説明

シリンダヘッドカバーおよびガスケットを備える内燃機関

【課題】シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとがガスケットを介して締結される内燃機関において、簡単な構造で、かつ部品点数を増やすことなく、締付箇所から遠い位置におけるシール圧を高めることにより、前記ガスケットによるシール性の向上を図る。
【解決手段】内燃機関Eは、シリンダヘッド2にボルト51,52により締結されたシリンダヘッドカバー3と、ボルト51,52の締付方向でシリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー3との間に介設されたガスケット40とを備える。自然状態にあるガスケット40の高さは、ボルト51,52にから遠ざかるほど連続的に高くなっている。このため、シール面20,30において、ボルト51,52に近い近接領域Raに比べてボルト51,52から遠い遠方領域Rbでは、ガスケット40の高さがより高くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドに締付具により締結されたシリンダヘッドカバーと、締付具の締付方向でシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間に介設されたガスケットとを備える内燃機関に関し、詳細には、該ガスケットによるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間にはガスケットが介設され、シリンダヘッドカバーはシリンダヘッドにボルトにより締結される。そして、ガスケットによるシール性を向上させるためには、ボルトの締付力を高める必要がある一方で、ボルトの締付力を高めると、ボルトの近傍でガスケットが過度に潰れる恐れがあることから、ガスケットの必要以上の潰れを防止する様々な技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−283294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ボルトの締結力の増大化にも限度があるため、ボルトの締付力はボルトから遠ざかるほど小さくなるため、ボルトから離れた位置にあるシール面でのシール性をいかに確保するかが問題になる。また、ボルトの数を増加させると、部品点数および締結工数が増加するため、コストが高くなる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜6記載の発明は、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとがガスケットを介して締結される内燃機関において、簡単な構造で、かつ部品点数を増やすことなく、締付箇所から遠い位置におけるシール圧を高めることにより、前記ガスケットによるシール性の向上を図ることを目的とする。そして、請求項6記載の発明は、さらに、締結箇所から遠い位置においてガスケットの幅方向でのシール圧を高めることにより、シール性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、シリンダヘッドに締付具により締結されたシリンダヘッドカバーと、前記締付具の締付方向で前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーとの間に介設されたガスケットとを備え、前記締付具の締付力により前記ガスケットがシリンダヘッド側シール面およびシリンダヘッドカバー側シール面に押し付けられる内燃機関において、締付状態にある前記ガスケットの、前記締付方向での変形量は、前記締付具による締付箇所から遠ざかるほど大きい内燃機関である。
【0006】
これによれば、ガスケットにおいて、締結箇所に近い位置にあるために大きな締結力により高いシール圧が得られる部分に対して、締結箇所から遠い位置にあるために締結具の締付力が小さくなる部分では、ガスケットの変形量が大きくなるので、その分、締付方向でのシール圧が高められる。しかも、締結箇所から遠い位置で、締結具の締付力によるシール圧が高められるので、締結具の数が削減される。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関において、自然状態にある前記ガスケットの高さは、前記締付箇所から遠ざかるほど高いものである。
これによれば、シール圧を高めるためてシール圧を均一化する手段は、ガスケットの高さを変えるだけであるので、該シール圧均一化手段の製造が容易になる。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関において、前記ガスケットは、前記シリンダヘッド側シール面および前記シリンダヘッドカバー側シール面に接触するほぼ一定の高さの基部と、前記基部から前記締付方向に突出して前記シリンダヘッド側シール面および前記シリンダヘッドカバー側シール面の少なくとも一方のシール面に接触する突出部とから構成され、前記突出部の高さは前記締付箇所から遠ざかるほど高いものである。
これによれば、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間の締付方向での間隔が基部により確保されたうえで、突出部の高さを変えるだけでシール圧が高められる。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の内燃機関において、前記シリンダヘッドカバーは、2つの前記締付箇所のみでシリンダヘッドに締結されるものである。
これによれば、シリンダヘッドカバーにおける締付箇所は2箇所であるので、締結具の数が削減される。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の内燃機関において、前記高さは、前記締付箇所から遠ざかるほどほぼ連続的に高くなるものである。
これによれば、締結箇所から遠ざかるほどほぼ連続的に低下する締付力に対応させて、ほぼ連続的にシール圧を高めることができる。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の内燃機関において、前記ガスケットにおいて、前記高さが平均高さよりも高い高位部では、前記変形量により生じる幅方向での前記ガスケットの変形により、前記幅方向でのシール圧が、前記高さが前記平均高さよりも低い低位部よりも高くされているものである。
これによれば、ガスケットにおいて、締結箇所に近い位置にあるために締結力が大きい低位部に対して、締結箇所から遠い位置にある高位部では、変形量による締付方向でのシール圧の増加に加えて、幅方向でもシール圧が高められる。
【0012】
なお、この明細書および特許請求の範囲において、ガスケットの自然状態とは、ガスケットに締結具により締付方向に締付力が加えられていない状態であり、締付状態とは、ガスケットがシリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーに挟み付けられた状態でシリンダヘッドへのシリンダヘッドカバーの締付が完了した状態である。さらに、高さおよび深さとは、締付方向でのものであり、幅とは、シリンダ軸線を中心とした放射方向でのものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、ガスケットの変形量を大きくするだけで締結箇所からの離れた位置でのシール圧が高められるので、簡単な構造によりシール圧がガスケット全体に渡って均一化され、ガスケットのシール性が向上する。しかも、部品点数および締結工数が削減されて、内燃機関のコストが削減される。
請求項2記載の事項によれば、シール圧均一化手段の製造は容易である。
請求項3記載の事項によれば、締付方向でのシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間隔の確保が容易になり、しかもシール圧が均一化される。
請求項4記載の事項によれば、部品点数が削減されるので、コストが削減される。
請求項5記載の事項によれば、締結箇所から遠ざかるほどほぼ連続的にシール圧を高めることができるので、ガスケット全体でむらなくシール性を高めることができて、シール性が向上する。
請求項6記載の事項によれば、ガスケットにおいて、締結箇所から遠い高位部では、締付方向および幅方向でのシール圧が高められるので、ガスケットのシール性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
図1〜図3は第1実施形態を説明するためのものである。
図1(A)を参照すると、本発明が適用された内燃機関Eは、自動二輪車に搭載される空冷式の単気筒4ストローク内燃機関である。内燃機関Eは、クランクケースが結合されるシリンダ1と、シリンダ1に結合されるシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2に結合されるシリンダヘッドカバー3とを備える。シリンダヘッド2は、シリンダ軸線Lcの方向(以下、「シリンダ軸線方向」という。)でシリンダ1を挟んで複数のヘッド締結具4によりシリンダ1と共に前記クランクケースに締結される。
【0015】
シリンダ1にはピストン5が往復運動可能に嵌合し、ピストン5がコンロッドを介して連結されるクランク軸を回転駆動する。シリンダヘッド2には、シリンダ軸線方向でピストン5と対向する燃焼室6と、燃焼室6に開口する吸気ポートおよび排気ポートとが形成され、点火プラグ7が燃焼室6に臨んで取り付けられる。シリンダヘッド2に設けられる吸気弁および排気弁は、タイミングチェーン8を備える動弁用伝動機構を介して伝達される前記クランク軸の動力により回転駆動されるカム軸11を備えるSOHC型の動弁装置10により前記クランク軸の回転に同期して開閉駆動され、前記吸気ポートおよび前記排気ポートをそれぞれ開閉する。
【0016】
シリンダヘッド2およびシリンダヘッドカバー3により形成される動弁室9に収容される動弁装置10は、シリンダヘッド2に軸受を介して回転可能に支持されるカム軸11と、カム軸11に設けられる吸気カム12および排気カム13によりそれぞれ駆動されて1対のロッカ軸をそれぞれ中心に揺動する吸気ロッカアームお14よび排気ロッカアーム15とを備え、吸気カム12および排気カム13が、それぞれ吸気ロッカアーム14および排気ロッカアーム15を介して前記吸気弁および前記排気弁を開閉駆動する。また、動弁室9には、動弁装置10の潤滑のためにオイルポンプを含む潤滑系統により潤滑油が供給される。
【0017】
内燃機関Eの運転時、内燃機関Eの吸気装置を流通する吸入空気は、スロットル弁により流量制御された後、燃料噴射弁から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、該混合気は前記吸気ポートを経て燃焼室6に流入し、燃焼室6内で点火プラグ7により点火されて燃焼する。そして、発生した燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動するピストン5が前記クランク軸を回転駆動する。燃焼ガスは、排気ガスとして前記排気ポートに流出し、さらに排気管を備える排気装置を通じて内燃機関Eの外部に排出される。
【0018】
図1(A),図2を参照すると、内燃機関Eは、シリンダ軸線方向で、シリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー3との間に介設された環状のガスケット40を備える。シリンダヘッドカバー3は、1以上の締結具により、1または複数である所定数の締付箇所のみで、この実施形態では2つの締結具としてのボルト51,52により2つの締結箇所のみで、シリンダヘッド2に締結される。また、同一の締付力を発生する各ボルト51,52は、後述する各シール面20,30に囲まれた領域内であって、シリンダ軸線方向から見て(以下、「平面視」という。)で、シリンダ軸線Lcに対してほぼ点対称となる位置であって、シリンダ軸線Lcよりもシール面20,30に近い位置、より具体的にはボルト51,52の締付部である頭部51a,52aが、平面視でシール面20,30と部分的に重なる位置に配置される。
【0019】
ゴム状弾性を有する弾性材としてのゴム材からなるガスケット40は、シリンダヘッドカバー3を通じて作用する各ボルト51,52の締付力により、その締付方向(図1参照。シリンダ軸線方向でもある。)で、シリンダヘッド側シール面20およびシリンダヘッドカバー側シール面30に押し付けられる。
【0020】
図1(B)を併せて参照すると、凸字状の断面形状を有するガスケット40は、両シール面20,30に全周に渡って面接触する1対の接触面41a,41bを有する基部41と、基部41から締付方向でシリンダヘッドカバー3に向かって全周に渡って突出してシール面30に接触する突出部42とから構成される。
【0021】
シリンダヘッド2の端面でもあるシール面20は、動弁室9を囲む環状で、かつ溝がない一平面により構成される。シリンダヘッドカバー3の端面でもあるシール面30は、動弁室9を囲む環状で、かつ突出部42が挿入される挿入溝31が形成された面により構成される。それゆえ、シール面30は、挿入溝31によりその幅方向に分けられると共に基部41に接触する1対の基部側シール面部分32と、挿入溝31を形成する壁面33,34,35により構成される溝側シール面部分とから構成される。そして、該溝側シール面部分は、底壁面33と、1対の周壁面である内周壁面34および外周壁面35とから構成される。また、挿入溝31の深さdおよび幅Wcは、全周に渡ってほぼ一定である。
【0022】
図2を参照すると、各シール面20,30は、周方向に沿って、各ボルト51,52の締付力が支配的な前記所定数(締付箇所と同数)の領域、ここでは2つの領域A1,A2に分けられる。各シール面20,30を二分する境界は、例えば、平面視で両ボルト51,52または締付箇所の中心を結ぶ線分の二等分線Lである。そして、ボルト51,52(位置に関連する説明に関しては、ボルト51,52と締付箇所とは同義であるので、以下ではボルト51,52または締付箇所を使用する。)からの距離に応じて、各領域A1,A2は、ボルト51,52に近い順に、この実施形態では、近接領域Raと、近接領域Raを挟む中間領域Rcと、近接領域Raおよび中間領域Rcを挟む遠方領域Rbとに、周方向での長さで3種類に分けられる。
【0023】
一般的に、各ボルト51,52の締付力はボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に低下するため、ガスケット40に作用する締付力も、領域Ra,Rc,Rb毎で比較したとき、近接領域Ra、中間領域Rc、遠方領域Rbの順で低下する。そこで、各ボルト51,52の締付力の低下を補償して、ガスケット40のシール圧を全周に渡って均一化するように、ガスケット40の高さhが、ボルト51,52からの距離に応じて異なるように設定されている。
【0024】
すなわち、図3を併せて参照すると、自然状態にあるガスケット40において、基部41は、各シール面20,30の全周に渡ってほぼ一定の高さh1を有し、環状の突条からなる突出部42の高さh2は、各ボルト51,52から遠ざかるほど高く、この実施形態では、各ボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に高くなる。(なお、分かり易さのために、図3では高さが誇張されて記載されている。)
ここで、ほぼ連続的とは、変化が連続的であること(つまり、段差がないこと)を意味すると共に、連続的である場合と比べたとき、ガスケット40の作用効果の点で有意の差異がない範囲での段差があってもよいことを意味する。
【0025】
より具体的には、ガスケット40を、近接領域Ra、中間領域Rcおよび遠方領域Rbにそれぞれ対応させて近接部分40a、中間部分40cおよび遠方部分40bに分けたとき、近接領域Raに位置する近接部分40aの高さhaは最も低くかつ一定であり、遠方領域Rbに位置する遠方部分40bの高さhbは最も高くかつ一定であり、中間領域Rcに位置する中間部分40cの高さhcは、近接領域Raから遠方領域Rbに向かうほど高さhaから高さhbまで連続的に直線的に変化して高くなる。そして、近接部分40aは、高さhが平均高さよりも低い低位部を、遠方部分40bは、高さが平均高さよりも高い高位部を、中間部分40cは、低位部から高位部に変化する変化部を、それぞれ構成する。また、自然状態にあるガスケット40において、基部41の幅W1は、全長に渡って同一であり、両シール面20,30の幅にほぼ等しく、突出部42の幅W2は、全周に渡ってほぼ等しく、挿入溝31の幅Wcよりも僅かに小さい。
【0026】
したがって、図3(B)に示されるように、シリンダヘッドカバー3がボルト51,52によりシリンダヘッド2に取り付けられて、ボルト51,52の締結力により締め付けられた締付状態にあるガスケット40において、締付方向で底壁面33に押し付けられる突出部42の、締付方向での変形量(圧縮量)は各ボルト51,52から遠ざかるほど連続的に、その高さhが高くなるほど大きくなる。また、接触面41aはシール面20に、そして接触面41bはシール面部分32(図1(B)参照)に、それぞれ締付方向で押し付けられる。なお、図3(B)には、自然状態のときの突出部42が二点鎖線で示されている。
【0027】
また、締付状態で、挿入溝31内の突出部42の変形量が大きい領域では、変形量に比例して突出部42が幅方向に拡幅するよう変形して、幅方向でのシール圧が高められるので、前記高位部を含む遠方部分40bが位置する遠方領域Rbでは、締付方向での変形量による幅方向でのこの変形により、突出部42が内周壁面35および外周壁面35に押し付けられて、幅方向でのシール圧が、前記低位部よりも高くなるので、遠方部分Rbでのシール性が一層向上する。
【0028】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
各ボルト51,52の締付方向でシリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー3との間で締付状態にあるガスケット40の、締付方向での変形量は、各ボルト51,52による締付箇所から遠ざかるほど大きいことにより、ガスケット40において、締結箇所に近い位置にあるために大きな締結力により高いシール圧が得られる部分に対して、締結箇所から遠い位置にあるためにボルト51,52の締付力が小さくなる部分では、ガスケット40の変形量が大きくなるので、その分、締付方向でのシール圧が高められる。しかも、締結箇所から遠い位置で、各ボルト51,52の締付力によるシール圧が高められるので、ボルトの数が削減される。この結果、ガスケット40の変形量を大きくするだけで締結箇所からの離れた位置でのシール圧が高められるので、簡単な構造によりシール圧がガスケット40全体に渡って均一化され、ガスケット40のシール性が向上する。しかも、部品点数および締結工数が削減されて、内燃機関Eのコストが削減される。
【0029】
自然状態にあるガスケット40の高さは、各ボルト51,52または締付箇所から遠ざかるほど高いことにより、シール圧を高めるためてシール圧を均一化する手段は、ガスケット40の高さhを変えるだけであることから、該シール圧均一化手段の製造が容易になる。
【0030】
ガスケット40は、シリンダヘッドシール面20およびシリンダヘッドカバー側シール面30に接触するほぼ一定の高さh1の基部41と、基部41から締付方向に突出してシール面30に接触する突出部42とから構成され、突出部42の高さh2は各ボルト51,52または締付箇所から遠ざかるほど高いことにより、シリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー3との間の締付方向での間隔が基部41により確保されたうえで、突出部42の高さh2を変えるだけでシール圧が高められる。この結果、締付方向でのシリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー3との間隔の確保が容易になり、しかもシール圧が均一化される。
【0031】
締付箇所は2箇所のみであることにより、ボルト51,52が2つで済むので、ボルトの数が削減される。この結果、部品点数が削減されて、コストが削減される。
ガスケット40の高さhは、ボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に高くなることにより、ボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に低下する締付力に対応させて、ほぼ連続的にシール圧を高めることができるので、ガスケット40全体でむらなくシール性を高めることができて、シール性が向上する。
【0032】
ガスケット40において、高さhが平均高さよりも高い前記高位部(遠方部分40b)では、変形量により生じる幅方向でのガスケット40の変形により、幅方向でのシール圧が、高さが平均高さよりも低い前記低位部(近接部分40a)よりも高くされていることにより、ガスケット40において、締結箇所に近い位置にあるために締結力が大きい前記低位部に対して、締結箇所から遠い位置にある前記高位部では、変形量による締付方向でのシール圧の増加に加えて、幅方向でもシール圧が高められる。この結果、前記高位部では、締付方向および幅方向でのシール圧が高められるので、ガスケット40のシール性が一層向上する。
【0033】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態とは、挿入溝31が相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号を使用した。
【0034】
自然状態にあるガスケット40の基部41および突出部42において、その高さh1および幅h2は全周に渡ってほぼ一定である。
ボルト51,52(図2参照)による締付力の低下を補償して、ガスケット40のシール圧を全周に渡って均一化するように、挿入溝31の深さdはボルト51,52からの距離に応じて異なるように設定されている。すなわち、挿入溝31(図1(B)も参照)において、深さdは各ボルト51,52から遠ざかるほど浅く、この実施形態では、各ボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に浅くなる。(なお、分かり易さのために、図4では深さが誇張されて記載されている。)
【0035】
より具体的には、挿入溝31において、近接領域Raに位置する近接部分31aの深さdaは最も深くかつ一定であり、遠方領域Rbに位置する遠方部分31bの深さdbは最も浅くかつ一定であり、中間領域Rcに位置する中間部分31cの深さdcは、近接領域Raから遠方領域Rbに向かうほど深さdaから深さdbまで連続的に直線的に変化して浅くなる。そして、近接部分31aは、深さdが平均深さよりも深い深溝部を、遠方部分31bは、深さdが平均深さよりも浅い浅溝部を、中間部分31cは、前記深溝部から前記浅溝部に変化する変化部を、それぞれ構成する。
したがって、締付状態にあるガスケット40において、突出部42の、締付方向での変形量(圧縮量)は各ボルト51,52から遠ざかるほどほぼ連続的に、挿入溝31が浅くなるほど大きくなる。なお、図4(B)には、自然状態のときの突出部42が二点鎖線で示されている。
そして、この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0036】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関し説明する。
突出部42は、シリンダヘッドカバー3に向かって突出して形成される代わりに、基部41からシリンダヘッド2に向かって突出していてもよく、また基部41からシリンダヘッドカバー3およびシリンダヘッド2の両方に向かって突出していてもよい。
ガスケット40(前記実施形態では突出部42)が挿入される挿入溝31は、シリンダヘッドカバー3およびシリンダヘッド2の少なくとも一方に形成されていればよい。この場合、第2実施形態において、挿入溝がシリンダヘッド2のシール面20に形成された場合、該挿入溝の深さは締結箇所から遠いほど浅くなる。また、シリンダヘッドカバー3およびシリンダヘッド2にそれぞれ挿入溝が形成されてもよく、その場合、締付方向での両挿入溝の底壁面間の間隔が締結箇所から遠ざかるほど小さくなる。
各領域A1,A2は、各ボルト51,52の締付力やシール面20,30の環状の形状などに応じて、ガスケット40のシール圧をシール面20,30の周方向で均一化する観点から設定されるものであり、二分されるなど、3以外の数に分けられてもよい。例えば、前記実施形態の中間領域Rcおよび遠方領域Rbを1つの遠方領域として、各領域A1,A2が2種類に分けられてもよい。この場合、ガスケット40も近接部分および遠方部分の2種類に分けられ、遠方部分が、ボルト51,52から遠ざかるほど近接部分の高さから連続的に高くなるようにされてもよい。
第1,第2実施形態において、挿入溝31の幅Wcが、ボルト51,52から遠ざかるほど狭くなっていてもよい。
1つの締付具により複数の締付箇所が締め付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(A)は、本発明が適用された内燃機関のシリンダヘッドを中心とした要部の、図2の概ねI−I線で断面図であり、(B)は、(A)のb部分の拡大図である。
【図2】図1の内燃機関をシリンダ軸線方向から見たときのシリンダヘッドカバーを中心とした要部の図である。
【図3】(A)は、図2におけるシール面に沿ったIIIの範囲での、自然状態にあるガスケットの要部側面図であり、(B)は、IIIの範囲での、締付状態にあるガスケットの要部側面図およびシリンダヘッドおよびシリンダヘッドカバーの断面図であり、(C)は、(A)のc−c線断面図であり、(D)は、(A)のd−d線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示し、(A),(B)は、それぞれ図3(A),(B)に対応する図である。
【符号の説明】
【0038】
2…シリンダヘッド、3…シリンダヘッドカバー、20,30…シール面、31…挿入溝、40…ガスケット、41…基部、42…突出部、51,52…ボルト、E…内燃機関、Ra,Rb,Rc…領域、h…高さ、d…深さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに締付具により締結されたシリンダヘッドカバーと、前記締付具の締付方向で前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーとの間に介設されたガスケットとを備え、前記締付具の締付力により前記ガスケットがシリンダヘッド側シール面およびシリンダヘッドカバー側シール面に押し付けられる内燃機関において、
締付状態にある前記ガスケットの、前記締付方向での変形量は、前記締付具による締付箇所から遠ざかるほど大きいことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
自然状態にある前記ガスケットの高さは、前記締付箇所から遠ざかるほど高いことを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記シリンダヘッド側シール面および前記シリンダヘッドカバー側シール面に接触するほぼ一定の高さの基部と、前記基部から前記締付方向に突出して前記シリンダヘッド側シール面および前記シリンダヘッドカバー側シール面の少なくとも一方のシール面に接触する突出部とから構成され、前記突出部の高さは前記締付箇所から遠ざかるほど高いことを特徴とする請求項2記載の内燃機関。
【請求項4】
前記シリンダヘッドカバーは、2つの前記締付箇所のみでシリンダヘッドに締結されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の内燃機関。
【請求項5】
前記高さは、前記締付箇所から遠ざかるほどほぼ連続的に高くなることを特徴とする請求項2または3記載の内燃機関。
【請求項6】
前記ガスケットにおいて、前記高さが平均高さよりも高い高位部では、前記変形量により生じる幅方向での前記ガスケットの変形により、前記幅方向でのシール圧が、前記高さが前記平均高さよりも低い低位部よりも高くされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の内燃機関。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−205186(P2007−205186A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22204(P2006−22204)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】