説明

シロキサン除去方法およびメタン回収方法

【課題】 装置規模を抑えて容易にシロキサンを除去することができるシロキサン除去方法およびバイオガスからメタンを回収するメタン回収方法を提供する。
【解決手段】 原料ガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去する。水分の存在下で活性アルミナに接触させるだけでシロキサンを分解することができるので、装置規模を抑えて容易に原料ガスからシロキサンを除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを主成分とし、シロキサンを不純物として含有する原料ガスからシロキサンを除去するシロキサン除去方法およびシロキサンを除去することでバイオガスに含まれるメタンを回収するメタン回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガスは、有機性資源の嫌気性発酵などにより生成され、その組成は一般的にメタンを主成分とし、炭酸ガスと、その他微量の酸素、窒素、硫化水素、シロキサンなどを含み、硫化水素、シロキサンなどの有害な不純物を除去してボイラーの熱源や発電機の燃料などに利用されている。最近ではメタン純度を97%程度にして、自動車のモータおよび家庭用発電機などの燃料電池用燃料ガスとして利用されはじめている。
【0003】
メタンなどの可燃性ガスを主成分とするガスは、燃焼用途に用いられることから、バイオガスから得られるガスには、硫化水素などの有害物質が含まれていないことのほか、シロキサンを含まないことが必要である。シロキサンを含んだまま燃焼に用いるとタービンに分解固着するなどの問題を引き起こすからである。
【0004】
従来、原料ガスに含有される不純物としてのシロキサンは、高圧水吸収法によりCO、硫黄系不純物を水中に溶解させ、シロキサンを凝縮して吸収塔の底部に溜めて分離したり(たとえば特許文献1参照)、多孔質の吸着剤に吸着させたり(たとえば特許文献2参照)、オゾンで分解して除去したり(たとえば特許文献3参照)、ジルコニウム−バナジウム−鉄ゲッタ合金で分解する(たとえば特許文献4参照)などの除去方法により除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−83156号公報
【特許文献2】特開2003−225525号公報
【特許文献3】特開2008−161786号公報
【特許文献4】特開平05−170405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載の方法は、原ガスを圧縮するためのガス圧縮装置が必要であり、装置全体を耐圧仕様とする必要がある。引用文献2のように吸着剤を用いる場合は、吸着剤の再生、吸着剤の交換が必要である。引用文献3ではシロキサンを分解するためのオゾンガスを発生させるオゾン発生装置が必要である。引用文献4では、ジルコニウム−バナジウム−鉄ゲッタ合金を水素還元する必要がある。
【0007】
このように従来の方法は、ガス圧縮装置、オゾン発生装置などを必要とするため装置規模が大きくなってしまう。また吸着剤やゲッタ合金を用いるとその再生のために処理が必要となってしまう。
【0008】
本発明の目的は、装置規模を抑えて容易にシロキサンを除去することができるシロキサン除去方法およびバイオガスからメタンを回収するメタン回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、メタンを主成分として、少なくともシロキサンを不純物として含有する原料ガスから、シロキサンを除去するシロキサン除去方法であって、
原料ガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去することを特徴とするシロキサン除去方法である。
【0010】
また本発明は、前記原料ガス中のシロキサンを、400〜600℃の温度条件下で活性アルミナに接触させることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記活性アルミナは、粒径が2.6〜4mmであり、細孔径が3〜5nmであることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、メタンを主成分とし、少なくともシロキサンを不純物として含有するバイオガスからメタンを回収するメタン回収方法であって、
バイオガス中の硫化水素を金属酸化物と反応させ、金属硫化物として除去する反応除去工程と、
バイオガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去する分解除去工程と、
圧力スイング吸着法によってバイオガス中の二酸化炭素を分離してメタンを濃縮する濃縮工程と、を有し、反応除去工程、分解除去工程および濃縮工程を行うことでバイオガスからメタンを回収することを特徴とするメタン回収方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料ガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去する。
【0014】
水分の存在下で活性アルミナに接触させるだけでシロキサンを分解することができるので、装置規模を抑えて容易に原料ガスからシロキサンを除去することができる。
【0015】
また本発明によれば、前記原料ガス中のシロキサンを、400〜600℃の温度条件下で活性アルミナに接触させることで、シロキサンの分解反応を促進させることができる。
【0016】
また本発明によれば、前記活性アルミナとして、粒径が2.6〜4mmであり、細孔径が3〜5nmを用いることで、シロキサンの分解反応をさらに促進させることができる。
【0017】
本発明によれば、反応除去工程で、バイオガス中の硫化水素を金属酸化物と反応させ、金属硫化物として除去し、分解除去工程で、バイオガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去する。濃縮工程では、圧力スイング吸着法によってバイオガス中の二酸化炭素を分離してメタンを濃縮する。
【0018】
これらの各工程により、装置規模を抑えて容易にシロキサンを除去し、高い回収率でバイオガスからメタンを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態であるメタン回収方法を示す工程図である。
【図2】回収装置100の構成を示す概略図である。
【図3】圧力スイング吸着装置6の一例を示す概略図である。
【図4】シロキサン分解反応の実験装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、メタンを主成分として、少なくともシロキサンを不純物として含有する原料ガスから、シロキサンを除去するシロキサン除去方法であり、原料ガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去することを特徴としている。
【0021】
活性アルミナとの接触によりシロキサンを分解することができるので、吸着剤が不要であり、吸着剤の再生、交換などを行う必要がない。また、水分存在下であれば分解反応が促進されるので、ガス圧縮装置、オゾン発生装置など特定の装置を必要としない。
【0022】
原料ガスへの水分付与は、たとえば、原料ガスを水にバブリングさせるだけでよい。
また原料ガスとしてバイオガスを用いる場合、下水処理場の汚泥から発生するバイオガスには水分が0.1〜1.0モル%含まれているので、原料ガスに対して水分を付与しなくてもよい。
【0023】
分解生成物であるメタンは原料ガスの主成分であるので、除去する必要がなく、分解生成物である酸化ケイ素は、シロキサン除去後の原料ガスとともに排出される。排出された酸化ケイ素は冷却して、たとえば空冷したのち水冷して固化させ、フィルターで捕捉すればよい。
【0024】
シロキサン分解反応の触媒として機能する活性アルミナは、分解生成物によってほとんど劣化することがないので、再生不要で交換頻度が極めて少ない。
【0025】
このように、水分の存在下で活性アルミナに接触させるだけでシロキサンを分解することができるので、装置規模を抑えて容易に原料ガスからシロキサンを除去することができる。
【0026】
水分存在下でのシロキサン分解反応について説明する。
バイオガスなどの原料ガスに含まれるシロキサンとしては、環状シロキサンが多く、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサンなどがある。これらの環状シロキサンは、[SiO(CH]をモノマーとする多量体であり、D3,D4,D5はそれぞれ三量体、四量体、五量体を示す。以下では、D4をシロキサンの例として説明する。
D4と水との反応の反応式は下記式のとおりである。
D4+4HO → 4SiO+8CH
【0027】
このようにシロキサンは、水との反応により、二酸化ケイ素とメタンとに分解される。活性アルミナは、この水による分解反応の触媒として機能する。
【0028】
分解後に、メタンは原料ガスの成分として利用され、二酸化ケイ素は不純物として除去される。
【0029】
本発明で用いられる活性アルミナは、シロキサン分解反応の触媒として機能するものであれば、特に限定されないが、分解反応塔への充填などを考慮すると球状粒子が好ましく、粒径はたとえば2.6〜4mmである。また、細孔径は3〜5nmが好ましく、BET比表面積は、150〜300m/gが好ましい。
【0030】
また、反応に必要な水は、たとえば、原料ガスの水への吹き込みによるバブリング、予め加熱した水蒸気を原料ガスに混合する、反応させるのに必要な水分量が予め含まれている原料ガス(たとえばバイオガス)など、原料ガス中に0.1〜1.0モル%含有させることができれば、その方法は特に限定されない。
【0031】
上記のように、活性アルミナの存在下であればシロキサンと水との反応は生じるが、温度を高くすることで、シロキサン分解反応をより促進させることができる。シロキサンの活性アルミナへの接触は、たとえば400〜600℃の温度条件下で行うことが好ましい。この温度条件下では、水分は活性アルミナに吸着されたままでなく、脱離する。
【0032】
本発明のシロキサン除去方法は、バイオガス中に不純物として含まれるシロキサンの除去方法として利用することができる。
【0033】
バイオガスは、たとえば、下水処理場の汚泥などから発生するガスであり、主成分としてメタンを約60モル%および炭酸ガスを約40モル%含み、その他に水分、シロキサン、酸素、窒素、硫化水素などを微量含む。
【0034】
自動車用または都市ガス用として、バイオガスを利用する場合、メタン濃度は、95モル%以上が望ましい。自動車用として利用する場合は、圧縮して使用するため、主たるバイオガスの不純物である炭酸ガスが圧縮されて液化するのを避けなければならないことから、95モル%以上のメタン濃度が求められる。また、都市ガス用として利用する場合は、メタン濃度が低いと熱量が低くなるため自動車用と同様に95モル%以上が求められる。
【0035】
図1は、本発明の実施形態であるメタン回収方法を示す工程図である。本発明のメタン回収方法は、バイオガスから不純物を除去し、高い回収率でメタンを回収するために、(ステップS1)硫化水素を除去する反応除去工程、(ステップS2)シロキサンを除去する分解除去工程、およびメタンを濃縮する濃縮工程(ステップS3)を有する。
【0036】
(ステップS1)反応除去工程
反応除去工程では、反応塔に金属酸化物を充填し、反応塔内にバイオガスを導入することでバイオガスに含まれる不純物である硫化水素、メルカプタン等の硫黄系化合物を、金属硫化物として反応塔内に固定する。金属酸化物としては、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛などを用いることができる。たとえば、これらの金属酸化物と硫化水素とが化学反応すると、それぞれ硫化鉄、硫化銅、硫化亜鉛などの金属硫化物となる。
【0037】
反応除去工程によって、バイオガス中の硫化水素の含有量を、3モルppm以下とすることが好ましく、より好ましくは1モルppm以下とする。
【0038】
(ステップS2)分解除去工程
分解除去工程では、分解反応塔に活性アルミナを充填し、分解反応塔内にバイオガスを導入することでバイオガスに含まれる不純物であるシロキサンを分解してバイオガス中からシロキサンを除去する。
【0039】
シロキサンは、水との反応により二酸化ケイ素とメタンに分解されるので、バイオガス中に水を含有させる。たとえば、分解反応塔よりも上流に水槽を設け、水中にバイオガスを通過させる。
【0040】
分解除去工程によって、バイオガス中のシロキサンの含有量を3ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは1ppm以下とする。
【0041】
分解除去工程における分解生成物であるメタンはバイオガスの主成分であるので、除去する必要がない。分解生成物である二酸化ケイ素は、除去する必要があり、分解反応塔と、後段の圧力スイング吸着塔との間にフィルターを設け、フィルターによって捕捉する。
【0042】
分解生成物を含むバイオガスは、シロキサンを分解させるために過剰に水が含まれているので、フィルターとしては、水分吸着量が著しく少ないことが好ましいとの観点からメタルフィルターよりもセラミックフィルターが好ましい。ろ過精度は0.01〜0.003μm、圧力損失は窒素ガス10L/minをフィルター入力側圧力0.1MPaで流したときの出力側圧力損失ΔPが0.01〜0.07MPa程度のものが良い。
【0043】
分解除去工程から導出するガスを冷却するには、例えば100℃まで空冷し次に水冷して25℃前後まで冷却してからフィルターに導入する。
【0044】
(ステップS3)濃縮工程
反応除去工程、および分解除去工程によって、バイオガス中の不純物である硫化水素、シロキサンは十分に除去され、濃縮工程で処理される被処理ガスは、メタンと二酸化炭素および微量の酸素、窒素、水とを含むのみである。濃縮工程では、圧力スイング吸着法により二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、濃縮された高純度のメタンが得られる。
【0045】
圧力スイング吸着法では、たとえば2種の物質の混合ガスから1種のガスを濃縮して得るために、一方の物質に対する吸着能力が高く他方の物質に対する吸着能力が低い吸着剤を用いて、高圧下で、一方の物質を吸着剤に吸着させる。そののち、低圧下で、吸着された一方の物質を吸着剤から離脱させて、吸着剤を再生する。
【0046】
濃縮工程では、二酸化炭素を吸着する吸着能力が相対的に高く、かつメタンを吸着する吸着能力が相対的に低い吸着剤を複数の吸着塔に充填し、塔内の圧力を変化させるとともに使用する吸着塔を適宜切り換えて、二酸化炭素とメタンとを分離し、高純度のメタンを回収する。
【0047】
濃縮工程は、圧力スイング吸着法に基づいて、吸着操作と離脱操作とを繰り返し行う。吸着操作は、吸着剤が充填された吸着塔内の圧力を相対的に離脱操作時よりも高くし、高圧条件下で、シロキサン、硫化水素および酸素が除去されたバイオガスを導入する。高圧条件下では、吸着剤に二酸化炭素が吸着されるが、メタンは吸着剤にほとんど吸着されないので、吸着塔において、二酸化炭素とメタンとが分離され、濃縮されたメタンが得られる。1つの吸着塔にバイオガスを導入し続けると、吸着剤に吸着される二酸化炭素が増加し、吸着能力が低下するので、離脱操作により吸着剤を再生する。
【0048】
離脱操作は、バイオガスの導入を停止し、吸着塔内の圧力を相対的に吸着操作時よりも低くして、吸着剤に吸着された二酸化炭素を吸着剤から離脱させる。離脱した二酸化炭素は吸着塔外へと排出する。
【0049】
吸着塔を2塔用いる場合、1つの吸着塔で離脱操作を行っている期間は、他の吸着塔は吸着操作を行っており、吸着操作と離脱操作とをそれぞれの塔で同時に行う。そして、所定量処理したのち、吸着操作と離脱操作とを切り換える。これにより、いずれかの塔で必ず吸着操作が行われているので、吸着剤を再生しながら、連続的にメタンの分離濃縮を行うことができる。
【0050】
二酸化炭素の吸着能力が高く、メタンの吸着能力が低い吸着剤としては、カーボン系吸着剤を使用することができ、好ましくはカーボンモレキュラーシーブである。さらに、目的の製品ガス組成によって、たとえば製品ガスの含有窒素濃度を低くしたい場合、原料ガスの含有窒素濃度が比較的高い場合など窒素の除去が必要な場合は、カーボンモレキュラーシーブに加えてゼオライトを積層してもよい。
【0051】
吸着操作における吸着塔内の圧力P1としては、たとえば、大気圧(0.101MPa)〜4.0MPaである。離脱操作における吸着塔内の圧力P2としては、たとえば、0.001〜0.3MPa(ただし、P1>P2)である。
【0052】
以上のようにして各工程を経て得られたガスは、シロキサン含有量が3ppm以下であり、メタンの純度がたとえば98モル%以上のメタン富化ガスとして得られる。
【0053】
次に、本発明のバイオガスからメタンを回収する回収装置について説明する。本発明の回収装置は、上記の回収方法を実施可能な装置であればどのような構成でもよい。
【0054】
図2は、回収装置100の構成を示す概略図である。回収装置100は、圧縮機1、硫化水素反応塔2、加熱機3、シロキサン分解反応塔4、冷却器10、酸化ケイ素除去フィルター8および圧力スイング吸着装置6を備え、ガス供給源7から供給されるバイオガスを処理する。ガス供給源7は、例えば下水処理場などバイオガスが発生する発生源である。
【0055】
ガス供給源7から供給される、不純物を含むバイオガスは圧縮機1によって圧縮される。硫化水素を反応除去する硫化水素反応塔2は、反応除去工程で説明したように、硫化水素と反応して金属硫化物を生成する金属酸化物を塔内に充填する。
【0056】
シロキサンを分解除去するシロキサン分解反応塔4は、分解除去工程で説明したようにシロキサンを分解するための触媒として活性アルミナを塔内に充填する。バイオガス中に含まれるシロキサンは、水と反応して二酸化ケイ素とメタンとに分解される。シロキサン分解反応塔4に導入されるバイオガス(硫化水素が反応除去されたもの)は、導入前に加熱機3により予め400〜600℃に加熱される。シロキサン分解反応塔4内の水分は、水分計5で適宜測定され、水分量がシロキサン分解反応に必要な量を下回る場合は、水分供給装置9によりシロキサン分解反応塔4内へ水分を供給するようにしてもよい。シロキサン分解反応塔4内へは、たとえばミストまたはスチームで水分供給すればよく、シロキサン分解反応塔4内の温度を低下させずに400〜600℃を保持するためにスチームにより水分供給することが好ましい。
【0057】
硫化水素とシロキサンが除去されたバイオガスは、二酸化ケイ素を捕捉するためのフィルター8を通過して圧力スイング吸着装置6に導入される
【0058】
圧力スイング吸着装置6は、公知のPSA(Pressure Swing Absorption)装置を用い
ることができ、たとえば2塔式のPSA装置を用いる。
【0059】
図3は、圧力スイング吸着装置6の一例を示す概略図である。圧力スイング吸着装置6は、第1吸着塔12および第2吸着塔13を有し、各吸着塔12,13にカーボン系吸着剤であるカーボンモレキュラーシーブが充填される。
【0060】
各吸着塔12,13の入口12a,13aには、切替バルブ12b,13bを介して原料配管13fが接続される。各吸着塔12、13の入口12a,13aそれぞれは、切替バルブ12c,13cおよびサイレンサー13eが接続され大気中に開放可能に構成される。また、切替バルブ13dを介して吸着塔下部均圧配管13gが各吸着塔12,13の入口12a,13aそれぞれに接続される。
【0061】
吸着塔12,13の出口12k,13kそれぞれは、切替バルブ12l,13lを介して流出配管13oに接続され、切替バルブ12m,13mを介して洗浄配管13pに接続され、切替バルブ13nを介して吸着塔上部均圧配管13qに接続される。
【0062】
流出配管13oは、逆止弁13rと手動弁13sとを介して均圧槽14に接続される。均圧槽14は、圧力調節バルブ14aを介して製品槽15に接続される。製品槽15は、圧力スイング吸着装置6の出口配管15aに接続される。圧力スイング吸着装置6の吸着圧力は、圧力調節バルブ14aによって制御される。
【0063】
洗浄配管13tは、流量制御バルブ13u、流量指示調節計13vを介して洗浄配管13pと接続し、洗浄配管13pのガス流量を一定に調節することにより、吸着塔12,13の充填剤が一定に洗浄される。
【0064】
圧力スイング吸着装置6の第1吸着塔12および第2吸着塔13それぞれにおいて、吸着操作、均圧操作、離脱操作、洗浄操作、均圧操作が順次行われる。
【0065】
切替バルブ12bを開いて、供給されるバイオガスを第1吸着塔12に導入し、また、第1吸着塔12では切替バルブ12lのみが切替バルブ12bと同時に開けられる。これにより、第1吸着塔12に導入されたバイオガス中の少なくとも二酸化炭素が吸着剤に吸着されることで吸着操作が行われ、吸着剤に吸着されないメタンが二酸化炭素と分離されて第1吸着塔12から流出配管13oを介して導出される。このとき、流出配管13oに送られたメタンの一部は、洗浄配管13p、13t、流量制御バルブ13uを介して第2吸着塔13に送られ、第2吸着塔13において洗浄操作が行われる。
【0066】
次に、切替バルブ12b、12lを閉じ、切替バルブ13n、13dを開けて、第1吸着塔12と第2吸着塔13の塔内圧力を均一にする均圧操作が行われる。
【0067】
次に、切替バルブ13n、13dを閉じ、切替バルブ12cを開けることにより、第1吸着塔12の吸着剤から二酸化炭素を含む不純物を離脱させる離脱操作が行われ、二酸化炭素を含む不純物はガスとともにサイレンサー13eを介して大気中に放出される。
【0068】
このとき、切替バルブ13bを開くと同時に、手動弁13sを開き、均圧槽14から流出配管13oを通って二酸化炭素の含有量が低減されたメタンガスが第2吸着塔13に導入され、昇圧操作および吸着操作が行われる。その後の各操作は、第1吸着塔12に対する操作と同様に行う。
【0069】
これらの各操作が第1吸着塔12、第2吸着塔13のそれぞれにおいて順次繰り返されることで、二酸化炭素を含む不純物の含有量が低減されたメタンガスが得られる。
【0070】
なお、圧力スイング吸着装置6は、図3に示す構成に限定されず、塔数は2以外、例えば3塔でも4塔でも良く、通常は9塔以下である。
【0071】
このような回収装置100によれば、供給されるバイオガスから硫化水素、シロキサンを除去したのち、圧力スイング吸着法によって二酸化炭素を分離して濃縮された高純度メタンを得ることができる。
【0072】
(実施例1)
水分存在下でシロキサンを活性アルミナに接触させることにより、シロキサンが分解することを確認するために、まず以下のような実験を行った。
【0073】
図4は、シロキサン分解反応の実験装置を示す概略図である。実験条件について以下に説明する。
【0074】
反応管(SUS製1/2inch管)に活性アルミナを15cm充填し、電気炉を用い加熱した。その後、マスフローコントローラー(MFC)を用いて窒素(N)ガスを流速100ml/minで、シロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、東京化成製)を約10g入れた容器の気相部分に通気した。別のMFCを用いてNガスを400ml室温にて水にディップした管を通して水分を含有させ、シロキサンを含むNガスに混合させて反応管に導入した。
【0075】
反応管の出入口にサンプル取出口を設置し、取出口からサンプリングしたガスをガスクロマトグラフィー(GC−17A、島津製作所製(検出器=FID、カラム=アジレントテクノロジー社製J&WキャピラリーカラムDB−17))にて分析を行った。
【0076】
分解反応を48時間行い、反応管の出口にエアフィルター(SPC-MB-02SW、ピュアロンジャパン社製)を設けて、反応管から出たガスを全量フィルターに通気させた。
【0077】
(1)水分の影響について
反応管の温度を、300℃、400℃にそれぞれ調整し、水分を含有させる場合とさせない場合で反応管の出入口におけるシロキサン濃度を測定した。水分を含有させない場合は、水分を含有する窒素ガスを、シロキサンを含む窒素ガスに混合しなかった。活性アルミナは、住友化学製FO−35(粒径3.4〜5.6mm、細孔径4〜7nm)を用いた。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
反応管の温度が300℃、400℃のいずれも、水分を含有しない場合は、反応管出口でのシロキサン濃度が低下せず、水分を含有する場合はシロキサン濃度が大きく低下した。
【0080】
(2)反応温度の影響について
反応管の温度を、400℃、500℃、600℃にそれぞれ調整し、反応管の出入口におけるシロキサン濃度を測定した。活性アルミナは、住友化学製KHA−24(粒径2.6〜4mm、細孔径3〜5nm)を用いた。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
反応管の温度が400℃で反応管出口のシロキサン濃度が1.6ppmであり、500℃以上では1ppm以下となった。メタンは、反応管入口では検出されなかったが、シロキサンが分解することによって、反応管出口では、メタン濃度が増加した。検出されたメタン濃度は、ほぼ理論値であった。
【0083】
(3)活性アルミナ種類の影響について
反応管の温度を600℃に調整し、粒径および細孔径がそれぞれ異なる4種の活性アルミナを用いた。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
4種の活性アルミナのうち、粒径2.6〜4mm、細孔径3〜5nmであるKHA−24が、反応管出口でのシロキサン濃度が最も低く、シロキサンの分解性能が高いことがわかった。
【0086】
(実施例2)
下水処理場の汚泥から発生するバイオガスを想定し、メタン60.0モル%、二酸化炭素38.7モル%、窒素0.5モル%、水0.3モル%、酸素0.3モル%、硫化水素0.2モル%、シロキサン50mg/Nmの組成を有する混合ガスを処理対象ガスとして、流量450NL/hrで供給した。
【0087】
直径が37mmの円筒状の吸着塔内部に、酸化亜鉛を2.0kg充填した硫化水素反応塔2に原料ガスを25℃で導入した。導出されたガスの水分を分析したところ0.2モル%だったので0.1モル%の水をシロキサン分解反応塔4の上部から添加した。この塔は硫化水素反応塔と同寸法でありアルミナ(住友化学株式会社製、KHA−24)2.0kgが充填されている。500℃で分解反応を行い、導出されるガスを25℃に冷却し二酸化ケイ素除去フィルターに通した。フィルターは多層構造のセラミックをフィルターエレメントとして使用し、0.003μmまで除去できる株式会社ピユアロンジャパン社製のSPC−MB―02SWを用いた。
【0088】
次に硫化水素反応塔2と同じ寸法の吸着塔内部に、細孔径が3Åのカーボンモレキュラーシーブ(クラレケミカル社製、GN−UC−H)を0.6kg充填した圧力スイング吸着装置6に、フィルターから導出されたバイオガスを導入した。圧力スイング吸着装置6の操作は、前述の操作と同様に吸着操作における最高圧力を0.8MPaとし、離脱操作における最低圧力を大気圧として、メタンを二酸化炭素と分離して濃縮した。
【0089】
バイオガス中の二酸化炭素および窒素の濃度は、株式会社島津製作所製GC−TCD(熱伝導性検出器付ガスクロマトグラフィ)を用いて測定し、水分はGEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社の露点計MST−5により測定した。酸素濃度はDELTA F社製微量酸素濃度計(型式DF−150E)により測定し、シロキサン濃度は島津製作所製GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて測定し、硫化水素濃度は島津製作所製GC−FPD(炎光光度検出器付ガスクロマトグラフィ)を用いて測定した。
【0090】
フィルター8から導出されたガスの組成を測定したところ、メタン62.1モル%、二酸化炭素37.0モル%、窒素0.5モル%、酸素0.3モル%、硫化水素とシロキサンは、それぞれ1モルppm未満で水分は0.1モル%であった。
【0091】
また、圧力スイング吸着装置6から導出された製品ガスのメタン濃度が98モル%のとき、メタン回収率は85.1%であり、製品ガス中の二酸化炭素濃度は1.5モル%、窒素濃度は0.5モル%、水分濃度は1モルppm未満、酸素濃度は95モルppmであった。
【符号の説明】
【0092】
1 圧縮機
2 硫化水素反応塔
3 加熱機
4 シロキサン分解反応塔
5 水分計
6 圧力スイング吸着装置
7 ガス供給源
8 フィルター
9 水分供給装置
10 冷却装置
100 回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分として、少なくともシロキサンを不純物として含有する原料ガスから、シロキサンを除去するシロキサン除去方法であって、
原料ガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去することを特徴とするシロキサン除去方法。
【請求項2】
前記原料ガス中のシロキサンを、400〜600℃の温度条件下で活性アルミナに接触させることを特徴とする請求項1記載のシロキサン除去方法。
【請求項3】
前記活性アルミナは、粒径が2.6〜4mmであり、細孔径が3〜5nmであることを特徴とする請求項1記載のシロキサン除去方法。
【請求項4】
メタンを主成分とし、少なくともシロキサンを不純物として含有するバイオガスからメタンを回収するメタン回収方法であって、
バイオガス中の硫化水素を金属酸化物と反応させ、金属硫化物として除去する反応除去工程と、
バイオガス中のシロキサンを水分存在下で活性アルミナに接触させ、酸化ケイ素とメタンとに分解することで除去する分解除去工程と、
圧力スイング吸着法によってバイオガス中の二酸化炭素を分離してメタンを濃縮する濃縮工程と、を有し、反応除去工程、分解除去工程および濃縮工程を行うことでバイオガスからメタンを回収することを特徴とするメタン回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−254421(P2012−254421A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129645(P2011−129645)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】