説明

シリカアルミナ系凝集粒子

【課題】P型ゼオライトから得られるシリカアルミナ系凝集粒子であってアンチブロッキング性に優れ、樹脂フィルムに対する傷付き防止性に優れたシリカアルミナ系凝集粒子を提供する。
【解決手段】無水物基準で、下記式(1);mCaO・nNaO・pSiO・Al(1)式中、m+nは0.9乃至1.1の数であって、m:nの比は0.05:0.95乃至0.9:0.1の範囲内にあり、pは2.3乃至6.0の数である、で表わされる化学組成を有し、結晶化度が20%以下であり、電子顕微鏡で測定した一次粒子径が0.05乃至0.6μmの範囲にあり、コールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)が0.7乃至10μmの範囲にあり、嵩密度が0.25乃至0.70g/cmの範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粒子構造を有しており、アンチブロッキング剤としての特性に優れたシリカアルミナ系凝集粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
球状のシリカアルミナ系粒子は、種々の重合体フィルムやその他の樹脂乃至ゴム等に対する充填剤、化粧料に対する充填剤、香料や薬品類に対する支持担体、クロマトグラフィ用充填剤等の用途に広く使用されている。
このシリカアルミナ球状粒子の製造方法としては、シリカ−アルミナゾルをスプレーし或いはそのスプレーを気流と衝突させる方法、有機金属化合物の加水分解による方法や立方体乃至球体の粒子形態を有する結晶性ゼオライトを、その結晶構造が破壊されるがその粒子形態が実質上損なわれない条件下に酸で中和して、該ゼオライト中のアルカリ金属分を除去する方法が知られている。
【0003】
ところで、シリカアルミナゾルを用いて製造されるシリカアルミナ系球状粒子は、一次粒径が比較的粗大であり、しかも粒度分布も広く、このため、樹脂に対する分散性が低いという欠点があり、更には吸湿性が大きく、樹脂に配合して熱成形する際に発泡を生じるという問題も有している。一方、ゼオライトを用いて製造されるシリカアルミナ系球状粒子は樹脂に対する分散性等に優れているものの、粒子の屈折率が樹脂の屈折率と大きく異なっており、更に吸湿性が大きいという問題も抱えている。
【0004】
上記のような欠点が解決されたシリカアルミナ系球状粒子として、特許文献1には、P型ゼオライトに特有のX線回折像を有し且つ個々の粒子が全体として明確な球体形状とギザギザの表面を有するゼオライト粒子を用い、このゼオライト粒子をカルシウムイオン等でイオン交換した後、200℃乃至700℃で焼成して得られたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−17217号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシリカアルミナ系球状粒子は、X線回折学的に実質上非晶質であり、個々の粒子が全体として明確な球体形状とギザギザの表面とを有し、且つRH90%、室温及び48時間経過の条件で13%以下の吸湿量と1.48乃至1.61の屈折率とを有している。かかる粒子は、樹脂に対する分散性が良好であるとともに吸湿量が低いため、発泡の問題も有効に解決されており、また、屈折率が各種の樹脂フィルムの屈折率に近似しており、透明性等に優れたフィルムを与えることができ、更には、粒子がギザギザ状の表面を有しているためにアンチブロッキング剤としての特性に優れ、樹脂フィルムに配合した時に透明性を保ちながらフィルム同士の密着を防止することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の非晶質シリカアルミナ球状粒子においても、未だ解決すべき課題が残されている。即ち、かかる粒子はアンチブロッキング剤としての特性が十分でなく、例えば良好なアンチブロッキング性を確保するためには、樹脂フィルムにかなりの量の粒子を配合することが必要であり、粒子が密で硬く更に一次粒子が大きいため、フィルムを擦り合わせると表面を傷つけるという欠点もある。
【0008】
従って、本発明の目的は、P型ゼオライトから得られるシリカアルミナ系粒子であってアンチブロッキング性に優れ、樹脂フィルムに対する傷付き防止性に優れたシリカアルミナ系粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、P型ゼオライトを原料として得られるシリカアルミナ系粒子について、多くの実験を行って検討した。その結果、ケイ酸ソーダとアルミン酸ソーダとを混合してNa−P型ゼオライトの結晶を析出する際、種晶を共存させておくことによって得られたP型ゼオライト結晶の凝集体をカルシウム交換し、更に焼成することによって得られたシリカアルミナ系凝集粒子は、種晶を用いずに得られたP型ゼオライトから製造されたもの(特許文献1の非晶質シリカアルミナ粒子)とは、その粒子構造が大きく異なり、更にアンチブロッキング性等の特性も大きく向上しているという新規な知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、無水物基準で、下記式(1);
mCaO・nNaO・pSiO・Al (1)
式中、
m+nは0.9乃至1.1の数であって、
m:nの比は0.05:0.95乃至0.9:0.1の範囲内にあり、
pは2.3乃至6.0の数である、
で表わされる化学組成を有し、結晶化度が20%以下であり、電子顕微鏡で測定した一次粒子径が0.05乃至0.6μmの範囲にあり、コールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)が0.7乃至10μmの範囲にあり、嵩密度が0.25乃至0.70g/cmの範囲にあることを特徴とするシリカアルミナ系凝集粒子。
【0011】
本発明のシリカアルミナ系凝集粒子においては、
(1)水銀圧入法で測定した細孔半径1.8乃至110nmでの細孔容積が0.10乃至0.60cm/gの範囲にあること、
(2)X線小角散乱法で測定した基本単位粒子径が23乃至40nmの範囲にある、
が好ましい。
【0012】
本発明によれば、また、上記シリカアルミナ系凝集粒子からなるアンチブロッキング剤が提供される。
本発明によれば、更に、熱可塑性樹脂100重量部当り、上記アンチブロッキング剤が0.01乃至5重量部配合されていることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、Na−P型ゼオライトを原料とし、このゼオライト粒子をカルシウム交換した後に焼成することによって得られるものであるため、無水物換算で前記式(1)で表わされる化学組成を有していると同時に、斜長石の一種Andesineの前駆体が生成しており、その結晶化度が20%以下である。
【0014】
また、このシリカアルミナ系凝集粒子は、種晶の存在下で育成されたP型ゼオライトを原料として使用していることから、極めて特異な粒子構造を有している。
具体的には、電子顕微鏡で測定した一次粒子径が0.05乃至0.6μmの範囲にあり、且つコールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)が0.7乃至10μmの範囲にある。即ち、種晶を用いずに得られたP型ゼオライトから形成された非晶質シリカアルミナ粒子(以下、非種晶系粒子と略す)では、その一次粒子径が1〜3μm程度であるが、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子の一次粒子径は、上記のように極めて小さい。更に、コールターカウンター法による中位径(D50)の値から理解されるように、この粒子は、個々の粒子が集合して凝集体を形成しており、該凝集体の粒径が、非種晶系粒子の一次粒子径と同程度の大きさとなっている。
【0015】
このように本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、極めて微細な一次粒子径を有しており、しかも微細な一次粒子が凝集して適度な大きさの二次粒子の形態で挙動するため、その嵩密度はかなり小さく(即ち、体積あたりの重量が小さい)、0.25乃至0.70g/cmの範囲にある。対照的に、非種晶系粒子では、一次粒子が大きく、且つ凝集もしていないため、その嵩密度はかなり大きい。
【0016】
また、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、水銀圧入法で測定した細孔半径1.8乃至110nmにおける細孔容積が0.10乃至0.60cm/gの範囲にある。このような径の細孔は、いわゆるメソ孔と呼ばれる大きさのものであり、一次粒子表面に形成される凹凸を示している。粒子表面に細孔を有することも嵩密度が小さい要因の一つにもなっている。Na−P型ゼオライト生成後の熱アルカリ環境下において、結晶性の低い結晶子が選択的に溶解し、より大きな結晶子に組み込まれるように再結晶化するため、メソ孔が形成されると同時に、X線小角散乱で測定される基本単位粒子径が23乃至40nmである。
従来公知の非種晶系粒子では、明確な球体形状を有している粒子が独立して存在しており、且つ粒子表面がギザギザとなっているが、上記のような溶解・再結晶化は起こっておらず、メソ孔の細孔容積はないか又は極めて小さい。またX線小角散乱で測定される基本単位粒子径が20nm前後と小さい。
【0017】
また、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、上記のような粒子構造を有しているため、極めて優れたアンチブロッキング性を示す。即ち、嵩密度が極めて小さいため、少量の配合で樹脂中に多数の粒子を存在させることができ、この結果、少量の配合量であっても非種晶系の粒子以上のアンチブロッキング性を確保することができ、アンチブロッキング性に極めて優れている。
例えば、非種晶系粒子が開示されている特許文献1では、互いに重ね合わせた2枚のフィルムに2kPaの荷重をかけ、40℃、24時間放置した後にアンチブロッキング性を評価しているが、本発明においては、後述する実施例に示されているように、更に過酷な条件(荷重6kPa、60℃、72時間放置)でアンチブロッキング性を評価しており、このような過酷な条件で評価した場合においても本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は優れたアンチブロッキング性を示す。
【0018】
更に、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、P型ゼオライトと同様にその一次粒子表面はギザギザ状となっているが、一次粒子径が小さく、且つ小さな一次粒子が集合した凝集体の形で挙動するため、耐傷付き性(耐スクラッチ性)も良好であり、アンチブロッキング剤としてフィルムに配合した場合において、フィルムの傷付きを有効に防止することができる。
例えば、後述する実施例から、フィルム同士を擦り合わせ傷付けた後のフィルムを観察すると、その霞度(HAZE)は、評価前のフィルムとほとんど変わりがなく、フィルムの傷付きが有効に防止されていることがわかる。
【0019】
更にまた、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、P型ゼオライトを原料として得られるものであるため、その屈折率は各種樹脂の屈折率に極めて近似しており、且つ耐吸湿性にも優れており、従って、かかる粒子の配合による樹脂フィルムの透明性の低下を有効に回避することができ、また、樹脂に配合したときの発泡も有効に防止することができる。更には、メソ孔の容積が大きく、粒子間隙の大きい凝集体の形で挙動するため、この粒子が配合されている樹脂フィルムでは該粒子と樹脂との密着性が高く、空隙の発生が抑えられることにより透明性に極めて優れている。
【0020】
このように本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、アンチブロッキング剤として極めて有用であり、例えば、熱可塑性樹脂100重量部当り、かかる粒子を0.01乃至5重量部配合することにより、アンチブロッキング性に優れたフィルムの形成に用いる樹脂組成物を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のシリカアルミナ系凝集粒子の製造原料として用いるP型ゼオライト(実施例3)のX線回折像。
【図2】図1のP型ゼオライトの電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【図3】本発明のシリカアルミナ系凝集粒子(実施例3)のX線回折像。
【図4】本発明のシリカアルミナ系凝集粒子(実施例3)を示す電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【図5】種晶を用いずに製造されたP型ゼオライトの電子顕微鏡写真(倍率5000倍)
【図6】図5のP型ゼオライトを原料として得られた非種晶系粒子(比較例1)を示す電子顕微鏡写真(倍率5000倍)。
【図7】実施例1〜4および比較例2、3の水銀圧入法で測定した細孔分布(縦軸:累積細孔容積)
【図8】実施例1〜4および比較例2、3の水銀圧入法で測定した細孔分布(縦軸:dV/dR細孔容積)
【図9】実施例9〜11および比較例4、5の水銀圧入法で測定した細孔分布(縦軸:累積細孔容積)
【図10】実施例9〜11および比較例4、5の水銀圧入法で測定した細孔分布(縦軸:dV/dR細孔容積)
【図11】実施例3、4、比較例1、6のHazeとブロッキング力(圧着条件BF1)のバランス
【図12】実施例3、4、比較例1、6のHazeとブロッキング力(圧着条件BF2)のバランス
【図13】実施例3、4、比較例1、6のHazeとブロッキング力(圧着条件BF3)のバランス
【発明を実施するための形態】
【0022】
<シリカアルミナ系凝集粒子の製造>
本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、種晶を用いて製造されたP型ゼオライトを原料とて用いる点を除けば、特許文献1に開示されている非種晶系粒子と同様に、このP型ゼオライトをCa交換し、次いで焼成することにより製造される。
【0023】
1.原料P型ゼオライト;
本発明において原料として用いるP型ゼオライトは、Na型であり、上記で述べたように種晶を用いて製造される。具体的には、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲル、シリカゾル、メタカオリン、アルミン酸ナトリウム、アルミナゾル及び水酸化ナトリウムを、下記条件を満足するように混合すると同時に、P型ゼオライトの種晶を添加してアルミノケイ酸ソーダのゲルを生成させる。
配合条件(モル比)
NaO/SiO:0.2〜8(好ましくは0.5〜1.0)
SiO/Al:3〜20(好ましくは3.5〜6)
O/NaO:20〜200(好ましくは30〜120)
【0024】
添加するP型ゼオライトの種晶は、粉末の形態で添加することもできるし、水性スラリーの形態で添加することもできるが、一般的には、水性スラリーの形態で添加するのがよい。さらに、この種晶は、湿式粉砕により、粒径を0.1〜2μm程度に調整しておくことが、粗大な二次粒子(凝集体)を生成させず、シャープな粒度分布のP型ゼオライトを得る上で好適である。この粒径は、例えばコールターカウンター法により確認することができる。
【0025】
種晶の添加量は、反応により生成するアルミノケイ酸ソーダ当り、1乃至20重量%程度の量とするのがよい。
また、種晶を水性スラリーの形で混合するときには、混合系の水分濃度が、上記条件から逸脱しない程度とすべきであり、一般的には、1乃至30重量%濃度の水性スラリーの形態で混合するのがよい。
【0026】
ゲルの生成は、上記の混合系を10乃至80℃程度の温度に0.1〜20時間程度、攪拌下に保持しての熟成により行われる。
【0027】
ゲルの生成後、80乃至200℃の温度下で常圧もしくは水熱下で結晶化せしめ、ゲルを消失せしめて目的とするP型ゼオライト粒子を得ることができる。即ち、この結晶化により、結晶子が放射状に並んで成長すると同時に、結晶の一部溶解及び再結晶化を繰り返しながら結晶が成長していくことにより、表面が梨地状(微細なギザギザ形状)のP型ゼオライトの球状粒子が得られるものである。上記の結晶子の大きさは、X線小角散乱法により測定することができる。
上記のようにして製造されるP型ゼオライト粒子のX線回折像は、図1のX線回折像に示されているように、P型ゼオライトに特有の回折ピークを有している。
また、その化学組成は、下記式(2)で表される。
kNaO・k’SiO・Al (2)
式中、
kは0.9乃至1.1の数であって、
k’は2.3乃至6.0の数である。
【0028】
本発明においては、上記のようなP型ゼオライト粒子の製造において、種結晶の共存下で結晶化が行われることから、より迅速に結晶化が進行し、且つその粒子構造は、種結晶を用いずに形成されたものとは全く異なったものとなっている。
即ち、種晶の共存下で結晶化が行われる場合には、ゲルが完全に消失し、結晶化が完了するまでの時間(前述した温度に保持する時間)は、反応温度95℃の場合0.5乃至1時間程度と極めて短い。また、得られたP型ゼオライトの粒子は、図2の電子顕微鏡写真に示されているように、球状の微細な一次粒子が集合して凝集体(二次粒子)を形成している。具体的には、電子顕微鏡で測定した一次粒子径は上限値と下限値が共に0.05乃至0.6μm、特に0.2乃至0.5μmの範囲にあるために極めて微細であり、二次粒子(凝集体)の粒子径に相当するコールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)は、0.7乃至10μm、特に2乃至4μm程度であり、当然、一次粒子径よりも粗大となっており、電子顕微鏡で測定した粒径とコールターカウンター法で測定した粒径との差からも、このP型ゼオライト粒子は、微細な一次粒子が集合して二次粒子(凝集体)を形成していることを確認することができる。
【0029】
このように短時間で結晶化が行われ且つ図2のような粒子構造となる理由は、明確に解明されたわけではないが、本発明者等は、アルミノケイ酸ソーダのゾル中に、種晶の一部が溶解しており、溶解した種晶は直ちに再結晶化するために、結晶化が著しく促進され、しかも、再結晶化した種晶を核として、その周囲で同時多発的に結晶化が進行していくために、図2に示されているような粒子構造が形成されるのではないかと推定される。
【0030】
対照的に種晶を用いずにP型ゼオライトを製造した場合には、結晶化を促進するための核となるような部分がゲル中に存在していないため、結晶化がゆっくりと進行し、結晶化が完了するまでに反応温度95℃の場合7乃至12時間以上を要し、しかも、その粒子構造は、図3に示されているように、個々の粒子が独立した一次粒子として存在しており、電子顕微鏡で測定した一次粒子径は、極めて大きく、1乃至10μm程度であり、さらに、コールターカウンター法で測定した粒径も一次粒子径と同程度乃至3倍程度である。即ち、この一次粒子径は、前述した種晶を用いて形成されたP型ゼオライトの二次粒子径と同程度であり、しかも、二次粒子を形成していないため、電子顕微鏡で測定した粒子径とコールターカウンター法で測定した粒子径とが同程度となっている。
【0031】
また、本発明の種晶存在下のP型ゼオライト反応は結晶化速度が速く、先にも説明したように、ほぼ1時間で非晶質ゲルからP型ゼオライトの結晶化は完了する。その後加熱反応を続けることにより、水銀圧入法で測定される半径1.8乃至110nmの間に細孔が形成される。このような径の細孔は、いわゆるメソ孔と呼ばれる大きさのものであり、一次粒子表面に形成される凹凸を示している。経時変化でメソ細孔径およびメソ細孔容積が徐々に大きくなっており、このことは結晶化完了後の熱アルカリ環境下で、一次粒子表面が浸食および再結晶化することにより細孔が形成されたことを示している。すなわち結晶性の低い結晶子が選択的に溶解し、より大きな結晶子に組み込まれるように再結晶化する(オストワルド成長)ため、メソ孔が形成されると同時に、X線小角散乱で測定される基本単位粒子径が23乃至40nmと大きくなる。またNa−P型ゼオライトのX線回折ピーク強度も高くなっている。
従来公知の非種晶系P型ゼオライトの場合では、明確な球体形状を有している粒子が独立して存在しており、且つ粒子表面がギザギザとなっているが,結晶化反応速度が遅いため溶解・再結晶化は起こっておらず、上記のようなメソ孔の細孔容積はないか又は極めて小さい。またX線小角散乱で測定される基本単位粒子径が20nm前後と小さく、また、非晶質成分が存在しているわけではないが、Na−P型ゼオライトのX線回折ピーク強度も本発明に比べ低い。
このように、種晶の共存下で結晶化を行うことにより、種晶を使用しなかった場合に比して、その結晶化に要する時間は著しく短縮され、また、その粒子構造、細孔構造や結晶子径も全く異なったものとなる。
【0032】
2.イオン交換処理;
以上のようにして得られたP型ゼオライト粒子は、ろ過及び水洗を行った後、Caイオンによるイオン交換処理に付される。この処理と以下の焼成処理によりゼオライトが実質上非晶質化させることを目的としている。以下にはCaイオン交換の例を挙げるが、Caに限定するものではなく、非晶質化するものであればMgイオン、亜鉛イオンなど他の金属イオンやプロトン、アンモニウムイオンなどとの交換でも構わない。
このイオン交換処理は、水溶性のCa塩、例えば塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の水溶液を使用し、これらの水溶液とP型ゼオライト粒子とを接触させることにより行われる。この接触は、Ca塩水溶液とP型ゼオライトとを水性スラリーの状態で攪拌処理する方法や、P型ゼオライトを固定床又は流動床でCa塩水溶液と接触させる方法が採用され、この接触は一段式或いは多段式で行うことができ、また連続式、回分式の何れによっても行うことができる。
【0033】
上記のイオン交換処理により、Naの一部がCaでイオン交換されるが、この処理条件は、従来公知の方法と同様でよく、例えば、P型ゼオライト中のNaO分の少なくとも10モル%以上、特に30モル%以上がCaOで置換されるような条件とすればよい。具体的には、Ca量が、P型ゼオライト中のNaO分当り0.5モル倍以上、特に1.0モル倍以上となるような量でCa塩水溶液を使用し、一般に初期濃度が10乃至50重量%、特に20乃至40重量%のCa塩水溶液と接触させるのがよい。接触時の温度は20乃至100℃、特に30乃至70℃の範囲が適用であり、当然のことながら、高温の方が交換処理が短縮される。接触時間は、温度や交換率によっても相違するが、0.5乃至3時間の範囲である。
【0034】
3.焼成処理;
処理後のCa交換ゼオライトは、ろ過により固−液分離し、水洗し、次の焼成工程に付される。
【0035】
焼成条件は、交換率によっても相違するが、一般に300乃至850℃、特に600乃至800℃の範囲である。
このような非晶質化のための焼成は、固定床、移動床或いは流動床で行うことができ、処理時間は0.5乃至5時間の範囲で十分である。
また、図3に示されているように、このシリカアルミナ系凝集粒子は、焼成によりCa交換ゼオライトのX線回折ピークが消失するとともに、2θ=27.7°にX線回折ピークが見られ、相転移して現れる斜長石の一種Andesineに帰属される。焼成温度を上記範囲とした場合には、Andesineの結晶化度は20%以下の範囲内となっている。これより焼成温度が高くAndesineに完全に転移した場合には、屈折率が高くなり樹脂の屈折率から離れてしまう。また、これより焼成温度が低い場合には、Ca交換ゼオライトの結晶構造が残っており、吸湿性が高いため、樹脂に添加し加工した際に発泡する恐れがある。
焼成後の製品は、適宜、解砕乃至粉砕し、必要により分級して本発明のシリカアルミナ系凝集粒子とする。
【0036】
<シリカアルミナ系凝集粒子>
上記のようにして得られる本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、前述した種晶共存下で得られたP型ゼオライトをCa交換し、焼成により変性したものであるため、その無水物換算での化学組成は、前記式(1)、即ち、
mCaO・nNaO・pSiO・Al (1)
式中、
m+nは0.9乃至1.1の数であって、
m:nの比は0.05:0.95乃至0.9:0.1の範囲内にあり、
pは2.3乃至6.0の数である、
で表わされ、さらに、熱減量(110℃)は0.1乃至5重量%以下である。
【0037】
また、このシリカアルミナ系凝集粒子は、図3に示されているように、焼成によりCa交換ゼオライトに帰属されるX線回折ピークが消失するともに、Andesine前駆体が生成している。Andesine前駆体の結晶化度は20%以下である。
【0038】
先に述べたように、かかるシリカアルミナ系凝集粒子は、前述した特異な粒子構造を有するP型ゼオライト粒子を原料として製造されたものであり、この粒子構造も同様に特異なものとなっている。
即ち、原料のP型ゼオライト粒子に対応して、このシリカアルミナ系凝集粒子は、図5に示されているような粒子構造を有しており、微細な球状の一次粒子が集合して二次粒子(即ち、凝集体)を形成しており、電子顕微鏡で測定した一次粒子径は0.05乃至0.6μm、特に0.2乃至0.5μmの範囲にあり、コールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)は、0.7乃至10μm、特に2乃至4μmの範囲にある。
【0039】
また、上記のような粒子構造を有しているため、このシリカアルミナ系凝集粒子の嵩密度は著しく小さく、0.25乃至0.70g/cm、特に0.37乃至0.47g/cmの範囲にある。
【0040】
さらには、水銀圧入法で測定した細孔半径1.8乃至110nmでの細孔容積が0.10乃至0.60cm/gの範囲にある。先にも説明したように、かかる径の細孔は、メソ孔と呼ばれる大きさのものであり、Na−P型ゼオライト反応中における一次粒子表面の溶解・再結晶化による凹凸を示している。すなわち結晶性の低い結晶子が選択的に溶解し、より大きな結晶子に組み込まれるように再結晶化するため、メソ孔が形成されると同時に、X線小角散乱で測定される基本単位粒子径が23乃至40nm、特に25乃至35nmと大きくなる。この値は原料P型ゼオライトの結晶子径とほぼ同等である。
対照的に、種晶を用いずに得られたP型ゼオライトを原料とする従来公知の非晶質シリカアルミナ球状粒子では、溶解・再結晶化反応が起こっておらず、上記のようなメソ孔は殆んど存在していない。またX線小角散乱で測定される基本単位粒子径が20nm前後と小さい。
また、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、凝集構造によるマクロ孔の増大とともに上記のようなメソ孔が存在しているため、その全細孔容積は1.0乃至2.0cm/g程度とかなり大きく、これに対応して、その吸油量も大きく、70乃至180ml/gの範囲にある。
【0041】
このような本発明のシリカアルミナ系凝集粒子において、その一次粒子は、極めて微細であるため、正確な測定は困難であるが、従来公知のものと同様、各々が真球に近い球状であって、その粒子表面は梨子状となっているものと思われる。
【0042】
また、P型ゼオライトを原料として得られたものであることから、その屈折率は各種樹脂の屈折率に近似して極めて高く、耐湿性にも優れている。例えば、その屈折率は1.49乃至1.53程度の範囲にあり、後述する条件下で測定した吸湿量は1乃至5%程度の範囲にあり、その吸湿量が少なく、優れた耐湿性を示す。即ち、屈折率及び吸湿量が、このような範囲にあるということは、樹脂フィルムに配合したときに、その透明性を維持することができ、さらに樹脂に混合して熱成形を行ったときに、発泡を有効に防止することができることを意味する。
更に、本発明の非晶質シリカアルミナ球状粒子は、BET比表面積が50m/g以下と小さく、表面活性が小さく、雰囲気中での影響が小さい。また、ハンター反射法による白色度が95%以上と白色度に優れている。
【0043】
<用途>
上述した粒子構造を有する本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、アンチブロッキング剤として極めて有用であり、種々の樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の塩素含有樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン類;ポリアセタール等の熱可塑性樹脂に配合し、樹脂成形品、例えば二軸延伸フィルム等にアンチブロッキング性を付与する目的に好適に使用できる。
【0044】
即ち、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、嵩密度が極めて小さいため、少量の配合で樹脂中に多数の粒子(一次粒子)を存在させることができ、更には、メソ孔の容積が大きく、粒子間隙の大きい凝集体の形で挙動するため、この粒子が配合されている樹脂フィルムでは該粒子との密着性が高い。従って、先にも述べたように、少量の配合量であっても非種晶シリカアルミナ系粒子以上のアンチブロッキング性を確保することができる。
例えば、アンチブロッキング性を発現するために、アンチブロッキング剤として、上述した熱可塑性樹脂100重量部当り、0.01乃至5重量部、特に0.15乃至0.6重量部の量で、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子を配合すればよい。この際、その透明性を低下させることもなく、また、フィルム成形に際しての発泡も効果的に防止されることは上記で述べた通りである。
【0045】
更に、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、P型ゼオライトと同様にその一次粒子表面はギザギザ状となっているが、一次粒子径が小さく、且つ小さな一次粒子が集合した凝集体の形で挙動するため、耐傷付き性(耐スクラッチ性)も良好であり、フィルムの傷付きを有効に防止することができる。
【0046】
尚、本発明においては、この非晶質シリカアルミナ粒子の表面を、無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、或いはシラン系、チタニウム系もしくはジルコニウム系のカップリング剤、脂肪酸、樹脂酸や各種石鹸、アミド、エステル等の誘導体で被覆し或いは表面処理して各種の樹脂に配合することもできる。
さらに、本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、上記以外にも、成形用熱硬化型樹脂や被覆形成用塗料に対する充填剤乃至補強剤、更にはセラミックス基材としての用途に供することもできるし、各種紙に対する内填剤や紙に対するコート用充填剤、パウダーファンデーション、液状(ペースト)ファンデーション、ベビーパウダー、クリーム等の種々の化粧料基剤、研磨剤、歯磨き基剤、医薬、農薬、香料、芳香剤等を担持させるための担体としても有用であり、各種クロマトグラフィ用担体としての用途にも供給することができる。
【実施例】
【0047】
本発明の優れた効果を、次の実験例で説明する。なお、シリカアルミナ系凝集粒子の各種物性は、以下の方法で測定した。
【0048】
(1)化学組成
元素分析については、(株)リガク製
Rigaku RIX 2100を用い、ターゲットはRh、分析線はKα、検出器はPCで以下の条件で測定を行った。なお、試料は150℃で2時間乾燥した物を基準とする。
【表1】

得られた分析データより、Al、CaO、NaO、SiO、の化学組成値を求め、Alに対する各モル比m、n、pの値を算出した。
【0049】
(2)X線回折(XRD)および結晶化度
Rigaku製RINT−UltimaIVを用いて、下記条件でX線回折を行った。
ターゲット:Cu
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
走査速度(ステップ):2°/min
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
2θ=27.7°のX線回折ピークに着目し、Andesine前駆体の結晶化度を測定した。後述する実施例3で得られたシリカアルミナ系凝集粒子を、1150℃で1時間焼成しAndesineに転移させ、上記条件でX線回折測定を行い、そのピークの強度(高さ)を基準としたAndesine前駆体のピーク強度の比を結晶化度とした。
【0050】
(3)一次粒子径
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で得られた二次元の写真画像から、凝集体を形成する球状粒子像の直径を測定し一次粒子径とした。なお、数値は、上限値と下限値を示している。本発明のシリカアルミナ系凝集粒子は、上限値と下限値が共に、0.05乃至0.6μmの範囲にあることが必要である。
【0051】
(4)中位径(D50
試料をイオン交換水で0.33wt%濃度とし超音波で2分間分散させた。コールター社製コールターカウンター(TAII型)アパーチャー径50μmを使用し測定し、体積基準での中位径(D50)を求めた。 なお、実施例8はアパーチャー径22μmを使用した。
また、湿式粉砕した種晶の粒度測定にはMalvern社製Masterizer2000を使用し、溶媒に水を用いてレーザー回折散乱法で体積基準での中位径(D50)を測定した。
【0052】
(5)嵩密度
JIS.K.6220−1 7.7:2001に準拠して測定した。
【0053】
(6)水銀圧入法による細孔容積
Micromeritics社製オートポアIV9500を用いて水銀圧入法による細孔容積および細孔分布を測定した。半径10800〜1.8nmまで測定しその累積細孔容積を全細孔容積とし、このうち半径110〜1.8nmをメソ細孔と定義しこの区間の細孔容積をメソ細孔容積とした。
細孔分布の縦軸としての表記には、メソ孔の有無の判断には累積細孔容積、メソ孔の半径を比較する場合にはdV/dR細孔容積を用いた。
【0054】
(7)基本単位粒子径(X線小角散乱法)
Rigaku製RINT−UltimaIIIを用いて、下記条件で測定した。
ターゲット:Cu
電圧:40kV
電流:40mA
走査軸2θ/θ(連続);
走査範囲:0.1°〜8°
走査速度(ステップ):0.02°/min
透過小角散乱法光学系選択スリット;
DS:1.0mm RS:0.1mm SS:0.2mm
【0055】
(8)吸油量
JIS.K.5101−13−1:2004に準拠して測定した。
【0056】
(種晶P型ゼオライトの調製)
特許文献1に記載の実施例1に倣った方法で、種晶となるNa−P型ゼオライト球状粒子を合成する。
3号ケイ酸ソーダ(SiO:22.6wt%、NaO:7.31wt%)、アルミン酸ソーダ(Al:24.1wt%、NaO:19.3wt%)、49%苛性ソーダおよび水を用いて、下記モル比で全体が2630gになるように希ケイ酸ソーダ液(A液)と希アルミン酸ソーダ液(B液)を調製した。苛性ソーダはB側に、水はA液B液が同体積になるよう調整した。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.75
SiO/Al=4.5
O/NaO=60
上記のA液を3Lステンレス製容器に入れ、60℃に加温しながら攪拌下B液をゆっくり混合し、全体が均一なアルミノケイ酸アルカリゲルとした。1時間の熟成後、このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら95℃まで昇温し、15時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗して中位径(D50)=2.7μmのNa−P型ゼオライト球状粒子のケーキを得た。固形分濃度35wt%であり、固形分換算にして223gのNa−P型ゼオライトケーキ(S−1)が回収された。
【0057】
上記Na−P型ゼオライト球状粒子(S−1)のケーキを固形分10wt%になるよう水で希釈し、3mmφのアルミナボール4.19kgとともに内容積6.3Lの磁性ポットミルに入れた。10時間湿式粉砕を行ない、中位径(D50)=0.38μmの種晶スラリー(S−2)を得た。以下の実施例1から実施例8ではこの種晶スラリーS−2を用いた。
【0058】
(実施例1)
先に記載の組成の3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、49%苛性ソーダおよび水を用いて、下記モル比で全体が1800gになるように希ケイ酸ソーダ液(A液)と希アルミン酸ソーダ液(B液)を調製した。苛性ソーダはB側に、水はA液B液が同体積になるよう調整した。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.75
SiO/Al=4.5
O/NaO=60
上記のA液を5Lステンレス製容器に入れ、60℃に加温しながら攪拌下B液をゆっくり混合し、全体が均一なアルミノケイ酸アルカリゲルとした。ここに予想される収量に対し固形分換算5wt%の種晶スラリーS−2を加えた。1時間の熟成後、このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら95℃まで昇温し、3時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗して微細な凝集構造を有するNa−P型ゼオライトのケーキを得た。
次いでこのNa−P型ゼオライトを20wt%のスラリーに希釈し、ゼオライト中のNaOに対し1.0モルとなるCaCl水溶液を加え、60℃にて1時間攪拌しイオン交換を行なった。次いで濾過、水洗、乾燥した後、坩堝に入れて小型電気炉にて750℃で1時間焼成し非晶質シリカアルミナとした。これを粉砕しシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
【0059】
(実施例2)
結晶化反応の時間を16時間とした以外は実施例1と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。
【0060】
(実施例3)
結晶化反応の時間を36時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施例3を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
中間生成物である微細な凝集構造を有するNa−P型ゼオライトのX線回折像を図1に、電子顕微鏡写真を図2に示す。また、本発明の微細な凝集構造を有するシリカアルミナ系凝集粒子のX線回折像を図3に、電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0061】
(実施例4)
結晶化反応の時間を60時間とした以外は実施例1と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表1に示す。
実施例1〜4の水銀圧入法で測定した細孔分布を図7(縦軸:累積細孔容積)、図8(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0062】
(実施例5)
種晶スラリーS−2の添加量を予想される収量に対し固形分換算10wt%とした以外は実施例3と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
【0063】
(実施例6)
配合条件を以下のように変更した以外は実施例3と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.75
SiO/Al=4.5
O/NaO=40
【0064】
(実施例7)
配合条件を以下のように変更した以外は実施例3と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.75
SiO/Al=4.5
O/NaO=120
【0065】
(実施例8)
種晶スラリーS−2を添加した後、強攪拌下アルミノケイ酸アルカリゲルに約140℃(0.36kPa)の水蒸気を吹き込みながら、95℃を保つよう36時間反応した。それ以外は実施例3と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
【0066】
(比較例1)
特許文献1に記載の実施例1に倣った方法で非晶質シリカアルミナ系球状粒子(非種晶系粒子)を合成した。先に記載の組成の3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、49%苛性ソーダおよび水を用いて、下記モル比で全体が1800gになるように希ケイ酸ソーダ液(A液)と希アルミン酸ソーダ液(B液)を調製した。苛性ソーダはB側に、水はA液B液が同体積になるよう調整した。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.75
SiO/Al=4.5
O/NaO=60
上記のA液を5Lステンレス製容器に入れ、60℃に加温しながら攪拌下B液をゆっくり混合し、全体が均一なアルミノケイ酸アルカリゲルとした。種晶は加えず1時間の熟成後、このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら95℃まで昇温し、15時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗してNa−P型ゼオライト球状粒子のケーキを得た。中間生成物であるNa−P型ゼオライト球状粒子の電子顕微鏡写真を図5に示す。
次いでこのNa−P型ゼオライトを20wt%のスラリーに希釈し、ゼオライト中のNaOに対し1.0モルとなるCaCl水溶液を加え、60℃にて1時間攪拌しイオン交換を行なった。次いで濾過、水洗、乾燥した後、坩堝に入れて小型電気炉にて750℃で1時間焼成し非晶質シリカアルミナ球状粒子とした。これを微粉砕し比較例1を得た。その反応条件と物性を表2に、非晶質シリカアルミナ球状粒子の電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0067】
(比較例2)
配合条件を以下のように変更した以外は比較例1と同じ条件でシリカアルミナ球状粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
配合条件(モル比)
NaO/SiO=0.85
SiO/Al=4.0
O/NaO=70
【0068】
(比較例3)
特許第2523433号の実施例1に準拠した方法で種晶スラリーを用いたNa−P型ゼオライトを合成した。
A液(予熱90℃): 49%苛性ソーダ150.6g、水849.4g
B液(予熱75℃): 先に記載の組成の3号ケイ酸ソーダ613.6g、
49%苛性ソーダ144.6g及び
実施例8の合成で得られたNa−P型ゼオライトケーキ48g
(乾物換算20g、中位径(D50)=0.79μm)を、
水33.8gに予め分散させたスラリー
C液(予熱75℃): 先に記載の組成のアルミン酸ソーダ488.0g、
49%NaOH146.3g、水253.7g
配合条件(モル比)
NaO/SiO=2.14
SiO/Al=2.0
O/NaO=24.1
上記の配合条件で、95℃に加熱したA液に、75℃に予熱したB液およびC液を、B液をC液より30秒早く加え始め、それぞれ18分および37分に亘り添加した。このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら90℃、5時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗してNa−P型ゼオライト球状粒子のケーキを得た。その後の工程は比較例1と同じ条件でシリカアルミナ球状粒子を得た。その反応条件と物性を表2に示す。
尚、比較例2、3の水銀圧入法で測定した細孔分布を図7(縦軸:累積細孔容積)、図8(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
(実施例9)
Na−P型ゼオライトケーキ(S−1)の合成法に準拠し固形分換算にして592gのNa−P型ゼオライトケーキ(S−1’)を合成した。次いでS−1’のケーキを固形分25wt%になるよう希釈し、3mmφのアルミナボール4.19kgとともに内容積6.3Lの磁性ポットミルに入れた。10時間湿式粉砕を行ない、中位径(D50)=0.74μmの種晶スラリー(S−4)を得た。
上記の種晶スラリーを用いた以外は実施例1と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表3に示す。
【0071】
(実施例10)
Na−P型ゼオライト(S−1’)を15時間湿式粉砕し、中位径(D50)=0.50μmの種晶スラリー(S−5)とした。この種晶スラリーを用いた以外は実施例8と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表3に示す。
【0072】
(実施例11)
Na−P型ゼオライト(S−1’)を20時間湿式粉砕し、中位径(D50)=0.34μmの種晶スラリー(S−6)とした。この種晶スラリーを用いた以外は実施例8と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表3に示す。
尚、実施例9〜11の水銀圧入法で測定した細孔分布を図9(縦軸:累積細孔容積)、図10(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0073】
(比較例4)
実施例9で使用のNa−P型ゼオライト(S−1’)を湿式粉砕せずに固形分25wt%、中位径(D50)=2.85μmの種晶スラリーとして加えた以外は実施例9と同じ条件でシリカアルミナ系凝集粒子を得た。その反応条件と物性を表3に示す。
【0074】
(比較例5)
Na−P型ゼオライト(S−1’)を5時間湿式粉砕し、中位径(D50)=1.25μmの種晶スラリー(S−3)とした以外は実施例8と同じ条件でシリカアルミナ系粒子を得た。その反応条件と物性を表3に示す。
尚、比較例4、5の水銀圧入法で測定した細孔分布を図9(縦軸:累積細孔容積)、図10(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
(アンチブロッキング剤としての評価)
実施例3、4と比較例1の粒子について、ポリエチレンフィルム用のアンチブロッキング剤としての評価を行なった。
また、比較対照サンプルとして市販品の非晶質シリカ(Grace Davison製SYLOBLOC45)を比較例6として用いた。
【0077】
ポリエチレン樹脂はLLDPE(MFR=1.1g/10分)、LDPE(MFR=2.8g/10分)の2種を用いた。はじめに10重量%濃度になるよう実施例あるいは比較例をLDPEに添加し、二軸押出機(φ37mm)を用いて170℃溶融混合しマスターバッチを得た。
このマスターバッチに、LLDPE:LDPE=7:3、アンチブロッキング剤が表3に記載の濃度になるようLLDPEおよびLDPEを加え170℃で溶融混合し、水冷式インフレーション成型機を使用して50ミクロン厚のフィルムを作成した。
【0078】
作成したフィルムについて、ASTM D 1003−95に準拠してHazeを測定した。Hazeの値が小さいほど透明性に優れる。測定装置はGardner社製 haze−gard plusを用いた。
東洋精機製摩擦測定機TR−2を用いて作成したフィルム同士を用いて擦り合わせ、傷付き前後のHazeを測定し、その差ΔHazeを耐傷付き性の指標とした。ΔHazeが小さいほど耐傷付き性に優れる。
さらにまた、作成したフィルムについて、ISO 11502−1995 method Bに準拠した方法でフィルムのブロッキング力を測定した。ただし、10cm×10cmフィルム同士の熱圧着条件は6kPaとし、45℃×120時間(BF1)、60℃×15時間(BF2)、60℃×72時間(BF3)の3条件とした。測定装置は島津製作所製オートグラフ AGS−H 20Nを用いた。
Haze、ΔHaze、ブロッキング力の測定を行なった結果を表4に示す。またHazeとブロッキング力のバランスを図11〜13に示した。
【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水物基準で、下記式(1);
mCaO・nNaO・pSiO・Al (1)
式中、
m+nは0.9乃至1.1の数であって、
m:nの比は0.05:0.95乃至0.9:0.1の範囲内にあり、
pは2.3乃至6.0の数である、
で表わされる化学組成を有し、結晶化度が20%以下であり、電子顕微鏡で測定した一次粒子径が0.05乃至0.6μmの範囲にあり、コールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)が0.7乃至10μmの範囲にあり、嵩密度が0.25乃至0.70g/cmの範囲にあることを特徴とするシリカアルミナ系凝集粒子。
【請求項2】
水銀圧入法で測定した細孔半径1.8乃至110nmでの細孔容積が0.10乃至0.60cm/gの範囲にある請求項1に記載のシリカアルミナ系凝集粒子。
【請求項3】
X線小角散乱法で測定した基本単位粒子径が23乃至40nmの範囲にある、請求項1又は2に記載のシリカアルミナ系凝集粒子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のシリカアルミナ系凝集粒子からなるアンチブロッキング剤。
【請求項5】
熱可塑性樹脂100重量部当り、請求項3に記載のアンチブロッキング剤が0.01乃至5重量部配合されていることを特徴とする樹脂組成物。

【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−91940(P2012−91940A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223513(P2010−223513)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000193601)水澤化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】