説明

シルセスキオキサン化合物およびその製造方法並びに屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料

【課題】新規なシルセスキオキサン化合物およびその製造方法並びにこの化合物よりなる屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるシルセスキオキサン化合物は、光反応性を有する。


(式中、R1は−OSi(CH32−(CH23−O−CH2CH(OH)−CH2OR2を、R2は、例えばアントラセン−1−イルカルボニル基、4−フェニルアゾフェニル基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン化合物およびその製造方法、並びにこのシルセスキオキサン化合物よりなる屈折率変換材料および光−熱エネルギー変換蓄積材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルナジエン(以下、「NBD」ともいう。)は、紫外線の照射により、分極率の低いクワドリシクラン(以下、「QC」ともいう。)に光原子価異性化し、また、QCは、触媒との接触および短波長の光の照射により、放熱を伴ってNBDに異性化する特性を有することから、NBD構造を有する化合物は、光エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する光−熱エネルギー変換蓄積材料として注目されている。
また、NBD構造を有する化合物は、異性化したQC構造を有する化合物と異なる屈折率を有する、すなわち光の照射によって屈折率が変化する特性を有することから、例えば光記憶素子や光スイッチシステムに用いられる屈折率変換材料への応用が期待されている。
【0003】
このような光−熱エネルギー変換蓄積材料および屈折率変換材料においては、容易に成膜され得るものであることが肝要である。そして、従来、成膜化が可能なNBD構造を有する化合物として、NBD構造が導入された種々の重合体が提案されている。また、本発明者らによっても、フェノール性水酸基を数多く有し、熱安定性に優れたカリックスレゾルシンアレーン化合物に対してNBD構造が導入されたカリックスレゾルシンアレーン誘導体が提案されており、そのカリックスレゾルシンアレーン誘導体は光照射によって屈折率が大きく変化する特性を有するものであることが報告されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
また、カリックスレゾルシンアレーン化合物と同様の特性を有するものとしては、シルセスキオキサン化合物、具体的には、かご構造、ランダムに三次元架橋したゲル構造あるいははしご型構造を有するポリシロキサンが挙げられる。
そして、最近において、NBD構造などの光反応性基が導入された、はしご型構造を有するシルセスキオキサン重合体が提案されている(特許文献3参照。)が、かご型構造のポリシロキサンに光反応性基が導入されたものは知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−306470号公報
【特許文献2】特開2004−262822号公報
【特許文献3】特開2006−257321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を背景として、かご型構造のシルセスキオキサン化合物について種々の研究を行った結果として得られたものである。
本発明の第1の目的は、光反応性基を有する新規なシルセスキオキサン化合物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記のシルセスキオキサン化合物よりなる屈折率変換材料を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記のシルセスキオキサン化合物よりなる光−熱エネルギー変換蓄積材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシルセスキオキサン化合物は、下記式(1)で表されるものである。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1 は、下記式(a)で表される基を示す。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R2 は、下記式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される基を示す。〕
【0012】
【化3】

【0013】
〔式(ホ)において、R3 は、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはt−ブチル基を示す。式(ト)において、R4 は、メチル基またはジメチルアミノ基を示す。〕
【0014】
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造方法は、下記式(2)で表されるシルセスキオキサン化合物および下記式(3)で表される化合物を反応させることにより、上記のシルセスキオキサン化合物を得ることを特徴とする。
【0015】
【化4】

【0016】
〔式中、Rは、下記式(b)で表される基を示す。〕
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
〔式中、R2 は、上記式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される基を示す。〕
【0020】
本発明の屈折率変換材料は、上記のシルセスキオキサン化合物よりなることを特徴とする。
【0021】
本発明の光−熱エネルギー変換蓄積材料は、上記のシルセスキオキサン化合物よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシルセスキオキサン化合物は、光照射によって屈折率が変化し、かつ、屈折率の変化量が大きいものである。
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造方法によれば、上記のシルセスキオキサン重合体を有利に製造することができる。
そして、本発明のシルセスキオキサン化合物は、屈折率変換材料または光−熱エネルギー変換蓄積材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のシルセスキオキサン化合物は、上記式(1)で表される化合物(以下、「特定のシルセスキオキサン化合物」ともいう。)である。
この特定のシルセスキオキサン化合物を示す式(1)において、R1 は、上記式(a)で表される基であり、この式(a)において、R2 は、上記式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される光反応性基である。
【0024】
このような特定のシルセスキオキサン化合物は、上記式(2)で表されるシルセスキオキサン化合物(以下、「原料化合物(2)」という。)と、上記式(3)で表される化合物(以下、「原料化合物(3)」という。)とを反応させることにより得ることができる。
ここで、原料化合物(3)の構造を示す式(3)において、R2 は、上記式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される光反応性基である。
【0025】
原料化合物(2)と、原料化合物(3)との使用割合は、原料化合物(2)中の式(b)で表される基1molに対して原料化合物(3)が2〜10molであることが好ましい。
【0026】
原料化合物(2)と原料化合物(3)との反応は、触媒の存在下、適宜の溶媒中において行うことができる。
ここで、触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドなどを用いることができる。また、触媒の使用割合は、反応に供する原料化合物(2)および原料化合物(3)に対して2〜10mol%であることが好ましい。
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。
反応条件としては、例えば反応温度が40〜80℃、反応時間が24〜72時間である。
【0027】
以上のような本発明に係る特定のシルセスキオキサン化合物は、光反応性基を有するため、後述する実施例から明らかなように、特定の光、例えば紫外線を受けることによって屈折率が変化する特性を有し、かつ、屈折率の変化量が大きいものである。また、本発明に係る特定のシルセスキオキサン化合物は、光エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する特性を有し、かつ、蓄熱量が大きいものである。従って、本発明に係る特定のシルセスキオキサン化合物は、光記憶素子や光スイッチシステムなどに用いられる屈折率変換材料として極めて有用であり、また、光−熱エネルギー変換蓄積材料としても極めて有用である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〈実施例1〉
20mL二口ナスフラスコに、オクタ[(3−プロピル−グリシジルエーテル)ジメチルシロキシル]シルセスキオキサン(以下、「POSS」ともいう。)0.1g(0.05mmol)、3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−2−カルボン酸(以下、「PNC」ともいう。)0.5276g(2.5mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびテトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」ともいう。)0.0774g(PNCに対して10mol%)に入れ、更にN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、無色の粘性液体0.1207g(収率63%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−1)で表されるシルセスキオキサン化合物であることが確認された。また、NBD残基の導入率は94%であった。
【0030】
【化7】

【0031】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図1に、IRスペクトル図を図2に示す。
○IR( film,cm-1):
3461(νO−H),
1697(νC=O of easter),
1252(νSi−O),
1252(νSi−C),
1101(νC−O−C ester)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.44(s,2H,Hb),
1.51(s,2H,Hc),
1.94〜2.14(d,2H,Hh),
3.15〜3.22(m,4H,He,d),
3.69,3.94(d,2H,Hi),
3.77(s,2H,Hf),
3.96〜4.00(q,1H,Hg),
6.77,6.86(d,2H,Hj),
7.17〜7.32(m,5H,Hk)
【0032】
〈実施例2〉
20mL二口ナスフラスコに、POSS0.1g(0.05mmol)、p−メトキシ−ケイ皮酸0.4276g(2.4mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびTBAB0.0774g(p−メトキシ−ケイ皮酸に対して10mol%)に入れ、更にNMP5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、無色の粘性液体0.0974g(収率58%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−2)で表されるシルセスキオキサン化合物であることが確認された。また、p−メトキシ−ケイ皮酸残基の導入率は93%であった。
【0033】
【化8】

【0034】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図3に、IRスペクトル図を図4に示す。
○IR( film,cm-1):
3429(νO−H),
1709(νC=O of easter),
1254(νSi−C),
1172(νC−O−C ester)
1089(νSi−C)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.45(s,2H,Hb),
1.53(s,2H,Hc),
3.31,3.40(d,4H,He,d),
3.67(d,2H,Hk),
3.95(s,2H,Hf),
4.09,4.13(d,1H,Hg),
6.16,6.19(d,1H,Hh),
6.72,7.30(s,s,4H,Hj),
7.49,7.52(d,1H,Hi)
【0035】
〈実施例3〉
20mL二口ナスフラスコに、POSS0.1g(0.05mmol)、p−ジメチルアミノ−ケイ皮酸0.4588g(2.5mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびTBAB0.0774g(p−ジメチルアミノ−ケイ皮酸に対して10mol%)に入れ、更にNMP5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、淡黄色の粘性液体0.0916g(収率50%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−3)で表されるシルセスキオキサン化合物であることが確認された。また、p−ジメチルアミノ−ケイ皮酸残基の導入率は95%であった。
【0036】
【化9】

【0037】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図5に、IRスペクトル図を図6に示す。
○IR( film,cm-1):
3435(νO−H),
1702(νC=O of easter),
1254(νSi−C),
1161(νC−O−C ester)
1086(νSi−C)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.54(s,2H,Hb),
1.59(s,2H,Hc),
2.94(s,3H,Hk),
3.42,3.49(d,4H,He,d),
4.02(s,2H,Hf),
4.17,4.22(d,1H,Hg),
6.18,6.21(d,1H,Hh),
6.59,7.35(d,4H,Hj),
7.56,7.59(d,1H,Hi)
【0038】
〈実施例4〉
20mL二口ナスフラスコに、POSS0.1g(0.05mmol)、1−アントラセンカルボン酸0.5334g(2.4mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびTBAB0.0774g(1−アントラセンカルボン酸に対して10mol%)に入れ、更にNMP5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、黄色の粘性液体0.1246g(収率69%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−4)で表されるシルセスキオキサン化合物であることが確認された。また、1−アントラセンカルボン酸の導入率は88%であった。
【0039】
【化10】

【0040】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図7に、IRスペクトル図を図8に示す。
○IR( film,cm-1):
3419(νO−H),
1713(νC=O of easter),
1541(νC=C of anthracene) 1258(νSi−C),
1157(νC−O−C ester)
1090(νSi−C)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.45(s,2H,Hb),
1.54(s,2H,Hc),
3.33,3.45(d,4H,He,d),
4.10(s,2H,Hf),
4.33(s,1H,Hg),
7.15〜9.39(m,9H,Hh),
【0041】
〈実施例5〉
50mL二口ナスフラスコに、POSS0.1g(0.05mmol)、9−アントラセンカルボン酸0.5334g(2.4mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびTBAB0.0774g(9−アントラセンカルボン酸に対して10mol%)に入れ、更にNMP5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、黄色の粘性液体0.1170g(収率67%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−5)で表されるシルセスキオキサン化合物であることが確認された。また、9−アントラセンカルボン酸の導入率は80%であった。
【0042】
【化11】

【0043】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図9に、IRスペクトル図を図10に示す。
○IR( film,cm-1):
3413(νO−H),
1721(νC=O of easter),
1202(νC−O−C ester)
1253(νSi−C),
1089(νSi−C)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.44(s,2H,Hb),
1.50(s,2H,Hc),
3.31,3.43(d,4H,He,d),
4.08(s,2H,Hf),
4.47(s,1H,Hg),
7.37〜8.35(m,9H,Hh),
【0044】
〈実施例6〉
20mL二口ナスフラスコに、POSS0.1g(0.05mmol)、p−フェニル−アゾフェノール0.4757g(2.4mmol,POSSのエポキシ基に対して6.0e.q.)、およびTBAB0.0774g(p−フェニル−アゾフェノールに対して10mol%)に入れ、更にNMP5mLを加えてこれらを溶解し、温度60℃で48時間攪拌することにより反応させた。反応が終了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、重曹水で4回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を減圧留去し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてn−ヘキサン:エーテルの混合溶媒を用いて2回単離精製を行うことにより、茶褐色の粘性液体0.1153g(収率66%)を得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(1−6)で表される化合物であることが確認された。また、p−フェニル−アゾフェノールの導入率は66%であった。
【0045】
【化12】

【0046】
生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示し、 1H−NMRスペクトル図を図11に、IRスペクトル図を図12に示す。
○IR( film,cm-1):
3395(νO−H),
1600,1509(νC=C of aromatic),
1253(νSi−C),
1202(νC−O−C ester)
1089(νSi−C)
1H NMR(500MHz,CDCl3 )δ(ppm):
0.00(s,6H,Ha),
0.58(s,2H,Hb),
1.65(s,2H,Hc),
3.46,3.56(d,4H,He,d),
4.04(s,2H,Hf),
4.17(s,1H,Hg),
6.95〜7.83(m,9H,Hh),
【0047】
〔シルセスキオキサン化合物の光反応特性〕
実施例1および実施例2に係るシルセスキオキサン化合物に対して、キセノンランプを用い、1.8〜2.0mW/cm2 (313nm)の条件で、光照射時間を変えながら光照射処理を行うと共に、紫外分光光度計により、シルセスキオキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を測定した。結果を図13および図14に示す。
図13の結果から、実施例1に係るシルセスキオキサン化合物においては、NBD構造に起因する最大吸収波長293nmの紫外線の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、波長240nmおよび250nmに等吸収点が確認されたことにより、NBD構造からQC構造への光異性化反応は、副反応が生ずることなしに進行していることが理解される。また、光異性化反応は、光照射時間が約3分間で完了することが確認された。
また、図14の結果から、実施例2に係るシルセスキオキサン化合物においては、ケイ皮酸残基に起因する最大吸収波長312.2nmの紫外線の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、波長244.2nmおよび365.7nmに等吸収点が確認されたことにより、光異性化反応は、副反応が生ずることなしに進行していることが理解される。
【0048】
また、実施例1に係るシルセスキオキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした結果を図15に示す。また、異性化反応率より一次速度定数を算出したことろ、3.03×10-2-1であった。ここで、異性化反応率は、最大吸収波長における吸光度の変化から求めた。
また、実施例1に係るシルセスキオキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットし、異性化反応率より一次速度定数を算出したことろ、73.2×10-2-1であった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図2】実施例1に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図3】実施例2に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図4】実施例2に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図5】実施例3に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図6】実施例3に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図7】実施例4に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図8】実施例4に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図9】実施例5に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図10】実施例5に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図11】実施例6に係る特定のシルセスキオキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図12】実施例6に係る特定のシルセスキオキサン化合物におけるIRスペクトル図である。
【図13】実施例1に係る特定のシルセスキオキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図14】実施例2に係る特定のシルセスキオキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図15】実施例1に係る特定のシルセスキオキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるシルセスキオキサン化合物。
【化1】

〔式中、R1 は、下記式(a)で表される基を示す。〕
【化2】

〔式中、R2 は、下記式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される基を示す。〕
【化3】

〔式(ホ)において、R3 は、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはt−ブチル基を示す。式(ト)において、R4 は、メチル基またはジメチルアミノ基を示す。〕
【請求項2】
下記式(2)で表されるシルセスキオキサン化合物および下記式(3)で表される化合物を反応させることにより、請求項1に記載のシルセスキオキサン化合物を得ることを特徴とするシルセスキオキサン化合物の製造方法。
【化4】

〔式中、Rは、下記式(b)で表される基を示す。〕
【化5】

【化6】

〔式中、R2 は、請求項1に記載の式(イ)〜式(ト)のいずれかで表される基を示す。〕
【請求項3】
請求項1に記載のシルセスキオキサン化合物よりなることを特徴とする屈折率変換材料。
【請求項4】
請求項1に記載のシルセスキオキサン化合物よりなることを特徴とする光−熱エネルギー変換蓄積材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−249326(P2009−249326A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98205(P2008−98205)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】