説明

シリンダヘッドガスケット

【課題】エンジン始動時の暖機時間を短縮可能なシリンダヘッドガスケットを提供する。
【解決手段】ボア孔18を有する基板12からなりシリンダブロックと該シリンダブロックに固定されるシリンダヘッドとの間に介在して適用されるシリンダヘッドガスケット10において、基板12が低熱伝導性材料よりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにおけるシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に対向面間をシールするために使用されるシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットには、ステンレス鋼などの金属薄板や、該金属薄板の表面にゴムあるいは黒鉛シートなどを被覆した素材を、一層または数層積層した金属ガスケットが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような金属ガスケットをシリンダヘッドガスケットとして用いた場合、次のような問題がある。すなわち、シリンダヘッドガスケットが熱伝導性の良い材料で構成されている金属ガスケットであると、燃焼室のシリンダヘッド側で発生した熱がシリンダヘッドガスケットを介してシリンダブロック全体に逃げるため、エンジン始動時に燃焼室内の温度を上昇させる暖機時間が長くなり、排気有害成分の増加や燃料消費率の低下を招く不都合がある。
【特許文献1】特開平8−200505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、エンジン始動時の暖機時間を短縮可能なシリンダヘッドガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシリンダヘッドガスケットは、ボア孔を有する基板からなりシリンダブロックと該シリンダブロックに固定されるシリンダヘッドとの間に介在して適用されるシリンダヘッドガスケットにおいて、前記基板が低熱伝導性材料よりなることを特徴とする。
【0006】
上記の本発明によれば、シリンダヘッドガスケットが低熱伝導性材料で構成されているため、燃焼室で発生してシリンダヘッドに蓄積されている熱がシリンダブロック全体に逃げるのを抑えことができ、エンジン始動時の暖機時間を短縮することができる。
【0007】
また、上記低熱伝導性材料としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの耐熱性樹脂が用いられ、好ましくは耐熱性樹脂にガラス繊維、アラミド繊維の少なくとも一つを混合してなる繊維強化樹脂が用いられる。
【0008】
また、本発明において、基板は、その表面にボア孔の周囲に沿う内側シール層と該内側シール層を取り囲む外側シール層が積層されてもよく、かかる場合、内側シール層および外側シール層に締め付け力を集中させてることができるため、小さな締め付け力であっても優れたシール性能を発揮することができる。
【0009】
なお、本発明において、低熱伝導性材料とは、ステンレス鋼の熱伝導率である15W/mKより小さい熱伝導率を有する材料をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、燃焼室で発生した熱は、低熱伝導性材料の基板からなるシリンダヘッドガスケットによって伝達が抑制されることでシリンダヘッド内に蓄積されるため、燃焼室内温度を早期に上昇させることができ、エンジン始動時の暖機時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態にかかるシリンダヘッドガスケット10の平面図、図2および3は同シリンダヘッドガスケット10の部分断面図である。
【0013】
シリンダヘッドガスケット10は、例えば、多気筒エンジンにおけるシリンダヘッドとシリンダブロックの間に介装され、両者との気密性を得てシール性を向上するものであって、エンジンのシリンダボアに対応するボア孔18と、締め付けボルトが挿通されるボルト孔20のほか、不図示の冷却水用孔、オイル用孔などが穿設されている基板12を主体としてなる。
【0014】
この基板12を構成する低熱伝導性材料としては、少なくともステンレス鋼の熱伝導率である15W/mKより小さい熱伝導率を有する材料が用いられ、好ましくは、15W/mKより小さい熱伝導率であるとともに加工性および耐久性に優れていることから耐熱性樹脂が、さらに好ましくは、ガラス繊維、アラミド繊維の少なくとも一つからなる強化繊維をフェノール樹脂に混合してなる繊維強化樹脂材料が用いられる。
【0015】
以上のように、本実施形態のシリンダヘッドガスケット10では、耐熱性樹脂などの低熱伝導性材料で構成されているため、燃焼室で発生してシリンダヘッドに蓄積されている熱がシリンダブロック全体に逃げるのを抑えことができ、エンジン始動時の暖機時間を短縮することができる。
【0016】
また、本実施形態のシリンダヘッドガスケット10は、シンプルな構造であるため安価に製造することができ、特に、基板12を樹脂材料で構成した場合、従来のステンレス鋼などの金属製のガスケットと比較して軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドガスケットを示す平面図である。
【符号の説明】
【0018】
10…シリンダヘッドガスケット
12…基板
18…ボア孔
20…ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボア孔を有する基板からなりシリンダブロックと該シリンダブロックに固定されるシリンダヘッドとの間に介在して適用されるシリンダヘッドガスケットにおいて、
前記基板が低熱伝導性材料よりなることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
前記低熱伝導性材料が、耐熱性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
前記低熱伝導性材料が、耐熱性樹脂にガラス繊維、アラミド繊維の少なくとも一つを混合してなる繊維強化樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂が、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2または3に記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【公開番号】特開2007−239613(P2007−239613A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63377(P2006−63377)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000228383)日本ガスケット株式会社 (43)
【Fターム(参考)】