多くの製造設備において、混合後にかなりの期間ドウを休ませる場合があるので、これはさらに複雑である。単にモノグリセリドおよびジグリセリドならびに/またはレシチンをこれらの液体油系中に取り込んでも、ドウの機械加工性を著しく改善するとは言えず、この場合もまた、ドウは粘着性が高すぎるかまたはテクスチャーがだれすぎる。
【0089】
実施例2の本発明のショートニング組成物を評価するために、クッキーについてのモデル配合物を調製する。本実施例において、実施例2に記載の本発明のショートニングを脂肪系として用いる。
【0090】
【表1】

これらの群の混合手順は以下の通りである:
(段階1)
群1:乾燥成分(NFDM、塩、ソーダ、FGS)をブレンドして脂肪に添加し、Hobartミキサー中で3分間低速で混合し、1分間混合する毎にパドルおよびボウルの側面をかき取る。
【0091】
(段階2)
群2:重炭酸アンモニウムを水道水中に溶解して第1溶液を生成し、第1溶液をHFCSに添加して第2溶液を生成し、第2溶液を段階1の生成物に添加し、群1の混合手順に従って、30秒間隔でボウルおよびパドルをかき取りながら低速で1分間混合し、そして30秒間隔でボウルおよびパドルをかき取りながら中速で2分間混合する。
【0092】
(段階3)
群3:段階2の生成物に小麦粉を添加し、群2の混合手順に従って、液体混合物に3回に分けて混ぜ込み、そして30秒間隔でボウルおよびパドルをかき取りながら、低速で2分間混合する。
【0093】
混合が完了した後、ドウを10分間休ませて油の保持を観察する。
【0094】
その後、ドウを麺棒およびゲージバーで7mmの厚さのシート状に形成する。円形カッター(60mm)を用いて、クッキー片をアルミニウム天板上に配置し、400°Fで12分間焼成する。焼成後、クッキーを周囲温度まで冷ます。
【0095】
次いで、クッキーを官能特性(テクスチャー/フレーバー放出)、油の保持、ひろがりおよび積み重ね高さについて評価する。
【0096】
(観察)
10分間休ませた時点で、分離して溶けている油は認められなかった。ドウは、手触りがわずかに柔らかく油っぽいが、非常に脆いテクスチャーを有し、かつ、シーティングおよび切断のための良好な流体力学的特性を維持した。さらに、ドウは優れた粘着性を有する。さらに、焼成したクッキーは、部分水素添加ショートニングに匹敵する、優れた噛みごたえおよび極わずかな油跡を有する。また、ひろがり特性およびスタック特性は、部分水素添加ショートニングのひろがり特性およびスタック特性に匹敵した。
【0097】
(実施例4:パイのドウの配合物)
最終製品がそれほど堅くならないようにテクスチャーを脆くさせ、さらに重要なことには心地よいサクサク感または口溶けを生じさせるために、脂肪およびショートニングをドウに加える。伝統的には、パイのドウの生成にはラードが用いられてきた。しかしながら、消費者が飽和脂肪の消費に関心を持つようになるにつれて、部分水素添加ショートニングが受け入れられるようになった。
【0098】
パイのドウ中の脂肪レベルは、小麦粉重量を基準として15%から70%を超える範囲にわたって変動し得る。これらのレベルは、所望の製品の種類、使用する加工装置の種類、および最終製品の貯蔵寿命要件によって変化する。ドウの混合中、水または水相をめぐって小麦粉との激しい競合が存在する。水相は、小麦粉タンパク質と急速に相互作用してグルテンを作製し、このグルテンは粘着性かつ伸展性のあるネットワークを形成し、これはパイのドウには望ましくない。小麦粉の表面が脂肪でコーティングされると、吸収は低下してあまり粘着性のないグルテンネットワークが形成される。この意味で、脂肪は、小麦粉による水の吸収を最小にすることによって脆いテクスチャーにする役割を果たす。これは、パイのドウが以下に記載の様式で混合される理由の説明になる−小麦粉およびショートニングを一緒に添加してブレンドし、小麦粉表面にコーティング効果を与える。水を混合の最終段階で添加し、水の添加後に最小限に混合を行う。これは、任意のグルテンの形成を最小限にするために行なう。
【0099】
部分水素添加ショートニングまたはラードを用いて製造されたパイのドウは、不透明で柔らかく、成形しやすく、脆いテクスチャーを有するが、粘着性ではないドウになる。ドウは、薄くシート状にされてプレスされるかまたは型押しして、パイ皮形状にされるために、この柔らかいテクスチャーを有するべきである。
【0100】
一方、完全精製油またはモノグリセリドおよびジグリセリドを含む完全精製油を用いて形成したパイのドウは、柔らかく、粘着性で、油っぽく、そして取り扱いおよび機械加工の困難なドウとなる。このドウは半透明の外観を有し、そしてこの半透明の外観は、完成したかまたは焼成したパイドウまで持続し、望ましくない外観をもたらす。液体油は、ゆっくりとドウからにじみ出し、ドウを取り扱うかまたは加工するにつれて増加する。このテクスチャーを有するドウは、自動化装置で加工することが不可能である。
【0101】
実施例2におけるような本発明のショートニング組成物を評価するために、パイについてモデル配合物を調製する。本実施例において、実施例2に記載の本発明のショートニングを脂肪系として用いる。
【0102】
【表2】

これらの群についての混合手順は以下の通りである:
(段階1)
群1:乾燥成分(ペストリーフラワー、デキストロース、塩)をブレンドして脂肪に添加し、Hobartミキサー中で1分間低速で混合し、1分間混合する毎にパドルおよびボウルの側面をかき取る。
【0103】
(段階2)
群2:水を添加し、低速で20〜30秒間ブレンドする。
【0104】
その後、ドウを麺棒およびゲージバーで3/16インチの厚さのシート状に形成する。ドウをパイ皿およびドック中に配置し得る。
【0105】
次いで、ドウは、所望されるように、例えば伝統的なパイにさらに加工され得るか、またはフィリングと共に押出し成形され得る。このドウは、さらに焼成され得るかまたは揚げパイ用途に用いられ得る。
【0106】
(観察)
実施例2に記載された本発明のショートニング系を用いて生成したパイのドウは、部分水素添加ショートニングを用いて形成したドウに似ており、完全精製油を用いて形成したドウよりも優れている。休ませている間に油分離は観察されなかった。さらに、ドウは十分に機械加工できた。また、焼成したパイドウは、部分水素添加油を用いて形成したドウと比較して、許容可能な外観、テクスチャー、食感品質および貯蔵寿命品質を有する。
【0107】
全体として、本発明のショートニングは、加工および機械加工を容易にし、適切な脆いテクスチャーの食感品質を与え、焼成したドウへのパイフィリングの浸出を防ぐかまたは焼成したドウの軟化を防ぐ。
【0108】
(実施例5:トースターペストリー配合物)
最終製品があまり堅くなく、心地よいサクサク感または層状にされたテクスチャーを有するように、脂肪およびショートニングをペストリードウに加えてテクスチャーを脆くさせる。伝統的な部分水素添加脂肪が、ペストリードウに用いられてきた。
【0109】
ペストリードウ中の脂肪レベルは、小麦粉重量を基準として15%から25%を超える範囲にわたって変動し得る。これらのレベルは、所望の最終製品の種類によって変化する。
【0110】
混合の後、トースターペストリードウを一連のシーティングロールを通して加工し、ドウの厚さをゆっくりと減少させる。次いで、ドウをその上に積層するかまたは層状にする。次いで、層状にされたドウを、加工のための最終の厚さまでシーティングロールを用いてサイズを小さくする。この層形成プロセスは、最終製品にサクサク感または層状にされた効果をもたらす。底のドウ層に種々のフィリングをトッピングし、そして別個の上のドウ層をこのフィリングの上に置く。縁部にひだを作り、フィリングがペストリーからこぼれるのを防ぐ。次いで、ペストリーを部分的に焼成し、パッケージ化する。
【0111】
ペストリーを作製するための、完全精製油を含むドウまたはモノグリセリドおよびジグリセリドを含む完全精製油を含むドウは、上記のパイを作製するために用いられたドウと同じ欠点を有する。
【0112】
このトースターペストリー配合物の実施例において、実施例2に記載した本発明のショートニングが脂肪系として用いられる。
【0113】
【表3】

これらの群についての混合手順は以下の通りである:
(段階1)
群1:成分を低速ブレンドで1分間クリーム状にする。
【0114】
(段階2)
群2:水を添加し、低速で4分間混合する。
【0115】
その後、ドウをシート状にして3回折り畳んだロール状物を2個得る。
【0116】
(段階3)
ドウをインピンジメントオーブン中で400°Fにて6分間焼成する。
【0117】
次いで、ペストリーを官能特性(テクスチャー/フレーバー放出)、油の保持、ひろがりおよび積み重ね高さについて評価する。
【0118】
(観察)
休ませた際に、油の分離は認められなかった。ドウは、手触りがわずかに柔らかく油っぽいが、許容可能なシーティング特性および積層特性を可能にする脆いテクスチャーを有する。さらに、このドウは、部分水素添加ショートニングを用いたドウよりもやや半透明であった。さらに、焼成製品は、部分水素添加ショートニングを用いたドウと比較して、許容可能な外観、サクサク感、食感品質および貯蔵寿命品質を有する。
【0119】
(実施例6:栄養パネル−Kelloggの栄養穀物バー)
【0120】
【表4】

(実施例7:栄養パネル−Nabisco Nillaウエハース)
【0121】
【表5】

(実施例8:栄養パネル−Kelloggのポップタルト)
【0122】
【表6】

(実施例9:栄養パネル−Keebler Sandiesのシンプリーショートブレッド)
【0123】
【表7】

実施例6〜9は、示唆された栄養パネルを用いて、本発明のショートニング系を用いて作製した市販の製品が、より好適な脂肪プロフィールを有することを実証し、かつ、本発明が、食料品の(食料品の調製に現在使用されている)部分水素添加脂肪または部分水素添加油を本発明のショートニング系で置き換えることによって、食料品の脂肪含有量(例えば、トランス脂肪含有量)またはその表示もしくは開示(例えば、食料品についての栄養パネル)を改善し得ることを実証する。製品栄養パネルについての米国食品医薬品局(FDA)の現在の考慮事項は、0.5グラム/一食分よりも少ないあらゆる構成成分は表示の必要がないということであり、従って、本発明のショートニング系はすべて4%または6%のいずれかであり、表示が必要なレベルよりも低いトランスレベルを与える。
【0124】
(実施例10:トルティーヤ配合物)
脂肪およびショートニングをトルティーヤに加えて、ドウの滑らかさを補助し、加工および焼成の間の膨張を改善する。脂肪はまた、焼成したベーカリーの身を柔らかくすることによって食感品質も改善し、かつ貯蔵寿命も改善する。さらに、脂肪およびショートニングは、包装中にトルティーヤが互いに付着するのを減少させるかまたは防ぎ得る。
【0125】
伝統的に、乳化剤(例えば、モノグリセリドおよびジグリセリドならびに/またはポリソルベート)を含むかまたは含まない、ラード、獣脂、または部分水素添加脂肪が、トルティーヤのドウに用いられてきた。このような脂肪系は、可塑性形態かまたは液体の溶融形態で用いられ得る。液体の溶融形態は、製造者にとって取り扱いがより容易であり、かつ、それほど労働集約的でないので、好適であり得る。トルティーヤドウ中の脂肪レベルは、小麦粉重量を基準として2%から20%の範囲内で変動し得る。これらのレベルは、所望の最終製品の種類(例えば、低脂肪)によって変化する。
【0126】
商業的製造者にとって、配合物中のこれらのショートニングを未水素添加油または液体油で置き換えると、ドウの機械加工が難しくなり、それにより最終製品の品質が低下し得るので、多くの加工上の難題を生じ得る。
【0127】
成分の混合後、トルティーヤドウを3つの方法のうちの1つの方法により加工する。第1の方法は、一連のシーティングロールによってドウの厚さをゆっくりと減少させることを含む。次いで、ドウをダイカットして円形のトルティーヤ形状を作製する。第2の方法は、ホットプレスに関連する。ドウを個々のドウの玉に丸め、2枚のホットプレートを用いてプレスする。第3の方法は、トルティーヤドウの伸展に関連する。トルティーヤドウを手または半自動方法によって全体的に伸展させ得る。
【0128】
これらの方法すべてにおいて、トルティーヤを円形に形成した後、加熱オーブン中で移動させる。焼成後、トルティーヤは包装され得るか、またはフィリングを中に入れてロールするかまたは折り畳むことによってさらに加工され得る。
【0129】
実施例2におけるように本発明のショートニング組成物を評価するために、トルティーヤについてのモデル配合物を調製する。本実施例において、実施例2に記載の本発明のショートニングを脂肪系として用いる。
【0130】
【表8】

配合物についての混合手順は以下の通りであった:
(段階1)
成分を低速で1分間および中速で15分間混合する。
【0131】
(段階2)
その後、ドウを、製造者の指示に従ってフラワートルティーヤ機器で加工する。
【0132】
(段階3)
次いで、円形のトルティーヤを、オーブン製造者の指示に従って焼成し得る。
【0133】
(観察)
本発明のショートニング系(実施例2)を用いて生成したトルティーヤドウは、部分的に水素添加した乳化ショートニングを用いて形成したドウに似ており、液体植物油または完全精製植物油を用いて形成したドウよりも優れている。両方のトルティーヤドウは、同等に十分に加工される。しかしながら、完全精製植物油を用いて作製した焼成トルティーヤは、不十分な食感特性を有しかつ貯蔵寿命の短い、過度に半透明なトルティーヤとなる。さらに、本発明のショートニング系を用いて作製した焼成トルティーヤは、部分的に水素添加した乳化ショートニングを用いて配合したトルティーヤと比較して、許容可能であるかまたはより良好な折り畳み特性、ロール特性、外観品質、テクスチャー品質、食感品質、および貯蔵寿命品質を有する。
【0134】
全体として、本発明のショートニング系は、加工および機械加工を容易にし、適切な食感品質を与え、中にフィリングを入れて折り畳んだりまたはロールしたりする場合、破れたり、割れたりまたは裂けたりしない。
【0135】
さらに、本実施例は、本発明のショートニング系に由来する飽和脂肪含有量が、現在の脂肪系に関して維持されることを示す。
【0136】
種々の文献が本文中に引用される。本明細書中に引用される文献(本明細書中の引用文献)の各々、および本明細書中の引用文献の各々に引用される文献の各々は、本明細書中または本明細書中の引用文献中または本明細書中の引用文献中に引用される文献中に記述される任意の製品のための任意の製造者の仕様書、データシート、説明書、製品印刷物、取扱説明書などと共に、参考として本明細書中に援用される。本文中に参考として援用される文献はいずれも、本発明に関する先行技術であるとは認められないが、本文中に参考として援用される文献は、本発明の実施の際に用いられ得る。
【0137】
本発明は、以下の番号付きのパラグラフによってさらに記載される:
1.未水素添加または非水素添加の、高度不飽和植物油(例えば、ヒマワリ油、米ぬか油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、サフラワー油、キャノーラ油、オリーブ油、またはこれらのブレンド(有利には、綿実油、ヒマワリ油、大豆油またはこれらのブレンド))と乳化剤組成物とを含むか、これらから本質的になるか、あるいはこれらからなるショートニング系であって、この乳化剤組成物が、有利にはモノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤、およびイオン性乳化剤で構成される、ショートニング系。
【0138】
2.前記アルファ傾向性乳化剤が、プロピレングリコールエステル、乳酸エステルおよび酢酸エステルまたはそれらの組み合わせであり得る、パラグラフ1に記載のショートニング系。
【0139】
3.前記イオン性共乳化剤が、ステアロイル乳酸ナトリウム、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチンまたはそれらの組み合わせであり得る、パラグラフ1に記載のショートニング系。
【0140】
4.非水素添加植物油と乳化剤組成物との(好ましくは機械的攪拌による)物理的ブレンドまたは混合による、パラグラフ1の、または本明細書中に記載の通りのショートニング組成物を調製するための方法。
【0141】
5.前記モノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤(好ましくはプロピレングリコールエステル)およびイオン性共乳化剤(好ましくはステアロイル乳酸ナトリウム)が、好ましくは、流動性を与えるのに十分な高温(例えば、その融点±10℃以内)に加熱され、次いで、油(例えば、非水素添加液体植物油)の中に直接添加される、パラグラフ4に記載の方法。
【0142】
6.前記モノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤、およびイオン性共乳化剤が完全に溶解状態になるまで(例えば、非水素添加液体植物油中に完全に溶解するまで)ブレンドを継続する、パラグラフ4に記載の方法。
【0143】
7.パラグラフ6による本発明のショートニング組成物の使用であって、この温度で食料品への直接的な、または食料品中に使用する前に冷却される、使用。
【0144】
8.液体としての(例えば、スプレーとしての、またはエアロゾル形態もしくは噴霧形態での)本発明のショートニング組成物の使用。
【0145】
9.食料品の他の成分へ添加する前に、油の中に分散型の脂肪結晶の形成を開始するために、約65〜90°F(約18℃〜32℃)という温度に急冷する工程をさらに含むか、この工程から本質的になるか、またはこの工程からなる、パラグラフ6に記載の方法。
【0146】
10.重量で(ショートニング組成物またはショートニング系の総重量を基準として)約3〜約10%または約3〜約7%または約4〜約6%または約5%;あるいは、乳化剤組成物の6〜8%未満、例えば、約6%未満または約8%未満(例えば、約1%または約2%または約3%〜約5%または約7%)あるいは6%未満または8%未満(例えば、約2%または約3%または約4%〜約5%)のような少量の乳化剤組成物を含むか、またはこの乳化剤組成物から本質的になるか、またはこの乳化剤組成物からなる、パラグラフ1〜9のいずれかに記載のショートニング系。
【0147】
11.重量で(前記組成物または系の総重量を基準として)94〜92%より多い量の、または約97%〜約90%の量の、約97%〜約93%の量の、または約96%〜約94%の量の、または約95%の量の、または約94%より多い量の、または約92%より多い量の、油または不飽和または未水素添加または非水素添加の、ならびに/あるいは高度不飽和および非水素添加油を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、パラグラフ1〜10のいずれかに記載のショートニング系;例えば、重量で(前記組成物または系の総重量に基づき)約99%〜約95%の前記油、または約98%〜約95%の前記油、または約97%〜約95%の前記油、または約99%〜約93%の前記油、または約98%〜約93%の前記油、または約97%〜約93%の前記油、または約96%〜約93%の前記油、または約95%〜約93%の前記油、または約99%〜約94%の前記油、または約98%〜約94%の前記油、または約97%〜約94%の前記油、または約97%〜約95%の前記油(例えば、92%より多い、94%より多い、約93%、例えば、約99%または約98%または約97%または約96%または約95%の前記油)を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる系。
【0148】
12.米国特許第5,908,655号および欧州特許1057887A1のショートニング系に用いられるステアリン画分の量よりも少ない乳化剤組成物を含む、パラグラフ1〜11のいずれかに記載のショートニング系。
【0149】
13.油および乳化剤組成物が互いに適合する(例えば、ショートニング系の油がキャノーラ油である場合、モノグリセリドおよびジグリセリドはキャノーラ油に基づくかまたはキャノーラ油のモノグリセリドおよびジグリセリドである)、パラグラフ1〜12のいずれかに記載のショートニング系。
【0150】
14.モノグリセリドおよびジグリセリドが、脂肪または油のグリセロール分解によって有利に得られる、パラグラフ1〜13のいずれかに記載のショートニング系。
【0151】
15.多成分系である(すなわち、第1の成分が油であり、第2の成分が乳化剤組成物であるような)、パラグラフ1〜14のいずれかに記載のショートニング系。
【0152】
16.さらなる成分が、本発明の新規性または基本特性を損ねず、かつ先行技術において見出される実施形態にまで広げられないという了解の下で、ショートニング系に代表的に用いられるこのようなさらなる成分を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、パラグラフ1〜15のいずれかに記載のショートニング系。
【0153】
17.酸化反応に対するショートニング系の安定性を増加させるために、抗酸化系として、例えば、トコフェロール、TBHQ、BHT、または没食子酸プロピルのような任意の所望の抗酸化系を、単独で、またはクエン酸、リン酸、EDTAなどのような金属スカベンジャーと組み合わせて含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、パラグラフ16に記載のショートニング系。
【0154】
18.前記モノグリセリドおよびジグリセリドが、約45重量%より大きい、例えば約50重量%より大きい、例えば約55重量%より大きい、例えば約60重量%より大きい、有利には約65重量%より大きい、好ましくは約70重量%より大きい、例えば約75重量%より大きい、例えば約80重量%より大きいモノグリセリド最少含有量、最も有利にはモノグリセリドとみなされる生成物を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、パラグラフ1〜17のいずれかに記載のショートニング系。
【0155】
19.乳化剤組成物が、約10〜70重量部のモノグリセリドおよびジグリセリド、約20〜70重量部のアルファ傾向性乳化剤、および約15重量部未満のイオン性共乳化剤を含む、パラグラフ1〜18のいずれかに記載のショートニング系。
【0156】
20.ショートニング組成物を調製するための方法であって、トリグリセリドのグリセロール分解/エステル交換により得られ得るかまたは得られた、パラグラフ1〜19のいずれかに記載の上記のモノグリセリドおよびジグリセリド、アルファ傾向性乳化剤、好ましくはプロピレングリコールエステル、およびイオン性乳化剤(好ましくはステアロイル乳酸ナトリウム)(例えば、グリセロール分解/エステル交換により得られ得るかまたは得られた、前記特性を有する、モノグリセリドおよびジグリセリド)を、植物油(有利には未水素添加または非水素添加、高度不飽和の植物油、例えば、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、サフラワー油、キャノーラ油、オリーブ油またはこれらのブレンド、有利には大豆油、綿実油、キャノーラ油またはこれらのブレンド、有利には大豆油またはキャノーラ油)と混合する工程を包含する、方法。
【0157】
21.ショートニング系またはショートニング組成物を調製するための方法であって、以下の工程を包含する、方法:トリグリセリドをグリセロール分解/エステル交換に供する工程;パラグラフ1〜20のいずれかに記載の、かつ/または上記の特性を有する、グリセロール分解/エステル交換により得られ得るかまたは得られたモノグリセリドおよびジグリセリドを単離する工程;ならびにトリグリセリドのグリセロール分解/エステル交換により得られ得る単離されたモノグリセリドおよび/またはジグリセリドを、植物油(例えば、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、サフラワー油、キャノーラ油、オリーブ油またはこれらのブレンド、有利には大豆油、綿実油、キャノーラ油またはこれらのブレンド、有利には大豆油またはキャノーラ油)と混合する工程。
【0158】
22.有利にはトリグリセリドのグリセロール分解/エステル交換により得られたかまたは得られ得る、パラグラフ1〜21のいずれかに記載の、かつ/または上記の特性を有する、単離されたモノグリセリドおよびジグリセリド。
【0159】
23.約45重量%より大きい、例えば約50重量%より大きい、例えば約55重量%より大きい、例えば約60重量%より大きい、有利には約65重量%より大きい、好ましくは約70重量%より大きい、例えば約75重量%より大きい、例えば約80重量%より大きいモノグリセリド最少含有量、最も有利にはモノグリセリドとみなされる生成物を含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなる、単離されたモノグリセリドおよびジグリセリド。
【0160】
24.前記モノグリセリドおよびジグリセリドが、重量で、好ましくは45%より大きい、有利には70%より大きい、より好ましくは80%より大きいモノグリセリド最少含有量を含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなる、パラグラフ23に記載の単離されたモノグリセリドおよびジグリセリド。
【0161】
25.全組成物の重量を基準として、約3%〜約10%の乳化剤組成物(例えば、約3%〜約7%(例えば、約3%または約4%または約5%または約6%)のモノグリセリドおよびジグリセリド)を含むか、これから本質的になるか、あるいはこれからなる、パラグラフ24に記載のショートニング系。
【0162】
26.前記植物油が、多価不飽和が豊富である(例えば、大豆油、キャノーラ油)、パラグラフ1〜25のいずれかに記載のショートニング系。
【0163】
27.部分的かつ選択的に水素添加された前記油が用いられ得る、パラグラフ1〜26のいずれかに記載のショートニング系。
【0164】
28.食料品中におけるパラグラフ1〜27のいずれかに記載のショートニング系の使用、または食料品中に用いられるショートニング系中におけるパラグラフ1〜27のいずれかに記載の乳化剤組成物の使用。
【0165】
29.パラグラフ1〜28のいずれかに記載のようなショートニング系で食料品または食品をコーティングするか、あるいはこのショートニング系を食料品または食品に局所的に塗付する工程を含むか、この工程から本質的になるか、またはこの工程からなる、このような食料品または食品を調製するための改良方法。
【0166】
30.パラグラフ1〜29のいずれかに記載のショートニング系で食料品をコーティングするか、あるいはこのショートニング系を食料品または食品に局所的に塗付する工程を含むか、この工程から本質的になるか、またはこの工程からなる、食料品または食品の貯蔵寿命を改善するかまたは延長するための、あるいは食料品または食品の官能特性または口当たりまたは食味を改善するかまたは強化するための、改善された方法。
【0167】
31.前記局所塗付が、食料品または食品の焼成後で、かつ何らかの包装の前に行われる、パラグラフ1〜30のいずれかに記載の通りの方法。
【0168】
32.焼成後でかつ包装の前に、パラグラフ1〜31のいずれかに記載のショートニング系で食料品または食品をコーティングするか、あるいはこのショートニング系を食料品または食品に局所的に塗付することである、このような食料品または食品の調製および包装の改善。
【0169】
33.パラグラフ1〜32のいずれかに記載のショートニング系またはモノグリセリドおよびジグリセリドを含むか、これでコーティングされるか、またはこれと共に焼成される、食料品。
【0170】
34.食料品の脂肪含有量(例えば、トランス脂肪含有量)またはその表示もしくは開示(例えば、食料品についての栄養パネル)を改善するための方法であって、食料品の部分水素添加脂肪または油を、パラグラフ1〜33のいずれかに記載のショートニング系で置き換える工程を含むか、この工程から本質的になるか、またはこの工程からなる、方法。
【0171】
35.前記モノグリセリドおよび/またはジグリセリドあるいはショートニング系のモノグリセリドおよびジグリセリドが、エステルの混合物を含むか、あるいはこの混合物から本質的になり、このエステルの混合物は、(a)飽和モノグリセリド(例えば、グリセロールモノステアレート(C18:0)またはグリセロールモノパルミテートあるいはそれらの組み合わせ);(b)グリセロールモノオレエート(C18:1シス);および(c)グリセロールモノエラジエート(C18:1トランス)を含むかまたはこれらから本質的になり、かつ、この混合物が有利には、重量で約40%〜約70%、例えば約45%〜約65%、例えば約45%〜約55%、例えば約50%の(a);約10%〜約40%、例えば約15%〜約35%、例えば約20%〜約30%、例えば約25%の(b);および最大約25%の(c)、例えば最大約20%の(c)、例えば最大約15%または10%の(c)を含むかまたはこれらから本質的になる、パラグラフ1〜34のいずれかに記載の発明。
【0172】
本発明の好ましい実施形態をこのように詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明は、同発明の精神または範囲を逸脱することなく、その多くの明白なバリエーションが可能であるので、上記の記載に示される特定の詳細に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤組成物であって、
a)脂肪酸のモノグリセリドおよび/またはジグリセリド;
b)アルファ傾向性乳化剤;
c)イオン性共乳化剤
を含む、乳化剤組成物。
【請求項2】
成分a)が、前記組成物の総重量を基準として10%w/wと70%w/wとの間の量で存在する、請求項1に記載の乳化剤組成物。
【請求項3】
成分b)が、前記組成物の総重量を基準として20%w/wと70%w/wとの間の量で存在する、請求項1または2に記載の乳化剤組成物。
【請求項4】
成分c)が、前記組成物の総重量を基準として15%w/w未満の量で存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項5】
成分a)が、45重量%のモノグリセリド最少含有量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項6】
成分a)が、80重量%のモノグリセリド最少含有量を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項7】
前記成分b)のアルファ傾向性乳化剤が、プロピレングリコールエステル、乳酸エステル、酢酸エステルおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項8】
成分b)が、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルから選択される、請求項7に記載の乳化剤組成物。
【請求項9】
イオン性共乳化剤成分c)が、ステアロイル乳酸ナトリウム、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチンおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項10】
ショートニング組成物であって:
d)油;および
e)請求項1〜9のいずれか1項に記載の乳化剤組成物
を含む、ショートニング組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの非水素添加植物油を含む、請求項10に記載のショートニング組成物。
【請求項12】
前記油d)が、非水素添加植物油である、請求項10または11に記載のショートニング組成物。
【請求項13】
前記油d)が、ヒマワリ油、米ぬか油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、サフラワー油、キャノーラ油、オリーブ油またはそれらのブレンドから選択される、請求項10〜12のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項14】
前記油d)が、前記ショートニング組成物の総重量を基準として約92%を超える量で存在する、請求項10〜13のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項15】
前記乳化剤組成物e)が、前記ショートニング組成物の総重量を基準として3〜10%の量で存在する、請求項10〜14のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項16】
前記油d)および前記乳化剤組成物e)が互いに適合する、請求項10〜15のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項17】
ショートニング組成物に代表的に使用されるさらなる成分を含む、請求項10〜16のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項18】
抗酸化剤および/または金属スカベンジャーを含む、請求項17に記載のショートニング組成物。
【請求項19】
前記抗酸化剤が、トコフェロール、TBHQ、BHT、没食子酸プロピル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載のショートニング組成物。
【請求項20】
前記金属スカベンジャーが、クエン酸、リン酸、EDTAおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18または19に記載のショートニング組成物。
【請求項21】
液体である、請求項10〜20のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項22】
スプレーの形態、エアロゾルの形態、または噴霧形態である、請求項10〜20のいずれか1項に記載のショートニング組成物。
【請求項23】
前記油d)と前記乳化剤組成物e)との物理的ブレンドまたは混合による、請求項10〜22のいずれか1項に規定されるショートニング組成物の調製プロセス。
【請求項24】
前記乳化剤組成物e)が、流動性を与えるのに十分な温度に加熱され、次いで前記油に直接添加される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ショートニング組成物を、使用前に18〜32℃の温度にさらに急冷する工程を含む、請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
請求項10〜22のいずれか1項に記載されるショートニング組成物を含む食料品。
【請求項27】
クッキー、クラッカー、トルティーヤ、ならびにシート状にした、押出し成形した、および/または積層した焼成品からなる群より選択される、請求項26に記載の食料品。
【請求項28】
乳化剤のための送達系としての、請求項10〜22のいずれか1項に記載されるショートニング組成物の使用。

【公表番号】特表2007−529216(P2007−529216A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503443(P2007−503443)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000900
【国際公開番号】WO2005/089568
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】