説明

シリンダヘッドガスケット

【課題】 シリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部にうねりビードを頂点部を向き合わせて並列配置することにより、シリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部の圧縮抵抗を他の部分より増加させ、これにより、シリンダヘッドの反りを緩和させることができるシリンダヘッドガスケットを提供する。
【解決手段】 単数又は複数の金属構成板10からなる多気筒エンジン用のシリンダヘッドガスケット1の金属構成板のいずれかにおいて、長手方向の両側端部Bに、平面視で蛇行部分を有して、幅方向の一端側から他端側に延びるうねりビード11,12を複数並行配置し、該並行するうねりビード11,12のうねりの頂点部11a,12a同士が互いに接触又は接近するように蛇行させて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドやシリンダブロック等の二つの部材の間に挟持してシールを行うシリンダヘッドガスケットに関し、より詳細には、長手方向の両端部の圧縮抵抗を他の部分より増加させることにより、シリンダヘッドの反りを緩和させようとするシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットは、自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)の間に挟まれた状態で、ヘッドボルトにより締結され、燃焼ガス、オイル、冷却水等の流体をシールする役割を持っている。
【0003】
一方、最近は、エンジンの軽量化が進み、これにより、エンジンの低剛性が一層促進されてきている。この低剛性化に起因して、エンジンの各箇所で変形が増大する状況にあり、中でも、シリンダヘッドの長手方向の反りは、シリンダヘッドにおける亀裂の発生や、エンジンの両端(フロント側及びリア側)のボア変形が大きくなる原因となっていると言われている。
【0004】
このシリンダヘッドの反りの問題は、エンジンの長手方向の左右両端部を受け持つボルトの締め付け領域が、他の箇所より小さくなっているというエンジンの基本設計にあると考えられている。この傾向はどのエンジンでも共通するもので、シリンダヘッドガスケットの両端部は他の部分より受圧面積が小さいにも係わらず、両端のボルト締め付け力は他の部分より大きくなっている。従って、単位面積当たりの面圧は両端部が他の部分より大きくなっており、これが、シリンダヘッドが反る原因と考えられている。
【0005】
そして、軽量化が進んで低剛性シリンダヘッドが実現した今日では、この現象が一層顕著に表面化してきており、特に、直列6気筒一体型ヘッドでは、シリンダヘッドの長さが長いだけにその影響が大きく、このシリンダヘッドが長手方向に反るとエンジンの両端(フロント側及びリア側)のシリンダボア変形が、他のシリンダより大きくなるという現象が発生する。このシリンダの変形はオイル上がりの原因や、シリンダ内の摩擦抵抗の増大など、エンジンにとって不都合を生じさせるので、シリンダヘッドの反りは解決すべき重要な問題となっている。
【0006】
このシリンダヘッドの反りに対して、シリンダヘッドガスケットの両端部の圧縮抵抗を他の部分より増加させることにより、シリンダヘッドの反りを緩和させることが考えられる。
【0007】
一方、このシリンダヘッドガスケットにおいて、シール機能を犠牲にしないで圧縮抵抗を増加させる手段の一つとして、平面視で波形の波形ビード(うねりビード:蛇行状ビード)により、シリンダボア周りやその他のシール穴のシール性能を向上させている金属ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、うねりビードは普通のフルビード及びハーフビードよりも圧縮抵抗が大きいが、単に、このうねりビードをシリンダヘッドガスケットの長手方向の両端(フロント側及びリア側)に配置しただけでは、圧縮抵抗が不足して、十分な効果が得られないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−280551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこの問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、シリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部にうねりビードを頂点部を向き合わせて複数並列配置することにより、シリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部の圧縮抵抗を他の部分より増加させ、これにより、シリンダヘッドの反りを緩和させることができるシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、単数又は複数の金属構成板からなる多気筒エンジン用のシリンダヘッドガスケットの金属構成板のいずれかにおいて、長手方向の両側端部に、平面視で蛇行部分を有して、幅方向の一端側から他端側に延びるうねりビードを複数並行配置し、該並行するうねりビードのうねりの頂点部同士が互いに接触又は接近するように蛇行させて構成する。
【0011】
この構成により、うねりビードは普通のフルビード及びハーフビードより圧縮抵抗が大きいが、この機能を更に高める。即ち、うねりビードはその波形(うねり)の頂点部が圧縮抵抗の最も高い部分であるので、並列に配置するうねりビードの頂点部を互いに対向させ、接触又は接近させて配置することにより、うねりビードが圧縮された時に、頂点部同士が押し合うような状態にして、圧縮抵抗を更に高めるようにする。
【0012】
そして、この構成により、大きな圧縮抵抗をシリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部に発生できるので、シリンダヘッドの反りを緩和させることができる。
【0013】
また、上記のシリンダヘッドガスケットで、前記うねりビードにおいて、ビード形状、ビード幅、ビード高さ、蛇行の形状、蛇行の大きさの少なくとも一つを、各うねりビード毎に、該シリンダヘッドガスケットの長手方向に関して変化させて、長手方向端部に近づくうねりビード程圧縮抵抗が大きくなるように形成する。ビード形状には、断面形状が、円弧形状、正弦形状(コサイン)、台形形状、三角形(山形)形状などが含まれ、蛇行の形状(うねりの形状:平面しでの波形)には、例えば、平面視で、円弧形状、正弦形状(コサイン)、台形形状、三角形(山形)形状などが含まれ、蛇行の大きさには、うねりの長さ、うねりの幅などが含まれる。この構成により、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0014】
また、上記のシリンダヘッドガスケットで、前記うねりビードにおいて、外側のうねりビードのうねりの長さを、内側のうねりビードのうねりの長さより短くして、外側のうねりビードの圧縮抵抗を内側のうねりビードの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。この構成により、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0015】
そして、上記のシリンダヘッドガスケットで、前記うねりビードにおいて、前記うねりビードのビード形状、ビード幅、ビード高さ、蛇行の形状、蛇行の大きさの少なくとも一つを、そのうねりビードの中で、該シリンダヘッドガスケットの幅方向に関して変化させて、幅方向端部に近づく程、ビード部分の圧縮抵抗が大きくなるように形成する。この構成により、幅方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整できる。
【0016】
更に、上記のシリンダヘッドガスケットで、前記うねりビードにおいて、全部のうねりビード又は一部のうねりビードの幅方向端部を、平面視でガスケットの隅部に設けられたボルト孔の外側に沿って曲げて形成する。これにより、ボルト周囲の面圧調整をきめ細かく行うことができる。
【0017】
また、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記シリンダヘッドガスケットを複数の金属構成板から構成し、隣接して積層された金属構成板に、前記うねりビードを凸部同士が互いに対向するように分散配置すると共に、長手方向端部に近づく程、うねりビードの圧縮抵抗が高くなるように、うねりビードが配置された金属構成板の少なくとも一枚の金属構成板の硬度を他の金属構成板の硬度と異ならせて形成する。この構成により、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、シリンダヘッドガスケットの長手方向の両側端部に、平面視で蛇行部分を有して、幅方向の一端側から他端側に延びるうねりビードを複数並行配置し、該並行するうねりビードのうねりの頂点部が互いに接触又は接近するように蛇行させて形成することにより、並列に配置するうねりビードの圧縮抵抗の最も高い部分である頂点部を互いに対向させて圧縮抵抗を高めると共に、更に、接触又は接近させて、うねりビードが圧縮された時に頂点部同士が押し合うような状態となるように構成して、圧縮抵抗を更に高めることができる。
【0019】
これにより、シリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部の圧縮抵抗を他の部分より著しく増加させることができるので、つまり、大きな圧縮抵抗をシリンダヘッドガスケットの長手方向の両端部に発生できるので、シリンダヘッドの反りを緩和させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図面を参照して本発明に係るシリンダヘッドガスケットの実施の形態について説明する。なお、図1〜図8は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、シリンダボア用穴の大きさ、ビードの大きさ、うねりビード等の寸法を実際のものとは異ならせて、誇張して示している。
【0021】
本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)のエンジン部材の間に挟持されるメタルガスケットであって、シリンダボアの高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路や冷却オイル通路等の冷却水やオイル等の流体をシールする。
【0022】
このシリンダヘッドガスケットは、多気筒エンジン用のシリンダヘッドガスケットであり、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等で形成される金属構成板(金属基板)を単数又は複数有して構成される。また、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製造され、図1に示すようなシリンダボア(燃焼室用穴)2、冷却水やエンジンオイルの循環のための液体穴3、締結ヘッドボルト用のヘッドボルト穴4等が形成される。また、シリンダボア2の周囲にフルビード5等のシール手段を設けて構成される。
【0023】
図1に示す第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1は、単数又は複数(図1では単数)の金属構成板10からなり、この金属構成板の一つの金属構成板10において、長手方向(X−X’)の両側端部に、平面視で蛇行部分を有して、即ち、平面視で水平方向にうねり(波形)を形成して、幅方向(Y−Y’)の一端側から他端側に延びるうねりビード(蛇行状ビード)11,12を複数(図1では2つ)並行配置する。
【0024】
図1の第1の実施の形態では、この並行するうねりビード11、12は、同じビード形状で、しかも、同じうねり長さ(うねりのピッチ)で同じうねり幅(蛇行幅)で、即ち、蛇行形状(うねり形状)で形成され、この並行するうねりビード11、12のうねりの頂点部11a,12aが互いに接触又は接近するように蛇行して形成される。
【0025】
この構成によれば、この並列に配置するうねりビード11、12の圧縮抵抗の最も高い部分である頂点部11a、12aを互いに対向させて圧縮抵抗を高めると共に、更に、接触又は接近させて、うねりビード11、12が圧縮された時に頂点部11a、12a同士が互いに押し合うような状態となるように形成するので、圧縮抵抗を更に高めることができる。これにより、シリンダヘッドガスケット1の長手方向の両端部の圧縮抵抗を他の部分より著しく増加させることができるので、シリンダヘッドの反りを緩和させることができる。
【0026】
図2に示す第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、二本のうねりビード11A,12Aにおいて、外側のうねりビード12Aのビード幅を、内側のうねりビード11Aのビード幅より狭くして、外側のうねりビード12Aの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Aの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。
【0027】
この場合でも、内側のうねりビード11Aのうねりの長さ(うねりのピッチ)P1を、外側のうねりビード12Aのうねりの長さP2の整数倍(図2では1倍)とし、この並行するうねりビード11A、12Aのうねりの頂点部11Aa、12Aaが互いに接触又は接近するように形成される。
【0028】
この第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、外側のうねりビード12Aの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Aの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成しているので、長手方向端部Bにおいて、更に、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できる。そのため、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0029】
図3に示す第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Bは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、二本のうねりビード11B,12Bにおいて、外側のうねりビード12Bのうねりの長さ(うねりのピッチ)P2を、内側のうねりビード11Bのうねりの長さP1より短くして、外側のうねりビード12Bの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Bの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。
【0030】
この場合でも、内側のうねりビード11Bのうねりの長さP1を、外側のうねりビード12Bのうねりの長さP2の整数倍(図3では2倍)とし、この並行するうねりビード11B、12Bのうねりの頂点部11Ba、12Baが互いに接触又は接近するように形成される。
【0031】
この第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Bでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、外側のうねりビード12Bの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Bの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成して、長手方向端部Bにおいて、更に、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0032】
図4に示す第4の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Cは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、三本のうねりビードビード11C、12C、13Cが設けられ、この三本のうねりビード11C、12C、13Cにおいて、外側の2本のうねりビード12C、13Cのうねりの長さ(うねりのピッチ)P2、P3を、最内側のうねりビード11Cのうねりの長さP1より短くして、外側の2本のうねりビード12C、13Cの圧縮抵抗を最内側のうねりビード11Cの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。
【0033】
この場合でも、最内側のうねりビード11Cのうねりの長さP1を、一つ外側のうねりビード12Cのうねりの長さP2の整数倍(図4では2倍)とし、この並行するうねりビード11C、12Cのうねりの頂点部11Ca、12Caが互いに接触又は接近するように形成される。
【0034】
更に、最外側のうねりビード13Cのうねりの長さP3を、一つ外側のうねりビード12Cのうねりの長さ(うねりのピッチ)P2の整数倍(図4では1倍)の1とし、この並行するうねりビード12C、13Cのうねりの頂点部12Cb、13Cbが互いに接触又は接近するように形成される。
【0035】
この第4の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Cでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、外側のうねりビード12C,13Cの圧縮抵抗を最内側のうねりビード11Cの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成して、長手方向端部Bにおいて、更に、長手方向に関して端側の圧縮抵抗を段階的に大きくすることできるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0036】
図5に示す第5の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Dは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、二本のうねりビード11D,12Dにおいて、一本のうねりビード11D,12Dの中において、部分的にうねりの長さP1,P1’,P2,P2’を変えて構成したものであり、幅方向において圧縮抵抗を変化させるものである。
【0037】
この第5の実施の形態では、図5に示すように、内側のうねりビード11Dのうねりの長さP1,P1’と外側のうねりビード12Dのうねりの長さP2,P2’を共に、幅方向の中央では長いうねりの長さP1,P2に、幅方向の端部Cでは短いうねりの長さP1’,P2’にして、幅方向の端部Cの圧縮抵抗を幅方向の中央の圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。
【0038】
この場合でも、内側のうねりビード11Dのうねりの長さP1,P1’を、外側のうねりビード12Dのうねりの長さP2,P2’の整数倍(図5では1倍)とし、この並行するうねりビード11D、12Dのうねりの頂点部11Da、12Daが互いに接触又は接近するように形成される。
【0039】
この第5の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Dでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、内側のうねりビード11Dと外側のうねりビード12Dの圧縮抵抗を幅方向の端部C側を幅方向の中央側よりも大きくなるように形成して、長手方向端部Bにおいて、更に、幅方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整できる。
【0040】
図6に示す第6の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Eは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、二本のうねりビード11E,12Eにおいて、全部のうねりビード(又は一部のうねりビード)11E,12Eの幅方向端部を、平面視でガスケット1Eの隅部に設けられたボルト孔4の外側に沿って曲げて形成し、即ち、隅部の締まり易いボルトの根本付近にうねりビード11E,12Eを曲げて接近させて形成し、その部分の圧縮抵抗を強めるものである。
【0041】
この場合でも、内側のうねりビード11Eのうねりの長さP1を、外側のうねりビード12Eのうねりの長さP2の整数倍(図6では1倍)とし、この並行するうねりビード11E、12Eのうねりの頂点部11Ea、12Eaが互いに接触又は接近するように形成される。
【0042】
この第6の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Eでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、平面視でガスケット1Eの隅部に設けられたボルト孔4の周囲(B×C領域)の圧縮抵抗を大きくすることができ、面圧調整をきめ細かく行うことができる。
【0043】
図7及び図8に示す第7の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Fは、少なくとも二枚の第1の金属構成板10F及び第2の金属構成板20Fを積層して構成され、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に形成されるが、二本のうねりビード11F,22Fにおいて、内側のうねりビード11Fは、図7に示すように第1の金属構成板10Fに形成され、外側のうねりビード22Fは図8に示すように第2の金属構成板20Fに形成される。この内側のうねりビード11Fと外側のうねりビード22Fは、凸部が互いに対向するように、隣接して積層された第1の金属構成板10F及び第2の金属構成板20Fにそれぞれ形成される。
【0044】
そして、第2の金属構成板20Fの硬度を第1の金属構成板10Fの硬度よりも硬く形成し、外側のうねりビード22Fの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Fの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成する。
【0045】
この場合でも、内側のうねりビード11Fのうねりの長さP1を、外側のうねりビード22Fのうねりの長さP2の整数倍(図7では1倍)とし、この並行するうねりビード11F、22Fのうねりの頂点部11Fa、22Faが互いに接触又は接近するように形成される。
【0046】
この第7の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Fでは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様な作用効果を奏することができ、更に、外側のうねりビード22Fの圧縮抵抗を内側のうねりビード11Fの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成しているので、長手方向端部Bにおいて、更に、長手方向に関して圧縮抵抗を変化できるので、より細かく面圧調整でき、シリンダヘッドの反りを緩和できる。
【0047】
なお、上記のシリンダヘッドガスケットでは、金属構成板の積層数を単数又は2枚の場合について説明したが、二枚以上の金属構成板を積層した場合においても、本発明は適用可能である。また、ビードについてもフルビードで説明したが、フルビードよりも圧縮抵抗は小さくなるがハーフビードであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す平面図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図4】本発明に係る第4の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図5】本発明に係る第5の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図6】本発明に係る第6の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図7】本発明に係る第7の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分平面図である。
【図8】図7の第2の金属構成板を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1、1A〜1F シリンダヘッドガスケット
2 シリンダボア
3 液体孔
4 ボルト孔
5 ビード(シール手段)
10、10A〜10E 金属構成板
10F 第1の金属構成板
11、11A〜11F,12,12A〜12E,22F うねりビード
20F 第2の金属構成板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数の金属構成板からなる多気筒エンジン用のシリンダヘッドガスケットの金属構成板のいずれかにおいて、長手方向の両側端部に、平面視で蛇行部分を有して、幅方向の一端側から他端側に延びるうねりビードを複数並行配置し、該並行するうねりビードのうねりの頂点部同士が互いに接触又は接近するように蛇行させたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
前記うねりビードにおいて、ビード形状、ビード幅、ビード高さ、蛇行の形状、蛇行の大きさの少なくとも一つを、各うねりビード毎に、該シリンダヘッドガスケットの長手方向に関して変化させて、長手方向端部に近づくうねりビード程圧縮抵抗が大きくなるように形成したことを特徴とする請求項1記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
前記うねりビードにおいて、外側のうねりビードのうねりの長さを、内側のうねりビードのうねりの長さより短くして、外側のうねりビードの圧縮抵抗を内側のうねりビードの圧縮抵抗よりも大きくなるように形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
前記うねりビードにおいて、前記うねりビードのビード形状、ビード幅、ビード高さ、蛇行の形状、蛇行の大きさの少なくとも一つを、そのうねりビードの中で、該シリンダヘッドガスケットの幅方向に関して変化させて、幅方向端部に近づく程、ビード部分の圧縮抵抗が大きくなるように形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項5】
前記うねりビードにおいて、全部のうねりビード又は一部のうねりビードの幅方向端部を、平面視でガスケットの隅部に設けられたボルト孔の外側に沿って曲げて形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項6】
前記シリンダヘッドガスケットを複数の金属構成板から構成し、隣接して積層された金属構成板に、前記うねりビードを凸部同士が互いに対向するように分散配置すると共に、長手方向端部に近づく程、うねりビードの圧縮抵抗が高くなるように、うねりビードが配置された金属構成板の少なくとも一枚の金属構成板の硬度を他の金属構成板の硬度と異ならせて形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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