説明

シリコーンゴム組成物

25℃で少なくとも250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、処理充填剤および硬化剤を含むシリコーンゴム組成物が記載されている。この組成物は、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、式:R4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d(各式中、R4は置換されていてもよい、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)を有する処理剤で処理された炭酸カルシウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si−H含有シロキサンポリマーで処理された炭酸カルシウムを充填剤として含有する充填剤配合シリコーンゴム組成物、および上述の処理炭酸カルシウムを含有する充填剤高配合シリコーンゴム組成物の製造方法に関する。具体的には、シリコーンゴム組成物における実質的に唯一の充填剤として、炭酸カルシウムを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、しばしばシリコーンエラストマーと呼ばれ、三つの必須成分からなる。それら成分は、(i)実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマー、(ii)1種以上の充填剤、および(iii)硬化剤(架橋剤または加硫剤と時々呼ばれる)である。一般にシリコーンゴム組成物の二つのタイプ、熱加硫型(HTV)シリコーンゴムおよび室温加硫型(RTV)シリコーンゴムが存在する。さらに、熱加硫または高温加硫型(HTV)シリコーンゴム組成物は、組成物の未硬化の粘度に応じて、高稠度ゴム(HCR)または液状シリコーンゴム(LSR)にしばしば区別されている。しかし、室温加硫型(RTV)シリコーンゴム組成物の名称は、多くのRTV組成物が反応を妥当な速度で進めるため若干の加熱が必要であることから、誤解させるかもしれない。
【0003】
HTVシリコーンゴム組成物は、実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマーを充填剤および他の所望の添加剤と混合してベースまたは未加工のストックを形成することにより一般に製造される。使用前に、ベースは、硬化剤、他の充填剤および顔料、粘着防止剤、可塑剤、および接着促進剤などの添加剤を配合して混ぜ合わせられ;プレス加硫、射出・トランスファー成形により、または連続的に押出により加硫されて、最終シリコーンゴム製品を形成することができる。例えば、ケーブル絶縁用途に用いられるシリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムが角型押出機ヘッド(angular extruder heads)にてケーブル芯に適用される独特な技術により押し出される。
【0004】
高稠度ゴム(HCR)について、最も幅広く使われている実質的直鎖状高分子量シリコーンポリマーは非常に高粘度のポリシロキサンである。そのような直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で1,000,000mPa・s以上の粘度を有する。典型的にはこれら直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で非常に高粘度であるのでガム状材料の形態であり、それらは非常に高粘度であるので粘度測定が非常に困難であり、そのためそれらはよくウィリアムス可塑度(ASTM D926)を参照して言及される。高粘度ポリシロキサンガム状ポリマーのウィリアムス可塑度は一般に少なくとも30であり、典型的には約30〜250の範囲である。ここで用いられる可塑度は、体積2立方cmで高さおよそ10mmのシリンダー状試験片について、25℃で3分間49ニュートンの圧縮荷重後の厚さミリメートルx100として規定される。これらポリシロキサンガム状ポリマーは一般に実質的にシロキサン骨格(−Si−O−)を含有し、その骨格に例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt−ブチル基などのアルキル基、および例えばアリル、1−プロペニル、イソプロペニル、またはヘキセニル基などのアルケニル基などの不飽和基が結合するが、ビニル基および/またはビニル基とヒドロキシル基の組合せがそれらの架橋を支援するため特に好ましい。そのようなポリシロキサンガム状ポリマーは典型的にポリマーの繰返し単位の数を表す重合度(DP)500〜20,000を有する。
【0005】
歴史的にみて、HTVシリコーンゴム組成物は1種以上の充填剤を含有する。用いられる充填剤は補強用充填剤および非補強用充填剤と一般に呼ばれる。補強用充填剤は加硫されたゴムに高強度を付与し、ヒュームドシリカおよび沈降シリカなどの微粉末非晶質シリカを含め得る。増量または非補強用充填剤は一般にシリコーンゴム組成物のコストを下げるために用いられ、一般に石英粉末、炭酸カルシウムおよび珪藻土などの安価充填材料を含む。補強用充填剤は典型的に単独で用いられるかまたは増量または非補強用充填剤と一緒に用いられる。補強用充填剤は、シリコーンゴム組成物の物理的および/または機械的特性、すなわち引張強度および圧縮永久ひずみを改善するため、通常オルガノシラン、オルガノシロキサンまたはオルガノシラザンで処理されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
英国特許第2355453号は、環状Si−H含有シロキサンまたはSi−H含有シロキサンの水性エマルジョンを用いて、炭酸カルシウムの疎水化方法を記述している。国際公開第2004/031302号は、二成分処理剤、ビス(アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドまたはメルカプト有機ケイ素化合物の形態の官能性処理剤およびポリオルガノ水素シロキサンの形の疎水化剤で炭酸カルシウムなどの充填剤の処理方法を記述している。この方法で製造された充填剤は有機タイヤゴムでの使用に特に製造されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の実施態様によると、
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、
(iii)硬化剤
を含むシリコーンゴム組成物であって、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、前記充填剤が、式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する処理剤(各式中、R4は置換されていてもよい、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)で処理された炭酸カルシウムを含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物を提供する。
【0008】
別段の表示がない限り、すべての粘度を25℃で測定する。本発明による組成物は液状シリコーンゴム(LSR)組成物として用いることができる。本発明による組成物がLSRであるなら、用いられるオルガノポリシロキサンポリマーの粘度は25℃で100〜150,000mPa・sである。本発明による組成物は高稠度ゴム(HCR)組成物として用いることができる。本発明による組成物がHCRであるなら、用いられるオルガノポリシロキサンポリマーの粘度は好ましくは25℃で少なくとも250,000mPa・sであるが、典型的には25℃で1,000,000mPa・sを超え、少なくとも30のウィリアムス可塑度を有する。25℃で150,000mPa・s〜250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンの使用を当業者に阻むものではなく、その範囲はLSRおよびHCR型組成物それぞれにとって好ましい。
【0009】
上で記述されたとおり、本発明による組成物は補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。本発明のために、補強用シリカ充填剤は、沈降シリカおよびフュームドシリカならびに他の補強用シリカ(それ故、シリコーンゴム組成物に補強効果を与えないシリカ粉末(Ground silica)は除外される)を意味するよう意図されている。用語「実質的に含まない」とは、当然のことながらシリカ充填剤が単独でポリマー+処理炭酸カルシウム充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量5重量部まで存在してもよいように、組成物が本質的に補強用シリカ充填剤を含まないということを意味するように意図されていると理解すべきである。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理炭酸カルシウム充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量3重量部まで存在する。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理炭酸カルシウム充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量1重量部まで存在する。さらに代替的には、前記組成物が唯一の補強用充填剤として炭酸カルシウムを含み、補強用シリカ充填剤を一切含まない。あるいは、炭酸カルシウムが組成物中に存在する唯一の充填剤である。ポリマー100重量部あたり少なくとも25重量部の量で存在しないと、一般にシリコーンゴムの物理的特性で補強効果が分からないことに注目すべきである。従って、許容される水準で存在する補強用シリカ充填剤は、シリコーンゴムの物理的特性に僅かな補強効果があるかまたは何も補強効果がない。下記に詳細に述べるように、沈降シリカおよび/またはヒュームドシリカが存在するときは、それらはレオロジー調整剤の特性のために用いられる。本質的には本明細書で記載されているとおり組成物中に見ることのできる補強効果は、炭酸カルシウムの補強特性により与えられている。
【0010】
前記オルガノポリシロキサンポリマーは、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
を有する1種以上のポリマーを含む。式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基などの不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる硬化剤に適合する必要がある。R1は、Z、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択されてよい。各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50の整数であり;x+y+sの合計は要求される最終製品に適するポリマー粘度をもたらす数である。HCR組成物の場合、好ましくはポリマーの粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・sである。あるいは、HCR組成物の場合、ポリマーの粘度は25℃で少なくとも1,000,000mPa・sである。yおよび/またはsが整数であれば、ポリマー鎖中の(R2SiO)基、(RZSiO)基および/または(R2Si−R5−(R2)SiO)基はランダム状に分布されるか、またはオルガノポリシロキサンポリマーはブロックポリマーの形態でもよい。
【0011】
好ましくは、各R基はアルキル基であり、最も好ましくは各Rはメチルまたはエチル基である。好ましくは、Zがアルケニル基であるなら、それは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜7個の炭素原子を有し、好ましい例はビニル基またはヘキセニル基である。R5は、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、および−CH2CH2CH2−であり得、最も好ましくは各R5は−CH2CH2−である。
【0012】
本発明の一つの好ましい実施態様(前記組成物がHCR組成物である)では、前記組成物のオルガノポリシロキサン成分は、次式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12 (1)
および
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s1(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12 (2)
を有する二成分混合物のような2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であり得る。式中、各Rは同じまたは異なり、上述されたとおりであり、および各R1は同じまたは異なり、上述されたとおりであり;x、yおよびsは先に定義されたとおりであり、x1、y1およびs1の値はx、yおよびsそれぞれと同じ範囲であるが、x、yおよびsの少なくとも1個はx1、y1およびs1それぞれの値と異なる値である。好ましくは、R1基の少なくとも25%はZ基であり、最も好ましくはアルケニル基であり、ポリマー混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sであり、ポリマー(1)は、少なくとも1,000の重合度(DP)、すなわちxの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値を有し且つポリマー(2)は、少なくとも100のDP、すなわちx1の値またはx1とy1および/もしくはs1(存在する場合)との合計値を有する。
【0013】
従って、前記組成物は、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含み得る。
【0014】
あるいは、他の好ましい実施態様では、前記オルガノポリシロキサンは、次式
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分の混合物を含む。各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/もしくはs(いずれか一方もしくは両方が存在する場合)との合計値は少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000である。好ましくは、R1の少なくとも25%がZ基で、最も好ましくはアルケニル基である。xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値が、25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sのポリマー混合物の粘度を与える。典型的には、xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値は少なくとも1,000である。
【0015】
発明者らは、意外にも、炭酸カルシウムがシリコーンゴム組成物における唯一の補強用充填剤として用いられ得ることを確認した。述べたように、充填剤を疎水性にして、本発明による組成物中の他の成分と均質な混合物を取扱い且つ得易くするために、処理された炭酸カルシウムを用いることが本発明の本質的特徴である。炭酸カルシウムの疎水化は、シリコーンポリマーに容易に湿潤する疎水化変性炭酸カルシウムをもたらす。疎水化変性炭酸カルシウムは凝集せず、よって容易にシリコーンポリマーに均質に取り入れられる。これが未硬化組成物の改良された室温機械特性をもたらす。さらに、表面処理充填剤は未処理または未加工の材料よりも低い伝導性を与える。
【0016】
処理炭酸カルシウム充填剤は、前記組成物中に存在する充填剤の大部分を占め、ポリマー100重量部あたり約5〜200重量部、あるいはポリマー100重量部あたり30〜150重量部の量で存在する。
【0017】
本発明によれば、前記処理剤は、次式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する。式中、各R4は独立して、置換されていてもよい、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである。好ましくは、処理剤は、25℃で10〜500mPa・sを有するトリメチルシリル末端メチル水素シロキサンである。好ましくは、f+gは10より大きい。あるいはf+gは25より大きい。
【0018】
4は好ましくは置換されていてもよい炭化水素基である。あるいは、R4は任意に置換されているアルキル基である。本願の目的のために、「置換された」とは、炭化水素基の1個以上の水素原子が他の置換基で置換されていることを意味する。そのような置換基の例として、以下に限定されないが、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル、ペルフルオロブチル、トリフルオロエチルおよびノナフルオロヘキシルなどのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)クリル基およびカルボキシル基などの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基およびシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;メルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられる。あるいは、1個以上のR4はアルケニル基などの非置換炭化水素基でもよい。
【0019】
従って、前記処理剤は、次式
9m10t3-m-tSiO[(R910SiO)f(R9HSiO)g]SiR9m10t3-m-t
を有し得る。式中、各R9は置換されていてもよいアルキル基であり、各R10は独立してR9または不飽和炭化水素基である。好ましくは、1個以上のR10基はビニル、プロペニル、イソプロペニルまたはヘキセニルなどのアルケニル基であり、および/または1個以上のR10基はアルキニル基である。好ましくは、f>0であれば、mは0または1〜3の整数であり、tは0または1〜3の整数で、好ましくはtは0、1または2であり、およびm+t≦3、あるいはm+t=3、あるいはm=3である。あるいは、各R10はビニル基などのアルケニル基であり、その場合さらに代替的にm=2およびt=1である。R10が存在するとき、処理剤は、アルキル水素シロキサン基、ジアルキルシロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基の2種以上を含むブロックコポリマーまたはランダム分布コポリマーを含み得る。従って、処理剤は、
(i)アルキル水素シロキサン基およびジアルキルシロキサン基、または
(ii)アルキル水素シロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基、または
(iii)アルキル水素シロキサン基、ジアルキルシロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基
を含有するポリマー骨格を有するブロックコポリマーまたはランダム分布コポリマーから選択してもよい。
あるいは、処理剤は、
(i)アルキル水素シロキサン基およびジアルキルシロキサン基、または
(ii)アルキル水素シロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基、または
(iii)アルキル水素シロキサン基、ジアルキルシロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基
からなるポリマー骨格を有するブロックコポリマーまたはランダム分布コポリマーから選択される。
【0020】
本発明による処理剤は炭酸カルシウム充填剤を疎水化するために用いられ、よって、より容易にシロキサン組成物に混合される。未処理炭酸カルシウムは、以上に記載された組成物を硬化するのによく用いられる有機過酸化物触媒の機能を抑制することが、実施例で以下に検討されているように確認された。上記処理剤は炭酸カルシウムを疎水化するだけでなく、炭酸カルシウムと有機過酸化物との間の相互作用によって引き起こされる過酸化物触媒の抑制を防ぐことができることが見出された。これは、処理剤が1個以上の立体傷害のないアルケニル基(R10)を含有する事例において特に改善されるようである。現在の理論に縛られることなく、処理剤中のSi−H基が化学的に炭酸カルシウム表面と相互に作用するものと考える。処理剤のアルケニル基の存在は組成物の硬化中に追加の架橋部位を提供し、次に上記組成物から製造された硬化シリコーンエラストマーの機械的性能の改善を与える。わずかな、あるいは0の相互作用が処理剤のSi−H基とR10の不飽和基(処理剤に存在するなら)との間で起こる。
【0021】
好ましくは、処理される場合、処理炭酸カルシウム充填剤のおよそ1〜10重量%が処理剤である。あるいは、処理剤は処理炭酸カルシウム充填剤の2.5〜10重量%である。充填剤は組成物へ添加する前に予め処理するか、ポリマーと混合中にその場処理することもできる。
【0022】
上で述べたように、硬化剤は必須であり、ここで用いることができる化合物として、ジアルキルペルオキシド、ジフェニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、パラメチルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第三級ブチルベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジ第三級ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(第三級ブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、第三級ブチル−トリメチルペルオキシド、第三級ブチル−第三級ブチル−第三級トリフェニルペルオキシド、およびt−ブチルベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。最も適する過酸化物ベース硬化剤は、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、およびジクミルペルオキシドである。上記のような有機過酸化物が、上で定義されたポリマーのR1がアルキル基であるときに、特に用いられるが、1分子あたりいくらかの不飽和基が存在することが好ましい。R1が上で述べたZであるときに硬化剤としても用いられ得る。
【0023】
これら有機過酸化物は組成物へ容易に導入するためにシリコーンオイルに分散することにより、ペースト状に形成してもよい。ポリマー100重量部あたり、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の量で用いられることが薦められる。
【0024】
1がヒドロキシ基またはアルコキシ基である場合は、硬化剤は適する縮合反応触媒単独でまたは加水分解性ポリマー末端基との縮合反応を進める架橋材料とともに縮合反応触媒を含んでもよい。典型的にはこの硬化手段は本発明では好ましくない。
【0025】
本組成物は、有機過酸化物に代えて硬化剤としてオルガノ水素シロキサンとともにヒドロシリル化反応触媒によって硬化および/または架橋することもできるが、ただし、各ポリマー分子はオルガノ水素シロキサンとともに架橋するのに適する少なくとも2個の不飽和基を含有する。それら基は典型的にアルケニル基、最も好ましくはビニル基である。本組成物の硬化をもたらすため、オルガノ水素シロキサンは1分子あたり2個を超えるケイ素結合水素原子を含有しなければならない。オルガノ水素シロキサンは例えば1分子あたり約4〜200個のケイ素原子、好ましくは1分子あたり約4〜50個のケイ素原子を有し、25℃で約10Pa・s以下の粘度を有するのがよい。オルガノ水素シロキサンに存在するケイ素結合有機基として、1〜4個の炭素原子を有する置換および非置換アルキル基を挙げることができ、その他ではエチレン性またはアセチレン性不飽和を含まない。好ましくは、各オルガノ水素シロキサン分子は、オルガノ水素シロキサン中のSi−H基とポリマー中のアルケニル基合計量とのモル比1/1〜10/1を与えるのに十分な量で、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含む。
【0026】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウムまたはルテニウム触媒から選択される白金族金属ベース触媒である。本組成物の硬化を触媒するのに有用な白金族金属含有触媒はケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニル基との反応を触媒するのに知られているあらゆるものであり得る。ヒドロシリル化により本組成物の硬化をもたらす触媒としての使用に好ましい白金族金属は白金である。本組成物の硬化用白金ベースヒドロシリル化触媒の好ましいいくつかは白金金属、白金化合物および白金錯体である。代表的な白金化合物として、クロロ白金酸、クロロ白金酸六水和物、二塩化白金、そのような化合物の、低分子量ビニル含有オルガノシロキサンを含有する錯体が挙げられる。本発明での使用に適する他のヒドロシリル化触媒としては、例えば[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX3[(R32S]3、(R23P)2Rh(CO)X、(R23P)2Rh(CO)H、Rh224、HaRhbオレフィンcCld、Rh(O(CO)R33-n(OH)n(式中、Xは水素、塩素、臭素またはヨウ素であり、Yはアルキル基、例えばメチルまたはエチルなど、CO、C814または0.5C812であり、R3はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R2はアルキル基、アリール基または酸素置換基であり、aは0または1であり、bは1または2でありcは1〜4の整数であり、dは2、3または4であり、nは0または1である)などのロジウム触媒が挙げられる。適するイリジウム触媒たとえばIr(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z1)(En)22、または[Ir(Z1)(Dien)]2、(式中、Z1は塩素、臭素、ヨウ素またはアルコキシであり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである)などが用いることができる。
【0027】
白金族金属含有触媒は、本組成物百万部あたり(ppm)元素状白金族金属のわずか0.001重量部に相当する量で組成物に加えられ得る。好ましくは、組成物中の白金族金属の濃度は、百万あたり元素状白金族金属少なくとも1部の当量を与えることができるものである。百万あたり元素状白金族金属約3〜50部の当量を与える触媒濃度が一般的に好ましい量である。
【0028】
より長い作業時間または「ポットライフ」を得るために、周囲条件下でヒドロシリル化触媒の活量を、適する抑制剤の添加により、遅らせまたは抑制することができる。公知の白金族金属触媒抑制剤として、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン性化合物がある。2−メチル−3−ブチン−2−オールおよび1−エチニル−2−シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコールは25℃での白金ベース触媒の活量を抑制する抑制剤の好ましい種類を構成している。それら触媒を含有する組成物は典型的に実効速度で硬化するためには70℃以上の温度に加熱する必要がある。室温硬化は、二部式(架橋剤および抑制剤が二成分系の一つに、白金は他の一つにある)の使用により典型的に達成される。白金量は室温での硬化できるように増やされる。
【0029】
場合によっては、白金族金属1モルあたり抑制剤1モルぐらい低い抑制剤濃度で満足できる貯蔵安定性および硬化速度を与える。他の例では、白金族金属1モルあたり抑制剤最高500モルまたはそれ以上の抑制剤濃度を必要とする。所定の組成物中の所定の抑制剤の最適濃度は所定の実験により容易に決定できる。
【0030】
先に述べたように、本発明の組成物は補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。しかし、組成物は、ポリマー+処理炭酸カルシウム100重量部あたり最高5部のレオロジー調整剤を含むことができる。好ましくは、レオロジー調整剤が存在するなら、それはポリマー+処理炭酸カルシウム100重量部あたり1〜3重量部の量で存在する。レオロジー調整剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ホウ酸、非晶質の沈降またはヒュームドシリカを含み得る。許容範囲で存在するシリカ量は、得られる組成物の物理的特性にごくわずかに影響するほどの少ない量で存在するようであると理解される。
【0031】
前記組成物は他の充填剤を全く含まなくてもよいが、組成物は、追加の微粉末非補強用充填剤などの追加充填剤(シリカ補強用充填剤以外の)、例えば破砕石英、ケイ藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタンおよびカーボンブラック、タルク、ケイ灰石など、を含むことができる。単独または上記に追加して用いられ得る他の充填剤として、バン土石、硫酸カルシウム(硬石膏)、セッコウ、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどのクレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルース石)、グラファイト、炭酸銅(例えば孔雀石)、炭酸ニッケル(例えばザラカイト)、炭酸バリウム(例えば毒重石)、および/または炭酸ストロンチウム(例えばストロンチアン石)、ハロイサイト、海泡石および/またはアタパルジャイトなどが挙げられる。
【0032】
酸化アルミニウム、橄欖石群;ザクロ石群;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩。橄欖石群はケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦土橄欖石およびMg2SiO4などを含む。ザクロ石群には粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦バンザクロ石;Mg3Al2Si312;灰バンザクロ石;およびCa2Al2Si312などを含む。アルミノケイ酸塩には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ線石;Al2SiO5;ムル石;3Al23・2SiO2;藍晶石;およびAl2SiO5などを含む。環状ケイ酸塩群にはケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、キン青石およびAl3(Mg、Fe)2[Si4AlO18]などを含む。鎖状ケイ酸塩群には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ灰石およびCa[SiO3]などを含む。
【0033】
層状ケイ酸塩群には、ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、雲母;K2Al14[Si6Al220](OH)4;葉ロウ石;Al4[Si820](OH)4;タルク;Mg6[Si820](OH)4;蛇紋岩例えばアスベスト;高陵石;Al4[Si410](OH)8;および蛭石などを含む。
【0034】
上記追加充填剤のどれでも、本発明に従って任意の疎水化処理剤で処理することができる。しかし、前記充填剤は、それらに代って、その表面を疎水化する他の適する処理剤で処理してもよく、その例として、脂肪酸および/または脂肪酸エステル例えばステアリン酸エステルなどの有機処理剤、またはオルガノシラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザンもしくは短鎖オルガノポリシロキサンポリマー(例えば短鎖シロキサンジオール)が挙げられる。
【0035】
前記組成物に含め得る他の成分には、以下に限定されないが、レオロジー調整剤;接着促進剤、顔料、着色剤、乾燥剤、熱安定剤、難燃性付与剤、紫外線安定剤、硬化調整剤、電気および/または熱伝導性充填剤、発泡剤、粘着防止剤、ハンドリング剤(handling agent)、カルボン酸金属塩およびアミンなどの過酸化物硬化助剤、酸受容体、水捕捉剤(典型的には、組成物が縮合硬化のときだけ)(典型的に、架橋剤またはシラザンとして用いられるものと同じ化合物)が挙げられる。当然のことながら、いつくかの添加剤は二以上の添加剤リストに含まれている。そのような添加剤は言及された色々な面で機能する能力を有することになる。
【0036】
任意の接着促進剤を本発明によるゴム組成物に取り入れることができる。それらには、例えばアミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン(例として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、エチレンジアミンとシリルアクリラートとの反応生成物が挙げられ得る。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌラートなどのケイ素基含有イソシアヌラートも追加して用いられ得る。さらに、適する接着促進剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシアルキルアルコキシシランと、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ置換アルコキシシランならびに任意でメチルトリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびそれらの誘導体などのアルコキシシランとの反応生成物がある。
【0037】
熱安定剤には、酸化鉄およびカーボンブラック、鉄カルボン酸塩、セリウム水和物、ジルコニウム酸バリウム、酸化マグネシウム、セリウムオクトエートおよびジルコニウムオクトエート、ならびにポルフィリンが挙げられ得る。
【0038】
難燃性付与剤には、例えばカーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、ケイ灰石などのケイ酸塩、白金および白金化合物が挙げられ得る。
【0039】
導電性充填剤には、カーボンブラック、銀粒子などの金属粒子、任意の適する導電性金属酸化物充填剤、例えばスズおよび/またはアンチモンで表面処理された酸化チタン粉末、スズおよび/またはアンチモンで表面処理されたチタン酸カリウム粉末、アンチモンで表面処理された酸化スズ、およびアルミニウムで表面処理された酸化亜鉛が挙げられ得る。
【0040】
熱伝導性充填剤には、粉状、フレーク状およびコロイダル銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウムおよびチタニウムなどの金属粒子、金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al23)および酸化ベリリウム(BeO);酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム;セラミック充填剤、例えば一炭化タングステン、炭化ケイ素および窒化アルミニウム、窒化ホウ素およびダイヤモンドが挙げられ得る。
【0041】
ハンドリング剤は生強度または加工性などのシリコーンゴムの未硬化特性を改変するために用いられ、種々の製品名で販売されている(例えば、ダウコーニングコーポレーションより販売されているSILASTIC(登録商標)HA−1、HA−2およびHA−3)。
【0042】
過酸化物硬化助剤は、硬化ゴムの引張り強さ、伸び、硬さ、圧縮永久ひずみ、反発(rebound)、接着および動的柔軟性(dynamic flex)などの特性を改変するために用いられる。それには、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートなどのジ−またはトリ−官能性アクリラート;トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ポリブタジエンオリゴマー等が挙げられ得る。シリルヒドリド官能性シロキサンもまた過酸化物で触媒されるシロキサンゴムの硬化を改変する助剤として用いられ得る。
【0043】
前記酸受容体には、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられ得る。
【0044】
セラミック化剤(ceramifying agent)はまた灰分安定剤と呼ばれ、ケイ灰石などのケイ酸塩が挙げられ得る。
【0045】
従来のシリコーンゴム組成物と比べて、許容できる機械的特性を有するシリコーンゴム組成物を、加熱を必要とせず、補強用充填剤として高価なヒュームドシリカを用いる必要がない方法で、本発明により製造することができる。
【0046】
本発明による組成物は任意の適する方法で製造することができる。充填剤高配合シリコーンゴム組成物を調製する従来の手段は、最初にミキサー中で補強用充填剤(典型的に例えば、ヒュームドシリカ)、補強用充填剤(ヒュームドシリカ)用処理剤、およびオルガノポリシロキサン(例えばポリシロキサンガム)の混合物を加熱することによりシリコーンゴムベースを製法することである。シリコーンゴムベースは第一ミキサーから取り出されて、第二ミキサーに移され、そこで一般にシリコーンゴムベース100重量部あたり石英粉末などの非補強または増量用充填剤約150重量部が加えられる。典型的に他の添加剤、例えば硬化剤、顔料および着色剤、熱安定剤、粘着防止剤、可塑剤、ならびに接着促進剤などを第二ミキサーに供給する。この手段も補強用シリカ充填剤を本発明の充填剤に置き換えて本発明の組成物に利用することができる。
【0047】
しかし、本発明の好ましい実施態様では、(i)室温条件下でオルガノポリシロキサンと処理炭酸カルシウムとを混合する工程であって、工程(i)で調製された混合物は補強用シリカ充填剤を含んでいない;(ii)工程(i)の混合物に硬化剤を添加する工程;工程(ii)の混合物を加熱により室温よりも高い温度で硬化する工程から本質的になる処理炭酸カルシウム含有シリコーンゴム組成物の製造方法を提供する。
【0048】
室温条件とは、大気圧および20〜25℃の通常の周辺温度での室温を意味することを理解するべきである。本発明の場合、補強用充填剤のその場処理を始める際必要とするような、工程(i)の間での加熱が必要とされないことは大きな利点である。あらゆる混合プロセスにおいて、混合は熱を発生するので、本発明の場合における混合は如何なる追加の熱注入をも必要としない。
【0049】
炭酸カルシウムはポリシロキサンガム中にヒュームドシリカよりもずっと容易に分散するので、全体の混合サイクルがかなり減少し、ミキサーの利用をとても多くすることになる。さらに、炭酸カルシウムは準補強用充填剤であるので、十分な機械的特性を有する最終組成物を提供することができる。しかし、炭酸カルシウムはただ準補強だけであるため、ヒュームドシリカの場合よりも高い投入レベルで用いる必要がある。他方では、シリカに比べて炭酸カルシウムは低コストなため、最終組成物について適正なレベルの経済的魅力を得るために多量の炭酸カルシウムを用いる必要はない。好ましくは、処理炭酸カルシウムとオルガノポリシロキサンとの比は1:2〜2:1である。したがって、例えば100重量部のオルガノポリシロキサン(例えばポリシロキサンガム)に約100重量部の炭酸カルシウムを、ヒュームドシリカを使用することなく、用いることができる。
【0050】
それによってヒュームドシリカを含有する最終組成物と同じレベルの機械的特性を得ることができる。さらに、ヒュームドシリカの排除は、加熱が必要なく、全体の配合プロセスを一つのミキサーで行うことができることを意味する。さらに、炭酸カルシウムについての取込み時間はヒュームドシリカの場合よりもはるかに速く、より速い処理能力を利用することによりミキサー生産量が増大するという結果となる。最後に炭酸カルシウムはヒュームドシリカよりずっと高いバルク密度を有し、それが非常に改善された扱い易さおよび貯蔵し易さを可能にする。
【0051】
これら最終の炭酸カルシウム含有シリコーンゴム組成物は、シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラスなどの用途に、また建築用ガスケット用に有用である。具体的例として、窓ガラス用ガスケット、プレナムまたは安全ケーブル・シース用途などのワイヤーおよびケーブル、複層ガラススペーサーガスケットでの本製品の使用がある。その使用に関連するただ一つの要求事項は、最終組成物が特定用途に許容される特性にほぼ等しい特性プロフィールを有することである。本発明の組成物は、適する発泡剤を添加してシリコーンゴムスポンジの製造にも用いることができる。任意の発泡剤を用いることができる。得られる製品は断熱窓ガラススペーサーガスケットの製造に特に有用である。
【0052】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するために示される。本明細書で、用語「室温」とは20〜25℃の通常の周辺温度を意味することを意図している。別段の表示がない限り、全ての粘度は25℃で測定された。
【実施例】
【0053】
<実施例1−沈降炭酸カルシウム(PCC)を有するシリコーンゴムコンパウンドモデルの調製>
室温で3成分をブラベンダー密閉式ミキサー(internal mixer)に入れて、50RPMのミキサーブレード速度で20分間混合させることにより、3成分の混合物を調製した。外部加熱をミキサーに適用することもなく、20分後に混合物の温度がおよそ50℃に上昇した。
【0054】
前記混合物の3成分は:
(i)ポリマーA、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマーで、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位の比は99.82:0.18であり、平均重合度(dp)7,000を有する。
(ii)ポリマーB、平均重合度(dp)7,000を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン。
(iii)未処理沈降炭酸カルシウム(PCC)の市販グレード、SOCAL(登録商標)31(Solvay Advanced Functional Minerals, Functional Additives Division(以下Solvayと称する)から供給される)。SOCAL(登録商標)31は窒素吸着を用いたBET表面積測定法により測定された比表面積 およそ30m2/gを有する。それはおよそ100nmの最長寸法を有する一次菱面結晶粒子からなる。一次粒子は互いに凝集されて、大きく、大体球状の塊となった粒子(直径およそ10μmのフラクタル表面を有する)を形成する。
【0055】
前記混合物中の各成分の割合はポリマーA(21.25重量%)、ポリマーB(21.25重量%)およびPCC(57.5重量%)であった。得られた混合物をコンパウンドXと称される。
【0056】
コンパウンドXに、ゴム組成物を硬化するのに用いられる過酸化物架橋剤を加えた。過酸化物は、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドまたは2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンのいずれかが選択された。2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドは高粘度ポリジメチルシロキサンフルイドの50重量%分散液(この組み合わせを以下硬化剤Aと称す)として用いられた。2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンは高粘度ポリジメチルシロキサンフルイドの40重量%分散液(この組み合わせを以下硬化剤Bと称す)として用いられた。
【0057】
硬化剤Aを用いるときは、硬化剤AをコンパウンドX100重量部あたり1.2重量部の量でコンパウンドXに加えた。硬化剤Bを用いるときは、硬化剤BをコンパウンドX100重量部あたり1.0重量部の量でコンパウンドXに加えた。両方の硬化剤は、コンパウンドXに直接、コンパウンドがブラベンダーミキサーでなおも混合している間に、加えた。あるいは、硬化剤は、2本ロールミルを用いて硬化剤の所望量をコンパウンドXに混ぜ込むことにより、コンパウンドXに加えられた。
【0058】
得られたシリコーンゴム組成物は、硬化剤でゴム組成物を架橋させて、固体ゴムシート(硬化)を形成させるのに十分に高い温度で2MPaの圧力下、2mm厚型でプレス成形された。硬化剤Aの場合は、成形は116℃の温度で、5分間行われた。硬化剤Bの場合は、成形は160℃の温度で10分間行われた。硬化剤Aで硬化した後、得られたシリコーンゴムシートをさらにオーブンで200℃4時間加熱処理した。硬化剤Bを用いて作られたシリコーンゴムシートについては、さらなる加熱処理はしなかった。
【0059】
得られたシリコーンゴムシートから試験試料を切り取り、引裂き抵抗、引張強度および破断時伸び(DIN53 504)ならびにショアA硬度(ASTM D2240)を測定するために用いた。得られた結果は表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
従って、未処理炭酸カルシウムを含有する実施例1で用いられた組成物は使用した過酸化物触媒で硬化しないことが理解される。
【0062】
<実施例2 市販の事前処理PCCで作られたシリコーンゴムコンパウンド>
4グレードの処理PCCをSolvayから入手した。グレードはSOCAL(登録商標)311、SOCAL(登録商標)312、およびSOCAL(登録商標)322、それらは上記実施例1で用いたSOCAL(登録商標)31の事前処理バージョンである。処理剤の正確な性質および処理剤の荷重は、それらがステアリン酸およびステアリン酸カルシウム塩をベースであることは別として、開示されなかった。後者の材料はPCCに広く用いられている標準の処理剤であり、分散および粉体流を補助する。SOCAL(登録商標)311、SOCAL(登録商標)312、およびSOCAL(登録商標)322を、上記実施例1に記載された方法に従って、シリコーンゴムコンパウンドを製造するのに用いた。得られた結果は表2に記載する。
【0063】
【表2】

【0064】
ステアリン酸およびステアリン酸塩処理PCCで作られたシリコーンゴムコンパウンドのいずれも硬化剤Aでは硬化できなかった。ステアリン酸およびステアリン酸塩処理PCCコンパウンドSOCAL312および322)の二つは硬化剤Bで硬化した。SOCAL311で作られたコンパウンドの場合、硬化剤Bでは硬化は起きなかった。
【0065】
<実施例3 処理PCCで作られたシリコーンゴムコンパウンド>
未処理PCC(SOCAL(登録商標)31)を下記の表3aに示された種々の処理剤で処理した。PCCを処理するために用いられた方法は次のとおりであった:
【0066】
PCCを家庭用フードミキサーに入れた。ミキサーに所望量の処理剤を加えた。その後二つの成分を、処理剤がPCC粉末全体にわたって均一に分散したと判断されるまで、混合した。PCCおよび処理剤の物理的分散液を、その後120℃で少なくとも12時間オーブンに置いた。その後オーブンから処理材料を取り出し、室温に冷却した。各事例で、処理剤の5重量%がPCCの処理に用いられた(表3)。
【0067】
【表3】

【0068】
上記処理プロセスの後で、各処理充填剤を、上記実施例1に記載されたように製造されたシリコーンゴムコンパウンドに導入した。得られたシリコーンゴム製品はその物理的特性のために分析された。その結果を表3bに示す。
【0069】
【表4】

【0070】
実施例3の結果はメチル水素シロキサン型処理剤(B1&B2)が、試みられた他の処理剤と比較して、PCC処理に用いられたとき優れた硬化特性を与えたことを示している。
【0071】
<実施例4 B2(トリメチルシロキシ末端封鎖メチル水素シロキサン(dp=56)で処理したPCCで作られたシリコーンゴムコンパウンド>
約70m2/gのBET比表面積を有する未処理PCCを、処理剤B2を用いて実施例3に記載された処理方法を使って処理した。得られた処理PCCを用いて、次のように少しの組成変更した上で実施例1に記載された方法を使ってゴムコンパウンドを作った。
・ポリマーA 25重量%
・ポリマーB 25重量%
・処理PCCは50重量%であった。
【0072】
硬化剤Bで硬化した後、得られた製品の物理的特性が解析された。得られた結果を表4に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
処理剤のレベルを最高5重量%に増加すると、硬化剤Bで硬化したときコンパウンドの硬度、引張強度および引裂き強度を改良する。
【0075】
<実施例5 5重量%より多いB2で処理したPCCから作られたシリコーンゴムコンパウンド>
実施例5の未処理PCCを、処理剤B2の5重量%および10重量%でかつ上記実施例3に記載された方法にて処理した。それをゴム配合物に混ぜ合わせ、実施例1に記載されたとおり正確に試験した。表5に示された結果は、硬化剤Bを用いたときゴムコンパウンドの最適ショアA硬度および引裂き強度を得るには5重量%を超える処理剤の使用が必要ないことを述べている。
【0076】
【表6】

【0077】
<実施例6 処理剤B2にてその場処理PCCで作られたシリコーンゴム>
これまでの実施例すべてで、PCCは実施例1で記載されたゴム配合物に混ぜ込まれる前に実施例3で記載された処理剤で事前に処理された。この実施例では、未処理PCCが実施例1に記載された方法を用いて全ての混合物成分および処理剤と混合される。処理剤B2をPCCに5重量%負荷で用いた。ゴムコンパウンドを硬化剤Bを用いて硬化した。結果(表7)はPCCの“その場”処理が有益な機械的特性を有するシリコーンゴムコンパウンドの製造にまさにPCCの事前処理と同程度の効果があることを示している。
【0078】
【表7】

【0079】
<実施例7 B2で処理したPCCで、ヒドロシリル化硬化パッケージで硬化されたシリコーンゴムコンパウンド>
これまでの実施例すべてで、記載されたシリコーンゴムPCCコンパウンドを過酸化物で硬化した。この実施例では、メチル水素シロキサンフルイドで処理されたPCCで作られたシリコーンゴムコンパウンドがPt触媒を用いてヒドロシリル化により硬化することができることを示す。
【0080】
10重量%の処理剤B2で処理されたPCCで作られた、実施例5に記載されたサンプルを繰返したが、添加剤AおよびBで過酸化物触媒を置き換えたヒドロシリル化硬化系にて硬化した:
・添加剤A: 10重量%の1−エチニル−1−シクロヘキサノール抑制剤および90重量%のシリコーンゴムベースの混合物で、PCCゴムコンパウンドの100重量部あたり0.8重量部の量で組み入れられる;および
・添加剤B: 0.2重量%の白金ベース化合物および99.8重量%のシリコーンゴムベースの混合物で、PCCゴムコンパウンドの100重量部あたり0.5重量部の量で。
【0081】
典型的には、先に検討されたとおり、Si−H基を含む架橋剤がヒドロシリル化により硬化する組成物に取り入れられる。用いた架橋剤は処理剤B2であった(実施例3参照)。架橋剤を混合物の形で組成物に導入した。架橋剤混合物は20重量%の処理剤B2および80重量%のシリコーンゴムベースからなっていた。
【0082】
従って、実施例1のコンパウンドXを製造した。ただし実施例5の処理充填剤が未処理充填剤を置き換え、それから添加剤A、添加剤Bおよび架橋剤が上記および表7で特定された割合でコンパウンドに加えて最終混合物を作り、次に最終混合物を実施例1での硬化剤Bについて記載した硬化条件を用いて硬化した。得られた硬化コンパウンドの特性は表7に示す。
【0083】
【表8】

【0084】
白金触媒ヒドロシリル化系での硬化は有用な機械的特性を有する固体状ゴム製品を製造するのに可能であること、しかし架橋剤の不存在下で行う硬化について、この実施例で、炭酸カルシウム上の立体傷害のないSi−H基の量が不十分であり、または少なくとも不十分な量で存在していることが明らかにされている。しかしながら、架橋剤を加えれば、硬化が起こり、良好な物理的特性を有する製品(シリカ補強用充填剤の省略にもかかわらず)が得られる。
【0085】
<実施例8 ポリ(メチル水素シロキサン−コ−メチルビニルシロキサン)フルイドで処理したPCCで作られたシリコーンゴムコンパウンド>
この実施例では、実施例3に記載された処理剤B2を、メチルビニルシロキサン繰返し単位の挿入、重合度(dp)の変更およびトリメチルシロキシ末端基(TMS)の代わりにジメチルビニルシロキシ末端基(ViDMS)の使用により変性した。構造変形を表8aに示す。
【0086】
表8aで示された構造変形を用いて、実施例3に記載したように処理PCCを用いシリコーンゴムコンパウンドを調製した。PCCの処理レベルはどの場合においても表9に示した構造変形の5重量%であった。それぞれの組成物の製法および硬化に用いられたプロセスは上記実施例1で明示されたとおりであった。
【0087】
【表9】

【0088】
硬化ゴムコンパウンドで得られた結果を表8bに示す。
【0089】
【表10】

【0090】
この結果は、硬化剤Bでの硬化の場合、混合ビニル−水素メチルシロキサンはPCC用処理剤としてのB2単独を超える何の利益も与えていないことを示している。しかし、硬化剤Aで硬化の場合、混合ビニル−水素メチルシロキサンの使用がPCC処理剤としてB2単独と比較して、硬化後の機械的特性の実質的な改善をもたらしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、
(iii)硬化剤
を含むシリコーンゴム組成物であって、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、前記充填剤が、式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する処理剤(各式中、R4は置換されていてもよい、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)で処理された炭酸カルシウムを含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
を有する1種以上のポリマー(式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基などの不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる硬化剤に適合する必要があり、R1は、Z、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択されてよく;各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50までの整数である)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含む二成分混合物である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、次式:
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分混合物(各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度が25℃で少なくとも500,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/またはs(いずれか一方または両方が存在する場合)との合計値が少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000までである)である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムが、25℃で10〜500mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端メチル水素シロキサンで処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリシロキサンガムおよび炭酸カルシウムをほぼ等しい量で含む請求項1〜5のいずか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記硬化剤が、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシドからなる群から選択された過酸化物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記硬化剤がオルガノ水素シロキサン硬化剤であり、白金族金属ヒドロシリル化触媒が前記組成物を硬化するのに十分な量で加えられる請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物から処理炭酸カルシウムを含有するシリコーンゴムエラストマーを製造する方法であって、
(i)室温条件下でオルガノポリシロキサンと処理炭酸カルシウムとを混合する工程、
(ii)工程(i)の混合物に硬化剤を添加する工程、および
工程(ii)の混合物を加熱により室温よりも高い温度で硬化させる工程
から本質的になるシリコーンゴムエラストマーの製造方法。
【請求項10】
室温が20〜25℃の通常の周辺温度である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シリコーンゴム組成物における補強用充填剤としての処理炭酸カルシウムの使用。
【請求項12】
前記シリコーンゴム組成物がシリカを含まないことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
処理炭酸カルシウムが前記シリコーンゴム組成物における唯一の補強用充填剤である請求項11に記載の使用。
【請求項14】
シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラス用ガスケットおよび建築用ガスケットでの、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンゴム組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、炭酸カルシウム充填剤を処理剤で処理し、続いて、予め処理された炭酸カルシウム充填剤を、前記硬化剤の前または前記硬化剤と同時に前記ポリマーに導入することを含む組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、前記ポリマー、炭酸カルシウム充填剤および処理剤を混合し、続いて、硬化剤を導入することを含む組成物の製造方法。
【請求項17】
(i)25℃で少なくとも100mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、
(iii)硬化剤
を含むシリコーンゴム組成物であって、前記充填剤は、式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する処理剤(各式中、R4は置換されていてもよい、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)で処理された炭酸カルシウムからなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項18】
前記処理剤が、次式
9m10t3-m-tSiO[(R910SiO)f(R9HSiO)g]SiR9m10t3-m-t
を有する(式中、各R9は置換されていてもよいアルキル基であり、各R10は独立してR9またはアルケニル基および/またはアルキニル基であり、およびmは0または1〜3の整数であり、tは0または1〜3の整数であり、m+t≦3)ことを特徴とする請求項1〜8または17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも1個のR10基がアルケニル基であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
9が、メチル基およびエチル基から選択されるアルキル基であり、t=0、1または2であり、m+t=3であることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記処理剤が、
(i)アルキル水素シロキサン基およびジアルキルシロキサン基、または
(ii)アルキル水素シロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基、または
(iii)アルキル水素シロキサン基、ジアルキルシロキサン基およびアルキルアルケニルシロキシ基
からなるポリマー骨格を有するブロックコポリマーまたはランダムに分布したコポリマーから選択されることを特徴とする請求項18または19に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−521046(P2011−521046A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509022(P2011−509022)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050519
【国際公開番号】WO2009/138798
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】