説明

シリコン含有化合物の超原子価状態のシリコン化合物表面への付着方法及び超原子価状態のシリコン化合物の製造方法

【課題】1種以上のシリコン含有化合物の基材への化学的付着の方法を提供すること。
【解決手段】シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;1種以上のシリコン含有化合物を、その上に1種以上の求核部位を有する基材の表面と接触させること;並びに前記シリコン含有化合物及び前記表面を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含む方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン含有化合物内に、それによってシリコン含有化合物が、表面又は基材に化学的に付着され得る、及び/又は基材の表面に組織化され得る超原子価状態を誘導する方法に関する。該化合物は、該表面に付着又は該表面上に組織化された場合、出発物質と比べて異なった物理的及び/又は化学的性質を有する可能性がある。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有化合物の表面への化学的付着は、当業者に知られている。従来、これは活性剤の存在下で、適した表面を適したシリコン含有化合物に接触し、該表面を加熱することによって達成されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
該表面と該シリコン含有化合物間の反応は比較的遅い。熱の適用を用いるシロキサン類のポリエステル/又は綿織物への付着の一例は、US4417066に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の態様において、本発明は1種以上のシリコン含有化合物の基材への化学的付着の方法を提供し、当該方法は:シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;1種以上のシリコン含有化合物を、その上に1種以上の求核部位を有する基材の表面と接触させること;並びに当該シリコン含有化合物及び当該表面を0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含む。
【0005】
第二の態様において、本発明は、基材の表面上に、シリコン含有化合物の配列を作る方法を提供し、当該方法は;シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;1種以上のこれらのシリコン含有化合物を、基材の表面と接触させること;並びに当該基材及び該シリコン含有化合物を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含む。当該基材は、その表面上に1種以上の求核部位を有してよく、又はその表面上に、アルコール類のような求核基を有する1種以上の化合物が存在していてもよい。
【0006】
第一及び第二の態様において、基材の表面は、当該基材の外面上又は内面上であってよい。基材は、例えば、多孔性のポリマーマトリックスであってよく、シリコン含有化合物は、当該マトリックスの孔の内表面上に配置されるか、又は内部表面に付着されてよい。
【0007】
第三の態様において、本発明は、シリコン含有超原子価化合物の合成法を提供し、当該方法は:シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;場合により、当該1種以上のシリコン含有化合物を基材の表面と接触させること;並びに当該シリコン含有化合物及び、当該基材(存在する場合)を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含む。基材は、その表面上に1種以上の求核部位を有してよいし、又はアルコールのような求核基を有する1種以上の化合物が存在してよく、基材が存在する場合、それらは基材の表面上に位置してよい。
【0008】
第四の態様において、本発明は、その表面上に1種以上のシリコン含有化合物を有し、当該1種以上のシリコン含有化合物が、本発明の方法によって表面に付着されている基材を提供する。
【0009】
第五の態様において、本発明は、その表面上に1種以上のシリコン含有化合物を有し、当該1種以上のシリコン含有化合物が、本発明の方法によって、該表面上の配列の中に組織化されている基材を提供する。
【0010】
第六の態様において、本発明は、本発明の方法によって形成可能な超原子価シリコン含有化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をさらに説明する。以下の節において、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義されたそれぞれの態様は、明確に反対に指摘されていなければ、いずれかの他の態様又は複数の態様と組み合わせてよい。詳細には、好ましい又は有利であると指摘されている特徴は、好ましい又は有利であると指摘されている他の特徴又は複数の特徴と組み合わせてよい。
【0012】
本発明の第一、第二及び第三の態様において、該シリコン含有化合物は、式Iの化合物、
【0013】
【化1】


式I
又はポリマー鎖の一端又は両端が、水素、ヒドロキシル基、アルキル基もしくはアミン基末端でよい、式IIの繰り返し単位を有する上記ポリマーであってよい。
【0014】
【化2】

式II
式中、R1は水素又はアルキル、好適にはC1〜C6のアルキル、より好適には、メチル又はエチルのようなC1又はC2のアルキル、及びmは1〜4、好適には3であり、R2、3及びR4はそれぞれ独立にアルキル、アルキルグリシドキシ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アクリレート、アルキルヒダントイン、アルキルアクリレート及びアルキルアルケン;及び式I中、n,m,o及びpは0〜3であり(ただし、m+n+o+P=4である。)、式II中、n及びpはそれぞれ、0、1又は2である(ただし、n+p=2である。)。
【0015】
上記ポリマーは、好適にはそのモノマーの少なくともいくつかの上に電子供与基を含む。これらの電子供与基は、上記の式IIにおいて、R2及び/又はR3上の置換基であってよい。電子供与基は、ヒドロキシル、アミン、スルフヒドリル及びカルボキシルを含むが、これらに限定されない。該ポリマー中の繰り返し単位の数であるXは、いずれかの適切な数であってよい。Xは2〜10000、好適には2〜1000である。
【0016】
アルキルは、好適にはC1〜C2アルキル、及びC1〜C18アルキルであってよい。アルキルは、置換された又は置換されていないアルキルであってよい。アルキルは、ハロ−アルキル、好適にはハロ基が、シリコンから該アルキル鎖の遠位端に位置するハロ−アルキルであってよい。当該ハロ−アルキルは、好適にはクロロアルキルである。
【0017】
好適には、シリコン含有化合物は、式Iの化合物であり、式中mは3、nは1であり、o及びPは、両方とも0であり、R1は水素、メチル又はエチルである。
【0018】
好適には、R2、R3及び/又はR4の少なくとも1つは、式IIIであり、
−(CH2y−R5 ・・・式III
式中、yは、1〜5、好適には3であり、R5は、水素、ハロゲン、NH2、C1〜C18のアルキル、C1〜C18のアルキルジメチルアンモニウム、アルキルメタクリレート、好適にはエチル又はプロピルメタクリレート、5,5−ジアルキルヒダントイン、好適には、5,5−ジメチルヒダントイン、アルキレンジアミン、好適にはエチレンジアミン、パーフルオロアルキル、好適には、パーフルオロオクチル及び3−グリシドキシから選択される。
【0019】
該シリコン含有化合物は、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリメチルシラノレートカリウム、トリイソプロピルシラノール、メトキシジメチルオクチルシラン、ヒドロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン)、(3−クロロプロピル)トリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)ジメトキシメチルシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシランの1種以上を含んでよい。
【0020】
好適には、該シリコン含有化合物は、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド又は3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン又はその混合物である。
【0021】
本発明の第一から第三の態様において、シリコン含有化合物の懸濁液又は溶液を、基材と接触させてよい。当該溶液及び/又は懸濁液は、好適には、極性溶媒、より好適にはアセトン及び/又はアルコール、好適には両方を含む。上記アルコールは、好適にはメタノール及び/又はエテノールを含む。もしくは、該シリコン含有化合物は、溶媒を含まない、即ち、溶液又は懸濁液の形でなくてよい。
【0022】
基材は、好適には、その表面に求核部位を有する材料である。当該求核部位は、O、S及びNの1種以上を含む、1種以上の求核基を含んでよい。例えば、当該求核基はOH、SH及びNH2から選ばれてよい。基材は、織物材料を含んでよい。当該求核基は、接触により及び0.3〜30GHzの周波数を有する電磁放射への曝露により、シリコン含有化合物のシリコン原子に結合することが見出されている。この反応は、単に加熱するような従来の方法では数時間で起きるのに対し、通常数秒以内に起きる。
【0023】
本発明者らは、本発明の方法が基材の表面上に、シリコン含有化合物の組織化された列(即ち、配列)を作り得ることを見出した。当該シリコン含有化合物の性質は、従来の技術の、例えば熱を使用して付着されたシリコン化合物の性質とはしばしば異なる。例えば、基材上のシリコン含有化合物は、疎水性又は親水性の増加及び/又は殺菌効力の増加のような、異なった物理的及び化学的性質を有する可能性がある。理論に束縛されることなく、マイクロ波放射の使用が、シリコン原子の周囲に超原子価を誘導する、即ち、それが4を超す、5又は6個の利用可能なリガンドに配位する可能性があると考えられている。当該マイクロ波処理が停止されると、シリコンは、しばしば4配位状態に緩和して戻る。超原子価状態は、基材の該表面上で、シリコン含有化合物のより組織化した配置をもたらすと考えられている。シリコン中の超原子価は、マイクロ波処理下、エタノール中で行われた、テトラメトキシシラン及びカテコールの間の次の周知の反応で起きることが示されている。
【0024】
【化3】


超原子価シリコン化合物を生じる他の周知の反応は以下を含む:
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】


超原子価シリコンを生じる上記の反応及び他の反応は、次の関連技術文書に見出し得る:Chem. Rev. 1993, 93, 1371−1448, Chult et al; Chem. Rev. 1996, 96, 927−950, Holmes; and Journal of Organometallic Chemistry, 1990, 389, 159−168, Cerveau et al.
【0027】
上記の反応で製造される超原子価シリコン製品は、十分に安定であり、特徴づけられる。超原子価シリコンは、マイクロ波処理後、4価のシリコンに戻る可能性はあるものの、本発明の工程において同様の超原子価が生じると考えられている。シリコンが、マイクロ波処理後に超原子価状態に留まるか否かにかかわらず、該基材の該表面上で、シリコン含有化合物のより組織化された配置が観察されることは驚くべきことである。
【0028】
適切な電子供与体の存在下での電磁放射を介するSi−ORの励起は、Si−OR結合の開裂を容易にし、利用可能な電子供与体を有する超原子価シロキサン分子種の形成を誘導すると考えられている。この交換のための電子供与体は、実質上、いずれかの求核性試薬、誘導された求核性試薬、求核性領域、又はルイス塩基の形をとり得る。生じた超原子価分子種は、ついで該シラン分子種がその時点で4配位である基底状態に緩和するか、又は、その超配位製品が安定であれば、該シラン製品は、5配位系又は6配位系のいずれかとして超原子価状態に留まり得るかのいずれかと考えられる。当該シロキサン内の電磁励起は、新しい分子種内で特定の配座を誘導し、これにより新しく形成された分子種の休止状態中において、増加した特定の組織化をもたらす。基材がポリマーである場合、その表面上又はポリマーのマトリックス中の当該シリコン含有化合物の当該特定の組織は、ポリマー全体としての化学的及び物理的性質を変え得る。この現象は温度依存性でない。
【0029】
本発明の方法は、活性剤、触媒及び通常の硬化工程を使用することが必要ではない。従って、これは「繊細な」官能基の付与を可能にする。例えば、グリシドキシを含むシロキサン及びアクリレートを含むシロキサンは、繊細なシリコン含有化合物の例であり、タンパク質/酵素は繊細な基材の例であり、それらにシリコン含有基材の付着を望み得る。
【0030】
好適には、該マイクロ波は650ワット以下、より好適には65〜650ワットの電力定格を用いて作られる。当該マイクロ波は、135〜400ワットの電力定格を用いて作られてよい。
【0031】
好適には、上記マイクロ波は、0.3〜10GHz、より好適には、1〜3GHzの周波数を有する。
【0032】
繊細なシリコン含有化合物及び/又は繊細な基材の分解の可能性を低減するために、以下の1種以上を使用してよい:低減した電力レベルでの照射、例えば、400ワット以下、好適には135ワット以下の電力定格を用いて作られたマイクロ波、又は、基材及びシリコン含有化合物を、間隔を変えてマイクロ波照射及び緩和(マイクロ波照射なし)に付すこと:例えば、好適には5〜30秒、より好適には10〜20秒、最も好適には15秒の照射の期間、ついで好適には2〜30秒、より好適には5〜15秒,最も好適には10秒の緩和期間、及び場合により、この工程を必要なだけ頻繁に繰り返す。Si−O部分を含む多数の化合物について、これは、他の「繊細な」官能基よりも、マイクロ波照射により敏感であり、従ってSi−O結合の開裂は、他の官能基の分解なしに達成され得ることが見出されている。これは、シリコン含有化合物を基材に付着する期間に亘るシリコン含有化合物の加熱は、Si−O結合を開裂するために要求される熱が、繊細な官能基を分解するのに十分であるので、シリコン含有分子における繊細な官能基の分解に導き得る従来技術に対する改善である。
【0033】
マイクロ波は、該基材の特定の部分に向けられ得、従って、シリコン置換化合物の位置選択的付着及び/又は配置及び従来の方法の使用では可能でない、開始され得る反応を可能にする。
【0034】
本発明は、加熱及び活性剤を用いる従来の方法に比べて、シリコン含有化合物を基材の表面へ付着する上で、はるかに効果的であることが見出され、シリコン含有化合物の80%超が、本発明の方法を用いて、一定の条件下で該表面に付着され得る。
【0035】
基材は、天然材料を含んでよい。このような材料は、布材料であってよい。当該材料は、木綿、羊毛及び革から選択される1種以上の材料を含んでよい。当該材料は、織布又は不織布であってよい。当該材料は、天然繊維及び/又は合成材料を含んでよい。当該合成材料は、当該材料が、以下の1種以上を含むがこれらに限定されない、織布又は不織布材料を含んでよい;木綿、ポリエステル、ナイロン、羊毛、革、レーヨン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン及びポリウレア。
【0036】
基材は、粒子の形状であってよい。該粒子は10nm〜1mm、好適には10〜1000nmの直径を有してよい。
【0037】
基材は、金属酸化物を含んでよい。当該金属酸化物は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、二酸化ケイ素及び酸化亜鉛の1種以上から選択されてよい。
【0038】
基材は、天然無機物を含んでよい。当該基材は、カオリナイト、バラシム、シリカ、モンモリロナイト、バーミキュライト、ボヘマイト及び石英から選択される1種以上の無機物を含んでよい。
【0039】
基材は、多孔性であってよい。当該基材は、モレキュラーシーブを含んでよい。当該基材は、ゼオライトを含んでよい。
【0040】
基材は、ポリマーを含んでよい。当該ポリマーは、多孔性マトリックスの形状であってよい。当該基材は、プラスチック材料を含んでよい。当該基材は、ポリウレタン及び/又はナイロン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン及びポリウレアを含んでよい。
【0041】
基材は、炭水化物を含んでよい。
【0042】
本発明の第一から第三の態様において、アルコールが存在してよい。上記基材は、アルコールを含んでよい。当該基材は、その表面にアルコールを有してよい。当該アルコールは、ビシナルジオールであってよいジオール又はトリオールを含んでよい。当該アルコールは、アルキルジオール、好適にはC2〜C25のアルキルジオール、アルキルトリオール、好適にはC3〜C25のアルキルトリオール及びフェニルジオール、好適には、ビシナルフェニルジオールの1種以上から選択されてよい。当該トリオール中のそれぞれのヒドロキシル基は、好適には、他のヒドロキシル基に対してビシナル位置にある。該アルコールは、カテコール、エチレングリコール又はグリセロールから選択されてよい。
【0043】
基材は、ガラス、二酸化ケイ素、砂、及びシリカのような二酸化ケイ素をベースとする材料を含んでよい。
【0044】
本発明の方法は:上記基材を、本明細書で定義したシリコン含有化合物と接触させること及び当該化合物を0.3〜30GHzの周波数を有する電磁放射に曝露すること、及び次いで当該基材をハロゲン化剤で処理することを含んでよい。当該シリコン含有化合物は、好適には3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインを含む。当該ハロゲン化剤は、これに限らないが、例えば次亜塩素酸ナトリウムのような漂白剤を含む塩素化物質を含んでよい。
【0045】
基材をハロゲン化剤で処理した後、当該基材を乾燥してよい。基材を20℃又はそれ以上、好適には30℃又はそれ以上、より好適には35℃の温度に、これに限定しないが、1時間又はそれ以上、好適には4時間又はそれ以上を含む期間に亘り曝露することによって、基材を乾燥することができる。
【0046】
本発明を以下の限定されない実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
個別の木綿の小切れをそれぞれ以下の1つを含む溶液で処理した。
1.[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジラエチルアンモニウムクロライド、
2.3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、
3.トリメチルシラノレートカリウム、
4.トリイソプロピルシラノール、
5.メトキシジメチルオクチルシラン、
6.ヒドロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン)、
7.(3−クロロプロピル)トリエトキシシラン、
8.(3−クロロプロピル)ジメトキシメチルシラン、
9.オクタデシルトリメトキシシラン、
10.3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
11.3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、
12.N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、及び
13.3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
それぞれの溶液は、アセトン、エタノール及びメタノールを含んだ。
【0048】
木綿のそれぞれの小切れを、ついで付着されたシリコン含有化合物の性質に応じた時間に亘り、0.30〜30GHzの間の周波数で照射した。すべての実験を、付着された官能基の性質に応じて変化する電力レベルで、最初、2.45GHzで実施した。一般に、次のプログラムを完全に2サイクル実行するために最大出力(電力)で、以下の手順を実施した:30秒の50%の出力(325ワット)、30秒の緩和(マグネトロン連結なし)、30秒の50%の出力、30秒の緩和、30秒の100%の出力、室温まで冷却し、ついでサイクルを繰り返す。上記手順により、上記反応物にひび割れが生じた場合、それに応じて、上記手順が所望の結果を挙げるまで照射時間及び出力レベルを低減した。次いで、試料を洗浄し、完全にすすぎ、35℃で一晩乾燥した。
【0049】
シリコン含有化合物の付着は:
1.布(全ての試料)の全般的重量の増加、
2.布(全ての試料)の物理的特性の変化、
3.処理された織物(2試料、下記参照)の殺菌効果、
4.FTIR分光分析(全て)、
5.元素分析(全て)、及び
6.蒸留、脱イオン水中での該製品のイオン強度(全て)によって確認された。
【0050】
実施例1からの結論:
1.上記方法は、付着され得る官能基の種類に関し、非特異的であり、当該化合物はシリルエーテル、シラノール、又はシラノレートを含んでよい;
2.上記工程は、シリルエーテル、シラノール、及びシラノレートに対して有効である;及び
3.周波数及び出力レベルを調整することにより、上記方法はシステム内での他の官能基の低下を避けるために調整され得る;及び
4.上記工程は、木綿に有効である。
【0051】
(実施例2)
ナノスケールのボヘマイト(Sasolからの300nm)の100mgを下記の溶液の1つで処理した:
1.[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジラエチルアンモニウムクロライド、
2.3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、
3.トリメチルシラノレートカリウム、
4.トリイソプロピルシラノール、
5.メトキシジメチルオクチルシラン、
6.ヒドロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン)、
7.(3−クロロプロピル)トリエトキシシラン、
8.(3−クロロプロピル)ジメトキシメチルシラン、
9.オクタデシルトリメトキシシラン、
10.3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
11.3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、
12.N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、及び
13.3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
それぞれの溶液は、アセトン、エタノール及びメタノールの1種以上を含んだ。
【0052】
ボヘマイト100mgは約1mmolである。このボヘマイト1mmolに、約0.5〜1.0mLのアセトンに溶解した約0.1mmolのシランを加えた。例えば、3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインのMWは332であり、そこでシラン33.2mgを1mLに溶解した。上記の反応について、該手順を完全なモルスケールまでスケールアップした。驚くべきことに、この「バッチ」スケールはこの小さなスケールの実験よりも実際にはるかに良好に作用した。すなわち、ボヘマイト上で、該シリコンのより高く、より良好な付着度が観察された。
【0053】
該試料を、ついで0.30〜30GHzの間の周波数で、付着されたシリルエーテル、シラノレート又はシラノールの性質に応じた時間に亘って照射した。実施例1に記載した照射手順を使用した。該試料を、ついで少量の氷冷エタノールで洗浄し、次いで界面活性剤を含む水で2回洗浄した;該試料を、ついで水で完全にすすぎ、35℃で一晩乾燥した。
【0054】
シリコン含有化合物の付着は:
1.処理されたナノ粒子の物理的特性の変化、
2.処理されたナノ粒子の殺菌性効力(2試料、特に:溶液1及び2)、
4.FTIR分光分析(全て)、
5.元素分析(全て)、
6.蒸留、脱イオン水における該製品のイオン強度(全て)において確認された。
【0055】
実施例2からの結論:
1.上記工程は付着され得る官能基の種類に関して非特異的であり、当該シリコン含有化合物はシリルエーテル、シラノール又はシラノレートを含み得る。
2.周波数及び出力レベルを調整することにより、上記工程は、システム内での他の官能基と干渉しないように調整され得る。
3.上記工程は、木綿に有効である。
【0056】
(実施例3)
下記の基材のそれぞれの2つの試料を[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドの溶液、又は3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインの溶液のいずれかで処理した。
【0057】
上記基材試料は:
1.木綿、
2.酸化アルミニウム、
3.二酸化チタン、
4.ガラス、
5.ナイロン、
6.カオリナイト、
7.バラシム、
8.二酸化ケイ素、
9.羊毛、
10.革、
11.シリカ、
12.モレキュラーシーブ、
13.モンモリロナイト、
15.ポリウレタン、
16.エチレングリコール、
17.グリセロール、18.カテコール、
19.ゼオライト、
20.バーミキュライト、
21.ボヘマイト、
22.ポリエステル、
23.トリエタノールアミンであった。
【0058】
該試料を0.30〜30GHzの間の周波数で、すべての基材のマイクロ波の吸収性に応じた時間に亘って照射した。上記の実施例1に記載した照射手順を用いた。該試料を洗浄し、完全にすすぎ、35℃で一晩乾燥した。3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインで処理した該試料に希釈次亜塩素酸も加え(クロラミンを生成し)、再度洗浄し、すすぎ、乾燥した。
【0059】
該シリコン含有化合物のそれぞれの基材への付着は:
1.該処理試料(全て)の物理的特性の変化、
2.該処理された試料(全ての固体試料)の殺菌効果、
3.沃化物から元素沃素への酸化(3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインで処理した試料)
4.FTIR分光分析(全て)、5.蒸留、脱イオン水中での該製品のイオン強度(全て)、6.HNMR(2試料:トリエタノールアミン−ヒダントインシラン及びカテコール−ヒダントインシランで処理されたもの)、
7.GCMS(3試料:カテコールヒダントインシラン、トリエタノールアミン−ヒダントインシラン及びグリセロールヒダントインシランで処理されたもの)。
【0060】
実施例3からの結論:
1.該工程は、適切なS、及び/又はO、及び/又はN、及び/又はNuを含むすべての基材に有効である;
2.周波数及び電力レベルを調整することにより、該工程は該システム内の他の官能基と干渉しないように調整され得る;及び
3.照射された材料は等価な熱処理された材料(HNMR及びGCMSから)と明らかに異なる。
【0061】
(実施例4)
50:50のナイロン:木綿の6つの小切れをそれぞれ3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインの周知の溶液に1回浸漬した。3つの小切れ試料の最初の組を0.30〜300GHzの間の周波数で、実施例1に記載した時間に亘り照射した。試料の最初の組を、ついで希漂白剤で塩素化し、洗浄し、完全にすすぎ、35℃で一晩乾燥した。比較例として、3つの小切れ試料の2番目の組を80℃で一晩熱硬化した。試料の2番目の組を、ついで希漂泊剤で塩素化し、洗浄し、完全にすすぎ、35℃で一晩乾燥した。試料の両組のヒダントイン官能基の付着をFTIR、及び沃素滴定で確認した。結果は、照射された試料が、熱処理試料よりも80%高い塩素含量を保持していることを示した。加えて、照射された試料は、イオン強度の違いによって、超原子価特性を示した。
【0062】
実施例4からの結論:該照射工程は、シリルエステル、シラノール及びシラノレートの基材への付着において、熱処理よりもより有効で、効率的である。
【0063】
(実施例5)
50:50の木綿:ナイロンの熱処理試料の殺菌特性を実施例4からの照射された試料と比較した。試料の両組は、沃素滴定で測定して、同じ活性塩素含量を有した。結果は、照射された試料がBacillus anthracis spores(炭疸菌芽胞)に対して高い優れた効力を示したのに対し、熱処理試料はBacillus anthracis sporesに対して最小の活性を示した。
【0064】
実施例5からの結論:このように照射された材料は等価な熱処理された材料と明らかに異なる。上記照射工程は、熱硬化工程よりもより効率的な胞子駆除薬である製品を生み出す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;
1種以上のシリコン含有化合物を、その上に1種以上の求核部位を有する基材の表面と接触させること;並びに
前記シリコン含有化合物及び前記表面を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含んでなる、1種以上のシリコン含有化合物の基材への化学的付着の方法。
【請求項2】
シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;
1種以上のこれらのシリコン含有化合物を、基材の表面と接触させること;並びに
前記基材及び前記シリコン含有化合物を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含んでなる、基材の表面上にシリコン含有化合物の配列を作る方法。
【請求項3】
前記基材は、その表面上に1種以上の求核部位を有するか、又はその表面上に求核基を有する1種以上の化合物が存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記求核基を有する1種以上の化合物がアルコールを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン含有化合物が式I
【化1】


式I
の化合物又はポリマー鎖の一端又は両端が、水素又はアルキル基末端である式II
【化2】

式II
(式中、Rは水素又はアルキル、好適にはC〜Cのアルキル、より好適には、メチル又はエチルのようなC又はCのアルキル、及びmは1〜3、好適には3であり、R2、及びRはそれぞれ独立にアルキル、アルキルグリシドキシ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アクリレート、アルキルヒダントイン、アルキルアクリレート及びアルキルアルケン;及び式I中、n,m,o及びpは0〜3であり、ただし、m+n+o+P=4であり;式II中、n及びpはそれぞれ、0、1又は2であり、ただし、n+p=2である。)の繰り返し単位を有するポリマーを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコン含有化合物が式Iの化合物であり、ここで、mは3、nは1、o及びpは0、Rは水素、メチル又はエチルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
、R及び/又はRが式III
−(CH−R ・・・式III
(式中、Yは、1〜5、好適には3であり、Rは、水素、ハロゲン、NH、C〜C18のアルキル、C〜C18のアルキルジメチルアンモニウム、アルキルメタクリレート、好適にはエチル又はプロピルメタクリレート、5,5−ジアルキルヒダントイン、好適には、5,5−ジメチルヒダントイン、アルキレンジアミン、好適にはエチレンジアミン、パーフルオロアルキル、好適には、パーフルオロオクチル及び3−グリシドキシから選択される。)である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
1種以上の前記シリコン含有化合物が、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリメチルシラノレートカリウム、トリイソプロピルシラノール、メトキシジメチルオクチルシラン、ヒドロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン)、(3−クロロプロピル)トリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)ジメトキシメチルシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシランから選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1種以上の前記シリコン含有化合物が、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド及び3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインから選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記該求核部位は、O、S及びNの1種以上を含む1種以上の求核基を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が織布又は不織布材料を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記布材料が、木綿、ポリエステル、ナイロン、羊毛、革、レーヨン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン及びポリウレアの1種以上から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基材が、酸化アルミニウム、二酸化チタン、ガラス、ナイロン、カオリナイト、バラシム、二酸化ケイ素、シリカ、モレキュラーシーブ、モンモリロナイト、ポリウレタン、エチレングリコール、グリセロール、カテコール、ゼオライト、バーミキュライト及びボヘマイトから選ばれる1種以上の材料を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材を3(3−トリエトキシシリルプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインと接触させること、前記化合物を0.3〜30GHzの周波数を有する電磁放射に曝露すること、及び次いで前記基材をハロゲン化剤で処理することを含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
表面上にシリコン含有化合物を有し、前記シリコン含有化合物が、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法によって該表面に付着及び/又は表面上の配列の中に組織化されている基材。
【請求項16】
シロキサン化合物、シラノール化合物、シリルエーテル化合物、シラノレート化合物、ハロシラン化合物、シラトラン化合物、及びシラザン化合物から選択される1種以上のシリコン含有化合物を提供すること;
場合により、前記1種以上のシリコン含有化合物を基材の表面と接触させること;並びに
前記シリコン含有化合物及び、存在する場合には前記基材を、0.3〜30GHzの周波数の電磁放射に曝露することを含んでなる、シリコン含有超原子価化合物の合成法。
【請求項17】
請求項1〜14及び16のいずれか1項に記載の方法によって形成可能な超原子価シリコン含有化合物。

【公表番号】特表2009−509053(P2009−509053A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530621(P2008−530621)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003440
【国際公開番号】WO2007/031775
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508078569)アレキシウム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】