説明

シリコーンゴム製品の洗浄方法及びシリコーンゴム製品

【課題】 シリコーンゴム製品に残留して電子回路の接触不良などを引き起こす低分子ジメチルポリシロキサンを、引火性がなく、安全性に優れ、オゾン層破壊や地球温暖化に対する影響も少ない有機溶剤である1−ブロモプロパンを使用した洗浄を行うことによって低減することができる。
【解決手段】 シリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを低減させるシリコーンゴム製品の洗浄方法であって、シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬させて、超音波処理を施す超音波処理工程を含むシリコーンゴム製品の洗浄方法、及び該洗浄方法により処理されたシリコーンゴム製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム製品に残留する低分子ジメチルポリシロキサンを低減させるシリコーンゴム製品の洗浄方法及び該洗浄方法によって処理したシリコーンゴム製品に関するものであり、より詳細には、引火点もなく、安全性に優れ、オゾン層の破壊や地球の温暖化に対する影響が小さい1−ブロモプロパン(CBr)をシリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサン残存量を低減させるために使用する洗浄用の有機溶剤として選択、使用することによって、残存する低分子ジメチルポリシロキサンを効果的に除去することができるシリコーンゴム製品の洗浄方法、及び該方法による洗浄処理により低分子ジメチルポリシロキサン残存量が低減されたシリコーンゴム製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型化、集積化された電子回路では、リレーやスイッチの金属接点に生じる障害は、大部分が接触不良であり、その原因として塵埃と有毒ガス(腐食性ガス、有機ガス等)によるものに分類される。有毒ガスは、HS、SO、NHなどの大気中の腐食性ガスと主に機器の構成材料である成型材料、シリコーン化合物、接着剤などから発生する有機ガスに分けられる。特にシリコーンゴム製品から発生するガスが金属接点に著しい悪影響を及ぼすことが報告されており、このガスは、シリコーンゴム製品中に残留する低分子ジメチルポリシロキサンであることが特定されていた。このため、これらのシリコーンゴム製品に残留する低分子ジメチルポリシロキサンの低減方法として、例えば、本出願人の先の出願に係る特許公報である特許文献1には、トリクロロトリフルオロエタン(所謂、CFC−113)などを有機溶剤として使用して、シリコーンゴム製品中に残留するジメチルポリシロキサンを除去する方法が詳述されている。更に、特許文献2では、低分子シロキサンの除去にあたって、最初に真空状態にした状況下でフロン液中にシリコーン製のカラーキャップを浸漬させる方法が開示されている。
【特許文献1】特公平7−62084号公報
【特許文献2】特開平8−306219号公報
【0003】
しかしながら、モントリオール議定書の締約国会合の議決により、特定フロン類として上記CFC−113などの使用は全廃となった。その代替として、1,1,1−トリクロロエタンやトリクロロエチレンの使用が行われたが、その後の環境に対するいくつかの保全、法の規制により、1,1,1−トリクロロエタンも既に全廃となり、最近は、PRTR(化学物質排出移動量届出制度)法の発効によりトリクロロエチレンの使用などに制限、規制が課せられることとなった。一方、HCFC−225(HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン)は、オゾン破壊係数が〜0.02程度と低いためにウイーン会議(1995年開催;第7回モントリオール議定書締約国会合)の席上、2010年までの使用が国際的に認められたが、2010年以降は削減が開始されることになっており、安定した製品を世の中に継続して供給し続けていくためには、HCFC−225についても、使用の選択には問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来、金属接点の接触不良の原因となるシリコーンゴム製品の低分子ジメチルポリシロキサンなどを短時間で効果的に除去するのに有効であるとされていた上記フロン類などの有機溶剤の使用に制限が課せられたことにより、これらを使用しなくてもシリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを効果的に除去することができる技術の開発が望まれていた。
【0005】
また、シリコーンゴム製品を洗浄する時には、例えば上記特許文献1に記載されたように、シリコーンゴム製品を回転させたり、上下運動させることによって、洗浄効率を向上させることが可能となるが、この時、シリコーンゴム同士の擦れ合いから静電気が発生するので、この静電気の放電による火災発生の防止のため、洗浄に使用する溶剤は、難燃性が付与されたものの選択が必須である。更に、洗浄に使用した溶剤については、その回収を効率的に行うことができれば、より望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴム製品中に残存した低分子ジメチルポリシロキサンを溶剤中に効果的に溶出させることができ、且つ引火性がなく、安全性にも優れ、オゾン層の破壊や地球の温暖化に対する影響が少ない溶剤を使用し、より好ましくは、洗浄後の操作において、このシリコーンゴム製品に残留する溶剤を効率的に除去、回収することが可能なシリコーンゴム製品の洗浄方法、及び該洗浄方法により洗浄処理され、低分子ジメチルポリシロキサン残存量が低減されたシリコーンゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、引火点がなく、安全性に優れ、オゾン層破壊や地球の温暖化に対する影響が少ない有機溶剤である1−ブロモプロパンが、低分子ジメチルポリシロキサンを有機溶剤中に効果的に溶出させることができ、優れた除去効果を奏することを見出した。そして、更に鋭意検討した結果、シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬して超音波処理すると、シリコーンゴム製品が1−ブロモプロパンの浸漬により膨潤して、低分子ジメチルポリシロキサンを溶出させることができるが、このような溶出機構による場合、シリコーンゴム製品の平均厚さが所定厚さ以下であったり、シリコーンゴム製品の膨潤率を所定範囲内とすることによって、低分子ジメチルポリシロキサンをより効率的に溶出、除去できることを見出した。更に、洗浄後の操作において、このシリコーンゴム製品に残留する1−ブロモプロパンを除去、回収する際に、加熱真空減圧乾燥処理すると、より効率的に1−ブロモプロパンを除去、回収することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明は、(1)シリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを低減させるシリコーンゴム製品の洗浄方法であって、シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬させて、超音波処理を施す超音波処理工程を含むことを特徴とするシリコーンゴム製品の洗浄方法を提供する。
【0009】
ここで、本発明の上記(1)記載の洗浄方法は、上記シリコーンゴム製品の平均厚さが3mm以下であったり、上記超音波処理工程において、上記シリコーンゴム製品の超音波処理後の重量が、超音波処理前の重量に対して20〜200%の増加となるように超音波処理を施すものであったりすると、より好適である。また、上記超音波処理工程の後に、上記シリコーンゴム製品を加熱真空減圧乾燥する加熱減圧乾燥工程を含むものであったり、上記超音波処理工程において、上記シリコーンゴム製品を、回転、且つ上下運動させながら上記超音波処理を施すものであれば、より効果的である。
【0010】
更に、本発明は、(2)上記(1)記載のシリコーンゴムの洗浄方法により処理されたことを特徴とするシリコーンゴム製品を提供する。
【0011】
ここで、本発明の上記(2)記載のシリコーンゴム製品としては、電球に被覆して使用するカラーフィルター又は発光ダイオード(以下、LEDと称す)に被覆して使用する波長変換キャップが、より好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1−ブロモプロパンを使用してシリコーンゴム製品を洗浄することにより、シリコーンゴム製品に残留し、電子回路の接触不良などの不具合を引き起こす低分子ジメチルポリシロキサンを効率的に除去することができるのみならず、洗浄時における静電気の発生、使用する溶剤についての安全性、オゾン層破壊や地球温暖化に対する影響等についても対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明すると、本発明は、シリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサン残存量を低減させるものである。ここで、本発明の洗浄方法により処理するシリコーンゴム製品としては、その種類が特に制限されるものではないが、例えば電球被覆用のシリコーンキャップ類、車載照明用のシリコーンキャップ類、標識照明用のキャップ類、LED用途のシリコーンキャップ類等のような照明体用被覆物など、多岐にわたるものを挙げることができ、これらの中でも特に、電球に被覆して使用するカラーフィルター又はLEDに被覆して使用する波長変換キャップ等を洗浄処理すると、より効果的である。
【0014】
そして、本発明において、シリコーンゴム製品から除去される低分子ジメチルポリシロキサンは、シリコーンゴム製品中に残留する低分子量の環状ジメチルポリシロキサン及び鎖状ジメチルポリシロキサンであり、その分子量は特に制限されるものではないが、通常、重合度が4〜20程度の環状ジメチルポリシロキサン、重合度が2〜10程度の直鎖状ジメチルポリシロキサンが、シリコーンゴム製品中に残留しており、通常、量的には、環状ジメチルポリシロキサンが多く含まれているので、本発明においては、特に環状ジメチルポリシロキサンに対する除去効果が課題となる。
【0015】
本発明の洗浄対象となるシリコーンゴム製品は、その厚さなどが特に制限されるものではないが、低分子ジメチルポリシロキサンの除去効率を考慮すると、平均厚さが、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2mm以下であることが望ましい。厚すぎると、低分子ジメチルポリシロキサンを所望の残存量にまで除去するために、時間がかかりすぎて、実質的でない場合がある。なお、平均厚さの下限は、シリコーンゴム製品として最小限必要な厚さであれば特に制限されるものではないが、通常、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。
【0016】
本発明の洗浄方法は、上記シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬させて、超音波処理を施す超音波処理工程によって、シリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを1−ブロモプロパン中に容易に溶出させるものである。この工程における1−ブロモプロパンの使用量は、例えば処理槽の形状、大きさなどによって適宜選定することができ、特に制限されるものではなく、シリコーンゴム製品を完全に浸漬することができ、製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを溶出させ得る量であればよく、より好ましくは後述するように、シリコーンゴム製品を膨潤させるのに十分な量である。
【0017】
本発明の洗浄方法は、上記超音波処理工程において、シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬しておくことによって、1−ブロモプロパンをシリコーンゴム製品の内部に浸透させて、シリコーンゴム製品を膨潤させるものである。即ち、本発明の超音波処理工程において、1−ブロモプロパンは、製品の表面を洗うのではなく、内部に浸透して低分子ジメチルポリシロキサンを溶出させる。ここで、本発明の場合、超音波処理工程における上記シリコーンゴム製品の膨潤の程度としては、特に制限されるものではないが、例えば、上記シリコーンゴム製品の膨潤の尺度として、超音波処理前と処理後のシリコーンゴム製品の重量変化を測定した場合、超音波処理前の重量と比較して、1−ブロモプロパンの吸着量は、シリコーンゴム製品の単位重量の20%〜200%の増加、即ち、超音波処理後の重量が処理前に対して120〜300%(1.2〜3倍)となるように超音波処理すると、より効果的である。より好ましくは、単位重量の30〜200%の増加、更に好ましくは、単位重量の40〜200%の増加であると、より効果的である。増加量が小さすぎると、本発明が目的とする低分子ジメチルポリシロキサンの除去効果が得られ難くなる場合があり、大きすぎると、溶剤の除去工程で多大の時間を費やす必要が生じる場合がある。
【0018】
本発明の超音波処理工程における超音波処理(浸漬)時間は、シリコーンゴム製品の厚さ、形状などによって、適宜選定することができるが、例えば平均厚さが3mm以下のシリコーンゴム製品を上記のように膨潤させるのであれば、通常、好ましくは5〜15分間、より好ましくは5〜10分間とすると、好適である。超音波処理時間が長すぎると、生産性にムラが生じる懸念があり、短すぎると、低分子ジメチルポリシロキサンを所望の残存量まで除去するのが困難となる場合がある。
【0019】
本発明の超音波処理工程において、超音波処理をする装置は、特に制限されるものではないが、例えば上記特許文献1に記載された装置を好適に使用することができる。そして、本発明の超音波処理工程は、上記シリコーンゴム製品を回転、上下運動させながら超音波処理をすると、より効果的であり、このような運動を与える装置としては、例えば上記特許文献1に記載されている装置を使用して、シリコーンゴム製品を、例えばメッシュのステンレス材料で編み上げられた6角形に形作られたバレルと称されるタイプの処理容器のように、1−ブロモプロパンが容器内外に自由に通過可能であり、且つシリコーンゴム製品を装置内で収容可能な処理容器内に収容して、この処理容器を回転させ、且つ上下運動をさせながら、同時に超音波処理を実施することによって、上記シリコーンゴム製品を回転、上下運動させながら超音波処理をすることができる。なお、超音波で処理する際の超音波の周波数は、特に制限されるものではないが、通常、工業的には超音波の周波数領域としては、40kHz程度が採用されている。
【0020】
上記シリコーンゴム製品を回転、上下運動させながら超音波処理をする場合、回転数、上下運動の振幅などは、特に制限されるものではないが、例えば回転数としては、通常、2回転/分以下、特に1〜2回転/分程度、上下運動としては、通常、振幅が30〜50cm程度、上下運動数が1回/分以下、特に0.5〜1回/分程度が採用されている。シリコーンゴム製品同士の擦れ合いから静電気が発生する場合があるが、本発明の洗浄方法の場合、1−ブロモプロパンは、本質的に難燃性付与の溶剤であるので、このような静電気の放電による火災の発生を抑制、防止することができる。
【0021】
本発明の洗浄方法は、上記超音波処理工程以外にも適宜、予備工程、後処理工程などを含むことができ、例えば、超音波処理工程の後に、上記シリコーンゴム製品を加熱真空減圧乾燥する加熱減圧乾燥工程を含むものであると、より効果的である。即ち、上記超音波処理工程後、上記シリコーンゴム製品を乾燥すると共に、低分子ジメチルポリシロキサンの除去、溶出に使用した溶剤をシリコーンゴム製品から除去、回収するには、例えば減圧して回収することが考えられる。しかしながら、本発明で使用する1−ブロモプロパンは、蒸発潜熱がフロン類に比べて高いため、減圧して回収しようとすると、減圧により温度が下がり、回収し難くなる。そこで、本発明の洗浄方法では、溶剤の回収をする場合、上記シリコーンゴム製品を加熱真空減圧乾燥する加熱減圧乾燥工程を採用すると、より効率的に溶剤を回収することができる。
【0022】
本発明の加熱減圧乾燥工程において、加熱温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは40〜70℃、より好ましくは50〜60℃である。加熱温度が低すぎると、1−ブロモプロパンを回収し難くなる場合があり、高すぎると、回収のために冷却処理が必要となる場合がある。真空度(減圧の程度)は、特に制限されるものではないが、通常、真空状態として−60kPa以下、特に−90kPa以下が好適である。十分な真空状態が得られないと、1−ブロモプロパンの除去効率が十分に得られ難くなる場合がある。なお、真空状態の下限は、特に制限されるものではないが、工業的に汎用されている装置では、−100kPa程度の真空状態が下限である。乾燥処理時間は、シリコーンゴム製品の形状、厚さなどによって適宜選定されるが、通常、好ましくは5〜30分間、より好ましくは5〜20分間である。処理時間が短すぎると、1−ブロモプロパンの回収が不十分になり易くなる場合があり、長すぎると、それ以上の回収がされず、処理時間が無駄となる場合がある。
【0023】
上記加熱減圧乾燥工程に使用する装置は、特に制限されるものではなく、例えば槽内を減圧すると共に、揮発した溶剤を回収するトラップを備えた真空ポンプと、槽内を所望の温度に加熱する加熱装置とを備えた加熱減圧乾燥処理槽などを使用すれば、超音波処理後、上記収容容器に収容されたシリコーンゴム製品を上記加熱減圧乾燥処理槽内に搬入し、槽内を減圧すると共に、所定の温度に加熱することによって、上記超音波処理工程のシリコーンゴム製品を乾燥すると共に、1−ブロモプロパンをシリコーンゴム製品から除去、回収することができる。
【0024】
本発明のシリコーンゴム製品は、上述したように、上記洗浄処理方法により処理されたものであり、製品中に残留していた低分子ジメチルポリシロキサンの含有量が低減されたものである。特に量的に残存量が大きい重合度4〜20の環状ジメチルポリシロキサンの含有量が、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下に低減されたものが、より好適である。従って、上述したように、本発明のシリコーンゴム製品は、製品中に残存する低分子ジメチルポリシロキサンによる電子回路の接触不良などの不具合を抑制することができるので、例えば電球被覆用のシリコーンキャップ類、車載照明用のシリコーンキャップ類、標識照明用のキャップ類、LED用途のシリコーンキャップ類等のような照明体用被覆物などとして有用であり、これらの中でも特に、電球に被覆して使用するカラーフィルター又はLEDに被覆して使用する波長変換キャップ等として、より有用である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
シャープ製の超音波洗浄機(UT−204;27cm×33cm×28cm)に1−ブロモプロパンを2リットル入れて、これに平均厚さ1.0mmの電球被覆体用シリコーンキャップ用のシリコーンゴム製品10枚(1枚の平均重量は11g)を浸漬させ、10分間超音波による処理を実施した。終了後の重量は、平均値として33gであり、重量変化から1−ブロモプロパンの吸着量は、平均値として22gであり、これは単位重量の200%の増加(処理前重量に対して300%)に相当する。
【0027】
超音波処理を施した製品を引き上げて、加熱真空減圧乾燥装置(ヤマト科学製、ADP300型)内に収容し、−0.1MPa、50℃、10分間の加熱真空減圧乾燥を施すことによって、製品からの1−ブロモプロパンを除去し、製品を乾燥した。その後、製品1gをサンプリングし、5mm角に切断したものを特級エタノール5mlに分散させて、これを実験室用の小型の超音波洗浄機を使用して30分間超音波処理を行って、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを溶出させ、これをガスクロマトグラフィーで定量した。この結果は、環状ジメチルポリシロキサンをD(n=重合度)とすると、D〜D10は0ppmであり、D〜D20は10ppmであった。
【0028】
[比較例1]
実施例1の超音波処理、乾燥処理を行わない未処理の平均厚さ1.0mmの電球被覆体用シリコーンキャップ用のシリコーンゴム製品について、実施例1と同様にして、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを定量したところ、D〜D10は80ppmであり、D〜D20は560ppmであった。
【0029】
[比較例2]
実施例1において、1−ブロモプロパンに代えてヘプタフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製ゼオローラH;C)を使用した以外は、実施例1と同様の超音波処理、乾燥処理を行い、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを、実施例1と同様に定量したところ、D〜D10は50ppmであり、D〜D20は90ppmであった。なお、超音波処理終了後の重量は、平均値として13gであり、重量変化からヘプタフルオロシクロペンタンの吸着量は、平均値として2gであり、これは単位重量の18%の増加(処理前重量に対して118%)に相当する。
【0030】
[比較例3]
実施例1において、1−ブロモプロパンに代えてHCFC−225を使用した以外は、実施例1と同様の超音波処理、乾燥処理を行い、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを、実施例1と同様に定量したところ、D〜D10は0ppmであり、D〜D20は25ppmであった。なお、超音波処理終了後の重量は、平均値として28gであり、重量変化からHCFC−225の吸着量は、平均値として17gであり、これは単位重量の155%の増加(処理前重量に対して255%)に相当する。
【0031】
[実施例2]
実施例1において、シリコーンゴム製品として平均厚さ3.0mmのシリコーンゴム製品10枚(1枚の平均重量は18g)を使用した以外は、実施例1と同様の超音波処理、乾燥処理を行い、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを、実施例1と同様に定量したところ、D〜D10は145ppmであり、D〜D20は870ppmであった。なお、超音波処理終了後の重量は、平均値として80gであり、重量変化から1−ブロモプロパンの吸着量は、平均値として62gであり、これは単位重量の340%の増加(処理前重量に対して440%)に相当する。
【0032】
[比較例4]
実施例2の超音波処理、乾燥処理を行わない未処理の平均厚さ3.0mmの電球被覆体用シリコーンキャップ用のシリコーンゴム製品について、実施例1と同様にして、製品中に残留した低分子ジメチルポリシロキサンを定量したところ、D〜D10は210ppmであり、D〜D20は1520ppmであった。
【0033】
上記実施例及び比較例の結果を下記表1、2に示す。










【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1の結果によれば、本発明は、シリコーンゴム製品中に残存するD〜D10、〜D20の低分子ジメチルポリシロキサン、特にD〜D20の低分子ジメチルポリシロキサンに対して優れた除去効果を奏することが認められた。また、表2の結果によれば、処理時間が一定条件内では、低分子ジメチルポリシロキサンの除去効果は、シリコーンゴム製品の平均厚さによる依存性があることも判明した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、あらゆるシリコーンゴム製品の洗浄に利用することができ、例えば自動車、航空機、電気製品等の種々の機器の構成部品として使用されているシリコーンゴム製品、より具体的には、例えば電球被覆体用キャップ類、車載照明用キャップ類、標準照明用のキャップ類、LED用途のキャップ類等の照明体用被覆物などとして使用されるシリコーンゴム製品等に残留する低分子ジメチルシロキサンを除去することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム製品中の低分子ジメチルポリシロキサンを低減させるシリコーンゴム製品の洗浄方法であって、シリコーンゴム製品を1−ブロモプロパンに浸漬させて、超音波処理を施す超音波処理工程を含むことを特徴とするシリコーンゴム製品の洗浄方法。
【請求項2】
上記シリコーンゴム製品は、平均厚さが3mm以下である請求項1記載のシリコーンゴム製品の洗浄方法。
【請求項3】
上記超音波処理工程において、上記シリコーンゴム製品の超音波処理後の重量が、超音波処理前の重量に対して20〜200%の増加となるように超音波処理を施す請求項1又は2記載のシリコーンゴム製品の洗浄方法。
【請求項4】
上記超音波処理工程の後に、上記シリコーンゴム製品を加熱真空減圧乾燥する加熱減圧乾燥工程を含む請求項1、2又は3記載のシリコーンゴム製品の洗浄方法。
【請求項5】
上記超音波処理工程において、上記シリコーンゴム製品を、回転、且つ上下運動させながら上記超音波処理を施す請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム製品の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム製品の洗浄方法により処理されたことを特徴とするシリコーンゴム製品。
【請求項7】
上記シリコーンゴム製品は、電球に被覆して使用するカラーフィルター又は発光ダイオード(LED)に被覆して使用する波長変換キャップである請求項6記載のシリコーンゴム製品。

【公開番号】特開2006−124489(P2006−124489A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313442(P2004−313442)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】