説明

シリコーンゴム組成物

25℃で少なくとも250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、処理充填剤、および有機過酸化物硬化剤を含むシリコーンゴム組成物を提供する。この組成物は、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、処理充填剤が1:3〜4:1の比であるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カオリンおよびアルミニウムトリヒドロキシド(aluminium trihydroxide)充填剤の混合物を含有する充填剤高配合シリコーンゴム組成物に関する。具体的には、シリコーンゴム組成物における実質的に唯一の充填剤として、カオリンおよびアルミニウムトリヒドロキシドを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、しばしばシリコーンエラストマーと呼ばれ、三つの必須成分からなる。それらの成分は、(i)実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマー、(ii)1種以上の充填剤、および(iii)硬化剤(架橋剤または加硫剤と時々呼ばれる)である。一般にシリコーンゴム組成物の二つのタイプ、熱加硫型(HTV)シリコーンゴムおよび室温加硫型(RTV)シリコーンゴムが存在する。さらに、熱加硫または高温加硫型(HTV)シリコーンゴム組成物は、組成物の未硬化の粘度に応じて、高稠度ゴム(HCR)または液状シリコーンゴム(LSR)としてしばしば区別されている。しかし、室温加硫型(RTV)シリコーンゴム組成物の名称は、多くのRTV組成物が反応を妥当な速度で進めるため若干の加熱が必要であることから、誤解させるかもしれない。
【0003】
HTVシリコーンゴム組成物は、実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマーを充填剤および他の所望の添加剤と混合してベースまたは未加工のストックを形成することにより一般に製造される。使用前に、ベースは、硬化剤、他の充填剤ならびに顔料、粘着防止剤、可塑剤および接着促進剤などの添加剤を配合して混ぜ合わせられ;プレス加硫、射出・トランスファー成形により、または連続的に押出により加硫されて、最終シリコーンゴム製品を形成することができる。例えば、ケーブル絶縁用途に用いられるシリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムが角型押出機ヘッド(angular extruder heads)にてケーブル芯に適用される独特な技術により押し出される。
【0004】
高稠度ゴム(HCR)について、最も幅広く使われている実質的に直鎖状の高分子量シリコーンポリマーは非常に高粘度のポリシロキサンである。そのような直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で1,000,000mPa・s以上の粘度を有する。典型的にはこれら直鎖状高分子量シリコーンポリマーは25℃で非常に高粘度であるのでガム状材料の形態であり、それらは非常に高粘度であるので粘度測定が非常に困難であり、そのためそれらはよくウィリアムス可塑度(ASTM D926)を参照して言及される。高粘度ポリシロキサンガム状ポリマーのウィリアムス可塑度は一般に少なくとも30であり、典型的には約30〜250の範囲である。ここで用いられる可塑度は、体積2立方cmで高さおよそ10mmのシリンダー状試験片について、25℃で3分間49ニュートンの圧縮荷重後の厚さミリメートルx100として規定される。これらポリシロキサンガム状ポリマーは一般に実質的にシロキサン骨格(−Si−O−)を含有し、その骨格に例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt−ブチル基などのアルキル基、および例えばアリル、1−プロペニル、イソプロペニルまたはヘキセニル基などのアルケニル基などの不飽和基が結合するが、ビニル基および/またはビニル基とヒドロキシル基との組合せがそれらの架橋を支援するため特に好ましい。そのようなポリシロキサンガム状ポリマーは典型的にポリマーの繰返し単位の数を表す重合度(DP)500〜20,000を有する。
【0005】
歴史的にみて、HTVシリコーンゴム組成物は1種以上の充填剤を含有する。用いられる充填剤は補強用充填剤および非補強用充填剤と一般に呼ばれる。補強用充填剤は加硫されたゴムに高強度を付与し、ヒュームドシリカおよび沈降シリカなどの微粉末非晶質シリカを含め得る。増量または非補強用充填剤は一般にシリコーンゴム組成物のコストを下げるために用いられ、一般に石英粉末、炭酸カルシウムおよび珪藻土などの安価充填材料を含む。補強用充填剤は典型的に単独で用いられるかまたは増量または非補強用充填剤と一緒に用いられる。補強用充填剤は、シリコーンゴム組成物の物理的および/または機械的特性、すなわち引張り強さおよび圧縮永久ひずみを改善するため、通常オルガノシラン、オルガノシロキサンまたはオルガノシラザンで処理されている。
【0006】
アルミニウムトリヒドロキシド粉末をシリコーンゴムに混合することにより製造される組成物は一般に知られている。また、優れた電気特性を有するシリコーンゴム成形品が、特公平05−12805号および特開平07−57574号に記載されているように、多量のアルミニウムトリヒドロキシド粉末を含有するシリコーンゴム組成物の硬化により得られることも知られている。それらシリコーンゴム組成物は多量のアルミニウムトリヒドロキシド粉末を含有し、強い吸水性があり、結果として耐水性が悪くなる。それら組成物はまた時間の経過につれて湿気を吸収することになり、電気絶縁特性の低下をもたらす。よって、それらは高電圧用電気絶縁シリコーンゴム組成物として十分に受け入れられるものではない。さらに、それらシリコーンゴム組成物は、引張り強さおよび引裂き強さなど機械的強さでの貧弱さによりいくつかの用途での使用に適さない。
【0007】
欧州特許第0787772号は、優れた電気的特性を有し、補強用充填剤を欠いているけれど十分な機械的強さを有するシリコーンゴム組成物を提供する。そのような組成物は、アルケニルとアルコキシもしくはヒドロキシ置換とを有するシランまたはシロキサンから選択される薬剤で処理されたアルミニウムトリヒドロキシド粉末を組み込むことにより得られる。
【0008】
欧州特許第0808868号は、高度に耐水性シリコーンゴムに硬化する電気絶縁としての使用のためのシリコーンゴム組成物を記載する。それは、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)オルガノシランまたはオルガノシラザンで表面処理されたアルミニウムトリヒドロキシド粉末、および(C)硬化剤を含む。成分(A)から(C)の配合により形成された組成物に(D)シリカ充填剤1〜200重量部の任意添加より、組成物は強化される。
【0009】
米国特許第4,677,141号は、ビニル末端オルガノポリシロキサンポリマー、シリカベース補強用充填剤および有機過酸化物硬化剤を含む着色可能なシリコーンエラストマーの熱安定性を、オレフィン性不飽和シロキシ基で事前処理されたカオリンなどの白色クレーで改善する方法を記載する。欧州特許第0057084号は、同じような技術に関するが、この場合もシリカ形態の補強用充填剤の存在を必要とする。
【0010】
シリカの不存在下でシリコーンゴム組成物における充填剤としてのカオリンの使用は知られており、いくつかの特許出願、例えば国際公開第2006/134400号、国際公開第2005/054352号、国際公開第2005/092965号、国際公開第2006/091241号、国際公開第2008/045395号および国際公開第2006/041929号で記載されている。カオリンベースでシリカを含まない充填剤を含む硬化シリコーンゴム組成物から製造された硬化シリコーンエラストマーの物理的特性は十分であるが、シリカを充填した系ほどではない。しかし、シリカとカオリンとの価格差は著しく、したがって適切な用途ではカオリンの使用は劇的なコスト削減をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、優れた電気的特性を有し、シリカ補強用充填剤を欠いても、優れた機械的強さを有するシリコーンゴム組成物を提供することである。本発明は高い機械的強さおよび優れた電気的特性、例えば耐トラッキング性、耐アーク性および耐浸食性などを示すシリコーンゴム組成物を提供する。
【0012】
HTVシリコーンゴム組成物を含めたシリコーンゴム組成物は、ゴムサンプルを破壊するのに要するエネルギー量である引張り強さ、ゴムサンプルが引き伸ばされ得る長さである伸び、およびゴムサンプルの永久ひずみに要するエネルギー量である圧縮永久ひずみを含む種々のパラメーターを用いて、評価することができ、また多くの場合評価されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の実施態様によれば、
(i)25℃で少なくとも250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、および
(iii)有機過酸化物硬化剤
を含むシリコーンゴム組成物であって、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、前記充填剤が、1:3〜4:1の比であるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物を含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物を提供する。
【0014】
別段の表示がない限り、すべての粘度を25℃で測定する。本発明による組成物は高稠度ゴム(HCR)組成物として用いることができる。本発明による組成物がHCRであるなら、用いられるオルガノポリシロキサンポリマーの粘度は好ましくは25℃で少なくとも250,000mPa・sであるが、典型的には25℃で1,000,000mPa・sを超え、少なくとも30のウィリアムス可塑度を有する。
【0015】
上述されたとおり、本発明による組成物は、補強用シリカ充填剤を実質的に含まない。本発明のために、補強用シリカ充填剤は、沈降シリカおよびフュームドシリカならびに他の補強用シリカ(それ故、シリコーンゴム組成物に補強効果を与えないシリカ粉末(Ground silica)は除外される)を意味するよう意図されている。用語「実質的に含まない」とは、当然のことながらシリカ充填剤が単独でポリマー+処理アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量5重量部まで存在してもよいように、組成物が補強用シリカ充填剤を本質的に含まないということを意味するよう意図されていると理解すべきである。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量3重量部まで存在する。あるいは、補強用シリカ充填剤がポリマー+処理アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の全累積重量100重量部あたり最大量1重量部まで存在する。さらに代替的には、前記組成物が唯一の補強用充填剤としてアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンを含み、補強用シリカ充填剤を一切含まない。あるいは、アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンが組成物中に存在する唯一の充填剤である。ポリマー100重量部あたり少なくとも25重量部の量で存在しないと、一般にシリコーンゴムの物理的特性で補強効果が分からないことに注目すべきである。従って、許容される水準で存在する補強用シリカ充填剤は、シリコーンゴムの物理的特性に僅かな補強効果があるかまたは何も補強効果がない。下記に詳細に述べるように、沈降シリカおよび/またはヒュームドシリカが存在するときは、それらはレオロジー調整剤の特性のために用いられる。本質的には本明細書で記載されているとおり組成物中に見ることのできる補強効果は、アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの補強特性により与えられている。
【0016】
前記オルガノポリシロキサンポリマーは、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
を有する1種以上のポリマーを含む。式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基などの不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる硬化剤に適合する必要がある。R1はZ、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択し得る。各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50までの整数であり;x+y+sの合計は要求される最終製品に適するポリマー粘度をもたらす数である。HCR組成物の場合、好ましくはポリマーの粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・sである。あるいは、HCR組成物の場合、ポリマーの粘度は25℃で少なくとも1,000,000mPa・sである。yおよび/またはsが整数であれば、ポリマー鎖中の(R2SiO)基、(RZSiO)基および/または(R2Si−R5−(R2)SiO)基はランダム状に分布されるか、またはオルガノポリシロキサンポリマーはブロックポリマーの形態でもよい。
【0017】
好ましくは、各R基はアルキル基であり、最も好ましくは各Rはメチルまたはエチル基である。好ましくは、Zがアルケニル基であるなら、それは2〜10個の炭素原子、より好ましくは2〜7個の炭素原子を有し、好ましい例はビニルまたはヘキセニル基である。R5は、例えば、−CH2−、−CH2CH2−および−CH2CH2CH2−であり得るが、最も好ましくは各R5は−CH2CH2−である。
【0018】
本発明の一つの好ましい実施態様(前記組成物がHCR組成物である)では、前記組成物のオルガノポリシロキサン成分は、次式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12 (1)
および
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s1(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12 (2)
を有する二成分混合物のような2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であり得る。式中、各Rは同じまたは異なり、上述されたとおりであり、および各R1は同じまたは異なり、上述されたとおりであり;x、yおよびsは先に定義されたとおりであり、x1、y1およびs1の値はx、yおよびsそれぞれと同じ範囲であるが、x、yおよびsの少なくとも1個はx1、y1およびs1それぞれの値と異なる値である。好ましくは、R1基の少なくとも25%はZ基であり、最も好ましくはアルケニル基であり、ポリマー混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sであり、ポリマー(1)は、少なくとも1,000の重合度(DP)、すなわちxの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値を有し且つポリマー(2)は、少なくとも100のDP、すなわちx1の値またはx1とy1および/もしくはs1(存在する場合)との合計値を有する。
【0019】
従って、前記組成物は、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含み得る。
【0020】
あるいは、他の好ましい実施態様では、前記オルガノポリシロキサンは、次式
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分の混合物(各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/もしくはs(いずれか一方もしくは両方が存在する場合)との合計値は少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000までである。好ましくは、R1の少なくとも25%がZ基で、最も好ましくはアルケニル基である。xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値が25℃で少なくとも500,000mPa・s、あるいは25℃で少なくとも1,000,000mPa・sのポリマー混合物の粘度を与える。典型的には、xの値またはxとyおよび/もしくはs(存在する場合)との合計値は少なくとも1,000である)を含む。
【0021】
発明者らは、意外にも、充填剤としてのアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの組合せの使用がいずれかの充填剤単独よりも有用な特性をシリコーンゴムに与えることを確認した。そのようなシリコーンゴムは高電圧電気絶縁用に用いることができる。任意の適するカオリンが用いられてよく、焼成カオリンが特に好ましい。カオリンは当技術分野ではよく知られている。それは、Al23・2SiO2・2H2Oを主に含み、いくらかのイライトおよび不純物を共に含むケイ酸アルミニウムである。カオリンは白色状で入手できるので、特に有用である。本発明の目的において、「白色」は、シリコーンエラストマー組成物の所望色に着色することを妨げる十分な強さの色相または色合いが存在しないと考えられることである。カオリンは米国特許第4677141号にさらに記載されており、参照して取り込まれる。カオリンは、いずれの場合にもポリマー100重量部あたり10〜250重量部、好ましくは25〜200重量部で加えられる。
【0022】
任意の好適な形態のアルミニウムトリヒドロキシド粉末が本発明の組成物での成分として利用することができる。0.2〜50マイクロメートルの範囲の粒径が一般に使われ、0.2〜10マイクロメートルの粒径が好ましく用いられる。アルミニウムトリヒドロキシドは、いずれの場合にもポリマー100重量部あたり10〜250重量部、好ましくは25〜200重量部で加えられる。
【0023】
アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの比は1:3〜4:1の範囲内でなければならない。発明者らはこの範囲内で、典型的に直線関係が予期されたが、意外にも特定な範囲内で起こらなかったため、これら2種の充填剤の混合による相乗効果があることが分かった。あるいは、本発明によるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンの比は2:1〜1:2である。
【0024】
述べたように、充填剤を疎水化して、本発明による組成物中で他の成分と均質な混合物を取り扱い且つ得易くするために、アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の処理混合物を用いることが、本発明の本質的特徴である。アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物の疎水化は、シリコーンポリマーに容易に湿潤されるアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの疎水化変性混合物をもたらす。アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンの疎水化変性混合物は凝集せず、よって容易にシリコーンポリマーに均質に取り入れられる。
【0025】
アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の処理混合物は組成物中に存在する充填剤の大部分を占め、ポリマー100重量部あたり約50〜300重量部、より好ましくはポリマー100重量部あたり30〜150重量部、最も好ましくはポリマー100重量部あたり50〜125重量部の量で存在する。
【0026】
アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物の表面を疎水化する任意の適する処理剤が用いられ得る。例として、脂肪酸および/または脂肪酸エステル(例えばステアリン酸エステル)などの有機処理剤、またはオルガノシラン、ヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザンもしくは短鎖オルガノポリシロキサンポリマー(例えば短鎖シロキサンジオール)が挙げられる。
【0027】
アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物の処理に最も適すると見出したシランは、一般式R3(4-n)Si(OR3n(式中、nは1〜3の値であり;各R3は同じまたは異なり、一価の有機基、例えばアルキル基、アリール基、またはアルケニル基(例としてビニルまたはアリル)、アミノ基もしくはアミド基などの官能基を表す)のアルコキシシランである。よって、いくつかの適するシランとしては、メチルトリエトキシシランおよびメチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのフェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。所望なら、シラザンもアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の混合物用処理剤として用いることができる。それらには、(以下に限定されないが)ヘキサメチルジシラザン;1,1,3,3−テトラメチルジシラザン;および1,3−ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。本発明に用いることができる他の適する処理剤には、本出願人の同時係属特許出願である国際公開第2008/034806号に記載されているものである。
【0028】
短鎖オルガノポリシロキサンには、例えば2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサンおよび少なくとも1個のSi−H基(末端基でもよいし、末端基でなくてもよい)を含むオルガノポリシロキサンが挙げられる。このオルガノポリシロキサンは、例として式:
4h3-hSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4h3-h
を有するもの(各式中、R4は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;Hは水素であり、hは0または1〜3の整数であり、fおよびgは独立して0または整数で、処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜5000mPa・sの粘度を有するものである)。
【0029】
好ましくは、処理される場合、アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の処理混合物のおよそ1〜10重量%が処理剤である。あるいは、処理剤はアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリン充填剤の処理混合物の2.5〜10重量%である。充填剤は組成物に添加する前に予め処理するか、またはポリマーと混合する間にその場処理することもできる。
【0030】
上で述べたように、硬化剤は必須であり、ここで用いることができる化合物として、ジアルキルペルオキシド、ジフェニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、パラメチルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第三級ブチルベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジ第三級ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(第三級ブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、第三級ブチル−トリメチルペルオキシド、第三級ブチル−第三級ブチル−第三級トリフェニルペルオキシド、およびt−ブチルベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。最も適する過酸化物ベース硬化剤はベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、およびジクミルペルオキシドである。上記のような有機過酸化物が、上で定義されたポリマーのR1がアルキル基であるときに、特に用いられるが、1分子あたりいくらかの不飽和基が存在することが好ましい。R1が上で述べたZであるときに硬化剤としても用いられ得る。
【0031】
これら有機過酸化物は組成物へ容易に導入するためにシリコーンオイルに分散することにより、ペースト状に形成してもよい。ポリマー100重量部あたり、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の量で用いられることが薦められる。
【0032】
先述のとおり、充填剤は、1:3〜4:1の比であるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物を含む。ある場合にアルミニウムトリヒドロキシドが組成物に存在しないなら、組成物は硬化しないことが確認されている。これは、過酸化物触媒として、2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンを用いたときに特に見られる事態である。それは酸分解に敏感であるカオリンによるものと考えられる。さらに、組成物中にアルミニウムトリヒドロキシドだけが存在するなら、ある過酸化物触媒、具体的には2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドの存在下の硬化中に不要な発泡が起こり得る。
【0033】
先に述べたように、本発明の組成物は好ましくは補強用シリカ充填剤を含まない。しかし、組成物は、ポリマー+アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物100重量部あたり最高5部のレオロジー調整剤を含むことができる。好ましくは、レオロジー調整剤が存在するなら、それはポリマー+アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物100重量部あたり1〜3重量部の量で存在する。レオロジー調整剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ホウ酸、非晶質の沈降またはヒュームドシリカを含み得る。許容範囲で存在するシリカ量は、得られる組成物の物理的特性にごくわずかに影響するほどの少ない量で存在するようであると理解される。
【0034】
前記組成物は他の充填剤を全く含まなくてもよいが、組成物は、微粉末炭酸カルシウムなどの追加充填剤(シリカ補強用充填剤以外の)、または追加非補強用充填剤、例えば破砕石英、ケイ藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタンおよびカーボンブラック、タルク、ケイ灰石などを含むことができる。単独または上記のものに追加して用いられ得る他の充填剤として、バン土石、硫酸カルシウム(硬石膏)、セッコウ、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどのクレー、水酸化マグネシウム(ブルース石)、グラファイト、炭酸銅(例えば孔雀石)、炭酸ニッケル(例えばザラカイト)、炭酸バリウム(例えば毒重石)、および/または炭酸ストロンチウム(例えばストロンチアン石)、ハロイサイト、海泡石および/またはアタパルジャイトなどが挙げられる。
【0035】
橄欖石群;ザクロ石群;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩。橄欖石群はケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦土橄欖石およびMg2SiO4などを含む。ザクロ石群には粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、苦バンザクロ石;Mg3Al2Si312;灰バンザクロ石;およびCa2Al2Si312などを含む。アルミノケイ酸塩には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ線石;Al2SiO5;ムル石;3Al23・2SiO2;藍晶石;およびAl2SiO5などを含む。環状ケイ酸塩群にはケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、キン青石およびAl3(Mg、Fe)2[Si4AlO18]などを含む。鎖状ケイ酸塩群には、粉末ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、ケイ灰石およびCa[SiO3]などを含む。
【0036】
層状ケイ酸塩群には、ケイ酸塩鉱物、例えば以下に限定されないが、雲母;K2Al14[Si6Al220](OH)4;葉ロウ石;Al4[Si820](OH)4;タルク;Mg6[Si820](OH)4;蛇紋岩例えばアスベスト;高陵石;Al4[Si410](OH)8;および蛭石などを含む。
【0037】
上記の充填剤は、未処理でも用いることができるが、好ましくは上述された疎水化処理剤の一つで、適する方法にて処理される。
【0038】
前記組成物に含め得る他の成分には、以下に限定されないが、レオロジー調整剤;接着促進剤、顔料、着色剤、乾燥剤、熱安定剤、難燃性付与剤、紫外線安定剤、硬化調整剤、電気および/または熱伝導性充填剤、発泡剤、粘着防止剤、ハンドリング剤(handling agent)、カルボン酸金属塩およびアミンなどの過酸化物硬化助剤、および酸受容体が挙げられる。当然のことながら、いつくかの添加剤は二以上の添加剤リストに含まれている。そのような添加剤は言及された色々な面で機能する能力を有することになる。
【0039】
任意の接着促進剤を本発明によるゴム組成物に取り入れることができる。それらには、例えばアミノアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン(例として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、エチレンジアミンとシリルアクリラートとの反応生成物が挙げられ得る。1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌラートなどのケイ素基含有イソシアヌラートも追加して用いられ得る。さらに、適する接着促進剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシアルキルアルコキシシランと、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ置換アルコキシシランならびに任意でメチルトリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシランおよびそれらの誘導体などのアルコキシシランとの反応生成物がある。
【0040】
熱安定剤には、酸化鉄およびカーボンブラック、鉄カルボン酸塩、セリウム水和物、ジルコニウム酸バリウム、酸化マグネシウム、セリウムオクトエートおよびジルコニウムオクトエート、ならびにポルフィリンが挙げられ得る。
【0041】
難燃性付与剤には、例えばカーボンブラック、水酸化アルミニウム水和物、ケイ灰石などのケイ酸塩、白金および白金化合物が挙げられ得る。
【0042】
導電性充填剤には、カーボンブラック、銀粒子などの金属粒子、任意の適する導電性金属酸化物充填剤、例えばスズおよび/またはアンチモンで表面処理された酸化チタン粉末、スズおよび/またはアンチモンで表面処理されたチタン酸カリウム粉末、アンチモンで表面処理された酸化スズ、およびアルミニウムで表面処理された酸化亜鉛が挙げられ得る。
【0043】
熱伝導性充填剤には、粉状、フレーク状およびコロイダル銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウムおよびチタニウムなどの金属粒子、金属酸化物、特に酸化アルミニウム(Al23)および酸化ベリリウム(BeO);酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム;セラミック充填剤、例えば一炭化タングステン、炭化ケイ素および窒化アルミニウム、窒化ホウ素およびダイヤモンドが挙げられ得る。
【0044】
ハンドリング剤は生強度または加工性などのシリコーンゴムの未硬化特性を改変するために用いられ、種々の製品名で販売されている(例えば、ダウコーニングコーポレーションより販売されているSILASTIC(登録商標)HA−1、HA−2およびHA−3)。
【0045】
過酸化物硬化助剤は、硬化ゴムの引張り強さ、伸び、硬さ、圧縮永久ひずみ、反発(rebound)、接着および動的柔軟性(dynamic flex)などの特性を改変するために用いられる。それには、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートなどのジ−またはトリ−官能性アクリラート;トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ポリブタジエンオリゴマー等が挙げられ得る。シリルヒドリド官能性シロキサンもまた過酸化物で触媒されるシロキサンゴムの硬化を改変する助剤として用いられ得る。
【0046】
前記酸受容体には、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられ得る。
【0047】
セラミック化剤(ceramifying agent)は、灰分安定剤とも呼ばれ、ケイ灰石などのケイ酸塩が挙げられ得る。
【0048】
従来のシリコーンゴム組成物と比べて、許容できる機械的特性を有するシリコーンゴム組成物を、加熱を必要とせず、補強用充填剤として高価なヒュームドシリカを用いる必要がない方法で、本発明により製造することができる。
【0049】
本発明による組成物は任意の適する方法で製造することができる。充填剤高配合シリコーンゴム組成物を調製する従来の手段は、最初にミキサー中で補強用充填剤(典型的に例えば、ヒュームドシリカ)、補強用充填剤(ヒュームドシリカ)用処理剤、およびオルガノポリシロキサン(例えばポリシロキサンガム)の混合物を加熱することによりシリコーンゴムベースを製法することである。シリコーンゴムベースは第一ミキサーから取り出されて、第二ミキサーに移され、そこで一般にシリコーンゴムベース100重量部あたり石英粉末などの非補強または増量用充填剤約150重量部が加えられる。典型的に他の添加剤、例えば硬化剤、顔料および着色剤、熱安定剤、粘着防止剤、可塑剤、ならびに接着促進剤などを第二ミキサーに供給する。この手段も補強用充填剤がアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの混合物である本発明の組成物にも利用することができる。
【0050】
室温条件とは、大気圧および20〜25℃の通常の周辺温度での室温を意味することを理解するべきである。本発明の場合、補強用充填剤のその場処理を始める際必要とするような、工程(i)の間での加熱が必要とされないことは大きな利点である。あらゆる混合プロセスにおいて、混合は熱を発生するので、本発明の場合における混合は如何なる追加の熱注入をも必要としない。
【0051】
カオリン/アルミニウムトリヒドロキシドはポリシロキサンガム中にヒュームドシリカよりもずっと容易に分散するので、全体の混合サイクルがかなり減少し、ミキサーの利用をとても多くすることになる。さらに、カオリン/アルミニウムトリヒドロキシドは準補強用充填剤であるので、十分な機械的特性を有する最終組成物を提供することができる。しかし、カオリン/アルミニウムトリヒドロキシドの組合せはただ準補強だけであるため、ヒュームドシリカの場合よりも高い投入レベルで用いる必要がある。他方では、シリカに比べてカオリン/アルミニウムトリヒドロキシドは低コストなため、最終組成物について適正なレベルの経済的魅力を得るために多量のアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの混合物を用いる必要はない。好ましくは、処理カオリン/アルミニウムトリヒドロキシドとオルガノポリシロキサンとの比は1:2〜2:1である。
【0052】
それによってヒュームドシリカを含有する最終組成物と同じレベルの機械的特性を得ることができる。さらに、ヒュームドシリカの排除は、加熱が必要なく、全体の配合プロセスを一つのミキサーで行うことができることを意味する。さらに、カオリン/アルミニウムトリヒドロキシドについての取込み時間はヒュームドシリカの場合よりもはるかに速く、より速い処理能力を利用することによりミキサー生産量が増大するという結果となる。最後にカオリン/アルミニウムトリヒドロキシドはヒュームドシリカよりずっと高いバルク密度を有し、それが非常に改善された扱い易さおよび貯蔵し易さを可能にする。
【0053】
これら最終のアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの混合物含有シリコーンゴム組成物は、シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラスなどの用途に、また建築用ガスケット用に有用である。具体的例として、窓ガラス用ガスケット、プレナムまたは安全ケーブル・シース用途などのワイヤーおよびケーブル、複層ガラススペーサーガスケットでの本製品の使用がある。その使用に関連するただ一つの要求事項は、最終組成物が特定用途に許容される特性にほぼ等しい特性プロフィールを有することである。本発明の組成物は、適する発泡剤を添加してシリコーンゴムスポンジの製造にも用いることができる。任意の発泡剤を用いることができる。得られる製品は、断熱窓ガラススペーサーガスケットの製造に特に有用である。意外にも、本発明は、良好な体積抵抗率、誘電率、散逸率、耐トラッキング性、耐アーク性および耐浸食性を有する。
【0054】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するために与えられる。
【0055】
本明細書で、用語「室温」とは20〜25℃の通常の周辺温度を意味することを意図している。別段の表示がない限り、全ての粘度は25℃で測定された。
【実施例】
【0056】
未処理カオリンおよび未処理アルミニウムトリヒドロキシドは購入することができ、疎水化剤で予め処理し、または特に予め定められた割合で混合して処理するか、処理剤、充填剤およびポリマーすべてを一緒に混合するその場処理をすることができる。
【0057】
<処理カオリンおよび処理アルミニウムトリヒドロキシド混合物の実験室調製>
本発明による充填剤混合物は、ポリマーに取り込む前に処理してもよい。例えば、次のプロセスはそのような目的に用いられ得る。所定の混合比の未処理カオリンおよび未処理アルミニウムトリヒドロキシドを普通の家庭用フードミキサーのミキシングボウルに入れた。選ばれた処理剤をカオリンおよびアルミニウムトリヒドロキシド表面の処理の所望レベルを得るのに十分な量をミキシングボウルに導入した。ミキサーを10分間稼働したままにした。羽根やボウルの側壁に付着した残余材料をこすり落とした。サンプルをさらに15分間混合した。その後ミキシングボウルの中身を金属トレイに移し、120℃の空気循環オーブン中に最短時間の12時間置いた。
【0058】
また一方、予め処理された充填剤を購入し、ポリマーに導入する前にそれらを混合することにより本発明による組成物を調製した。使用されたカオリンは製品名NPD22Bのもとで、Imerys社から入手された焼成カオリンであった。それはメチルトリメトキシシランで処理されたと思われる。使用されたアルミニウムトリヒドロキシドはHuber(登録商標)M9400SPとしてHuber社からで、独自のシランベース処理剤で処理されていた。それぞれの処理充填剤の重量を量り、所定の割合で混合した。
【0059】
<配合−手順>
2種のオルガノポリシロキサンポリマーおよび充填剤の混合物を含むシリコーンゴムベースを最初に調製した。用いられた充填剤の全量はベースの50重量%またはベースの57.5重量%のいずれかであり、処理カオリン(Imerys(登録商標)NPD22B)および処理アルミニウムトリヒドロキシド(Huber(登録商標)M9400SP)の割合は表1Aで示されるように変動させた。
【0060】
【表1】

【0061】
前記ベースの残り分は、
a)ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン コポリマー(ここでジメチルシロキサン単位とメイチルビニルシロキサン単位の比は99.82:0.18で、7,000の平均dpを有した);および
b)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(7,000の平均dpを有し、分子鎖の末端の両方がジメチルビニルシロキシ基で末端封鎖された)
の等量で作られた。よって、ベース中の充填剤の割合が57.5重量%であるなら、(a)および(b)はベースの21.25重量%の同じ量で用いられ、ベース中の充填剤の割合が50重量%であるなら、(a)および(b)はベースの25重量%の同じ量で用いられる。
【0062】
ブラベンダー密閉式ミキサー(internal mixer)で、最初に(a)および(b)を適正な量で混ぜ合わせ、その後各充填剤のそれぞれの量を(a)および(b)混合物に導入した。どの場合においても、混合方法は同じであった。それによれば、ミキサーの羽根を最大速度で回転するように起動し、所要量のPDMSをミキサーに入れ、所要量の処理充填剤がミキサーに加えられた。充填剤混合物の添加が完了したら、ミキサーをさらに30分間稼働させた。充填剤混合物およびPDMSの量を容積により計算して、ミキサーの充填レベルを一定に保持した。
【0063】
<コンパウンドの試験>
得られたベースを2本ロール混練機にて適する硬化剤と混合した。すべての実験で用いられた硬化剤は、ポリマー((a)+(b))の100重量部あたり1重量部の量の2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(DHBP)であった。硬化剤はポリマー(b)のペースト状で導入された。
【0064】
種々の試験が本発明によるシリコーンゴム材料の適合性を評価するために用いられた。ウィリアムス可塑度(可塑性)は、ASTM D926(上述のとおり)に従って、Wallace Plastometerを用いて測定した
【0065】
物理的特性結果について用いたサンプルは、170℃、2MPaの圧で10分間プレス成形し、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを形成することにより調製したプレス成形シートから取得した。得られたシートから試験試料を切り取り、機械的特性を測定した。ショアAデュロメータ測定(ShA)はASTM D2240にて測定した。引張り強さ(引張り)100%モジュラス(100%Mod)および伸び(ETB)がDIN 53 504によって測定された。
【0066】
【表2】

【0067】
上述のとおりカオリン単独で用いたとき(すなわち、5(比較)および10(比較))、組成物のエラストマー製品は硬化しなかったと見える。発明者らは、組成物中に存在した各充填剤の量を比較した結果において直線関係を確認することを期待した。しかし、意外にもそれは起こらずに、本願で選択された範囲において、正の相乗効果がショアA、硬さ、引張り強さおよび100%モジュラスなどの特性で、特に例3および8で観察される。
【0068】
<実施例2>
実施例1に記載されたと同じ予め処理された充填剤を用いた。配合手順は、1種のオルガノポリシロキサンのみ、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(7,000の平均dpを有し、分子鎖の末端の両方がジメチルビニルシロキシ基で末端封鎖された)が用いられたことを除いて、実施例1に記載されたのと同じであった。充填剤の全量は全ベース(ポリマー+充填剤)の60重量%であり、処理カオリン(Imerys(登録商標)NPD22B)および処理アルミニウムトリヒドロキシド(Huber(登録商標)M9400SP)の割合は表2Aに示されているように変動された。実施例2の組成物を、ベース100重量部あたりポリジメチルシロキサン中の2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド50%ペースト1.2部が用意されたことを除いては、実施例1に記載されたように混合した。
【0069】
【表3】

【0070】
116℃で5分間プレス成型し、続いて200℃で4時間ポスト硬化させることにより試験用シートを調製した。そのシートからのサンプルを実施例1に記載のように試験し、下記表2Bに示した。
【0071】
【表4】

【0072】
熱老化を、表2Cに示されたように所望温度で所望時間オーブン中に予めカットされた試験試料をつるすことにより実施した。サンプルはその後取り外され、上記試験に先立ち一晩冷却・平衡化させられた。
【0073】
【表5】

【0074】
結果からサンプル1は良好な初期特性を与えるが、すべてがカオリン充填剤の組成物の使用は熱老化により、もろくなる材料にする傾向があると見られる。100%アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)充填剤配合組成物(サンプル3)は、特にポスト硬化中に発泡した貧弱な初期材料を与え、物理的特性は熱老化でもほどよいままであるが、観察された発泡は多くの用途での使用の妨げとなる。本発明に従うサンプル2は良好な熱老化性能に加えて、適度な初期特性を有して最善の釣り合いを与えた。サンプル2では発泡傾向のないことが分かり、熱老化の結果は組成物の使用を受け入れさせた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)25℃で少なくとも250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、および
(iii)有機過酸化物硬化剤
を含むシリコーンゴム組成物であって、補強用シリカ充填剤を実質的に含まず、前記充填剤は、1:3〜4:1の比であるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物を含むことを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、好ましくは、式:
RR12SiO[(R2Si−R5−(R2)SiO)s(R2SiO)x(RZSiO)y]SiRR12
(式中、各Rは同じまたは異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基または3,3,3−トリフルオロアルキル基であり;各Zは同じまたは異なり、水素またはアルケニル基もしくはアルキニル基のような不飽和炭化水素基であり;各R1は同じまたは異なってもよく、前記硬化剤が前記ポリマーを硬化させ得るように用いられる前記硬化剤に適合する必要があり、R1は、Z、R、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基から選択されてよく;各R5は同じまたは異なってもよく、1〜6個の炭素原子を有する二官能性飽和炭化水素基であり;xは整数であり、yは0または整数であり;sは0または1〜50までの整数である)
を有する1種以上のポリマーを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、式:
Me2ViSiO[(Me2SiO)x(MeViSiO)y]SiMe2Vi
および
Me2ViSiO[(Me2SiO)x1]SiMe2Vi
を有する2種の高粘度オルガノポリシロキサンポリマーの混合物(式中、Meはメチル基(−CH3)を表し、Viはビニル基(CH2=CH−)を表し、xおよびyの合計値は少なくとも1,000であり、x1の値は少なくとも1000である)を含む二成分混合物である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンポリマーが、次式:
RR12SiO[(R2SiO)x(RZSiO)y(R2Si−R5−(R2)SiO)s]SiRR12
および
RR12SiO[(R2SiO)x1(RZSiO)y1]SiRR12
を有する二成分混合物(各式中、R、ZおよびR1は上述されたとおりであり、x、y、s、x1およびy1は前に記述されたとおりであり、前記混合物の粘度は25℃で少なくとも500,000mPa・sの値を有し、xの値またはxとyおよび/またはs(いずれか一方または両方が存在する場合)との合計値が少なくとも1,000であり、x1およびy1の値は100〜1000までである)である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの前記混合物が、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサンおよび式:
4d3-dSiO[(R42SiO)f(R4HSiO)g]SiR4d3-d
を有する処理剤(各式中、R4は1〜6個のアルキル基を表し;Hは水素であり、dは0または1〜3の整数であり、ビニル基を表し;ならびにfおよびgは独立して0または整数で、前記処理剤が少なくとも1個のSi−H基および25℃で5〜500mPa・sの粘度を有するものである)の群から選択されるオルガノポリシロキサンで処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの前記混合物が、式:
3(4-n)Si(OR3n
のアルコキシシラン(式中、nは1〜3の値を有し;およびR3は、アルキル基、アリール基またはアルケニル基である)で処理されたアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの混合物を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルコキシシランが、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシランからなる群から選択される化合物である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの比が1:2〜2:1である請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシドからなる群から選択される過酸化物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記硬化剤がオルガノ水素シロキサン硬化剤であり、白金族金属ヒドロシリル化触媒が前記組成物を硬化するのに十分な量で加えられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物を含有するシリコーンゴム組成物の製造方法であって、
(i)室温条件下でオルガノポリシロキサンとアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物とを混合する工程、
(ii)工程(i)の混合物に硬化剤を添加する工程、および
工程(ii)の混合物を加熱により室温よりも高い温度で硬化させる工程
から本質的になるシリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
室温が20〜25℃の通常の周辺温度である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
シリコーンゴム組成物における補強用充填剤としてのアルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物の使用。
【請求項14】
前記シリコーンゴム組成物がシリカを含まないことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
アルミニウムトリヒドロキシドおよびカオリンの処理混合物が前記シリコーンゴム組成物における唯一の補強用充填剤である請求項13に記載の使用。
【請求項16】
シリコーン異形押出品、ワイヤー・ケーブルコーティング、窓ガラス用ガスケット、高電圧絶縁および建築用ガスケットでの、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリコーンゴム組成物の使用。
【請求項17】
(i)25℃で少なくとも250,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン、
(ii)処理充填剤、および
(iii)有機過酸化物硬化剤;
を含み、前記充填剤が、1:3〜4:1の比であるアルミニウムトリヒドロキシドとカオリンとの混合物からなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。

【公表番号】特表2011−521051(P2011−521051A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509486(P2011−509486)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/002986
【国際公開番号】WO2009/139883
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】