説明

シロキサン系コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料

【課題】保存安定性、硬度、耐汚染性に優れたシロキサン系コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】、シリカ系微粒子を膜全量に対して、30重量%以上含有する、膜厚0.001〜0.5μmで基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜であって、該コーティング膜面1(μm)当りに存在する非コーティング領域の割合が、5%以下であることを特徴とするシロキサン系コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、光学レンズ、ディスプレイ等に用いられる透明コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止膜は、レンズなどの光学部品や、コンピュータディスプレイなどの画像表示装置において、太陽光や蛍光灯など外部光源の写り込みを低減し、視認性を向上させるために用いられ、可視光の反射が少ないことが求められる。反射防止の技術としては、基材の表面を屈折率の小さい透明皮膜で被覆することにより反射率が小さくなることが知られている(特許文献1参照)。さらに、基材に高屈折率層を形成し、その上に低屈折率層を形成することで、より効果的に反射を防止することができる。また、離型性を有するベースフィルム面上に、高屈折率層としての金属酸化物含有層と、その上に、低屈折率層としてのシロキサン系樹脂層を有する反射防止制電板用転写材が知られている(特許文献2参照)。これら、低屈折率層を形成するための低屈折率材料としては、無機材料の場合、MgF(屈折率1.38)、SiO(屈折率1.47)等があり、また、有機材料の場合、パーフルオロ樹脂(屈折率1.34〜1.40)、シロキサン樹脂(屈折率1.40〜1.45)等がある。通常、MgFは真空蒸着、スパッタ法等の気相法で、SiOはMgFと同様の気相法及びゾルゲル法による液相法で、また、パーフルオロ樹脂、シロキサン樹脂は液相法で形成されている。
【0003】
他方、さらに低屈折率化する試みも検討されている。例えば、パーフルオロ樹脂よりも低い屈折率を有する、内部に空洞を有するシリカ系微粒子をマトリックス材料である有機材料中に分散させて得られるコーティング材組成物を塗布して乾燥、硬化することによって低屈折率の透明被膜を形成する技術が知られている(特許文献3参照)。すなわち、微粒子に外殻に包囲された空洞を形成することで微粒子自体の屈折率を小さくし、それを有機材料に分散させたものである。マトリックス材料としては、アクリル樹脂、パーフルオロ樹脂、シロキサン樹脂等が用いられるが、内部に空洞を有するシリカ系微粒子の低屈折率化の効果をより引き出すためには、該シリカ系微粒子を多く導入することが試みられている(特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、該シリカ系微粒子の導入量を多くしすぎると、得られる低屈折率の透明被膜は、屈折率はより低下するが、シリカ系微粒子をマトリックス材料が十分覆いきれず、透明被膜の膜面に多くの非コーティング領域が発生し、硬度と耐汚染性が低下すると言う問題があった。
【0005】
それ故、多くのシリカ系微粒子を導入しても、マトリックス材料がシリカ系微粒子を十分覆い、透明被膜の膜面の非コーティング領域の発生を少なくすることが可能な方法が求められていた。
【特許文献1】特開2002−122704号公報(第1−4頁)
【特許文献2】特開2000−338306号公報(第2−3頁)
【特許文献3】特開2001−233611号公報(第7−11頁)
【特許文献4】特開2002−79616号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、多くのシリカ系微粒子を導入しても、低屈折率でかつ、硬度と耐汚染性が良好な、低屈折率の透明コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、シリカ系微粒子を膜全量に対して、30重量%〜80重量%含有する、膜厚0.001〜0.5μmで基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜であって、該コーティング膜面1(μm)当りに存在する非コーティング領域の割合が、5%以下であることを特徴とするシロキサン系コーティング膜および、そのコーティング膜形成用塗料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多くのシリカ系微粒子を導入しても、マトリックス材料がシリカ系微粒子を十分覆っていることにより、透明被膜の膜面の非コーティング領域の発生が少なくなり、硬度と耐汚染性に優れた、低屈折率透明コーティング膜を得ることができ、得られた透明コーティング膜は、特に、反射防止機能を求める用途に使われる低屈折率層で好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0010】
本発明では、シリカ系微粒子を膜全量に対して、30重量%以上含有することによって、粒子間に空隙を発生させ、これを利用してコーティング膜が低屈折率化する。しかし、一般に粒子の含有量が多くなると、基材上に形成されたシリカ系微粒子含有シロキサン系コーティング膜面では、シロキサン系マトリックスがシリカ系微粒子を覆いきれない部分が発生し、それゆえ、シロキサン系コーティング膜に、非コーティング領域が生じる。
【0011】
非コーティング領域の割合は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、該シロキサン系コーティング膜の表面を分析することによって、容易に決定することができる。測定条件を以下に示す。
【0012】
モード:タッピングモード
測定領域:1μm角
プローブのカンチレバー長:125μm
共振周波数:260〜410kHz
低屈折率と、硬度及び耐汚染性を満足するためには、上記非コーティング領域の割合は、膜面1(μm)当り、5%以下が好ましく、特に好ましくは3%以下である。これを満足するためには、例えば、シロキサン系コーティング膜は、以下に示す、(a)〜(f)を含有する塗料を100℃〜180℃の熱処理により硬化させることによって得ることが出来るが、該非コーティング領域の割合が、5%以下であれば、この塗料に限定されるものではない。
【0013】
(a)一般式(1)および、一般式(2)〜(4)から選ばれる1種以上のシラン化合物を、酸触媒により、加水分解し、縮合させずに得られたシラノール化合物
(b)一般式(1)および、一般式(2)〜(4)から選ばれる1種以上のシラン化合物を、酸触媒により、一旦加水分解した後、縮合させることによって得られたフッ素含有シロキサンポリマー
(c)平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子
(d)アルミニウム系及び/または、マグネシウム系硬化剤
(e)大気圧下沸点100〜180℃の溶剤
(f)大気圧下沸点100℃未満の溶剤
Si(OR´) (1)
(ただし、Rはフッ素が3から17のフルオロアルキル基を表わす。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (2)
(ただし、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、およびそれらの置換体を表わす。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (3)
(ただし、R、Rは水素、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アルケニル基、およびそれらの置換体を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (4)
(ただし、R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
本発明で用いられる(a)成分のシラノール化合物は、上記一般式(1)〜(4)で表されるシラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応を利用して得ることができる。また、本発明で用いられる(b)成分のフッ素含有シロキサンポリマーは、(a)成分形成と同様の方法にて、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。(a)成分と(b)成分を形成するのに用いられるシラン化合物は、同一でも、異なっていても良い。
【0014】
ここでいう一般式(1)〜(4)で表されるシラン化合物の具体例を、以下に示すことが出来る。
【0015】
一般式(1)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られたシロキサン系コーティング膜の硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが好ましい。1分子当り、フッ素原子が、3個を超えると、得られたシロキサン系コーティング膜の硬度が低下する。
【0016】
一般式(2)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られたシロキサン系コーティング膜の硬度の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好ましい。Rが炭素数6を超えると得られたシロキサン系コーティング膜の硬度が低下する。
【0017】
一般式(3)で表される2官能性シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0018】
一般式(4)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などが挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる(a)のシラノール化合物中の、一般式(1)で表されるフッ素含有の3官能性シラン化合物由来の含有量は、(a)成分の合成時に使用される全シラン化合物含量に対して、好ましくは、20重量%〜80重量%、特に好ましくは、30重量%〜60重量%である。20重量%を下回ると、低屈折率化に問題がでることがある。一方、80重量%を越えると硬化が不十分となり、膜の硬度が低下する。
【0020】
本発明で用いられる(b)成分を構成する一般式(1)で表されるフッ素含有の3官能性シラン化合物の含量は、(b)のフッ素含有シロキサンポリマー合成時に使用される全シラン化合物に対して、好ましくは20重量%〜80重量%、特に好ましくは、30重量%〜60重量%である。20重量%を下回ると、低屈折率化に問題がでることがある。一方、80重%を越えると硬化が不十分となり、膜の硬度が低下する。
【0021】
(a)のシラノール化合物は、硬化すると、膜の硬度を向上させる作用がある。一方、(b)のフッ素含有シロキサンポリマーは、透明被膜を作成すると、膜の表面に移動する作用を持ち、耐汚染性に寄与する反面、添加量が多くなると透明被膜全体の硬度を低下させる作用を持つ。それ故、本発明の低屈折率と硬度及び、耐汚染性を達成するためには、マトリックス材料を形成する(a)のシラノール化合物と、(b)のフッ素含有シロキサンポリマーの混合比が重要となる。
【0022】
本発明の低屈折率と硬度及び、耐汚染性を達成するためには、(a)のシラノール化合物と(b)のフッ素含有シロキサンポリマーの合計量に対して、(b)成分が、好ましくは、0.05重量%〜8重量%、特に好ましくは、0.1重量%〜5重量%である。0.05重量%を下回ると、膜の表面に移動する(b)のフッ素含有シロキサンポリマー量が不十分となり、耐汚染性が不良となる。一方、8重量%を越えると、膜の表面に移動する(b)のフッ素含有シロキサンポリマー量が多くなり、耐汚染性は良好になるが、透明被膜全体の硬度を低下する場合があり好ましくない。
【0023】
また、これら(a)、(b)成分を得るための加水分解反応は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、上記(1)〜(4)のシラン化合物を、溶剤中、酸触媒及び、水を添加して、室温〜55℃で行われる。
【0024】
これら加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に、透明被膜の硬度を向上する観点から、蟻酸、酢酸を触媒とすることが好ましい。
【0025】
好ましい添加量としては、(a)のシラノール化合物や(b)のフッ素含有シロキサンポリマーを合成するに使用する全シラン化合物に対して、好ましくは、0.05重量%〜10重量%、特に好ましくは、0.1重量%〜5重量%である。酸触媒の量が、0.05重量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがあり。また、10重量%を越えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
【0026】
加水分解反応に利用される溶剤は、有機溶剤が好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノチチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールアセテートなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。溶媒の量は任意に選択可能であるが、(a)成分または、(b)成分の合成時に使用される全シラン化合物量に対して、好ましくは、50重量%〜500重量%の範囲で添加すること、特に好ましくは、80重量%〜200重量%の範囲で添加することである。50重量%を下回ると、反応が暴走し、ゲル化する場合がある。一方、500重量%を越えると、加水分解が進行しない場合がある。
【0027】
また、加水分解に用いられる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いるのが好ましい。
【0028】
本発明の(b)成分のフッ素含有シロキサンポリマーを得るための縮合反応の条件としては、加水分解し、シラノール化合物を得た後、そのまま、反応液を、還流下で1〜100時間行うのが好ましい。そのほかシロキサンポリマーの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行うことも可能である。
【0029】
本発明で用いられる(c)成分のシリカ系微粒子は、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、膜厚との関係から、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。また、本発明で用いられる(c)成分のシリカ系微粒子には、内部に空洞を有しないシリカ系微粒子と内部に空洞を有するシリカ系微粒子が挙げられる。これらシリカ系微粒子のうち、透明被膜の低屈折率化のためには、内部に空洞を有するシリカ系微粒子が好ましい。内部に空洞を有しないシリカ系微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.45〜1.50であるため、屈折率低下効果が少ない。一方、内部に空洞を有するシリカ系微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入による屈折率低下効果が大きい。
【0030】
本発明のシリカ系微粒子をシロキサン系コーティング膜中に導入すると、屈折率を、1.38以下にすることが出来るだけでなく、透明被膜の硬度を高めることができる。そのためには、シリカ系微粒子の導入量は、透明被膜を形成した場合の膜全量に対して、好ましくは、30重量%〜80重量%、特に好ましくは40重量%〜70重量%である。導入量が30重量%を下回ると、粒子間の空隙による屈折率低下効果が少なく、屈折率が、1.38以下とはならない。また、80重量%を越えると、コーティング膜中にアイランド現象が多数発生し、透明被膜の硬度が低下し、また、場所によって、屈折率が不均一になり好ましくない。
【0031】
本発明で使用される内部に空洞を有しないシリカ系微粒子とは、例えば、
粒子径12nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST、粒子径12nmのメチルイソブチルケトンを分散剤としたMIBK−ST、粒子径45nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST−L、粒子径100nmのイソプロパノールを分散剤としたIPA−ST−ZL(以上、商品名、日産化学工業(株)製)、粒子径12nmのγ−ブチルラクトンを分散剤としたオスカル101、粒子径60nmのγ−ブチルラクトンを分散剤としたオスカル105、粒子径120nmのジアセトンアルコールを分散剤としたオスカル106(以上、商品名、触媒化成工業(株)製)が挙げられる。
【0032】
本発明で使用される内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられる。これらのうち、透明被膜の硬度を考慮した場合、粒子自体の強度が高い多孔質のシリカ系微粒子が好ましい。該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であり、1.20〜1.35であるのがより好ましい。尚、該微粒子は、第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、屈折率は、特開2001−233611公報に開示されている方法によって測定できる。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、一般に市販されているものを挙げることができる。
【0033】
本発明で用いられる(d)成分のアルミニウム系および/またはマグネシウム系硬化剤としては、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得られる。
キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン;アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを用いることができる。
【0034】
金属基キレート化合物の具体的な例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)である。保存安定性、入手容易さを考慮すると、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が、特に好ましい。添加される金属キレート化合物の導入量は、(a)成分と(b)成分の合成時に利用される全シラン化合物量に対して、好ましくは0.1重量%〜10重量%であり、特に好ましくは、1重量%〜6重量%である。導入量が、0.1重量%を下回ると、硬化が不十分となり、透明被膜とした場合、硬度が低下する。一方、10重量%を越えると、硬化が十分となり、透明被膜の硬度は向上するが、屈折率の向上も見られ、好ましくない。
【0035】
本発明で用いられる(e)成分の大気圧下沸点100〜180℃の溶剤としては、具体的には、エチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。沸点が100℃を下回ると組成によっては、組成物塗布時、溶剤が揮発して塗布できない場合がある。また、180℃を越えると、透明被膜中に溶剤が残り、硬度が低下し、好ましくない場合がある。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。これらのうち、特に好ましい具体的な例としては、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール等である。好ましい添加量としては、(a)成分と(b)成分の全シラン化合物に対して、0.05重量%〜700重量%である。0.05重量%を下回ると、膜作成時硬化反応が進まず硬度が低下する。一方、700重量%を越えると、溶剤が膜中に残存し、透明被膜の硬度が低下する。
【0036】
本発明で用いられる(f)成分の、大気圧下沸点が100℃未満の低沸点溶剤を導入することによって、透明被膜作成時、有効に溶剤を揮発させ、膜硬度を向上させることができる。
【0037】
ここで言う100℃未満の低沸点溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、メチルエチルケトン等があげられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
本発明のシロキサン系コーティング膜形成用塗料に使用される全溶剤の含有量は、(a)成分と(b)成分の全シラン化合物に対して、1300重量%〜9900重量%の範囲で添加することが好ましく、特に好ましくは、1500重量%〜6000重量%の範囲である。1300重量%を下回る及び、9900重量%を越えると、所定の膜厚の透明被膜を形成することが困難となる。
【0038】
本発明に用いられるシロキサン系コーティング膜形成用塗料には、必要に応じて、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤、着色剤、ガラス質形成剤などを添加することができる。
【0039】
本発明のシロキサン系コーティング膜形成用塗料は、例えば、スピンナー、ディッピング、マイクログラビアなどの公知の方法によって、基材であるガラス、プラスチック、金属、セラミックなどからなる平板、フイルム、シートあるいは、これら基材表面に導電層を設けた形成体および、その他の形成体に塗布、加熱硬化することによって、組成物は完全に硬化し、コーティング膜となるが、これらに限定されない。
【0040】
硬化温度としては、100〜180℃が好ましく、特に好ましくは、110〜150℃である。硬化後の膜厚としては、0.001〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0041】
本発明によるシロキサン系コーティング膜形成用塗料により形成したコーティング膜は、反射防止機能を求める用途に使われる低屈折率層や、半導体装置のバッファコート、平坦化剤、液晶ディスプレイの保護膜のほか、層間絶縁膜、導波路形成用材料、位相シフター用材料、各種保護膜として用いることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0042】
本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なおコーティング膜形成用塗料等の評価は以下の方法により行った。
(シロキサン系コーティング膜形成用基材の作製)
厚さ100μmの東レ(株)社製PETフイルム、“ルミラー”100U42の両面をコロナ処理し、ハードコート層を設置する面に屈折率1.55、ガラス転移温度37℃のスチレン−ブタジエンコポリマーからなるラテックス(LX407C5、日本ゼオン(株)製)と酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物(FS−10D、石原産業(株)製)を重量で5:5の割合で混合し、乾燥後の膜厚が200nmとなるよう塗布し、帯電防止層付き下塗り層を形成した後、下記ハードコート層用塗布液を40μmの厚みになるように、エクストルージョン方式で塗布、120℃で3分間乾燥し、紫外線を照射(700mJ/cm)してハードコート層を有する帯電防止層付きフイルムを作製した。さらに、ハードコート層形成面に、下記高屈折率層塗布液を100nmの厚みになるように、バーコーターを用いて塗布し、120℃で3分間乾燥し、紫外線を照射(1000mJ/cm)して、シロキサン系コーティング膜形成用の基材である、ハードコート層/高屈折層を有する帯電防止層付きフイルムを作製した。
(ハードコート層塗布液の調製)
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)をメチルエチルケトンに50質量%濃度になるように溶解した溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295、大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6重量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、ハードコート層塗布液を作製した。
(高屈折率層(屈折率=1.65)塗布液の調製)
二酸化チタン微粒子(TTO−55B、石原産業(株)製)10.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(アロニクスM−5300、東亞合成(株)製)4.5質量部及びシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散し、質量平均径55nmの二酸化チタン分散液を調製した。前記二酸化チタン分散物にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製)と、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製、モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの合計量に対し5%)とを混合し、高屈折率層塗布液を作製した。
(シロキサン系コーティング膜の作製)
シリコンウエハーおよび、基材上の高屈折層が形成された面に膜厚が0.1μmとなるように、シロキサン系コーティング膜形成用塗料を、バーコーターを用いて塗布し、ついでイナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、130℃で5分間、加熱硬化することにより、シロキサン系コーティング膜を得た。
(非コーティング領域の割合の算出)
基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜表面1(μm)当りに存在する非コーティング領域の割合をAFM(デジタルインスツルメント社製:Dimension3000)によって評価した。非コーティング領域の割合が5%以下であれば良好である。測定条件を以下に示す。
【0043】
モード:タッピングモード
測定領域:1μm角
プローブのカンチレバー長:125μm
共振周波数:260〜410kHz
(屈折率の測定)
シリコンウエハー上に形成されたシロキサン系コーティング膜について、位相差測定装置(ニコン(株)製:NPDM−1000)で633nmの屈折率を測定した。なお、屈折率が1.38以下であれば良好である。
(硬度の評価)
基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜上に、標準試験針((株)ロックウエル製:硬度HRC−60、φ0.5mm)をセットし、1±0.3kgの加重をかけ、30〜40mmのストロークで掃引した。掃引したのち、1000ルックス照明下、被膜表面から45cm離れて表面の観察を行い、スクラッチ強度を評価し、これを膜の硬度とした。判断基準は、引っ掻き傷が全くない場合を4、蛍光灯下で反射色が変化(紫から赤色)した場合を3、蛍光灯下で反射が無く傷が観察された場合を2、下地基材が見えた場合を1とし、3と4であれば良好である。
(耐汚染性の評価)
水道水5mlを基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜上にしたたらせ、室温雰囲気下で48時間放置後、布で拭いた時の水垢の残存状態を観察した。水垢が除去できた時を良好とし、除去できなかった時を不良とした。
(実施例1)
(a)成分
メチルトリメトキシシラン95.2g(0.7mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテル32.2gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール250gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0044】
(b)成分
メチルトリメトキシシラン95.2g(0.7mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテル241.2gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分90gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール140gを用いて、固形分濃度20%に調製した
アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名:アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)0.4gをメタノール7.6gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分0.1g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径12nmの内部に空洞を有しないシリカ系微粒子のゾル(商品名:IPA−ST、日産化学工業(株)製、固形分30%)44.5gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール 972.2gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Aを得た。得られた塗料Aを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(実施例2)
(a)成分
メチルトリメトキシシラン81.6g(0.6mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)、ジメチルジメトキシシラン12g(0.1mol)をジアセトンアルコール29.4gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール257.7gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0045】
(b)成分
メチルトリメトキシシラン95.2g(0.7mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をジアセトンアルコール241.2gに溶解し、これに、水60g、シュウ酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分90gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール136gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
アルミニウム系硬化剤として、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)0.4gをメタノール7.4gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分0.2g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径100nmの内部に空洞を有しないシリカ系微粒子のゾル(商品名:IPA−ST−ZL、日産化学工業(株)製、固形分30%)54.6gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール1064.5gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Bを得た。得られた塗料Bを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(実施例3)
(a)成分
エチルトリメトキシシラン75.1g(0.5mol)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン284.1g(0.5mol)をプロピレングリコールモノエチルエーテル71.8gに溶解し、これに、水60g、リン酸3gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール1007.8gを用いて、固形分濃度20%に調製した
(b)成分
エチルトリメトキシシラン90.1g(0.6mol)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン170.4g(0.3mol)、テトラメトキシシラン15.2g(0.1mol)をプロピレングリコールモノエチルエーテル390.1gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分100gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール437.1gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0046】
アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)(商品名:ALCH−TR)、川研ファインケミカル(株)社製)0.4gをメタノール7.6gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分1.05g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径20nmの内部に空洞を有するシリカ系微粒子のゾル(商品名:SOC−NPA−4MA、住友大阪セメント(株)社製、固形分8.5%)101.3gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール 763.7gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Cを得た。得られた塗料Cを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(実施例4)
(a)成分
ビニルトリメトキシシラン74.2g(0.5mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン109.1g(0.5mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテル36.6gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール334.2gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0047】
(b)成分
メチルトリメトキシシラン95.2g(0.7mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテル241.2gに溶解し、これに、水60g、酢酸1gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分96gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール131gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0048】
アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名:アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)0.4gをメタノール7.7gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分1.05g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径12nmの内部に空洞を有しないシリカ系微粒子のゾル(商品名:IPA−ST、日産化学工業(株)製、固形分30%)156.2gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール1984gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Dを得た。得られた塗料Dを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(実施例5)
(a)成分
メチルトリメトキシシラン81.7g(0.6mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン56.8g(0.1mol)をプロピレングリコールモノプロピルエーテル29.4gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール427.8gを用いて、固形分濃度20%に調製した
(b)成分
メチルトリメトキシシラン81.8g(0.6mol)、フェニルトリメトキシシラン19.8g(0.1mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をジアセトンアルコール220.8gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分93gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール181.2gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0049】
アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名:アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)0.4gをメタノール7.6gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分0.6g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径20nmの内部に空洞を有する多孔質のシリカ系微粒子のゾル(商品名:SOC−NPS−4MA、住友大阪セメント(株)製、固形分8.5%、)157.3gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール863.8gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Eを得た。得られた塗料Eを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(実施例6)
(a)成分
メチルトリメトキシシラン81.8g(0.6mol)、フェニルトリメトキシシラン19.8g(0.1mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)をジアセトンアルコール29.4gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、内温を40℃まで上げた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール279.8gを用いて、固形分濃度20%に調製した
(b)成分
メチルトリメトキシシラン68.1g(0.5mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4g(0.3mol)、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン56.8g(0.1mol)、ジメチルジメトキシシラン12.0g(0.1mol)をジアセトンアルコール303.6gに溶解し、これに、水60g、リン酸2gを撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱、その後、溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分93gを留出せしめた。次いでバス温130℃で1.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、イソプロピルアルコール249.1gを用いて、固形分濃度20%に調製した。
【0050】
アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名:アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)0.4gをメタノール7.6gに溶解し、これに、(a)成分100gと、(b)成分0.6g、イソプロピルアルコールに分散された粒子径12nmの内部に空洞を有しないシリカ系微粒子のゾル(商品名:IPA−ST、日産化学工業(株)製、固形分30%)36gを混合して、室温にて2時間撹拌し、均一な溶液とし、さらにイソプロピルアルコール899.4gを用いて、固形分濃度を3%に調製して、シロキサン系コーティング膜形成用塗料の塗料Fを得た。得られた塗料Fを用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例1)
(b)成分のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4gをフェニルトリメトキシシラン59.5gに変更した他は、実施例1と同様にして、塗料A1を得た。得られた塗料A1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例2)
(b)成分を混合しなかった他は、実施例2と同様にして、塗料B1を得た。得られた塗料B1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例3)
(b)成分の添加量を1.05gから2.2gに変更した他は、実施例3と同様にして、塗料C1を得た。得られた塗料C1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例4)
(a)成分のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン109.1gをフェニルトリメトキシシラン99.2gに変更した他は、実施例4と同様にして、塗料D1を得た。得られた塗料D1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例5)
(a)成分と(b)成分の合成溶剤を、t−ブタノールに変更した他は、実施例1と同様にして、塗料E1を得た。得られた塗料E1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例6)
アルミニウム系硬化剤のアルミニウムトリス(アセチルアセテート)をチタン系系硬化剤のチタニウムテトラ(アセチルアセテート)に変更した他は、実施例1と同様にして、塗料F1を得た。得られた塗料F1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜を作製し、非コーティング領域の割合、硬度、耐汚染性、屈折率について評価を行った。
(比較例7)
イソプロピルアルコールに分散された粒子径20nmの内部に空洞を有するシリカ系微粒子のゾル(商品名:SOC−NPA−4MA、住友大阪セメント(株)社製、固形分8.5%)101.3gを78.8gに、イソプロピルアルコール 763.7gを722.4gに変更した他は、実施例3と同様にして、塗料G1を得た。得られた塗料G1を用いて前記のように、基材及び、シリコンウエハー上にシロキサン系コーティング膜
実施例1〜6、比較例1〜7の組成、評価結果を表1、2に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系微粒子を膜全量に対して、30重量%〜80重量%含有する、膜厚0.001〜0.5μmで基材上に形成されたシロキサン系コーティング膜であって、該コーティング膜面1(μm)当りに存在する非コーティング領域の割合が、5%以下であることを特徴とするシロキサン系コーティング膜
【請求項2】
請求項1に記載のシロキサン系コーティング膜を形成するために用いるシロキサン系コーティング膜形成用塗料であって、(a)〜(f)を含有することを特徴とするシロキサン系コーティング膜形成用塗料。
(a)一般式(1)および、一般式(2)〜(4)から選ばれる1種以上のシラン化合物を、酸触媒により、加水分解し、縮合させずに得られたシラノール化合物
(b)一般式(1)および、一般式(2)〜(4)から選ばれる1種以上のシラン化合物を、酸触媒により、一旦加水分解した後、縮合させることによって得られたフッ素含有シロキサンポリマー
(c)平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子
(d)アルミニウム系および/または、マグネシウム系硬化剤
(e)大気圧下沸点100〜180℃の溶剤
(f)大気圧下沸点100℃未満の溶剤
Si(OR´) (1)
(ただし、Rはフッ素が3から17のフルオロアルキル基を表わす。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (2)
(ただし、Rは、水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、およびそれらの置換体を表す。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (3)
(ただし、R、Rは水素、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アルケニル基、およびそれらの置換体を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
Si(OR´) (4)
(ただし、R´はメチル基、エチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。)
【請求項3】
上記(a)成分と(b)成分の合計量に対して、(b)成分が0.1重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項2に記載のシロキサン系コーティング膜形成用塗料。
【請求項4】
請求項1に記載のシロキサン系コーティング膜を、反射防止材料の低屈折率膜として利用することを特徴とする低屈折率膜

【公開番号】特開2006−28322(P2006−28322A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208194(P2004−208194)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】