説明

シリコン再生装置、シリコン再生方法

【課題】廃スラリーから簡易に多くのシリコンを回収することができるシリコン再生装置を提供する。
【解決手段】本発明のシリコン再生装置は、砥粒とクーラントを含むスラリーを使用してシリコンを切断する切断装置又は研磨する研磨装置から排出された廃スラリー、又は前記廃スラリーが濃縮された廃スラリー濃縮分を固液分離してシリコン回収用固形分を取得する固液分離部と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄部と、洗浄後の前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンウエハの製造工程等に使用された廃スラリーから、シリコン含有率の高い再生シリコンを得るためのシリコン再生装置及びシリコン再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップや太陽電池用として広く用いられるシリコン単結晶又は多結晶からなる薄板(以下、「シリコンウエハ」と呼ぶ。)の製造工程において、原料シリコンの約60%が切断、面取り又は研磨等により廃液中に廃棄されており、製品に対するコスト負荷ならびに廃棄処分(この廃液は濃縮処理や一部材料の回収の後、埋め立て処分されるのが一般的である)に伴う環境への負荷が大きな問題となっている。
【0003】
また、特に近年、太陽電池の生産量は増加の一途をたどっており、原料シリコンの需要も急激な伸びが見られる。このため太陽電池用シリコンの不足が顕在化している。
【0004】
そこで従来、上記の切断又は研磨といったシリコンウエハの製造時に発生する廃液からシリコンを回収する方法が提案されてきた。
【0005】
例えば特許文献1においては、砥粒をクーラントに分散させたスラリーを用いてシリコン単結晶又は多結晶のインゴットを切断又は研磨する処理から排出される廃スラリーから固形分を回収し、回収した固形分に対して、クーラント等を除去するための有機溶剤洗浄、有機溶剤を洗い流すための水洗浄、廃スラリーに含まれていた金属(鉄、銅など)を酸水溶液(フッ酸水溶液など)に溶解させて除去するための酸洗浄、酸水溶液を洗い流すための水洗浄等が行われている。
【特許文献1】特開2001−278612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すように、従来、廃スラリーからシリコンを回収するには、非常に多くの工程が必要とされてきた。
また、上記のようにシリコンは、貴重な材料であり、廃スラリーから簡易に多くのシリコンを回収することが望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、廃スラリーから簡易に多くのシリコンを回収することができるシリコン再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシリコン再生装置は、砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入された廃スラリー又はその濃縮分を固液分離してシリコン屑を含有するシリコン回収用固形分を取得する固液分離部と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部からの前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級部とを備える。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の方法に含まれる酸洗浄工程や水洗浄工程は、以下の示す理由によって、シリコン回収率を下げ、かつシリコン回収のための工程数や設備を増大させるという欠点を有していることを見出した。
(1)廃スラリーから回収した固形分に含まれるシリコンの大部分は微粒子状(例えば、♯800以下の砥粒を使用した場合には、シリコンは、粒子径1μm以上10μm以下の微粒子とそれらの凝集物となる)であるために反応性が高く、酸水溶液に一部(条件によっては大部分)が溶解する。このため、シリコンの回収率が低下してしまう。
(2)水洗工程(例えば、酸洗浄後には必須と考えられる)においても、これら微粒子状シリコンの表面には水との反応により二酸化シリコンが生成し、シリコンの回収率の低下の原因となる。また、再度還元するためにはシリコン回収タクト(還元反応時間)やシリコン回収コストの増加を引き起こす。
(3)フッ酸などの酸水溶液を用いて二酸化シリコン及び金属を溶解、除去するためは、酸性気体や発生気体(水素ガス)の回収や洗浄後の酸溶液の処理、廃棄等が必要なために大規模な設備が必要となり、これもシリコン回収コストの増加を引き起こす。
【0010】
本発明者らは、以上の知見に基づき、水又は酸水溶液を用いてシリコン回収用固形分を洗浄するのではなく、有機溶媒を用いてシリコン回収用固形分を洗浄することによって、シリコン回収率の低減を防止し、かつシリコン回収のための工程や設備を簡素化することができることを見出し、本発明の完成に到った。
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0012】
好ましくは、前記固液分離部、前記洗浄部及び前記分級部は、前記シリコン回収用固形分又は前記シリコン含有粉体が、水、酸水溶液又はこれらの少なくとも一方を主成分とする溶液に接触しないように構成されている。この場合、シリコン回収用固形分又はシリコン含有粉体と水及び/又は酸水溶液との接触が回避され、シリコン回収率の低減をより確実に防止することができる。
【0013】
好ましくは、前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入する金属屑を含み、前記分級部は、分級前よりも金属の含有率が高められた金属含有粉体を取り除く。この場合、シリコン含有粉体に含まれる金属の割合を低減することができる。
【0014】
好ましくは、前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入する強磁性体の金属屑を含み、磁場を用いて前記金属屑を除去する金属屑除去部をさらに備える。この場合、シリコン含有粉体に含まれる金属の割合を低減することができる。
【0015】
好ましくは、シリコン含有粉体を加圧して造粒する成形部をさらに備える。造粒によって、(1)取り扱いが容易になり、(2)粒子間の熱伝導性が向上するという利点がある。
【0016】
好ましくは、造粒前又は造粒後のシリコン含有粉体をシリコンの融点より低い温度で焼成した後にシリコンの融点以上の温度で溶融する加熱部をさらに備える。この場合、低温での焼成によって有機物残渣を除去し、その後、シリコン含有粉体を高温で溶融させることができる。
【0017】
好ましくは、シリコン含有粉体が溶融されて得られるシリコン含有溶融体中に含まれる不純物を除去する精製部をさらに備える。この場合、得られる再生シリコンの不純物濃度を低減することができる。
【0018】
本発明は、砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入された廃スラリー又はその濃縮分を固液分離してシリコン屑を含有するシリコン回収用固形分を取得する固液分離工程と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程からの前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級工程とを備えるシリコン再生方法も提供する。
【0019】
好ましくは、前記固液分離工程、前記洗浄工程及び前記分級工程は、前記シリコン回収用固形分又は前記シリコン含有粉体が、水、酸水溶液又はこれらの少なくとも一方を主成分とする溶液に接触しないように行われる。
【0020】
好ましくは、前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入する金属屑を含み、前記分級工程は、分級前よりも金属の含有率が高められた金属含有粉体を取り除くように行われる。
【0021】
好ましくは、前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入する強磁性体の金属屑を含み、磁場を用いて前記金属屑を除去する金属屑除去工程をさらに備える。
【0022】
好ましくは、シリコン含有粉体を加圧して造粒する成形工程をさらに備える。
【0023】
好ましくは、造粒前又は造粒後のシリコン含有粉体をシリコンの融点より低い温度で焼成した後にシリコンの融点以上の温度で溶融する加熱工程をさらに備える。
【0024】
好ましくは、シリコン含有粉体が加熱工程で溶融されて得られるシリコン含有溶融体中に含まれる不純物を除去する精製工程をさらに備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下,本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0026】
1.第1実施形態
図1を用いて、本発明の第1実施形態のシリコン再生装置について説明する。図1は、本実施形態のシリコン再生装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
本発明のシリコン再生装置は、砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入された廃スラリー又はその濃縮分を固液分離してシリコン屑を含有するシリコン回収用固形分を取得する固液分離部1と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄部3と、前記洗浄部からの前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級部5とを備える。
【0028】
また、本実施形態のシリコン再生装置は、乾燥及び粉砕部7、金属屑除去部9、成形部11、加熱部13及び精製部15のうちの1つ以上を必要に応じて備える。精製部15の代わりに固化部17を備えてもよい。
【0029】
以下、各構成要素について説明する。
【0030】
1−1.固液分離部
固液分離部1は、廃スラリーを固液分離してシリコン回収用固形分を取得する。
【0031】
(1)廃スラリー
まず、廃スラリーについて説明する。
廃スラリーとは、砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入されたものである。本実施形態のシリコン再生装置は、廃スラリーに混入されたシリコン屑を回収し、再生シリコンとするためのものである。シリコン塊は、シリコンの塊であり、例えば、シリコンインゴットである。シリコン塊の形状は、特に限定されないが、一例では、円柱状や四角柱状である。
【0032】
シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨は、切断装置又は研磨装置を用いて行われ、この切断装置又は研磨装置から排出される使用済みのスラリーが廃スラリーである。
切断装置の一例は、シリコンインゴットの切断装置として広く用いられているマルチワイヤソー装置(以下、「MWS」と呼ぶ。)である。MWSとは一般に、複数のローラ間にワイヤを架け渡して巻き付け、砥粒とクーラントを含むスラリーをワイヤに供給しつつ走行させ、このワイヤに被切断物を押し付けて切断する切断装置のことである。このようなMWSを用いてシリコンインゴットを切断すると、スラリー中にシリコンの切断屑、破砕された砥粒及び破砕されなかった砥粒、さらにはワイヤの摩耗片である金属屑などが混入することになる。
【0033】
MWSでは、スラリーは、通常、繰り返し使用されるが、使用につれてスラリーに含まれるシリコンなどの比率が高くなる。これらの比率が高くなると(例えばスラリー中のシリコン比率が5wt%以上になると)、シリコンウエハに厚みムラ(TTVと表記されることが多い)や反りなどの不良が起こったり、ワイヤの断線が発生したりするなど、種々の問題が起きることが知られている。このため、適宜、スラリーの一部又は全部が廃スラリーとしてMWSの外に排出され、新しいスラリーがMWSに供給される。このMWSの外に排出された廃スラリーが、本実施形態のシリコン再生装置によって処理される。
【0034】
ここでスラリーの構成及び組成について説明する。スラリーは,砥粒とそれを分散するクーラントとからなる。砥粒は,その種類は限定されず,例えば,SiC,ダイヤモンド,CBN,アルミナなどからなる。クーラントは、その種類は限定されず、例えば、油性クーラント(鉱油をベースとしたオイル)や、水性クーラント(水をベースとしてグリコール系溶媒(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、界面活性剤、有機酸などが添加されたもの)であってもよい。クーラントは、エチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどの有機溶媒(水溶性有機溶媒)を主成分とし、ここに有機酸、ベントナイトなどの添加物を10wt%以下(好ましくは3wt%以下)添加したものであってもよい。なお、ここでいう「有機溶媒を主成分とする」とは、例えばクーラント中に20wt%以下(好ましくは15wt%以下)の水分が含まれていても良いことを意味している。
【0035】
(2)固液分離部の構成と、固液分離部による固液分離方法
次に、固液分離部1の構成と、固液分離部1による固液分離方法について説明する。
固液分離部1の構成は、廃スラリーを固液分離してシリコン回収用固形分を取得することが可能な構成であれば特に限定されず、固液分離部1は、例えば、遠心分離機、濾過装置又は蒸留装置などの固液分離装置を単独で又はこれらを2つ以上直列に組み合わせて構成される。組合せの具体例としては、(1)遠心分離機と蒸留装置、(2)遠心分離機と濾過装置又は(3)濾過装置と蒸留装置などである。(1)〜(3)において、遠心分離機、濾過装置又は蒸留装置は、それぞれ2つ以上含まれていてもよい。各固液分離部は、分離後の液分と固形分の何れを次の固液分離装置に送ってもよく、液分の一部と固形分の混合物又は固形分の一部と液分の混合物を次の固液分離装置に送ってもよい。
【0036】
ここで、図2及び3を用いて、固液分離部1の構成例について説明する。図2及び3は、それぞれ、固液分離部1の構成を示すブロック図である。
【0037】
(a)第1構成例
図2を用いて固液分離部1の第1構成例について説明する。本構成例の固液分離部1は、一次遠心分離機19と、二次遠心分離機21と、蒸留装置23とを備えている。
【0038】
一次遠心分離機19は、一次遠心分離により廃スラリーを一次液分と一次固形分に分離する。一次遠心分離は、比較的低速で行われ、例えば100G以上1000G以下で行われる。一次固形分は、砥粒が主成分となるので、洗浄、乾燥などの後、再生砥粒としてMWS等にて再利用できる。一次液分は、二次遠心分離機21に送られる。なお、一次液分は、二次遠心分離機21に送る代わりに、蒸留装置23に直接送ってもよい。この場合、二次遠心分離機21は、省略可能である。
【0039】
二次遠心分離機21は、二次遠心分離により一次液分を二次液分と二次固形分に分離する。二次遠心分離は、比較的高速で行われ、例えば2000G以上5000G以下で行われる。二次固形分には、主にシリコンが含まれ、一次遠心分離で分離できなかった砥粒も含まれている。二次固形分は、廃棄してもよく、後述する第2構成例のように一部又は全部をシリコン再生のために使用してもよい。二次液分中には、シリコンが多く含まれているので、二次液分を蒸留することによりシリコンを多く含むシリコン回収用固形分を得ることができる。二次液分は、蒸留装置23に送られる。なお、二次液分の代わりに二次固形分を蒸留装置23に送ってもよい。また、二次液分の一部と二次固形分を混合したものや、二次固形分の一部と二次液分とを混合したものを蒸留装置23に送ってもよい。
【0040】
蒸留装置23は、蒸留により二次液分を蒸留液分と蒸留固形分とに分離する。蒸留は、減圧下(例えば、5Torr以上20Torr以下)で行うことが好ましい。減圧により液体の沸点が下がるため、比較的低温及び/又は高速での蒸留が可能になるからである。なお、蒸留液分は、そのまま(蒸留クーラント)又は別途再生処理を施して再生クーラントとしてMWS等にて再利用できる。蒸留固形分は、シリコン回収用固形分として、洗浄部3に送られる。
【0041】
(b)第2構成例
図3を用いて固液分離部1の第2構成例について説明する。本構成例の固液分離部1は、一次遠心分離機19と、二次遠心分離機21と、第1蒸留装置23aと、第2蒸留装置23bとを備えている。
【0042】
一次遠心分離機19については、第1構成例での説明がそのまま当てはまる。
【0043】
二次遠心分離機21についても、第1構成例と類似しているが、本構成例では、二次固形分の一部又は全部が、後述する第1蒸留装置23aからの蒸留固形分と共に、第2蒸留装置23bに送られる点が異なっている。
【0044】
第1蒸留装置23aは、第1構成例の蒸留装置23と類似しているが、第1蒸留装置23aからの蒸留固形分は、シリコン回収用固形分として取り出される代わりに、第2蒸留装置23bに送られる。二次固形分の一部又は全部と第1蒸留装置23aからの蒸留固形分は、混合された後に第2蒸留装置23bに送られるか、第2蒸留装置23b内において混合される。
【0045】
第2蒸留装置23bは、蒸留の対象が異なる点を除いては、第1構成例の蒸留装置23と同じである。なお、ここでは、2つの蒸留装置を用いて2度の蒸留を行う例を示したが、1つの蒸留装置を用いて2度の蒸留を行ってもよい。この場合、第2蒸留装置23bは、省略され、二次固形分の一部又は全部と第1蒸留装置23aからの蒸留固形分は、再度、第1蒸留装置23aに送られて再度蒸留される。
【0046】
1−2.洗浄部
次に、洗浄部3について説明する。洗浄部3は、有機溶媒を用いてシリコン回収用固形分を洗浄する。シリコン回収用固形分には、通常、グリコール系溶媒や添加物などの、クーラント由来の残留有機物(以下、「残留クーラント」と呼ぶ。)が5wt%〜20wt%程度含まれており、そのままでは再生シリコンの純度を下げる原因となる。また、残留有機物は、加熱部13によってシリコン含有粉体が溶融される際にSiCを形成し、溶融シリコンが固化されて形成されるシリコンインゴット中に不要なSiCを発生させる原因になる。そこで、残留クーラント濃度を低下させるために、シリコン回収用固形分の洗浄が行われる。
使用する有機溶媒は、クーラントに対し相溶性を有するものが好ましい。この場合、残留クーラントが有機溶媒中に抽出されやすいからである。有機溶媒は、例えば,炭素数が1〜6(好ましくは,1,2,3,4,5及び6の何れか2つの間の範囲)のアルコール又はケトンである。このようなアルコールの具体例としては,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどが挙げられる。このようなケトンの具体例としては,アセトンやメチルエチルケトンが挙げられる。有機溶媒は,複数種類の有機溶媒の混合物であってもよい。また、有機溶媒は、クーラントよりも沸点が低いものが好ましい。具体的には、有機溶媒は,クーラントよりも,沸点が50℃以上(好ましくは,60℃,70℃,80℃,90℃又は100℃以上)低いものが好ましい。有機溶媒は、通常、後工程で蒸発させて除去するが、沸点が低いものであれば、蒸発され易いからである。
【0047】
洗浄部3に用いる装置は、シリコン回収用固形分中の残留クーラントを有機溶媒に抽出して除去できるものであれば、その構成は限定されず、例えば、シリコン回収用固形分と有機溶媒とを混合し、振動、回転又は攪拌などによりシリコン回収用固形分中の残留有機物の少なくとも一部を有機溶媒中に抽出し、この有機溶媒を除去する機能を有する装置が採用可能である。有機溶媒の除去は、例えば遠心分離や濾過によって行うことができる。従って、洗浄部3は、例えば、容器中に投入したシリコン回収用固形分と有機溶媒との混合物を攪拌する攪拌羽根などを有する攪拌装置と、攪拌された混合物から有機溶媒を除去する遠心分離機又は濾過装置とで構成される。
【0048】
1−3.乾燥及び粉砕部
次に、乾燥及び粉砕部7について説明する。乾燥及び粉砕部7は、洗浄後のシリコン回収用固形分に残留している有機溶媒を除去すると共に、シリコン回収用固形分を粉砕する機能を有する。乾燥と粉砕は、同時に行ってもよく、乾燥を行ってから粉砕を行ってもよく、その逆であってもよい。シリコン回収用固形分の乾燥は、例えば、シリコン回収用固形分を加熱するか、シリコン回収用固形分の周囲雰囲気を減圧することによって行うことができる。シリコン回収用固形分の粉砕は、粉砕羽根を用いた粉砕装置、ボールミル、ジェットミル、振動真空乾燥機などの公知の装置を用いて行うことができる。
【0049】
シリコン回収用固形分は、自然乾燥させてもよく、また、後述する分級装置5による分級の際に乾燥させてもよいので、シリコン回収用固形分の乾燥は、省略することができる。また、シリコン回収用固形分は、例えばサイクロン装置のような分級装置5による分級の際に粉砕してもよいので、シリコン回収用固形分の粉砕は、省略することができる。従って、乾燥及び粉砕部7は、乾燥部であってもよく、粉砕部であってもよく、省略することもできる。
【0050】
1−4.分級部
次に、分級部5について説明する。分級部5は、洗浄後のシリコン回収用固形分に対して分級を行う。分級の目的の1つは、分級前のよりも、砥粒の含有率が低減され、かつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得することである。分級とは、粒径や密度などの粒子パラメータに基づいて粒子を分別する方法である。分級部5は、篩、慣性分級装置又は遠心分級装置などで構成することができる。
【0051】
シリコン回収用固形分に対して分級を行うと、シリコン、砥粒及び金属の含有率は、それぞれ、粒子パラメータの値に依存して変化する。
例えば、粒子パラメータが粒径である場合、シリコン含有率は、粒径に依存して変化する(一例では、粒径5μmまでは粒径が大きくなるに伴ってシリコン含有率も大きくなり、粒径5μmでシリコン含有率が最大になって、それ以降は、粒径が大きくなるにつれてシリコン含有率が小さくなる。)。粒径がある所定範囲(例えば、1μm以上10μm未満)である粒子のグループのシリコン含有率は、粒径がこれ以外(例えば、1μm未満又は10μm以上)である粒子のグループよりも高くなり、また、分級前のシリコン回収用固形分よりも高くなる。この場合、前者のグループでは、通常、砥粒の含有率は、後者のグループよりも低くなり、また、分級前のシリコン回収用固形分よりも低くなる。従って、前者のグループを分級部5から取り出すことによって、分級前よりも砥粒の含有率が低減され、かつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得することができる。
【0052】
また、粒径がある所定範囲(例えば、1μm未満、又は0.1μm以上1μm未満)である粒子のグループの金属の含有率は、粒径がこれ以外(例えば、1μm以上)である粒子のグループよりも高くなり、また、分級前のシリコン回収用固形分よりも高くなる。従って、金属の含有率が高いグループを取り除くことによって、シリコン含有粉体の金属の含有率を分級前よりも低くすることができる。
【0053】
なお、本明細書において、「粒径」とは、JIS R1629に準拠した方法で測定したものを意味する。「粒径Xμm未満の粉体」とは、その粉体中の98%の粒子の粒径がXμm未満であるような粉体を意味する。「粒径Yμm以上Zμm未満の粉体」とは、「粒径Zμm未満の粉体」の中から「粒径Yμm未満の粉体」を除いて残った粉体を意味する。
粒子パラメータが粒径以外のものであっても上記説明は同様に当てはまり、分級によって、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得することができる。
【0054】
シリコン含有粉体は、そのまま再生シリコンとして回収してもよく、成形部11に送って造粒させてもよく、加熱部13に送って溶融させてもよい。
【0055】
ここで、分級の具体例について説明する。
(1)2種類の粉体に分離
この例では、シリコン回収用固形分を第1粒径範囲を有しシリコンを主成分とする第1粉体と第2粒径範囲を有し第1粉体よりも砥粒の含有率が高い第2粉体とに分離する。
例えば、砥粒として粒径10μm以上30μm以下のSiCを用いた場合、分級により得られる0.1μm以上10μm未満の粒径範囲をもつ第1粉体はシリコンを主成分とし、10μm以上30μm以下の粒径範囲をもつ第2粉体は、第1粉体よりも砥粒の含有率が高くなることが分かる。第2粉体は、砥粒の再生に利用することができる。
【0056】
(2)3種類の粉体に分離
この例では、シリコン回収用固形分を第3粒径範囲を有しシリコンを主成分とする第3粉体と、第4の粒径範囲を有し第3粉体よりも砥粒の含有率が高い第4粉体と、第5の粒径範囲を持ち第3粉体よりも金属の含有率が高い第5粉体とに分離する。
ワイヤに由来する金属屑(鉄を主成分として含む)の多くは、1μmより小さな粒径を持つ。よって分級によって得られる、例えば1μm以上10μm未満の粒径範囲をもつ第3粉体はシリコンを主成分とし、10μm以上30μm未満の粒径範囲をもつ第4粉体は、第3粉体よりも砥粒の含有率が高くなり、0.1μm以上1μm未満の粒径を持つ第5粉体は、第3粉体よりも金属の含有率が高くなることが分かる。第4粉体は、砥粒の再生に利用することができる。
【0057】
このように3種類以上の粉体への分級を行い、金属の含有率が多い粉体(上記例では第5粉体)を取り除くことにより、従来のように硫酸、硝酸などの酸水溶液を用いて金属を除去することなく、ワイヤ由来の金属の混入を抑制した再生シリコンを得ることができる。
【0058】
1−5.金属屑除去部
次に、金属屑除去部9について説明する。金属屑除去部9は、磁場を用いて、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に廃スラリーに混入する(例えば、シリコン切断用ワイヤに由来する)強磁性体の金属(例えば、鉄)屑を除去する機能を有する。金属屑は、シリコン又はSiCが付着した状態で除去されることもある。金属屑除去部9は、例えば、磁石により構成される。
【0059】
金属屑の除去は、洗浄用の有機溶媒中に分散された状態のシリコン回収用固形分、又は粉末状態のシリコン回収用固形分(例えば洗浄部による洗浄後のシリコン回収用固形分、これを粉砕したシリコン回収用固形分)、分級時に気流によって搬送されている粉体、分級後のシリコン含有粉体の何れか1つ又は2つ以上に対して行うことができる。従って、金属屑除去部9は、例えば、洗浄部3、乾燥及び粉砕部7及び分級部5のうちの何れか1つ以上に設けることができる。シリコン回収用固形分等から金属屑を除去することによって、再生シリコン中の金属濃度を低下させることができる。また、MWSに用いられるワイヤにはリンが含まれることが多く、この場合、廃スラリーに混入する金属屑にもリンが含まれることになる。リンは、P型太陽電池作製には不要な成分であるために溶解前に取り除くことが好ましいが、本実施形態によれば、金属屑の除去と共にリンも除去される。
【0060】
1−6.成形部
次に、成形部11について説明する。成形部11は、シリコン含有粉体を加圧して板状、ブロック状、ペレット状などに造粒する機能を有する装置であれば、その構成は、特に限定されない。成形部11には、例えば、プレス加圧型の造粒装置、ローラー加圧式の造粒装置が使用可能である。成型条件は、例えば、室温で、加圧圧力3〜60ton/cm2で行うことができる。また、加圧時に加熱を行っても良い。シリコン含有粉体は、造粒によって、その取り扱いが容易になり、かつ熱伝導がスムーズになって溶融されやすくなる。
【0061】
成形部11によって造粒されたシリコン含有粉体(別の表現では、シリコン含有造粒体)は、そのまま再生シリコンとして回収してもよく、加熱部13に送ってもよい。
【0062】
1−7.加熱部
次に、加熱部13について説明する。加熱部13は、造粒前又は造粒後のシリコン含有粉体を加熱して溶融させる機能を有するものである。加熱部13は、シリコン含有粉体に対して、シリコンの融点(一般に1410℃〜1420℃とされる)以上の加熱と、排気を行うことができ、不活性ガスの導入部を有することが望ましい。
【0063】
また、加熱部13は、以下の2段階の加熱段階を実現できることが好ましい。
【0064】
まず、減圧下(例えば1Torr以下)又は不活性ガス(例えば0.8atmのアルゴンガス)の存在下において、シリコンの融点より低い温度(例えば400℃以上600℃以下)でシリコン含有粉体を焼成し、洗浄によっても取り除くことができなかった微量有機物を除去する。
【0065】
この後、シリコンの融点以上の温度(例えば1800℃)でシリコン含有粉体を加熱し、シリコンを溶融する。この加熱段階は同一装置によって実現できることが好ましいが、焼成段階と溶融段階とを別装置で実現しても構わない。
【0066】
シリコン含有粉体が加熱部13によって溶融されたシリコン含有溶融体は、次に、精製部15又は固化部17に送られる。なお、加熱部13と、精製部15又は固化部17は、単一の装置で構成することができる。この場合、加熱部13によって溶融されたシリコン含有溶融体は、別の装置に送られず、そのまま、精製又は固化される。
【0067】
固化部17は、シリコン含有溶融体を自然冷却又は強制冷却させて固化する機能を有するものであり、これによってシリコン塊が得られる。このシリコン塊は、再生シリコンとして回収することができる。
【0068】
1−8.精製部
次に、精製部15について説明する。精製部15は、シリコン含有粉体が溶融されて得られるシリコン含有溶融体中に含まれる不純物を除去する機能を有する。精製部15は、例えば、従来の多結晶シリコン鋳造時における各種(例えば減圧溶融下におけるリン除去や一方向凝固による偏析不純物の除去など)の公知の精製手法を用いて、不純物の除去を行う。これによって不純物が除去されたシリコン塊が得られる。
【0069】
精製部15によって得られる不純物が除去されたシリコン塊は、そのまま再生シリコンとして回収することができる。
【0070】
2.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態のシリコン再生装置について説明する。本実施形態のシリコン再生装置の構成は、第1実施形態と類似しているが、処理対象が異なっている。第1実施形態では、廃スラリーそのものを対象としていたが、本実施形態では、廃スラリー濃縮分を対象としている。本実施形態の装置の構成は、第1実施形態と基本的に同じであり、第1実施形態で述べた内容は、基本的に、本実施形態についても当てはまる。
【0071】
「廃スラリー濃縮分」とは、本実施形態のシリコン再生装置に投入される前に、廃スラリーが濃縮されて得られるものを意味する。廃スラリー濃縮分は、通常は、泥状又は粘度状であるが、これ以外の状態のものであってもよい。
【0072】
「廃スラリーの濃縮」とは、廃スラリーからクーラントの一部を除去することを意味する。廃スラリーの濃縮方法は、特に限定されず、濾過、遠心分離若しくは蒸留又はこれらの2つ以上を組み合わせた方法などが挙げられる。
【0073】
本実施形態の「廃スラリー濃縮分」の一例は、シリコンインゴットやシリコンウエハを製造する工場(製造後のシリコンウエハから太陽電池やICチップなどを製造する工場を含む)で発生する廃スラリーを濃縮したものである。
【0074】
従来、このような工場で発生する廃スラリーは、濃縮後、主に、埋め立てによる廃棄が行われており、回収ならびに輸送のための設備や方法が確立されていることが多いが、本実施形態のシリコン再生装置は、従来廃棄されていた廃スラリー濃縮分から簡易な方法で再生シリコンを取り出すことができ、これによって、再生シリコンが得られると同時に廃棄物量を減少させることができる。
【0075】
また、廃スラリー濃縮分は、既に濃縮されているので、固液分離装置1は、比較的簡単な構成にすることができる。例えば、固液分離装置1は、単一の蒸留装置で構成することができる。従って、本実施形態によれば、装置構成を簡素化することができる。
【0076】
以上の実施形態で示した種々の特徴は,互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合,そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して,単独で又は組み合わせて,本発明に採用することができる。
【0077】
また、以上の実施形態では、シリコン再生装置を例にとって説明を進めたが、シリコン再生装置についての説明は、基本的に、シリコン再生方法についても当てはまる。
【実施例】
【0078】
本発明のシリコン再生装置及び再生方法の実施例について、具体的な数値を用いて説明する。本実施例は、図1及び図2に示すシリコン再生装置を用いてシリコンの再生を行ったものであり、図1及び図2を参照して説明を進める。
【0079】
本実施例には、プロピレングリコールに15wt%程度の水と砥粒などの分散を容易にする分散剤、pH調整剤としての有機酸などを1wt%程度加えて作製したクーラントに、砥粒を重量比1:1で混合したスラリーを用いたMWSから排出された廃スラリーを使用した。
【0080】
この廃スラリー中にはシリコンからなる切断屑が10wt%〜12wt%程度含まれる。
【0081】
1.シリコン再生方法
まず、シリコン再生方法について説明する。
1−1.固液分離工程
まず、固液分離部1において廃スラリーの固液分離を行ってシリコン回収用固形分を取得した。固液分離部1には、一次遠心分離機19、二次遠心分離機21及び蒸留装置23を含むものを用いた。固液分離は、一次遠心分離、二次遠心分離及び蒸留を組み合わせて行った。以下、詳細に説明する。
(1)一次遠心分離工程
まず、廃スラリーを一次遠心分離機19に投入し、遠心力が500G(比較的低い遠心力であり、一般的には「一次分離」と呼ぶ)になるように一次遠心分離機19を動作させることにより砥粒が主成分の一次固形分(重比重液)とクーラント及び切屑(シリコンを主に含む)が主成分の一次液分(低比重液)に分離した。
【0082】
(2)二次遠心分離工程
次に、一次液分(低比重液)を二次遠心分離機21に投入し、遠心力が3500G(比較的高い遠心力であり、一般的には「二次分離」と呼ぶ)になるように二次遠心分離機21を動作させることによりクーラントが主成分の二次液分及び、切屑と砥粒が主成分の二次固形分に分離した。
ここで、二次液分と二次固形分の成分を以下の表1に示す。なお、本実施例では、500kgの廃スラリーから、80kgの二次液分と100kgの二次固形分が得られた。表1中の数値の単位は、wt%である。
【表1】

【0083】
(3)蒸留工程
次に、二次液分を蒸留装置23に投入し、二次液分に対して、到達真空度10Torr、160℃の蒸留を行うことによりシリコン回収用固形分と再生クーラントを得た。得られたシリコン回収用固形分の成分を以下の表2に示す。
【表2】

【0084】
ここで得られたシリコン回収用固形分は、クーラント由来の残留有機物(プロピレングリコールや有機酸など)が10wt%程度含まれ、これらをバインダーとして凝集していた。この粒径分布を以下の表3に示す。粒径0.001mm未満の粒子の割合は、ほぼ0wt%であった。なお、本実施例において、粒径分布は、堀場製作所製の粒度分布測定装置(型式:LA−300)を用いて測定した。
【表3】

【0085】
1−2.洗浄工程
次に、IPAを用いて、シリコン回収用固形分の洗浄を行った。
具体的には、シリコン回収用固形分を機械的に粉砕し、IPAと共に攪拌した後、遠心分離による固液分離を行った。IPAによる攪拌溶液中にはシリコン回収用固形分に含まれていた金属屑が分散しており、磁力1.4Tの磁石からなる金属屑除去部9を用いて、この攪拌溶液に含まれる強磁性体含有金属屑を取り除いた。
【0086】
1−3.乾燥及び粉砕工程
次に、乾燥及び粉砕部7において、固液分離によって得られた洗浄後のシリコン回収用固形分を80℃で乾燥後、再度機械的に粉砕し、粉体状とした。次に、金属屑除去部9を用いて、粉体状のシリコン回収用固形分に含まれる強磁性体含有金属屑を取り除いた。
【0087】
1−4.分級工程
次に、遠心分級装置からなる分級部5においてシリコン回収用固形分の分級を行って粒径が8μm以上の粉体A、粒径が1μm以上8μm未満の粉体B、粒径1μm未満の粉体Cに分離した。分級は、二段階の遠心分級によって行った。一段目の遠心分級では、粉体Aと、それ以外の粉体とに分離した。二段目の遠心分級では、粉体A以外の粉体を、粉体Bと、粉体Cとに分離した。
【0088】
後述する関連実験に関する表5から明らかなように、粉体Bは、シリコンの含有率が、粉体Aや粉体Cよりも高い。粉体Aは、SiCからなる砥粒の含有率が粉体Bや粉体Cよりも高い。粉体Cは、金属の含有率が粉体Aや粉体Bよりも高い。以下、粉体Bを「シリコン含有粉体」と呼ぶ。
【0089】
1−5.成形工程
次に、成形部11において、室温で、加圧圧力3ton/cm2でシリコン含有粉体の造粒を行い、1mm×1mm×0.5mm程度のペレット形状とした。
【0090】
1−6.加熱、精製工程
次に、加熱部13及び精製部15を兼ねる装置において造粒後のペレット状シリコンの焼成、溶融及び精製を行った。
具体的には、造粒後のペレット状シリコンをグラファイト坩堝に入れ、10Torrの真空下で抵抗加熱により600℃、1時間の焼成を行うことにより、ペレット状シリコン中にわずかに残った微量有機物を除去し、次に、Ar雰囲気下で高周波誘導加熱により1800℃にてシリコン溶融を行い、その後、坩堝下方から温度降下させることで、シリコンの一方向凝固を行ってシリコン塊を得た。さらに、得られたシリコン塊の上部(金属不純物の濃縮部)を切断して除去した。この一方向凝固と不純物濃縮部の除去を2度繰り返して再生シリコンインゴットと得た。
【0091】
2.再生シリコンの評価
次に、上記の再生シリコンインゴットをMWSで厚さ250μmに切断して再生シリコンウエハ(多結晶基板)を得た。この再生シリコンウエハを用いて太陽電池を作製し、光電変換特性を測定した。
【0092】
本実施例における再生シリコンウエハを用いた太陽電池と、通常の太陽電池用シリコンウエハを用いた太陽電池の特性を、以下の表4に示す。
【0093】
これは、通常の太陽電池用シリコンウエハを用いた太陽電池の特性を100%とし、本実施例における太陽電池特性を相対比較したものである。
【表4】

【0094】
表4は、再生シリコンウエハを用いた太陽電池の特性は、通常の太陽電池用シリコンウエハを用いた太陽電池と差異が小さく、本実施例で得られた再生シリコンインゴットは、太陽電池用シリコンとして使用可能であることが確認できた。
【0095】
3.関連実験
次に、上記実施例に関連する実験について説明する。
【0096】
3−1.分級の効果を調べるための実験
本実験では、上記実施例と同様の方法で「1−4.分級工程」までの工程を行った。但し、本実験では、金属屑除去部9による強磁性体含有金属屑の除去は、行わなかった。また、実施例と同様の分級により、シリコン回収用固形分を、粒径8μm以上のグループ、1μm以上8μm未満のグループ及び1μm未満のグループの3つに分離した。分級前のシリコン回収用固形分の組成と、分級後の各グループの組成をそれぞれ表5に示す。表5中の数値の単位は、wt%である。
【表5】

【0097】
表5を参照すると、1μm未満のグループでは、金属の含有率が、他の2つのグループよりも高くなっており、また、分級前よりも高くなっていることが分かる。また、8μm以上のグループでは、SiCの含有率が、他の2つのグループよりも高くなっており、また、分級前よりも高くなっていることが分かる。また、1μm以上8μm未満のグループでは、Siの含有率が、他の2つのグループよりも高くなっており、また、分級前よりも高くなっていることが分かる。また、1μm以上8μm未満のグループでは、SiCの含有率が、他の2つのグループよりも低くなっており、また、分級前よりも低くなっていることが分かる。
従って、1μm以上8μm未満のグループのみを回収することによって、より純度の高い再生シリコンを得ることができる。また、1μm未満のグループを再生シリコン中に含めないことによって、再生シリコン中の金属の含有率を低下させることができる。また、1μm未満のグループについては、一方向凝固と不純物濃縮部の除去の繰り返し回数を増やすことによって、純度の高い再生シリコンを得ることができる。
【0098】
3−2.金属屑除去部の効果を調べるための実験
本実験では、上記実施例と同様の方法で「1−3.乾燥及び粉砕工程」までの工程を行った。金属屑除去部9の効果を調べるために、強磁性体含有金属屑の除去を行わなかったもの、磁力1.4Tの磁石を用いて強磁性体含有金属屑の除去を行ったもののそれぞれの組成を調べた。その結果を表6に示す。表6中の数値の単位は、wt%である。
【表6】

【0099】
表6によると、磁石を用いて強磁性体含有金属屑の除去を行ったものでは、確かに、金属の含有率が小さくなっていることが分かる。これによって、金属屑除去部9が金属屑の含有量を減少させるのに効果的であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態のシリコン再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の固液分離部の第1構成例を示すブロック図である。
【図3】図1の固液分離部の第2構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0101】
1:固液分離部 3:洗浄部 5:分級部 7:乾燥及び粉砕部 9:金属屑除去部 11:成形部 13:加熱部 15:精製部 17:固化部 19:一次遠心分離機 21:二次遠心分離機 23:蒸留装置 23a:第1蒸留装置 23b:第2蒸留装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入された廃スラリー又はその濃縮分を固液分離してシリコン屑を含有するシリコン回収用固形分を取得する固液分離部と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄部と、前記洗浄部からの前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級部とを備えるシリコン再生装置。
【請求項2】
前記固液分離部、前記洗浄部及び前記分級部は、前記シリコン回収用固形分又は前記シリコン含有粉体が、水、酸水溶液又はこれらの少なくとも一方を主成分とする溶液に接触しないように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入される金属屑を含み、
前記分級部は、分級前よりも金属の含有率が高められた金属含有粉体を取り除く請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入される強磁性体の金属屑を含み、
磁場を用いて前記金属屑を除去する金属屑除去部をさらに備える請求項1から3の何れか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記シリコン含有粉体を加圧して造粒する成形部をさらに備える請求項1から4の何れか1つに記載の装置。
【請求項6】
造粒前又は造粒後の前記シリコン含有粉体をシリコンの融点より低い温度で焼成した後にシリコンの融点以上の温度で溶融する加熱部をさらに備える請求項1から5の何れか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記シリコン含有粉体が溶融されて得られるシリコン含有溶融体中に含まれる不純物を除去する精製部をさらに備える請求項6に記載の装置。
【請求項8】
砥粒とクーラントを含むスラリーを用いたシリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨によって前記スラリーにシリコン屑が混入された廃スラリー又はその濃縮分を固液分離してシリコン屑を含有するシリコン回収用固形分を取得する固液分離工程と、有機溶媒を用いて前記シリコン回収用固形分を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程からの前記シリコン回収用固形分に対して分級を行って、分級前よりも砥粒の含有率が低減されかつシリコンの含有率が高められたシリコン含有粉体を取得する分級工程とを備えるシリコン再生方法。
【請求項9】
前記固液分離工程、前記洗浄工程及び前記分級工程は、前記シリコン回収用固形分又は前記シリコン含有粉体が、水、酸水溶液又はこれらの少なくとも一方を主成分とする溶液に接触しないように行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入される金属屑を含み、
前記分級工程は、分級前よりも金属の含有率が高められた金属含有粉体を取り除くように行われる請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記廃スラリーは、シリコン塊又はシリコンウエハの切断又は研磨時に混入される強磁性体の金属屑を含み、
磁場を用いて前記金属屑を除去する金属屑除去工程をさらに備える請求項8から10の何れか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記シリコン含有粉体を加圧して造粒する成形工程をさらに備える請求項8から11の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
造粒前又は造粒後の前記シリコン含有粉体をシリコンの融点より低い温度で焼成した後にシリコンの融点以上の温度で溶融する加熱工程をさらに備える請求項8から12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン含有粉体が溶融されて得られるシリコン含有溶融体中に含まれる不純物を除去する精製工程をさらに備える請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−115040(P2008−115040A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299513(P2006−299513)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】