説明

シリカ充填ゴムにおける揮発性有機化学物質の発生が少ないアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン類

【課題】加硫されたゴム配合物の動的粘弾性及び機械特性を向上させ、特にトレッドストックがタイヤのスノートラクションを向上させ、ウェットトラクションは同等であるが転がり抵抗をより低くし、反発性を増大させ、ヒステリシスを低減し、タイヤ性能を全般的に改良したタイヤ構成物品の提供。
【解決手段】エラストマー;シリカ、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選ばれる補強性充填剤;硬化剤;及びアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS、これらの混合物、並びに弱酸で中和された固体及びその水溶液からなる群より選ばれる1種若しくはそれ以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む加硫性ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年12月31日に出願された米国仮出願第61/018,213号及び61/017,932号並びに2008年8月5日に出願された米国仮出願第61/086,236号の優先権を主張する、2008年12月31日に出願された米国特許出願第12/347,017号の優先権を主張するものであり、これらの全ての開示を参照することにより本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造技術における現在の傾向がゴム配合物中でのより高いシリカ充填量の使用に向かい続けているのに伴い、シリカで補強されたゴムの配合、処理、硬化及び貯蔵中で環境に放出される揮発性有機化合物(VOC)、特にはアルコールのレベルを抑制する試みがなされている。
【0003】
参照することによりその開示を本願に援用する2006年3月23日に出願された「揮発性有機化合物(VOC)放出の少ないシリカで補強されたゴムの配合(Compounding Silica-Reinforced Rubber With Low Volatile Organic Compound (VOC) Emission)」と題する我々の米国特許出願第11/387,569号において、我々は、ゴム配合において使用される従来のアルコキシシラン含有シリカカップリング剤及び/又はシリカ分散剤よりもアルコールの発生が少ないアルキルアルコキシ変性シルセスキオキサン(アルキルAMS)化合物及びアルキル/メルカプタンco−アルコキシ変性シルセスキオキサン(アルキル/メルカプタンco−AMS)化合物の調製を記載している。ゴム配合物にアルキルAMS化合物及びアルキル/メルカプタンco−AMS化合物を用いた際に生成するアルコールの量の低減は、プラント内での環境条件を改善するだけでなく、制限されるものではないが、ゴム補強性を増強し、ポリマー−充填剤相互作用を向上させ、配合物粘度をより低くする等、加硫されたゴム配合物の1つ若しくはそれ以上の特性を向上させ、また、タイヤのウェットトラクション及びスノートラクションを向上させ、転がり抵抗をより低くし、反発性を強化し、ヒステリシスを低減することがわかった。
【0004】
しかしながら、上記参照の特許出願の出願時には、アミノ基をも含む類似のAMS化合物、すなわちアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、及びアミノ/ブロック化メルカプタンco−AMSをどのように製造するかは知られていなかった。また、かかるアミノAMS化合物及び/又はアミノco−AMS化合物のゴム配合物への添加が、かかるゴム配合物及び該ゴム配合物を含むタイヤ構成物品の特性にどのような影響を及ぼすのかも知られていなかった。
【0005】
2007年12月31日に出願された、アミノAMS化合物及びアミノ/メルカプタンco−AMS化合物の製造方法を記載した米国仮出願第61/017,932号及び61/018,213号、並びに双方の出願全ての開示を参照することにより本願に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/387,569号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
極めて予想外なことに、アミノAMS化合物及び/又はアミノ/メルカプタンAMS化合物の加硫性ゴム組成物への添加が、我々の特許出願、上記米国特許出願第11/387,569号に記載されたアルキルAMS化合物及び/又はアルキル/メルカプタンco−AMS化合物を含む加硫されたゴム配合物と比較して、加硫されたゴム配合物の特性を強化することが見出された。理論に束縛されるものではないが、AMS化合物及び/又はアミノ/メルカプタンco−AMS化合物上のアミノ基の存在が、観測されたポリマー−充填剤相互作用の向上に関与し、また、仮に存在する場合は、メルカプト含量がゴムへの結合に関与し得、本発明のゴム配合物において観測されるモジュラス、タフネスの強化、ヒステリシスの低減、配合物粘度の低下及びゴム補強性の強化をもたらすものと考えられる。本発明のゴム配合物のかかる動的粘弾性及び機械特性の向上は、タイヤ構成物品、特にトレッドストックが、タイヤのスノートラクションを向上させ、転がり抵抗をより低くするもののウェットトラクションを同程度とし、反発性を強化し、ヒステリシスを低減し、タイヤ性能を全般的に改良することが予測される。
【0008】
具体的には、エラストマー;シリカ、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選ばれる補強性充填剤;硬化剤;並びにアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS、これらの混合物、及び弱酸で中和された固体及びその水溶液からなる群より選ばれる1種もしくはそれ以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む加硫可能なゴム組成物を提供する。本明細書で用いるように、「アミノ/メルカプタンco−AMS」なる用語は、特に他の指定がない限り、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMSを含むことを意味している。また「アミノAMS」なる用語も、特に制限されるものではないが、他の分子を含むことができるアミノco−AMSを包含することを意味しており、これら他の分子は、特に制限されるものではないが、アクリレート、メタクリレート、アミノ、ビニル、メルカプト、硫黄及びスルフィド基等のゴムと反応し得る基を有する。
【0009】
極めて好適な態様では、アミノAMSはアミノ/メルカプタンco−AMSを含む。他の態様では、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンは弱酸によって中和された水溶液であり、約6.5〜約4.0のpHを有している。液状のアミノAMSは少なくとも部分的に補強性充填剤に担持することができる。かかるゴム組成物は、さらにアルコキシシラン−シリカ反応用の触媒を含むことができる。
【0010】
本発明は、さらに前記加硫性ゴム組成物から製造された加硫ゴム配合物を含む少なくとも1つの構成物品を含む空気入りタイヤ、及び少なくとも1つの構成物品がタイヤトレッドを含む空気入りタイヤを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一つの態様では、本発明による加硫性ゴム組成物は、エラストマー;シリカ、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選ばれる補強性充填剤;硬化剤;並びに、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS、これらの混合物、並びに弱酸で中和された固体及びその水溶液からなる群より選ばれる1種もしくはそれ以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含み、式
【化1】

【0012】
[式中、w、x、y及びzはモル分率を表し、zはゼロではなく、またw、x又はyの少なくとも1つは存在しなければならず、かつw+x+y+z=1.00であり、
【0013】
1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはR6Zからなる群より選ばれ、ここでZはNH2、HNR7及びNR72からなる群より選ばれ、
残余のR1、R2、R3又はR4は同じであるか若しくは異なっており、(i)H又は炭素数1〜約20のアルキル基、(ii)炭素数3〜約20のシクロアルキル基、(iii)炭素数7〜約20のアルキルアリール基、(iv)R6X(ここでXはCl、Br、SH、Sa7、NR72、OR7、CO2H、SCOR7、CO27、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、及び(v)R6YR8X(ここでYはO、S、NH及びNR7からなる群より選ばれる)からなる群より選ばれ、
6及びR8は、炭素数1〜約20のアルキレン基、炭素数3〜約20のシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
5及びR7は、炭素数1〜約20のアルキル基、炭素数3〜約20のシクロアルキル基、及び炭素数7〜約20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる]を有する。
NR72について、2つのR7は同じであっても異なっていてもよい。
【0014】
この出願と同時期に出願された、「アミノアルコキシ変性シルセスキオキサン及び調製方法(Amino Alkoxy-Modified silsesquioxanes and Method of Preparation)」と題する同時係属の我々の米国特許出願に記載したように、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンの混合物は、反応性アルコキシシリル基とともに開放状かご構造又ははしご様構造を有し且つ本質的に閉鎖状かご構造化された多面体オルガノシルセスキオキサンを含まないアミノアルコキシ変性シルセスキオキサンから本質的に成る。即ち、すべてのアミノAMS分子におけるR1シラン原子、R2シラン原子及びR3シラン原子の少なくとも1つが、アルコキシ(OR)基を有するシランに結合している。本発明によるアミノAMS構造とは対照的に、多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)等の閉鎖状かご構造は、Si−OR(アルコキシシラン)結合を実質含まず、Si−O−Si結合のみ含む。さらに、アミノAMS混合物は、それ自体、1つの純粋成分のスペクトルによって同定することのできない多数の構造を有する。該アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンは、実質的に全て酸加水分解によって処理した場合、約0.05重量%〜約10重量%のアルコールを遊離する。
【0015】
アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンのR1、R2、R3又はR4の少なくとも1つは、エラストマーと結合し得る基を有する。かかる基としては、制限されるものではないが、アクリレート、メタクリレート、アミノ、ビニル、メルカプト、硫黄及びスルフィド基等が挙げられる。一つの態様では、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンのR1、R2、R3又はR4の少なくとも1つは、制限されるものではないが、メルカプトアルキル基、ブロック化メルカプトアルキル基、及び硫黄原子数約2〜約8の鎖を有するオルガノ基等であり得る。ゴム配合における使用に特に好適な態様では、アミノAMSはアミノ/メルカプタンco−AMSを含む。
【0016】
他の態様では、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンは、弱酸によって中和され、約6.5〜約4.0、好ましくは約6.0〜約5.0のpHを有する水溶液中にある。好適な弱酸は約3.5〜約6.5のpKaを有し得る。例えば、かかる弱酸としては、制限されるものではないが、酢酸、アスコルビン酸、イタコン酸、乳酸、リンゴ酸、ナフタル酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸等の特に制限されない弱カルボン酸、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
つまり、一般的であるが制限されない例において、かかるアミノAMS化合物は、アミノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合触媒の存在下、アルコール水溶液中で加水分解及び縮合させることによって製造することができる。アミノAMS化合物の製造における使用に好適な加水分解及び縮合触媒は公知であり、制限されるものではないが、塩酸、硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸等の強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の強塩基、並びにDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]ノナ−5−エン)、イミダゾール、グアニジン等の強有機酸及び塩基、並びにこれらの混合物が挙げられる。またかかる加水分解及び縮合触媒は、好適には、固体強カチオン樹脂であり、制限されるものではないが、例えば、2007年12月31日に出願され、全ての開示を参照することにより本願に援用する我々の米国仮出願第61/017,932号に開示されているようなかかる樹脂を用いたアミノAMS化合物の製造方法において記載されているものが挙げられる。
【0018】
アミノトリアルコキシシランのアミノAMS化合物への実質的全変換に充分な時間の間、かかる反応を続ける。次いで、まずアミンと触媒とを中和した後に溶媒を蒸留することによって、アミノAMS生成物を反応混合物から除去する。水による溶媒交換は安定な濃縮水溶液をもたらすこととなる。好適なアミノAMS化合物及びアミノ/メルカプタンco−AMS化合物の製造方法の例が、2007年12月31日に出願された我々の米国仮出願第61/017,932号及び61/018,213号、並びに下記実施例に記載されている。しかしながら、これらの例は制限することを意図するものではない。この開示の教示から、かかる化合物の他の製造方法が当業者に明らかとなるであろう。
【0019】
特に、以下に示す実施例において、加水分解及び縮合触媒は固体強カチオン性加水分解及び縮合触媒を含む。このアミノAMS化合物の製造方法では、アミノAMSの調製中にアミン官能性を中和するのに弱酸緩衝液を反応混合物中で用いるので、固体強カチオン樹脂が加水分解及び縮合触媒として作用し得る。かかる弱酸緩衝液(これはAMS触媒ではない)は安定剤として作用することもできるので、水中のアミン塩がさらに濃縮して不溶性ゲル化構造をもたらすことがない。この方法では、固体強カチオン性触媒をろ過等により、次の反応において再利用し得る沈殿物として容易に反応混合物から回収することができる。この方法の使用の利点は、回収されたアミノAMS生成物が、余剰の強酸触媒を含まない、若しくは実質的に含まない点である。かかる方法は、さらに触媒を再利用するために固体強カチオン性触媒を反応混合物から回収する工程を含むことができる。
【0020】
アミノAMSの製造における使用に好適な固体強カチオン性加水分解及び縮合触媒は市販されており、制限されるものではないが、不溶性ポリマーマトリックスに結合するスルホン酸基を有するカチオン性イオン交換樹脂が挙げられる。例えば、これらの固体樹脂は、その非常に低いpKa(<1.0)に起因して強カチオン交換体であるH+カウンターイオンを含む。非限定的な例として、かかるカチオン性イオン交換樹脂は、約1%〜約8%のジビニルベンゼンと架橋しているポリスチレンをスルホン化することによって(スルホン酸で処理することによって)調製することができる。好適な市販の強カチオン性交換樹脂の例としては、制限されるものではないが、Amberlite IR-120、Amberlyst A-15、Purolite C-100及びDowex(登録商標)50WXシリーズ樹脂のいずれかのH+イオン形態が挙げられる。かかる樹脂は、典型的には約400メッシュ〜約500メッシュの粒子サイズを有するゲルビーズである。粒子サイズは本発明の方法において重要ではない。制限されるものではないが、ポリマー片、ポリマー膜等の強カチオン性イオン用の別種の固体担体が記載されており、本発明の範囲内である。好適には、アミノAMSまたはアミノco−AMS生成物が抽出された後、固体強カチオン性触媒は、ろ過等により反応混合物からの単純な分離用の反応室の底に沈殿する(または沈下する)であろう物理的形態を呈している。
【0021】
一般に、ゴム配合物における使用に好適なアミノAMSは、アミノトリアルコキシシランの加水分解及び縮合によって調製することができる。好適なアミノco−AMS化合物は、アミノトリアルコキシシランと、例えば、メルカプトアルキル官能性を導入するためのメルカプトアルキルトリアルコキシシラン、又はブロック化されたメルカプトアルキル官能性を導入するためのブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシランとの共加水分解及び共縮合によって製造することができる。他の態様では、上記で参照した米国特許出願第11/387,569号に記載するように、縮合反応の後で、ブロック化剤を、SH基を含むアミノAMS生成物に結合させることができる。
【0022】
好適なアミノトリアルコキシシラン反応物の例としては、制限されるものではないが、3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3−[N−(トリエトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。好適な硫黄含有トリアルコキシシランの例としては、制限されるものではないが、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3−チオアシルプロピルトリアルコキシシラン、3−チオオクタノイル−プロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン」なる用語の使用は、シリカ反応性メルカプトシラン部分に作用せずに、分子のメルカプト部(すなわち、メルカプト水素原子が他の基によって置換されており、以後「ブロック基」と称する)をブロックするブロック部分を含むメルカプトシランシリカカップリング剤として定義される。好適なブロック化メルカプトシランとしては、制限されるものではないが、米国特許第6,127,468号、6,204,339号、6,528,673号、6,635,700号、6,649,684号、6,683,135号に記載されているものが挙げられ、これらの開示を記載した例について参照することによって本願に援用する。この開示の目的のために、シリカ−反応性「メルカプトシラン部分」は、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランの分子量と同等の分子量として定義される。非ブロック化剤は、シリカ−シラン反応が起こった後、ゴム配合中又は配合後(例えば、加硫中等の製造工程における後期)に添加することができ、メルカプトシランの硫黄原子が迅速にゴムと結合することが可能になる。かかる非ブロック化剤は、非ブロック化が望まれる任意の混合段階中の単一成分として、配合工程中における任意の時点で添加することができる。非ブロック化剤の例は、当業者に周知である。
【0024】
前記アミノAMS及び/又はアミノ/メルカプタンco−AMSは、本発明による加硫性ゴム組成物中に約0.01〜約20phr、好ましくは約0.1〜約15phr又は、ある場合には、約1〜約10phr、若しくは約1〜約5phr、或いはシリカの重量基準で約0.1重量%〜約25重量%、特には約0.1重量%〜約15重量%の量で存在させることができる。
【0025】
また、前記アミノAMS及び/又はアミノ/メルカプタンco−AMSは、2006年3月23日に出願された我々の米国特許出願第11/387,569号に記載され、及び我々の米国仮出願第61/017,932号及び61/018,213号に記載されたもの等のいかなるAMS及び/又はco−AMSと併用することもできる。かかる付加的なAMS及び/又はco−AMSは、約0.1〜約20phr、好ましくは約1〜約15phr又は、ある場合には、約5〜約10phr、若しくは約1〜約5phr、或いはシリカの重量基準で約0.1重量%〜約25重量%、特には約0.1重量%〜約15重量%の量で存在させることができる。
【0026】
本発明による加硫性ゴム組成物は、いかなる溶液重合可能な又は乳化重合可能なエラストマーをも含むことができる。溶液及び乳化重合技術は当業者に周知である。例えば、共役ジエンモノマー、モノビニル芳香族モノマー、トリエンモノマー等は、アニオン重合して共役ジエンポリマー、又は共重合体、或いは共役ジエンモノマーとモノビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン等)とトリエンモノマーとの三元共重合体を形成することができる。典型的には、タイヤ及びタイヤ構成物品の製造に有用な加硫性組成物内で用いられる前記エラストマーとしては、天然エラストマー及び合成エラストマーの双方が挙げられる。例えば、これらのエラストマーとしては、制限されることなく、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレンアクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エピクロロヒドリンゴム、塩化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム等が挙げられる。本発明の加硫性ゴム組成物における使用に好適なポリマーとしては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/イソプレン共重合体、ブタジエン/イソプレン/スチレン三元共重合体、イソプレン/スチレン共重合体、及びスチレン/ブタジエン共重合体が挙げられる。ここに用いるものとして、エラストマー又はゴムなる用語は、合成ゴム及び天然ゴムのブレンド、各種合成ゴムのブレンド、或いは単にエラストマー又はゴムの1種類を意味する。好ましいポリマーを従来のゴムとブレンドした場合、その量はゴム全量の約1〜約100重量%の範囲内で幅広く変化することができ、一種又は複数種の従来のゴムが全ゴム(100部)の残余部分を形成する。
【0027】
本発明を実施する上で有用な前記エラストマーとしては、タイヤ製造の技術分野で従来より用いられている各種官能化ポリマーが挙げられる。例えば、ポリマーは、アニオン重合開始剤又は停止剤若しくはカップリング剤から誘導される官能基を有するように、末端を官能化することも、ポリマー骨格の至る所で官能化することもできる。官能化ポリマーの調製は当業者に周知である。ポリマーの官能化のための典型的な方法及び剤は、例えば、米国特許第5,268,439号、5,496,940号、5,521,309号及び5,066,729号に開示されており、これらの開示を参照することにより本願に援用する。例えば、ポリマーと結合した炭素−リチウム部分と反応する末端官能性を与える化合物は、所望の官能基をもたらすように選択することができる。かかる化合物の例としては、アルコール、置換アルジミン、置換ケチミン、ミヒラーズケトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−アルキル置換ピロリジノン、1−アリール置換ピロリドノン、スズテトラクロリド、トリブチルスズクロリド、二酸化炭素及びこれらの混合物が挙げられる。他の有用な停止剤としては、構造式(R)aZXbのものを挙げることができ、ここでZはスズ又はケイ素であり、Rは炭素数約1〜約20のアルキル、炭素数約3〜約30のシクロアルキル、及び炭素数約6〜約20のアリール、又は炭素数約7〜約20のアラルキルである。例えば、Rとしては、メチル、エチル、n−ブチル、ネオフェニル、フェニル、シクロヘキシル等が挙げられる。Xは塩素若しくは臭素等のハロゲン、又はアルコキシ(--OR)であり、「a」は0〜3の整数であり、かつ「b」は1〜4の整数であり、ここでa+b=4である。かかる停止剤の例としては、スズテトラクロリド、トリブチルスズクロリド、ブチルスズトリクロリドおよびブチルシリコントリクロリドのほか、テトラエトキシシラン(Si(OEt)4)、及びメチルトリフェノキシシラン(MeSi(OPh)3)が挙げられる。本発明の実施は、ポリマーと結合した炭素−リチウム部分と反応する他の化合物を所望の官能基をもたらすように選択することができるので、これらの剤で停止されたポリマーに制限されるものではない。
【0028】
本発明の加硫性ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック及びこれらの混合物等の補強性充填剤とともに配合するのが好ましい。好適なシリカ補強性充填剤としては、制限されるものではないが、沈降非晶質シリカ、湿潤シリカ(含水シリカ酸)、乾燥シリカ(無水シリカ酸)、ヒュームドシリカ、カルシウムシリケート等が挙げられる。他の好適な充填剤としては、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート等が挙げられる。これらの中でも、沈降非晶質湿潤処理による含水シリカが好ましい。これらのシリカは、水中の化学反応によって製造されるので、いわゆる超微細な球状粒子として沈殿する結晶形である。これらの一次粒子は強く会合して凝集体となっており、該凝集体は、次に、より弱く組み合わさって集合体となっている。BET法により測定される表面積は、種々のシリカの補強特性の最良の尺度を与える。本発明に関与するシリカとして、表面積は約32m2/g〜約400m2/gでなければならず、約100m2/g〜約250m2/gの範囲が好ましく、約150m2/g〜約220m2/gの範囲が最も好ましい。シリカ充填剤のpHは、一般に約5.5〜約7若しくは若干超え、約5.5〜約6.8であるのが好ましい。
【0029】
シリカはエラストマー100部当たり(phr)約1〜約150重量部の量、好ましくは約5〜約80phrの量、及びより好ましくは約30〜約80phrの量で用いることができる。有用な上限は、この種の充填剤によって与えられる高粘度によって制限される。使用可能ないくつかの市販シリカとしては、制限されるものではないが、PPG工業社(ピッツバーグ、ペンシルベニア)製Hi−Sil(登録商標)190、Hi−Sil(登録商標)210、Hi−Sil(登録商標)215、Hi−Sil(登録商標)233、Hi−Sil(登録商標)243等が挙げられる。また、多くの有用な市販グレードの種々のシリカが、デグサ社(例えば、VN2、VN3)、ローヌプーラン(例えばZeosil(登録商標)1165MP)、及びJ.M.ヒューバー社からも入手可能である。
【0030】
前記エラストマーは、シリカとの混合物中、全て形態のカーボンブラックと配合することができる。かかるカーボンブラックは約1〜約50phr、好ましくは約5〜約35phrの範囲の量で存在することができる。補強性充填剤としてカーボンブラックとシリカの双方を組み合わせて用いる場合、これらは大抵、約0:1〜約1:10のカーボンブラック−シリカ比で用いられる。かかるカーボンブラックとしては一般に入手可能で工業的に生産された任意のカーボンブラックを挙げることができるが、少なくとも20m2/g、より好ましくは少なくとも35m2/gから200m2/gまで、或いはより高表面積(EMSA)を有しているものが望ましい。本発明において用いる表面積の値は、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド(CTAB)技術を用いたASTM D−1765によって測定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックがある。より具体的には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、高速押出性ファーネス(FEF)ブラック、微粒子ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(SRF)ブラック、中級作業性チャンネルブラック、難作業性チャンネルブラック、及び導電性チャンネルブラックが挙げられる。利用可能な他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。上記ブラックの2種又はそれ以上の混合物を本発明のカーボンブラック生成物の調製で用いることができる。典型的な好適カーボンブラックは、ASTM D−1765−82aで規定されるように、N−110、N−220、N−339、N−330、N−351、N−550、N−660である。本発明の加硫性エラストマー組成物の調製で用いるカーボンブラックは、ペレット状形状又は非ペレット状の綿状塊であってもよい。好ましくは、より均一な混合のためには、非ペレット状カーボンブラックが望ましい。
【0031】
代わりに、又はエラストマーと結合する1つ若しくはそれ以上の基に加えて、前記ゴム配合物は、所望により、特に制限されるものではないが、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、ブロック化メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、シリカに結合したメルカプトアルキルシラン、シリカに結合したブロック化メルカプトアルキルシラン、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィド若しくはジスルフィド等の添加された硫黄含有カップリング剤を、シリカ基準で約0.05〜約3%の量で含むことができる。特に有用な、シリカに担持するメルカプトシラン含有の市販製品は、実質的にトリアルコキシシランの存在しないシリカに固定化されたメルカプトシランであるCiptane(登録商標)255LDとして、PPG工業社から入手することができる。この製品を用いた場合、ゴム配合物におけるシリカの量は、添加されたCiptane(登録商標)からのシリカに応じて調節して所望のシリカ総量とすることができる。典型的なメルカプトシランとしては、制限されるものではないが、1−メルカプトメチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプト−プロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチル−ジエトキシシラン、2−メルカプトエチル−トリプロキシシラン、18−メルカプトオクタデシルジエトキシクロロシラン等が挙げられる。かかるメルカプトシランは、前記配合物中にシリカの重量基準で約0.0001重量%〜約3重量%、典型的には約0.001重量%〜約1.5重量%、及び特に約0.01重量%〜約1重量%の量で存在することができる。典型的なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドシリカカップリング剤としては、制限されるものではないが、デグサ社(ニューヨーク)により商標名Si69で市販されているビス(3−トリエトキシシリル−プロピル)テトラスルフィド(TESPT)、及びデグサ社から入手可能なビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPD)若しくはSi75、或いはクロンプトンから入手可能なSilquest(登録商標)A1589が挙げられる。かかるポリスルフィドオルガノシランシリカカップリング剤は、シリカの重量基準で約0.01重量%〜20重量%、好ましくは約0.1重量%〜約15重量%、及び特に約1重量%〜約10重量%の量で存在することができる。
【0032】
本発明によるアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS及び/又はアミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS化合物に加え、本発明に好適に用いられる典型的なシリカ分散助剤としては、制限されるものではないが、以下に詳細に述べるように、アルキルアルコキシシラン、アルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS及び/又はco−AMS)、水素化又は非水素化されたC5若しくはC6糖類の脂肪酸エステル、水素化又は非水素化されたC5若しくはC6糖類の脂肪酸エステル由来のポリオキシエチレン、及びこれらの混合物、或いは鉱物系若しくは非鉱物系の追加の充填剤が挙げられる。シリカ分散助剤として有用な典型的な水素化及び非水素化されたC5及びC6糖類(例えばソルボース、マンノース、アラビノース)の脂肪酸エステルとしては、制限されるものではないが、ソルビタンモノオレアート、ジオレアート、トリオレアート及びセスキオレアート等のソルビタンオレアートだけでなく、ラウレート、パルミテート及びステアレート脂肪酸のソルビタンエステルが挙げられる。水素化及び非水素化されたC5及びC6糖類の脂肪酸エステルはSPAN(登録商標)なる商標名でICI Specialty Chemicals(ウィルミントン、デラウェア)から入手可能である。代表的な製品としては、SPAN(登録商標)60(ソルビタンステアレート)、SPAN(登録商標)80(ソルビタンオレアート)、及びSPAN(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)が挙げられる。また、Alkamul(登録商標)SMO、Capmul(登録商標)O、Glycomul(登録商標)O、Arlacel(登録商標)80、Emsorb(登録商標)2500、及びS−Maz(登録商標)80として知られるソルビタンモノオレアート等の他の市販のソルビタン脂肪酸エステルも入手可能である。ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドシリカカップリング剤とともに用いる場合のこれら追加のシリカ分散助剤の有用な量は、シリカの重量基準で約0.1重量%〜約25重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約15重量%である。本発明のアルキルアルコキシシラン及びメルカプトシランの態様では、シリカの重量基準で約0.1重量%〜約20重量%の脂肪酸エステルの使用が望ましい。また、ポリヒドロキシ化合物等のようなグリコールを含むポリオールのエステルは、同量で本発明の全ての態様において有用である。
【0033】
水素化及び非水素化されたC5及びC6糖類の脂肪酸エステル由来のポリオキシエチレンの典型例としては、制限されるものではないが、ポリソルベート及びポリオキシエチレンソルビタンエステルが挙げられ、これらはエチレンオキシド基がヒドロキシル基の各々に配置している以外、上述した水素化及び非水素化された糖類の脂肪酸エステルに類似している。ソルビタン由来のポリオキシエチレンの代表例としては、POE(登録商標)(20)ソルビタンモノオレアート、Polysorbate(登録商標)80、Tween(登録商標)80、Emsorb(登録商標)6900、Liposorb(登録商標)O−20、T−Maz(登録商標)80等が挙げられる。かかるTween(登録商標)製品はICI Specialty Chemicalsから市販されている。一般に、これら任意のシリカ分散助剤の有用な量は、シリカの重量基準で約0.1重量%〜約25重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、及びより好ましくは約1重量%〜約15重量%である。
【0034】
前記シリカカップリング剤、アルキルアルコキシシラン、AMS及び/又はco−AMS化合物、アミノAMS及び/又はアミノ/メルカプタンco−AMS及び/又はブロック化アミノ/メルカプタンco−AMS、脂肪酸エステル及びこれらのポリオキシエチレン誘導体、並びに強有機塩基触媒は、補強性充填剤によって完全に或いは部分的に担持され得る。分散助剤又は触媒の補強性充填剤に対する比は重要ではない。仮に分散助剤が液体であれば、分散助剤の充填剤に対する好適な比は、エラストマーに添加するのに好適な乾燥物質をもたらす。例えば、かかる比は約1/99〜約70/30、約20/80、約60/40、約50/50等であってよい。補強性充填剤に担持した50/50の比のアミノAMS又はアミノ/メルカプタンco−AMSの潜在アルコールの量は、約0.5%〜約3%である。
【0035】
本発明によれば、ある追加の充填剤は加工助剤として使用可能であり、クレイ(含水アルミニウムシリケート)、タルク(含水マグネシウムシリケート)、アルミニウムヒドラート[Al(OH)3]、及びマイカ等の鉱物系充填剤だけでなく、尿素及び硫酸ナトリウム等の非鉱物系充填剤が挙げられる。好ましいマイカは主にアルミナとシリカとを含むが、他の公知の変異体も有用である。前述の追加の充填剤は任意であり、また約0.5〜約40phr、好ましくは約1〜約20phr、より好ましくは約1〜約10phrの量で用いることができる。これら追加の充填剤は、非補強性充填剤として用いて、強有機塩基触媒だけでなく、上述したあらゆるシリカ分散助剤及びシリカカップリング剤を担持することができる。上述したように、シリカ分散助剤の補強性充填剤への担持と同様、分散助剤の非補強性充填剤に対する比は重要ではない。例えば、かかる比は重量比で約1/99〜約70/30、約20/80、約60/40、約50/50等であってよい。およそ非補強性充填剤に担持したアミノアルコキシ変性シルセスキオキサンの50/50の比の潜在アルコールの量は、約0.5%〜約3%である。
【0036】
また、加硫性ゴム組成物は、制限されるものではないが、水媒体中で約10より大きいpKaを有する強有機塩基、強無機塩基、アルキルスズ触媒、ジルコニウム触媒、チタニウム触媒等、並びにこれらの組み合わせ等のアルコキシシラン−シリカ反応用触媒を含むこともできる。例えば、本発明において触媒として好適に用いられる強有機塩基は、好ましくは水媒体中で約10より大きいpKa、より好ましくは約11よりも大きいpKa、最適には約12より大きいpKaを有する。かかる強塩基は、配合物中にシリカの重量基準で約0.01%〜約10%、一般に約0.1%〜約5%の量で存在することができる。強有機塩基の触媒量は、一般にゴム100部当たり(phr)約0.003〜約8phr、典型的には約0.03phr〜約4phrである。本発明の配合物において用いる強有機塩基の典型例としては、制限されるものではないが、ナトリウム又はカリウムアルコキシド等の強アルカリ金属アルコキシド、トリフェニルグアニジン(TPG)、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DTG)、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)等のグアニジン、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)等のヒンダードアミン塩基、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン触媒、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩基、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等のビス−アミノエーテル等、制限されるものではないが5〜7員環を有する複素環等の窒素含有複素環等が挙げられる。窒素含有複素環の非限定的な例としては、制限されるものではないが、イミダゾール、4−エチルアミノイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等の置換若しくは非置換のイミダゾールである。
【0037】
アルコキシシラン−シリカ反応用に好適な触媒としては、制限されるものではないが、さらに、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノアート)、ビス(2−エチル−ヘキサノアート)スズ、ブチルスズクロリドジヒドロキシド、ブチルスズヒドロキシドオキシドヒドラート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレアート、ジブチルスズオキシド等のアルキルスズ化合物を挙げることができる。アルキルスズ化合物の触媒量は、シリカの重量基準で約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%、及び約0.1重量%〜約2重量%であってもよい。
【0038】
アルコキシシラン−シリカ反応用に好適な追加の触媒としては、さらにジルコニウム化合物を挙げることができる。好適なジルコニウム触媒の例としては、制限されるものではないが、ジルコニウム2−エチルヘキサノアート、ジルコニウムテトラキス−(2−エチルヘキサノアート)、テトラオクチルジルコネート、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンシオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム2−エチルへキソキシド、ジルコニウム3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキシド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウムn−プロポキシド等が挙げられる。ジルコニウム化合物の触媒量は、シリカの重量基準で約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%、及び約0.1重量%〜約2重量%であってもよい。
【0039】
アルコキシシラン−シリカ反応用の好適な追加の触媒としては、さらにチタニウム化合物が挙げられる。好適なチタニウム触媒の例としては、制限されるものではないが、チタニウムトリメチルシロキシド、チタニウム(イソプロポキシド)2(2,4−ペンタンジオネート)2、チタニウム(ブトキシド)2(2,4−ペンタンシオネート)2、チタニウム(イソプロポキシド)2(エチル−アセトアセテート)2等が挙げられる。チタニウム化合物の触媒量は、シリカの重量基準で約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%、及び約0.1重量%〜約2重量%であってもよい。
【0040】
好適な触媒は、上記分類及び下位分類のいずれの混合物でもよいことがわかる。
【0041】
加硫性ゴム組成物は、当該技術分野で従来的に使用されている、各種加硫性ポリマー(類)を、補強性充填剤と、制限されるものではないが、加硫剤、活性化剤、加硫遅延剤及び促進剤等の一般に用いられる添加剤物質、オイル等の加工添加剤、タッキファイヤー樹脂を含む樹脂、可塑剤、顔料、追加の充填剤、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、素練り促進剤等とを混合するような混合装置及び手段を用いることによって、配合又はブレンドされる。当業者において公知であるように、上記添加剤は選択され、かつ標準的な量で一般に用いられる。
【0042】
最初のマスターバッチは、ゴム成分と補強性充填剤だけでなく、プロセスオイル、老化防止剤等の他の任意の非硬化添加剤を含んで調製されるのが好ましい。マスターバッチを調製した後、1段階若しくはそれ以上の任意のリミル段階を続けることができ、ここでは化合物粘度を低減するため、及び補強性充填剤の分散を向上させるために、第一混合物に何ら成分を添加しないか、若しくは残余の非硬化成分を添加する。混合工程の最終段階は混合物への加硫剤の添加である。
【0043】
本発明の態様によれば、アミノAMS及び/又はアミノ/メルカプタンco−AMS化合物をマスターバッチの調製中に添加するのが好ましい。しかしながら、代わりに、本発明の化合物を、リミル段階及び/又は最終段階等の次の段階中に添加することができ、該化合物は、さらに配合物に所望の加工性をもたらすだけでなく、最終ゴム配合物のモジュラスを向上させる等、有利な機械特性及び粘弾性特性をもたらす。
【0044】
次いで、加硫性組成物を通常のタイヤ製造技術に従って加工することができる。同様に、標準的なゴム加硫技術を用いてタイヤを最終的に製造する。従来より用いられているゴム配合及び添加剤のさらなる説明として、Rubber Technology, Second Edition(1973年 Van Nostrand Reibold社)中のスティーブンスによる「ゴムの配合及び加硫(The Compounding and Vulcanization of Rubber)」を参照することができ、これを参照することにより本願に援用する。かかる強化されたゴム配合物は、公知の加硫剤を約0.1〜10phrの量で用いた従来の方式で加硫することができる。好適な加硫剤の一般的な開示として、「Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd ed., Wiley Interscience, N.Y. 1982年、第20巻、pp.365-468」、特に「Vulcanization Agents and Auxiliary Materials, pp.390-402」若しくは「Vulcanization by A.Y. Coran, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Second Edition(1989年、John Wiley & Sons, Inc.)」を参照することができ、これら双方を参照することにより本願に援用する。加硫剤は単独若しくは組み合わせて用いることができる。ゴム配合物は硫黄加硫されるのが好ましい。加硫したポリマー若しくは架橋したポリマーはこの開示の目的のために加硫物として称されよう。
【0045】
アミノAMS化合物を加硫性ゴム組成物及びタイヤ構成物品において用いた場合、本発明によれば、配合中及びさらなる処理中にVOCとして放出されるアルコールの量は、実質的にゴム配合物のゼロから約0.1重量%、より好ましくは実質的にゴム配合物のゼロから約0.05重量%である。この点に関し、VOCの量は、米国公開特許第2006/0217473号の段落[0071]に記載された方法に従って測定できる。
【0046】
本発明の加硫性ゴム組成物はタイヤ用のトレッドストックを形成するのに用いることができる。空気入りタイヤは、米国特許出願第5,866,171号、5,876,527号、5,931,211号及び5,971,046号に記載された構造に従って製造でき、かかる開示は参照することにより本願に援用する。また、かかる組成物は、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー、エペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、インナーライナー等、及びこれらの組み合わせ等の他のエラストマー状のタイヤ構成物品を形成するのに用いることができる。
【0047】
理論に束縛されるものではないが、アミノAMS生成物又はアミノco−AMS生成物において得られる制限されたアルコールの量が、これらの化合物をゴム配合物において非常に有用なものにすると考えられ、なぜなら、配合中及びさらなる加工中にアルコールとして放出される潜在VOCのレベルを著しく低減する可能性を有しているからである。また、混合中及び混合後に得られる制限された未反応のアルコキシシラン基の量が、加硫されたゴム配合物及びこれから製造されたタイヤにおけるブリスター度を有利に制限することができると考えられる。さらに、本発明の生成物の使用は、補強剤として用いるシリカの量を著しく増大させることを可能にすると考えられる。
【実施例】
【0048】
次の例では、典型的なアミノ/メルカプタンco−AMS化合物及びゴム配合物並びにこれらを含むタイヤ構成物品の製造方法を示す。しかしながら、他の類似のアミノ/メルカプタンco−AMS化合物が記載した方法に従って調製できるので、かかる例は制限することを意図していない。さらに、記載された方法は単に典型例であって、各種配合処方を含む、アミノ/メルカプタンco−AMS及び他のゴム配合物を製造するための他の好適な方法は、我々の米国仮出願第61/017,932号及び61/018,213号に記載されており、また他のものは、本願に開示され、かつ特許請求の範囲に記載された範囲から外れることなく、当業者によって決定できる。
【0049】
[実施例1]
有機カルボン酸中和反応と強カチオン性樹脂触媒とを用いるアミノ/メルカプタンco−AMSの調製。特に、30モル%のメルカプトプロピルシランを用いるco−AMSの調製、及びDowex 50WX2-100E強カチオン性樹脂触媒の使用。
【0050】
強カチオン性樹脂触媒をアミノアルキレンシラン、メルカプトプロピルシラン及び弱カルボン酸を含有するco−AMSの調製に用いた。かかるco−AMS生成物をアルコール水溶液中で不溶性カチオン性樹脂からろ過することによって容易に得た。水の添加とアルコール溶媒の蒸留によって、水を用いたほぼすべてのアルコールの交換を迅速に行って、選択された濃度で所望の安定した水溶液を得ることができる。反応後、回収された強カチオン性樹脂触媒は次の合成反応の再利用に用いることができた。
【0051】
250mLエルレンマイヤーフラスコに、15.76g(71.0mmol)の3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、5.97g(30.4mmol)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、77.95g(101.9mL)の無水エタノール、8.68g(65.1mmol)の酢酸(1.07当量/アミン)及び11.97g(664mmol)の蒸留水を添加した。この溶液に1.75gの洗浄水、及び乾燥Dowex 50WX2-100E(7.07mmolの酸)強カチオン性ポリスチレン樹脂(TGAにより15.9%の水を含有し、2%のジビニルベンゼンで架橋された、100メッシュ抽出粒子)を添加した。
【0052】
24時間攪拌した後、該溶液は依然として透明であり、Dowex樹脂をガラスろ過器媒体を通したろ過によって分離した。アセテートとしての生成物を加熱及び窒素パージによる溶媒の蒸発によって回収して、乾燥後に24.00g(塩基準で102%)の粘着性の粘稠なオイルを得た。回収されたDowex樹脂は、1.89gの重さであり、樹脂の回収総量に対し22.1%の水を含有していた。アミノ/メルカプトco−AMSの潜在アルコール濃度は2.94%であった。
【0053】
34重量%の水を含むアミノ/メルカプタンco−AMSと66重量%のアミノシランのジアセタート塩との溶液を、溶液として、或いは補強性又は非補強性充填剤に担持させて、ゴム組成物に用いた。24.8重量%の酢酸の存在は、水性生成物のpHを5.45に調整した。また該溶液は、固体カチオン性交換樹脂触媒としてDowex 50X2-200Eを用いて30.1mol%の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び69.9mol%のN−[(3−トリメトキシシリル)−プロピル]エチレンジアミンの加水分解及び縮合によって調製した41.1重量%のco−AMSを含有していた。
【0054】
また粘着性の粘稠なオイルは、標準的な混合手段によりゴムストック中に良好に分散することがわかった。しかしながらある場合には、操作性を向上させるために、5.0gの部分を、21gのエタノール中に5.0gのN339カーボンブラックを懸濁させた液に添加した。溶解した後、カーボンブラックに担持された乾燥混合物を加熱及び窒素パージによって単離して、カーボンブラック上のAMSが50/50の不粘着性混合物を得た。これはゴムストック処方中に容易にAMSを取り込む配合添加剤として効果的であった。潜在アルコールは元のAMSと1/1のカーボンブラック担持混合物基準で測定し、各々エタノール含量2.94%と1.69%であった。
【0055】
[実施例2]
シリカ充填ゴムにおけるアミノ/メルカプタンco−AMSの使用
【0056】
実施例1で得られたアミノ/メルカプタンco−AMSの溶液を、表1に示すカーボンブラック及びシリカ充填スチレン−ブタジエン(SBR)トレッド処方中で評価した。全ての成分をゴム100部当たりの部(phr)で記載する。マスターバッチ(MB)は、エラストマー、老化防止剤、ワックス、アミノ/メルカプタンco−AMS、並びにシリカ及び/又はAMSの総量或いはシリカ及び/又はAMSのいずれかの総量の3分の2のどちらかを含有していた。目標落下混合温度は153℃であった。シリカ及び/又はAMSの残余を153℃の目標落下混合温度でリミル(RM1)中に添加した。追加のリミル(RM2)を用い、所望により、145℃まで混合して該混合物をさらに均質にした。酸化亜鉛、硫黄及び促進剤を110℃の落下混合温度で最終バッチ中に添加した。配合された最終ストックの全てをシート状にし、次いで171℃で15分間熱処理した。
【0057】
4つの試験ゴムストック(ストック2−5)及び1つのコントロールゴムストック(ストック1)を配合した。5つのストックの各々に添加したアミノ/メルカプタンco−AMSの量を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
* スチレン−ブタジエンゴム(スチレン含量25%、ビニル含量26%、Tg-50℃、37.5phrアロマチックオイル油展)
** スチレン−ブタジエンゴム(ビニル含量60%、スチレン含量20%、Tg-34℃)
*** 信越製オクチルAMS
**** 6−PPD−N−フェニル−N’−ジメチル−ブチル−p−フェニレンジアミン
† CBS=N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
MTBS=2,2−ジベンゾチアゾールジスルフィド(MTBS)
DPG=N,N’−ジフェニルグアニジン
【0060】
【表2】

【0061】
[実施例3]
ゴム配合物の加工性評価
【0062】
グリーンストック(すなわち、加硫前、最終段階後に得られたストック)の加工性は、ムーニー粘度及び加硫特性について確認した。特に、表3に示すように、アルキルAMSを含みアミノ/メルカプタンco−AMSを含まないコントロールストック1と、アルキルAMS及び0.4、0.8、1.2及び1.8phrのアミノ/メルカプタンco−AMS双方を含むゴムストック2,3,4及び5を、配合物ムーニー粘度及びスコーチデータを測定することによって評価した。ムーニー粘度測定は大型ローターを用いて130℃で実施した。ムーニー粘度はローターが4分間回転した際のトルクとして記録した。ローターが始動する前に試料を130℃で1分間予備加熱した。モンサントレオメーターMD2000をストックの硬化プロセスを確認するのに用いた。周波数は1.67Hzであり、160℃の歪みは7%であった。Ts2、T50及びT90はこれらの測定から得られ、各々硬化プロセス中のトルク全増加量の2%、50%及び90%までトルクが上昇した際の時間を示す。これらの測定は、加硫処理中における粘度(Ts2)及び加硫速度(T90)がどのくらい高くなるかを予測するのに用いた。T5はムーニースコーチ測定中に5ムーニー単位増加させるのに必要な時間である。これは、モールドの充填、押出等の処理中にどのくらい速く配合物粘度が上昇するかを予測するための指標として使用されている。配合物ムーニー(ML)及び硬化特性の結果を表3に示す。アミノ/メルカプタンco−AMSを含有するゴムストック2−5の全てがco−AMSを含有しないコントロールゴムストックと同程度のML及び硬化特性を示した。
【0063】
【表3】

【0064】
[実施例4]
ゴム配合物の粘弾性及び機械特性の評価
【0065】
1. 結合ゴム含量
配合されたストック中における充填剤粒子に結合したポリマーの割合を測定して、ゴムストックを結合ゴム含量について評価した。未硬化の配合ストックの小片を大過剰の良好な溶媒(トルエン)に3日間浸すことによって、結合ゴムを測定した。溶解性のゴムは溶媒によって試料から抽出した。3日後、過剰なトルエンを排出し、試料を大気中で乾燥させ、次いで約100℃のオーブンで重量が一定になるまで乾燥させた。残存しているゴム片が、充填剤と元のゴムの一部とを含有する弱粘着性ゲルを形成した。充填剤とともに残存したゴムの量が結合ゴムであった。結合ゴム含量は次式に従って計算した。
【数1】

【0066】
式中、Wdは乾燥させたゲルの重量、Fはゲル又は溶媒不溶性物質中の充填剤の重量(元の試料中の充填剤の重量と同じ)、及びRは元の試料中のポリマーの重量である。表4に示す結果は、アミノ/メルカプタンco−AMSを含有するゴムストック2−5の各々が、コントロールストック1よりも約10%〜約28%高い結合ゴム含量を有していたことを明らかにした。さらに、co−AMS含有ストックにおける結合ゴム含量の増加は、表3に記載した配合物MLを増加させることなく起こった。従って、アミノ/メルカプタンco−AMSが、加工特性を損なうことなく、シリカ充填ゴムを補強するための優れたカップリング機構をもたらしたことは明らかである。
【0067】
【表4】

【0068】
2. 動的粘弾性機械特性
動的粘弾性機械特性は、-100℃〜-20℃の範囲の温度で歪み0.5%、並びに-20℃〜100℃の範囲の温度で歪み2%を用い、31.4ラジアン/秒の周波数で実施した温度分散試験から得た。また50℃でのtanδのデータは、2%の歪み基準での歪み分散測定から得た。3.14ラジアン/秒の周波数は、0.25%〜14.75%で歪みを掃引して50℃及び0℃で実施した歪み分散用に用いた。配合物の貯蔵中及び硬化中の充填剤形態の安定化度は、配合後の充填剤凝集度(ペイン効果、ΔG’)によって測定した。
【0069】
他の粘弾性特性は、動的圧縮試験及び反発試験を用いることにより測定した。動的圧縮試験で用いた試料形状は、直径9.5mm、長さ15.6mmの円筒状ボタンである。かかる試料を試験する前に2kgの静荷重下で圧縮した。これが平衡段階に到達した後、かかる試験を1.25kgの動的圧縮荷重、1Hzの周波数で開始した。次いで、試料を動的に圧縮し、続いて伸長して、得られた位置ずれ及びヒステリシス(tanδ)を記録した。
【0070】
非常に基本的な動的試験として、ズウィック反発弾性試験機で反発弾性を測定した。試験片は半サイクル変形させた。かかる試験片形状は、直径38.1mm、厚さ1.91mmの円形であった。衝撃後の跳ね返りがない圧子で試験片に衝撃を与えて、試料を変形させた。衝撃前後の機械的エネルギーの比として、反発弾性を定義する。試験前に、試験片を30分間予備加熱した。
【0071】
英国式スキッド試験機(BPST)を用いて、ゴムのウェットトラクションを評価した。BPSTの詳細はASTM E−303、Vol.04.03.に記載されている。これは試験片を振り子アームの基盤に取り付け、振り子の揺動中に試験片が反対の表面に接触する携帯用装置である。加重された振り子のヘッドは、振り子アーム上を垂直に自由に移動するので、揺動振幅は舗装道路表面に対するゴムの摩擦によって決定される。表面に接触した後に振り子が振り上がる振幅が小さくなるほど(試験機の目盛りではより大きな値が記録される)、表面に対するゴムの摩擦が大きくなる。この装置は、ゴムのウェットトラクションを試験するのに非常に適している。
【0072】
【表5】

【0073】
結果を表5に示す。アルキルAMSを含有するコントロールストック1と比べて、アルキルAMS及びアミノ/メルカプタンco−AMS双方を含有するストック2−5は、配合後の充填剤凝集度として測定される、配合物の貯蔵中及び硬化中における充填剤形態のより優れた安定化度を示す極めてより低いΔG’値を有する。またかかるゴムストック2−5は、-20°CでのG’の値がより低く、50°Ctanδの値がより低く、並びに0°Ctanδ及びウェットトラクションの値が同程度であった。これは非常に有用であり、なぜなら50°Ctanδ値は転がり抵抗を予測するのに用いられ、また-20°CでのG’及び0°Ctanδは、各々スノートラクション及びウェットトラクションを予測するのに用いられるからである。全てのストックのBPSTデータは同程度であり、ウェットトラクションが同等であることを示唆している。従って、co−AMS含有ストックは、co−AMSを含有しないゴムストックと比較した場合、より良好な転がり抵抗とともにより良好なスノートラクションを有するが、同等のウェットトラクションを有すると予測される。また転がり抵抗の予測は、表4に示す反発試験データによって裏付けられる。
【0074】
3. 引張り機械特性
引張り機械特性は、ASTM−D 412の25に記載の標準的な手順を用いて測定した。試験片は、厚さ2.5mm、内径44mm、外径57.5mmの刻み目を付けた丸いリングであった。25.4mmの特定のゲージ長を引張り試験で使用した。
【0075】
【表6】

【0076】
表6に示すように、アミノ/メルカプタンco−AMS含有ストックはコントロールストックよりもより良好な機械特性を示した。特に、M50モジュラス及び破断時の伸長はほぼコントロールと同じであるが、M300モジュラス、破断時の引張り強度及びタフネスにおいて著しい向上が見られた。
【0077】
上述したデータから理解できるように、アミノ/メルカプタンco−AMSを含有するゴムストックは、配合物ムーニー粘度が上昇することなく、向上したポリマー−充填剤相互作用(より高い結合ゴム含量)を有している。それ故に、これらのストックは加工性を低減させることなくシリカ補強を増大させている。さらに、これらゴムストックの向上した動的粘弾性及び機械特性から、これらのゴムストックから製造されるトレッド配合物が、より良好な転がり抵抗と同等のウェットトラクションとともに向上したスノートラクションを有し、その結果、タイヤ性能における全般的な改良点を有することが予測される。従って、アルキルAMS及びアミノ/メルカプタンco−AMS双方を含有するゴムストックは、アルキルAMSを含有するコントロールストックに対して著しく改良されている。
【0078】
好適な態様を参照しつつ本発明を説明したが、開示された特定の形態に本発明を制限することを意図していないことを理解すべきである。逆に、本発明が特許請求の範囲内に収まる全ての変更及び代替形態に及ぶことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エラストマー、
(b)シリカ、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選ばれる補強性充填剤、
(c)式:
【化1】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を表し、zはゼロではなく、またw、x又はyの少なくとも1つは存在しなければならず、かつw+x+y+z=1.00であり、
1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはR6Zからなる群より選ばれ、ここでZはNH2、HNR7及びNR72からなる群より選ばれ、
残余のR1、R2、R3又はR4は同じであるか若しくは異なっており、(i)H又は炭素数1〜20のアルキル基、(ii)炭素数3〜20のシクロアルキル基、(iii)炭素数7〜20のアルキルアリール基、(iv)R6X(ここでXはCl、Br、SH、Sa7、NR72、OR7、CO2H、SCOR7、CO27、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜8である)、及び(v)R6YR8X(ここでYはO、S、NH及びNR7からなる群より選ばれる)からなる群より選ばれ、
6及びR8は、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
5及びR7は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、及び炭素数7〜20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS、これらの混合物、並びに約3.5〜約6.5のpKaを有する弱酸で中和された固体及びその水溶液からなる群より選ばれる1種もしくはそれ以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)、並びに
(d)硬化剤
を含むことを特徴とする加硫性ゴム組成物。
【請求項2】
前記R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが、メルカプトアルキル基及びブロック化メルカプトアルキル基からなる群より選ばれる請求項1に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項3】
配合中及びさらなる処理中におけるVOCの量が、ゴム配合物中で実質的に0〜約0.1重量%である請求項1に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項4】
配合中及びさらなる処理中におけるVOCとして放出されるアルコールの量が、ゴム配合物中で実質的に0〜約0.1重量%である請求項1に記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項5】
(a)エラストマー、
(b)シリカ、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選ばれる補強性充填剤、
(c)式:
【化2】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を表し、zはゼロではなく、またw、x又はyの少なくとも1つは存在しなければならず、かつw+x+y+z=1.00であり、
1、R2、R3及びR4の少なくとも1つはR6Zからなる群より選ばれ、ここでZはNH2、HNR7及びNR72からなる群より選ばれ、
残余のR1、R2、R3又はR4は同じであるか若しくは異なっており、(i)H又は炭素数1〜約20のアルキル基、(ii)炭素数3〜約20のシクロアルキル基、(iii)炭素数7〜20のアルキルアリール基、(iv)R6X(ここでXはCl、Br、SH、Sa7、NR72、OR7、CO2H、SCOR7、CO27、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜8である)、及び(v)R6YR8X(ここでYはO、S、NH及びNR7からなる群より選ばれる)からなる群より選ばれ、
6及びR8は、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
5及びR7は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、及び炭素数7〜20のアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロック化メルカプタンco−AMS、これらの混合物、並びに約3.5〜約6.5のpKaを有する弱酸で中和された固体及びその水溶液からなる群より選ばれる1種もしくはそれ以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)、並びに
(d)硬化剤
を含む加硫性ゴム組成物から製造された加硫されたゴム配合物を含む少なくとも1つの構成物品を含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ構成物品が、トレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキン、ビードフィラー、エペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、インナーライナー、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる請求項5に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−59411(P2010−59411A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−182924(P2009−182924)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】