説明

シリコーンゴム組成物

シリカを含まない液状シリコーンゴム組成物が、下記の一般式
nSiO(4-n)/2
(式中、各R基は、同一又は異なり、1〜約18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、ここで、1分子当たり少なくとも2つのR基は、ヒドロキシル基及び/又は加水分解性基であるか、又は不飽和有機基であり、nは、約10〜1500の値を有する整数である)の単位を含む、25℃で300〜100,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマーを含む。この組成物は、カオリン充填剤(任意に処理されている)と、架橋剤と、触媒と、必要に応じて任意の添加剤とをさらに含む。上記の組成物を用いて製造されるエラストマー系製品は、エアバッグコーティング等の織物コーティング、スパークプラグブーツ、キーパッド、耐油性シール材、調理器具、耐熱皿及び汎用シール材、ガスケット、ダイヤフラム、成型部品、及び高圧碍子に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカを含まない充填液状シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマーと称されることが多い付加(ヒドロシリル化)硬化型の液状シリコーンゴム(LSR)は、4つの必須成分:
実質的に線状のシリコーンポリマーと、
1つ又は複数の補強性充填剤及び任意で1つ又は複数の非補強性充填剤と、
架橋剤と、
ヒドロシリル化触媒と
から構成される。
【0003】
最も広く使用されている実質的に線状のシリコーンポリマーは、25℃で約100,000Pa・sの最大粘度を有する液状ポリシロキサンである。これらの液状ポリシロキサンは、式:
mSiO(4-m)/2
(式中、各R基は、同一又は異なり、1〜約18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、aは約10〜1500の値を有する整数である)の繰り返し単位を一般的に含む。Rは、1〜約8個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ヘキシル、フェニル又はオクチル;ビニル等のアルケニル基;3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン化アルキル基であることが好ましい。より好ましくは、全てのR基の少なくとも50%がメチル基であり、最も好ましくは実質的に全てのR基がメチルである。ポリマーはまた、所望の硬化機構に基づいて選択されるR基も含有する。一般に、硬化機構は、縮合硬化又は付加硬化のいずれかによるものであるが、一般的に付加硬化プロセスを介するものである。縮合反応については、1分子当たり2つ以上のR基が、ヒドロキシル基又は3個までの炭素原子を有するアルコキシ基等の加水分解性基である必要がある。付加反応については、1分子当たり2つ以上のR基が、好ましくは8個までの炭素原子を有する不飽和有機基、一般にアルケニル基又はアルキニル基でなければならない。本発明の組成物が付加反応によって硬化される場合、Rがアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基又はヘキセニル基であることが好ましい。当該技術分野で既知のこのようなポリマーは、相対的に粘性の物質から自由に流れる液体へと変化し得る。
【0004】
一般に、2つのタイプの充填剤が使用されており、これらは通常、補強性充填剤及び非補強性充填剤と呼ばれる。補強性充填剤は液状シリコーンゴムに高強度を付与し、ヒュームドシリカ及び/又は沈降シリカ等の微粉化された非晶質シリカを含み得る。非補強性充填剤はシリコーンゴム組成物のコストを低減させるために一般に使用され、粉砕石英、炭酸カルシウム、及び珪藻土等の安価な充填剤材料を一般に含む。通常、補強性充填剤は、単独で使用されるか、又は非補強性充填剤と併用される。補強性充填剤は、シリコーンゴム組成物の物理特性及び/又は機械特性、すなわち配合製品の引張強度、圧縮永久ひずみ及び熱安定性を改善するために、通常、オルガノシラン、オルガノシロキサン又はオルガノシラザンで処理される。
【0005】
従来の高強度LSRは、ヒュームドシリカ又は沈降シリカを補強性充填剤の主要原料として使用している。多くの問題は、LSRを補強するためのシリカ充填剤の使用に関係している。1つの主要な問題は、充填剤自体、特にヒュームドシリカのコストがかなり高いことである。このようなコストは、LSR組成物の製造コストにかなりの影響を及ぼす。さらに、シリカ表面の化学的性質のために、シリカを、例えば、ヘキサアルキルジシラザン等のシラザン又は短鎖シロキサンジオールによりin situ(平穏(pacification))で前処理又は処理する必要があり、これにより安定な材料が得られる。このin situプロセスは、
1.シリカをポリマーに組み込むために、
2.処理プロセスを完了させるために、且つ
3.真空下で過剰な処理剤を除去するために
強力混合レジームの使用を必要とし、
4.これらの全ての要素が、シリカ充填LSRの一般的なコスト構造に有意に付与される。
【0006】
LSRは、シリコーン樹脂を用いて補強され得る。しかしながら、このアプローチにもいくつかの制限が本来備わっている。樹脂コストが、総組成コストの中で比較的高い構成要素である。また、補強はかなり制限され、このアプローチから得られるLSRは一般に、バルクゴム(bulk rubber)特性があまり重要ではないコーティング用途に単に用いられている。
【0007】
一般に、ヒドロシリル化(付加硬化)型硬化剤系が最も広く使用されており、これは白金族触媒と、液状ポリシロキサン中で不飽和基を架橋するのに使用可能なケイ素に結合した水素基を少なくとも2つ有する短鎖シロキサンポリマーを含む架橋剤とを含む。
【0008】
液状シリコーンゴム組成物は一般に二液型で貯蔵され、一方が、ポリマーと、充填剤と、触媒とを含み、他方が、ポリマーと、充填剤と、ケイ素に結合した水素架橋剤と、阻害剤(必要に応じて)とを含む。二液は、貯蔵時の望ましくないあらゆる硬化を防止するために使用直前に混合される。顔料、接着防止剤、可塑剤及び接着促進剤等の他の任意の添加剤は、液中の他の置換基の1つと化学的に反応性でない限りそのいずれかの液中に取り込まれ得る。
【0009】
液状シリコーンゴム組成物は、ゴム試料を破断させるのに必要とされる力の量である引張強度と、ゴム試料が伸長され得る長さである伸びと、引裂き伝播抵抗を測定する引裂き強度と、ゴム試料の永久変形のために必要とされる力の量である圧縮永久歪みとを包含する様々なパラメータを用いて評価することができる。
【0010】
国際公開第2004/070102号は、組成物全体の100重量部当たり、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有する充填剤を15〜30重量部含む、織布、特にエアバッグをコーティングするためのコーティング材料について記載している。カオリンは、好適な充填剤と考えられる幅広い種類の無機化合物のうちの1つの選択肢として挙げられているが、その実施例は、実質的に、実現性のある代替物としての炭酸カルシウム又はアルミニウム三水和物の使用を対象としている。この製品はエアバッグ用の膨張可能なコーティング等として提供されるが、物理特性が不十分であり、使用される充填剤は補強効果をほとんど又は全く付与しないため、それ自体を、本明細書中で考えられる用途に使用することはできない。
【0011】
国際公開第00/46302号は、充填剤としてウォラストナイトと、任意の補強性シリカ充填剤とを含む液状シリコーンゴムを記載している。しかしながら、シリカ充填剤が1つの実施例ではなく全ての実施例において使用されていることに留意されたい。この文献では、その難燃性/炭化特性のためにウォラストナイトが推奨されている。
【0012】
一液型高粘稠度ゴム組成物及びその製造方法が、本願の優先日後に公開された国際公開第2005/054352号に開示されており、この特許では、処理カオリンで実質的に充填される一液型高粘稠度シリコーンゴムが提供されている。この組成物は、1,000,000センチストーク(mm2/s)の粘度を有するオルガノポリシロキサンガムと、処理カオリンと、硬化剤(一般に有機過酸化物)と、1つ又は複数のレオロジー調整剤、顔料、着色剤、接着防止剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤の群から選択される任意の添加剤とから本質的に成る。この場合、組成物は、実質的にシリカ補強性充填剤を含まないが、最少量(バルク組成物に補強性を付与するものではない量)のシリカは含有していてもよい。
【0013】
本願の優先日後に公開された国際公開第2005/092965号は、いわゆるシリコーン「樹脂」と共にカオリン充填剤を使用することを記述している。カオリンが1.0重量%〜12.0重量%のアミノ若しくはビニル官能化オルガノシラン、又はアミノ若しくはビニル官能化オルガノシロキサンで処理されることが特異的に要求される。しかしながら、アミノ化合物が白金族触媒を阻害/破壊するため、本発明に記載したように、アミノ官能化オルガノシラン及びアミノ官能化オルガノシロキサンは、白金族触媒を用いる付加(そうでなければ、ヒドロシリル化として知られている)硬化シリコーンゴム組成物に使用することができないことを理解されたい。
【0014】
米国特許第6,354,620号は、非補強性充填剤を任意に含有するが、3重量%以下の補強性充填剤を含有する硬化性シリコーン系コーティング組成物であって、織布(例えば、エアバッグ)上のコーティングとして使用される硬化性シリコーン系コーティング組成物を記載している。使用される非補強性充填剤は層状又は板状であることが好ましく、最も好ましくは、タルク、アルミン酸塩、カーノット、グラファイト、葉ろう石又はサーモナイトである。
【0015】
米国特許第4,677,141号は、ビニル末端オルガノポリシロキサンポリマー、シリカベースの補強性充填剤及び有機過酸化物硬化剤を、オレフィン系不飽和シロキシ基で前処理されたカオリン等のホワイトクレーと共に含む着色可能なシリコーンエラストマーの熱安定性を改善する手段について記載している。欧州特許第0057084号は同様の技術に関するが、この場合もシリカの形態の補強性充填剤の存在を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、従来技術の包括的な教示に反して、他の標準的なLSR(一液型又は二液型のどちらか)配合物においてシリカ充填剤が完全に置き換えられてもよく、真の補強及びしたがって許容可能な物理特性プロファイルを依然として維持することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、シリカを含まない液状シリコーンゴム組成物であって、
下記の一般式
nSiO(4-n)/2
(式中、各R基は、同一又は異なり、1〜約18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、ここで、1分子当たり少なくとも2つのR基は、ヒドロキシル基及び/又は加水分解性基であるか、又は不飽和有機基であり、nは、約10〜1500の値を有する整数である)の単位を含む、25℃で300〜100,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンと、
1.カオリン充填剤(任意で処理されている)と、
2.架橋剤と、
3.触媒と
4.1つ又は複数の阻害剤、顔料、着色剤、接着防止剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤の群から選択される任意の添加剤と
を含む、シリカを含まない液状シリコーンゴム組成物が提供される。
【0018】
この液状ポリシロキサンは、一般的に、式:
nSiO(4-n)/2
(式中、R基は、同一又は異なり、1〜約18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、aは約10〜1500の値を有する整数である)の繰り返し単位を含有する。Rは、1〜約8個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ヘキシル、フェニル又はオクチル;ビニル等のアルケニル基;3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン化アルキル基であることが好ましい。より好ましくは、全てのR基の少なくとも50%がメチル基であり、最も好ましくは実質的に全てのR基がメチル基である。ポリマーは、所望の硬化機構に基づいて選択されるR基も含有する。一般に、硬化機構は、縮合硬化又は付加硬化のいずれかによるものであるが、一般的に付加硬化プロセスを介するものである。縮合反応では、1分子当たり2つ以上のR基が、ヒドロキシル基又は3個までの炭素原子を有するアルコキシ基等の加水分解性基であるべきである。付加反応では、1分子当たり2つ以上のR基が、好ましくは8個までの炭素原子を有する不飽和有機基、一般にアルケニル基又はアルキニル基でなければならない。本発明の組成物が付加反応によって硬化される場合、Rは、アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基又はヘキセニル基であることが好ましい。
【0019】
オルガノポリシロキサンポリマーは、好ましくは式R21SiO[(R2SiO)x(RR1SiO)]ySiR21(式中、各Rは、同一又は異なり、前述した通りであり、好ましくは各R基がメチル基又はエチル基であり、R1がアルケニル基、好ましくはビニル基又はヘキセニル基であり、xは整数であり、yは0又は整数である)を有する1つ又は複数のポリマーを含むことが好ましい。このポリマーは、25℃で(他の成分の添加前に)300〜100,000mPa・sの粘度を有する。
【0020】
本発明による代表的なオルガノポリシロキサンポリマーとしては、例示目的で、式Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)]ySiMe2Vi及び式Me2ViSi(Me2SiO)xSiMe2Vi(式中、Meはメチル基(−CH3)を表わし、Viはビニル基CH2=CH−を表わす)のポリマーが挙げられる。
【0021】
本発明における最も重要な概念は、通常のシリカ系補強性充填剤と完全に置き換えることができるような、LSRを十分に補強するであろう好適な充填剤の識別であった。本発明者らは、初めに、1(完全な球形(又は立方形)充填剤)〜1,000未満(長繊維の場合)の範囲をとる、アスペクト比で通常定義されるような充填剤の形状、すなわち充填剤の基本的な特性に基づき好適な充填剤を規定しようとした。
【0022】
多くの場合、充填剤のアスペクト比は、充填剤の性質に基づく2つの方法のうちのどちらか1つによって定義される。針/繊維形状の充填剤の場合、アスペクト比は通常、粒子の直径に対する粒子長の比率(L/D)として表されるが、大半の他の無機充填剤では、平面と同じ領域の円の平均厚みに対する円の直径の比率(D/T)として表される。充填剤は一般的に、その形態に基づき数種類に分類され得る。粒状充填剤の大多数は、1〜3の低アスペクト比を有する。これらは、等尺性(isometric)形状の粒子から成り、球状又は不規則形状のいずれかに分類される。球状充填剤としては、ヒュームドシリカ、ガラスビーズ及びセラミック微粒子等が挙げられ得る。不規則形状材料としては、アルミニウム三水和物(ATH)及び炭酸カルシウム等の広範に使用される多くの充填剤の種類が挙げられる。
【0023】
例えばD/Tが5〜50、特に5〜30であるより大きいアスペクト比で、充填剤は一般的に、元来板状(又は層状)である。代表的な例としては、米国特許第6,354,620号に記述されるように、タルク及びマイカが挙げられる。
【0024】
100より大きいアスペクト比で、充填剤は一般的に繊維状であり、任意の特性の増強は、ポリマーに関する充填剤粒子のアライメントの結果としてのものであり、バルク効果の結果ではないと考えられた。
【0025】
本発明者らは、層状充填剤が、シリカ充填剤と完全に置き換わるのに十分に良好な補強効果をもたらすと考えた。カオリン及びマイカは両方とも板状で六角形の結晶構造を有する。公称されているアスペクト比は、およそ20である。タルクは、板状体種の充填剤の別の例である。元来六角形の程度は低いが、タルクは、カオリン及びマイカとの多くの類似性(及び非常に類似するアスペクト比)を有する。したがって、これらの充填剤は、シリカ充填剤と置き換えるのに十分な補強効果をもたらすと本発明者らが初めに考えた重大な異方性を有する。これは、ATH及び炭酸カルシウム等のより等尺性の(isometric)充填剤によっては見られない。5〜50であるが、主に5〜30のアスペクト比を有するこれらの層状充填剤粒子は、十分な程度のシロキサンポリマー鎖間の相互貫入を達成し、好適な補強効果をもたらすことができる。
【0026】
充填剤の補強可能性に影響を与える別の要素は表面処理である。充填剤表面上に残る官能性は、シラン、シラザン又は低分子量(MW)オルガノポリシロキサン又はステアリン酸処理によって不活性化することができる。このことは、得られる化合物の材料の補強可能性及び/又は貯蔵安定性及び/又は熱安定性を改良することができる。
【0027】
以下の実施例及び比較例から理解されるように、驚くべきことに、任意に処理されたカオリンは、類似の層状構造を有する他の充填剤、又はケイ酸カルシウム(例えばウォラストナイト及び葉ろう石)等の針状構造充填剤と比べて、あらゆる点で極めて良好な物理特性を有することを示した。
【0028】
いずれの好適なカオリンを利用してもよいが、焼成(calcined)カオリンが特に好ましい。カオリンは当該技術分野においてよく知られている。カオリンはケイ酸アルミニウムであり、主にAl23・2SiO2・2H2Oをいくらかのイライト及び不純物と共に含む。カオリンは白色形態で容易に入手可能であるため、特に有用である。本発明の目的のために、「白色」は、シリコーンエラストマー組成物を所望の色へさらに着色させるのを妨げるのに十分な強度の色や色合いが存在しないと考えられるものである。カオリンは、参照によって援用される’141号特許にさらに説明されている。好ましくは、カオリンは、100重量部の組成物全体に対して、約30〜100重量部、より好ましくは100重量部の組成物全体に対して約30〜70重量部、最も好ましくは100重量部の組成物全体に対して約35〜70重量部の範囲で利用される。これは、この範囲から成る組成物が、引張強度、破断伸び、引裂き強度、硬度及び処理速度等の物理特性の最良のバランスを得るからである。
【0029】
本発明による組成物に未処理のカオリンを利用することも可能であるが、熱安定性が重要な考慮事項となる用途では、処理されたカオリン充填剤、特にシラン、シラザン又は短鎖オルガノポリシロキサンポリマーから成る群の1つ又は複数で処理されたカオリンを本発明による組成物に使用することが好ましいことを本発明者らは見出した。カオリンの処理に最も好適であると考えられるシランは、一般式R1(4-m)Si(OR)m(式中、mは1〜3の値を有し、各R1は、同一又は異なり、アルキル基、アリール基、又は官能基、例えば、アルケニル基(ビニル若しくはアリル等)又はアミノ基等の一価の有機ラジカルを表わす)のアルコキシシランである。それらのいくつかの好適なシランとしては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン、又はビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。所望であれば、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、及び1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン等のシラザンをカオリン充填剤用の処理剤として使用してもよい。短鎖オルガノポリシロキサンとしては、例えば、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサン、及び少なくとも1つのSi−H基(末端基であっても、末端基でなくてもよい)を含むオルガノポリシロキサンが挙げられる。ステアリン酸塩及び/又はステアリン酸を、使用されるカオリンを処理するのにさらに利用してもよい。好ましくは、処理する場合、処理剤は、処理されたカオリン充填剤の約1〜10重量%である。最も好ましくは、処理剤は、処理されたカオリン充填剤の2.5〜7.5重量%である。
【0030】
上述のように、硬化剤は、オルガノハイドロジェンシロキサンと組み合わせてヒドロシリル化反応触媒によって組成物を硬化及び架橋するのに必要とされる。本発明の組成物を硬化させるために、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり2個超含有していなければならない。オルガノハイドロジェンシロキサンは、例えば、1分子当たり約4〜200個のケイ素原子を含有することができ、25℃で約10Pa・sまでの粘度を有する。オルガノハイドロジェンシロキサン中に存在するケイ素に結合した有機基としては、1〜4個の炭素原子を有し、またそうでなければアルケニル又はアセチレン系不飽和を含まない置換及び非置換のアルキル基が挙げられる。好ましい各オルガノハイドロジェンシロキサン分子は、1/1〜10/1のポリマー中のアルケニル基の全量に対するオルガノハイドロジェンシロキサン中のSi−H基のモル比を得るのに十分な量でケイ素に結合した水素原子を少なくとも3個含む。
【0031】
好ましくは、ヒドロシリル化(付加)硬化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウム触媒から選択される白金族金属系の触媒である。本発明の組成物の硬化を触媒するのに有用な白金族金属含有触媒は、ケイ素に結合した水素原子とケイ素に結合したアルケニル基との反応を触媒することが知られているもののいずれでもよい。ヒドロシリル化による本発明の組成物の硬化をもたらす触媒として使用するのに好ましい白金族金属は白金である。本発明の組成物を硬化させるためのいくつかの好ましい白金系のヒドロシリル化触媒は、白金金属、白金化合物及び白金錯体である。代表的な白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び低分子量のビニル含有オルガノシロキサンを含有する化合物の錯体が挙げられる。本発明における使用に好適な他のヒドロシリル化触媒としては、例えば、[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R32S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhbオレフィンcCld、Rh(O(CO)R33-n(OH)n(式中、Xは水素、塩素、臭素又はヨウ素であり、Yは、メチル又はエチル等のアルキル基、CO、C814又は0.5C812であり、R3はアルキルラジカル、シクロアルキルラジカル又はアリールラジカルであり、R2はアルキルラジカル、アリールラジカル又は酸素置換ラジカルであり、aは0又は1であり、bは1又は2であり、cは1〜4の整数(両端を含む)であり、dは2、3又は4であり、nは0又は1である)等のロジウム触媒が挙げられる。Ir(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z)(En)22、又は[Ir(Z)(Dien)]2(式中、Zは、塩素、臭素、ヨウ素、又はアルコキシであり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである)等の任意の好適なイリジウム触媒を使用してもよい。
【0032】
白金触媒の好ましい形態は、塩化白金酸、アセチルアセトン白金、不飽和化合物(例えば、エチレン、プロピレン、オルガノビニルシロキサン及びスチレン)とのハロゲン化白金の複合体、ヘキサメチル二白金、PtCl2、PtCl3、PtCl4及びPt(CN)3である。好ましい白金系触媒は、米国特許第2,823,218号に教示されているように、一般に入手可能なヘキサ水和物形態のような、又は無水物形態のいずれかの塩化白金酸の形態である。より好ましい白金系触媒は、米国特許第3,419,593号に開示されているように、塩化白金酸がアルケニル有機ケイ素化合物(例えばジビニルテトラメチルジシロキサン)と反応する際に得られる組成物である。
【0033】
白金族金属含有触媒は、組成物100万重量部(ppm)当たりわずか0.001重量部の元素白金族金属に相当する量で本発明の組成物に添加することができる。好ましくは、組成物中の白金族金属の濃度は、少なくとも1ppmの元素白金族金属に相当する量を提供することが可能な濃度である。白金系触媒(C)は、組成物の総重量に基づき、2〜100重量ppm、より好ましくは5〜50ppmの白金金属を得る量で使用されることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物が付加反応によって硬化されるとする場合、構成成分(A)、(B)及び(C)の混合物は、周囲温度で硬化し始める可能性がある。より長時間の作用時間又は「ポットライフ」を得るために、周囲条件下での触媒の活性は、好適な阻害剤の添加によって遅延又は抑制することができる。
【0035】
既知の白金族金属触媒の阻害剤としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン系化合物が挙げられる。2−メチル−3−ブチン−2−オール及び1−エチニル−2−シクロヘキサノール等のアセチレン系アルコールは、25℃で白金系触媒の活性を抑制する好ましい種類の阻害剤を成す。これらの触媒を含有する組成物は通常、70℃以上の温度で加熱して、実用速度で硬化させる必要がある。室温硬化は通常、架橋剤及び阻害剤が2つの液部分のうちの1つに存在し、白金が他方の液部分中に存在する二液系を用いることによって、上記のような系によって達成される。
【0036】
白金族金属1モル当たり阻害剤1モルという低い阻害剤濃度は、場合によっては、満足すべき貯蔵安定性及び硬化速度を付与するであろう。他の場合において、白金族金属1モル当たり阻害剤500モル以上までの阻害剤濃度が要求される。所定の組成物中の所定の阻害剤の最適濃度は、日常的な実験によって容易に求められ得る。
【0037】
ポリマーが縮合反応を経て硬化可能である(例えば、末端基が−OH又はアルコキシ単位を含有する)場合、ポリマーと反応すると思われる任意の好適な架橋剤を使用してもよい。上記の硬化性組成物中の(C)に使用される架橋剤は、好ましくは、加水分解性基を含有するシラン化合物である。シラン化合物としては、ケイ素に結合した加水分解性基、例えば、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基)、ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ及びイソブチルケトキシミノ)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピル)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ及び1−エチル−2−メチルビニルオキシ)を含有する1つ又は複数のシラン又はシロキサンが挙げられる。
【0038】
シロキサン系架橋剤の場合、分子構造は、直鎖、分岐鎖、又は環状であってもよい。
【0039】
架橋剤(C)は、1分子当たり、2つ、好ましくは3つ又は4つの、ケイ素に結合した縮合性(好ましくは加水分解性)基を有し得る。架橋剤がシランである場合、またシランが、ケイ素に結合した加水分解性基を1分子当たり3つ有する場合、第4の基は好適には、非加水分解性のケイ素に結合した有機基である。これらのケイ素に結合した有機基は好適には、フッ素及び塩素等のハロゲンによって任意に置換されるヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチル)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシル)、アルケニル基(例えば、ビニル及びアリル)、アリール基(例えば、フェニル及びトリル)、アラルキル基(例えば、2−フェニルエチル)、及び上記有機基の水素の全て又は一部をハロゲンで置換することによって得られる基が挙げられる。しかしながら、第4のケイ素に結合した有機基はメチルであることが好ましい。
【0040】
架橋剤として使用され得るシラン及びシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン、アルケニルトリオキシモシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ−ブトキシジアセトキシシラン、フェニル−トリプロピオンオキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニル−トリス−メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、エチルポリシリケート、n−プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサンが挙げられる。使用される架橋剤はまた、上記の2つ以上の任意の組み合わせを含んでいてもよい。
【0041】
組成物中に存在する架橋剤の量は、架橋剤の特定の性質、特に、選択される分子の分子量に応じて決定される。組成物は好適には、上記のポリマー材料と比較して少なくとも化学量論的な量で架橋剤を含有する。組成物は、例えば、組成物全体の2〜30重量部の架橋剤、一般的には組成物全体の2〜10重量部の架橋剤を含有する。アセトキシ架橋剤は通常、組成物全体の3〜8重量部、好ましくは組成物全体の4〜6重量部の量で存在し得るのに対し、一般的により大きい分子量を有するオキシミノ架橋剤は通常、組成物全体の3〜8%重量部を構成するであろう。
【0042】
ポリマーが縮合反応経路を経て硬化する場合、触媒(D)は縮合触媒を含む。これにより、組成物が硬化する速度が増大する。特定の組成物に包含させるように選択される触媒は、必要な硬化速度に応じて決定される。任意の好適な縮合触媒は、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、アルミニウム、ガリウム又はゲルマニウム、及びジルコニウムをベースとする触媒(例えば、有機スズ金属触媒)を含む組成物を硬化するのに使用されてもよく、或いは、鉄、コバルト、マンガン、鉛及び亜鉛の2−エチルヘキソエートを使用してもよい。有機スズ、チタネート及び/又はジルコネートをベースとする触媒が好ましい。
【0043】
オキシモシラン又はアセトキシシランを含有するシリコーン組成物は、一般的に、硬化のために、スズ触媒(例えば、トリエチルスズタルトレート、オクタン酸スズ、オレイン酸スズ、ナフトエ酸スズ、ブチルスズトリ−2−エチルヘキソエート、酪酸スズ、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、及びジオルガノスズ塩、詳細には、ジカルボン酸ジオルガノスズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジメトチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、オクタン酸第一スズ、ジメチルスズジネオデコノエート(dineodeconoate)、ジブチルスズジオクトエート)を使用する。ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートが特に好ましい。
【0044】
アルコキシシラン架橋剤化合物を含む組成物にとって、好ましい硬化触媒はチタネート化合物又はジルコネート化合物である。このようなチタネートは、一般式Ti[OR2(式中、R2は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖であってもよく、1〜10個の炭素原子を含有する一価の第1級、第2級又は第3級脂肪族炭化水素基を表わす)による化合物を含んでいてもよい。任意に、チタネートは、部分不飽和基を含有していてもよい。しかしながら、R2の好ましい例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第3級ブチル、及び2,4−ジメチル−3−ペンチル等の分岐鎖第2級アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、各R2は、同一である場合、イソプロピル、分岐鎖第2級アルキル基又は第3級アルキル基、特に第3級ブチルである。例としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、又はキレート化チタネート又はキレート化ジルコネートが挙げられる。キレート化は、任意の好適なキレート剤(例えば、メチルアセチルアセトネート又はエチルアセチルアセトネート等のアルキルアセチルアセトネート)を用いてもよく、好適な触媒は、例えば、ジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタネート、及びジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等である。好適な触媒のさらなる例は、欧州特許第1254192号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。使用される触媒の量は、使用される硬化系に応じて決定されるが、通常、組成物全体の0.01〜3重量部である。
【0045】
本発明において、組成物は、シリカを含まない、すなわち、沈降シリカ、粉砕シリカ、ヒュームドシリカをいずれも含有しない。
【0046】
選択された充填剤の補強効果に実質的に悪い影響を及ぼさない場合に使用することができ、また硬化組成物の最終的な使用/用途に応じて使用することができる任意の添加剤としては、顔料及び着色剤、接着防止剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤、並びに乾燥剤が挙げられる。
【0047】
任意の好適な接着促進剤(複数可)を本発明の組成物中に包含させてもよい。これらとしては、例えば、アミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、並びにメルカプト−アルキルアルコキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン)等のアルコキシシラン、エチレンジアミンとシリルアクリレートとの反応生成物が挙げられ得る。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等のケイ素基を含有するイソシアヌレートをさらに用いてもよい。さらに好適な接着促進剤は、エポキシアルキルアルコキシシラン(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とアミノ置換アルコキシシラン(例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)との反応生成物、及び任意でアルキルアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン及びそれらの誘導体)である。
【0048】
熱安定化剤としては、酸化鉄及びカーボンブラック、鉄カルボン酸塩、セシウム水和物、チタニア、ジルコン酸バリウム、オクタン酸セシウム及びオクチル酸ジルコニウム、並びにポルフィリンが挙げられ得る。
【0049】
難燃剤としては、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、ホウ酸亜鉛、及びウォラストナイト等のケイ酸塩、白金及び白金化合物が挙げられ得る。
【0050】
導電性充填剤としては、カーボンブラック、金属粒子(例えば、銀粒子)、任意の好適な導電性金属酸化物充填剤(例えば、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理された酸化チタン粉末、表面がスズ及び/又はアンチモンで処理されたチタン酸カリウム粉末、表面がアンチモンで処理された酸化スズ、並びに表面がアルミニウムで処理された酸化亜鉛が挙げられ得る。
【0051】
熱伝導性充填剤としては、金属粒子(例えば、粉末状、フレーク状及びコロイド状の銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウム及びチタン)、金属酸化物(特に酸化アルミニウム(Al23)及び酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム)、セラミック充填剤(例えば、タングステンモノカーバイド、炭化ケイ素及び窒化アルミニウム、窒化ボロン及びダイアモンドが挙げられ得る。
【0052】
他の任意の成分としては、ハンドリング剤、酸受容体、及びUV安定化剤が挙げられる。
【0053】
ハンドリング剤を使用して、ダウ・コーニング・コーポレイション(Dow Corning corporation)によりSILASTIC(登録商標)HA−1、HA−2及びHA−3等の種々の商品名で販売されているシリコーンゴムの非硬化特性(例えば、グリーン強度又は加工性)を改変する。
【0054】
酸受容体としては、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、及び酸化亜鉛等が挙げられ得る。
【0055】
セラミック化剤(ceramifying agents)は灰安定化剤と呼ばれることもあり、ウォラストナイト等のケイ酸塩が挙げられ得る。
【0056】
従来のシリコーンゴム組成物と同等の機械特性を有するシリコーンゴム組成物を、加熱を伴わず、且つ補強性充填剤としての高価なヒュームドシリカの使用の必要性を回避するプロセスで、本発明によって製造することができる。任意に処理されたカオリン充填剤を使用することおける1つの主な利点は、プラネタリー式ミキサー及び/又はディソルバー式ミキサー等の低電力ミキサーを単純な一段階混合プロセスで使用し得ることである。
【0057】
本発明の第2の実施の形態によれば、任意に処理されたカオリンを含有する一液型液状シリコーンゴム組成物を製造する方法であって、(i)オルガノポリシロキサンと、処理カオリンとを室温条件下で混合する工程であって、(i)で調製された混合物がシリカを含まない工程と、(ii)任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、架橋剤を(i)の混合物に添加する工程とから本質的になる、任意に処理されたカオリンを含有する一液型液状シリコーンゴム組成物を製造する方法を提供する。
【0058】
本発明の第3の実施形態によれば、任意に処理されたカオリンを充填剤として含有する二液型液状シリコーンゴム組成物を製造する方法であって、(i)オルガノポリシロキサンと、任意に処理されたカオリンとを室温条件下で混合する工程であって、(i)で調製された混合物がシリカを含まない工程から本質的になり、任意に処理されたカオリンを充填剤として含有する二液型液状シリコーンゴム組成物を製造する方法を提供する。
【0059】
その後、二液型組成物の液部分Aについて、上記のような触媒が、任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、混合物に導入される。
【0060】
二液型組成物の液部分Bについて、オルガノハイドロジェンシロキサン、架橋剤、及び必要に応じて阻害剤が、任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、混合物に配合される。
【0061】
二液型組成物の場合、液部分Aと液部分Bとの任意の好適な比率を使用することができ、液部分A及び液部分Bは使用直前に相互混合する必要があるため、混合し易いように、液部分A:液部分Bの1:1の比率が、単純化及び使用者にとっての使い易さから好ましい。
【0062】
単一の組成物中に組み合わせたときに得られる組成物は好ましくは、50℃〜200℃、好ましくは70℃〜150℃の温度で好適な時間(一般的には、選択される温度に応じて決定される)硬化される。
【0063】
室温条件とは、20〜25℃(68〜77°F)の標準周囲温度における大気圧及び室温を意味することを理解されたい。工程(i)中に、補強性充填剤のin−situ処理を行う際に必要とされるような熱を加える必要がないことは、本発明における大きな利点である。全ての混合プロセスと同様に混合の影響で熱が発生し得るが、本発明の場合の混合ではさらなる熱の投入を何ら必要としないであろう。
【0064】
LSR組成物を調製する従来の経路は、初めに、高剪断ミキサー内のヒュームドシリカと、シリカ用の処理剤と、オルガノポリシロキサンポリマーとの混合物を加熱することによって、シリカ/ポリマーマスターバッチ(濃厚相)を製造することであり、これはこのマスターバッチの粘度は大きいことによる。その後、高温(150℃を超える)真空ストリッピングにより、過剰な処理剤を除去する。引き続き、架橋剤及び触媒等の他の添加剤、並びに、顔料及び着色剤、熱安定化剤、接着防止剤、可塑剤、二次(非補強性)充填剤並びに接着促進剤等の任意選択的な添加剤をミキサーに導入する。
【0065】
本発明によれば、177℃の空気中で22時間熱エージングした後でも、依然として、約6MPaの引張強度、40〜80の硬度(ショアA)、1.1〜1.5gcm-3の密度、150%を超える、最も好ましくは175%を超える伸び、10〜15kN/mの引裂き強度、及び25%未満の永久圧縮歪のような値を有する特性プロファイルによって一般に表される、許容可能なレベルの機械特性、熱特性及び電気特性を得ることが可能である。
【0066】
本発明によるプロセスでは、高剪断ミキサー内でシリコーンゴムマスターバッチを製造する必要性が回避される。それどころか、処理された半補強性カオリン充填剤は、オルガノポリシロキサンポリマーと直接混合されて、従来のシリコーンゴム組成物と同等の機械特性を有する完成組成物が製造される。さらに、熱を加える必要性が回避され、低剪断の混合装置において全体のプロセスを迅速且つ効率的に実行することができる。
【0067】
カオリンは、ヒュームドシリカよりもはるかに容易にポリマー中に分散するため、全体の混合サイクルはかなり縮小され、ミキサーの利用性がはるかに良くなる。さらに、カオリンは半補強性充填剤であるため、適切な機械特性を有する完成組成物を提供することが可能である。しかしながら、カオリンは半補強性に過ぎないため、ヒュームドシリカの場合よりも高い充填レベルを用いることが必要とされる。他方で、カオリンはシリカと比較してコストが低いので、完成組成物の適当なレベルの経済的な利益(attractiveness)を得るために大量のカオリンを使用する必要はない。好ましくは、処理カオリンとオルガノポリシロキサンとの比率は、1:2〜2:1である。したがって、ヒュームドシリカを用いることなく、オルガノポリシロキサン、例えばポリシロキサンガム100重量部中に、例えば、約100重量部のカオリンを使用することができる。
【0068】
したがって、ヒュームドシリカを含有する完成組成物と同じレベルの機械特性を得ることができる。さらに、ヒュームドシリカの排除は、加熱が必要とされず、LSR製造プロセス全体が低剪断のミキサー内で実行され得ることを意味する。さらに、カオリンの組み込み時間はヒュームドシリカよりもはるかに速く、その結果、より速い処理能力(throughput)を用いることによりミキサーの能力が増大される。最後に、カオリンはヒュームドシリカよりもはるかに高いかさ密度を有し、これにより取り扱い及び保存の容易性がはるかに改善される。
【0069】
本発明によるLSR組成物の潜在的な応用分野としては、エアバッグコーティング等の織物コーティング、スパークプラグブーツ、キーパッド、耐油性シール材、ケーキ型材料及び汎用シール材、ガスケット、ダイヤフラム、成型部品、及び高圧碍子が挙げられる。標準的な処理を行ったヒュームドシリカ充填液状ゴム組成物とは異なりカオリン充填剤を使用する際に本発明者らが識別した1つの重要な特性は、耐熱性の著しい改良である(これは、熱伝導性の著しい改良に対応する)。このような改良は、放熱能を有する優れたシリコーンエラストマー系製品に、熱い領域から冷たい領域へと迅速に熱を伝導させることにより熱分解を制限することが重要である用途に関する特殊な利点を与える。この態様が特に重要となる用途としては、調理器具/耐熱皿用途、及びコピーローラータイプの用途が挙げられる。
【実施例】
【0070】
本発明をさらに詳細に説明するために以下の実施例を提供する。
【0071】
全ての実施例について、引張強度及び破断伸びはDIN 53 504によって求めた。デュロメーター(ショアA)硬度はASTM D2240によって求め、引裂き強度はASTM D624Bによって求めた。
【0072】
<処理カオリンの調製>
1ミクロンの平均粒径を有する焼成カオリンを通常の家庭用フードミキサーのミキシングボウルに入れ、強力に攪拌してかき混ぜた。カオリン100グラム当たり3.8グラム量のメチルトリメトキシシラン処理剤を使用した。次に、カオリンの入ったミキシングボウル内に、カオリン表面の所望のレベルの処理を得るのに十分な量の処理剤を導入した。処理剤の添加後、ミキサーを10分間運転させたままにした。次に、ミキシングボウルの内容物を金属トレイに移し、最低12時間、120℃の空気循環式オーブン内に置いた。
【0073】
[実施例1]
以下の構成成分から成る二液型組成物を1対1の混合比で混合した。
液部分A:
52部 α,ωビニルジメチルシロキサンエンドブロックされたポリジメチルシロキサン、粘度55Pa・s
40部 処理カオリン(又は他の)充填剤
8部 ビニルジメチルシロキサンエンドブロック単位を有する、ジメチル,メチルビニルシロキサンコポリマー、粘度350mPa・s
触媒量の白金触媒
液部分B:
52部 α,ωビニルジメチルシロキサンエンドブロックされたポリジメチルシロキサン、粘度55Pa・s
40部 処理カオリン充填剤
6部 ビニルジメチルシロキサンエンドブロック単位を有する、ジメチル,メチルビニルシロキサンコポリマー、粘度350mPa・s
2部 メチルシルセスキオキサン架橋剤を有する、ジメチル,メチルハイドロジェンシロキサン、粘度15mPa・s
1−エチニルシクロヘキサノール
【0074】
混合した結果得られた組成物は、
52部 α,ωビニルジメチルシロキサンエンドブロックされたポリジメチルシロキサン、粘度55Pa・s
40部 充填剤
7部 ビニルジメチルシロキサンエンドブロック単位を有する、ジメチル,メチルビニルシロキサンコポリマー、粘度350mPa・s
1部 メチルシルセスキオキサン架橋剤を有する、ジメチル,メチルハイドロジェンシロキサン、粘度15mPa・s
触媒量の白金触媒
1−エチニルシクロヘキサノール
であった。
【0075】
材料を混合して、物理特性の測定用の硬化シートへと圧縮成形した。比較例は、表1に示すように、処理カオリンを、ウォラストナイト、珪藻土、処理アルミナ三水和物(ATH)、処理マイカ及びタルクに代えた配合物を含む。
【0076】
【表1】

【0077】
ウォラストナイトは、カオリンと同様のアスペクト比を有する高異方性の充填剤である。化学的に、ウォラストナイトはケイ酸カルシウムの形態である。その結晶構造は、既に述べた層状充填剤の結晶構造と全く異なる。ウォラストナイトは、アシキュラー、すなわち針状の結晶形態から成る。
【0078】
処理カオリンのアプローチは明らかに、物理特性の最良のバランスを得るものである。引張強度は特に、常に考慮されるパラメータである。カオリンの補強は、6MPaに近い引張強度結果をもたらし、これは、約7MPaのシリカ充填LSRによる通常の結果と比べて遜色なく、試験した全ての他の充填剤よりも極めて改良されたものである。
【0079】
40部のカオリンの使用により、200%近い破断伸びを有するエラストマーも生成される。また、これは、純粋なエラストマーネットワークが硬化プロセスにおいて形成されたことを示す非常に良好な結果である。機能性エラストマーの最低限の期待は、100%を超える破断伸び特性を達成することであろう。
【0080】
引張強度の場合、本発明者らは、充填剤としてカオリンを用いて10〜15kN/mの結果を得た。これは、いくつかの市販の樹脂補強されたLSRよりも良好である
【0081】
ウォラストナイト(C1)及び珪藻土(C2)は両方とも、5MPa付近の引張強度による補強効果を示す。しかしながら、ウォラストナイトが200%近い破断伸びをもたらす一方で、非常に小さい引裂き強度をもたらし、珪藻土は高い引裂き強度をもたらすが、極めて小さい破断伸びを有する。
【0082】
驚くべきことに、分析された他の充填剤、特に、層状タイプの構造を有する充填剤は、引張強度の大幅な低下をもたらしたため、せいぜい半補強性でしかなかった。特に、処理マイカ(C4)の使用は最も著しいとみなされ、本発明者らによる100%の閾値よりもはるかに低くする破断伸びの大幅な低下をさらに示す。
【0083】
[実施例2]
処理カオリンを用いて、充填剤使用量を変更することによる効果を検討した。したがって、本発明者らのモデルの組成は、カオリン使用量が組成物全体の30、35、40及び50重量%となるように様々であった。結果を以下の表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
この範囲内の充填剤使用量の変更に基づき、はっきりとした傾向が見られる。充填剤使用量が増大するにつれて、引張強度は約5MPaから6.5MPaへと増大し、同様に引裂き強度もおよそ2倍になることが分かった。他方で、ゴムネットワークが、ポリマー成分に比べてより多くの充填剤を含有するにつれて、破断伸びについては反対の傾向が見られた。35〜40%のカオリン使用量において、特性の最良の総合バランスを得た。
【0086】
[比較例3]
充填剤使用量の効果は、ウォラストナイトベースの等価物についても検討した。ここで示される傾向は表3に記載の通りであった。
【0087】
【表3】

【0088】
この場合、著しい補強を達成するために、より多くの充填剤使用量が必要であることが分かる。30%のウォラストナイトでは非常に乏しい引張強度を有するが、これは40〜50%の範囲で、カオリン充填類似物と同様のレベルに改善される。この場合の好適な特性は、40%のウォラストナイト使用量で達成される。
【0089】
[比較例4]
実施例1及び実施例2のカオリン充填LSRと比較するため、国際公開第2004/070102号で教示されているLSRを調製し、その物理特性を分析した。以下のものから成る二液型組成物から試料を調製した。
液部分A:
67重量% 25℃で55,000mPa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン
24重量% (ステアリン酸で前処理された)炭酸カルシウム
9重量% ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルビニルシロキサン、及び
付加的な触媒量のPt触媒
得られる組成物は120,000mPa・sの粘度を有する。
液部分B:
25.3重量% ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン
51.6重量% トリメチルシロキシ末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサン
0.24重量% エチニルシクロヘキサノール
14.2重量% ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルビニルシロキサン
8.66重量% グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
得られる組成物は480mPa・sの粘度を有する。
【0090】
2つの構成成分を液部分A 10部対液部分B 1部の比率で混合し、実施例1で行ったのと同様に試料を作製して、調製した組成物の物理特性を評価した。
引張強度 1.1MPa
引裂き強度 3.1kN/m
破断伸び 180%
【0091】
このような組成物は、国際公開第2004/070102号に記載の目的、すなわち、エアバッグ用のコーティング材料に適するが、上記の結果は、このアプローチで得られる非常に乏しいゴム補強を確証している、すなわち、炭酸カルシウム(低アスペクト比を有する)は、液状シリコーンゴム組成物の一次補強をもたらすのに極めて限られた能力を有することが明らかである。引張強度は特に、高性能LSRに必要な5.0〜6.0MPaのターゲットよりもかなり下回る。
【0092】
大きい割合の炭酸カルシウム充填剤を(同程度に低減したポリマー含量に)組み込むように上記組成物を調整することにより、依然として、層状の種類のものと比べて、不十分な補強が付与され、さらに低アスペクト比の充填剤の不十分な性能が確認された。
【0093】
【表4】

【0094】
[比較例5]
米国特許第6,354,620号による配合物(35%のタルクを含有)を調製した。標準的なゴムシートを、以下の二液型組成物を用いて実施例1に記載のプロセスに従って圧縮成形した。
液部分A:
26.7部 20mPa・sの粘度のヒドロキシ末端ジメチル,メチルビニルポリシロキサン
10.6部 15Pa・sの粘度のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルビニルメチルポリシロキサン
11.9部 350mPa・sの粘度のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン
49.4部 タルク非補強性充填剤
1.5部 0.5%のPt含量を有する白金含有触媒
液部分B:
95.7部 30mPa・sの粘度のトリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン
4.1部 350mPa・sの粘度のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン
0.15部 エチニルシクロヘキサノール
これらは、液部分A 7部対液部分B 3部の比率で混合される。
【0095】
この材料が極めて脆弱であり、また弾性強度特性を全く有さないため、物理特性は測定不可能である。その使用は明らかに、米国特許第6,354,620号で強調されるもの、すなわち、美的利点を提供するが独立した強度特性を全くもたらさない低摩擦トップコートに制限される。
【0096】
[実施例6]
以下の実施例は、エアバッグコーティングに用いられるのに好適な物理特性を有するように設計されたLSRを用いて実行された。この組成物がより多くのSiH:Vi組成を含み、エアバッグコーティングとして使用するのに意図される材料を作製することが見出されるであろう(SiH:Viが1.8:1であった実施例1と比べて、SiH:Viは5.1:1である)。
【0097】
全組成物は次の通りであった。
49部 α,ωビニルジメチルシロキサンエンドブロックされたポリジメチルシロキサン、粘度55Pa・s
40部 処理カオリン充填剤
7.8部 ビニルジメチルシロキサンエンドブロック単位を有する、ジメチル,メチルビニルシロキサンコポリマー、粘度350mPa・s
3部 メチルシルセスキオキサン架橋剤を有するジメチル,メチルハイドロジェンシロキサン、粘度15mPa・s
触媒量の白金触媒
1−エチニルシクロヘキサノール(ETCH)等の触媒阻害剤
【0098】
試料を調製し、上記で得た物理特性と同じ試験を用いて以下のように物理特性を分析した。
引張強度 6.0MPa
引裂き強度 14.8kN/m
破断伸び 191%
【0099】
これらは、実施例1よりも改良された。この場合、SiH:Viは、(射出成形を介して処理される汎用LSRに一般的である、実施例1の約1.8:1と比べて)5.1:1にまで増大された。エアバッグコーティングは得てして、コーティングと織布との接着を最大限にするためにより多くの−Si−Hを使用する。
【0100】
得られた組成物を、470デシテックスのポリアミドエアバッグ織物(woven polyamide airbag fabric)と一般に称される標準的なエアバッグ織布上にコーティングし、165℃で2分間硬化した。この得られるコーティング織布は、1メートル四方当たり70gのシリコーンコート重量を有していた。これにより、エアバッグについて用いられる3つの標準試験、すなわち、ISO 5981に従う曲げ摩擦試験、DIN 53859 T2に従う引張強度、及びASTM D6479−01に従うエッジコーム抵抗性(edgecomb resistance)を使用して得られる以下の結果から確かめることができるように、現在市販のエアバッグコーティングに類似するか又は現在市販のエアバッグコーティングよりも良好なコーティング織布の特性が得られた。
【0101】
【表5】

【0102】
興味深いことに、金属ロッドをオーブン内で450℃に加熱した後、このコーティング織布表面上に落下させて、このホットロッド(hot rod)が織布を溶かす時間を評価するいわゆるホットロッド試験を用いて、コーティング織布の熱耐性を試験した。本発明による組成物でコーティングされた試料は、約46秒の平均溶け落ち時間を得た。これは、一般的に3〜20秒の様々な値をとる市販のシリコーン系エアバッグコーティングと比べて遜色ない。
【0103】
[実施例7]
本実施例では、本発明による、且つ実施例1に示されるカオリン充填シリコーンゴム組成物の熱安定性を、約25%の処理ヒュームドシリカを補強性充填剤として含むDow Corning(登録商標)9280/70Eとしてダウ・コーニング・コーポレイション(Dow Corning Corporation)から販売されている従来の液状シリコーンゴムの熱安定と比較した。表7は、後硬化しない(NPC)試料と、最初の硬化後に230℃で72時間エージングした試料との間の引張強度及び破断伸びの両方のパーセンテージ変化を比較するものである。表7はそれぞれの組成物の熱伝導性をさらに示す。
【0104】
【表6】

【0105】
Dow Corning(登録商標)9280/70E中の重量%に基づく充填剤は少ないが、シリカ充填剤使用量の任意の著しい増大は、得られる硬化エラストマー生成物の物理的特徴に、クレープ硬化の発生を含む重大な悪影響を及ぼすであろう。しかしながら、カオリン充填剤の使用は、クレープ硬化等を防止すると共により多くの充填剤使用量を可能にし、特にこのようなカオリン充填エラストマーが、熱エージング後の破断伸びの損失を著しく低減させ、またエラストマーに著しく改良された熱伝導性を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含まない液状シリコーンゴム組成物であって、
下記の一般式
nSiO(4-n)/2
(式中、各R基は、同一又は異なり、1〜約18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、ここで、1分子当たり少なくとも2つのR基は、ヒドロキシル基及び/又は加水分解性基であるか、又は不飽和有機基であり、且つnは、約10〜1500の値を有する整数である)
の単位を含む、25℃で300〜100,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマーと、
1.カオリン充填剤(任意に処理されている)と、
2.架橋剤と、
3.触媒と、
4.1つ又は複数の阻害剤、顔料、着色剤、接着防止剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤の群から選択される任意の添加剤と
を含む、シリカを含まない液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、2つ以上のアルケニル基を含み、前記架橋剤が、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり2個超含有するオルガノハイドロジェンシロキサンであり、且つ前記触媒がヒドロシリル化触媒である請求項1に記載のシリカを含まない液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記カオリンが、式R(4-n)Si(OR)n(式中、nは1〜3の値を有し、Rはアルキル基、アリール基、又はアルケニル基である)のアルコキシシランで処理されたカオリンを含む請求項1又は2に記載のシリカを含まない液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記アルコキシシランが、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランから成る群から選択される化合物である請求項3に記載のシリカを含まない液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
前記カオリンが、100重量部の組成物全体に対して約35〜70重量部の範囲で利用される請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリカを含まない液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
任意に処理されたカオリンを含有する一液型液状シリコーンゴム組成物の製造方法であって、
(i)オルガノポリシロキサンと、処理されたカオリンとを室温条件下で混合する工程であって、(i)で調製された混合物がシリカを含まない工程と、
(ii)任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、架橋剤及び触媒を(i)の前記混合物に添加する工程と
から本質的になる一液型液状シリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
任意に処理されたカオリンを充填剤として含有する二液型液状シリコーンゴム組成物の製造方法であって、
(i)オルガノポリシロキサンと、任意に処理されたカオリンとを室温条件下で混合する工程であって、(i)で調製された混合物がシリカを含まない工程から本質的になり、その後、
(i)二液型組成物の液部分Aについて、上記のような触媒が、任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、前記混合物に導入され、
(ii)二液型組成物の液部分Bについて、前記オルガノハイドロジェンシロキサン、架橋剤、及び必要に応じて阻害剤が、任意の添加剤の添加前、添加と同時又は添加後に、前記混合物に配合される二液型液状シリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
エアバッグコーティング等の織物コーティング、スパークプラグブーツ、キーパッド、耐油性シール材、調理器具、耐熱皿及び汎用シール材、ガスケット、ダイヤフラム、成型部品並びに高圧碍子における、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状シリコーンゴム組成物の使用。

【公表番号】特表2008−546861(P2008−546861A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516417(P2008−516417)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050154
【国際公開番号】WO2006/134400
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590001418)ダウ・コ−ニング・コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】