説明

シリンジ操作装置

【課題】加圧状態を保持する際のロック機構におけるネジ同士の噛み合い不良を確実に防止することができ、また、過剰圧力がかかった際に適正な圧力調整ができるシリンジ操作装置を提供する。
【解決手段】シリンジ1の外筒2を組み付ける本体部11と、シリンジ1のプランジャ5を組み付ける可動部20とを有し、本体部11に、シリンジ1と平行に延びるシャフト15が軸方向に移動可能に支持され、該シャフト15は可動部20と一体に連結され、可動部20は本体部11に対して軸方向に移動する。ロック機構30は、シャフト15の雄ネジ部15aに係脱する雌ネジ部32が形成され、弾性体34を介して本体部11側に支持されたブロック31を備え、ブロック31は、ネジ部同士の噛み合いずれを解消すべく弾性体34が弾性変形可能な範囲で変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続先に対して流体を送り出すシリンジを備え、該シリンジより流体を送り出すと共に流体の加減圧の調整を行うためのシリンジ操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、患者の治療に用いられるカテーテルの種類も多様化しており、カテーテルの先端側にバルーンを付加し、患者の身体内でバルーンを膨張させて留置するバルーンカテーテルや、本件出願人が提案した特開2010−35951号公報に記載されたように、先端部を屈曲操作できる可動式カテーテル等が知られている。これらのカテーテルの使用に際しては、バルーンを膨張させたり先端部を屈曲させるための圧力を生成する加圧装置が必要となる。
【0003】
ここで加圧装置としては、主に注射筒(ディスポシリンジ)や圧力ゲージの付いたインフレーションデバイスやインジェクター等が用いられていた。ところが、これらによる加圧操作においては、加圧状態を保持することが困難であったり、加減圧の微調整ができない等、バルーンの膨張操作やカテーテル先端部の屈曲操作における適切な動作を行うことができないという問題があった。
【0004】
かかる問題を解決し得る従来の技術として、特許文献1に開示されているように、注射器の挿入部を押し引きすることにより圧力を生成し、該挿入部の同軸上にネジ区域が設けられ、このネジ区域に対して係脱するクロッグ・レール構成要素の下方部分にネジ区域に噛み合う多数の歯が設けられており、螺旋バネの付勢力によって、その多数の歯が前記ネジ区域に直接噛み合っている際に、当該位置に注射器の挿入部が保持されるロック機構を備えたインデフレータ機器が既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US2008/0077075A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の従来の技術では、クロッグ・レール構成要素にある多数の歯が挿入部の同軸上にあるネジ区域に噛み合う際に、互いのネジ山同士が対接した場合は左右に半ピッチずれる必要があるにも拘わらず、そのための工夫については何ら具体的には開示されていない。よって、双方のずれ動作ができないことから、互いに完全に噛み合うことができない状態となる虞があった。
【0007】
また、圧力を生成する際の圧力を測定するための圧力計を備えているが、これは流体を送り出すための加減圧を積極的に調整するものではなく、接続先であるカテーテルにおける圧力の変動により急激な圧力上昇が起きたとしても、何ら調整することはできなかった。そのため、過剰加圧によりカテーテルあるいはインデフレータ機器自体の破損を招く虞があるばかりでなく、患者に対する安全性にも問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、流体を送り出す際の加減圧の微調整が可能であると共に、加圧状態を保持する際のロック機構におけるネジ同士の噛み合い不良を確実に防止することができ、また、過剰圧力がかかった際に適正な圧力への調整も可能として、カテーテルや機器自体の破損を防止することができ、患者に対する安全性も高めることができるシリンジ操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]接続先に対して流体を送り出すシリンジ(1)を備え、該シリンジ(1)より流体を送り出すと共に流体の加減圧の調整を行うためのシリンジ操作装置(10)において、
前記シリンジ(1)の外筒(2)を組み付けて保持する本体部(11)と、前記シリンジ(1)の外筒(2)内を移動するプランジャ(5)の基端を組み付けて保持し該プランジャ(5)を軸方向に移動させる可動部(20)と、を有して成り、
前記本体部(11)には、前記シリンジ(1)と平行に延びるシャフト(15)が軸方向に移動可能に支持され、該シャフト(15)の基端は前記可動部(20)と一体に連結され、前記可動部(20)は前記本体部(11)に対して、前記プランジャ(5)および前記シャフト(15)と共に軸方向に移動可能であり、
前記本体部(11)には、前記シャフト(15)に対して係脱することにより、前記可動部(20)を介した前記プランジャ(5)の軸方向の動きを規制するロック機構(30)が設けられ、
前記ロック機構(30)は、前記シャフト(15)の外周に形成された雄ネジ部(15a)に対して、その軸方向と直交する方向より係脱する雌ネジ部(32)が形成され、弾性体(34)を介して前記本体部(11)側に支持されたブロック(31)を備え、
前記ブロック(31)は、前記雌ネジ部(32)が前記雄ネジ部(15a)に係合して、前記プランジャ(5)の軸方向の移動に前記可動部(20)による前記シャフト(15)の軸回りの回転操作が必要となる係合位置と、前記雌ネジ部(32)が前記雄ネジ部(15a)から離脱して前記プランジャ(5)の軸方向の移動に前記シャフト(15)の軸回りの回転操作が必要でない離脱位置と、に移動可能であり、
かつ、前記ブロック(31)は、前記雌ネジ部(32)が前記雄ネジ部(15a)に係合する際に、互いの噛み合いずれを解消すべく前記弾性体(34)が弾性変形可能な範囲で前記本体部(11)側に対して軸方向に変位可能であることを特徴とするシリンジ操作装置(10)。
【0010】
[2]前記本体部(11)は、前記シャフト(15)の前記雄ネジ部(15a)を含む少なくとも前半側が軸方向に移動可能に挿通する収納筒部(14)を備え、該収納筒部(14)の途中に前記ブロック(31)を出没させる開口部(14a)が設けられ、
前記ブロック(31)は、前記開口部(14a)の前後より前記弾性体(34)に挟まれた状態で前記係合位置と前記離脱位置とに移動可能に支持されたことを特徴とする前記[1]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0011】
[3]前記ロック機構(30)は、前記ブロック(31)を前記係合位置と前記離脱位置とに移動させるレバー(35)を備え、
前記レバー(35)には、その回転中心より偏心した位置に偏心軸(36)が支持され、前記ブロック(31)には、前記偏心軸(36)が押し引き可能に挿通するカム溝(33)が設けられ、
前記レバー(35)が初期位置にある際に、前記偏心軸(36)は前記カム溝(33)の一端側に係合して前記ブロック(31)を前記離脱位置に保持する一方、前記レバー(35)を所定角度回転させると、前記偏心軸(36)は前記カム溝(33)の一端側から他端側に相対的に移動しつつ前記ブロック(31)を前記離脱位置から前記係合位置まで移動させた後、該係合位置に保持することを特徴とする前記[1]または[2]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0012】
[4]前記ブロック(31)は、前記雌ネジ部(32)の円弧形断面における両側のうち一端側が他端側より高く、前記雌ネジ部(32)が前記雄ネジ部(15a)に係合する際に高い方の一端側から先に該雄ネジ部(15a)に係合する形状であることを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0013】
[5]前記可動部(20)は、前記シャフト(15)の基端に一体に固結されたハンドル(21)と、該ハンドル(21)の手前位置で前記シャフト(15)に対して相対的に回転可能に外嵌し軸方向の動きは固定された状態で前記プランジャ(5)の基端を組み付けるホルダー(22)と、から成ることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0014】
[6]前記本体部(11)には、前記シリンジ(1)の外筒(2)の先端口(3)に連通し、前記接続先に対して接続可能な継手部(40)が設けられ、
前記継手部(40)は、前記可動部(20)の操作により前記シリンジ(1)より送り出される流体が通る送出経路(41)と、該送出経路(41)の途中より分岐し過剰圧を逃がすための解放経路(42)と、を備え、
前記解放経路(42)に、予め定められた所定圧力値を超える前記可動部(20)の操作が行われた際に、該所定圧力値を超えた分を外部に解放する圧力調整バルブ(45)を設けたことを特徴とする前記[1],[2],[3],[4]または[5]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0015】
[7]前記圧力調整バルブ(45)には、前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れると共に予め空気が封入されたタンク(50)が設けられ、
前記タンク(50)は、前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れた際に、該流体の量に相当する空気のみを外部に放出する排出部(53)を備えたことを特徴とする前記[6]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0016】
[8]前記シリンジ(1)より送り出す流体は液体であり、
前記排出部(53)は、防水性の通気シート(54)を有して成ることを特徴とする[7]に記載のシリンジ操作装置(10)。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、ロック機構(30)が解除状態、すなわち、ブロック(31)の雌ネジ部(32)がシャフト(15)の雄ネジ部(15a)から外れた離脱位置にある時は、可動部(20)をシャフト(15)ごと軸方向に動かすことで、シリンジ(1)の外筒(2)内に挿入されているプランジャ(5)も一緒に動かすことができる。
【0018】
ここで、シリンジ(1)の外筒(2)内の流体を送り出し接続先に対して加圧を行う場合は、前記可動部(20)を介してプランジャ(5)をシリンジ(1)の先端口(3)に向けて押し進めるように動かす。一方、接続先における減圧を行う場合は、前記可動部(20)を介してプランジャ(5)をシリンジ(1)の先端口(3)から基端の開口に向けて引き戻すように動かす。何れの動作にせよ、ロック機構(30)は解除状態にあるので、可動部(20)は軸方向に容易に押し引きするように移動させることができる。
【0019】
接続先において所定の圧力が生成された時点で、この加圧状態を保持するためには、ロック機構(30)を拘束状態にする。すなわち、ブロック(31)をシャフト(15)の軸方向と直交する方向(軸心方向)に動かし、その雌ネジ部(32)をシャフト(15)の雄ネジ部(15a)に係合させる。この時、各ネジ部のネジ山同士がちょうど対接する等、互いの噛み合いにずれが生じていても、ブロック(31)は、これを支持する弾性体(34)が弾性変形可能な範囲で本体部(11)側に対して軸方向に変位できるため、この遊びによって容易に噛み合いずれは解消される。また、弾性体(34)の弾発力によりブロック(31)はがたつくこともない。
【0020】
このように、ブロック(31)の雌ネジ部(32)がシャフト(15)の雄ネジ部(15a)に係合した拘束状態にある際は、加圧による反発力はロックされて加圧状態が保持される。かかる状態で、シャフト(15)(と共にプランジャ(5))を軸方向に移動させるには、前記可動部(20)によりシャフト(15)を軸回りに回転操作すれば良い。この回転操作によって、前記遊び以外の軸方向の動きは固定されている雌ネジ部(32)に対してシャフト(15)の雄ネジ部(15a)は回転に伴い進退し、接続先における加減圧を適宜調整することが可能となる。あるいは、接続先にさほど圧力が生成されていない位置でブロック(31)を拘束状態として、後はシャフト(15)の回転操作だけで所定の圧力が生成されるように徐々に加圧するように操作しても良い。
【0021】
前記[2]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記本体部(11)は、シャフト(15)の雄ネジ部(15a)を含む少なくとも前半側が軸方向に移動可能に挿通する収納筒部(14)を備え、該収納筒部(14)の途中に前記ブロック(31)を出没させる開口部(14a)が設けられている。そして、前記ブロック(31)は、前記開口部(14a)の前後より弾性体(34)に挟まれた状態で係合位置と離脱位置とに移動可能に支持される。このような簡易な構成により、ロック機構(30)を安価に構成することができる。
【0022】
前記[3]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記ロック機構(30)は、ブロック(31)を係合位置と離脱位置とに移動させるレバー(35)を備えている。このレバー(35)には、その回転中心より偏心した位置に偏心軸(36)が支持され、前記ブロック(31)には、前記偏心軸(36)が押し引き可能に挿通するカム溝(33)が設けられている。
【0023】
そして、レバー(35)が初期位置にある際には、前記偏心軸(36)は前記カム溝(33)の一端側に係合して前記ブロック(31)を離脱位置に保持する。一方、レバー(35)を所定角度回転させると、前記偏心軸(36)は前記カム溝(33)の一端側から他端側に相対的に移動しつつ前記ブロック(31)を離脱位置から係合位置まで移動させた後、該係合位置に保持する。このような簡易な構成により、ブロック(31)を容易に動かす操作が可能となる。
【0024】
前記[4]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記ブロック(31)は、その雌ネジ部(32)の円弧形断面における両側のうち一端側が他端側より高く、雌ネジ部(32)が前記雄ネジ部(15a)に係合する際に高い方の一端側から先に該雄ネジ部(15a)に係合する形状である。かかる形状により、ブロック(31)を離脱位置から係合位置に移動させて、その雌ネジ部(32)を前記雄ネジ部(15a)に係合させる際、高い方から噛み合うことで雄ネジ部(15a)側のネジ山に沿ってブロック(31)の雌ネジ部(32)を円滑に噛み合わせることができる。
【0025】
前記[5]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記可動部(20)は、シャフト(15)の基端に一体に固結されたハンドル(21)と、該ハンドル(21)の手前位置でシャフト(15)に対して相対的に回転可能に外嵌し軸方向の動きは固定された状態でプランジャ(5)の基端を組み付けるホルダー(22)と、から成る。これにより、ハンドル(21)によるシャフト(15)の回転操作がプランジャ(5)に伝わることはないが、ハンドル(21)による軸方向の動作はそのままプランジャ(5)に伝わり、ハンドル(21)と同期してプランジャ(5)も軸方向に動かすことができる。
【0026】
前記[6]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記本体部(11)には、シリンジ(1)の外筒(2)の先端口(3)に連通し、接続先に対して接続可能な継手部(40)が設けられている。この継手部(40)は、可動部(20)の操作によりシリンジ(1)より送り出される流体が通る送出経路(41)と、該送出経路(41)の途中より分岐し過剰圧を逃がすための解放経路(42)と、を備える。
【0027】
そして、解放経路(42)に、予め定められた所定圧力値を超える可動部(20)の操作が行われた際に、該所定圧力値を超えた分を外部に解放する圧力調整バルブ(45)を設けた。これにより、誤操作等による過剰加圧が接続先であるカテーテルや本装置自体にかかり破損するような虞はなくなり、また患者に対する安全性も高まる。
【0028】
前記[7]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記圧力調整バルブ(45)には、所定圧力値を超えた分の流体を受け入れると共に予め空気が封入されたタンク(50)が設けられ、このタンク(50)は、所定圧力値を超えた分の流体を受け入れた際に、該流体の量に相当する空気のみを外部に放出する排出部(53)を備える。これにより、過剰圧力により排出された流体を外部に漏らすことなくタンク(50)内に貯留することが可能となる。
【0029】
前記[8]に記載のシリンジ操作装置(10)によれば、前記シリンジ(1)より送り出す流体は液体であり、前記排出部(53)は、防水性の通気シート(54)を有して成る。これにより、流体である液体を外部に漏らすことなくタンク(50)内に確実に貯留しつつ、空気のみを排出して圧力の解放を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るシリンジ操作装置によれば、流体を送り出すことにより生じる加圧状態をロック機構により保持することができると共に、ロック機構のネジ構造によって加減圧の微調整が可能であり、しかも、ロック機構におけるネジ同士の噛み合い不良を確実に防止することができる。
【0031】
また、過剰圧力がかかった際に適正な圧力への調整も可能であり、接続先や装置自体の破損を確実に防止することができ、患者に対する安全性もいっそう高めることができる。さらに、この圧力調整に伴ない排出された流体を外部に漏らすことなくタンク内に貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置がロック解除された状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置がロックされた状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置の継手部等を一部破断して示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置のブロックが離脱位置にある時のレバーの位置を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置のブロックが係合位置にある時のレバーの位置を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置において弾性体がない場合のブロックの噛み合い動作を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置において弾性体がない場合のブロックの噛み合い動作を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置のブロックが離脱位置にある状態を示す縦断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置のブロックが係合位置にある状態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置の圧力調整バルブを示す縦断面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るシリンジ操作装置の圧力調整バルブの動作を説明するために継手部等を一部破断して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜図14は、本発明の実施の形態を示している。
本実施の形態に係るシリンジ操作装置10は、接続先に対して流体を送り出すシリンジ1を備え、該シリンジ1より流体を送り出すと共に流体の加減圧の調整を行うための装置である。
【0034】
図1〜図6に示すように、シリンジ操作装置10は、シリンジ1の外筒2を組み付けて保持する本体部11と、シリンジ1の外筒2内を移動するプランジャ5の基端を組み付けて保持し該プランジャ5を軸方向に移動させる可動部20と、を有して成る。以下、シリンジ1より送り出す流体は滅菌蒸留水とし、シリンジ1の接続先として、本件出願人が既に提案した特開2010−35951号公報に記載されたカテーテルを用いる場合を例に説明する。
【0035】
先ずシリンジ1は、いわゆる汎用の注射器から針を除いたものであり、両端が開口された円筒形の外筒2と、該外筒2内を移動するプランジャ5と、から成る。外筒2の一端側は小さく開口した先端口3となり、他端側は大きく開口しており、この開口よりプランジャ5は外筒2内に挿入されている。プランジャ5(の先端部)は、外筒2の内壁を閉塞しつつ摺動可能に挿入されている。
【0036】
プランジャ5は、外筒2内の流体(液体または気体)を先端口3より送り出すため開口側から先端口3に向けて押し進められる一方、先端口3を通じて流体を外筒2内に吸い込むため先端口3から開口側に向けて引っ張られるように移動する。なお、外筒2の開口縁にはフランジ状のツバ4が突設されている。また、プランジャ5の基端側は、外筒2の開口より外部に突出しており円板状の指アテ6が設けられている。
【0037】
図1に示すように、本体部11は、装置全体をユニット化するためのハウジングを成しており、具体的には図示した握りやすい形状に形成されている。かかる本体部11は、例えばポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート等の合成樹脂により成形すると良い。本体部11の上部後端には、シリンジ1の外筒2の開口側を保持するリング状の装着部12が設けられ、本体部11の上部前端には、外筒2の先端口3を保持する挿入部13が設けられている。
【0038】
外筒2は、前記装着部12に挿入し、開口側にあるツバ4を装着部12の入口側にある係合爪12aを乗り越えさせて、ツバ4を係合爪12aの奥側にある嵌入溝12bに嵌め込むことで、本体部11に一体に装着される。かかる状態で、外筒2の先端口3は前記挿入部13に嵌合し、挿入部13を介して後述する継手部40に連通する。
【0039】
本体部11の下部には、その全長に亘って延びる円筒状の収納筒部14が設けられており、この収納筒部14内に、前記シリンジ1と平行に延びるシャフト15が軸方向に移動可能に支持されている。シャフト15の基端は、次述する可動部20に一体に連結され、この可動部20は前記本体部11に対して、シャフト15および前記プランジャ5と共に軸方向に移動可能となっている。シャフト15の先端から後半側にかけての外周には、雄ネジ部15aが形成されている。
【0040】
また、収納筒部14の下側に沿って、シリンジ操作装置10を掴む時に指を添える把持部16が設けられており、この把持部16の内部空間の後端側には、シャフト15に対して係脱することにより、可動部20を介してのプランジャ5の軸方向の動きを規制するロック機構30が設けられている。ロック機構30について詳しくは後述する。
【0041】
可動部20は、握って押し引きないし回転操作するハンドル21と、その手前に位置して前記プランジャ5の基端を組み付けるホルダー22と、から成る。かかる可動部20も、例えばポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート等の合成樹脂により成形すると良い。ハンドル21は、握りやすいダイヤル状に成形されており、その中心に前記シャフト15の基端が一体に固結されている。
【0042】
ホルダー22は、前記ハンドル21の手前位置で前記シャフト15に対して相対的に回転可能に外嵌し、軸方向の動きは固定された状態で前記プランジャ5の基端を組み付けるものである。ホルダー22の円筒部分の内側にシャフト15が挿通することで、ホルダー22に対してシャフト15は軸回りに自由に回転するが、ホルダー22はシャフト15の外周に突設されたツバ状の突起15bと前記ハンドル21との間に挟まれることで、シャフト15に対する軸方向の動きは固定される。
【0043】
よって、可動部20の軸方向(前後方向)の動きは、シャフト15と連動する。また、ホルダー22の外周の一端には、軸方向と直交する方向に取付部23が突設されている。この取付部23には、前記シリンジ1のプランジャ5の基端にある円板状の指アテ6を嵌入させる凹部24があり、凹部24内にある係合爪25を乗り越えるように指アテ6を嵌入することで、プランジャ5の基端はホルダー22に対して一体に組み付けられる。よって、可動部20の軸方向(前後方向)の動きはプランジャ5とも連動する。
【0044】
ロック機構30は、前記シャフト15の雄ネジ部15aに対して、その軸方向と直交する方向より係脱するブロック31を備えている。ブロック31には、その上面側に前記雄ネジ部15aに合致する雌ネジ部32が形成されている。また、ブロック31は、弾性体34を介して前記本体部11側に支持されている。
【0045】
詳しく言えばブロック31は、図11に示すように、上下2分割されたものを組み合わせて成り、その合わせ目となる中央には、前後方向に延びる長穴断面形状のカム溝33が穿設されている。また、上半部分の上面側に前記雌ネジ部32が形成されている。図7(c)に示すように、雌ネジ部32は、その円弧形断面における両側のうち一端側が他端側より高く、雌ネジ部32が雄ネジ部15aに係合する際に高い方の一端側から先に該雄ネジ部15aに係合する形状となっている。
【0046】
ブロック31は、この雌ネジ部32が前記シャフト15の雄ネジ部15aに係合する係合位置(図12参照)と、雌ネジ部32が雄ネジ部15aから離脱した離脱位置(図11参照)とに移動可能に配されている。図1に示すように、ブロック31は、前記把持部16の内部空間の後端側にて移動可能に配されている。図11に示すように、ブロック31が位置する前記収納筒部14の途中には、ブロック31を把持部16側より雄ネジ部15a側へ出没させるための開口部14aが設けられている。
【0047】
図2に示すように、ブロック31が前記係合位置にある時は、シリンジ1のプランジャ5を軸方向に移動させるためには、前記ハンドル21によるシャフト15の軸回りの回転操作が必要となる。一方、図1に示すように、ブロック31が前記離脱位置にある時は、前記ハンドル21によりシャフト15を回転操作することなく、そのままシャフト15を軸方向に動かすことができる。
【0048】
ブロック31は、前記開口部14aの前後より、一対の弾性体34,34に挟まれた状態で前記係合位置と前記離脱位置とに移動可能に支持されている。かかる弾性体34を介した支持により、ブロック31は、その雌ネジ部32が前記雄ネジ部15aに係合する際に、互いの噛み合いずれを解消すべく弾性体34が弾性変形可能な範囲で前記本体部11側に対して軸方向に変位可能となっている。
【0049】
詳しく言えば弾性体34は、図11に示すように、弾性変形可能な材質より成形されたチューブを所定長さに切断したものである。ここで具体的な材質としては、例えばポリウレタン、エチレンプロピレン共重合体、シリコーンゴム等が適している。さらに、ロック機構30は、ブロック31を係合位置と離脱位置とに移動させるためのレバー35を備えている。かかるレバー35は、図3に示すように、前記把持部16の後端側に回転可能に枢着されている。
【0050】
図7、図8に示すように、レバー35には、その回転中心Sより偏心した位置に偏心軸36が支持されている。この偏心軸36は、前記ブロック31のカム溝33に押し引き可能に挿通している。すなわち、レバー35が回転すると、偏心軸36はカム溝33内を相対的に移動し、カム溝33の両端に係合して押すことにより、ブロック31を直線運動させることができる。
【0051】
図7(a),(b)に示すように、レバー35がその先端側がシャフト15の軸方向と平行に延びる初期位置にある際には、図7(c)および図1に示すように、前記偏心軸36はカム溝33の一端側(図1中で左端)に係合してブロック31を離脱位置に保持する。一方、図8(a),(b)に示すように、前記レバー35を反時計回りに90度回転させると、前記偏心軸36はカム溝33の一端側から他端側に相対的に移動しつつ、図8(c)および図2に示すように、ブロック31を離脱位置から係合位置まで移動させて該係合位置に保持するように設定されている。
【0052】
また、図1に示すように、本体部11の先端側には、前記挿入部13を介してシリンジ1の外筒2の先端口3に連通し、接続先に対して接続可能な継手部40が設けられている。図5、図13に示すように、継手部40は基本的には3方向コック形状であり、前記可動部20の操作により前記シリンジ1より送り出される流体が通る送出経路41と、該送出経路41の途中より分岐し過剰圧を逃がすための解放経路42と、を備えている。
【0053】
送出経路41の下流端には、可撓性のチューブ43が接続されており、該チューブ43の先端には、接続先であるカテーテル等に接続するためのクランプ44が装着されている。なお、ここで接続先であるカテーテルは、前述したように本件出願人が既に提案した特開2010−35951号公報に記載されたものが適している。さらに、解放経路42には、予め定められた所定圧力値を超える可動部20の操作が行われた際に、該所定圧力値を超えた分を外部に解放する圧力調整バルブ45が設けられている。
【0054】
圧力調整バルブ45は、解放経路42の途中に形成された弁座42aに着脱する弁体46を有して成る。弁体46は、スプリング47を介してアジャストスクリュー48により、解放経路42内において弁座42aに当接するように荷重を加えた状態で装着されている。ここで弁座42aは、テーパー状に傾斜した解放経路42の内周壁の一部として形成され、弁体46はバルブ用ムシゴムから成る。また、アジャストスクリュー48には、外部(後述するタンク50)に連通する貫通孔48aが穿設されている。
【0055】
アジャストスクリュー48は、継手部40における解放経路42の出口付近に対してネジ嵌合しており、アジャストスクリュー48を回して装着位置を調整することでスプリング47の弾発力を調整し、排出圧力値を任意に設定することができる。すなわち、アジャストスクリュー48を回して深く装着すると、スプリング47の弾発力が強くなり排出圧力値は高くなる。一方、アジャストスクリュー48を逆方向に回して浅く装着すると、スプリング47の弾発力が弱くなり排出圧力値は低くなる。
【0056】
排出圧力値より加圧が低い場合は、スプリング47の弾発力で押された弁体46が解放経路42の弁座42aに接触し、解放経路42(送出経路41)を閉じる。一方、排出圧力値より加圧が高くなると、スプリング47の弾発力が加圧に負け、弁体46が動き、弁体46が弁座42aから離れて、解放経路42(送出経路41)が開くように設定されている。
【0057】
弁体46が弁座42aから離れることで、加圧媒体である流体(滅菌蒸留水)は弁体46の周辺部位を通過し、アジャストスクリュー48の貫通孔48aから排出される。加圧媒体が排出されることで圧力調整バルブ45内の圧力が減圧し、減圧されることでスプリング47の弾発力が勝り、再び弁体46に接触する元の位置に復帰して圧力調整バルブ45は閉じられることになる。なお、排出圧力値は製造段階で所定圧力値に調整されることになる。
【0058】
また、圧力調整バルブ45には、前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れると共に予め空気が封入されたタンク50が設けられている。図5に示すように、タンク50は、前記継手部40における解放経路42の出口に外嵌する接続部51と、円筒形に形成されたタンク本体52と、タンク本体52内の空気を外部に排出するための排出部53と、から成る。
【0059】
排出部53は、タンク50が前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れた際に、該流体の量に相当する空気のみを外部に放出するものである。詳しく言えば、排出部53は、外部に連通する通気孔を備え、この通気孔を覆うように、気体のみを通過させて液体は通過させない通気シート54が設けられている。
【0060】
次に、本実施の形態に係るシリンジ操作装置10の作用について説明する。
本シリンジ操作装置10によれば、ロック機構30が解除状態、すなわち、図7に示すように、レバー35が初期位置にあってブロック31の雌ネジ部32がシャフト15の雄ネジ部15aから外れた離脱位置にある時は、可動部20をシャフト15ごと軸方向に動かすことで、シリンジ1のプランジャ5も一緒に動かすことができる。
【0061】
シリンジ1の外筒2内の流体を送り出しカテーテルに対して加圧を行う場合は、ハンドル21を押してプランジャ5をシリンジ1の先端口3に向けて押し進めるようにスライドさせれば良い。一方、カテーテルにおける減圧を行う場合は、ハンドル21を引いてプランジャ5をシリンジ1の先端口3から基端の開口に向けて引き戻すようにスライドさせる。何れの動作にせよ、ロック機構30は解除状態にあるので、ハンドル21を含む可動部20は軸方向に容易にそのままスライド動作することができる。
【0062】
カテーテルにおいて所定の圧力が生成された時点で、この加圧状態を保持するためには、ロック機構30を拘束状態にする。すなわち、図8に示すように、レバー35を反時計回りに90度回転させてブロック31をシャフト15の軸方向と直交する方向に動かし、その雌ネジ部32をシャフト15の雄ネジ部15aに係合させれば良い。
【0063】
図8(c)に示すように、ブロック31の雌ネジ部32の円弧形断面は、両側のうち一端側が他端側より高い段差形状になっているから、高い方の一端側から雄ネジ部15aに係合する。これにより、雌ネジ部32を雄ネジ部15aに対して円滑に噛み合わせることができる。仮に、雌ネジ部32の円弧形断面における両側の高さが同じであれば、ネジ山が左右同時に適正位置に係合する必要が有り、シャフト15やブロック31のがたつきにより、左右でピッチがずれて嵌合する可能性があり、係合不能や部品破損の原因となる。
【0064】
ところで、雌ネジ部32を雄ネジ部15aに係合させる際に、図9(a)に示す状態において、そのままブロック31を持ち上げ、シャフト15の雄ネジ部15aに噛み合わせようとすると、雄ネジ部15aと雌ネジ部32とのネジ山同士がちょうど対接し、うまくネジが噛み合わない事態が想定される。実際には、図9(b)に示すように、ネジ山の頂点の幅は微少であり、頂点同士が接触する状態でも接触抵抗の少ない方のネジが前後に半ピッチずれてネジは噛み合うことになる。
【0065】
ここで、シャフト15は、可動部20を介してプランジャ5と連結しているため、抵抗が大きく前後にずれることは困難であり、ブロック31側がずれ動作するように、収納筒部14における開口部14aの両端とブロック31の前後に半ピッチ程度の隙間が設定されている。ただし、収納筒部14とブロック31の前後に半ピッチの隙間を持たせるだけでは、ブロック31が常に半ピッチずれる位置にいない場合も生じ得る。例えば、シリンジ操作装置10全体を紙面中において左側(前側)を下に傾斜させた場合、図10に示すようにブロック31は自重で前側にずれる。
【0066】
このような図10に示す状態でブロック31を持ち上げた場合、ブロック31は、その雌ネジ部32の雄ネジ部15aに対する噛み合いから、さらに左側(前側)にずれる必要があるが、開口部14aの一端縁に当接するため、これ以上は位置ずれすることはない。ここで、シャフト15もプランジャ5等との連結抵抗によってずれることができず、双方ずれ動作ができないことから、お互いネジ同士が完全に噛み合うことができない状態となる。
【0067】
そこで、本シリンジ操作装置10では、図11および図12に示すように、ブロック31を常に半ピッチだけ前後に移動できる位置に保持するために、弾性体34にて前後を把持している。このようにブロック31を、前後より弾性体34に挟まれた状態で係合位置と離脱位置とに移動可能に支持することで、ブロック31が前後にずれ移動する際には、弾性体34が撓むことでレバー35の操作に若干の抵抗を生じさせるものの破損に至らない正常なレバー35の操作とシャフト15とブロック31の確実なネジの噛み合いを実現することができる。
【0068】
すなわち、ブロック31の雌ネジ部32とシャフト15の雄ネジ部15aのそれぞれネジ山同士がちょうど対接する等、互いの噛み合いにずれが生じていても、ブロック31は、これを支持する弾性体34が弾性変形可能な範囲で本体部11側に対して軸方向(前後)に変位できるため、この遊びによって容易に噛み合いずれは解消される。これにより、レバー35を回転させることができないという不具合や、無理な操作によるレバー35の破損を確実に防止することができる。また、意図した時にロックができずに、シャフト15の位置を微調整しなければならないという操作上の不快感も解消することができる。
【0069】
図12に示すように、ブロック31の雌ネジ部32がシャフト15の雄ネジ部15aに係合した拘束状態にある際は、加圧による反発力はロックされて加圧状態が保持される。かかる状態で、シャフト15と共にプランジャ5を軸方向に移動させるには、ハンドル21によりシャフト15を軸回りに回転操作すれば良い。この回転操作によって、前記遊び以外の軸方向の動きは固定されている雌ネジ部32に対して、シャフト15の雄ネジ部15aは回転に伴い進退し、接続先における加減圧を微調整することが可能となる。あるいは、接続先にさほど圧力が生成されていない位置でブロック31を拘束状態として、後はハンドル21によるシャフト15の回転操作だけで所定の圧力が生成されるように徐々に加圧するように操作しても良い。
【0070】
具体的には図6において、ハンドル21を「+」記号の方向に正回転させると、その回転量だけシャフト15は前方に移動すると共に、可動部20を介してプランジャ5もシリンジ1の先端口3に向けて徐々に押し出され、加圧を適宜調整することができる。一方、ハンドル21を「−」記号の方向に逆回転させると、その回転量だけシャフト15は後方に移動すると共に、可動部20を介してプランジャ5もシリンジ1の開口に向けて徐々に引き戻されて、減圧を適宜調整することができる。
【0071】
また、図13、図14に示すように、シリンジ1の先端口3が連通する継手部40には、過剰圧力を抑制する圧力調整バルブ45が装着される。これにより、誤操作等による過剰加圧が接続先であるカテーテルや本装置自体にかかり破損するような虞はなくなり、また患者に対する安全性も高まる。すなわち、意図した圧力値以上の加圧を行った場合には、図13において、加圧にスプリング47の弾発力が負けると、弁体46は弁座42aから離れるように動いて解放経路42(送出経路41)が開く。
【0072】
すると、加圧媒体である流体(滅菌蒸留水)は弁体46の周辺部位を通過し、アジャストスクリュー48の貫通孔48aから排出されて過剰圧力が調整される。このように流体(滅菌蒸留水)が排出されることで圧力調整バルブ45内の圧力が減圧されると、スプリング47の弾発力が勝り、再び弁体46に接触する元の位置に復帰して圧力調整バルブ45は閉じられることになる。なお、排出圧力値は所定圧力値に調整することができる。
【0073】
通常、過剰圧力で排出された流体(滅菌蒸留水)はチューブを介して、ドレナージバッグやカップ等に排出するが、この場合、シリンジ操作装置10の持ち運び動作に制約が生じる。そこで、本シリンジ操作装置10のように、圧力調整バルブ45にタンク50を接続することにより、シリンジ操作装置10の持ち運び動作に制約が生じることなく、過剰圧力により排出された流体を外部に漏らさずタンク50内に貯留することが可能となる。
【0074】
しかも、タンク50には、所定圧力値を超えた分の流体を受け入れた際に、該流体の量に相当する空気のみを外部に放出する排出部53を設け、この排出部53は、防水性の通気シート54を有するから、流体(滅菌蒸留水)を外部に漏らすことなくタンク50内に確実に貯留しつつ、空気のみを排出して圧力の解放を行うことができる。よって、タンク50は適宜滅圧することが可能となり、過度の内圧上昇によって破損する虞はない。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記実施の形態では、弾性体34を弾性変形可能な材質より成形されたチューブを所定長さに切断したものとしたが、他に例えば、スプリング等の他の構造を採用してもかまわない。また、シリンジ1は汎用のものを組み合わせるように構成したが、予め一体に組み込むように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係るシリンジ操作装置は、シリンジより流体を送り出すと共に流体の加減圧の調整を行うためのものであり、特に、接続先としてカテーテルの操作に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…シリンジ
2…外筒
3…先端口
4…ツバ
5…プランジャ
6…指アテ
10…シリンジ操作装置
11…本体部
12…装着部
13…挿入部
14…収納筒部
14a…開口部
15…シャフト
15a…雄ネジ部
16…把持部
20…可動部
21…ハンドル
22…ホルダー
23…取付部
24…凹部
25…係合爪
30…ロック機構
31…ブロック
32…雌ネジ部
33…カム溝
34…弾性体
35…レバー
36…偏心軸
40…継手部
41…送出経路
42…解放経路
42a…弁座
43…チューブ
44…クランプ
45…圧力調整バルブ
46…弁体
50…タンク
51…接続部
52…タンク本体
53…排出部
54…通気シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続先に対して流体を送り出すシリンジを備え、該シリンジより流体を送り出すと共に流体の加減圧の調整を行うためのシリンジ操作装置において、
前記シリンジの外筒を組み付けて保持する本体部と、前記シリンジの外筒内を移動するプランジャの基端を組み付けて保持し該プランジャを軸方向に移動させる可動部と、を有して成り、
前記本体部には、前記シリンジと平行に延びるシャフトが軸方向に移動可能に支持され、該シャフトの基端は前記可動部と一体に連結され、前記可動部は前記本体部に対して、前記プランジャおよび前記シャフトと共に軸方向に移動可能であり、
前記本体部には、前記シャフトに対して係脱することにより、前記可動部を介した前記プランジャの軸方向の動きを規制するロック機構が設けられ、
前記ロック機構は、前記シャフトの外周に形成された雄ネジ部に対して、その軸方向と直交する方向より係脱する雌ネジ部が形成され、弾性体を介して前記本体部側に支持されたブロックを備え、
前記ブロックは、前記雌ネジ部が前記雄ネジ部に係合して、前記プランジャの軸方向の移動に前記可動部による前記シャフトの軸回りの回転操作が必要となる係合位置と、前記雌ネジ部が前記雄ネジ部から離脱して前記プランジャの軸方向の移動に前記シャフトの軸回りの回転操作が必要でない離脱位置と、に移動可能であり、
かつ、前記ブロックは、前記雌ネジ部が前記雄ネジ部に係合する際に、互いの噛み合いずれを解消すべく前記弾性体が弾性変形可能な範囲で前記本体部側に対して軸方向に変位可能であることを特徴とするシリンジ操作装置。
【請求項2】
前記本体部は、前記シャフトの前記雄ネジ部を含む少なくとも前半側が軸方向に移動可能に挿通する収納筒部を備え、該収納筒部の途中に前記ブロックを出没させる開口部が設けられ、
前記ブロックは、前記開口部の前後より前記弾性体に挟まれた状態で前記係合位置と前記離脱位置とに移動可能に支持されたことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ操作装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ブロックを前記係合位置と前記離脱位置とに移動させるレバーを備え、
前記レバーには、その回転中心より偏心した位置に偏心軸が支持され、前記ブロックには、前記偏心軸が押し引き可能に挿通するカム溝が設けられ、
前記レバーが初期位置にある際に、前記偏心軸は前記カム溝の一端側に係合して前記ブロックを前記離脱位置に保持する一方、前記レバーを所定角度回転させると、前記偏心軸は前記カム溝の一端側から他端側に相対的に移動しつつ前記ブロックを前記離脱位置から前記係合位置まで移動させた後、該係合位置に保持することを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジ操作装置。
【請求項4】
前記ブロックは、前記雌ネジ部の円弧形断面における両側のうち一端側が他端側より高く、前記雌ネジ部が前記雄ネジ部に係合する際に高い方の一端側から先に該雄ネジ部に係合する形状であることを特徴とする請求項1,2または3に記載のシリンジ操作装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記シャフトの基端に一体に固結されたハンドルと、該ハンドルの手前位置で前記シャフトに対して相対的に回転可能に外嵌し軸方向の動きは固定された状態で前記プランジャの基端を組み付けるホルダーと、から成ることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のシリンジ操作装置。
【請求項6】
前記本体部には、前記シリンジの外筒の先端口に連通し、前記接続先に対して接続可能な継手部が設けられ、
前記継手部は、前記可動部の操作により前記シリンジより送り出される流体が通る送出経路と、該送出経路の途中より分岐し過剰圧を逃がすための解放経路と、を備え、
前記解放経路に、予め定められた所定圧力値を超える前記可動部の操作が行われた際に、該所定圧力値を超えた分を外部に解放する圧力調整バルブを設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載のシリンジ操作装置。
【請求項7】
前記圧力調整バルブには、前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れると共に予め空気が封入されたタンクが設けられ、
前記タンクは、前記所定圧力値を超えた分の流体を受け入れた際に、該流体の量に相当する空気のみを外部に放出する排出部を備えたことを特徴とする請求項6に記載のシリンジ操作装置。
【請求項8】
前記シリンジより送り出す流体は液体であり、
前記排出部は、防水性の通気シートを有して成ることを特徴とする請求項7に記載のシリンジ操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−85911(P2013−85911A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232264(P2011−232264)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(391016705)クリエートメディック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】