シリコン太陽電池用の多層電極構造体の製造方法
【課題】太陽電池用の電極構造体を製造するための新たな方法を提供する。
【解決手段】パッシベーション層30を上に有する半導体基板10を含む光電池は、パッシベーション層30を貫く複数のコンタクト開口部を半導体基板10に形成する工程と、複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属45を選択的にメッキして、コンタクト金属45を堆積する工程と、堆積したコンタクト金属45の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線50を形成する工程と、堆積したコンタクト金属45と少なくとも1つの堆積された金属含有層とを焼結する工程と、含む方法により製造することができる。
【解決手段】パッシベーション層30を上に有する半導体基板10を含む光電池は、パッシベーション層30を貫く複数のコンタクト開口部を半導体基板10に形成する工程と、複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属45を選択的にメッキして、コンタクト金属45を堆積する工程と、堆積したコンタクト金属45の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線50を形成する工程と、堆積したコンタクト金属45と少なくとも1つの堆積された金属含有層とを焼結する工程と、含む方法により製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン光電池用、すなわちシリコン太陽電池用の多層電極構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、一般に、太陽光を電力に直接変換する光起電デバイスである。太陽電池としては、一般に、自由電子を作り出すように太陽光などの光照射を吸収するシリコン半導体が挙げられ、それはその後、内蔵する電場の存在下で流れを発生させて直流(以降、「DC」という)電力を作り出す。数個の光電池(PV電池)で発生したDC電力は、電池に付随するグリッドで集めることができる。複数のPV電池からの電流を、次に直列及び並列に組み合わせると、更に高い電流や電圧となる。こうして集められたDC電力は、その後、配線、多くの場合は数十本又は数百本の多数の配線を通じて送電することができる。DC電力はまた、周知のインバータを用いてAC電力に変換することもできる。
【0003】
生じた電力を集めて伝達できる金属接触を形成するために、太陽電池材料を金属化する。シリコン太陽電池において、金属化には一般に、電池の前面に格子状の金属接触を形成することと、電池の裏面に全面積金属接触を形成することとが含まれる。従来、シリコン太陽電池の金属化は、スクリーン印刷で行われている。太陽電池を金属化するための従来のスクリーン印刷方法では、ウェーハの上に保持された模様付きメッシュを介して、ペーストをスキージ(squeegee)で押さえる。太陽電池の金属化において代表的なペーストは、銀粒子と、鉛系のガラスフリットと、有機ビヒクルとの混合物から成る。前記ウェーハを焼結(アニール)すると、有機ビヒクルが分解し、鉛系のガラスフリットが軟化して、次いで表面パッシベーション層を溶解して、ペーストで形成された銀パターンの下に多数のランダムな点を形成することで、シリコン基板に達する銀用の経路が作り出される。表面パッシベーション層は、窒化ケイ素層などの誘電層であって、電気接触領域以外の電池を覆う、電池の主要部分である。銀ペーストの上部は、1枚以上のフィルムに圧縮されており、これによって電池から電流を伝達する。これらフィルムは、ウェーハの前面ではグリッド線を形成し、ウェーハの裏面では基板接触を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0169806号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0200520号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0022862号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0100228号明細書
【特許文献5】米国特許第4,235,644号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉛系ガラスフリットをスクリーン印刷と組み合わせて用いることは有利であるが、いくつかの欠点もある。第一に、接触抵抗率、つまり接触比抵抗が極めて大きい。例えば、半導体エミッタ層(日光暴露表面)と銀グリッド線との接触比抵抗は約10−3Ω・cm2台である。シリコン半導体エミッタ層と銀グリッド線との間のこの接触比抵抗は、半導体集積回路デバイス内で達し得る接触比抵抗(約10−7Ω・cm2台)よりも数桁大きい。大きな接触抵抗は、インターフェースの相当な部分を占める非導電性ガラスフリットに起因して、シリコン半導体エミッタ層と銀電極グリッド線との間の狭い有効接触面積によってもたらされる。接触比抵抗が大きいため、太陽電池内のエミッタ層は高濃度にドープしなければならず、またエミッタと銀グリッド線の間の大きな接触面積を利用する必要があり、そうしなければ、ペースト銀は、シリコンとの良好な電気接触をもたらすことができない。高濃度ドーピングは、電池上部の少数のキャリアライフタイムを縮め、電池のブルーレスポンスを制限し、そして大きな接触面積が更に高い表面再結合速度も引き起こす。その結果、太陽電池の相対的な効率は低下する。
【0006】
ガラスフリット法に関するもう一つの問題は、狭いプロセスウィンドウ(process window)である。狭いプロセスウィンドウは問題となる場合がある。というのも、グリッド線を焼結する熱サイクルが、窒化ケイ素を溶かしてしまい、銀を短絡させずに、又は別の方法で接合を損傷させることなく、シリコンと銀との間に電気的接触を与える必要があるためである。この狭いプロセスウィンドウは、プロセス所要時間を約30秒台に、及び温度幅をピーク焼結温度の前後約10℃に厳しく制限する。
【0007】
なお更には、鉛系ガラスフリットを使用することでパッシベーション層の一部を溶解する必要があり、環境問題をも提起する。
【0008】
低い接触抵抗、小さな接触面積、高い導電性、高いはんだ濡れ性、及び日光暴露に対する高い安定性を付与する、太陽電池用の金属化コンタクト構造体を製造するための、コスト効率が更に高く及び/又はあまり複雑ではない方法を開発することが望ましいとも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図2】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図4】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図5】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図6】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図7】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図8】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図9】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図10】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図11】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図12】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図13】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図14】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図15】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図16】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図17】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図18】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図19】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【図20】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【図21】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載されているのは、光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池は、パッシベーション層を上に有する半導体基板を備えており、前記方法は、一般に、前記パッシベーション層を貫いて半導体基板に通じる複数のコンタクト開口部を形成する工程と、前記複数のコンタクト開口部内にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、前記堆積したコンタクト金属と前記堆積した金属含有層とを焼結する工程と、を有している。本明細書において、「上部に」とは、層が、例えば、基礎を成す層の上に直接形成されること、又はその層と基礎を成す層との間に別の層を介在させて、基礎を成す層の上部に形成することを指す。少なくとも1層の金属含有層は、光電池の金属グリッド線を形成する場合もあり、単層金属であっても、又は銅などの第1層と銀などの第2層のように、多層金属であってもよい。少なくとも1つの金属含有層を堆積する前に、前記堆積したコンタクト金属の上部に1つ以上の導電性緩衝層を形成してもよい。
【0012】
要するに、パッシベーション層を貫くコンタクト開口部を描画することと、コンタクト金属をコンタクト開口部の中及び/又はその周囲に選択的に堆積することとに基づく、シリコン光電池の金属化方法が記載されている。一実施形態では、レーザを用いて、金属グリッド線の基礎となるコンタクト開口部を線やドットなどの形で描画する。例えば無電解メッキなどの方法によってNi、Co、Tiなどのコンタクト金属を、レーザドリル加工したコンタクト開口部の中に選択的に堆積することで、金属/エミッタ接触が形成される。コンタクト金属は、導電性シリコンエミッタ表面の上には容易に堆積するが、パッシベーション層の変質していない表面(例えば、変質していない窒化ケイ素層)のような絶縁性表面には堆積しないことから、無電解メッキを行うこともできる。例えば、銀、銅、これらの合金などの金属グリッド線を、次に、薄いコンタクト金属層の上に又はその上部に、例えばスクリーン印刷又は同時押出成形によって形成することができる。上記のように、金属グリッド線は、コンタクト金属層上に直接形成されても、又はコンタクト金属層の上に又はその上部に形成した1つ以上の導電性緩衝層の上に形成されてもよい。その後、この構造を同時焼結して、金属化を完了させる。
【0013】
半導体基板は、例えば、シリコンなどの半導体材料から製造されてもよい。
【0014】
パッシベーション層は、誘電材料から構成する。半導体基板上のパッシベーション層に好適な誘電材料としては、例えば、SiO2もしくはTiO2などの酸化物、又は窒化ケイ素もしくは酸窒化ケイ素などの窒化物、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。光電池では、特にパッシベーション層を電池の前面に、又は両面電池の場合は太陽電池の裏面に形成されると、パッシベーション層が反射防止フィルムの役割を果たす場合がある。
【0015】
1つ以上のコンタクト開口部は、非接触パターニング装置によってパッシベーション層の中に形成されてもよい。実施形態では、1つ以上のコンタクト開口部には、1つ又は複数の穴、1つ又は複数の線、1つ又は複数の穴と1つ又は複数の線との組み合わせ、あるいは1つ以上の別の形もしくは形状が含まれてもよい。穴の直径は、例えば約1μm〜約200μmまでの範囲、例えば、約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmであってよい。穴のピッチは、例えば約0.01mm〜約2mm、例えば、約0.1mm〜約1mm、又は約0.2mm〜約0.5mmであってよい。線としては、パッシベーション層内の溝又はトレンチを挙げることができる。線の幅は、例えば、約1μm〜約200μmまでの範囲、例えば約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmであってよい。
【0016】
1つ以上のコンタクト開口部は、半導体基板のドーピング部を露出するためや、半導体基板の表を開放するために、パッシベーション層を貫いて非接触パターニング装置によって形成されてもよい。
【0017】
実施形態では、非接触パターニング装置は、パッシベーション層に1つ以上のコンタクト開口部を形成して半導体基板の表を露出させるために、パッシベーション層の一部をアブレーション(除去)するのに十分なエネルギーのレーザパルスを発生することが可能な、レーザ装置であってもよい。非接触パターニング装置は更に、パッシベーション層に1つ以上の開口部を形成する粒子線発生装置、例えばイオン・ミリング装置であってもよい。
【0018】
実施形態では、レーザは、約100KHz台のパルス繰り返し速度で作動する、コヒーレント社(Coherent Inc.)製モデルAVIA 266−300 Q−切り替え型Nd−YAGであってもよい。パッシベーション層の表面をアブレーションするのに必要なフルエンス(fluence)は、例えば約1ジュール/cm2程度である。レーザのパルス長は、数十ナノ秒台である。波長は、約266nm程度であってよい。短パルス及び短波長のこのようなレーザは、エネルギーを表面付近に確実に蓄積することができ、そして半導体基板の融解を最小限に抑えることができる。これによって、半導体基板の拡散領域のドーピングプロファイルへのあらゆる変化を最小限にする。これらの極めて活発な光子は、パッシベーション層の表面で吸収され、及び/又は基礎を成す半導体基板の最上部から数ナノメートルのところでも吸収される。低濃度ドープしたエミッタは、リンの拡散深さが約200nmであり、シート抵抗が約100Ω台であり、またその物理的表面に非縮退準位(non-degenerate level)のドーパントを有する。
【0019】
実施形態では、レーザ装置として、フェムト秒レーザが挙げられる。フェムト秒レーザを利用する利点は、材料が熱平衡に到達するのに要する時間よりも早い時間枠内でレーザエネルギーを蓄積できることである。これにより、破壊くず(debris)をほとんど出さずにパッシベーション層をアブレーションすることができる。
【0020】
他の接触もしくは非接触パターニング装置又はパターニング方法を用いて、1つ以上の開口部を形成することも可能である。例えば、エッチャント材料をパッシベーション層の上へ、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、又は他の印刷法を用いた直接印刷により化学エッチングすることによって、1つ以上の開口部を形成することができる。あるいは化学エッチングは、エッチング保護マスクをパッシベーション層の上へ直接印刷した後、基材をエッチング溶液に入れることによって行ってもよい。エッチング保護マスクは、スピンコーティングやスプレーコーティングした後、又は保護層を蒸発させた後で、保護層をパターニングすることによって形成することもできる。
【0021】
コンタクト開口部に充填するコンタクト金属は、導電性の金属である。導電性コンタクト金属層は、例えば、低い接触抵抗を有し及び/又は半導体基材もしくは半導体基材のn+型エミッタとの強い接着力を有する薄い金属層であってもよい。望ましくは、シリサイド形成導電性金属、すなわち、シリコンと共にシリサイドを形成する金属を利用する。実施形態では、導電性コンタクト金属には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、これらの合金、などのような導電性金属材料が含まれていてよい。Niを利用する場合、リンを含有していても、していなくてもよい。
【0022】
コンタクト金属は、好適なメッキ法を含むいずれかの選択的な堆積法でコンタクト開口部の中に堆積することができる。堆積したコンタクト金属の厚さは、例えば、約1nm〜約2,000nmまでの範囲、例えば、約5nm〜約1,000nm又は約20nm〜約200nmであってよい。
【0023】
無電解メッキを含むメッキ法では、金属を分子レベルから積み上げる。無電解メッキによってコンタクト金属を、レーザドリル加工したコンタクト開口部の中に選択的に堆積するが、半導体基板のn型導電性エミッタが電子を供給して、金属イオン、例えばNi2+イオンをNiなどの金属元素へ還元し、それによって金属をエミッタの上とコンタクト開口部の中に堆積することから、選択性は起こるべくして起こる。他方で、パッシベーション層の変質していない表面は、酸化物層や窒化物層と同様に絶縁性であるため、変質していないパッシベーション層の表面上には堆積を達成するのに必要な電子を供給することができない。
【0024】
任意の好適なメッキ法が使用できる。無電解メッキは、水溶液中での幾つかの併発反応を伴う電流を生じないタイプのメッキ法であり、電気メッキとは違って外部電力を用いずに発生する。金属イオンを生成し、それを、先に述べたように還元して、電気メッキしようとする表面に堆積する。この方法では、金属をメッキしようとする試料をメッキ液に入れて、メッキを行うことで金属を堆積させる。選択的な無電解メッキは、表面の様々な物理的性質又は化学的性質(例えば、導電性、又は半導体表面 対 絶縁表面)に起因して、シード層を表面に選択的に堆積して活性化するか又はレーザ露光などを用いて表面を選択的に活性化することによって達成することができる。コンタクト金属の別の導入方法では、光誘導メッキ法が用いられてもよい。これについては、メッテ(Mette)ら、光誘導銀メッキ法によるスクリーン印刷したシリコン太陽電池の効率向上(Increasing the Efficiency of Screen-Printed Silicon Solar Cells by Light-Induced Silver Plating)、2006年IEEE 第4回光起電エネルギー変換国際会議(2006 IEEE 4th World Conference on Photovoltaic Energy Conversion)、5月7日〜12日(2006年)を参照のこと。この方法では、光誘導メッキ法を利用して金属をシリコンに直接付着させることによって、コンタクト金属をコンタクト開口部の中に選択的に形成することができる。
【0025】
ニッケル、コバルト、チタン、タンタル、タングステン、又はモリブデンなどの金属を導電性コンタクト金属として利用すると、構造物の熱加工中又はその後で、導電性コンタクト金属と半導体基板との間の界面に金属シリサイド層が形成される場合がある。
【0026】
コンタクト金属をメッキ法で堆積した後、例えば、スクリーン印刷、同時押出成形、押出成形、パッド印刷、ジェット印刷、軽量分配などの周知の方法によって、又は先に述べたような電気メッキもしくは無電解メッキなどのメッキ法によって、金属グリッド線形成用の少なくとも1つの導電性金属層をコンタクト金属の上に又はその上部に形成してもよい。金属グリッド線は、例えば、銀、錫、銅、これらの合金などから構成されていてよい。金属グリッド線は、単層から構成されていても、銅の層とその上の銀の層とのように、多層から構成されていてもよい。グリッド線層は、例えば、約1μm程度の薄さであってよく、例えば、約1〜約150μmまでの厚さ、例えば約5〜約50μmであってよい。
【0027】
金属グリッド線は、コンタクト金属層の上に直接形成されてもよく、コンタクト金属層の上に形成した1つ以上の導電性緩衝層の上に形成されてもよい。緩衝層は、半導体基板へのグリッド線の金属の拡散を防ぐために利用することができ、また先に述べた無電解メッキ、光誘導メッキ、又は電気メッキなどの方法でコンタクト金属の上に選択的に形成又は堆積することができる。1つ以上の緩衝層の導電率は、コンタクト金属層よりも大きくてもよい。1つ以上の緩衝層は、例えば、タングステン、クロム、チタン、これらの合金などから構成されてもよい。1つ以上の緩衝層の厚さは、例えば、約0.1〜約50μmであってよい。
【0028】
金属化を完結するために、構造体を同時焼結などの熱処理に付す。例えば約200℃〜約1,000℃までの温度、例えば約400℃〜約900℃、又は約500℃〜約850℃で焼結することによって、該構造体を熱加工することができる。
【0029】
実施形態では、この方法を利用して、裏面接触型太陽電池のための多層電極構造体を製造することも可能である。すなわち、この方法によって1つ以上のp領域及び/又は1つ以上のn領域が半導体基板の裏面に作製される場合、この方法を半導体基板の裏面に適用して半導体基板用の裏面電極を作製することもできる。
【0030】
本明細書に開示の方法で形成される多層電極構造体は、半導体基板と電流伝達金属グリッド線との間の接触抵抗と接触面積を低くすることができ、更に高い高さ対幅のアスペクト比を有する電極構造体を形成することができる。結果として、多層電極構造体を含むシリコン光電池の絶対効率の向上、例えば、最新の光電池と比べて約0.5%〜約3%の向上を実現することができ、シリコン光電池では、例えば約4%〜約20%の相対的な改善となる場合がある。
【0031】
多層電極構造体と半導体基板は、従来のシリコン太陽電池の接触面積と比べると約50〜約400倍低い接触面積を有することができる。低い接触面積は、半導体基板と導電性コンタクト層及び/又は金属グリッド線との再結合を軽減することができる。多層電極構造体は、低濃度ドープしたエミッタ層を利用する場合もあり、その結果、青色レスポンスと光吸収を改善することができる。これらの改善点はいずれも、高効率を導き出すことができる。さらに、多層電極構造体と半導体基板との接触比抵抗は、約10−1Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2まで、約10−2Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2まで、又は約10−4Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2までであってよい。
【0032】
本明細書に開示される多層電極構造体及びその製造方法を用いて、光電池又は太陽電池に加えて、他の多層電極構造体を形成することもできる。例えば、前記方法を用いて、電気装置又は電子デバイスを形成することもできるが、この場合、低い接触抵抗と高い電流伝達電極とが必要である。本明細書に開示している方法はまた、基礎を成す第1機能層の一部の上に堆積できる第2層の機能材料を含む、任意の機能性構造体又はデバイスを形成するために利用することもできる。
【0033】
第1の実施形態では、前記方法は、金属グリッド線を形成するために用いられる材料内でのガラスフリットの使用を含み、ここで、ガラスフリットは、鉛をほとんど〜全く有しない。第2の実施形態では、レーザを利用して、1つ以上のコンタクト開口部付近のパッシベーション層の更に別の表面積を活性化することによって、コンタクト金属をコンタクト開口部の中だけでなくコンタクト開口部の周囲にも堆積することができる。第3の実施形態では、シード層を先ずパッシベーション層の上に堆積し、そのシード層を、コンタクト開口部をレーザで形成するときに活性化して、活性化されたシード層によってコンタクト金属の選択的なメッキを生じさせる。あるいは、写真エマルション層はシード層として利用することもでき、それを露光によって現像することもできる。第4の実施形態では、自己組織化単層のパターンは、コンタクト開口部の上に印刷によって形成された後、コンタクト金属をメッキするためのシード層の役割を果たす。
【0034】
第1の実施形態を図1〜4を参照して説明する。図1〜4には、無電解メッキを用いてコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に、金属含有材料と、鉛をほとんど〜全く含まないガラスフリットとから形成された金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。図1には、n+型エミッタ層20を含む半導体基板10が表されている。半導体基板のn+型エミッタの表面上には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。
【0035】
図2には、例えば、レーザ装置を用いてパッシベーション層の中に形成されたコンタクト開口部40が表されている。
【0036】
図3には、コンタクト開口部40の中にメッキ、例えば無電解メッキによって充填したコンタクト金属45が表されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中にだけ堆積されて、パッシベーション層の残りの変質していない表面上には堆積されない。
【0037】
図4には、メッキしたコンタクト金属を含有する金属コンタクト開口部それぞれの上部に形成された金属グリッド線50が表されている。金属グリッド線50は、同時押出成形またはスクリーン印刷などの、いずれかの好適な方法で形成することができる。
【0038】
第1の実施形態に係る方法では、金属グリッド線を形成するための材料は、鉛をほとんど〜全く有しない。本明細書の第1の実施形態で銀ペーストに使用されるガラスフリットの場合、グリッド線を形成するための金属含有材料から、鉛又はPbOをほとんど〜全て除去することができる。すなわち、鉛又はPbOの含有量は10モル%未満、例えば、5モル%未満であってよく、ガラスフリットは更に、鉛又はPbOを全く含有しない可能性もある。そのため、金属グリッド線材料は、グリッド線用の導電性金属と併せて、鉛をほとんど〜全く有しない柔軟なガラスフリットを含んでもよく、このガラスフリットは、金属配線とそれが接触している構造の表面との接着を促進するためと、フラックスとして供給して金属グリッド線の金属粒子間の固体状態の焼結反応を助けるために利用される。
【0039】
実施形態では、柔軟なガラスフリットは、B2O3又はSiO2などのいかなる好適な材料であってもよく、Bi2O3、In2O3、SnO2、V2O5、又はZnOなどの追加の材料を含んでいても又は含んでいなくてもよい。金属含有材料は、ガラスフリットに加えて、銀又は銀合金を含有するペーストを含むこともでき、またこの材料は、鉛をほとんど〜全く含まないものである。一般に、銀ペーストは、銀を約80〜99重量%、ガラスフリットを約1〜20重量%、及び有機ビヒクルを1〜約25重量%含んでいてよい。
【0040】
スパッタしたニッケルをコンタクト金属として用いて、スクリーン印刷した銀ペーストを金属グリッド線用に用い、そしてこの構造物を500℃で同時焼結すると、従来のスクリーン印刷した電極よりも接触抵抗が約2桁低い電極が形成される。例えば、接触比抵抗は、従来のスクリーン印刷した銀電極を利用した場合は1〜3mΩ・cm2であるのに対し、約0.01mΩ・cm2である。
【0041】
第2の実施形態の方法について、図5〜7を参照して説明する。図5〜7には、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成し、無電解メッキにより該コンタクト開口部の中及びその周囲にコンタクト金属を堆積し、そして該コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この方法には、コンタクト開口部の形成時に2本のレーザビームを使用することが含まれている。第1エネルギービームは、コンタクト開口部を実際に切削するエネルギービームであり、要するに、先に述べたようなエネルギービームである。例えば、第1エネルギービームは、十分に集束した高エネルギー密度の狭ビーム、つまり、例えば、約20μm幅のビームであり、これによってパッシベーション層にコンタクトホール開口部が形成される。第2レーザビームは、更に広幅の、例えば約40〜約150μm幅のビームであって、第1エネルギービームよりも低エネルギー密度のものである。第2エネルギービームは、パッシベーション層の表面を活性化するために使用されるが、パッシベーション層を破壊しない。一般に、第1レーザビームのフルエンスは、約5〜10J/cm2であり、第2レーザビームのフルエンスは、約1〜3J/cm2以下である。第1レーザビーム及び第2レーザビームは、典型的には第1レーザビームが第2レーザビームの中央に来るように位置合わせする。この方法では、第1レーザビームは、それが接触したパッシベーション層の領域をアブレーションしてコンタクト開口部を形成し、そして第2レーザビームは、それが接触したコンタクト開口部を取り囲む領域を除去せずに変質させて、その領域にメッキ金属を受容させる。
【0042】
ビームパッシベーション層の、第2レーザが接触した部分は、このようにして光活性される。この光活性化又はレーザ活性化は、露光によって電子構造の局所振動を発生させ、電気化学ポテンシャル近くでの非ゼロ密度の静電状態を出現させるか、又は自己触媒的な金属還元を引き起こしてメッキによる金属の堆積を促進し、その後、誘電性パッシベーション層の活性化領域にその後、金属をメッキさせることができる。
【0043】
この実施形態の方法では、図1に示すような半導体基板構造体を用いて開始することができる。図5には、パッシベーション層30への第1レーザビーム60及び第2レーザビーム70の適用が示されており、第1レーザビームがパッシベーション層にコンタクト開口部40を形成して、第2レーザビームがコンタクト開口部40周囲に活性化表面部分42を形成する。
【0044】
図6には、コンタクト開口部40の中と活性化部分42の上とに無電解メッキなどのメッキによって充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、コンタクト開口部の周囲にも堆積している。この薄いコンタクト金属層をシード層として利用し、電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて銀、銅、又は錫などの更に導電性の高い金属の更に厚い層を堆積することで、金属グリッド線を形成することができる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2層以上の金属層を順に堆積して、グリッド線の導電率とはんだ濡れ性の両方を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45の上への厚い金属層55の堆積を、図7に示す。こうすることで、この実施形態の方法では、スクリーン印刷又は同時押出成形を必要とせずに、金属グリッド線を形成することができる。従来のスクリーン印刷法では高さ:幅のアスペクト比が約1:10であるのに比べて、アスペクト比が1:2を超えるような、更に大きなアスペクト比を有する電極構造体を製造することも可能である。最終的に、これら金属層を例えば200〜1000℃で焼結して、接着性と密度を増強させる。
【0045】
第3の実施形態を図8〜12に示す。図8〜12には、感光性有機金属シード層を用い、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成して前記シード層を分解し、無電解メッキによってコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この実施形態は、第2レーザを用いてパッシベーション層の表面を活性化する代わりに、感光性有機金属シード層をパッシベーション層の上にコーティングして、コンタクト金属をメッキするためのシード層として利用すること以外は、第2の実施形態と同様である。
【0046】
図8には、n+型エミッタ層(又はn+型エミッタ部分)20を含む半導体基板10が示されている。半導体基板のn+型エミッタ表面には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。さらに、パッシベーション層の上には感光性有機金属シード層32がある。このシード層32は、望ましくは、例えばスピンコーティング、注入法、又はスプレーコーティングなどのいずれかの好適な方法でパッシベーション層の表面全体を覆うように堆積させる。シード層32の厚さは、例えば、約0.1μm〜約10μmであってよい。
【0047】
いかなる好適な材料を感光性有機金属シード層として使用してもよい。シード層の例としては、例えば、白金、パラジウム、銅、ロジウム、タングステン、イリジウム、銀、金、及びタンタルのうち1つ以上を含む有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物の具体例としては、パラジウムアセチルアセトナート(Pd(acac)2)、硫化パラジウム(PdSO4)、酢酸パラジウム(PdAc2)が挙げられる。これら有機金属化合物は、クロロホルム(CHCl3)又は酢酸(HAc)などの好適な溶媒に溶解してもよく、次いでこれを、スピンコーティング又はスプレーコーティングなどのいずれかの好適な方法で基板にコーティングすることができる。
【0048】
図9には、前述の第2の実施形態と同様に第1レーザビーム60と第2レーザビーム70へのシード層の露光が示されている。シード層を第2レーザビームで光活性化することによってシード層を分解して、図10に示すように、パッシベーション層の表面上に薄い金属層33を形成する。形成されたシード層の厚さは、例えば、約0.1μm〜10μmであってよい。その後、他の金属をメッキ法でシード層の上に堆積してもよい。未露光のために分解されなかったシード層32の部分は、脱イオン水などの好適な溶媒を用いて容易に洗い流すことができる。
【0049】
図11には、コンタクト開口部40の中とシード層部分33の上に、無電解メッキ法などのメッキ法で充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、シード層33の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用い、銀、銅、又は錫などの更に導電性の高い金属の更に厚い層を、電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成することができる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2つ以上の金属層を順に堆積することでグリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45の上へ厚い金属層55を堆積することについて、図12に示す。
【0050】
第3の実施形態の別法を図13〜18に示す。図13〜18には、写真エマルション層(photographic emulsion layer)を用い、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成し、露光によって写真エマルション層を現像し、無電解メッキによってコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この別法は、第3の実施形態の有機金属触媒シード層(一般に高価な材料)を写真エマルションシード層に置き換えたこと以外は、シード層を用いる第3の実施形態と同様である。
【0051】
図13には、n+型エミッタ層又は部分20を含む半導体基板10が示されている。半導体基板のn+型エミッタ表面上には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。さらに、パッシベーション層の上には、写真エマルションシード層36がある。このシード層36は、望ましくはパッシベーション層の表面全体を覆うように、例えばスピンコーティング、注入法、又はスプレーコーティングなどの、いずれかの好適な方法で堆積する。シード層36の厚さは、例えば、約0.1μm〜約10μmであってよい。
【0052】
写真エマルション材料としては、いかなる好適な材料を使用してもよい。一般に、写真エマルションは、ゼラチンに懸濁した1種以上のハロゲン化銀(塩化物、臭化物、ヨウ化物)結晶を含んでいる。ゼラチンは、炭素原子約70部と、水素原子約7部と、酸素原子約25部と、窒素原子約18部の組成で構成される極めて複雑な分子構造を有する化合物群である。ゼラチンは、ハロゲン化銀結晶が凝集するのを防ぐ保護コロイドとして作用し、そして更には、この結晶の大きさと分布をある程度まで制御する。
【0053】
図14には、上述した第1の実施形態と同様に、写真シード層とパッシベーション層をレーザビーム65で露光することで、それらにコンタクト開口部40形成することが示されている。
【0054】
次に、図15に示すように、写真シード層36を光78で露光して、シード層を現像する。この方法では、標準的な写真フィルム現像法を用いて、露光したシード層部分37とパッシベーション層表面上の残りとから金属グリッド線画像を形成した後、図16に示すように現像することができる。この現像されたシード層部分37は、このようにして、後の段階でメッキ金属を堆積するためのシード層として利用される。
【0055】
図17には、コンタクト開口部40の中とシード層部分37の上に無電解メッキなどのメッキ法で充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部だけでなく、シード層37の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用いて、銀、銅、又は錫のように更に高導電性の金属の更に厚い層を電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成することもできる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2層以上の金属層を順に堆積することで、グリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45上のへの厚い金属層55の堆積を図18に示す。
【0056】
この実施形態では、レーザアブレーションしたコンタクト開口部を用いた前記方法全体の位置合わせ(registration)は、米国特許出願第11/962,987号に記載されているコンベヤシステムのようなインライン加工ツールによって保つこともでき、この場合、基板は、コンベヤによってレーザパターニングターミナルを越えて送られて、同じコンベヤシステムで写真エマルション現像システムを通る。
【0057】
図19〜21には第4の実施形態が示されている。図19〜21には、レーザ描画を用いてコンタクト開口部を形成し、該コンタクト開口部の上部に自己組織化オルガノシラン単層を印刷し、無電解メッキによりコンタクト金属を堆積し、そして該コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この実施形態では、自己組織化単層を、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層として利用する。一般的に言えば、自己組織化単層の形成は、溶液又は気相中の前駆体分子が界面で反応して、例えば、数ナノメートル台の単分子厚さの層を製造するという化学プロセスであり、この単分子層は、表面に化学結合している。分子を表面に付加するために化学気相堆積法又は分子線エピタキシーなどの方法を利用する(分子層の厚さ全面で制御不十分な場合が多い)のではなく、所望の分子溶液を基板表面に付加してから余剰分を洗い流すことによって、自己組織化された単層を簡単に調製することができる。化学吸着反応は、表面に化学結合するときに、分子の自由エネルギーが低いために熱力学的に終了せざるを得ない。従って、大きな表面積全体に安定で均一な高密度充填された分子層を形成することが、エネルギー的には好ましい。
【0058】
本明細書で使用する自己組織化単層として、いかなる好適な材料を使用してもよい。パッシベーション層を構成するような窒化物上又は酸化物上で利用するのに好適な例としては、自己組織化オルガノシラン単層、例えば、アルキルシラン類が挙げられる。自己組織化単層材料の具体例としては、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、PEDA((アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン)、CMPTS(4−クロロメチルフェニルトリクロロシラン)、MPTS(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、これらの組み合わせなどが挙げられる。自己組織化単層材料は、アミン基もしくはピリジルドナー基などの連結基を含有しているか、又はリチウムエチレンジアミン(Li−EDA)のアセトニトリル溶液などの別の化学物質(金属錯体触媒に対して親和性を有するもの)で処理した後で連結基をグラフト化することができる。この方法では、Pd(II)、Pt(III)、コロイド銀などの金属触媒を、単層の表面に吸着することができる。そのため、自己組織化単層の表面は、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層として利用することもできる。
【0059】
自己組織化単層材料をコンタクト開口部の上及びその上部に堆積した後で、コンタクト開口部を形成する。単層は、例えば、ジェット印刷法などのいかなる好適な方法で堆積してもよい。
【0060】
この第4の実施形態の方法には、図1に示すような基板構造体で開始することと、パッシベーション層30を前述の及び図2に示すようなレーザに暴露して、パッシベーション層にコンタクト開口部を形成することとが含まれる。
【0061】
図19は、自己組織化単層材料80をコンタクト開口部40の上とその周囲にジェット印刷する後続の工程を表している。単層材料は、そのまま噴出するか、又はベンゼン、クロロホルム、メタノールなどの溶媒を用いた溶液で噴出することができる。この溶液の濃度は、例えば、約1〜10重量%であってよく、そして前記溶媒は噴出後に、例えば約60℃〜100℃まで基板を加熱することで蒸発させてもよい。パッシベーション層の表面上に噴出した余分な溶液又は単層は、例えば洗浄によって除去することができる。
【0062】
堆積した自己組織化単層材料は、続いて、例えば、Pd(II)、Pt(III)、又は銀コロイドなどを含む金属触媒溶液にこの単層を浸漬して、金属触媒材料に晒すことで、単層表面上に触媒金属を形成してもよい。その後、この単層は、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層の機能を果たすことができる。自己組織化単層材料を用いる以外に、パラジウム−錫ヒドロゾルなどの活性剤溶液の薄層を、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層としてジェット印刷することも可能である。
【0063】
図20には、図19に示されたコンタクト開口部40の中とシード層部分80の上に無電解メッキなどのメッキ法で充填したコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、シード層80の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用いて、銀、銅、又は錫のような更に導電性の高い金属の更に厚い層を電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成してもよい。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2つ以上の金属層を順に堆積することで、グリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。厚い金属層55を、メッキしたコンタクト金属層45の上へ堆積することについて、図21に示す
【0064】
構造体の後続の同時焼結中に、ニッケルなどのメッキ金属を、自己組織化単層を貫通させて、接触抵抗の低い、優れた金属/エミッタ接触を形成する。
【0065】
以下の実施例により、本発明の開示内容の実施形態を更に例示する。
【実施例】
【0066】
シリコン半導体基板の表には、窒化物パッシベーション層が形成されている。窒化物パッシベーション層には、レーザ描画法を用いて複数の穴が形成されている。複数の穴の直径はそれぞれ約20μmであり、ピッチは約0.25mmである。窒化物パッシベーション層の上と、窒化物パッシベーション層に形成された複数の穴の中には、Ni導電性コンタクト層が堆積している。このNi導電性コンタクト層の厚さは、約100nmである。
【0067】
Agペーストをスクリーン印刷によってNi導電性コンタクト層上に堆積して、窒化物パッシベーション層に形成された複数の穴と整列させるか又は位置合わせする。その後、シリコン基板を約500℃で焼結して、電流を伝達する焼結Agグリッド線を有する、Ag/Ni多層電極構造体を形成する。
【0068】
このAg/Ni多層電極の接触抵抗は、線の長さが約25.4mmの場合、約0.03Ω・cm2未満である。さらに、Ag/Ni多層電極の接触抵抗は、標準的な線の長さ約121mmの場合、約0.0063Ω・cm2未満である。これは、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線の接触抵抗約0.0055Ω・cm2に匹敵するが、本実施例のAg/Ni多層電極構造体の接触面積は、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線よりも約100倍以上小さい。このことは、接触比抵抗が接触抵抗測定値と接触面積との積に等しいことから、本実施例の接触比抵抗又は接触抵抗が、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線よりも約100倍以上小さいということを表している。
【符号の説明】
【0069】
10 半導体基板、20 n+型エミッタ層、30 パッシベーション層、32 感光性有機金属シード層、33 薄い金属(シード)層、40 コンタクト開口部、36 写真エマルションシード層、37 シード層(部分)、45 コンタクト金属(層)、50 金属グリッド線、55 厚い金属層、60 第1レーザビーム、65 レーザビーム、70 第2レーザビーム、78 光、80 自己組織化単層材料(シード層(部分))。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン光電池用、すなわちシリコン太陽電池用の多層電極構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、一般に、太陽光を電力に直接変換する光起電デバイスである。太陽電池としては、一般に、自由電子を作り出すように太陽光などの光照射を吸収するシリコン半導体が挙げられ、それはその後、内蔵する電場の存在下で流れを発生させて直流(以降、「DC」という)電力を作り出す。数個の光電池(PV電池)で発生したDC電力は、電池に付随するグリッドで集めることができる。複数のPV電池からの電流を、次に直列及び並列に組み合わせると、更に高い電流や電圧となる。こうして集められたDC電力は、その後、配線、多くの場合は数十本又は数百本の多数の配線を通じて送電することができる。DC電力はまた、周知のインバータを用いてAC電力に変換することもできる。
【0003】
生じた電力を集めて伝達できる金属接触を形成するために、太陽電池材料を金属化する。シリコン太陽電池において、金属化には一般に、電池の前面に格子状の金属接触を形成することと、電池の裏面に全面積金属接触を形成することとが含まれる。従来、シリコン太陽電池の金属化は、スクリーン印刷で行われている。太陽電池を金属化するための従来のスクリーン印刷方法では、ウェーハの上に保持された模様付きメッシュを介して、ペーストをスキージ(squeegee)で押さえる。太陽電池の金属化において代表的なペーストは、銀粒子と、鉛系のガラスフリットと、有機ビヒクルとの混合物から成る。前記ウェーハを焼結(アニール)すると、有機ビヒクルが分解し、鉛系のガラスフリットが軟化して、次いで表面パッシベーション層を溶解して、ペーストで形成された銀パターンの下に多数のランダムな点を形成することで、シリコン基板に達する銀用の経路が作り出される。表面パッシベーション層は、窒化ケイ素層などの誘電層であって、電気接触領域以外の電池を覆う、電池の主要部分である。銀ペーストの上部は、1枚以上のフィルムに圧縮されており、これによって電池から電流を伝達する。これらフィルムは、ウェーハの前面ではグリッド線を形成し、ウェーハの裏面では基板接触を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0169806号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0200520号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0022862号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0100228号明細書
【特許文献5】米国特許第4,235,644号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉛系ガラスフリットをスクリーン印刷と組み合わせて用いることは有利であるが、いくつかの欠点もある。第一に、接触抵抗率、つまり接触比抵抗が極めて大きい。例えば、半導体エミッタ層(日光暴露表面)と銀グリッド線との接触比抵抗は約10−3Ω・cm2台である。シリコン半導体エミッタ層と銀グリッド線との間のこの接触比抵抗は、半導体集積回路デバイス内で達し得る接触比抵抗(約10−7Ω・cm2台)よりも数桁大きい。大きな接触抵抗は、インターフェースの相当な部分を占める非導電性ガラスフリットに起因して、シリコン半導体エミッタ層と銀電極グリッド線との間の狭い有効接触面積によってもたらされる。接触比抵抗が大きいため、太陽電池内のエミッタ層は高濃度にドープしなければならず、またエミッタと銀グリッド線の間の大きな接触面積を利用する必要があり、そうしなければ、ペースト銀は、シリコンとの良好な電気接触をもたらすことができない。高濃度ドーピングは、電池上部の少数のキャリアライフタイムを縮め、電池のブルーレスポンスを制限し、そして大きな接触面積が更に高い表面再結合速度も引き起こす。その結果、太陽電池の相対的な効率は低下する。
【0006】
ガラスフリット法に関するもう一つの問題は、狭いプロセスウィンドウ(process window)である。狭いプロセスウィンドウは問題となる場合がある。というのも、グリッド線を焼結する熱サイクルが、窒化ケイ素を溶かしてしまい、銀を短絡させずに、又は別の方法で接合を損傷させることなく、シリコンと銀との間に電気的接触を与える必要があるためである。この狭いプロセスウィンドウは、プロセス所要時間を約30秒台に、及び温度幅をピーク焼結温度の前後約10℃に厳しく制限する。
【0007】
なお更には、鉛系ガラスフリットを使用することでパッシベーション層の一部を溶解する必要があり、環境問題をも提起する。
【0008】
低い接触抵抗、小さな接触面積、高い導電性、高いはんだ濡れ性、及び日光暴露に対する高い安定性を付与する、太陽電池用の金属化コンタクト構造体を製造するための、コスト効率が更に高く及び/又はあまり複雑ではない方法を開発することが望ましいとも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図2】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図4】多層電極構造体の製造方法の第1の実施形態を説明するための図である。
【図5】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図6】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図7】多層電極構造体の製造方法の第2の実施形態を説明するための図である。
【図8】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図9】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図10】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図11】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図12】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態を説明するための図である。
【図13】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図14】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図15】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図16】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図17】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図18】多層電極構造体の製造方法の第3の実施形態の別法を説明するための図である。
【図19】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【図20】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【図21】多層電極構造体の製造方法の第4の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載されているのは、光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池は、パッシベーション層を上に有する半導体基板を備えており、前記方法は、一般に、前記パッシベーション層を貫いて半導体基板に通じる複数のコンタクト開口部を形成する工程と、前記複数のコンタクト開口部内にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、前記堆積したコンタクト金属と前記堆積した金属含有層とを焼結する工程と、を有している。本明細書において、「上部に」とは、層が、例えば、基礎を成す層の上に直接形成されること、又はその層と基礎を成す層との間に別の層を介在させて、基礎を成す層の上部に形成することを指す。少なくとも1層の金属含有層は、光電池の金属グリッド線を形成する場合もあり、単層金属であっても、又は銅などの第1層と銀などの第2層のように、多層金属であってもよい。少なくとも1つの金属含有層を堆積する前に、前記堆積したコンタクト金属の上部に1つ以上の導電性緩衝層を形成してもよい。
【0012】
要するに、パッシベーション層を貫くコンタクト開口部を描画することと、コンタクト金属をコンタクト開口部の中及び/又はその周囲に選択的に堆積することとに基づく、シリコン光電池の金属化方法が記載されている。一実施形態では、レーザを用いて、金属グリッド線の基礎となるコンタクト開口部を線やドットなどの形で描画する。例えば無電解メッキなどの方法によってNi、Co、Tiなどのコンタクト金属を、レーザドリル加工したコンタクト開口部の中に選択的に堆積することで、金属/エミッタ接触が形成される。コンタクト金属は、導電性シリコンエミッタ表面の上には容易に堆積するが、パッシベーション層の変質していない表面(例えば、変質していない窒化ケイ素層)のような絶縁性表面には堆積しないことから、無電解メッキを行うこともできる。例えば、銀、銅、これらの合金などの金属グリッド線を、次に、薄いコンタクト金属層の上に又はその上部に、例えばスクリーン印刷又は同時押出成形によって形成することができる。上記のように、金属グリッド線は、コンタクト金属層上に直接形成されても、又はコンタクト金属層の上に又はその上部に形成した1つ以上の導電性緩衝層の上に形成されてもよい。その後、この構造を同時焼結して、金属化を完了させる。
【0013】
半導体基板は、例えば、シリコンなどの半導体材料から製造されてもよい。
【0014】
パッシベーション層は、誘電材料から構成する。半導体基板上のパッシベーション層に好適な誘電材料としては、例えば、SiO2もしくはTiO2などの酸化物、又は窒化ケイ素もしくは酸窒化ケイ素などの窒化物、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。光電池では、特にパッシベーション層を電池の前面に、又は両面電池の場合は太陽電池の裏面に形成されると、パッシベーション層が反射防止フィルムの役割を果たす場合がある。
【0015】
1つ以上のコンタクト開口部は、非接触パターニング装置によってパッシベーション層の中に形成されてもよい。実施形態では、1つ以上のコンタクト開口部には、1つ又は複数の穴、1つ又は複数の線、1つ又は複数の穴と1つ又は複数の線との組み合わせ、あるいは1つ以上の別の形もしくは形状が含まれてもよい。穴の直径は、例えば約1μm〜約200μmまでの範囲、例えば、約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmであってよい。穴のピッチは、例えば約0.01mm〜約2mm、例えば、約0.1mm〜約1mm、又は約0.2mm〜約0.5mmであってよい。線としては、パッシベーション層内の溝又はトレンチを挙げることができる。線の幅は、例えば、約1μm〜約200μmまでの範囲、例えば約5μm〜約100μm、又は約10μm〜約50μmであってよい。
【0016】
1つ以上のコンタクト開口部は、半導体基板のドーピング部を露出するためや、半導体基板の表を開放するために、パッシベーション層を貫いて非接触パターニング装置によって形成されてもよい。
【0017】
実施形態では、非接触パターニング装置は、パッシベーション層に1つ以上のコンタクト開口部を形成して半導体基板の表を露出させるために、パッシベーション層の一部をアブレーション(除去)するのに十分なエネルギーのレーザパルスを発生することが可能な、レーザ装置であってもよい。非接触パターニング装置は更に、パッシベーション層に1つ以上の開口部を形成する粒子線発生装置、例えばイオン・ミリング装置であってもよい。
【0018】
実施形態では、レーザは、約100KHz台のパルス繰り返し速度で作動する、コヒーレント社(Coherent Inc.)製モデルAVIA 266−300 Q−切り替え型Nd−YAGであってもよい。パッシベーション層の表面をアブレーションするのに必要なフルエンス(fluence)は、例えば約1ジュール/cm2程度である。レーザのパルス長は、数十ナノ秒台である。波長は、約266nm程度であってよい。短パルス及び短波長のこのようなレーザは、エネルギーを表面付近に確実に蓄積することができ、そして半導体基板の融解を最小限に抑えることができる。これによって、半導体基板の拡散領域のドーピングプロファイルへのあらゆる変化を最小限にする。これらの極めて活発な光子は、パッシベーション層の表面で吸収され、及び/又は基礎を成す半導体基板の最上部から数ナノメートルのところでも吸収される。低濃度ドープしたエミッタは、リンの拡散深さが約200nmであり、シート抵抗が約100Ω台であり、またその物理的表面に非縮退準位(non-degenerate level)のドーパントを有する。
【0019】
実施形態では、レーザ装置として、フェムト秒レーザが挙げられる。フェムト秒レーザを利用する利点は、材料が熱平衡に到達するのに要する時間よりも早い時間枠内でレーザエネルギーを蓄積できることである。これにより、破壊くず(debris)をほとんど出さずにパッシベーション層をアブレーションすることができる。
【0020】
他の接触もしくは非接触パターニング装置又はパターニング方法を用いて、1つ以上の開口部を形成することも可能である。例えば、エッチャント材料をパッシベーション層の上へ、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、又は他の印刷法を用いた直接印刷により化学エッチングすることによって、1つ以上の開口部を形成することができる。あるいは化学エッチングは、エッチング保護マスクをパッシベーション層の上へ直接印刷した後、基材をエッチング溶液に入れることによって行ってもよい。エッチング保護マスクは、スピンコーティングやスプレーコーティングした後、又は保護層を蒸発させた後で、保護層をパターニングすることによって形成することもできる。
【0021】
コンタクト開口部に充填するコンタクト金属は、導電性の金属である。導電性コンタクト金属層は、例えば、低い接触抵抗を有し及び/又は半導体基材もしくは半導体基材のn+型エミッタとの強い接着力を有する薄い金属層であってもよい。望ましくは、シリサイド形成導電性金属、すなわち、シリコンと共にシリサイドを形成する金属を利用する。実施形態では、導電性コンタクト金属には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、これらの合金、などのような導電性金属材料が含まれていてよい。Niを利用する場合、リンを含有していても、していなくてもよい。
【0022】
コンタクト金属は、好適なメッキ法を含むいずれかの選択的な堆積法でコンタクト開口部の中に堆積することができる。堆積したコンタクト金属の厚さは、例えば、約1nm〜約2,000nmまでの範囲、例えば、約5nm〜約1,000nm又は約20nm〜約200nmであってよい。
【0023】
無電解メッキを含むメッキ法では、金属を分子レベルから積み上げる。無電解メッキによってコンタクト金属を、レーザドリル加工したコンタクト開口部の中に選択的に堆積するが、半導体基板のn型導電性エミッタが電子を供給して、金属イオン、例えばNi2+イオンをNiなどの金属元素へ還元し、それによって金属をエミッタの上とコンタクト開口部の中に堆積することから、選択性は起こるべくして起こる。他方で、パッシベーション層の変質していない表面は、酸化物層や窒化物層と同様に絶縁性であるため、変質していないパッシベーション層の表面上には堆積を達成するのに必要な電子を供給することができない。
【0024】
任意の好適なメッキ法が使用できる。無電解メッキは、水溶液中での幾つかの併発反応を伴う電流を生じないタイプのメッキ法であり、電気メッキとは違って外部電力を用いずに発生する。金属イオンを生成し、それを、先に述べたように還元して、電気メッキしようとする表面に堆積する。この方法では、金属をメッキしようとする試料をメッキ液に入れて、メッキを行うことで金属を堆積させる。選択的な無電解メッキは、表面の様々な物理的性質又は化学的性質(例えば、導電性、又は半導体表面 対 絶縁表面)に起因して、シード層を表面に選択的に堆積して活性化するか又はレーザ露光などを用いて表面を選択的に活性化することによって達成することができる。コンタクト金属の別の導入方法では、光誘導メッキ法が用いられてもよい。これについては、メッテ(Mette)ら、光誘導銀メッキ法によるスクリーン印刷したシリコン太陽電池の効率向上(Increasing the Efficiency of Screen-Printed Silicon Solar Cells by Light-Induced Silver Plating)、2006年IEEE 第4回光起電エネルギー変換国際会議(2006 IEEE 4th World Conference on Photovoltaic Energy Conversion)、5月7日〜12日(2006年)を参照のこと。この方法では、光誘導メッキ法を利用して金属をシリコンに直接付着させることによって、コンタクト金属をコンタクト開口部の中に選択的に形成することができる。
【0025】
ニッケル、コバルト、チタン、タンタル、タングステン、又はモリブデンなどの金属を導電性コンタクト金属として利用すると、構造物の熱加工中又はその後で、導電性コンタクト金属と半導体基板との間の界面に金属シリサイド層が形成される場合がある。
【0026】
コンタクト金属をメッキ法で堆積した後、例えば、スクリーン印刷、同時押出成形、押出成形、パッド印刷、ジェット印刷、軽量分配などの周知の方法によって、又は先に述べたような電気メッキもしくは無電解メッキなどのメッキ法によって、金属グリッド線形成用の少なくとも1つの導電性金属層をコンタクト金属の上に又はその上部に形成してもよい。金属グリッド線は、例えば、銀、錫、銅、これらの合金などから構成されていてよい。金属グリッド線は、単層から構成されていても、銅の層とその上の銀の層とのように、多層から構成されていてもよい。グリッド線層は、例えば、約1μm程度の薄さであってよく、例えば、約1〜約150μmまでの厚さ、例えば約5〜約50μmであってよい。
【0027】
金属グリッド線は、コンタクト金属層の上に直接形成されてもよく、コンタクト金属層の上に形成した1つ以上の導電性緩衝層の上に形成されてもよい。緩衝層は、半導体基板へのグリッド線の金属の拡散を防ぐために利用することができ、また先に述べた無電解メッキ、光誘導メッキ、又は電気メッキなどの方法でコンタクト金属の上に選択的に形成又は堆積することができる。1つ以上の緩衝層の導電率は、コンタクト金属層よりも大きくてもよい。1つ以上の緩衝層は、例えば、タングステン、クロム、チタン、これらの合金などから構成されてもよい。1つ以上の緩衝層の厚さは、例えば、約0.1〜約50μmであってよい。
【0028】
金属化を完結するために、構造体を同時焼結などの熱処理に付す。例えば約200℃〜約1,000℃までの温度、例えば約400℃〜約900℃、又は約500℃〜約850℃で焼結することによって、該構造体を熱加工することができる。
【0029】
実施形態では、この方法を利用して、裏面接触型太陽電池のための多層電極構造体を製造することも可能である。すなわち、この方法によって1つ以上のp領域及び/又は1つ以上のn領域が半導体基板の裏面に作製される場合、この方法を半導体基板の裏面に適用して半導体基板用の裏面電極を作製することもできる。
【0030】
本明細書に開示の方法で形成される多層電極構造体は、半導体基板と電流伝達金属グリッド線との間の接触抵抗と接触面積を低くすることができ、更に高い高さ対幅のアスペクト比を有する電極構造体を形成することができる。結果として、多層電極構造体を含むシリコン光電池の絶対効率の向上、例えば、最新の光電池と比べて約0.5%〜約3%の向上を実現することができ、シリコン光電池では、例えば約4%〜約20%の相対的な改善となる場合がある。
【0031】
多層電極構造体と半導体基板は、従来のシリコン太陽電池の接触面積と比べると約50〜約400倍低い接触面積を有することができる。低い接触面積は、半導体基板と導電性コンタクト層及び/又は金属グリッド線との再結合を軽減することができる。多層電極構造体は、低濃度ドープしたエミッタ層を利用する場合もあり、その結果、青色レスポンスと光吸収を改善することができる。これらの改善点はいずれも、高効率を導き出すことができる。さらに、多層電極構造体と半導体基板との接触比抵抗は、約10−1Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2まで、約10−2Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2まで、又は約10−4Ω・cm2未満〜約10−8Ω・cm2までであってよい。
【0032】
本明細書に開示される多層電極構造体及びその製造方法を用いて、光電池又は太陽電池に加えて、他の多層電極構造体を形成することもできる。例えば、前記方法を用いて、電気装置又は電子デバイスを形成することもできるが、この場合、低い接触抵抗と高い電流伝達電極とが必要である。本明細書に開示している方法はまた、基礎を成す第1機能層の一部の上に堆積できる第2層の機能材料を含む、任意の機能性構造体又はデバイスを形成するために利用することもできる。
【0033】
第1の実施形態では、前記方法は、金属グリッド線を形成するために用いられる材料内でのガラスフリットの使用を含み、ここで、ガラスフリットは、鉛をほとんど〜全く有しない。第2の実施形態では、レーザを利用して、1つ以上のコンタクト開口部付近のパッシベーション層の更に別の表面積を活性化することによって、コンタクト金属をコンタクト開口部の中だけでなくコンタクト開口部の周囲にも堆積することができる。第3の実施形態では、シード層を先ずパッシベーション層の上に堆積し、そのシード層を、コンタクト開口部をレーザで形成するときに活性化して、活性化されたシード層によってコンタクト金属の選択的なメッキを生じさせる。あるいは、写真エマルション層はシード層として利用することもでき、それを露光によって現像することもできる。第4の実施形態では、自己組織化単層のパターンは、コンタクト開口部の上に印刷によって形成された後、コンタクト金属をメッキするためのシード層の役割を果たす。
【0034】
第1の実施形態を図1〜4を参照して説明する。図1〜4には、無電解メッキを用いてコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に、金属含有材料と、鉛をほとんど〜全く含まないガラスフリットとから形成された金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。図1には、n+型エミッタ層20を含む半導体基板10が表されている。半導体基板のn+型エミッタの表面上には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。
【0035】
図2には、例えば、レーザ装置を用いてパッシベーション層の中に形成されたコンタクト開口部40が表されている。
【0036】
図3には、コンタクト開口部40の中にメッキ、例えば無電解メッキによって充填したコンタクト金属45が表されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中にだけ堆積されて、パッシベーション層の残りの変質していない表面上には堆積されない。
【0037】
図4には、メッキしたコンタクト金属を含有する金属コンタクト開口部それぞれの上部に形成された金属グリッド線50が表されている。金属グリッド線50は、同時押出成形またはスクリーン印刷などの、いずれかの好適な方法で形成することができる。
【0038】
第1の実施形態に係る方法では、金属グリッド線を形成するための材料は、鉛をほとんど〜全く有しない。本明細書の第1の実施形態で銀ペーストに使用されるガラスフリットの場合、グリッド線を形成するための金属含有材料から、鉛又はPbOをほとんど〜全て除去することができる。すなわち、鉛又はPbOの含有量は10モル%未満、例えば、5モル%未満であってよく、ガラスフリットは更に、鉛又はPbOを全く含有しない可能性もある。そのため、金属グリッド線材料は、グリッド線用の導電性金属と併せて、鉛をほとんど〜全く有しない柔軟なガラスフリットを含んでもよく、このガラスフリットは、金属配線とそれが接触している構造の表面との接着を促進するためと、フラックスとして供給して金属グリッド線の金属粒子間の固体状態の焼結反応を助けるために利用される。
【0039】
実施形態では、柔軟なガラスフリットは、B2O3又はSiO2などのいかなる好適な材料であってもよく、Bi2O3、In2O3、SnO2、V2O5、又はZnOなどの追加の材料を含んでいても又は含んでいなくてもよい。金属含有材料は、ガラスフリットに加えて、銀又は銀合金を含有するペーストを含むこともでき、またこの材料は、鉛をほとんど〜全く含まないものである。一般に、銀ペーストは、銀を約80〜99重量%、ガラスフリットを約1〜20重量%、及び有機ビヒクルを1〜約25重量%含んでいてよい。
【0040】
スパッタしたニッケルをコンタクト金属として用いて、スクリーン印刷した銀ペーストを金属グリッド線用に用い、そしてこの構造物を500℃で同時焼結すると、従来のスクリーン印刷した電極よりも接触抵抗が約2桁低い電極が形成される。例えば、接触比抵抗は、従来のスクリーン印刷した銀電極を利用した場合は1〜3mΩ・cm2であるのに対し、約0.01mΩ・cm2である。
【0041】
第2の実施形態の方法について、図5〜7を参照して説明する。図5〜7には、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成し、無電解メッキにより該コンタクト開口部の中及びその周囲にコンタクト金属を堆積し、そして該コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この方法には、コンタクト開口部の形成時に2本のレーザビームを使用することが含まれている。第1エネルギービームは、コンタクト開口部を実際に切削するエネルギービームであり、要するに、先に述べたようなエネルギービームである。例えば、第1エネルギービームは、十分に集束した高エネルギー密度の狭ビーム、つまり、例えば、約20μm幅のビームであり、これによってパッシベーション層にコンタクトホール開口部が形成される。第2レーザビームは、更に広幅の、例えば約40〜約150μm幅のビームであって、第1エネルギービームよりも低エネルギー密度のものである。第2エネルギービームは、パッシベーション層の表面を活性化するために使用されるが、パッシベーション層を破壊しない。一般に、第1レーザビームのフルエンスは、約5〜10J/cm2であり、第2レーザビームのフルエンスは、約1〜3J/cm2以下である。第1レーザビーム及び第2レーザビームは、典型的には第1レーザビームが第2レーザビームの中央に来るように位置合わせする。この方法では、第1レーザビームは、それが接触したパッシベーション層の領域をアブレーションしてコンタクト開口部を形成し、そして第2レーザビームは、それが接触したコンタクト開口部を取り囲む領域を除去せずに変質させて、その領域にメッキ金属を受容させる。
【0042】
ビームパッシベーション層の、第2レーザが接触した部分は、このようにして光活性される。この光活性化又はレーザ活性化は、露光によって電子構造の局所振動を発生させ、電気化学ポテンシャル近くでの非ゼロ密度の静電状態を出現させるか、又は自己触媒的な金属還元を引き起こしてメッキによる金属の堆積を促進し、その後、誘電性パッシベーション層の活性化領域にその後、金属をメッキさせることができる。
【0043】
この実施形態の方法では、図1に示すような半導体基板構造体を用いて開始することができる。図5には、パッシベーション層30への第1レーザビーム60及び第2レーザビーム70の適用が示されており、第1レーザビームがパッシベーション層にコンタクト開口部40を形成して、第2レーザビームがコンタクト開口部40周囲に活性化表面部分42を形成する。
【0044】
図6には、コンタクト開口部40の中と活性化部分42の上とに無電解メッキなどのメッキによって充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、コンタクト開口部の周囲にも堆積している。この薄いコンタクト金属層をシード層として利用し、電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて銀、銅、又は錫などの更に導電性の高い金属の更に厚い層を堆積することで、金属グリッド線を形成することができる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2層以上の金属層を順に堆積して、グリッド線の導電率とはんだ濡れ性の両方を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45の上への厚い金属層55の堆積を、図7に示す。こうすることで、この実施形態の方法では、スクリーン印刷又は同時押出成形を必要とせずに、金属グリッド線を形成することができる。従来のスクリーン印刷法では高さ:幅のアスペクト比が約1:10であるのに比べて、アスペクト比が1:2を超えるような、更に大きなアスペクト比を有する電極構造体を製造することも可能である。最終的に、これら金属層を例えば200〜1000℃で焼結して、接着性と密度を増強させる。
【0045】
第3の実施形態を図8〜12に示す。図8〜12には、感光性有機金属シード層を用い、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成して前記シード層を分解し、無電解メッキによってコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この実施形態は、第2レーザを用いてパッシベーション層の表面を活性化する代わりに、感光性有機金属シード層をパッシベーション層の上にコーティングして、コンタクト金属をメッキするためのシード層として利用すること以外は、第2の実施形態と同様である。
【0046】
図8には、n+型エミッタ層(又はn+型エミッタ部分)20を含む半導体基板10が示されている。半導体基板のn+型エミッタ表面には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。さらに、パッシベーション層の上には感光性有機金属シード層32がある。このシード層32は、望ましくは、例えばスピンコーティング、注入法、又はスプレーコーティングなどのいずれかの好適な方法でパッシベーション層の表面全体を覆うように堆積させる。シード層32の厚さは、例えば、約0.1μm〜約10μmであってよい。
【0047】
いかなる好適な材料を感光性有機金属シード層として使用してもよい。シード層の例としては、例えば、白金、パラジウム、銅、ロジウム、タングステン、イリジウム、銀、金、及びタンタルのうち1つ以上を含む有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物の具体例としては、パラジウムアセチルアセトナート(Pd(acac)2)、硫化パラジウム(PdSO4)、酢酸パラジウム(PdAc2)が挙げられる。これら有機金属化合物は、クロロホルム(CHCl3)又は酢酸(HAc)などの好適な溶媒に溶解してもよく、次いでこれを、スピンコーティング又はスプレーコーティングなどのいずれかの好適な方法で基板にコーティングすることができる。
【0048】
図9には、前述の第2の実施形態と同様に第1レーザビーム60と第2レーザビーム70へのシード層の露光が示されている。シード層を第2レーザビームで光活性化することによってシード層を分解して、図10に示すように、パッシベーション層の表面上に薄い金属層33を形成する。形成されたシード層の厚さは、例えば、約0.1μm〜10μmであってよい。その後、他の金属をメッキ法でシード層の上に堆積してもよい。未露光のために分解されなかったシード層32の部分は、脱イオン水などの好適な溶媒を用いて容易に洗い流すことができる。
【0049】
図11には、コンタクト開口部40の中とシード層部分33の上に、無電解メッキ法などのメッキ法で充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、シード層33の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用い、銀、銅、又は錫などの更に導電性の高い金属の更に厚い層を、電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成することができる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2つ以上の金属層を順に堆積することでグリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45の上へ厚い金属層55を堆積することについて、図12に示す。
【0050】
第3の実施形態の別法を図13〜18に示す。図13〜18には、写真エマルション層(photographic emulsion layer)を用い、レーザ描画によってコンタクト開口部を形成し、露光によって写真エマルション層を現像し、無電解メッキによってコンタクト金属を堆積し、そして前記コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この別法は、第3の実施形態の有機金属触媒シード層(一般に高価な材料)を写真エマルションシード層に置き換えたこと以外は、シード層を用いる第3の実施形態と同様である。
【0051】
図13には、n+型エミッタ層又は部分20を含む半導体基板10が示されている。半導体基板のn+型エミッタ表面上には、窒化ケイ素層などのパッシベーション層30がある。さらに、パッシベーション層の上には、写真エマルションシード層36がある。このシード層36は、望ましくはパッシベーション層の表面全体を覆うように、例えばスピンコーティング、注入法、又はスプレーコーティングなどの、いずれかの好適な方法で堆積する。シード層36の厚さは、例えば、約0.1μm〜約10μmであってよい。
【0052】
写真エマルション材料としては、いかなる好適な材料を使用してもよい。一般に、写真エマルションは、ゼラチンに懸濁した1種以上のハロゲン化銀(塩化物、臭化物、ヨウ化物)結晶を含んでいる。ゼラチンは、炭素原子約70部と、水素原子約7部と、酸素原子約25部と、窒素原子約18部の組成で構成される極めて複雑な分子構造を有する化合物群である。ゼラチンは、ハロゲン化銀結晶が凝集するのを防ぐ保護コロイドとして作用し、そして更には、この結晶の大きさと分布をある程度まで制御する。
【0053】
図14には、上述した第1の実施形態と同様に、写真シード層とパッシベーション層をレーザビーム65で露光することで、それらにコンタクト開口部40形成することが示されている。
【0054】
次に、図15に示すように、写真シード層36を光78で露光して、シード層を現像する。この方法では、標準的な写真フィルム現像法を用いて、露光したシード層部分37とパッシベーション層表面上の残りとから金属グリッド線画像を形成した後、図16に示すように現像することができる。この現像されたシード層部分37は、このようにして、後の段階でメッキ金属を堆積するためのシード層として利用される。
【0055】
図17には、コンタクト開口部40の中とシード層部分37の上に無電解メッキなどのメッキ法で充填されたコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部だけでなく、シード層37の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用いて、銀、銅、又は錫のように更に高導電性の金属の更に厚い層を電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成することもできる。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2層以上の金属層を順に堆積することで、グリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。メッキしたコンタクト金属層45上のへの厚い金属層55の堆積を図18に示す。
【0056】
この実施形態では、レーザアブレーションしたコンタクト開口部を用いた前記方法全体の位置合わせ(registration)は、米国特許出願第11/962,987号に記載されているコンベヤシステムのようなインライン加工ツールによって保つこともでき、この場合、基板は、コンベヤによってレーザパターニングターミナルを越えて送られて、同じコンベヤシステムで写真エマルション現像システムを通る。
【0057】
図19〜21には第4の実施形態が示されている。図19〜21には、レーザ描画を用いてコンタクト開口部を形成し、該コンタクト開口部の上部に自己組織化オルガノシラン単層を印刷し、無電解メッキによりコンタクト金属を堆積し、そして該コンタクト金属上に金属グリッド線を形成する、多層電極構造体の製造方法が示されている。この実施形態では、自己組織化単層を、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層として利用する。一般的に言えば、自己組織化単層の形成は、溶液又は気相中の前駆体分子が界面で反応して、例えば、数ナノメートル台の単分子厚さの層を製造するという化学プロセスであり、この単分子層は、表面に化学結合している。分子を表面に付加するために化学気相堆積法又は分子線エピタキシーなどの方法を利用する(分子層の厚さ全面で制御不十分な場合が多い)のではなく、所望の分子溶液を基板表面に付加してから余剰分を洗い流すことによって、自己組織化された単層を簡単に調製することができる。化学吸着反応は、表面に化学結合するときに、分子の自由エネルギーが低いために熱力学的に終了せざるを得ない。従って、大きな表面積全体に安定で均一な高密度充填された分子層を形成することが、エネルギー的には好ましい。
【0058】
本明細書で使用する自己組織化単層として、いかなる好適な材料を使用してもよい。パッシベーション層を構成するような窒化物上又は酸化物上で利用するのに好適な例としては、自己組織化オルガノシラン単層、例えば、アルキルシラン類が挙げられる。自己組織化単層材料の具体例としては、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、PEDA((アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン)、CMPTS(4−クロロメチルフェニルトリクロロシラン)、MPTS(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、これらの組み合わせなどが挙げられる。自己組織化単層材料は、アミン基もしくはピリジルドナー基などの連結基を含有しているか、又はリチウムエチレンジアミン(Li−EDA)のアセトニトリル溶液などの別の化学物質(金属錯体触媒に対して親和性を有するもの)で処理した後で連結基をグラフト化することができる。この方法では、Pd(II)、Pt(III)、コロイド銀などの金属触媒を、単層の表面に吸着することができる。そのため、自己組織化単層の表面は、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層として利用することもできる。
【0059】
自己組織化単層材料をコンタクト開口部の上及びその上部に堆積した後で、コンタクト開口部を形成する。単層は、例えば、ジェット印刷法などのいかなる好適な方法で堆積してもよい。
【0060】
この第4の実施形態の方法には、図1に示すような基板構造体で開始することと、パッシベーション層30を前述の及び図2に示すようなレーザに暴露して、パッシベーション層にコンタクト開口部を形成することとが含まれる。
【0061】
図19は、自己組織化単層材料80をコンタクト開口部40の上とその周囲にジェット印刷する後続の工程を表している。単層材料は、そのまま噴出するか、又はベンゼン、クロロホルム、メタノールなどの溶媒を用いた溶液で噴出することができる。この溶液の濃度は、例えば、約1〜10重量%であってよく、そして前記溶媒は噴出後に、例えば約60℃〜100℃まで基板を加熱することで蒸発させてもよい。パッシベーション層の表面上に噴出した余分な溶液又は単層は、例えば洗浄によって除去することができる。
【0062】
堆積した自己組織化単層材料は、続いて、例えば、Pd(II)、Pt(III)、又は銀コロイドなどを含む金属触媒溶液にこの単層を浸漬して、金属触媒材料に晒すことで、単層表面上に触媒金属を形成してもよい。その後、この単層は、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層の機能を果たすことができる。自己組織化単層材料を用いる以外に、パラジウム−錫ヒドロゾルなどの活性剤溶液の薄層を、コンタクト金属をメッキ法で堆積するためのシード層としてジェット印刷することも可能である。
【0063】
図20には、図19に示されたコンタクト開口部40の中とシード層部分80の上に無電解メッキなどのメッキ法で充填したコンタクト金属45が示されている。この実施形態では、メッキ金属は、コンタクト開口部の中だけでなく、シード層80の位置ではコンタクト開口部の周囲にも堆積する。この薄いコンタクト金属層をシード層として用いて、銀、銅、又は錫のような更に導電性の高い金属の更に厚い層を電気メッキ又は無電解メッキなどのメッキ法を用いて堆積して、金属グリッド線を形成してもよい。場合により、銅の層に続いて錫又は銀の層のように、2つ以上の金属層を順に堆積することで、グリッド線の導電性とはんだ濡れ性を改善することもできる。厚い金属層55を、メッキしたコンタクト金属層45の上へ堆積することについて、図21に示す
【0064】
構造体の後続の同時焼結中に、ニッケルなどのメッキ金属を、自己組織化単層を貫通させて、接触抵抗の低い、優れた金属/エミッタ接触を形成する。
【0065】
以下の実施例により、本発明の開示内容の実施形態を更に例示する。
【実施例】
【0066】
シリコン半導体基板の表には、窒化物パッシベーション層が形成されている。窒化物パッシベーション層には、レーザ描画法を用いて複数の穴が形成されている。複数の穴の直径はそれぞれ約20μmであり、ピッチは約0.25mmである。窒化物パッシベーション層の上と、窒化物パッシベーション層に形成された複数の穴の中には、Ni導電性コンタクト層が堆積している。このNi導電性コンタクト層の厚さは、約100nmである。
【0067】
Agペーストをスクリーン印刷によってNi導電性コンタクト層上に堆積して、窒化物パッシベーション層に形成された複数の穴と整列させるか又は位置合わせする。その後、シリコン基板を約500℃で焼結して、電流を伝達する焼結Agグリッド線を有する、Ag/Ni多層電極構造体を形成する。
【0068】
このAg/Ni多層電極の接触抵抗は、線の長さが約25.4mmの場合、約0.03Ω・cm2未満である。さらに、Ag/Ni多層電極の接触抵抗は、標準的な線の長さ約121mmの場合、約0.0063Ω・cm2未満である。これは、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線の接触抵抗約0.0055Ω・cm2に匹敵するが、本実施例のAg/Ni多層電極構造体の接触面積は、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線よりも約100倍以上小さい。このことは、接触比抵抗が接触抵抗測定値と接触面積との積に等しいことから、本実施例の接触比抵抗又は接触抵抗が、標準的なスクリーン印刷したAgグリッド線よりも約100倍以上小さいということを表している。
【符号の説明】
【0069】
10 半導体基板、20 n+型エミッタ層、30 パッシベーション層、32 感光性有機金属シード層、33 薄い金属(シード)層、40 コンタクト開口部、36 写真エマルションシード層、37 シード層(部分)、45 コンタクト金属(層)、50 金属グリッド線、55 厚い金属層、60 第1レーザビーム、65 レーザビーム、70 第2レーザビーム、78 光、80 自己組織化単層材料(シード層(部分))。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層の表面上に写真エマルション層を堆積する工程と、
前記写真エマルション層と前記パッシベーション層とを貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記エマルション層を現像して、銀金属原子から構成される画像を形成する工程と、
前記写真エマルション層の現像された部分と前記複数のコンタクト開口部の中とにコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含み、前記方法が、
(a)前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上を取り囲む前記パッシベーション層の前記表面の一部を光活性化する工程であって、前記複数のコンタクト開口部の中へ前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記パッシベーション層の前記光活性化部分の上にも前記コンタクト金属を更に堆積する、工程、
(b)前記パッシベーション層の中に前記複数のコンタクト開口部を形成する前に、前記パッシベーション層の上に感光性シード層を堆積する工程、及び前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記シード層を光活性化する工程であって、前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記シード層の光活性化部分と前記複数のコンタクト開口部の中とに前記コンタクト金属を堆積する、工程、又は
(c)前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記パッシベーション層の中に前記複数のコンタクト開口部を形成する前に、前記パッシベーション層の上に自己組織化単層材料を堆積する工程であって、前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記自己組織化単層の上と前記複数のコンタクト開口部の中とに前記コンタクト金属を堆積する、工程、
のうち、1つの工程を更に含む、方法。
【請求項1】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層の表面上に写真エマルション層を堆積する工程と、
前記写真エマルション層と前記パッシベーション層とを貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記エマルション層を現像して、銀金属原子から構成される画像を形成する工程と、
前記写真エマルション層の現像された部分と前記複数のコンタクト開口部の中とにコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と少なくとも1つの前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
光電池の電極構造体の製造方法であって、前記光電池が、パッシベーション層を上に有する半導体基板を含み、前記方法が、
前記パッシベーション層を貫く複数のコンタクト開口部を前記半導体基板に形成する工程と、
前記複数のコンタクト開口部の中にコンタクト金属を選択的にメッキして、前記コンタクト金属を堆積する工程と、
前記堆積したコンタクト金属の上部に少なくとも1つの金属含有層を堆積して、金属グリッド線を形成する工程と、
前記堆積したコンタクト金属と前記堆積された金属含有層とを焼結する工程と、
を含み、前記方法が、
(a)前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上を取り囲む前記パッシベーション層の前記表面の一部を光活性化する工程であって、前記複数のコンタクト開口部の中へ前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記パッシベーション層の前記光活性化部分の上にも前記コンタクト金属を更に堆積する、工程、
(b)前記パッシベーション層の中に前記複数のコンタクト開口部を形成する前に、前記パッシベーション層の上に感光性シード層を堆積する工程、及び前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記シード層を光活性化する工程であって、前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記シード層の光活性化部分と前記複数のコンタクト開口部の中とに前記コンタクト金属を堆積する、工程、又は
(c)前記複数のコンタクト開口部のうち1つ以上の上の部分及びそれを取り囲む部分で前記パッシベーション層の中に前記複数のコンタクト開口部を形成する前に、前記パッシベーション層の上に自己組織化単層材料を堆積する工程であって、前記コンタクト金属を選択的にメッキする前記工程が、前記自己組織化単層の上と前記複数のコンタクト開口部の中とに前記コンタクト金属を堆積する、工程、
のうち、1つの工程を更に含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−231840(P2009−231840A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67218(P2009−67218)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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