説明

シリカゾルおよびその製造方法

【解決手段】画像解析法により測定される平均粒子径(D1)が10〜100nmの範囲にあり、比表面積が300〜700m2/gの範囲にあり、見掛け嵩密度(ABD)が0
.05〜0.15g/mlの範囲にあるシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルおよびその製造方法。
【効果】本発明に係るシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子は、粒子径に比して、比表面積が大きく、多数の針状突起を有した特異な構造を有するものであり、触媒担体、研磨材、補強剤または充填材など各種用途に適用することが期待される。また、本発明に係るシリカゾルの製造方法は、このようなシリカ微粒子が分散してなるシリカゾルを効率的に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなることを特徴とするシリカゾルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカゾルに含まれるシリカ微粒子の形状については、球状、粒子連結状または鎖状などが知られており、更には、針状または繊維状のシリカ微粒子を含むシリカゾルについても報告がある。これらのシリカ微粒子は、特異な形状を有することから、触媒担体、研磨剤、補強材および充填材等として利用した場合に、特有の効果を発現することが期待される。
【0003】
特許文献1(特公昭57−149817号)には、ハロゲンを含有しない有機珪素化合物の気体を酸素ガスと接触させて熱分解させることを特徴とする繊維状シリカゾルの製造方法が開示されている。また、この製造方法により得られた繊維状シリカゾルの例として、直径0.5〜1.5μm、長さ0.5mm以上(実施例1)、直径0.3〜2.0μm、長さ2mm以上(実施例2)、直径0.12〜1.0μm、長さ1mm以上(実施例3)などが開示されている。
【0004】
特許文献2(国際公開WO1992006920号)には、ケイ酸ゾルを凍結することにより、晶析したゾル溶媒結晶の結晶面同志の間隙にケイ酸ゾルを析出させ、鱗片状または針状の凍結シリカヒドロゲルを得、 該凍結シリカヒドロゲルを解凍し、解凍したシリ
カヒドロゲルの水熱重合を行い、得られたシリカヒドロゲルを乾燥することを特徴とする針状のシリカゲルの製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開平11−61043号)には、特定のアルコキシシランを加水分解した後、250℃以上で水熱処理してなる短繊維状シリカの製造方法が記載されている。この製造方法については、具体的には、 (i)水、有機溶媒および上記一般式[1]で表される
アルコキシシランの1種または2種以上を含む混合溶液に、アンモニアを添加してアルコキシシランの加水分解を行い、10〜30nmの粒径を有するシリカ微粒子を生成した後、(ii)反応後の混合溶液から、未反応のアルコキシシラン、有機溶媒および触媒を除去して、シリカ微粒子の水分散液を作成し、(iii)該水分散液中のシリカ微粒子の固形分濃度が0.1〜5重量%、アンモニア濃度が50〜400ppmとなるように調整し、(iv)該水分散液を250℃以上の温度で水熱処理することによって製造することができる旨記載されている。この製造方法により得られる短繊維状シリカについては、平均直径(D)が10〜30nmであり、長さ(L)が30〜100nmであり、アスペクト比(L/D)が3〜10であることを特徴とするものであると記載されている。
【0006】
特許文献4(特開2000−1309号)には、原料のワラストナイトを水に分散して水分散スラリーとし、該水分散スラリーに炭酸ガスを吹き込むことにより繊維状シリカゲルを製造し、必要に応じてこれを熱処理することを特徴とする比表面積の小さな繊維状非晶質シリカの製造方法が開示されている。また、この製造方法で得られる繊維状シリカゾルについては、繊維長1〜200μm、アスペクト比5〜100、比表面積10〜100m2 /gであると記載されている。
【0007】
特許文献5(特開2006−1822号)には、アルカリ性のリチウム源及びシリカ源を含む水溶液又は水スラリーを出発原料とし、水熱処理することにより、低結晶性の針状シリカを得ることができ、特にアルカリ性のリチウム源として水酸化リチウム等を使用し
、シリカ源としてシリカゾル等を使用するか、アルカリ性のリチウム源及びシリカ源としてケイ酸リチウムを使用することにより、直径が0.001〜1μmの針状シリカであり、アスペクト比が5〜200である針状シリカを製造する発明が開示されている。
【0008】
特許文献6(特開2006−265789号)には、石綿又は石綿含有蛇紋岩を酸分解して得られるシリカ質繊維状集合体の製造方法において、石綿又は石綿含有蛇紋岩の粉砕物を酸溶液中に投入し、撹拌しながら分解する工程と、分解後、残渣として残る前記シリカをろ別する工程と、ろ別したシリカを洗浄する工程と、洗浄したシリカに水を加えて10〜30%の濃度のスラリー溶液とし、スラリー中の繊維状シリカを超音波拡散法によって水中に分散させる工程と、シリカを分散した分散液をスプレードライヤで乾燥する工程よりなることを特徴とする、繊維状シリカの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭57−149817号公報
【特許文献2】国際公開WO1992006920号
【特許文献3】特開平11−61043号公報
【特許文献4】特開2000−1309号公報
【特許文献5】特開2006−1822号公報
【特許文献6】特開2006−265789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の、第一の課題は、特異な針状突起を有する微粒子を含むシリカゾルを製造することにある。本発明の第二の課題は、針状構造を有するなど特異な形状を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなり、触媒担体、研磨剤、補強材および充填材等として好適に利用することができるシリカゾル、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願に係る発明は、画像解析法により測定される平均粒子径(D1)が10〜100nmの範囲にあり、比表面積が300〜700m2/gの範囲にあり、見掛け嵩密度(A
BD)が0.05〜0.15g/mlの範囲にあるシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルである。
【0011】
前記シリカゾルの好適な態様として、前記シリカ微粒子のアスペクト比が0.7〜1.0の範囲にあり、粒子径の変動係数が10.0〜40.0%の範囲にあるシリカゾルを挙げることができる。
【0012】
また、前記シリカゾルの別の好適な態様としては、針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルを挙げることができる。
また、前記シリカゾルの別の好適な態様としては、前記シリカゾルの固形分濃度が1〜50質量%の範囲にあるシリカゾルを挙げることができる。
【0013】
本発明に係るシリカゾルの製造方法の発明は、水および界面活性剤を含む水系溶液100質量部と、炭化水素油、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を含む油系溶液10〜30質量部とを混合し、乳化処理してなる水中油型(O/W)エマルジョンを温度10〜60℃の範囲に保持し、この水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加することにより、シリカ微粒子前駆体の溶液を調製し、更に該シリカ微粒子前駆体に機械的衝撃を加えてシリカ微粒子を生成させることを特徴とするシリカゾルの製造方法である。
【0014】
本発明に係るシリカゾルの製造方法についての、好適な態様として、次の[1]〜[5]を含むシリカゾルの製造方法を挙げることができる。
[1]水および界面活性剤を含む水系溶液100質量部と、炭化水素油、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を含む油系溶液10〜30質量部とを混合し、乳化処理してなる水中油型(O/W)エマルジョンを温度10〜60℃の範囲に保持し、この水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加し、シリカ微粒子前駆体の溶液を調製する工程
[2]前記シリカ微粒子前駆体の溶液を20〜98℃にて熟成する工程
[3]前記熟成終了後、シリカ微粒子前駆体の溶液に、有機溶媒を添加することによりエマルジョンを破壊する工程
[4]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体の溶液の洗浄を行う工程
[5]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体に機械的衝撃を加えてシリカ微粒子を生成させて、シリカゾルを調製する工程
前記シリカゾルの製造方法についての、別の好適な態様としては、前記シリカ微粒子前駆体の洗浄を遠心分離処理により行うシリカゾルの製造方法を挙げることができる。
【0015】
前記シリカゾルの製造方法についての、別の好適な態様としては、前記機械的衝撃を分散処理により加えるシリカゾルの製造方法を挙げることができる。
前記シリカゾルの製造方法についての、別の好適な態様としては、前記炭化水素油が、ケロシンであるシリカゾルの製造方法を挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子は、粒子径に比して、比表面積が大きく、多数の針状突起を有した特異な構造を有するものであり、触媒担体、研磨材、補強剤または充填材など各種用途に適用することが期待される。また、本発明に係るシリカゾルの製造方法は、このようなシリカ微粒子が分散してなるシリカゾルを効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔シリカ微粒子〕
[構造]
本発明に係るシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子の表面構造は、針状突起を有し、粒子表面が極めて起伏に富んだ構造をとるものである。ここで針状突起とは、中心線がシリカ微粒子表面から一方向にほぼ直線状に伸び、概ね針状ないし円錐状の形状を有する突起である。
【0018】
本発明に係るシリカ微粒子の構造については、針状突起をも含んだシリカ微粒子の外観形状 が略球状のウニまたは毬に類似したものである。具体的には、該シリカ微粒子のアスペクト比が0.7〜1.0の範囲にあるものが好ましい。本出願におけるアスペクト比は、粒子の最長内径をM(その長さをmとする)とし、該最長内径上にて、該最長内径を2等分する点と直交する内径をN(その長さをnとする)としたときの長さの比(n/m)の値を意味する。
【0019】
n/mの値が0.7未満の場合は、球状また歪んだ球状ではなくなり、粒子形状自体が針状のものとなる。
粒子自体が針状の場合については、本発明で規定する粒子径の変動係数により粒子表面の凹凸の度合いを表すことに適さなくなる。前記n/mの値については、1が最大値となる。n/mについては、好適には0.8〜1の範囲が推奨される。また、更に好適には、0.9〜1の範囲が推奨される。
【0020】
前記針状突起については、概ね三角錐状構造をとるものであるため、その太さを特定することは容易ではないが、該シリカ微粒子の平均粒子径にも依るものの、三角錐状構造か
らなる針状突起の底辺部位の幅が、概ね1〜10nmの範囲にあるものが好ましい。
【0021】
針状突起の長さについては、粒子表面側の基点となる位置を特定し難い場合があり、その長さを定めることは容易ではないが、例えば、シリカ微粒子の最長内径(M)の長さ(m)の5〜30%の範囲であるものが好ましい。
【0022】
[平均粒子径]
本発明に係るシリカ微粒子は、針状突起を有するものであり、その形状は球状ないしは不定形と見做すことができるものである。このため、その平均粒子径については、電子顕微鏡を使用して、撮影して得られた写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最長径を測定し、それらの平均値を算定し、その値をもって平均粒子径とした。(本出願においては、この方法を「画像解析法」と称する。)
前記シリカ微粒子の平均粒子径の範囲としては、10〜100nmの範囲が好ましい。平均粒子径が10nm未満の場合については、シリカ微粒子の形状が著しい不定形になり易く、実用上も望ましくない。平均粒子径が100nmを超える場合については、調製することが容易ではない。平均粒子径については、より好適には15〜70nmの範囲が推奨される。また、更に好適には18〜30nmの範囲が推奨される。
【0023】
[比表面積]
本発明に係るシリカ微粒子の比表面積については、300〜700m2/gの範囲が好
ましい。該シリカ微粒子は、針状突起を多数含むものであり、通常は300m2/g未満
になる場合は少ない。また、比表面積が700m2/gを超える場合については、製造す
ることが容易ではない。比表面積については、さらに好適には400〜600m2/gの
範囲が推奨される。
【0024】
[見掛け嵩密度]
本発明に係るシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子については、前記の通り針状突起を有するものであり、見掛け嵩密度(ABD)の値は、平均粒子径が同程度の通常の球状シリカ微粒子に比べて、小さい値をとる傾向が強くなる。前記シリカ微粒子は、複数の針状突起を有するため見掛け嵩密度(ABD)の値が通常の球状シリカ微粒子より小さくなるものといえる。
【0025】
本発明に係るシリカ微粒子の見掛け嵩密度(ABD)については、0.05〜0.15g/mlの範囲が好ましい。見掛け嵩密度(ABD)の値が、0.05g/ml未満の場合、従来の中空球状粒子と近いものとなる。見掛け嵩密度(ABD)の値が0.15g/mlを超える場合は、針状突起を有さない場合が含まれる場合がある。前記、見掛け嵩密度(ABD)については、更に好適には0.08〜0.13g/mlの範囲が推奨される。
【0026】
[粒子径の変動係数]
本発明に係るシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子の表面状態については、好適には、粒子径の変動係数(CV値)が10〜40%の範囲にあるものが推奨される。
【0027】
ここで、粒子径の変動係数(CV値)とは、粒子径の不均一性の度合を意味する。具体的には、電子顕微鏡による写真投影図におけるシリカ微粒子の最長径を2等分する点を球状シリカ微粒子の中心点とし、該中心点から前記最長径上の一方向を角度0度とし、そこから10度づつ0度から180度までの半径を測定し、それらの値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより、半径の変動係数を求める。なお、本願においては、半径の変動係数(相対標準偏差)を100で除した値を、半径の変動係数[%]として表示するものとする。具体的には次の様に表すことができる。
【0028】
半径(Y)の変動係数(CV値)[%]=(半径(Y)の標準偏差(σ)/半径(Y)の平均値(Ya))×100
なお、本出願においては、任意の50個の粒子について、それぞれの半径の変動係数を求め、それらの平均値を粒子径の変動係数[%]として扱うものである。
【0029】
本発明に係るシリカ微粒子は、表面に針状突起を有するものであり、粒子径の変動が大きいことを特徴とするものである。具体的には、具体的には粒子径の変動係数(CV値)が、10.0〜40.0%の範囲のものが好ましい。粒子径の変動係数が10.0未満の場合、粒子表面に凹凸はあるものの針状突起が形成されない場合が含まれる。粒子径の変動係数については、顕著に長い針状突起を有する場合であっても、他の針状突起の個数や粒子自体の形状の影響を受けるため、40.0%を超えることは容易ではない。粒子径の変動係数の範囲については、好適には12〜30%の範囲が推奨される。また、更に好適には、14〜25%の範囲が推奨される。
【0030】
〔シリカゾル〕
本発明に係るシリカゾルは、前記シリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルである。分散媒としては、前記シリカ微粒子を分散可能な限り特に制限はなく、たとえば水、アルコール類、ケトン類等またはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール。ブタノールなどを挙げることができる。ケトン類としては、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。
【0031】
本発明に係るシリカゾルの固形分濃度については、通常は1〜50質量%の範囲で使用することができる。1質量%未満の場合、用途にもよるものの研磨用途などでは実用的ではなく、その場合、濃縮して使用される。50質量%を超える場合は、温度またはpHによっては凝集しやすくなる場合があり、望ましくない。固形分濃度については、好適には2〜40質量%の範囲が推奨される。また、更に好適には3〜30質量%の範囲が推奨される。
【0032】
〔シリカゾルの製造方法〕
本発明に係るシリカゾルの製造方法は、水系溶液100質量部と油系溶液10〜30質量部からなる特定の水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加することを特徴とするものである。
【0033】
[水中油型(O/W)エマルジョン]
本発明における水中油型エマルジョンは、液−液エマルジョンであることが望ましく、分散相が非水溶性の液体成分を含む有機相であり、連続相が水相であるものを意味する。また、水中油型エマルジョンを形成するには通常は、界面活性剤が使用される。
【0034】
[水相]
水相の成分としては、水と界面活性剤を含む水系溶液が使用される。界面活性剤の使用量については、水系溶液中において、3〜15質量%の範囲が好ましい。3質量%未満では、エマルジョンが生成し難くなる場合がある。15質量%を超えて添加した場合は、本発明に係るシリカゾルが生成し難くなる場合がある。
【0035】
[界面活性剤]
前記界面活性剤については、水中油型エマルジョンの分散状態の安定化を促進する目的で使用される。この様な界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性
剤、両性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の使用については、前記界面活性剤の1種類または2種類以上を添加する。
【0036】
アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩(Na、K、Li、Ca)ホルマリン重縮号物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等があるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、第4アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスフォニウム塩等があるがこれらに限定されるものではない。カチオン性界面活性剤の好ましい例としては、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)、モノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤などが用いられる。その中でも、オクチルトリメチル臭化アンモニウム(OTAB)、デシルトリメチル臭化アンモニウム(DeTAB)、ドデシルトリメチル臭化アンモニウム(DTAB)、テトラデシルトリメチル臭化アンモニウム(TTAB)などのカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0038】
両性界面活性剤としてはカルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、レシチン等があるがこれらに限定されるものではない。
ノニオン性界面活性剤としては、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミンなどのアミン系化合物、フッ素系またはシリコーン系のアクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル型、ポリエチレンオキサイド縮合型ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンアルキルアミンオキサイド等があるがこれらに限定されるものではない。
【0039】
[有機相]
有機相の成分としては、炭化水素油、アミン系化合物および界面活性剤を含む油系溶液が使用される。ここで、特に炭化水素油とアミン系化合物を併用することにより、針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルを調製することができる。
【0040】
[界面活性剤]
油系溶液に使用されるアミン系化合物以外の界面活性剤については、前記界面活性剤と同様な界面活性剤が使用可能である。
【0041】
[炭化水素油]
前記炭化水素油としては、ケロシン、ジメチルシリコーンオイル、メチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンポリエステル共重合体、アミノ変性シリコーンオイル、
フロロシリコーンオイル、ひまし油、オレイン酸、リノレン酸、共役リノール酸、大豆脂肪酸、ヌカ脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、脂肪酸トリグリセライド、高級脂肪酸、大豆油、ヤシ油、アマニ油、トール油、ナタネ油、綿実油、オリーブ油、スクワラン、ラノリン、硬化油、塩化パラフィン、デカリン、テトラリン、流動パラフィン、アイソパー、石油等の炭化水素系有機溶媒、トルエン、キシレン、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オクタノール、デカノール、カプロン酸プロピル、カプロン酸ヘキシル、カプリル酸エチル、オレイン酸メチル、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このうち、特にケロシンが好ましい。
【0042】
[アミン系化合物]
前記アミン系化合物は、本発明に係るシリカゾルの製造方法において、界面活性剤として機能する。このアミン系化合物については、1級、2級または3級アミン化合物または第4級アンモニウム塩などを使用することができる。例えば、アンモニウム、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン、n−ドデシルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどを挙げることができる。このうち特に、界面活性剤としての機能を有するアミン系化合物が好適に使用される。この様な例としては、n−ドデシルアミンなどを挙げることができる。
【0043】
有機相における炭化水素油、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤の割合については、通常は炭化水素油70〜90質量%、アミン系化合物1〜10質量%、アミン系化合物以外の界面活性剤3〜15質量%の範囲が好ましい。
【0044】
[水中油型エマルジョンの製造方法]
本発明に係るシリカゾルの製造方法において使用する、水中油型(O/W)型エマルジョンの製造方法は、格別に限定されるものではなく、公知のエマルジョン製造方法が適用される。水中油型エマルジョンは、例えば、低剪断力の攪拌機やパイプラインミキサーなどの一般的な攪拌装置を用いた乳化重合法などの公知の方法により製造できる。なお、好適には高圧ホモジナイザーのような加圧乳化機、超音波乳化機、高速回転型乳化機等の乳化機で、高速撹拌下で乳化処理を行うことが推奨される。
【0045】
具体的には、炭化水素油にアミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を添加し、混合することにより調製された油系溶液を、水系溶液に徐々に添加しながら、乳化機を用いて乳化処理する方法がとられる。油系溶液における炭化水素油、アミン系化合物および界面活性剤の割合については、通常は炭化水素油70〜90質量%、アミン系化合物5〜10質量%、界面活性剤3〜15質量%の範囲が好ましい。
【0046】
水系溶液については、通常は水と界面活性剤から構成される。水相に添加される界面活性剤の量については、通常は水相中において、3〜15質量%の範囲が好ましい。3質量%未満では、エマルジョンが生成し難くなる場合がある。15質量%を超えて添加した場合は、本発明に係るシリカゾルが生成し難くなる場合がある。
【0047】
最初に水系溶液を乳化機にて攪拌にて攪拌しながら、油系溶液を徐々に添加し、乳化処理を行う。乳化処理時間については、格別に制限されるものではないが、10分〜3時間の範囲で行なわれる。
【0048】
乳化処理を行う際の溶液の温度については、格別に制限されるものではないが、通常は、20℃から40℃の範囲で行われる。
前記水系溶液と前記油系溶液の添加量については、水系溶液100質量部に対して、油系溶液を10〜30質量部の範囲を添加することにより水相100質量部に対して、有機相が10〜30質量部の水中油型(O/W)型エマルジョンを調製する。このような水中油型エマルジョンに対して、後の工程でテトラエチルオルソシリケートを添加することにより、最終的に表面に針状突起を有するシリカ微粒子となり得るシリカ微粒子前駆体を得ることができる。水系溶液100質量部に対する油系溶液の比率が10質量部未満の場合、核粒子上に針状突起が生成し難くなる。また、30質量部を超える場合においても、核粒子上に針状突起が生成し難くなる。水系溶液100質量部に対する油系溶液の比率については、好適には12〜25質量部の範囲が推奨される。また、更に好適には15〜20質量部の範囲が推奨される。
【0049】
[テトラエチルオルソシリケートの添加]
前記水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的に又は断続的に添加することにより、ゲル状物が生成する。(以下、このゲル状物を「シリカ微粒子前駆体」と称する場合がある。)このゲル状物(シリカ微粒子前駆体)に、後の工程にて機械的衝撃を加えて、針状突起を有するシリカ微粒子を生成させることにより本発明に係るシリカゾルを得ることができる。
【0050】
テトラエチルオルソシリケートを添加する際の水中油型(O/W)エマルジョンの温度範囲については、10〜60℃の範囲が好ましい。10℃未満の場合、シリカ微粒子前駆体の生成効率が低下する。60℃を超える温度での加熱は必ずしも必要とされない。水中油型(O/W)エマルジョンの温度範囲については、好適には15〜50℃の範囲が推奨される。また、更に好適には、18〜48℃の範囲が推奨される。
【0051】
水中油型エマルジョンに対するテトラエチルオルソシリケートの添加については、水中油型エマルジョンに、テトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加することが必要である。連続的とは、短時間に全添加量を一度に添加するのではなく、一定時間をかけて、実質的に途切れることなく、添加し続けることをいう。断続的とは、全添加量を数回に分け、少量ずつ、一定時間をかけて添加することをいう。添加時間としては、1〜20時間が好ましい。また、更に好適には2〜15時間の範囲が推奨される。
【0052】
テトラエチルオルソシリケートの添加量については、格別に制限されるものではないが、通常は前記水中油型エマルジョン100質量部に対し、通常は1〜10質量部の範囲で添加することにより調製することが好ましい。
【0053】
テトラエチルオルソシリケートについては、溶媒希釈してから添加してもよく、希釈せずに添加しても構わない。溶媒希釈する場合は、エタノールなどの溶媒で、1〜30質量%に調整して添加される。また、水中油型エマルジョンへのテトラエチルオルソシリケートの添加操作を行う場合は、乾燥させた空気、窒素、アルゴン、などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0054】
[熟成]
テトラエチルオルソシリケート添加後のシリカ微粒子前駆体の溶液については、望ましくは温度20〜98℃にて、1時間〜200時間の範囲で熟成することが好ましい。熟成することにより、シリカ微粒子の骨格の安定性が向上し、実用的な強度を有するシリカゾルとすることができる。
【0055】
熟成温度については、20℃未満では、未反応成分の反応が進行しない場合があり、粒子骨格の安定性に寄与しない場合があり、望ましくない。98℃を超える温度での熟成は必ずしも必要とされない。熟成温度については、好適には18〜50℃の範囲が推奨され
る。
【0056】
熟成する時間については、1時間未満では、未反応成分の反応が充分に進行していない場合がある。200時間を越える熟成については、必ずしも必要とはされない。熟成させる時間については、好適には10〜100時間の範囲が推奨される。
【0057】
[有機溶媒添加]
熟成の終了したシリカ微粒子前駆体の溶液について、望ましくは、有機溶媒を添加することによりエマルジョンを破壊して、油水分離を促進させる。
【0058】
ここで使用する有機溶媒の種類については、格別に制限されるものではないが、通常は、前記アルコール類または前記ケトン類が使用される。有機溶媒の添加量については、格別に制限されるものではないが、通常は前記シリカ微粒子前駆体の溶液と等量の有機溶媒が添加される。
【0059】
[洗浄]
有機溶媒の添加により、シリカ微粒子前駆体の溶液のエマルジョンを破壊した後、シリカ微粒子前駆体の溶液について、洗浄することが好ましい。この洗浄は、遠心分離処理により行うことが好適である。遠心分離処理については、所望により2〜10回程度反復することが望ましい。なお、遠心分離処理を反復するにあたり適宜、有機溶媒を添加して構わない。
【0060】
[シリカ微粒子の生成]
洗浄工程が終了したシリカ微粒子前駆体に、機械的衝撃を加えることにより前記シリカ微粒子を生成させる。機械的衝撃を加える方法としては、前記針状突起を有するシリカ微粒子を生成させることができる限り特に制限はなく、たとえば超音波処理等を挙げることができる。このような機械的衝撃を加えることにより、ゲル状のシリカ微粒子前駆体から、表面に針状突起を有したシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルを得ることができる。機械的衝撃を加える方法として超音波処理を用いると、針状突起を有したシリカ微粒子を効率的に得ることができるとともに、分散処理を同時に行うことができるので、分散状態の良いシリカゾルを得ることができる利点がある。
【0061】
超音波処理については、具体的には、洗浄されたシリカ微粒子前駆体(ゲル状物)に略等量の有機溶媒を加え、通常は超音波浴槽内にて、超音波処理を行う。超音波の出力および周波数については、シリカ微粒子前駆体自体が分離して、針状突起を有するシリカ微粒子が生成する限り格別に限定されるものではなく、市販の超音波処理機能を有した超音波分散機であれば使用することができる。
【0062】
〔本発明の好適な態様1〕
以下の1)〜5)の特徴を有し、表面に針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルであって、固形分濃度が1〜50質量%の範囲にあるシリカゾル。
1)画像解析法により測定される平均粒子径(D1)が10〜100nmの範囲
2)アスペクト比が0.7〜1.0の範囲
3)比表面積が300〜700m2/gの範囲
4)見掛け嵩密度(ABD)が0.05〜0.15g/mlの範囲
5)粒子径の変動係数が10.0〜40.0%の範囲
【0063】
〔本発明の好適な態様2〕
以下の1)〜5)の特徴を有し、表面に針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルであって、固形分濃度が1〜50質量%の範囲にあるシリカゾル。
1)像解析法により測定される平均粒子径(D1)が15〜70nmの範囲
2)アスペクト比が0.8〜1.0の範囲
3)比表面積が400〜600m2/gの範囲
4)見掛け嵩密度(ABD)が0.08〜0.13g/mlの範囲
5)粒子径の変動係数が12〜30%の範囲
【0064】
〔本発明の好適な態様3〕
以下の1)〜5)の特徴を有し、表面に針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルであって、固形分濃度が1〜50質量%の範囲にあるシリカゾル。
1)像解析法により測定される平均粒子径(D1)が18〜30nmの範囲
2)アスペクト比が0.9〜1.0の範囲
3)比表面積が400〜600m2/gの範囲
4)見掛け嵩密度(ABD)が0.08〜0.13g/mlの範囲
5)粒子径の変動係数が14〜25%の範囲
【0065】
〔本発明の好適な態様4〕
次の[1]〜[5]を含むことを特徴とする請求項1〜4記載のシリカゾルの製造方法。
[1]水および界面活性剤を含む水系溶液100質量部と、ケロシン、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を含む油系溶液10〜30質量部を混合し、乳化処理してなる水中油型(O/W)エマルジョンを温度10〜60℃の範囲に保持し、テトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加し、シリカ微粒子前駆体の溶液を調製する工程
[2]前記シリカ微粒子前駆体の溶液を20〜98℃にて熟成する工程
[3]前記熟成終了後、シリカ微粒子前駆体の溶液に、有機溶媒を添加することによりエマルジョンを破壊する工程
[4]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体の溶液の遠心分離処理による洗浄を行う工程[5]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体を超音波処理による分散処理を行って、シリカゾルを調製する工程
【0066】
(実施例)
〔測定・分析方法〕
[1]画像解析法による平均粒子径測定
透過型電子顕微鏡(型番H−800、日立製作所製)を使用して、倍率25万倍にて試料の写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最長径を測定し、それらの平均値を算定し、その値をもって平均粒子径とした。
【0067】
[2]BET法による比表面積測定
シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加
え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着によるBET法を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカゾルの比表面積を算出した。
【0068】
[3]見掛け嵩密度[ABD](g/cm3
シリカゾルを500℃で1時間前処理焼成した後、デシケーターに入れ室温まで冷却した試料を100.0g採取し、250mlのメスシリンダーに移す。メスシリンダーに蓋をして静かに上下逆さに繰り返した後、静置して試料の容量を読みとる。この操作を5回繰り返して行い、5回のデーターの平均容量(Vcm3)を求め次式により計算した。
ABD= 100.0(g)/V(cm3
【0069】
[4]粒子径の変動係数の算定
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍ないし50万倍で写真撮影して得られる写真投影図における球状シリカ微粒子の最長径を2等分する点を該球状シリカ微粒子の中心点とし、該中心点から前記最長径上の一方向を角度0度とし、そこから10度づつ0度から180度までの半径を測定する。そして、その値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求めた。この測定および算定を任意の50個の粒子について行い、粒子径の変動係数の平均値をとり、その値を粒子径の変動係数(CV値)とした。
【0070】
[5]シリカ微粒子のアスペクト比(短径/長径比)
透過型電子顕微鏡(型番H−800、日立製作所製)を使用して、倍率25万倍にて試料の写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最長径とその中心点に直交してなる径を測定し、アスペクト比(短径/長径比)を算定し、更に50個の粒子について平均値をとり、アスペクト比(短径/長径比)とした。
【0071】
[6]実施例で使用した界面活性剤等
n−ドデシルアミン (関東化学株式会社製)
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(関東化学株式会社製、ツイン80)
ソルビタンモノオレート(関東化学株式会社製、スパン80)
臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製、CTAB)
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(日本乳化剤株式会社製、N−862)
ヘキサン(関東化学株式会社製)
ケロシン(関東化学株式会社製)
【実施例1】
【0072】
〔O/W型エマルジョンの調製〕
25℃に設定された高温槽内に設置した7Lの反応容器に、2500mlの蒸留水を入れてから、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)185gを添加し、回転速度400rpmにて攪拌することにより水溶液を調製した。
【0073】
ケロシン400gにn−ドデシルアミン7.5gおよびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル40.25gを溶解させた油系溶液を調製した。
次にディスパーサーHG92(エスエムテー社製)にて前記水系溶液を15Krpmで撹拌を行いながら、前記油系溶液を除々に添加し、乳化処理を30分間行い、O/W型エマルジョン3132gを調製した。
【0074】
〔シリカゾルの調製〕
前記O/W型エマルジョン3132gを25℃に保持し、撹拌速度200rpmにて攪拌しながら、添加ポンプを使用して、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)108.95gを7.5時間かけて連続的に添加した。そして、静置状態にて、25℃で72時間かけて熟成を行った。
【0075】
そして、更にエタノール3000mlを加えてエマルジョンを破壊し、続いて遠心分離
処理を4回行い、ゲル状物を分離した。このゲル状物をエタノールで洗浄し、残存する界面活性剤、触媒、ケロシン等を除去した後、洗浄されたゲル状物と等量のエタノールを加え、超音波浴槽(超音波の出力;150W超音波の周波数;19.5kHz)を用いて機械的衝撃を加えて、シリカ微粒子がエタノールに分散したシリカゾルを得た。このシリカゾルを限外濾過により水溶媒のシリカゾル(固形分濃度20質量%)とした。このシリカゾルの製造条件を表1および表2に、このシリカゾルの性状を表3に記す。また、このシリカゾルの走査電子顕微鏡写真(倍率25万倍)を図1に示す。
【実施例2】
【0076】
〔O/W型エマルジョンの調製〕
25℃に設定された高温槽内に設置した7Lの反応容器に、2500mlの蒸留水を入れてから、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)185gを添加し、回転速度400rpmにて攪拌することにより水溶液を調製した。
【0077】
ケロシン400gにn−ドデシルアミン7.5gおよびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル40.25gを溶解させた油系溶液を調製した。
次にディスパーサーHG92(エスエムテー社製)にて前記水系溶液を15Krpmで撹拌を行いながら、前記油系溶液を除々に添加し、乳化処理を30分間行い、O/W型エマルジョン3132gを調製した。
【0078】
〔シリカゾルの調製〕
前記O/W型エマルジョン3132gを25℃に保持し、撹拌速度200rpmにて攪拌しながら、添加ポンプを使用して、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)108.95gを3時間かけて連続的に添加した。そして、静置状態にて、25℃で72時間かけて熟成を行った。
【0079】
そして、更にエタノール3000mlを加えてエマルジョンを破壊し、続いて遠心分離処理を4回行い、ゲル状物を分離した。このゲル状物をエタノールで洗浄し、残存する界面活性剤、触媒、ケロシン等を除去した後、洗浄されたゲル状物と等量のエタノールを加え、超音波浴槽(超音波の出力;150W超音波の周波数;19.5kHz)を用いて機械的衝撃を加えて、シリカ微粒子がエタノールに分散したシリカゾルを得た。このシリカゾルを限外濾過により水溶媒のシリカゾル(固形分濃度20質量%)とした。このシリカゾルの製造条件を表1および表2に、このシリカゾルの性状を表3に記す。
【0080】
[比較例1]
〔W/O型エマルジョンの調製〕
25℃に設定された高温槽内に設置した5Lの反応容器に、200mlの蒸留水を入れてから、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)14.8gを添加し、回転速度400rpmにて攪拌することにより水溶液を調製した。
【0081】
ケロシン800gに、n−ドデシルアミン15gおよびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル80.5gを溶解させた油系溶液を調製した。
次にディスパーサーHG92(エスエムテー社製)にて前記油系溶液を15Krpmで撹拌を行いながら、前記水系溶液を除々に添加し、乳化処理を30分間行い、W/O型エマルジョン1110gを調製した。
【0082】
〔シリカゾルの調製〕
前記W/O型エマルジョン1110gを、25℃に保持し、撹拌速度200rpmにて攪拌しながら、添加ポンプを使用して、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)186gを7.5時間かけて連続的に添加した。そして、静置状態にて、25℃で72時間かけて熟成を行った。
【0083】
そして、更にエタノール2000mlを加えてエマルジョンを破壊し、続いて遠心分離処理を4回行い、ゲル状物を分離した。このゲル状物をエタノールで洗浄し、残存する界面活性剤、触媒、ケロシン等を除去した後、洗浄されたゲル状物と等量のエタノールを加え、超音波浴槽(超音波の出力;150W超音波の周波数;19.5kHz)を用いて機械的衝撃を加えて、シリカ微粒子がエタノールに分散したシリカゾルを得た。このシリカゾルを限外濾過により水溶媒のシリカゾル(固形分濃度20質量%)とした。ここのシリカゾルの製造条件を表1および表2に、このシリカゾルの性状を表3に記す。
【0084】
[比較例2]
〔O/W型エマルジョンの調製〕
25℃に設定された高温槽内に設置した5Lの反応容器に、2500mlの蒸留水を入れてから、セチルトリメチル臭化アンモニウム(CTAB)185gを添加し、回転速度400rpmにて攪拌することにより水溶液を調製した。
【0085】
ヘキサン395gにポリオキシエチレンソルビタンモノオレート8.13gとソルビタンモノオレート4.078gを溶解させた油系溶液を調製した。
次にディスパーサーHG92(エスエムテー社製)にて前記水系溶液を15Krpmで撹拌を行いながら、前記油系溶液を除々に添加し、乳化処理を30分間行い、O/W型エマルジョン3132gを調製した。
【0086】
〔シリカゾルの調製〕
前記O/W型エマルジョン3092gを、25℃に保持し、撹拌速度200rpmにて攪拌しながら、添加ポンプを使用して、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)108.95gを3時間かけて連続的に添加した。そして、静置状態にて、25℃で72時間かけて熟成を行った。
【0087】
そして、更にエタノール3000mlを加えてエマルジョンを破壊し、続いて遠心分離処理を4回行い、ゲル状物を分離した。このゲル状物をエタノールで洗浄し、残存する界面活性剤、触媒、ケロシン等を除去した後、洗浄されたゲル状物と等量のエタノールを加え、超音波浴槽(超音波の出力;150W超音波の周波数;19.5kHz)を用いて機械的衝撃を加えて、シリカ微粒子がエタノールに分散したシリカゾルを得た。このシリカゾルを限外濾過により水溶媒のシリカゾル(固形分濃度20質量%)とした。このシリカゾルの製造条件を表1および表2に、このシリカゾルの性状を表3に記す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のシリカゾルは、多くの用途において、その特異な構造(針状突起)に由来する新たな効果を示すことが期待される。本発明のシリカゾルをフィラーまたは添加剤として利用する分野としては、具体的には、樹脂添加剤、塗料添加剤または被膜形成剤(コーティング剤)への添加剤として、新たな機能を付与することが期待される。また、本発明に係るシリカ微粒子を担体として利用する分野としては、触媒、抗菌剤などが挙げられる。この他、化粧料、研磨剤または導電性付与剤などの用途で優れた効果を示すことが期待される。
【0092】
また、本発明の製造方法によれば、水系溶液100質量部と油系溶液10〜30質量部から調製してなる所定の油中水型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的に、または、断続的に添加することにより表面に針状突起を有するシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、実施例1で製造したシリカゾルの走査電子顕微鏡写真(倍率25万倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像解析法により測定される平均粒子径(D1)が10〜100nmの範囲にあり、比表面積が300〜700m2/gの範囲にあり、見掛け嵩密度(ABD)が0.05〜0
.15g/mlの範囲にあるシリカ微粒子が分散媒に分散してなるシリカゾル。
【請求項2】
前記シリカ微粒子のアスペクト比が0.7〜1.0の範囲にあり、粒子径の変動係数が10.0〜40.0%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のシリカゾル。
【請求項3】
前記シリカ微粒子が針状突起を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリカゾル。
【請求項4】
前記シリカゾルの固形分濃度が1〜50質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシリカゾル。
【請求項5】
水および界面活性剤を含む水系溶液100質量部と、炭化水素油、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を含む油系溶液10〜30質量部とを混合し、乳化処理してなる水中油型(O/W)エマルジョンを温度10〜60℃の範囲に保持し、この水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加することにより、シリカ微粒子前駆体の溶液を調製し、更に該シリカ微粒子前駆体に機械的衝撃を加えてシリカ微粒子を生成させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
次の[1]〜[5]を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシリカゾルの製造方法。
[1]水および界面活性剤を含む水系溶液100質量部と、炭化水素油、アミン系化合物およびアミン系化合物以外の界面活性剤を含む油系溶液10〜30質量部とを混合し、乳化処理してなる水中油型(O/W)エマルジョンを温度10〜60℃の範囲に保持し、この水中油型(O/W)エマルジョンにテトラエチルオルソシリケートを連続的にまたは断続的に添加し、シリカ微粒子前駆体の溶液を調製する工程
[2]前記シリカ微粒子前駆体の溶液を20〜98℃にて熟成する工程
[3]前記熟成終了後、シリカ微粒子前駆体の溶液に、有機溶媒を添加することによりエマルジョンを破壊する工程
[4]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体の溶液の洗浄を行う工程
[5]前工程に続いて、シリカ微粒子前駆体に機械的衝撃を加えてシリカ微粒子を生成させて、シリカゾルを調製する工程
【請求項7】
前記シリカ微粒子前駆体の洗浄を遠心分離処理により行うことを特徴とする請求項6記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項8】
前記機械的衝撃を超音波処理により加えることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素油が、ケロシンであることを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載のシリカゾルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242115(P2009−242115A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87066(P2008−87066)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】