説明

シリンダ保護カバー装置

【課題】シリンダに容易に着脱ができ、かつ装着状態では、シリンダの伸縮動作時に脱落しないように保持できるようにする。
【解決手段】カバー部材21を構成する蛇腹部23の端部の固定用筒部24をシリンダチューブ11のロッド導出部15に着脱可能に固定するために、弾性部材を円筒形に形成したカバー端止着部材40をロッド導出部15の外周部に装着して、筒体締付部材50を用いて固定して、カバー端止着部材40の外周面に固定用筒部24が固定されるカバー止着面を形成し、これとピストンロッド12の先端に設けた連結部材16の円筒状の部位とにカバー部材21の両端における固定用筒部24,25を当接させて、同じ構造のカバー締付手段30のバンド31をドライバ部32により締め上げることにより着脱可能に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作業機等に装着したシリンダのシリンダチューブから突出しているピストンロッドを保護するシリンダ保護カバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野外で稼働する油圧作業機として、例えば油圧ショベルは、土砂の掘削等の作業を行うフロント作業機を備えており、このフロント作業機はブーム及びアームと、バケット等のフロントアタッチメントから構成される。これらの部材はそれぞれ油圧シリンダにより駆動される。油圧シリンダは、シリンダチューブからピストンロッドが突出するように設けられており、シリンダチューブに対してピストンロッドを伸縮させることによって、それに連結した部材、例えばバケットが駆動される。
【0003】
油圧ショベルは野外で土砂の掘削等の作業を行うものであり、フロント作業機を駆動する油圧シリンダには塵埃等の異物が付着し、また岩石等の飛来物やコンクリート等の構築物等と衝突する可能性がある。特に、ピストンロッドに塵埃等が付着したままで伸縮すると、微小な粒子がシリンダチューブ内に入り込むおそれがある。また、ピストンロッドが他の物体と衝突すると、このピストンロッドの表面が損傷したり、変形したりする可能性もある。
【0004】
そこで、油圧シリンダに保護カバーを装着することによって、ピストンロッドを保護するようにしたものが、例えば特許文献1に開示されている。この公知の保護カバーは、一端がピストンロッドの先端に固定され、他端がシリンダチューブに固定される円筒等の形状をした可撓部材で構成しており、シリンダの伸縮に追従して伸縮するものである。従って、シリンダの最縮小位置から最伸長位置に至るまで、確実にピストンロッドを覆うように保護される。
【特許文献1】特開2001−241406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、保護カバーによって、ピストンロッドに塵埃等の異物が付着したり、岩石等の飛来物や障害物,構築物等が直接衝突したりすることがなく、油圧シリンダを有効に保護できる。保護カバーは、例えば可撓性部材を連結した蛇腹構造のものから構成されており、衝突物はこの保護カバーに直接作用することになる。その結果、保護カバーに破損や劣化等を生じさせる可能性があるために、保護カバーはシリンダに対して交換可能に装着されなければならない。
【0006】
保護カバーの両端は筒状となっており、ピストンロッドの先端部、特に所定の部材に連結ピンに挿通される連結部材と、シリンダチューブのロッド導出端部乃至その近傍位置とに適宜の固定手段を用いて着脱可能に固定される。この固定手段を用いた保護カバーの着脱は、できるだけ容易かつ迅速に行うことができ、しかも装着状態では安定的に保持する必要がある。特に、ピストンロッドが伸長する際には、保護カバーに引っ張り力が作用するが、保護カバーはこの引っ張り力の作用により脱落しないように保持しなければならない。
【0007】
ピストンロッドの先端部は、通常、概略円柱形状の部位を備えており、保護カバーの取付条件はある程度は良好である。従って、例えばバンドと締め具とからなるカバー締付部材を用いて保護カバーの端部を比較的容易に止着することができ、かつ止着状態で安定的に保持される。しかしながら、シリンダチューブのロッド導出端部は様々な形状となっており、また油圧配管の接続部が突設されているものもあり、保護カバーが取り付けられる部位の構造に応じた構成のカバー止着部材を用いなければならない。さらに、ロッド導出端部の構成によっては、保護カバーを安定的に保持できない場合もある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、シリンダに容易に着脱ができ、かつ装着状態では、シリンダの伸縮動作時に脱落しないように保持できるようにしたシリンダ保護カバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、シリンダチューブからピストンロッドを導出させたシリンダと、このシリンダの前記ピストンロッドを保護するために、このピストンロッドの全長にわたって被装されて、このピストンロッドの伸縮動作に追従して伸縮するカバー部材と、このカバー部材の両端が前記ピストンロッドと前記シリンダチューブとに着脱可能に固定されるカバー固定手段とを備えたシリンダ保護カバー装置であって、前記シリンダチューブに着脱可能に固定されるカバー固定手段は、前記シリンダチューブの前記ピストンロッドが突出する方向に突出させるようにして、前記シリンダチューブの外周面に巻着された円環状または円弧状の弾性板体からなるカバー端止着部材と、このカバー端止着部材を前記シリンダチューブの外周面に固定するための取付具とから構成され、前記カバー部材の端部は前記カバー端止着部材に嵌合させて、カバー締付部材により前記シリンダチューブの外周面に着脱可能に固定する構成としたことをその特徴とするものである。
【0010】
ここで、シリンダチューブは、円筒形状とした部材にロッド導出部を連結する構成としたものであり、以下の説明において、シリンダチューブという場合、円筒形状の本体部分だけでなく、ロッド導出部を含むものである。また、ピストンロッドの先端部には連結部材が取り付けられるが、ピストンロッドの先端部という場合には、この連結部材も含まれる。
【0011】
シリンダチューブのロッド導出端部乃至その近傍が実質的に円筒形状となっておれば、カバー端止着部材を固定する作業はあまり困難ではないが、シリンダチューブのロッド導出部側の端部近傍には配管接続部が突出するように連結されており、この配管接続部より先端側の幅寸法は極めて狭くなっているものもある。カバー部材をシリンダチューブに直接固定せず、カバー端止着部材をシリンダチューブに装着して、このカバー端止着部材にカバー部材の端部を固定する構成としたのはこのためである。従って、シリンダチューブに応じた構造で、それに応じた方法で予めカバー端止着部材をシリンダチューブに組み込んでおくことによって、シリンダチューブがどのような構造となっていても、カバー部材の止着部材の構成及び止着方式を一定化させることができる。
【0012】
例えば、シリンダチューブに配管接続部が設けられている場合には、カバー端止着部材に配管接続部を挿通させる切り欠き溝を形成し、配管接続部をこの切り欠き溝に挿通させるようにして組み付けることができる。これによって、このカバー端止着部材を配管接続部より基端側まで延在させることができる。そして、このカバー端止着部材を配管接続部に締付部材を当接させるようにするか、または切り欠き溝をL字状に形成すると、カバー端止着部材のシリンダチューブからの脱落防止機能を発揮させることができる。また、シリンダチューブの外面に平坦部等が形成されている場合には、カバー端止着部材の内面にこの平坦部と当接する厚肉部を形成することによって、容易にシリンダチューブの形状に適合させることができる。
【0013】
カバー端止着部材の内面はシリンダチューブの外面に対して十分な摩擦係合力が作用するように構成されていなければならない。このために、カバー端止着部材は、例えば金属の弾性板体から構成することができ、円環状または円弧形状となるように癖付けする構成としたものを用いることができる。この弾性板体からなるカバー端止着部材を取付具により締め付けることによって、概略円筒形状となし、シリンダチューブの外面に固定することができる。カバー端止着部材の先端側の外面にはカバー部材の端部が止着されるので、このカバーが止着される面は概略円筒形状とし、カバー端止着部材は、少なくともシリンダチューブのロッド導出端側部において、少なくとも周長の1/2回転以上巻着可能な長さを持たせ、360度以上で部分的にオーバーラップさせても良い。これによって、外径が多少異なるシリンダチューブに対しても同一のカバー端止着部材を装着できるようになる。ただし、カバー端止着部材が2回転以上巻着されるようになると、その部位が太径化するので好ましくはない。また、ここで、カバー端止着部材の外周面と内周面とでは異なる機能が要求されるので、剛性の高い外面部材と、シリンダチューブへの固定性を高めるために、ゴム等の摩擦部材で内面に設けることができる。
【0014】
カバー端止着部材は、予めシリンダチューブに装着させておくことができ、一度装着されると、殆ど交換する必要が生じない。一方、カバー部材は交換頻度が高いものであり、その一端はカバー端止着部材の外周面であるカバー止着面に着脱可能に固定され、他端はピストンロッドの先端部に固定される。カバー端止着部材をシリンダチューブに装着することによって、カバー部材の両端はほぼ同じ固定構造を用いることができる。
【0015】
従って、カバー端止着部材の外周面はカバー部材の着脱を容易に行えるようにするためにほぼ円筒形状となし、カバー部材の端部の当接面における軸線方向の長さもある程度長くする。このために、カバー端止着部材をシリンダチューブの端部からピストンロッドの導出側に向けて突出させるように装着する。ただし、カバー端止着部材は、シリンダの縮小時に、ピストンロッドの先端に設けた連結部材と干渉しない長さとするのはいうまでもない。さらに、カバー端止着部材の外周面には、カバー部材の端部をより円滑かつ確実に固定するために、摩擦面としたり、多数の微小な係合爪を形成したり、円環状または円弧状のストッパ突条を形成する等のストッパ部を形成することもできる。ただし、係合爪やストッパ突条は大きく突出させるのではなく僅かな高さとする。
【0016】
カバー端止着部材のシリンダチューブへの固定手段として、各種の取付具を用いることができる。カバー端止着部材は取り外す頻度が少ないことから、安定的に固定できれば、この固定に多少の困難性が伴うものであっても、また大掛かりな治具を用いなければ固定できないものであっても格別差し支えない。ただし、この取付具の固定は着脱可能である方が望ましく、その具体的な構成としては、例えば溝付きの金属または樹脂製のバンドと、このバンドをループ状として、その内径を縮径させて、シリンダチューブに巻着したカバー端止着部材に対して締め上げるねじ部材を有する締め具で構成することができる。
【0017】
カバー部材の両端は、カバー締付部材を用いてカバー止着部材及びピストンロッドの先端に着脱可能に固定される。このカバー締付部材は、クランプや締め付け等により行われる。このカバー部材は、交換頻度が高いために、容易に固定でき、また取り外しも容易にする。そして、固定した状態でみだりに脱落することなく、安定的に保持されるようにする。そして、カバー部材の両端の固定機構を同一のものとすることによって、カバー部材の交換作業が容易になる。
【0018】
ピストンロッドの先端部分にカバー部材を直接固定することもできるが、シリンダチューブのロッド導出端側と同様に、カバー端止着部材を設けて、このカバー端止着部材にカバー部材を着脱可能に固定することもできる。さらに、カバー部材は伸縮可能なものであり、例えば蛇腹部材で構成することができる。この蛇腹部材の両端に概略円筒形状とした固定用筒部を設けて、これらをシリンダチューブのロッド導出端部と、ピストンロッドの先端部とに装着する。
【発明の効果】
【0019】
ピストンロッドを保護するカバー部材を容易に着脱ができ、装着状態において、シリンダの伸縮動作時に脱落しないように安定的に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に本発明の保護カバー装置が装着されるシリンダを設けた油圧作業機の一例として、油圧ショベルの外観を示す。図中において、1は油圧ショベルの下部走行体、2は上部旋回体である。上部旋回体2には、フロント作業機3が装着されており、このフロント作業機3はブーム4,アーム5及びフロントアタッチメントとしてのバケット6から構成され、このフロント作業機3を作動させることによって、土砂の掘削等の作業が行われる。
【0021】
フロント作業機3を構成するブーム4,アーム5及びバケット6は油圧駆動式のシリンダ10により駆動されるものである。シリンダ10は、図2に示したように、シリンダチューブ11とピストンロッド12とを備え、シリンダチューブ11の一端部、つまりボトム側端部13に連結部材14が連設されている。シリンダチューブ11の他端部は、ピストンロッド12を導出させたロッド導出部15となっている。ピストンロッド12は、このロッド導出部15に挿通されて、シリンダチューブ11から伸長し、或いはシリンダチューブ11側に縮小する動作がなされる。そして、ピストンロッド12の先端に連結部材16が設けられる。
【0022】
例えば、フロント作業機3を構成するバケット6を駆動するバケットシリンダとして構成した場合には、シリンダチューブ11の端部に設けた連結部材14がアーム5に設けたブラケット5aに連結され、またピストンロッド12の先端に設けた連結部材16はバケット6に連結したリンク機構6aに連結されている。さらに、アーム5の先端には連結ピン7によりバケット6が相対回動可能に連結されている。従って、アーム5とバケット6との間に設けたシリンダ10を駆動することによって、アーム5の先端においてバケット6が回動操作される。
【0023】
フロント作業機3を駆動して、土砂の掘削等の作業を行う間には、岩石等が飛散して、シリンダ10に衝突することがある。また、コンクリートや鉄骨等の構築物にシリンダ10が衝突することもある。シリンダチューブ11の外面がこれらと衝突したとしても、格別のダメージを受けることはない。しかしながら、シリンダチューブ11からピストンロッド12が導出された状態で岩石や構築物等が、このピストンロッド12の外面と衝突して、このピストンロッド12の外面を損傷させたり、打痕や変形を生じさせたりする可能性がある。その結果、シリンダ10の作動に支障を来たすおそれがあり、また損傷した箇所から塵埃等の異物が入り込んで油圧回路を流れる作動油を汚損する可能性もある。
【0024】
以上の点から、シリンダ10には、そのピストンロッド12を保護するためのシリンダ保護カバー装置20が装着される。図2には、シリンダ10と共に、シリンダ保護カバー装置20を構成する各部が分離して示されており、また図3には、シリンダ保護カバー装置20をシリンダ10に組み付けた状態が示されている。
【0025】
これらの図から明らかなように、シリンダ保護カバー装置20はカバー部材21を有するものである。カバー部材21は、図4に示した円環状に形成した可撓性シート22を1単位として、この可撓性シート22を所定枚数重ね合わせて縫製手段で順次連結することにより構成される。ここで、可撓性シート22は、布製のものを用いることができ、また繊維強化熱可塑性樹脂シート等が好適に用いられる。また縫製は好ましくはナイロン糸等のように、高強度で耐候性に優れたものを用いる。
【0026】
各可撓性シート22は、その前後に位置する可撓性シート22に対して、一方側とは内周エッジ近傍の部位S1が、他方側とは外周エッジ近傍の部位S2が縫い付けられて固着されている。これにより、図5からも明らかなように、その外周側の固着部からなる山折れ部23aとなり、内周側の固着部からなる谷折れ部23bとなり、これら山折れ部23aと谷折れ部23bとが順次交互に形成され、これら山折れ部23aの形成部と谷折れ部23bの形成部とで1ピッチとなり、所定ピッチ分だけ連結されて、全体が筒状となった蛇腹部23が形成される。この蛇腹部23の両端部には円筒形状の固定用筒部24,25がそれぞれ連設されている。なお、これら固定用筒部24,25は蛇腹部23と同じ部材で構成する。
【0027】
蛇腹部23の両端に設けた固定用筒部24,25は、シリンダ10のシリンダチューブ11におけるロッド導出端部近傍の外周面と、ピストンロッド12の先端に設けた連結部材14の外周面とに着脱可能に固定される。固定用筒部24,25はそれぞれ固定される部位の外径に対応する内径を有するものであるが、固定用筒部24が固定されるシリンダチューブ11と、固定用筒部25が固定されるピストンロッド12の連結部材14とでは外径が異なっている。連結部材14に固定される固定用筒部25は小径であるから、蛇腹部23におけるこの固定用筒部24への連結部は連続的に縮径されており、従って固定用筒部25側では、蛇腹部23を構成する可撓性シート22は、その内外径が段階的に小さくなっている。
【0028】
蛇腹部23は、その最縮小状態では各可撓性シート22がほぼ密着状態となる。最縮小状態からその両端から引き伸ばすと、前後の可撓性シート22,22が山折れ部23a及び谷折れ部23bを残して離間して、筒状を保ったまま伸長する。最伸長状態では、山折れ部23a及び谷折れ部23bの角度が最大となる。このときには、山折れ部23a及び谷折れ部23bは共に、前後の可撓性シート22,22間は所定の縫い代分だけが重畳しており、他の部位は相互に離間している。
【0029】
カバー部材21はシリンダ10に着脱可能に取り付けられるものである。バケット駆動用のシリンダ10に対して、アーム5のブラケット5a及びバケット6に連結して設けたリンク機構6aに連結したままで着脱できるようにするには、蛇腹部23及び固定用筒部24,25に割りを形成して、この割りの部位を開いて、側方からシリンダ10に着脱可能なものとする。そこで、図4に示されているように、円環状の可撓性シート22には半径方向に切断部が1箇所形成されたC字形状となっており、所定枚数重ねられる可撓性シート22を、切断部を一致させて配置することによって、蛇腹部23の全長にわたってシリンダ10への着脱を行うための切れ目が形成される。そして、この切れ目を連結状態とするために、面ファスナ26を掛け渡すようにして着脱可能に固着されている。また、シリンダ10におけるピストンロッド12の先端部のリンク機構6aへの着脱が容易に行われるようであれば、ピストンロッド12をリンク機構6aから取り外して、ピストンロッド12の先端側から蛇腹部23を装着できるので、シリンダ保護カバー装置20を構成する蛇腹部23の可撓性シート22には切れ目等を形成する必要はない。
【0030】
シリンダ保護カバー装置20のカバー部材21において、固定用筒部24がシリンダチューブ11に、また固定用筒部25がピストンロッド12の先端部に連結した連結部材14にそれぞれ固定される。まず、連結部材16のピストンロッド12への連結部は軸線方向に所定の長さを有する円筒形状となっている。従って、カバー部材21の固定用筒部25は、連結部材16における円筒形状の部分にカバー固定手段を構成するカバー締付部材30を用いて着脱可能に固定される。
【0031】
カバー締付部材30は、図6及び図7に示したように、金属板体からなり、表面に所定のピッチ間隔をもって溝31aを形成したバンド31と、このバンド31をループ状となるようにして挿通させたハウジング32aにバンド31の溝31aと係合する締め上げ用のねじ部材32bを回転可能に装着した締め部としてのドライバ部32とから構成される。ドライバ部32を構成するねじ部材32bを回転させると、バンド31の一端が図7の矢印の方向に送られて、バンド31のループ径を縮径させることができる。
【0032】
これに対して、シリンダチューブ11のロッド導出端側には、所定幅の円筒形状となった部位を備えておらず、シリンダチューブ11側に固定される固定用筒部24を直接取り付けることができないか、少なくとも安定的に固定することができない。即ち、図2からも明らかなように、シリンダチューブ11におけるロッド導出部15には、油圧配管17を接続した配管接続部18が突出する状態に設けられており、しかもロッド導出部15の内面は、この配管接続部18より僅かに前方位置から連続的に縮径されるテーパ部15aとなっている。従って、固定用筒部25を固定するために設けたカバー締付部材のようなカバー固定手段で直接的にシリンダチューブ11(具体的には、そのロッド導出部15)に安定的に固定できない構造となっている。
【0033】
このために、固定用筒部24を固定する部位を確保するために、シリンダチューブ11側にカバー端止着部材40を装着する構成としている。カバー端止着部材40は曲げ方向に弾性を有する金属製の板体、特に錆びにくい軟性金属であるアルミニウムの湾曲板体から構成される。このカバー端止着部材40は、図8に示したように、予め湾曲状態に曲成されており、シリンダチューブ11に巻着させて、その外周側から圧縮力を作用させると、弾性変形して円筒状となり、シリンダチューブ11の外周面に密着するように縮径される。なお、カバー端止着部材40をシリンダチューブ11の所定位置に巻着させたときに、概略360度乃至それより僅かに小さい角度分巻着される寸法とするのが最も望ましい。
【0034】
カバー端止着部材40は、シリンダチューブ11におけるロッド導出部15の配管接続部18を装着した位置を含む前後の所定幅分に及ぶように巻着されて固定される。ロッド導出部15では、このように配管接続部18が突出するように設けられているが、それ以外の部位は概略円筒形状となっている。このために、カバー端止着部材40には、その一端側に配管接続部18を通す切り欠き溝41が形成されており、この切り欠き溝41はロッド導出部15に巻着したときに、その軸線方向に向けたものであり、途中で円弧方向に所定の角度分延在されている。つまり、切り欠き溝41は概略L字形状のものであり、従ってカバー端止着部材40は、その切り欠き溝41に配管接続部18を挿通させて、円周方向に所定角度回転させて、配管接続部18をこの切り欠き溝41における円周方向の溝に移行させることによって、抜け止め機能を発揮するようになる。なお、このL字状の切り欠き溝41に代えて、図9に示したように、カバー端止着部材140のように、その相互に接合されるか、または重なり合う端部から所定深さを有する凹部141a,141a(または一方側の端部にのみ凹部を形成しても良い)を形成して、ロッド導出部15に巻着したときに、これら両凹部141a,141aで囲まれた部位を、配管接続部18を通すための挿通部141としても、前述した抜け止め機能を発揮する。
【0035】
カバー端止着部材40のロッド導出部15への固定は、取付具を構成する筒体締付部材50により行われる。この筒体締付部材50は、図6及び図7に示したカバー締付部材30と同様の構成のものである。ただし、この筒体締付部材50はより強力な締め付け力を必要とするので、カバー締付部材30より、バンド51の幅及び厚みを大きくし、ハウジング52aとねじ部材52bとからなるドライバ部52も大型のものとしている。この筒体締付部材50は、シリンダチューブ11のロッド導出部15のうち、配管接続部18より基端側の部位に強固に取り付けられて、カバー端止着部材40をシリンダチューブ11に安定的に固定させるようにしている。
【0036】
カバー端止着部材40の外周面における筒体締付部材50の装着位置より先端側の部位はカバー部材21の固定用筒部24が装着されている。カバー端止着部材40の外周面におけるこの部位は固定用筒部24が固定されるカバー止着面となっている。従って、固定用筒部24の内径はカバー止着面の外径とほぼ同じか、それより僅かに大きい寸法としている。この固定用筒部24は、カバー部材21の固定用筒部25をピストンロッド12に連結して設けた連結部材14に固定するために用いたカバー締付部材30を用いて固定される。ただし、固定用筒部24は固定用筒部25より大径のものであり、従ってバンド31の長さよりバンド51の長さの方を長尺のものとする。
【0037】
ここで、カバー端止着部材40のうち、カバー部材21における固定用筒部24がカバー締付部材30により固定される部位は、シリンダチューブ11におけるロッド導出部15のテーパ部15aとなっている部位である。従って、この位置ではカバー端止着部材40の内周面はシリンダチューブ11に対して非接触状態となっている。このために、カバー端止着部材40の強度にもよるが、固定用筒部25の固定部と比較して、安定性が多少劣る可能性がある。そこで、固定用筒部24がカバー端止着部材40から脱落するのを防止するために、図10に示したように、カバー端止着部材40における先端側、つまりピストンロッド12の導出側の端部にはカバー端止着部材40の厚みより厚肉となった円環状ストッパ部42が装着されている。そして、カバー締付部材30によるカバー部材21の固定用筒部24の締め付け位置は、このストッパ部42の配設部より基端側であり、しかもこのストッパ部42に近接した位置としている。
【0038】
ストッパ部42は、金属で形成することもできるが、例えば硬質のゴム材で形成され、かつカバー端止着部材40における端部のコーナー部分で折り返すように装着されている。これによって、カバー端止着部材40の端部におけるエッジ部分で他の部材、例えばカバー部材21等が損傷しないように保護される。また、カバー端止着部材40のシリンダチューブ11側への当接面は摩擦力が大きくなるような処理を施すことができ、また図9に示したように、摩擦部材のライナー43を積層しておくこともできる。これによって、カバー端止着部材40が取付状態で極めて安定的に保持される。
【0039】
このように構成することによって、シリンダ10に対して、シリンダチューブ11のロッド導出部15と、ピストンロッド12の先端に設けた連結部材16というように、構造及び形状が異なる部位に、カバー部材21の両端における固定用筒部24,25を当接させて、同じカバー固定手段であるカバー締付部材30を用いて、ドライバ部32を構成するねじ部材32bを螺回して、バンド31を締め上げることにより、容易に固定することができる。また、カバー部材21が損傷する等により交換を行うために、このカバー部材21を取り外す作業も、ドライバ部32のねじ部材32bを螺回して、バンド31を緩めることによって、カバー部材21を容易に取り外すことができる。
【0040】
従って、カバー部材21は消耗品として、作業現場でも交換することができる。これに対して、カバー部材21の取付部を構成するカバー端止着部材40は、シリンダチューブ11における端部において、大部分がカバー部材21に覆われた状態になっており、殆ど損傷することがないので、一度装着した後には、殆ど交換をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のシリンダ保護カバーを油圧シリンダに装着した油圧作業機の一例としての油圧ショベルの外観図である。
【図2】シリンダと共に、シリンダ保護カバー装置を分解して示す構成説明図である。
【図3】シリンダ保護カバー装置をシリンダに組み込んだ状態の構成説明図である。
【図4】蛇腹部材を構成する可撓性シートの平面図である。
【図5】蛇腹部材の断面図である。
【図6】締付部材の正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】カバー端止着部材の構成を示す斜視図である。
【図9】カバー止着部材の変形例を示す斜視図である。
【図10】カバー端止着部材の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 シリンダ
11 シリンダチューブ
12 ピストンロッド
15 ロッド導出部
16 連結部材
18 配管接続部
20 シリンダ保護カバー装置
21 カバー部材
23 蛇腹部
24,25 固定用筒部
30 カバー締付部材
31 バンド
32 ドライバ部
40,140 カバー止着部材
40a カバー止着面
41 切り欠き溝
141 挿通部
42 ストッパ部
50 筒体締付部材
51 バンド
52 ドライバ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブからピストンロッドを導出させたシリンダと、このシリンダの前記ピストンロッドを保護するために、このピストンロッドの全長にわたって被装されて、このピストンロッドの伸縮動作に追従して伸縮するカバー部材と、このカバー部材の両端が前記ピストンロッドと前記シリンダチューブとに着脱可能に固定されるカバー固定手段とを備えたシリンダ保護カバー装置において、
前記シリンダチューブに着脱可能に固定されるカバー固定手段は、
前記シリンダチューブの前記ピストンロッドが突出する方向に突出させるようにして、前記シリンダチューブの外周面に巻着された円環状または円弧状の弾性板体からなるカバー端止着部材と、
このカバー端止着部材を前記シリンダチューブの外周面に固定するための取付具と
から構成され、
前記カバー部材の端部は前記カバー端止着部材に嵌合させて、カバー締付部材により前記シリンダチューブの外周面に着脱可能に固定する
構成としたことを特徴とするシリンダ保護カバー装置。
【請求項2】
前記シリンダチューブには配管接続部が連結されており、前記カバー端止着部材には、この配管接続部を挿通させる切り欠き溝を形成し、このカバー端止着部材の一側端部を前記シリンダチューブの外面における前記配管接続部を設けた位置より基端側に配置し、他側端部は前記シリンダチューブの端部から前記ピストンロッドの導出方向に向けて突出させる構成としたことを特徴とする請求項1記載のシリンダ保護カバー装置。
【請求項3】
前記カバー端止着部材は少なくとも前記シリンダチューブのロッド導出端側部に周長の1/2回転以上巻着可能な長さを有するものであり、前記取付具は、前記カバー端止着部材を締め付けるように装着される締付部材から構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリンダ保護カバー装置。
【請求項4】
前記カバー端止着部材の外周面には、前記カバー部材の抜け止めのためのストッパ部を形成する構成としたことを特徴とする請求項3記載のシリンダ保護カバー装置。
【請求項5】
前記カバー部材を前記カバー端止着部材に固定するためのカバー締付部材は、バンドと、このバンドをループ状として、その内径を縮径させて、前記カバー部材を前記カバー端止着部材に締め付ける締め具とから構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシリンダ保護カバー装置。
【請求項6】
前記カバー部材を前記ピストンロッドの先端外周面に着脱可能に固定するために、バンドと、このバンドをループ状として、その内径を縮径させて、前記カバー部材を前記ピストンロッドの先端外周面に締め付ける締め具とからなるカバー締付部材を有する構成としたことを特徴とする請求項1記載のシリンダ保護カバー装置。
【請求項7】
前記ピストンロッドの先端部外周面に、円環状または円弧状の弾性板体からなる他のカバー端止着部材を巻着して、取付具によって前記カバー部材の他端を着脱可能に固定する構成としたことを特徴とする請求項1記載のシリンダ保護カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−163958(P2008−163958A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350727(P2006−350727)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】