説明

シロアリ防除粒状材およびシロアリ侵入防止層

【課題】 優れたシロアリ防除効果を奏することができるとともに、材料コストが安く経済的である、シロアリ防除粒状材およびシロアリ侵入防止層を提供する。
【解決手段】 シロアリ防除粒状材10は、破砕石粉を主要材料としているので、比重が大きく、吸水率が小さい。したがって、シロアリがシロアリ防除粒状材10を持ち上げることは容易ではなく、湿気を好むシロアリがシロアリ防除粒状材10に好んで寄り付くことはない。また、シロアリ防除粒状材10は、3.35mmより小さい粒径を有する球状の石粉造粒材であるので、粒子間にシロアリの通る隙間が生じることはない。さらに、シロアリ防除粒状材10は、2.00mmより大きい粒径を有する球状の石粉造粒材であるので、シロアリが顎で掴んでこれを除去することは、滑り易くかつ大きいために容易ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物へのシロアリの侵入を防止する、シロアリ防除粒状材およびシロアリ侵入防止層に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物へのシロアリの侵入を防止する方法として、従来では、「床下土壌へ化学薬剤を散布する方法」や「建築部材へ化学薬剤を注入または塗布する方法」が採用されていたが、これらの方法では、シックハウス症候群のように化学薬剤の人体や環境へ与える影響が問題視されていた。また、「木造建築物の基礎全体をコンクリートからなる物理的な障壁で覆う方法」も考えられていたが、この方法では、コンクリートの経時的な劣化によって障壁にひび割れが生じるため、シロアリ防除機能を長期に亘って維持することができないという問題があった。
【0003】
そこで本願出願人は、先の出願において、「木造建築物の基礎内外の地面に汚泥固化材の破砕粒状材やガラス質の硬質球体粒状材でシロアリ侵入防止層を構成する方法」を提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3531804号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先の出願に係る方法(特許文献1)では、化学薬剤を使用しないので、人体や環境に無害であり、しかも、粒状材からなるシロアリ侵入防止層にはコンクリート障壁のようにひび割れが生じないので、シロアリ防除機能を長期に亘って維持することができる。しかし、この方法では、シロアリ侵入防止層を構成する粒状材の種類が具体的に特定されているので、材料の入手が困難な場合があり、技術の豊富化やシロアリ防除機能のさらなる向上等の観点から他の材料を見出すことが課題となっていた。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる解決課題は、人体や環境に無害であり、より有効なシロアリ防除機能を長期に亘って維持することができる、シロアリ防除粒状材およびシロアリ侵入防止層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「木造建築物12の基礎14内外の地面16に敷設されるシロアリ侵入防止層18を構成する、シロアリ防除粒状材10であって、破砕石粉を主要材料とする粒径2.00mm〜3.35mmで球状の石粉造粒材からなる、シロアリ防除粒状材10」である。
【0007】
シロアリ防除粒状材10は、3.35mmより小さい粒径を有する球状の石粉造粒材であるため、シロアリ侵入防止層18を構成する際には、密に積層することが可能であり、粒子間にシロアリ22の通る隙間が生じるのを防止できる。また、シロアリ防除粒状材10は、2.00mmより大きい粒径を有する球状の石粉造粒材であるため、シロアリ22が顎で掴んでこれを除去することは、滑り易くかつ大きいために容易ではなく、また、比重も大きいためにシロアリ22がシロアリ防除粒状材10を持ち上げることも容易ではない。さらに、湿気を好むシロアリ22が、吸水率の小さいシロアリ防除粒状材10に好んで寄り付くことはない。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「シロアリ防除粒状材」において、「破砕石粉とセメントと水とを混練した後に乾燥させることによって得られる」ことを特徴とする。
【0009】
この発明は、請求項1に記載した発明を製造方法によって具体的に特定したものである。
【0010】
請求項3に記載した発明は、「木造建築物12の基礎14内外の地面16に請求項1または2に記載のシロアリ防除粒状材10を所定の厚さで敷設することによって構成された、シロアリ侵入防止層18」である。
【0011】
この発明は、請求項1または2のシロアリ防除粒状材10を利用したものであり、シロアリ防除粒状材10の層が障壁となってシロアリ22の侵入を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載した発明によれば、化学薬剤を用いていないので、人体や環境に無害であり、しかも、コンクリート障壁のようにひび割れが生じないので、シロアリ防除機能を長期に亘って維持することができる。また、シロアリ防除粒状材をシロアリが顎で掴んで除去することは、「粒径が2.00mm以上で掴みにくい」、「比重が大きい」、「球状で滑り易い」等の理由で困難である。さらに、シロアリ防除粒状材間の隙間からシロアリが侵入することは、「球状で密に積層されている」、「粒径が3.35mm以下で隙間が生じにくい」等の理由で困難である。したがって、これらの機能が相俟って、優れたシロアリ防除効果を奏することができる。さらに、骨材プラント、砕石場、建設現場または土木工事現場等において生じる安価な破砕石粉を利用しているので、材料コストを安く抑えることができる。
【0013】
また、石粉は現在、供給過剰で処理に困っている状況にあるが、本発明では、その石粉を有効利用できるので、循環型社会の形成にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明が適用されたシロアリ防除粒状材10は、図1に示すように、木造建築物12における基礎14の内外の地面16に敷設されるシロアリ侵入防止層18を構成するものであり、破砕石粉とセメントと水とを所定割合で混練した後に乾燥させて得られた球状の石粉造粒材である。そして、このシロアリ防除粒状材10は、以下の「造粒工程」、「乾燥・養生工程」および「選別工程」を経て製造される。
【0015】
「造粒工程」では、破砕石粉とセメントと水とが所定の割合で混練されることによって、球状の石粉造粒材が形成される。破砕石粉は、骨材プラント、砕石場、建設現場または土木工事現場等において安価に入手可能な石の微粉末であり、この破砕石粉がシロアリ防除粒状材10の主要材料となる。
【0016】
「造粒工程」では、大量の石粉造粒材を低コストかつ短時間で製造するために、既製の混練造粒機が用いられる。このような混練造粒機としては、様々な種類のものを使用可能であるが、発明者等の実験によれば、「株式会社北川鉄工所」の混練造粒機「ペレガイア(登録商標)」を使用した場合に、球に近い石粉造粒材を低コストかつ短時間で製造できることが確認されている。
【0017】
「ペレガイア(登録商標)」を用いて製造されたシロアリ防除粒状材10の形状を画像処理によって計測したところ、表1および2のグラフを得ることができた。表1のグラフは、試料100個に対する「アスペクト比(最大長/最大幅)」の分布を示したものであり、表2のグラフは、試料100個に対する「内外長/楕円内外長」の分布を示したものであり、形状が球に近いほど、「アスペクト比(最大長/最大幅)」および「内外長/楕円内外長」は共に「1」に近づくことになる。
【0018】
なお、表1および2における「本発明」とは、破砕石粉を利用したシロアリ防除粒状材10(粒径:1.70mm〜2.00mm)をいい、「従来技術」とは、汚泥固化材の破砕粒状材を利用したシロアリ防除粒状材(粒径:1.70mm〜2.00mm)をいうものとする。
【0019】
【表1】



【0020】
【表2】

【0021】
表1および2より、シロアリ防除粒状材10の形状は、従来技術(汚泥固化材の破砕粒状材を利用したシロアリ防除粒状材)よりも球に近いことが分かる。したがって、本発明に係るシロアリ防除粒状材10の方が、シロアリ侵入防止層18を構成したときの粒子間の隙間が小さくなり、また、シロアリが顎で掴みにくく、仮に掴めたとしても滑り易いため、シロアリ防除効果に優れているといえる。つまり、従来技術の形状も球に近いといえるが、本発明に係るシロアリ防除粒状材10の形状の方がより球に近く、シロアリ防除効果により優れているといえる。
【0022】
また、「造粒工程」では、破砕石粉とセメントとの混合割合が重要であり、シロアリ防除機能を高めるためには、破砕石粉の割合を多くして表面の平滑性を高める必要があり、材料コストを安く抑えるためには、高価なセメントの量を減らして安価な破砕石粉の割合を多くする必要がある。しかし、セメントの量を減らし過ぎたのでは、球形状を保持するのに必要な強度を確保できなくなる。したがって、破砕石粉とセメントとの混合割合は、シロアリ防除機能と強度とを確保しながら、材料コストを安く抑える観点から定められ、この実施例では、破砕石粉の重量を100としたとき、セメントの重量が5〜15%に設定される。
【0023】
「乾燥・養生工程」では、石粉造粒材が熱風等で乾燥された後に養生され、「選別工程」では、石粉造粒材が篩にかけられ、粒径2.00mm〜3.35mmのものが選別される。選別された粒径2.00mm〜3.35mmのものが本発明に係るシロアリ防除粒状材10である。
【0024】
シロアリ防除粒状材10の粒径を2.00mm〜3.35mmに設定したのは、2.00mmより小さい場合には、シロアリが顎で掴むことが可能なため、シロアリによって簡単に除去されてしまうからであり、3.35mmより大きい場合には、シロアリ侵入防止層18を構成したときのシロアリ防除粒状材10間の隙間が大きくなるため、この隙間を通ってシロアリが侵入してしまうからである。なお、粒径が2.00mm〜3.35mmのものがシロアリ防除効果に優れることは、後述する実験により確認されている(表4)。
【0025】
このようにして製造されたシロアリ防除粒状材10の比重および含水率は、表3の通りである。なお、表3に示した比重および吸水率は、JIS A 1109-1993の試験法により求めたものである。
【0026】
【表3】

【0027】
表3より、破砕石粉を利用したシロアリ防除粒状材10の比重は、汚泥固化材の破砕粒状材を利用した従来のシロアリ防除粒状材の比重よりも大きいことが分かる。このことから、本発明に係るシロアリ防除粒状材10の方が、シロアリが顎で掴んで除去するのが困難であり、シロアリ防除効果により優れているといえる。
【0028】
また、表3より、破砕石粉を利用したシロアリ防除粒状材10の吸水率は、汚泥固化材の破砕粒状材を利用した従来のシロアリ防除粒状材の吸水率よりも小さいことが分かる。このことから、本発明に係るシロアリ防除粒状材10の方がシロアリを忌避する効果により優れているといえる。つまり、シロアリは湿気を好むため、吸水率の小さいシロアリ防除粒状材10に好んで寄り付くことはなく、その結果としてシロアリを有効に防除できる。
【0029】
シロアリ侵入防止層18を構成する際には、図1に示すように、基礎14の内外の地面16にシロアリ防除粒状材10が所定の厚さで敷設される。シロアリ侵入防止層18においては、球状のシロアリ防除粒状材10を密に積層することができるので、シロアリ防除粒状材10の粒径が3.35mm以下と小さいことと相俟って、シロアリ防除粒状材10間に隙間が生じるのを防止でき、シロアリがシロアリ侵入防止層18を貫通して木造建築物12へ侵入するのを防止できる。なお、シロアリ侵入防止層18の厚さは、特に限定されるものではないが、あまりに薄いと、厚さが不均一である場合に薄くなった部分からシロアリが貫通するおそれがあるため、後述する実験の結果をも踏まえて、40mm以上とすることが望ましい。また、シロアリ侵入防止層18の厚さが厚過ぎると、シロアリ防除粒状材10の無駄が多くなるため、効果およびコストの両面から見て、100mm以下とすることが望ましい。
【0030】
発明者等は、実験により本発明の効果を検証した。以下には、その実験の方法および結果について説明する。
[実験]
1.実験方法 図2に示すような装置20を準備し、装置20内に形成されたシロアリ侵入防止層18をシロアリ22が貫通できたか否かを調べた。
【0031】
装置20は、内径が20mmで長さが200mmの円筒状のアクリルパイプ24を備えており、アクリルパイプ24の長さ方向中央部には、厚さが40mmのシロアリ侵入防止層18が構成されている。そして、シロアリ侵入防止層18の上面には、厚さが10mmの寒天層26が形成されており、シロアリ侵入防止層18の下面には、厚さが30mmの寒天層28が形成されている。さらに、上側の寒天層26の上方には、長さが70mmの空間30が確保されており、下側の寒天層28の下方には、長さが50mmの空間32が確保されており、これらの空間30および32には、マツ材片34が配置されている。なお、寒天層26および28は、シロアリ侵入防止層18を支持するとともに、シロアリ22に水分を補給する機能を有している。
【0032】
実験では、シロアリ侵入防止層18を構成するシロアリ防除粒状材10の粒径を9種類(表4)に分類し、各粒径ごとに3個の装置20を準備した。そして、各装置20の下側の空間32にイエシロアリ22(職シロアリ100頭、兵シロアリ10頭)を投入し、アクリルパイプ24の両端をアルミホイル36で閉塞し、この装置20を恒温恒湿器(28℃、相対湿度75%、KCH-1000、東京理科器械(株))内に垂直に設置した。
【0033】
この状態で、シロアリ22がシロアリ侵入防止層18を貫通する状況をCCDカメラで観察し、その状況を記録した。すなわち、装置20の設置から3週間後までの1日ごとに、シロアリ22がシロアリ侵入防止層18に侵入する深さを計測し、40mmのシロアリ侵入防止層18をシロアリが1頭でも貫通した場合には、貫通に要した日数を記録した。
【0034】
2.実験結果 実験結果は、表4の通りである。なお、表中の括弧内には、貫通に要した日数を記載している。
【0035】
【表4】

【0036】
表4より、シロアリ防除粒状材10の粒径が2.00mm〜3.35mmの試験体については、シロアリ22が貫通することがなく、その他の粒径については、3個の容器20の全てにおいてシロアリ22が貫通していることが分かる。このことから、粒径が2.00mm〜3.35mmのときのシロアリ防除効果が際立っているということができ、本発明に係るシロアリ防除粒状材10において、粒径を2.00mm〜3.35mmに設定したことの根拠を理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】シロアリ防除粒状材およびシロアリ侵入防止層の使用状態を示す断面図
【図2】効果の検証実験に用いた装置を示す斜視図
【符号の説明】
【0038】
10… シロアリ防除粒状材
12… 木造建築物
14… 基礎
16… 地面
18… シロアリ侵入防止層
20… 装置
22… シロアリ
24… アクリルパイプ
26,28… 寒天層
30,32… 空間
34… マツ材片
36… アルミホイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の基礎内外の地面に敷設されるシロアリ侵入防止層を構成する、シロアリ防除粒状材であって、
破砕石粉を主要材料とする粒径2.00mm〜3.35mmで球状の石粉造粒材からなる、シロアリ防除粒状材。
【請求項2】
破砕石粉とセメントと水とを混練した後に乾燥させることによって得られる、請求項1に記載のシロアリ防除粒状材。
【請求項3】
木造建築物の基礎内外の地面に請求項1または2に記載のシロアリ防除粒状材を所定の厚さで敷設することによって構成された、シロアリ侵入防止層。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−262791(P2006−262791A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86147(P2005−86147)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】