説明

シロリムスおよび/またはその類縁物質を含む医薬組成物

本発明は、シロリムス(ラパマイシン)および/またはその誘導体および/またはその類縁物質を含む微粒子の形態または固体の投与形態の医薬組成物に関する。本発明の組成物は、シロリムスおよび/またはその誘導体および/またはその類縁物質の許容される生物学的利用能を示す。本発明の医薬組成物は、このクラスの物質に存在する、血漿レベルが狭い治療ウインドー内に留まるように制御された様式でシロリムスを放出するように設計されている。有意な生物学的利用能を失うことなくピーク濃度が減少された、より少ない変動吸収と一緒の延長された放出プロファイルは、薬物の安全性/有効性比を改善することが期待される。さらに、本発明による組成物は、有意に減少した食事の影響を提供し、シロリムスの遅延された放出は、胃腸管に関する副作用の数を減少することが期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロリムス(ラパマイシン)および/またはその誘導体および/またはその類縁物質を含む微粒子の形態または固体の投与形態の医薬組成物に関する。本発明の組成物は、シロリムスを含む市販の固体の投与形態に比較して、シロリムスおよび/またはその誘導体および/またはその類縁物質の、顕著に減少した変動性を示す。本発明の医薬組成物は、制御された様式、例えばこのクラスの物質に存在する、血漿レベルが狭い治療ウインドー(window)内に留まるように延長された様式でシロリムスを放出するように設計されている。有意な生物学的利用能を失うことなくピーク濃度が減少された、より少ない変動吸収と一緒の延長された放出プロファイルは、薬物の安全性/有効性比を改善することが期待される。さらに、本発明による組成物は、有意に減少した食事の影響(food effect)を提供することが意図され、シロリムスの遅延された放出は、胃腸管に関する副作用の数を減少することが期待される。
【0002】
特に、本発明は、経口投与用に適したビヒクルに溶解または分散されたシロリムスおよび/またはその誘導体および/またはその類縁物質を含む固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
シロリムスは免疫抑制剤である。それはStreptomyces hygroscopicusによって産生される大環状のラクトンである。その化学名は、 (3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)-9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a-ヘキサデカヒドロ-9,27-ジヒドロキシ-3-[(1R)-2-[1S,3R,4R)-4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル]-1-メチルエチル]-10,21-ジメトキシ-6,8,12,14,20,26-ヘキサメチル-23,27-エポキシ-3-H-ピリド[2,1-c][1,4]-オキサアザシクロヘントリアコンチン-1,5,11,28,29(4H,6H,31H)-ペントンである。シロリムス(ラパマイシンも意味する)は次に示す三環系の構造である。
【0004】
【化1】

C51H79NO13、分子量914.2
【0005】
シロリムスは白色からオフホワイトの粉末で、水に溶けないが、ベンジルアルコール、クロロフルム、アセトンおよびアセトニトリルに溶けやすい。あらゆる物理的形状(結晶、非晶質粉末、あらゆる可能な多形体、その水和物を含むあらゆる可能な溶媒和物、無水物、その複合体等)のシロリムスも本発明の範囲内にある。シロリムスのあらゆる類縁物質、それらの医薬的に許容される塩、溶媒和物、複合体およびプロドラッグも含まれる。
【0006】
ラパマイシンの製造は、ここに参照として組み込まれるUS-A-3,929,992に記載されている。
シロリムスは、有用な免疫抑制活性、抗菌活性およびその他の薬理学的活性をもったマクロライド化合物であり、臓器または組織、移植片対宿主病、自己免疫疾患および感染症の治療および予防に有用である。
【0007】
シロリムスは、その他の免疫抑制剤のメカニズムとは異なったメカニズムにより、抗原およびサイトカイン刺激に応答して起こるT-リンパ球活性化および増殖を阻害する。シロリムスは抗体産生も阻害する。細胞中で、シロリムスはイムノフィリン、FK結合蛋白-12と結合して免疫抑制複合体を生じる。この複合体はカルシニューリン活性には影響を有しない。この複合体は、哺乳類の「ラパマイシンの標的(target of rapamycin)」(nTOR)、重要な調節キナーゼと結合し、その活性化を阻害する。この阻害は、サイトカイン-推進(driven)T-細胞増殖を抑制し、細胞周期のG1〜S期の進行を阻害する。
【0008】
実験モデルの研究は、シロリムスが、例えばマウス、ラット、ブタ、および霊長類において同種異系移植片(腎臓、心臓、皮膚、小島、小腸、膵-十二指腸、および骨髄)の生着を延長することを示す。シロリムスは、心臓および腎臓の同種異系移植片の急性拒絶を逆転させ、ラットで移植片の生着を延長する。
【0009】
自己免疫疾患のげっ歯類のモデルで、シロリムスは、全身性エリテマトーデス、コラーゲン-誘発関節炎、自己免疫性I型糖尿病、自己免疫性心筋炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎、移植片対宿主疾患、および自己免疫性ウベオレンチニチス(uveorentinitis)と関連した免疫-介在の事象を抑制する。
【0010】
市販のシロリムス含有製品はラパミューン(登録商標)である。ラパミューン(登録商標)は、腎移植を受けている患者の臓器拒絶の予防に適応される。ラパミューン(登録商標)は、シクロスポリンとコルチコステロイドでのレジメント(regiment)において用いられることが推奨される。
【0011】
通常、シロリムスは経口で投与され、それゆえ、胃腸管から吸収される。吸収は、食物の同時摂取により影響を受けることが観察されている。したがって、シロリムス吸収の程度(AUC)は、高脂肪食条件と一緒に経口で服用されたとき、一番大きい。しかしながら、絶食と比較して、ピークのシロリムス血中濃度(Cmax)の減少、ピーク濃度までの時間(tmax)の増加および全曝露量(AUC)の全体的な増加が観察された。したがって、ラパミューン(登録商標)は、首尾一貫して、食物と一緒かまたは無しで服用されることが推奨される。
【0012】
一般的に、治療的に活性な物質の吸収および生物学的利用能は、経口で投与されるとき、種々の因子により影響されることが知られている。そのような因子は、胃腸管における食物の存在を含み、一般的に、医薬物質の胃滞留時間は、絶食状態より食物の存在下の方が有意に長くなる。もし、医薬物質の生物学的利用能が、胃腸管の食物の存在によりある点を超えて影響を受けるなら、その薬物は食事の影響を示していると言われる。ついさっき飲食した患者に薬物を投与することに関する危険があるので、食事の影響は重要である。その危険性は、薬物が投与された病気を直すためには患者が不十分な吸収の危険にさらされる点で、血流への吸収が悪影響を受けるかもしれない可能性に由来する。
【0013】
経口投与後、シロリムスの胃腸管からの吸収は、健康な対象者における単回投与後約1時間、腎移植患者における複数回経口投与後約2時間のピーク濃度(tmax)までの平均時間を有しており迅速である。シロリムスの全身有効率は、ラパミューン(登録商標)経口溶液の経口投与後の約14%であると評価された。ラパミューン(登録商標)錠の経口投与後のシロリムスの平均生物学的利用能は、経口溶液と比較して約27%高い。
【0014】
シロリムスはチトクロームP450 IIIA4(CYP3A4)およびP糖タンパクの両方の基質である。シロリムスはO-脱メチル化および/またはヒドロキシ化により広範囲にわたって代謝される。ヒドロキシ、脱メチルおよびヒドロキシ脱メチルを含む7つの主な代謝物が全血中において特定可能である。グルクロン酸抱合および硫酸抱合は、いずれの生物マトリックス(biologic matrices)中に存在しなかった。シロリムスがヒト全血中での主成分であり、90%以上またはその免疫抑制活性に寄与している。
【0015】
さらに、シロリムスの経口投与は、高コレステロール血症、高脂血症、高血圧および発疹を含む副作用に関与する。
シロリムスは腸壁および肝臓のCYP3A4アイソザイムで広範囲にわたって代謝される。それゆえ、全身的に吸収されるシロリムスの吸収とそれに続く排泄は、このアイソザイムに作用する薬物により影響を与えられ得る。CYP3A4の阻害は、シロリムスの代謝を減少し、シロリムスのレベルを増加する。一方、CYP3A4の誘導物質は、シロリムスの代謝を増大し、シロリムスのレベルを減少する。したがって、シロリムスは、全体的な生物学的利用能を改善するために一以上のCYP3A4阻害剤と一緒に投与され得る。
【0016】
経口投与用に、シロリムスは、1 mg/mlのシロリムスを含む経口溶液として、現在製剤化されて市販されている。ラパミューン(登録商標)は、1 mgのシロリムスを含む白色の三角形の錠剤および2 mgのシロリムスを含む黄色からベージュの三角形の錠剤としても入手可能である。ラパミューン(登録商標)経口溶液はシロリムスと、不活性成分としてPhosal 50 PG(登録商標)(ホスファチジルコリン、プロピレングリコール、モノ-およびジサッカライド、エタノール、大豆脂肪酸、ならびにアスコルビン酸パルミテート)およびポリソルベート80とを含む。ラパミューン錠は、シロリムスを除いて、ショ糖、乳糖、ポリエチレングリコール8000、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、医薬的上薬(glaze)、タルク、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ポビドン、ポロキサマー118、ポリエチレングリコール20,000、グリセロールモノオレエート、カルナウバ蝋等を含む。
【0017】
ラパミューン(登録商標)は、一日一回の経口投与を対象としている。しかしながら、移植後すぐに、維持用量の3倍の増量が与えられるべきである。2 mgの一日維持量が腎移植患者への使用として推奨される。
【0018】
有意な生物学的利用能を失うことなく、長期間、狭い治療ウインドー(図1参照)内にとどまらせることができる血漿レベルをもった薬物の再現可能な制御された放出を示すシロリムスを含む新たな医薬組成物に対する必要性がある。その血漿レベルを確実にするために役立つ食事の影響の減少は所望の値内に留める。
【0019】
さらに、シロリムスを含み、再現可能な(すなわちラパミューン(登録商標)のものと比較して変動が少ない)、この化合物の延長された放出プロファイルは、患者に服用される単位投与量、例えば一日の一回量の減少を可能にし、その投与形態と同時に摂取される食物に対する必要性を減少するかまたは無効にもし、それによって、患者に薬物を服用する時間のより大きな自由を与え得る。さらに、時間に対する血漿濃度における変動を有意に減少することが期待される。
【0020】
十二指腸の末端部までシロリムスの放出を遅らせることは、薬物に関連の胃腸に関する副作用および胃腸管の近位部での比較的高い度合いの代謝(CyP3A4およびP糖タンパク介在の代謝)を減少することが期待される。本件の組成物/技術により、このことは全身的な生物学的利用能を失うことなく行われる。
【0021】
本文脈中でシロリムスの語が使用されるときはいつでも、いずれの形態(例えば結晶、多形または非晶形、溶媒和物、水和物、無水物等)にあるシロリムス、ならびにその類縁物質、誘導体またはプロドラッグを意味することが意図される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
発明の詳細
上記のように、シロリムスでの改善された病気の治療に導く、とりわけ経口用のシロリムス含有医薬組成物を開発する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
改善された放出プロファイルは、有意により低いCmaxだが、なお良好な生物学的利用能ならびに投与後24時間まで治療的血漿レベル内に留める延長された薬物の放出を保証することができる。本発明のさらなる治療上の改善は、改善された吸収とともに、より再現性のある血漿レベルを与えるであろう食事の影響の減少である。本発明のその治療上の改善は、副作用と有効性の間の比を明らかに改善するであろう。シロリムスが適用される病気の改善された治療を得るもう一つの方法は、シロリムスの高められた血漿濃度が、投与の時間に対して最初に得られるかまたは遅くされるかのような様式で、シロリムスの胃腸管への放出のバランスをとることよる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、同条件下で投与されたラパミューン(登録商標)と比較して、個体間変動および/または個体内変動が低減された、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスを含む医薬組成物を提供する。
【0025】
より具体的には、本発明の医薬組成物は、80℃以下の融点を有するビヒクルを含み、ここで、シロリムスの溶解度はビヒクルの融点に相当する温度で少なくとも0.5重量%であり、6人の健康な絶食の対象者または4匹の健康なイヌへの投与後のCmaxおよび/またはAUCinfの変動率(CV)は、最大でも30%である。
【0026】
特定の態様および本明細書の実施例から明らかなように、本発明による医薬組成物は、最大でも25%のAUCinfのCVを有する。したがって、そのCVは、市販のシロリムス含有製品、ラパミューン(登録商標)錠の同条件(用量、絶食、非絶食、水への接近、モニタリング等)下での投与によって得られているものと比較して、顕著に減少している。そのような改善の尺度は、比(CVControl - CV)/CVControl×100%が少なくとも20%であり、CVはCmaxおよび/またはAUCinfのCVであり、CVControlは、コントロールとしてラパミューン(登録商標)錠を用いたCVとして、同様の条件下で測定される。特定の態様において、その比は少なくとも25%である。これらの測定において、CVはCmaxのCVであってもよく。その他の態様において、その比は、例えば少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%のような、少なくとも30%である。そのような測定において、CVはAUCinfのCVである。
【0027】
本明細書における「ビヒクル」の項目は、単独または組み合わせてビヒクルとして用いられ得る種々の物質を含む。言及される物質のいくつかは、これらの物質単独では、ビヒクルとしてみなされるための本明細書で定義されたクライテリアを満たさない事実により、他の物質と組み合わせて用いられることができるだけである。単に一例を挙げると、HMPCは、その融点が80℃よりずっと高いので、ビヒクルとして単独で用いることができない。次に、本発明での使用に特に適したビヒクルの選択が与えられる。すなわち、リロ(Rylo)MD50、ゲルシレ(Gelucire)44/14、PEG 6000のようなPEG、ポロキサマー(Poloxamer)188のようなポロキサマー、モノムルス(Monomuls)90 L12およびモノムルス90 35、ならびにそれらの混合物の少なくとも一つである。
【0028】
次の表に、種々のビヒクル中へのシロリムスの溶解性を示す(溶解性は目視で測定したことに注目して下さい)。
【表1】

【0029】
特定の態様において、本発明による医薬組成物は、錠剤を含む固体のような固体の投与形態である。
さらに、ビヒクル中でのシロリムスの固溶体または固体分散体を得ることを目的とする態様において、ビヒクル中でのシロリムスの濃度は、最大で、ビヒクル中70℃での溶解度に相当するものである。
【0030】
一般的に、ビヒクル中のシロリムスの濃度は、最大で約5重量%、最大で約4重量%、最大で約3重量%、最大で約2重量%または最大で約1重量%のような、最大でも約10重量%である。
本明細書の実施例から判るように、医薬組成物の製造は、通常、シロリムスを約50℃〜約80℃の範囲の温度でビヒクル中に溶解する工程を含む。
【0031】
本発明による医薬組成物は、あるゆる適切な量のシロリムスを含み得る。通常、本発明の固体の投与形態は、0.25 mgのシロリムスの一以上のマルチプラ(multipla)および/または約0.25 mg〜約5 mgのシロリムスを含む。特定の態様において、本発明による医薬組成物は、0.75 mg、1 mg、1.2 mg、1.5 mgもしくは2 mgのシロリムスの用量または該用量の約50%〜約80%を含む。
【0032】
組成物中のシロリムスの濃度に関して、それは、一般的に、例えば約0.05重量%〜約15重量%、約0.05〜約10重量%、約0.1重量%〜約10重量%のような、0.05重量%〜約20重量%である。
好ましい態様において、組成物中のシロリムスの濃度は、約0.05重量%〜約5重量%、約0.1重量%〜約5重量%、約0.1重量%〜約2.5重量%、約0.5重量%〜約2.5重量%、約1重量%〜約2.5重量%または1重量%以下である。
【0033】
ビヒクルは、通常、最大で組成物の60重量%を構成し、そして/またはビヒクルは、組成物の、例えば少なくとも約30重量%または少なくとも約40重量%のような、少なくとも20重量%を構成する。
【0034】
本発明は、制御されたシロリムスの放出を有する医薬組成物を得るための手段を提供する。本明細書で説明されるように、制御された放出とは、比較的速い作用の開始(すなわち、血漿濃度-時間プロファイルを滑らかにすることではなく、治療に適した濃度で血漿中にシロリムスが速く出現することが目的の場合)を可能にする放出であり得、それは、作用の期間を延長する放出であり得る。より具体的で詳細は、本明細書の添付クレームに示され、本発明の特定の態様は、対象物に投与後、比較的速い作用開始が意図されたシロリムス含有組成物を提供する。
【0035】
この目的を達するために、次のことが適用される:
T0.5hおよびTmaxが6人の健康な絶食対象者または4匹の健康な絶食犬に投与後の平均値として測定されたとき、T0.5hは、Tmaxの例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%のような、Tmaxの少なくとも50%であり、そして/または
T0.5hおよびTmaxが6人の健康な絶食対象者または4匹の健康な絶食犬に投与後の平均値として測定されたとき、T1hは、Tmaxの例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のような、Tmaxの少なくとも80%であり、そして/または
【0036】
Tmaxは、6人の健康な絶食対象者に投与した後のTmaxの平均として測定されたとき、例えば1.2時間、1.1時間または1時間のような、最大でも1.5時間であり、そして/または
Tmaxは、4匹の健康な絶食犬に投与した後のTmaxの平均として測定されたとき、例えば1.2時間、1.1時間または1時間のような、最大でも1.5時間であり、そして/または
Tmax/Tmax, Control×100%は、例えば最大で65%、最大で60%または最大で55%のような、最大でも70%である。
【0037】
作用の速い開始を意図した組成物において、それは、いかなる含量のHPMCが存在しないようなHPMCを含まないことが本質的に好ましい。
本発明は、シロリムスの放出が、高いピーク濃度を避けるように計画され、同時に、その組成物は、(市販のシロリムス含有製品と比較して)全体の生物学的利用能が本質的に維持されるかまたは増加するように計画される、シロリムスを含む医薬組成物を提供する。さらに、シロリムスの放出を遅くし、同時にシロリムスが少なくとも部分的に溶解した形態にある組成物を提供することにより、胃腸管の遠位で有意な吸収を得ることを可能にする。
【0038】
本発明は、シロリムス療法に応答する病気の改善された治療のための医薬組成物および固体の投与形態を提供する。
あらゆる物理的形状(結晶、非晶質粉末、あらゆる可能な多形体、その水和物を含むあらゆる可能な溶媒和物、無水物、その複合体等)のシロリムスも本発明の範囲内にある。シロリムスのあらゆる類縁物質、誘導体または活性な代謝物、それの医薬的に許容される塩、溶媒和物、複合体およびプロドラッグも含まれる。
【0039】
シロリムスの公知の適用は、例えば、
i)臓器または組織の同種もしくは異種移植拒絶の治療および予防、例えば心臓、肺、心-肺同時、肝臓、腎臓、骨髄、小腸、四肢、筋肉、神経、椎間板、気管、筋芽細胞、軟骨、膵臓、皮膚または角膜等の移植のような、移植者の治療用。それは、次の骨髄移植のような移植片対宿主疾患の予防に対しても適用される、
【0040】
ii)自己免疫疾患および炎症状態、特に自己免疫成分を含む病因を有する炎症状態、例えば関節炎(例えばリウマチ様関節炎、慢性プログレジエンテ(progrediente)関節炎、および関節炎変形)およびリウマチ性疾患の治療および予防。シロリムスが使用され得る特定の自己免疫疾患は、自己免疫血液学的疾患(例えば溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血および特発性血小板減少症)、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、I型糖尿病、多発性軟骨炎、スクレロドーマ(sclerodoma)、ヴェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、活動性慢性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スチーブン-ジョンソン症候群、突発性スプルー(sprue)、自己免疫炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼障害、グレーヴズ(Graves)病、サルコイドーシス、多発性硬化症、一次胆汁性硬変、若年性糖尿病(真性糖尿病I型)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(腎炎症候群、例えば突発性腎炎症候群または最少変化の腎症を包含するかまたは包含しない)および若年性皮膚筋炎、
【0041】
iii)喘息の治療および予防、
iv)多剤耐性(MDR)の治療。MDRは癌患者およびAIDS患者において特に問題がある。それゆえ、本発明の組成物は、多剤耐性の癌または多剤耐性のAIDSのような多剤耐性状態の治療および制御におけるその他の化学療法剤の効果を高めるのに有用である、
v)例えば癌、異常増殖性皮膚疾患等の増殖性疾患の治療、
vi)真菌感染症の治療、
vii)特にステロイドの作用を増強することにおける炎症の治療、
viii)感染症、特にMipまたはMip様因子を有する病原体による感染の治療および予防、
ix)タクロリムスおよびその他のマクロフィリン結合免疫抑制剤の過量摂取の治療、
【0042】
x)病原性細菌(例えばアスペルギルス-フミガーツス、フザリウム-オキシスポルム、トリコフィトン‐アステロイデス等);
xi)免疫介在疾病(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、血管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、エリテマトーデス、にきび、および円形脱毛症)の炎症性もしくは異常増殖性皮膚病または皮膚反応発現;
xii)眼の自己免疫疾患(例えば角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に関連したブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐状角膜炎、角膜上皮性ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーヴズ眼障害、ホークト-コヤナギ-ハラダ症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、サルコイドーシス、内分泌性眼障害等);
【0043】
xiii)可逆閉塞性気道疾患[喘息(例えば気管支喘息、アレルギー喘息、内因性喘息、外因性喘息、および塵埃喘息)、特に慢性または難治性の喘息(例えば遅発性喘息および気道過剰過敏)、気管支炎等];
xiv)粘膜または血管の炎症(例えば胃潰瘍、虚血または血栓性血管障害、虚血性腸疾患、腸炎、壊死性腸炎、熱傷に関連した腸損傷、ロイコトリエンB4介在疾患);
xv)腸炎症/アレルギー(例えば腹腔疾患、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎);
xvi)胃腸管から離れた症候出現を有する食物関連アレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎および湿疹);
xvii)腎疾患(例えば間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、および糖尿病性ネフロパシー);
【0044】
xviii)神経疾患(例えば多発性筋炎、ギラン-バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、孤立性神経炎、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および神経根症);
xix)脳虚血疾患(例えば頭部外傷、脳の出血(例えばクモ膜下出血、脳内出血)、脳血栓症、脳塞栓症、心不全、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、高血圧性脳症、脳梗塞);
xx)内分泌疾患(例えば甲状腺機能亢進症、およびバセドー氏病);
xxi)血液疾患(例えば純赤血球無形成症、再生不良性貧血、形成不全性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、および赤血球形成不全);
xxii)骨疾患(例えば骨粗鬆症);
【0045】
xxiii)呼吸器疾患(例えばサルコイドーシス、肺線維症、および特発性間質性肺炎);
xxiv)皮膚疾患(例えば皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光過敏、および皮膚T細胞性リンパ腫);
xxv)循環器系疾患(例えば動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、および心筋症);
xxvi)膠原病(例えば強皮症、ヴェグナー肉芽腫症、およびシェーグレン症候群);
xxvii)脂肪過多症;
xxviii)好酸球性筋膜炎;
【0046】
xxix)歯周病(例えば歯肉、歯周組織、歯槽骨またはセメント質への損傷);
xxx)ネフローゼ症候群(例えば糸球体腎炎);
xxxi)男性型脱毛症、老人性脱毛症;
xxxii)筋ジストロフィー;
xxxiii)膿皮症およびセザリー症候群;
xxxiv)染色体異常関連疾患(例えばダウン症候群);
xxxv)アジソン病;
xxxvi)活性酸素介在疾患[例えば臓器損傷(例えば保存、移植に関連する臓器(心臓、肝臓、腎臓、虚血性循環疾患、消化管等)の虚血性循環不全、または虚血性疾患(例えば血栓症、心筋梗塞等));
【0047】
xxxvii)腸疾患(例えば内毒素性ショック、偽膜性大腸炎、および薬物または放射線誘導大腸炎);
xxxviii)腎疾患(例えば虚血性急性腎不全、慢性腎不全);
xxxix)肺疾患(例えば肺の酸素または薬物(例えばパラコート、ブレオマイシン等)に起因する中毒、肺癌、および肺気腫);
xxxx)眼疾患(例えば白内障、鉄貯蔵病(眼球鉄沈着症)、網膜炎、色素変性症、老人斑、ガラス体瘢痕化、角膜のアルカリによるやけど);
xxxxi)皮膚炎(例えば多形性紅斑、線形免疫グロブリンA水疱症、セメント皮膚炎);および
xxxxii)その他の疾患(例えば歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、および環境汚染(例えば空気汚染)、加齢、発癌物質に起因する疾患、癌の転移、および高山病)];
【0048】
xxxxiii)ヒスタミン放出またはロイコトリエンC4放出に起因する疾患;血管形成術に続く冠動脈の再狭窄および手術後の癒着予防;
xxxxiv)自己免疫疾患および炎症状態(例えば原発性粘膜浮腫、自己免疫性萎縮性胃炎、早発閉経、男性不妊症、若年型糖尿病、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体過敏性眼内炎、突発性白血球減少症、活動性慢性肝炎、突発性肝硬変、円板状エリテマトーデス、自己免疫性精巣炎、関節炎(例えば変形性関節炎)、または多発性軟骨炎);
xxxxv)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、AIDS;
xxxxvi)アレルギー性結膜炎;
xxxxvii)外傷、やけど、または手術による肥厚性瘢痕およびケロイド。
【0049】
その上、例えばシロリムスのような三環系マクロライドは、肝の再生活性および/または肝細胞の肥大および過形成を刺激する活性を有する。それゆえ、本発明の医薬組成物は、肝疾患[例えば免疫原性疾患(例えば自己免疫性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変または硬化性胆管炎のような慢性の自己免疫性肝疾患)、部分肝切除、急性の肝臓壊死(例えば毒素、ウイルス性肝炎、ショック、または酸素欠乏に起因する壊死)、B型肝炎、非A非B型肝炎、肝硬変、肝不全(例えば劇症肝炎、遅発型肝炎および慢性に急性が加わった(acute-on-chronic)肝不全(慢性の肝疾患に急性の肝不全)]の治療および/または予防の効果を増強するのに有用である。
【0050】
さらに、本発明の組成物は、化学療法の効果の増大活性、サイトメガロ・ウイルス感染の活性、抗炎症活性、ペプチジル-プロリル イソメラーゼまたはロタマーゼ(rotamase)の阻害活性、抗マラリア活性、抗腫瘍活性等のような三環系マクロライドの有用な薬理活性のために、種々の疾病の予防および/または治療の効果を増強するのに有用である。その上、シロリムスはハンチントン病の治療に有用である。
【0051】
一つの観点において、本発明は、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスを含む、微粒子の形態にある医薬組成物に関し、その組成物は、AUC値が同様の条件下で測定されたとき、それを必要とする哺乳動物への経口投与において、少なくとも約1.3のAUC/AUCControl値を示す。コントロールとして用いられる組成物は、同じ用量で投与され、経口投与を意図した市販のシロリムス組成物である。本文脈において、コントロール組成物はラパミューン(登録商標)錠である。
【0052】
具体的には、AUC/AUCContol値は、AUC値が同様の条件下で測定されたとき、約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上または約5.0以上のような、少なくとも約1.5である。
【0053】
本発明による医薬組成物の経口投与後に、時間に対する血漿濃度プロファイルが、重大な望ましくない副作用をもたらすことなく、血漿濃度が治療ウインドー(すなわち、血漿濃度が治療効果をもたらす)内に維持される時間の延長を示すことが意図される。したがって、ピーク濃度の減少も観測される。それゆえ、本発明は、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその誘導体もしくは類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物に関し、その組成物は、それを必要とする哺乳動物への経口投与で、制御された様式でシロリムスまたはその誘導体もしくは類縁物質を放出し、例えばラパミューン(登録商標)錠に対するCmaxの、最大で約75%、最大で約70%、最大で約65%、最大で約60%、最大で約55%、最大で約50%、最大で約45%または最大で約40%のような、最大で約80%であるCmaxを示す。
【0054】
本文脈において、制御された放出および修正された放出の用語は、対象者に投与後、特定の治療的または予防的応答を得るために適した、本発明の組成物からのシロリムスのあらゆるタイプの放出をカバーする同じ用語であることを意図している。当業者は、制御された放出/修正された放出が、単純な錠剤またはカプセルの放出とどのように違うかを知っている。「制御された様式での放出」または「修正された様式での放出」の用語は、上記と同じ意味を有する。
【0055】
制御された放出/修正された放出の用語は、ゆっくりとした放出(より低いCmaxおよびより遅いtmaxをもたらすが、t1/2は変化しない)、延長された放出(より低いCmax、より遅いtmaxをもたらすが、見かけのt1/2はより長い);遅延された放出(Cmaxは変化しないが、遅延時間をもたらし、したがって、tmaxは遅くなり、t1/2は変化しない)ならびにパルス状の放出、破裂(burst)放出、持続された放出、長期放出、時間-最適化(chrono-optimized)放出、速い放出(作用の高められた開始を得るため)等を含む。例えば、医薬物質の放出を制御するために、体内の特定な条件、例えば異なる酵素またはpH変化の利用も本用語に含まれる。
【0056】
より具体的には、5 mg量のシロリムスを含む本発明による医薬組成物の、ヒトを含む哺乳動物への経口投与後、シロリムスは制御された様式で放出され、例えば最大で約25 ng/mlまたは最大で約20 ng/mlのような、最大でも30 ng/mlであるCmaxを示すであろう。
【0057】
しかしながら、ピーク濃度の減少は、治療効果の減少に導かないかもしれない。したがって、本発明は、W50が、例えば少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間または少なくとも約10時間のような、少なくとも約2時間である医薬組成物にも関する。その上さらに、本発明による組成物は、同じ条件下でのラパミューン(登録商標)錠のそれよりも低いCdiff= [Cmax - C (t=12時間)]を有する。もし、ラパミューン(登録商標)錠に対するCdiffが100に設定されれば、本発明による組成物のCdiffは、通常、例えば約90以下、約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下または約40以下のような、約95以下である。
【0058】
したがって、本発明の一つの態様において、本発明による医薬組成物は、ラパミューン(登録商標)のような市販の製剤と比較して、驚嘆するほど、より高い生物学的利用能を示すことが意図されている。事実、シロリムスの生物学的利用能は、本発明により、上記市販の製品と比較して、200%を超えるまで増大させることができる。
【0059】
より具体的には、5 mgのシロリムスを含む本発明の医薬組成物の、ヒトを含む哺乳動物への経口投与後、シロリムスが制御された様式で放出され、例えば約15 ng/ml以下、約13 ng/ml以下、約10 ng/ml以下、または約5 ng/ml以下のような、約20 ng/ml以下のCdiffを示す。
【0060】
本発明による医薬組成物は、シロリムスの治療効果を延長するために、制御された様式でシロリムスを放出する。一つの観点において、その放出はpH依存的であり得、すなわち、その放出が胃の通過後に優位に起こる。そのようなpH依存放出は、主に、本明細書に記載されているような腸溶コーティング物質を用いて提供される。その放出は、例えばエチルセルロールのようなセルロースベースのコーティングのような制御された放出コーティングを有する組成物を提供することにより、pH非依存的にもなり得る。勿論、組合せも用いられ得る。
【0061】
一般的に、生物学的利用能の変化および/または生物学的利用能に関連したパラメータの変化は、通常、例えばラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品と一緒に問題の組成物を試験する、適当な動物モデルのインビボ研究により測定される。特定の製剤の生物学的利用能の証拠を明らかにするためにイヌモデルの使用が、医薬業界で一般的な手法である。
【0062】
シロリムスに関連した研究は、それぞれのイヌがそれ自身のコントロールである、非無作為のクロスオーバー研究である。通常、4匹のイヌおよび4回の処置が用いられる。iv投与がなされないので、得られる生物学的利用能は相対的である。
さらに、シロリムスの十分な取り込みを確保するために、食物の同時摂取に対する必要性が、有意に減少されるか、またはさらに完全に撤廃されることも意図される。
【0063】
したがって、特定の態様において、本発明による医薬組成物は、シロリムスの有意に、より高い生物学的利用能を提供することがで、それは、シロリムスの毎日の摂取を減じ得るし、食物の摂取と一緒に投与することの必要性を減じるか、または撤廃し得るし、それは、医薬組成物の受給者により大きな自由度を提供し、その結果、患者の承諾および/またはコンプライアンスを有意に改善し得る。さらに、本組成物は、副作用、特に高いピーク濃度に関連する副作用(例えば嘔吐および悪心のような)の有意な減少を提供し、よりよい治療に導くシロリムスの延長された放出を提供することが意図される。
【0064】
上記のように、シロリムス組成物の製剤に関する主な課題の一つは、食事による悪影響(adverse foof effect)を避けることである。一般的に、シロリムスは、食物と一緒に経口で投与されるとき、ずっと良好に吸収される。それゆえ、生物学的利用能の大きな変動が、食物と一緒かまたは食物なしの投与後に見られる。この依存性は、どれくらい多くの量を投与すべきかに関する正確なガイドラインを与えることを困難にし、さらに、用法について、患者への情報を必要とする。本発明は、食事による悪影響が低減した組成物を提供することを目的とする。したがって、本発明は、少なくとも0.75のより低い90%の信頼限界を有する少なくとも約0.85の(AUCfed/AUCfasted)の値で示されるように、そのような処置を必要とする哺乳動物にその組成物を投与後、食事による有意な悪影響を示さない組成物を提供する。
【0065】
具体的には、特定の態様において、本発明による医薬組成物は、例えば約0.95以上、約0.97以上または、例えば約1.1までもしくは約1.2までのような約1以上のような約0.9以上の(AUCfed/AUCfasted)の値を有することができる。
【0066】
本発明の組成物のさらなる利点は、慣用の経口治療と比較して減少した用量で効果的な治療応答を得ることができる可能性である。したがって、本発明による医薬組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質を制御された様式で放出し、特定の態様において、その組成物は、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品の形で投与されたシロリムスの用量の、例えば最大で約80重量%、最大で約75重量%、最大で約70重量%、最大で約65重量%、最大で約60重量%、最大で約55重量%または最大で約50重量%のような、最大でも85重量%である用量で投与されたとき、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品と本質的に生物学的同等とすることができる。
【0067】
生物学的同等性研究にしばしば用いられるパラメータは、tmax、cmax、AUC0-infinity、AUC0-tである。その他の関連するパラメータはW50、W75および/またはMRTであり得る。したがって、これらのパラメータの少なくとも一つが、生物学的同等性が存在するかどうかを測定するときに用いられ得る。さらに、本文脈において、もし、用いられるパラメータの値が、本試験に用いられるラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品のそれの80〜125%内にあれば、二つの組成物は生物学的に同等と見なされる。
【0068】
本文脈において、「tmax」は、投与後、最大血漿濃度(cmax)に達する時間を意味する;AUC0-infinityは、時間0〜無限大までの時間に対する血漿濃度曲線下の面積を意味する;AUC0-tは、時間0〜時間tまでの時間に対する血漿濃度曲線下の面積を意味する;W50は、血漿濃度がCmaxの50%以上である時間を意味する;W75は、血漿濃度がCmaxの75%以上である時間を意味する;そしてMRTは、シロリムス(および/またはその誘導体および/またはその類縁物質)の平均滞留時間を意味する。
【0069】
シロリムスによる治療または予防に関連する二つのその他の主な欠点は、胃腸管の副作用の比較的高い発生および比較的高い個体間-個体変動である。本発明による組成物は、望まない副作用、特に胃腸に関する副作用の減少をもたらすだろうことが考えられる。減少とは頻度の減少の点または重篤さの点であり得る。問題の副作用は、例えば嘔吐、悪心、下痢、便秘、腹痛等を含む。一つの観点において、本発明は、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともに、シロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物に関し、その組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質を制御された様式で放出し、同条件下でかつ等しい治療効果を与える用量で投与されたラパミューン(登録商標)のものと比較して、胃-腸における副作用を減じる。
【0070】
生物学的利用能、曲線下の面積(the Area Under the Curve)を増加することは、通常、医薬物質の吸収に関する個体内および個体間-変動を減ずるであろう。これは、低くかつ乏しい生物学的利用能が、水への乏しい溶解性の結果であるときは、大いに真実である。本発明による組成物は、ラパミューン(登録商標)およびそのような製品によるより、有意に小さい曲線下の面積におけるCV(CV=変動係数)データを与えるであろうことが意図される。
【0071】
前記のように、本発明の基本的特徴の一つは、ある態様に対して、本発明の組成物の経口投与により、生物学的利用能における改善を得ることができることである。通常、経口投与後の医薬物質の低い生物学的利用能は、長時間に渡って有効な薬物レベルを得ることがほとんど不可能である事実から、医薬物質の制御または修正された放出の組成物の設計に対して障害である。しかしながら、本件技術を用いれば、許容される生物学的利用能を得ることが可能であり、それにより、制御、修正または遅延された放出の組成物を設計することが可能である。
【0072】
シロリムスは、腸壁および肝臓のCYP3A4アイソザイムで広範囲に代謝される。したがって、適当な制御された放出の組成物は、上部の胃腸管でのCYP3A4代謝を避けるかまたは減じるように、遅延された様式でシロリムスを放出するように設計された組成物であり得る。
【0073】
遅延された放出は、主に、ある種の腸溶コーティングによりもたらされる。一方、半透性(semipermeable)コーティングはある種の遅延された放出を示すだろうが、それはとても十分な「遅延」放出ではない。さらに、それは、内容物を放出するのにある一定の時間を必要とする。この発明に対して求められるコーティングは、pH依存的なコーティングであり得る。このタイプのコーティングは、あるpHに達するまで、薬物の放出に非常に抵抗性がある。極わめてわずかな1/10のpH内で、その被膜は性質を変え、透過性となる。胃のpHで比較的不溶性でかつ不透化性であるが、小腸および大腸のpHでより溶解性でかつ透過性である、pH感受性ポリマーの例は、ポリアクリルアミドに限定されず、炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、その他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテートハイドロジェンフタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、澱粉酸フタレートのようなフタレート誘導体、スチレン-マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマー、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、アクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマーのようなポリアクリル酸誘導体、シェラック、およびビニルアセテートとクロトン酸とのコポリマーを含む。
【0074】
遅延される放出コーティングを有する組成物からの活性物質の放出は、もし、例えばゼイン(Zein)またはモノ/ジ-グリセリド混合物がコーティング物質として用いられれば、酵素的反応でもあってもよい。
【0075】
本発明によりそして延長された放出用に設計された制御された放出の医薬組成物は、それを必要とするヒトを含む哺乳動物に経口投与されたとき、少なくとも約24時間の間に、例えば少なくとも約7.5 ng/mlまたは少なくとも約10 ng/mlのような、少なくとも約5 ng/mlの血漿濃度が得られるような様式でシロリムスを放出する。本発明の特定の観点において、ピーク血漿濃度と投与後24時間に測定された血漿濃度との差は、例えば最大で約10 ng/ml、最大で約7.5 ng/mlまたは最大で約5 ng/mlのような、最大でも約20 ng/mlである。
【0076】
特定の興味あるpH-感受性ポリマーは、シェラック;フタレート誘導体、特にセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマーとブレンドされたポリメチルメタクリレート;およびビニルアセテートとクロトン酸とのコポリマーを含む。
【0077】
生物学的利用能、曲線下の面積を増加することは、通常、医薬物質の吸収に関する個体内および個体間-変動を減ずるであろう。これは、低くかつ乏しい生物学的利用能が、水への乏しい溶解性の結果であるときは、大いに真実である。本発明による組成物は、ラパミューン(登録商標)およびそのような製品によるより、有意に小さい曲線下の面積におけるCVデータを与えるであろうことが意図される。
【0078】
さらに、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスを含む医薬組成物[ここで、その組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式で(その組成物の設計により、pH依存的またはpH非依存的な様式にし得る)シロリムスまたはその類縁物質を放出する]は、同条件下かつ等しい治療効果を与える用量で投与されたラパミューン(登録商標)のものと比較して、個体間および/または個体内変動を減じることが考えられる。
【0079】
特定の観点において、本発明は、比較的速い治療効果の開始および治療効果の長い維持を可能にするように、シロリムスおよび/またはその誘導体もしくは類縁物質を比較的速いが延長されて放出する、医薬組成物または固体の投与形態を提供する。したがって、本発明は、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともに、シロリムスおよび/またはその類縁物質を含む、微粒子の形態にある医薬組成物に関し、ここで、その組成物は、それを必要とする哺乳動物への経口投与で、制御された様式で、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、約24時間以内に、シロリムスおよび/またはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を放出する。
【0080】
さらなる態様において、例えば最大で62重量%、最大で約65重量%または最大で約70重量%のような、最大で約60重量%のシロリムスが、本発明による組成物の哺乳動物への経口投与後15時間に、あるいは、適当なインビトロの溶出試験が行われるとき、そのような試験の開始後15時間に放出される。
【0081】
具体的には、本発明による組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内または約3時間以内のような、約10時間以内に、シロリムスおよび/またはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を放出する。
【0082】
その他の態様において、本発明による医薬組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約0.75時間以上後、約1時間以上後、約2時間以上後、約3時間以上後、約4時間以上後、約5時間以上後のような、約0.5時間以上後に、少なくとも80重量%を放出するか、あるいは、適当なインビトロの溶出試験による試験で、試験開始後、例えば約0.75時間以上後、約1時間以上後、約2時間以上後、約3時間以上後、約4時間以上後または約5時間以上後のような、0.5時間以上後に、少なくとも80重量%を放出する。
【0083】
さらなる態様において、本発明による医薬組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内、約12時間以内、約10時間以内、8時間以内または約6時間以内のような、約24時間以内に、シロリムスおよび/またはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%を放出する。
【0084】
さらにまたはあるいは、インビトロの溶出試験による試験でpH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、24時間以内に、シロリムスおよび/またはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が放出される。適当な溶出試験のための手引きは、本明細書の実施例に記載されているが、用いられる特定の方法および溶出媒体等に含まれる成分に関する変化も本発明の範囲に含まれる。当業者は、例えば米国薬局方(USP)、欧州薬局方(Ph.Eur.)等からの手引きを用いて、適当な溶出試験を行う方法を知るであろう。インビトロ溶出試験の適当な条件は、USP溶出試験(パドル法)ならびに溶出媒体として、2.5%SDSおよび1g/mLのパンクレアチンを含むpH 7.5の緩衝液を採用している。
【0085】
その他の態様において、インビトロ溶出試験に関して、次の条件:
i)インビトロ溶出試験が行われ、pH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約3時間以内または約2時間以内のような、約10時間以内に放出されること、
【0086】
ii)インビトロ溶出試験が行われ、pH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約1時間以内、約0.75時間以内、約0.5時間以内または約20分以内のような、約1.5時間以内に放出されること、
【0087】
iii)インビトロ溶出試験が行われ、pH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも55重量%が、例えば約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内または約6時間以内のような、約15時間以内に放出されること、
【0088】
iv)インビトロ溶出試験が行われ、pH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%が、例えば約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内または約30分以内のような、約5時間以内に放出されること、および/または
【0089】
v)インビトロ溶出試験が行われ、pH 7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるときに、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%または少なくとも約40重量%のような、少なくとも約20重量%が、例えば最初の2時間以内または最初の1時間以内のような、最初の3時間以内に放出されること
を満たす。
【0090】
興味ある態様において、本組成物は、シロリムスおよび/またはその類縁物質の遅延された放出を有するように設計される。それゆえ、本発明は、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともに、シロリムスおよび/またはその類縁物質を含む、微粒子の形態にある医薬組成物も含み、ここで、その組成物は、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスおよび/またはその類縁物質の遅延された放出を有し、それゆえに、経口投与後、例えば最初の1時間以内のような、最初の2時間以内に、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば最大で約7.5重量%または最大で約5重量%のような、最大で10重量%が放出される。
【0091】
その他の態様において、酸性条件下で行われるインビトロ溶出試験に関して、次の条件:
i)例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%、最大で約15重量%または最大で約10重量%のような、最大でも約30重量が2時間以内に放出されること、
【0092】
ii)例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約7.5重量%、最大で約5重量%または最大で約2.5重量%のような、最大でも約10重量%が2時間以内に放出されること、
iii)例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約50重量%、最大で約40重量%または最大で約30重量%のような、最大でも約60重量%が、例えば約12時間以内のような15時間以内に放出されること、
【0093】
iv)例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約30重量%、最大で約25重量%または最大で約20重量%のような、最大でも約40重量%が、6時間以内に放出されること、および/または
【0094】
v)例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%または最大で約15重量%のような、最大でも約30重量%が、4時間以内に放出されること
が満たされる。
【0095】
シロリムスの他に、本発明の組成物は、治療的、予防的および/または診断的に活性な物質もさらに含み得る。特に、シロリムスと次の活性な物質:臓器移植との関連で使用が指示される物質、例えばステロイド、カルシニューリン阻害剤および/または増殖抑制剤の少なくとも一つとの組合せに興味がある。具体的な例は、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、シクロスポリン、ミコフェノレート、アザチロプリン、タクロリムス、エベロリムス、ミコフェノレートナトリウム、およびFTY720(Novartis)を含む。
【0096】
本医薬組成物は、あらゆる慣用の方法、例えば造粒、混合、噴霧乾燥等により製造され得る。特に有用な方法は、WO 03/004001に記載された方法である。制御された凝集方法による微粒子状物質の製造方法、すなわち、粒子サイズにおける制御された成長を可能にする方法がこの中に記載されている。その方法は、例えばシロリムスと担体(本文脈において、ビヒクルの語が用いられる)を含む第一の組成物を溶融し、それを第二の固形の担体媒体上に噴霧することを含む。通常、溶融可能な担体は、少なくとも5℃であるが、シロリムスの融点より低い融点を有する。担体の融点は、例えば30℃〜100℃の範囲のような、10℃〜150℃の範囲にあってよく、40℃〜50℃の範囲にあるのが最も好ましい。本文脈において、ビヒクルの語は、担体、すなわち、80℃以下の融点を有し、シロリムスの溶解度がビヒクルの融点に相当する温度で少なくとも0.5重量%である担体の適当な選択をカバーして用いられる。そのようなビヒクルが、本発明の課題を達成するために特に有用であることが見出された。
【0097】
一般的な知識と通常の実験を用いて、医薬的に許容され、シロリムスを分散することができるかまたは少なくとも部分的に溶解することができ、かつ所望の範囲の融点を有する適当な担体を選択することは、平均的実務家の能力の範囲内である。担体のための適当な候補は、本明細書に参照として組み込まれるWO 03/004001に記載されている。
【0098】
本文脈において、適当な担体は、融点およびビヒクル中のシロリムスの溶解性に関して、上記の性質が達成される条件で、例えば油または油様物質(本明細書の後で議論される)を含むビヒクルとして挙げられるものならびにWO 03/004001に開示されているものである。WO 03/004001に記載された制御された凝集法を用いる利点は、望まない粒子サイズの成長を有することなく、比較的大量の溶融物を微粒子状物質に適用することができることである。したがって、本発明の一つの態様において、医薬組成物の微粒子状物質は、例えば≧20 μmのような≧10 μm、例えば約100〜約1500 μm、約100〜約1000 μmまたは約100〜約700 μmのような、約20〜約2000、約30〜約2000、約50〜約2000、約60〜約2000、約75〜約2000、または例えば約50〜約350 μm、約50〜約300 μm、約50〜約250 μmもしくは約100〜約300 μmのような、約50〜約400 μmのような最大で約400 μmもしくは最大で300 μmの幾何学的重量平均直径(geometric weight mean diameter) dgwを有する。
【0099】
医薬的に許容される賦形剤
本発明による医薬組成物は、一以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。「ビヒクル」と「医薬的に許容される賦形剤」との用語のあらゆる混同を避けるため、勿論、ビヒクルは一以上の医薬的に許容される賦形剤を含む得るし、通常、そのような成分から構成されることを言及すべきである。しかしながら、ビヒクルと見なされるために、融点およびシロリムスの溶解性に関する上記の要件が満たされなければならない。通常、シロリムスを含むビヒクルは、医薬組成物が作れることを可能にするために、一以上の医薬的に許容される賦形剤を含む固形組成物に加えられる。通常、シロリムスを含むビヒクルは、それ自体で、治療的使用に可能な状態の最終組成物を構成する、患者への完成品でかつ受け入れられものではない。
【0100】
本文脈において、「医薬的に許容される賦形剤」の用語は、それが、それ自体、あらゆる治療的および/または予防的効果を実質的に有しない意味で不活性であるあらゆる物質を意味することが意図される。そのような賦形剤は、許容される技術的性質を有し、医薬組成物、化粧品および/または食料品を得ることを可能にする目的で添加され得る。
【0101】
本発明による組成物または固体の投与形態においての使用に適した賦形剤の例は、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等、またはそれらの混合物を含む。本発明による組成物または固体の投与形態は、異なる目的用に使用される得るので、通常、賦形剤の選択には、そのような異なる使用が考慮される。好適な使用のためのその他の医薬的に許容される賦形剤は、例えば酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、着色剤、錯化剤、懸濁化剤および/または可溶化剤、着香剤および香料、保水剤、甘味剤、湿潤剤等である。
【0102】
好適な充填剤、希釈剤および/または結合剤における例は、乳糖(例えば噴霧乾燥乳糖、α-乳糖、β-乳糖、Tabletose(登録商標)、種々の品質のPharmatose(登録商標)、Microtose(登録商標)またはFast-Floc(登録商標))、微結晶性セルロース(種々の品質のAvicel(登録商標)、Elcema(登録商標)、Vivacel(登録商標)。Ming Tai(登録商標)またはSolka-Floc(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば4,000 cps品質のメトセルEおよびメトロース60 SH、4,000 cps品質のメトセルFおよびメトロース65 SH、4,000、15,000および100,000 cps品質のメトセルK;ならびに4,000、15,000、39,000および100,000品質のメトロース90 SHのような、信越化学のメトセルE、FおよびK、メトロースSH)、メチルセルロースポリマー(例えばメトセルA、メトセルA4C、メトセルA15C、メトセルA4Mのような)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、ショ糖、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、澱粉または加工澱粉(馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、コメ澱粉を含む)、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲン等を含む。
【0103】
希釈剤の具体的な例は、例えば炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、、カオリン、乳糖、マンニトール、ソルビトール、澱粉、α化澱粉、ショ糖、砂糖等である。
【0104】
崩壊剤の具体的な例は、例えばアルギン酸またはアルギネート、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびその他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、澱粉、α化澱粉、カルボキシメチル澱粉(例えばPrimogel(登録商標)およびExplotab(登録商標))等である。
【0105】
結合剤の具体的な例は、例えばアラビアゴム、アルギン酸、寒天、カラゲナンカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポビドン、α化澱粉等である。
【0106】
グリダント(glidants)および滑沢剤は、第二の組成物中にも含まれ得る。その例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはその他のステアリン酸金属塩、タルク、ワックスおよびグリセリド、軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイドシリカ、水素化植物油、トウモロコシ澱粉、ナトリウムステアリルフマレート、ポリエチレングリコール、アルキル硫酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等である。
【0107】
本発明の組成物または固体の投与形態に含まれ得るその他の賦形剤は、例えば着香剤、着色剤、味覚マスキング剤、pH調整剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿潤調整剤(humidity-adjusting agents)、界面活性剤、懸濁化剤、吸収促進剤、修正された放出(modified release)用物質等である。
【0108】
本発明による組成物または固体の投与形態中のその他の添加物は、例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、酢酸トロフェロール、ヘミコハク酸トコフェロール、TPGSまたはその他のトコフェロール誘導体等のような抗酸化剤であり得る。担体組成物は、例えば安定化剤も含み得る。担体組成物中の抗酸化剤および/または安定化剤の濃度は、通常、約0.1重量%〜約5重量%である。
【0109】
本発明による組成物または固体の投与形態は、一以上の界面活性剤または界面活性を有する物質も含み得る。そのような物質は、溶けにくい活性な物質の湿潤に関係し、したがって、活性物質の改善された溶解性に寄与することを意図される。
【0110】
界面活性剤の例は以下に示される。
本発明による組成物または固体の投与形態での使用に適した賦形剤は、例えばLipocine, Inc.の名前のWO 00/50007に開示されたもののような疎水性および/または親水性界面活性剤のような界面活性剤である。好適な界面活性剤の例は:
【0111】
i)ポリエトキ化脂肪酸[例えばポリエチレングリコールの脂肪酸モノ-もしくはジエステルまたはそれらの混合物のような(例えばラウリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リシノール酸とポリエチレングリコールとのモノ-またはジエステルのような)(ポリエチレングリコールは、PEG 4、PEG 5、PEG 6、PEG 7、PEG 8、PEG 9、PEG 10、PEG 12、PEG 15、PEG 20、PEG 25、PEG 30、PEG 32、PEG 40、PEG 45、PEG 50、PEG 55、PEG 100、PEG 200、PEG 400、PEG 600、PEG 800、PEG 1000、PEG 2000、PEG 3000、PEG 4000、PEG 5000、PEG 6000、PEG 7000、PEG 8000、PEG 9000、PEG 1000、PEG 10,000、PEG 15,000、PEG 20,000、PEG 35,000から選択され得る)];
【0112】
ii)ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、すなわち上記のようなエステルであるが、個々の脂肪酸のグリセリルエステルの形態;
iii)例えば硬化ヒマシ油、アーモンド油、パーム核油、ヒマシ油、杏仁油、オリーブ油、ピーナツ油、水素化パーム核油等のような、例えば植物油とグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、PEGまたはソルビトールとのエステル;
【0113】
iv)例えばポリグリセロールステアレート、ポリグリセロールオレエート、ポリグリセロールリシノレート、ポリグリセロールリノレートのような、ポリグリセリン化された(polyglycerized)脂肪酸;
v)例えばプロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールリシノレート等のようなプロピレングリコール脂肪酸エステル;
【0114】
vi)例えばグリセリルモノオレエート、グリセリルジオレエート、グリセリルモノ-および/またはジオレエート、グリセリルカプリレート、グリセリルカプレート等のようなモノ-およびジグリセリド;
vii)ステロールおよびステロール誘導体;
【0115】
viii)上記の種々の分子量を有するPEGのエステルのようなポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(PEG-ソルビタン脂肪酸エステル)および種々のTween(登録商標)シリーズ;
ix)例えばPEGオレイルエステルおよびPEGラウリルエステルのような、ポリエチレングリコールアルキルエステル;
【0116】
x)例えばショ糖モノパルミテートおよびショ糖モノラルレートのような、糖エステル;
xi)例えばTriton(登録商標)XまたはNシリーズのような、ポリエチレングリコールアルキルフェノール;
【0117】
xii)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば
Pluronic(登録商標)シリーズ、Synperonic(登録商標)シリーズ、Emkalyx(登録商標)、Lutrol(登録商標)、Supronic(登録商標)等のような)。これらのポリマーの一般的な用語は、「ポロキサマー」であり、本文脈において該当する例は、ポロキサマー105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403および407;
【0118】
xiii)例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート等のような、Span(登録商標)シリーズまたはAriacel(登録商標)シリーズのような、ソルビタン脂肪酸エステル;
【0119】
xiv)例えばオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート等のような低級アルコール脂肪酸エステル;
xv)例えば脂肪酸塩、胆汁酸塩、リン脂質、リン酸エステル、カルボキシレート、サルフェートおよびスルホネート等のような、カチオン性、アニオン性および両イオン性界面活性剤を含むイオン性界面活性剤;
である。
【0120】
界面活性剤または界面活性剤の混合物が本発明の組成物または固体の投与形態中に存在するとき、界面活性剤の濃度は、通常、例えば約0.1〜約20重量%、約0.1〜約15重量%、約0.5〜約10重量%、あるいは、例えば約10〜約70重量%、約20〜約60重量%または約30〜約50重量%のような約0.10〜約80重量のような、0.1〜80重量%の範囲である。
【0121】
本発明の特定の観点において、一以上の医薬的に許容される賦形剤の少なくとも一つは、ケイ酸またはシリケート、二酸化ケイ素おそびそれらのポリマーを含むその誘導体またはそれらの塩;ケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび/またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ベントナイト、カオリン、三ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイトおよび/またはサポナイトからなる群から選択される。
【0122】
そのような物質は、特に、医薬品、化粧品および/または食料品における油状物質の吸着物質として有用である。具体的な実施態様において、その物質は、医薬品において油状物質の吸着物質として用いられる。油状物質の吸着物質として機能する能力を有する物質は、「油吸着物質」も意味する。さらに、本文脈において、「吸着(sorption)」の語は、「吸収(absorption)」ならびに「吸着(adsorption)」を意味して用いられる。その語の一つが用いられるときはいつでも、それは吸収ならびに吸着現象をカバーすることが意図されていると理解されるべきである。
【0123】
特に、医薬的に許容される賦形剤は、ケイ酸または例えば二酸化ケイ素もしくは医薬的に許容される賦形剤としてのそのポリマーのようなそれらの誘導体もしくはそれらの塩を含み得る。用いられる品質により、二酸化ケイ素は滑沢剤となり得るか、または油吸着物資となり得る。後者の機能を満たす品質が最も重要であるように思える。
【0124】
具体的な実施態様において、本発明による組成物または固体の投与形態は、Aeroperl(アエロパール)(登録商標)(ドイツ、フランクフルト、Degussaから入手可能)に相当する性質を有する二酸化ケイ素製品である、医薬的に許容される賦形剤を含む。
本明細書の実施例から判るように、Aeroperl(登録商標)300(Aeroperl(登録商標)300の性質に似ているか、または相当する性質を有する物質を含む)が、非常に最適な物質である。
【0125】
本発明による組成物または固体の投与形態中に油吸着物質の使用は、医薬組成物、化粧品組成物、栄養物および/または食品組成物(ここで、組成物は油および/または油様物質を含む)の製造に非常に有利である。その有利な点の一つは、比較的大量の油および油様物質を組み込むことができ、なお固形の物質の状態にすることができることである。したがって、本発明による油吸着物質の使用により、比較的大量の油状物質を含む固形組成物を製造することができる。医薬の分野において、特に、活性な物質が、水溶解性(例えば乏しい水溶解性)、水性媒体中での安定性(すなわち水性媒体中で分解が起こる)、経口生物学的利用能(例えば低い生物学的利用能)等に関して適当な性質を有しない状況において、または活性な物質の制御され、遅延され、持続されそして/またはパルス状の輸送を得るために、組成物からの活性な物質の放出を修正することが必要な状況において、比較的大量の油または油様物質を固形組成物中に組み込むことができることは有利である。したがって、具体的な実施態様において、それは医薬組成物の製造において用いられる。
【0126】
固形組成物への製造工程での使用のための油吸着物質は、通常、油または油状物質の、例えば約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上または約95重量%以上のような約5重量%を吸着し、なお固形物質である。
【0127】
本発明の重要な観点は、ビヒクルとして、親水性、親油性、疎水性および/または両親媒性の物質を含む組成物または固体の投与形態である(以下を参照)。
【0128】
ビヒクル
本文脈において、「ビヒクル」の語は、油、ワックス、半固形物質および医薬産業で、通常、溶媒(有機溶媒のような)または共溶媒(co-solvents)として用いられる物質を含む非常に幅広い意味で用いられ、その語は、大気温度で液体の形態にある治療的および/または予防的に活性な物質も含む;さらに、その語は、例えばマイクロエマルジョンおよびナノエマルジョンのようなエマルジョンならびに懸濁液を含む。吸収され得るビヒクルは、通常、大気温度または高温(実用的な理由で、マックス温度(max. temperature)は約250℃である)で、液体である。それらは、親水性、親油性、疎水性および/または両親媒性物質であり得る。
【0129】
しかしながら、本文脈においての使用に適した油状物質は、低くても約0℃および高くても約80℃の融点を有する物質または材料であり、さらに、シロリムスの溶解度は、ビヒクルの融点に相当する温度で、少なくとも0.5重量%である。ビヒクルはただ一つの物質で構成され得るか、またはビヒクルの全体的な性質が上記の要件に合致する条件で、物質の混合物であり得る。
【0130】
本発明の具体的な実施態様において、ビヒクルは、例えば約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上または約25℃以上のような、約5℃以上の融点を有する。
さらなる実施態様において、ビヒクルは、例えば低くても約30℃、低くても約35℃または低くても約40℃のような、低くても約25℃の融点を有する。実用的な理由で、その融点は、通常、余り高すぎなく、したがって、油状物質は、通常、高くても約80℃の融点を有する。例えば治療的および/または予防的に活性な物質が含まれる場合に、もし融点がより高いと、比較的高い温度は、例えば活性な物質の酸化またはその他の種類の分解を促進し得る。
【0131】
本文脈において、融点はDSC(示差走査熱量測定法)により測定される。融点は、DSC曲線の線形増加が温度軸を横切る温度として測定される(さらなる詳細は図2を参照)。
【0132】
興味あるビヒクルは、一般的に、医薬品の製造において、いわゆる溶融結合剤(melt binders)もしくは固形溶媒(solid solvents)(固体の投与形態における)として、または局所使用のための医薬品における共溶媒もしくは内容物として用いられる物質である。
【0133】
それは、親水性、疎水性であり、そして/または界面活性を有し得る。一般的に、親水性および/または疎水性物質は、比較的低い水溶性を有する、治療的および/または予防的に活性な物質を含む医薬組成物の製造において、および/または医薬組成物からの活性な物質の放出が即時であることまたは非修正な設計がなされるときの使用に適している。一方、疎水性の油状物質は、通常、修正された放出の医薬組成物の製造に用いられる。上記の考慮は、一般的な原則を説明するために単純化されているが、油状物質のその他の組合せおよびその他の目的が適切な多くの場合があり、それゆえ、上記の例は、なんら本発明を限定すべきものではない。
【0134】
典型的に、本文脈におけるビヒクル(またはビヒクル成分)としての使用に適した親水性物質は、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリエーテルグリコール;ポリオキシエチレン;ポリオキシプロピレン;ポロキサマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されるか、またはそれは、キシリトール、ソルビトール、酒石酸カリウムナトリウム、スクローストリベヘネート、グルコース、ラムノース、ラクチトール、ベヘン酸、ヒドロキノンモノメチルエーテル、酢酸ナトリウム、フマル酸エチル、ミリスチン酸、クエン酸、ゲルシレ(Gelucire)50/13、例えばゲルシレ44/14等のようなその他のタイプのゲルシレ、ゲルシレ50/10、ゲルシレ62/05、スクロ-エステル(Sucro-ester)7、スクロ-エステル11、スクロ-エステル15、マルトース、マンニトールおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0135】
本発明の文脈におけるビヒクル(またはビヒクル成分)としての使用に適した疎水性物質は、直鎖状の飽和炭化水素、ソルビタンエステル、パラフィン;例えばカカオ脂、牛脂、ラードのような油脂、ポリエチレングリコールエステル;例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸のような高級脂肪酸、例えばセタノール、ステアリルアルコールのような高級アルコール、例えばグリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレエート、水素化獣脂のような低融点ワックス、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換および/または無置換モノグリセリド、置換および/または無置換ジグリセリド、置換および/または無置換トリグリセリド、ミツロウ、白蝋、カルナウバ蝋、カスターワックス(castor wax)、木蝋、アセチレートモノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリルポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらの物質のいくつかは、それら自体で、ビヒクルとして適格であるための上記の基準を満たさないかもしれないが、そのときは、全体としてそれらの基準を満たすビヒクルを得るために、その他の物質(類)と混合され得る。
【0136】
興味ある態様において、ビヒクルは、例えばポリエチレングリコール1,000、ポリエチレングリコール2,000、ポリエチレングリコール3,000、ポリエチレングリコール4,000、ポリエチレングリコール5,000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール7,000、ポリエチレングリコール8,000、ポリエチレングリコール9,000、ポリエチレングリコール10,000、ポリエチレングリコール15,000、ポリエチレングリコール20,000、またはポリエチレングリコール35,000のような、例えば約800〜約35,000、約1,000〜約35,000のような、約400〜約35,000の範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。ある場合において、約35,000〜約100,000の分子量を有するポリエチレングリコールが用いられ得る。
【0137】
その他の興味ある態様において、ビヒクルは、例えば約2,000〜約100,000、約5,000〜約75,000、約10,000〜約60,000、約15,000〜約50,000、約20,000〜約40,000、例えば約100,000〜約1,000,000、約100,000〜約600,000、約100,000〜約400,000または約100,000〜約300,000のような約100,000〜約7,000,000のような、約2,000〜約7,000,000の分子量を有するポリエチレンオキシドを含む。
【0138】
その他の態様において、ビヒクルは、例えばポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338またはポロキサマー407のようなポロキサマーまたはPluronic(登録商標)および/またはTetronic(登録商標)シリーズのようなエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのその他のブロックコポリマーを含む。Pluronic(登録商標)シリーズの適当なブロックコポリマーは、例えば約4,000〜約20,000のような、約3,000以上の分子量および/または例えば約250〜約3,000 cpsのような、約200〜約4,000 cpsの粘度(ブルックフィールド)を有するポリマーを含む。好適な例は、Pluronic(登録商標)F38、P65、P68LF、P75、F77、P84、P85、F87、F88、F98、P103、P104、P105、F108、P123、F123、F127、10R8、17R8、25R5、25R8等を含む。Tetronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、例えば約9,000〜約35,000のような、約8,000以上の分子量および/または例えば約600〜約40,000のような、約500〜約45,000 cpsの粘度(ブルックフィールド)を有するポリマーを含む。上記の粘度は、室温でペーストである物質に対しては60℃で、室温で固形である物質に対しては77℃で測定される。
【0139】
ビヒクルは、例えばソルビタンジ-イソステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキ-イソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリ-イソステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートまたはそれらの混合物のようなソルビタンエステルも含み得る。
上記のように、ビヒクルは、勿論、例えば親水性および/または疎水性物質の混合物のような異なる物質の混合物も含み得る。
【0140】
その他の好適なビヒクルは、例えばプロピレングリコール、ゲルシレ44/14を含むポリグリコール化されたグリセリド、カカオ脂、カルナウバ蝋、例えばアーモンド油、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、ゴマ油、大豆油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム核油、ピーナツ油、菜種油、ブドウ種油等のような植物油、例えば水素化ピーナツ油、水素化パーム核油、水素化綿実油、水素化大豆油、水素化ヒマシ油、水素化ココナツ油のような水素化植物油を含む植物起源の複合脂肪物質;蜜蝋、ラノリン、セチル、ステアリル、ラウリック、ミリスチック、パルミチック、ステアリック脂肪アルコールを含む脂肪アルコールを含む動物起源の天然脂肪物質;グリセロールステアレート、グリコールステアレート、エチルオレエート、イソプロピルミリステートを含むエステル;ミグリコール(Miglycol)810/812を含む液体のインターエステル化された(interesterified)半合成グリセリド;ステアラミドエタノール、ココナツ脂肪酸(fatty coconut acids)のジエタノールアミドを含むアミドもしくは脂肪酸アルコールアミド、モノおよびジ-グリセリドの酢酸エステル、モノおよびジ-グリセリドのクエン酸エステル、モノおよびジグリセリドの乳酸エステル、モノおよびジグリセリド、脂肪酸のポリ-グリセロールエステル、ポリ-グリセロール ポリ-リシノレート、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリスレアレート、ナトリウムステアロイルラクチレート、カルシウムステアロイルラクチレート、モノおよびジ-グリセリドのジアセチル酒石酸エステル等のような溶媒または半固形賦形剤を含む。
【0141】
通常、本発明による医薬組成物または固体の投与形態は、例えば約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上または約95重量%以上のような、約5重量%以上の組成物中の油状物質の濃度を有する。
【0142】
本利点の一つは、比較的大量のビヒクルを組み込むことができ、なお固形の組成物の状態にすることができることである。したがって、比較的大量のビヒクルを含む固形組成物を製造することができる。医薬の分野において、特に、活性な物質が、水溶解性(例えば乏しい水溶解性)、水性媒体中での安定性(すなわち水性媒体中で分解が起こる)、経口生物学的利用能(例えば低い生物学的利用能)等に関して適当な性質を有しない状況において、または活性な物質の制御され、遅延され、持続されそして/またはパルス状の輸送を得るために、組成物からの活性な物質の放出を修正することが必要な状況において、比較的大量のビヒクルを固形組成物中に組み込むことができることは有利である。
【0143】
さらなる利点は、得られる微粒子状物質が易流動性の粉末であり、それゆえ、例えば錠剤、カプセル剤またはサシェ(sachets)のような固体の投与形態に容易に加工できることである。通常、微粒子状物質は、大量のさらなる添加物を加えることなく、直接圧縮により錠剤を製造するのに適した性質を有する。微粒子状物質の流動性を試験するための好適な試験は、Ph.Eur.に記載された方法であり、直径10.0 mmのノズル(オリフィス)を有するロートからのその物質の流速を測定する方法である。
【0144】
本発明の重要な態様において、シロリムスおよび/またはその類縁物質の少なくとも一部は、分子分散体および固溶体を含む固体分散体の形態で組成物中に存在する。通常、例えば20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、例えば95重量%以上のような90重量%以上または約100重量%のような、10重量%以上のシロリムスおよび/またはその類縁物質が、固体分散体の形態で組成物中に存在する。
【0145】
固体分散体は、異なる方法、例えば高くても80℃の温度でかつ当該ビヒクル中のシロリムスの溶解度以下の濃度で、ビヒクル中にシロリムスを溶解すること、またはもう一つの適当な媒体(例えば室温または高温で液状である物質)中に活性物質を分散または溶解することにより得ることができる。
【0146】
有機溶媒に基づく固体分散体の説明
固体分散体(溶媒法)は、活性な物質(例えば医薬物質)と担体の物理的混合物を一般的な有機溶媒に溶解し、次いでその溶媒を蒸発することにより製造される。担体は、多くの場合、親水性ポリマーである。好適な有機溶媒は、メタノール、エタノール、メチレンクロライド、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンまたはそれらの混液のような活性な物質が溶解する、医薬的に許容される溶媒を含む。
【0147】
好適な水溶性の担体は、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテートコーポリマー PVP-PVA(コリドンVA64)、ポリ-メタクリル酸ポリマー(オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギットRL、オイドラギットNE、オイドラギットE)およびポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ならびにポリ(エチレンオキシド)(PEO)のようなポリマーを含む。
【0148】
酸性官能基を含むポリマーが、腸での許容される吸収を提供する、好ましいpH範囲で活性な物質を放出する固体分散体に適し得る。そのようなポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、アルギネート、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー(オイドラギットL、オイドラギットS)、シェラック、セルロースアセテートフタレート(CAP)、澱粉グリコレート、ポラクリン、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレートおよびセルロースアセテートトリメリテートを含む群から一以上選択され得る。
【0149】
固体分散体中の活性な物質とポリマーの量の関係において、ポリマーに対する活性な物質の重量比は、約3:1〜約1:20の範囲であり得る。しかしながら、例えば約1:1〜約1:3または約のような、約3:1〜約1:5のより狭い範囲も用いられ得る。
【0150】
固体分散体は、好ましくは、噴霧乾燥法、制御された凝集、担体粒子上で凍結乾燥もしくはコーティングまたはあらゆるその他の溶媒除去法により製造される。乾燥された生成物は、分子分散体および固溶体を含む固体分散体の形態で存在する活性な物質を含む。
【0151】
有機溶媒の使用に代わる方法として、薬物とポリマーが一緒に粉砕される(co-grinded)かまたは高温で押出される(溶融押出し)。
少なくとも部分的に固体分散体または固溶体の形態にあるシロリムスを含む医薬組成物は、基本的には、当該技術分野で知られた、医薬組成物を製造するためのあらゆる好適な方法を用いて製造され得る。
【0152】
有機溶媒に基づく方法を使用する以外に、シロリムスおよび/またはその類縁物質の固体分散体または固溶体は、例えば制御された凝集法を用いて、ビヒクル中にシロリムスを分散および/または溶解することにより得られる。安定化剤等が、固体分散体/固溶体の安定性を保証するために加えられる。
【0153】
もう一つの観点において、本発明は、本発明による医薬組成物の製造方法に関する。一般的に、医薬の分野のあるゆる好適な方法が用いられ得る。しかしながら、比較的大量のビヒクルを組み込むことを可能にするためには、特に、WO 03/004001(同一発明者による)に記載された方法が満足を与えた。その方法に関する詳細は、上記で特定された公開公報に示され、それは、本明細書の実施例と同様にここに参照として組み込まれる。要約すれば、本発明はシロリムスおよび/またはその類縁物質を含む微粒子状の医薬物質の製造法を提供し、その方法は液体の形態の第一組成物(該組成物は担体を含み、5℃より高い融点を有する)を、保持体を含む第二組成物(該組成物は流動化状態で、担体の融点より低い温度を有する)の上に噴霧することを含む。基本的に、活性な物質は、担体組成物および/または第二組成物中に存在し得る。しかしながら、シロリムスおよび/またはその類縁物質が、少なくとも部分的に固体分散体として組成物中に存在すべき場合は、シロリムスおよび/またはその類縁物質を担体組成物中に組み込むかまたは溶解することが有利である。
【0154】
固体の投与形態
本発明による医薬組成物は、微粒子の形態にあり、そのままで使用することができる。しかしながら、多くの場合、顆粒、ペレット、ミクロスフェア、ナノ粒子等の形態、または錠剤、カプセル剤およびサシェ等を含む固体の投与形態の組成物を提供することがより好都合である。
【0155】
本発明による固体の投与形態は、単一単位投与形態であるか、またはポリデポー(polydepot)の投与形態中に、例えばペレット、ビーズおよび/または顆粒のような複数の個々の単位を含む得る。
【0156】
通常、本発明の医薬組成物または固体の投与形態は、経口、口腔内または舌下投与ルートによる投与が意図される。
本発明は、上記に示した形態にも関する。早い放出、遅延された放出または修正された放出の様式でシロリムスおよび/またはその類縁物質を放出することが意図される組成物/固体の投与形態は、本発明の範囲である。
【0157】
本発明による固体の投与形態は、上記のような微粒子の形態の医薬組成物を含む。本発明のこの主要な観点下に開示される詳細および細目は、本発明のその他の観点に必要な変更を加えて適用する。したがって、微粒子の形態の医薬組成物に対して本明細書に記載および/またはクレームされる生物学的利用能に関する性質、生物学的利用能パラメータの変化、食事の悪影響(adverse food effect)における減少ならびにシロリムスおよび/またはその類縁物質の放出等は、本発明による固体の投与形態に対するものと類似する。
【0158】
通常、微粒子の形態の医薬組成物の濃度(すなわち、特定の投与形態への製造前、したがって、特定の投与形態を得るために必要な特定の医薬的に許容される賦形剤の添加前)は、投与形態の、例えば約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20重量%〜約80重量%、約25重量%〜約80重量%、約30重量%〜約80重量%、約35重量%〜約80重量%、約40重量%〜約75重量%、約45重量%〜約75重量%または約50重量%〜約70重量%のような、約5〜100重量%の範囲である。本発明の態様において、微粒子の形態の医薬組成物の濃度は、固体の投与形態の50重量%以上である。
【0159】
本発明による固体の投与形態は、当業者に周知の方法により、本発明による微粒子状物質を加工することにより得られる。通常、それは、本明細書に記載の医薬的に許容される賦形剤の一以上のさらなる添加を含む。
【0160】
本発明による組成物または固体の投与形態は、シロリムスおよび/またはその誘導体および/またはそれらの類縁物質を、好適な生物学的利用能が得られる条件で、あらゆる好適な様式で放出することが意図され得る。したがって、活性な物質は、高められた作用の開始を得るために、比較的速く放出され、それは0または一次の速度論(kinetics)に従うように放出され得るか、または所定のパターンを得るために、それは制御もしくは修正された様式で放出され得る。単純な製剤(Plain formulations)も本発明の範囲である。
【0161】
本発明による組成物または固体の投与形態は、フィルムコーティング、腸溶コーティング、修正された放出コーティング、保護コーティング、抗付着性コーティング等で被覆もされ得る。
【0162】
本発明による固体の投与形態は、例えば活性な物質の放出に関して、好適な性質を得るために被覆もされ得る。コーティングは単一単位投与形態(例えば錠剤、カプセル剤)に適用され得るか、またはそれはポリデポーの投与形態もしくはその個々の単位に適用され得る。
【0163】
好適なコーティング物質は、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリルポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、ゼラチン、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコール、シェラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナウバ蝋、ミクロクリスタリンワックス、ゼイン、カルシウムペクチネートである。
可塑剤およびその他の成分がコーティング物質中に加えられ得る。同一または異なる活性な物質もコーティング物質中に加えられ得る。
【0164】
次に、本発明の興味ある態様、すなわち固体の投与形態が制御された様式でシロリムスおよび/またはその類縁物質を放出するように設計される態様をより詳細に説明する。本文脈において、「制御された様式」の用語は、単純な錠剤から得られる放出と異なる全てのタイプの放出を含むことが意図される。したがって、この用語は、いわゆる、「制御された放出」、「修正された放出」、「持続された放出」、「パルス状の放出」、「長期の放出」、「破裂放出」、「遅い放出」、「延長された放出」、ならびに「遅延された放出」およびpH依存的な放出を含む。しかしながら、本発明の特定の観点は、遅延された放出組成物または投与形態に関し、それは、本文脈において、投与後および/または最大でも約3のpHを有する溶出媒体を用いる溶出試験の開始後の最初の2時間以内に、最大で10重量%の活性な物質を放出する組成物または投与形態を意味することが意図される。
【0165】
修正された放出システムのタイプ
第一のクラスは、水性環境(すなわち胃腸管の管腔液体)中へのシロリムスの放出を遅らせるのに役立つ、もう一つの物質のマトリックス中にシロリムスが埋め込まれるかまたは分散されるマトリックスシステムを含む。シロリムスがこの種のマトリックスに分散されるとき、薬物の放出は、主としてマトリックスの表面から起こる。したがって、薬物は、それがマトリックスを通して拡散したあとか、またはそのデバイスの表面が侵食され、薬物を露出するときに、そのマトリックスを組み込むデバイス(device)の表面から放出される。いくつかの態様において、両方のメカニズムが同時に働くことができる。マトリックスシステムは、大きい、即ちサイズが(約1 cm)の錠剤か、または小さく(<0.3 cm)てもよい。そのシステムは、単体(例えば巨丸剤)でもよく、実質的に同時に投与されるいくつかのサブユニット(例えば一回量を構成するいくつかのカプセル剤)により分割されてもよいか、または多微粒子(multiparticulate)も意味する複数の粒子を含み得る。多微粒子は多くの製剤に適用することができる。例えば、多微粒子は、カプセルシェル(shell)に詰めるための粉末として使用されうるか、またはそれ自身、摂取を容易にするための食物との混合に用いられ得る。
【0166】
具体的実施態様において、マトリックス多微粒子は、複数のシロリムス含有粒子を含み、各粒子は、例えば水性媒体中へのシロリムスの溶出速度を制御することができるマトリックスを形成するために選択される一以上の賦形剤とともに固溶体および/または固体分散体の形態で、シロリムスおよび/またはその類縁物質を含む。この態様に有用なマトリックス物質は、一般的に、ワックス、いくつかのセルロース誘導体、またはその他の疎水性ポリマーのような疎水性物質である。必要なら、マトリックス物質は、結合剤またはエンハンサーとして用いることができる疎水性物質と、任意に作られる。これらの投与形態の製造に有用なマトリックス物質は、例えばエチルセルロース、パラフィンのようなワックス、改質植物油、カルナウバ蝋、水素化ヒマシ油、蜜蝋等、ならびにポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルとエチレンとのコポリマー、ポリスチレン等のような合成ポリマー。
【0167】
マトリックスを作るのに任意に用いられる水溶性もしくは親水性の結合剤または放出修正剤(release modifying agents)は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、キサンタンガム、カラゲナン、ならびに天然および合成物質のようなその他のような親水性ポリマーを含む。さらに、放出修正剤として機能する物質は、糖または塩のような水溶性の物質を含む。好ましい水溶性の物質は、乳糖、ショ糖、グルコース、およびマンニトール、ならびに例えばHPC、HPMCおよびPVPのような親水性ポリマーを含む。
【0168】
具体的な実施態様において、多微粒子物は、制御された凝集により加工されるとして定義される。この場合、シロリムスは、適当な溶融可能な担体(すなわちビヒクル)に溶解されるか、または部分的に溶解され、マトリックス物質を含む担体粒子上に噴霧される。
【0169】
好適な溶融可能な担体(すなわちビヒクル)は、本明細書において、前述されている。
あるいは、シロリムスはマトリックス物質とともに有機溶媒に溶解され、噴霧乾燥されるか、または担体粒子に塗布される。その方法で一般に用いられる溶媒は、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、および二以上の混合物(さらなる詳細に対しては、項目、有機溶媒に基づく固体分散体の説明の段落にその参照が示される)を含む。
【0170】
形成されるとすぐに、シロリムスマトリックス多微粒子は、乳糖、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム等のような圧縮性賦形剤とブレンドされ、そのブレンドは錠剤を作るために圧縮され得る。ナトリウム澱粉グリコレートまたは架橋ポリ(ビニルピロリドン)のような崩壊剤も有効に用いられる。この方法により製造される錠剤は、水性媒体(胃腸管のような)に置かれたとき崩壊し、それにより、多微粒子マトリックスを露出し、そこからシロリムスを放出する。
【0171】
マトリックスシステムのさらなる態様は、多微粒子物としてシロリムスおよび/またはその類縁物質(例えば固体分散体の形態で)ならびにシロリムスの溶出に有用な制御の度合を提供するのに十分な量の親水性ポリマーを含む親水性マトリックス錠の形態を有する。マトリックス形成に有用な親水性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、カルボマー、カラゲナン、およびズーグラン(zooglan)を含む。好ましい物質はHPMCである。その他の同様な親水性ポリマーも用いることができる。使用中、親水性物質は水により膨潤し、最終的には水に溶解する。シロリムスはマトリックスからの拡散およびマトリックスの侵食の両方により放出される。これらの親水性マトリックス錠のシロリムスの溶出速度は、用いられる親水性ポリマーの量、分子量およびゲル強度によって制御され得る。一般的に、より大きな分子量のポリマーを用いることと同様に、親水性ポリマーのより多くの量を用いると、溶出速度は減少する。通常、より小さな分子量のポリマーを用いると、溶出速度は増加する。一般的に、マトリックス錠は、約20〜90重量%のシロリムスと約80〜10重量%のポリマーを含む。
【0172】
好ましいマトリックス錠は、重量で、シロリムスおよび/またはその類縁物質を含む固体分散体約30%〜約80%、前記マトリックス(例えばHPMCのような)約15%〜約35%、乳糖0%〜約35%、微結晶セルロース0%〜約20%、および滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウムのような)約0.25%〜約2%を含む。
【0173】
クラスとしてのマトリックスシステムは、たいてい、マトリックスから非定値の薬物の放出を示す。この結果は、薬物放出の拡散性のメカニズムの結果であり得、投与形態の外面的形態(geometry)に対する修正は、薬物の放出速度をより一定にするのに有利に用いることができる。
【0174】
この発明のシロリムスの制御された放出の投与形態の第二のクラスは、膜-加減(membrane-moderated)または貯蔵所(reservoir)システムを含む。このクラスにおいて、例えば多微粒子物としての固溶体/固体分散体でのシロリムスの貯蔵所は、律速膜によって囲まれている。シロリムスは、限定されないが、膜中に溶解、次いで膜を横切って拡散または膜内の液体が満たされた孔を通しての拡散を含む当該技術分野で周知の物質輸送メカニズム(mass transport mechanisms)により膜を横断する。これらの個々の貯蔵所システムの投与形態は、単一の大きな貯蔵所を含む錠剤の場合のように、大きくても、または個々に膜でコーティングされた複数の貯蔵所粒子を含むカプセル剤もしくはポリ-デポー錠剤の場合のように、多微粒子でもよい。コーティングは無孔だけれどもシロリムスに浸透性である(例えばシロリムスが膜を通って直接拡散し得る)か、またはそれは多穴性であり得る。この発明のその他の態様のように、輸送の特定のメカニズムが、重要であるとは考えられない。
【0175】
当該技術分野で知られているように持続される放出のコーティング、特に、セルロースエステルもしくはエーテル、アクリルポリマー、またはポリマーの混合物のようなポリマーコーティングが、膜を作るために用いられ得る。好ましい物質は、エチルセルロース、セルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートを含む。そのポリマーは、有機溶媒中の溶液として、または水性分散体もしくはラテックスとして用いられるうる。コーティング操作は、流動床コーター、Wursterコーターまたは回転流動床コーターのような標準的設備中で行われ得る。
【0176】
所望なら、コーティングの透過性は二以上の物質のブレンドにより調整され得る。コーティングの多孔性を調整するのに特に有用な方法は、糖または塩または水溶性ポリマーのような、細かく分割された水溶性の物質の規定量を、用いられる膜-形成ポリマーの溶液または分散体(例えば水性ラテックス)に添加することを含む。投与形態が胃腸管の水性媒体に取り込まれるとき、これらの水溶性膜添加物は、膜から浸出し、孔を離れ、そしてそれは薬物の放出を容易にする。膜コーティングは、当該技術分野で知られているように、可塑剤の添加により修正もされ得る。
【0177】
膜コーティングに用いる方法の特に有用な変法は、コーティングが乾燥したときに、用いられたコーティング溶液中で位相反転が起こり、多孔性の構造を有する膜を生じるような選択された溶媒の混合物中にコーティングポリマーを溶解することを含む。
一般的に、膜を機械的に強くするための支持体は必要ない。
【0178】
膜の形態は、本明細書に列挙された透過性を満たす限り、非常に重要なことではない。膜は非晶質または結晶質であり得る。それはあらゆる特定の方法により製造される形態のあらゆるカテゴリーを有し得、それは、例えば界面重合された膜(多孔性の支持体上の薄い律速膜(thin rate-limiting skin)からなる)、多孔性の親水性膜、多孔性の疎水性膜、ヒドロゲル膜、イオン膜、およびシロリムスに対する制御された透過性により特徴付けられるようなその他の物質であり得る。
【0179】
本発明の一つの態様において、上部胃腸管がシロリムスの高いの濃度に曝されることを減少することが目的である。したがって、好適な投与形態は、シロリムスの制御された放出の開始前に特定の遅れを組み込む形態を含む。典型的な態様は、その投与形態が摂取されるときに、シロリムスの持続される放出に有用なタイプの高分子物質の第一のコーティングで被覆されたシロリムスを含むコアおよび薬物の放出を遅延するのに有用なタイプの第二のコーティングを含む錠剤(または微粒子状物質)により説明され得る。第一のコーティングは錠剤または個々の粒子の上および回りに適用される。第二のコーティングは第一のコーティングの上または周りに適用される。
【0180】
錠剤は当該技術分野で周知の方法により製造することができ、それは治療的に有用なシロリムスの量に加えてそのような方法により錠剤を形成するために必要な賦形剤を含む。
第一のコーティングは、貯蔵所システムに対しての前記のように、膜を作るために当該技術分野で知られているような持続される放出コーティング、特にポリマーコーティングであり得るか、または遅延される放出物質で二番目の被覆がされる、制御された放出マトリックスコアであり得る。
【0181】
錠剤に第二のコーティングを施すために有用な物質は、医薬品の遅延される放出のための腸溶コーティングのような当該技術分野で知られたポリマーを含む。最も一般的なものは、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(ビニルアセテートフタレート)、およびオイドラギットL-100(Rohm Pharma)のようなアクリルコポリマーならびに以下の「遅延される放出」でより詳細に述べられる関連物質のようなpH感受性物質である。遅延される放出コーティングの厚さは、所望の遅延性を与えるように調整される。一般的に、コーティングの厚さが厚くなると、侵食により抵抗性となり、その結果、より長くかつより効果的な遅延を生じる。好ましいコーティングは、厚さが約30 μm〜約3 mmの範囲である。
【0182】
グリセリルモノステアレートのような疎水性マトリックス物質での遅延コーティングは必要ない。その錠剤は、それが酵素的分解の領域、より具体的には十二指腸より後の領域に達したときにのみシロリムスの放出が始まるであろう。
【0183】
二度コーティングされた錠剤は、摂取されたとき、第二のコーティングがそこで優勢な酸性条件下でのシロリムスの放出を抑える胃を通過する。錠剤が胃から出て、pHがより高い小腸を通るとき、第二のコーティングは、選択された物質の物理化学的性質により侵食されるか、または溶解する。第二のコーティングの侵食または溶解で、第一のコーティングは、シロリムスの即時または迅速な放出を抑え、高いピーク濃度の生成を抑え、それにより副作用を最少にするように放出を調節する。
【0184】
さらに好ましい態様は、その投与形態が摂取されるときに、第一はシロリムスの持続する放出を生じるように計画されるポリマーで、次いで胃腸管の環境で放出の開始を遅らせるように計画されるポリマーでコーティングされた、各粒子が錠剤に対しての上記のように二重のコーティングがされている多微粒子を含む。
【0185】
持続される放出のコーティングがされた多微粒子(すなわち、遅延される放出コーティングを受ける前の多微粒子)からのシロリムスの放出速度およびコーティングを調節する方法は、貯蔵所システムのシロリムス多微粒子に対しての前記のファクターによっても制御される。
【0186】
二重にコーティングされた多微粒子のための第二の膜またはコーティングは、錠剤に対して前記で開示されたような、第一の持続される放出コーティングの上に適用される遅延される放出コーティングであり、それは、同一の物質から形成され得る。この態様を実施するためのいわゆる「腸溶」物質の使用は、通常の腸溶の投与形態を製造するための使用とは著しく異なることに注目すべきである。通常の腸溶形態は、その目的は、投与形態が胃を通過するまで薬物の放出を遅らせ、その次に十二脂腸に薬物を運ぶことである。しかしながら、シロリムスの十二指腸への直接的かつ完全な投薬は、本発明により最小限にされるかまたは避けれることが追求される副作用により、望ましいことではないかもしれない。それゆえ、慣用の腸溶ポリマーがこの態様を実施するために用いられるなら、その投与形態が下方胃腸管に達するまで薬物の放出を遅らせるために、それを通常の実施より著しく厚くして適用することが必要かもしれない。
【0187】
しかしながら、遅延される放出コーティングが溶解するかまたは侵食されたあと、シロリムスの持続されるかまたは制御された輸送を引き起こすことは可能でもある。それゆれ、この態様の恩恵は、遅延される放出の性質と持続される放出の性質との適当な組合せにより実現され得る。そして、遅延される放出の部分だけはUSPの腸溶のクライテリアに一致してもよいし、または必ずしも一致する必要はない。遅延される放出のコーティングの厚さは、所望の遅延の性質を与えるように調整される。一般的に、コーティングが厚くなれば侵食により抵抗性となり、その結果より長い遅延を生じる。
【0188】
本発明による第一の遅延される放出の態様は、例えば錠剤またはカプセル剤のような「pH依存的なコーティングがされた投与形態」である。錠剤の場合、それは、例えば多微粒子物として固溶体/固体分散体中のシロリムス、例えばHPMCのような制御される放出マトリックス、崩壊剤、滑沢剤、および一以上の医薬的な担体を含む錠剤コアからなり、そのようなコアは、胃のpHで実質的に不溶性でかつ不透過性であり、そして小腸のpHでより溶解性でかつ透過性である物質、好ましくはポリマーでコーティングされる。好ましくは、コーティングポリマーはpH<5.0で実質的に不溶性でかつ不透化性であり、そしてpH>5.0で水に溶ける。錠剤コアは、その投与形態が胃を出て、小腸に約15分以上、好ましくは約30分以上留まっているまで、実質的にシロリムスが放出されないことを保証するのに十分な量のポリマーでコーティングされ得る。そして、このようにして、最小限のシロリムスが十二指腸で放出されることを確保する。pH感受性ポリマーと水に不溶性のポリマーとの混合物も用いられ得る。錠剤は、シロリムスを含む錠剤コアの重量の約10%〜約80%を含むポリマーの量でコーティングされる。好ましい錠剤は、シロリムス錠剤コアの重量の約15%〜約50%を含むポリマー量でコーティングされる。
【0189】
胃のpHで非常に不溶性でかつ不透化性であるが、小腸および大腸のpHでより溶解性でかつ透過性であるpH感受性ポリマーは、ポリアクリルアミド、炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、その他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテートハイドロジェンフタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、澱粉酸フタレート、スチレン-マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ポリビニルアセテートフタレートコポリマーのようなフタレート誘導体、スチレンおよびマレイン酸コポリマー、アクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマー、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマーのようなポリアクリル酸誘導体、シェラック、ならびにビニルアセテートとクロトン酸とのコポリマーを含む。
【0190】
好ましいpH感受性ポリマーは、シェラック;フタレート誘導体、特にセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマーでブレンドされたポリメチルメタクリレート;ならびにビニルアセテートとクロトン酸とのコポリマーを含む。
【0191】
「pH依存的なコーティングがされた錠剤」が胃を出たあと、シロリムスの放出までの遅延時間は、コーティング中のオイドラギットL(登録商標)およびオイドラギットS(登録商標)の相対量の選択、およびコーティングの厚さの選択により制御され得る。オイドラギットL(登録商標)フィルムは、pH 6.0より上で溶解し、オイドラギットS(登録商標)フィルムは7.0より上で溶解し、混合物は中間のpHで溶解する。十二指腸のpHは約6.0で、大腸のpHは約7.0であるので、オイドラギットL(登録商標)とオイドラギットS(登録商標)の混合物から構成されるコーティングは、シロリムスを十二指腸から保護する。もし、シロリムス-含有の「pH依存的なコーティングがされた錠剤」が大腸に達するまで、シロリムスの放出を遅らせることを望むなら、Dewらによって記載されている(Br. J. Clin. Pharmac. 14 (1982) 405-408)ように、オイドラギットS(登録商標)がコーティング物質として用いられ得る。その投与形態が胃を出たあと、約15分間以上、好ましくは30分間以上シロリムスの放出を遅らせるために、好ましいコーティングは、約9:1〜約1:9のオイドラギットL(登録商標)/オイドラギットS(登録商標)、より好ましくは約9:1〜約1:4のオイドラギットL(登録商標)/オイドラギットS(登録商標)からなる。そのコーティングは、コーティングされていない錠剤コアの重量の約3%〜約70%からなる得る。好ましくは、そのコーティングは、錠剤コアの重量の約5%〜約50%からなる。
【実施例】
【0192】
本発明を限定することなく、以下の実施例でさらに説明する
【0193】
方法
重量偏差の測定
本明細書の実施例で製造された錠剤は、欧州薬局方(Ph. Eur.)にしたがって行われる重量偏差の試験に付した。
【0194】
錠剤の平均硬度の測定
本明細書の実施例で製造された錠剤は、Schleuniger Model 6D装置を用いて、その装置の一般的な取扱説明にしたがって行われる錠剤硬度の試験に付した。
【0195】
崩壊時間の測定
錠剤が崩壊する、すなわち粒子または凝集物に分解する時間は、Ph. Eur.にしたがって測定した。
【0196】
幾何学的重量平均直径dgwの測定
幾何学的重量平均直径は、得られた微粒子状物質(または出発物質)を空気中に分散するレーザー回折法を用いて測定した。測定は、Sympatec Helos装置中、1バールの分散圧力で行い、同等の球面の直径の分布を記録する。この分布は、ログ正常容積-サイズ(log normal volume-size)分布に適合する。
本明細書中に用いられるとき、「幾何学的重量平均直径」はログ正常容積-サイズ分布の平均直径を意味する。
【0197】
溶出速度の測定
溶出速度は、37℃での米国薬局方(USP)パドル溶出法を用いて測定した。
【0198】
実施例
本発明による微粒子形態の医薬組成物の製造に対して、WO 03/004001(本件発明者らによる)に記載された方法を用いた。この方法は、同時に比較的大量の油状物質を用いることができる上に、制御された凝集法、すなわち粒子サイズにおける成長の厳密な制御を保証する。
【0199】
制御された凝集に基づくシロリムス製剤の実施例
HPMCは、信越化学からのメトロース90SH(タイプ2208)またはメトロース60SH(タイプ2910)のことを意味し、異なる重合度(粘度、3〜100.000 cP)で入手可能である。錠剤、カプセル剤または顆粒剤のいずれかが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(Aqoat)、セルロースアセテートフタレートCAP、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHPMCPのような異なるタイプのポリマーまたはオイドラギットL30D、オイドラギット100/S、オイドラギット100/Lのようなメタクリル酸コポリマーで腸溶コーティングがされ得る。
【0200】
実施例1
即時放出錠剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
乳糖200メッシュ 49.75 100.00
PEG6000 34.48 69.30
ポロキサマー188 14.78 29.70
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0201】
シロリムスを、ポリエチレングリコール6000およびポロキサマー188(70:30の重量比)に70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の250 gの乳糖に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、Turbula混合機中で0.5分間、ステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
その混合物を、1 mgの強さで8 mm錠に圧縮する(複合カップの形をした(compound cup shaped)200 mg錠)。
平均崩壊時間:20分、硬度:45 N
【0202】
実施例2
ヒドロキシプロピルセルロースのハイドロコロイドマトリックスを膨潤することに基づく修正された放出ポリデポーカプセル剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
HPMC 20.00 40.00
乳糖200メッシュ 30.00 60.00
PEG6000 34.65 69.30
ポロキサマー188 14.85 29.70
合計 100.00 200.00
【0203】
シロリムスを、ポリエチレングリコール6000およびポロキサマー188(70:30の重量比)に70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の150の乳糖および100 gのHPMCの混合物に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する(200 mg)。
【0204】
実施例3
ヒドロキシプロピルセルロースのハイドロコロイドマトリックスを膨潤することに基づく修正された放出ポリデポーカプセル剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
HPMC2910 3 cp 20.00 40.00
乳糖200メッシュ 30.00 60.00
グリセリルモノステアレート 49.50 99.00
合計 100.00 200.00
【0205】
シロリムスを、グリセルリモノステアレートに70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の150の乳糖および100 gのHPMCの混合物に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する(200 mg)。
【0206】
実施例4
ヒドロキシプロピルセルロースのハイドロコロイドマトリックスを膨潤することに基づく修正された放出マトリックス錠剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
HPMC 19.90 40.00
乳糖200メッシュ 29.85 60.00
PEG6000 34.48 69.30
ポロキサマー188 14.78 29.70
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0207】
シロリムスを、ポリエチレングリコール6000およびポロキサマー188(70:30の重量比)に70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の250 gの乳糖に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、Turbula混合機中で0.5分間、HPMCおよびステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
その混合物を、1 mgの強さで8 mm錠に圧縮する(複合カップの形をした200 mg錠)。
平均崩壊時間:20分、硬度:45 N
【0208】
実施例5
グリセリルモノステアレートの親油性マトリックスに基づく修正された放出マトリックス錠剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
乳糖200メッシュ 49.75 100.00
グリセリルモノステアレート 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0209】
シロリムスを、グリセリルモノステアレートに70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の250 gの乳糖に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、Turbula混合機中で0.5分間、ステアリン酸マグネシウムとブレンドする。
その混合物を、1 mgの強さで8 mm錠に圧縮する(複合カップの形をした200 mg錠)。
平均崩壊時間:20分、硬度:45 N
【0210】
実施例6
グリセリルモノステアレートの親油性マトリックスに基づく修正された放出ポリデポーカプセル剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
乳糖200メッシュ 49.75 100.00
グリセリルモノステアレート 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0211】
シロリムスを、グリセリルモノステアレートに70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の250 gの乳糖に噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する(200 mg)。
【0212】
実施例7
ゲルシレ44/14の親油性マトリックスに基づく調節された放出ポリデポー錠剤
物質 % mg
シロリムス 0.50 1.00
アエロパール300 49.75 100.00
ゲルシレ44/14 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
100.00 201.01
【0213】
シロリムスをゲルシレに70℃で溶解する。その溶液を流動床Strea-1中の250 gのアエロパールに噴霧する。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、硬ゼラチンカプセルに充填する(200 mg)。
その顆粒を1 mgの強さで8 mm錠に圧縮する(錠剤重量200 mg)。錠剤はカップの形である。
平均崩壊時間:25分、硬度:43 N
【0214】
実施例8
速い開始と減少した変動性を有する即時放出錠剤
ラパミューン1 mgと比較した、イヌでの三つのPK-試験に用いたシロリムスの製剤
バッチRD1032-2T(即時放出錠)
【0215】
【表2】

【0216】
その製剤は実施例1と同様に製造する。
1.25%のシロリムスをPEG6000/ポロキサマー188(70:30重量比)に溶解し、乳糖200メッシュ(全量の50%担体)に噴霧する。その顆粒をMg-ステアレートと混合し、錠剤、8 mm複合カップに圧縮した。錠剤硬度:39 N。崩壊時間 8分。
【0217】
実施例9
低変動性を有する調節された放出組成物
バッチRD1032-1K(顆粒を膨潤するCR-カプセル製剤)
【0218】
【表3】

【0219】
その製剤は実施例3と同様にして製造される。
1.25%のシロリムスをグリセリルモノステアレート(リロMD50)に溶解し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび乳糖(1:1)(全量の40%担体)に噴霧する。篩にかけられた顆粒をカプセルに充填した。
【0220】
実施例10
低いピークを有する修正された放出組成物
バッチRD 1032-T1(マトリックスを膨潤することに基づくCR-錠製剤)
【0221】
【表4】

【0222】
実施例9により製造された顆粒を、エクストラ顆粒相(extragranular phase)としてのアビセルPH200および滑沢剤ステアリン酸マグネシウムと混合した。
その顆粒を錠剤、8 mm複合カップに圧縮した。錠剤硬度:37 N。崩壊時間 8分。
【0223】
実施例11
ビーグル犬でのインビボ試験
市販のシロリムス錠剤、すなわちラパミューン(登録商標)に対するパラメータを含む、本発明の組成物の薬物動態的性質を測定する目的で、インビボ試験をビーグル犬を用いて行った。
【0224】
実験研究は、一晩絶食後、1 mgのシロリムスを投与した4匹のビーグル犬で行った。試験は、二つのオープンな非無作為クロスオーバー(open, non-randomised, cross-over)試験として行われた。各動物はそれ自身がコントロールであった。シロリムスの経口量は、シロリムスの副作用である悪心のために、i.m プリンペラン(登録商標)後に投与された。水は投薬後5時間、自由に与えられた。各イヌは、イヌの体重を考慮しないで、シロリムスの特定の製剤が投薬された。
【0225】
血液サンプルは、次の時点:投薬前、投薬後0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、12および24時間に外頸静脈から採取された。4 mlの血液が採取され、EDTAと混合された。そしてそのサンプルは遮光され、冷凍(-80℃)された。血液サンプルは分析され、結果はng/mLで示された。
試験された4つの物は、A:ラパミューン(登録商標) 1 mg;B:実施例8による速い開始の錠剤;C:実施例9による遅いカプセル製剤;およびC:実施例10による遅い開始の錠剤である。
【0226】
実施例12
標準偏差(SD)および変動係数(CV)
実施例11に記載されたように絶食犬で試験された関連薬物動態的パラメータに対する、市販の参照の即時放出製品と本発明による速い開始の製品(実施例8)との比較;N=8(各群4匹のイヌで2試験の合計)(ng/mLの濃度)
変動係数(CV=SD/平均値)を用いる利点は、この値が有意な異なる平均値を有するデータセットにまたがって比較ができるからである。
【0227】
【表5】

【0228】
実施例13
実施例11による試験での、本発明による調節された放出製剤の標準偏差と変動係数;N=4
【表6】

【0229】
実施例14
実施例11に記載されたようにイヌで試験された、市販の参照の即時放出製品と本発明による速い開始の製品(実施例8)との間のT=0.5時間およびT=1時間での濃度で測定された速い開始の試験;N=4
【0230】
【表7】

【0231】
実施例15
実施例11に記載されたようにイヌで試験された、本発明による修正された放出製剤(実施例9および10)のCdiffの試験;N=4
Cdiff= [Cmax - C (t=12時間)]
【0232】
【表8】

【0233】
実施例16
実施例11に記載されたようにイヌで試験された、本発明による修正された放出製剤(実施例9および10)のW50の試験;N=4
W50は血漿濃度がCmaxの50%以上である時間を意味する。
図3から、血漿濃度が最大濃度の50%より上にある時間は、実施例9による修正された放出カプセル製剤に対して約7.3時間であることが明らである。これは、その製剤の延長効果を示す。同様に、Cと同じ顆粒組成物を含む実施例10の修正された放出錠剤の製剤Dの試験に対して、最大濃度の50%より上にある濃度は少なくとも8.9時間である。したがって、錠剤は、カプセル剤と比較して、より延長された効果を有する。
【0234】
本発明の具体的な態様
1.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、AUCが同様の条件下で測定されたとき、少なくとも約1.3のAUC/AUCControl値を示す、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスもしくはその誘導体またはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0235】
2.AUCが同様の条件下で測定されたとき、AUC/AUCControl値が、約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上または約5.0以上のような、少なくとも約1.5である、項目1に記載の医薬組成物。
【0236】
3.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、Cmaxがラパミューン(登録商標)錠のCmaxの、例えば最大で約75%、最大で約70%、最大で約65%、最大で約60%、最大で約55%、最大で約50%、最大で約45%または最大で約40%のような、最大でも約80%である、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスもしくはその誘導体またはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0237】
4.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、W50が、例えば約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約7時間以上、約8時間以上、約9時間以上、約10時間以上、約11時間以上、約12時間以上、約13時間以上または14時間以上のような、約2時間以上である、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスもしくはその誘導体またはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0238】
5.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、Cdiff= [Cmax - C (t=12時間)]でラパミューン(登録商標)錠のCdiffが100に設定されるとき、Cdiffが例えば約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下または約40以下のような、90以下である、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスもしくはその誘導体またはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0239】
6.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、少なくとも0.75のより低い90%の信頼限界でを有する少なくとも約0.85の(AUCfed/AUCfasted)の値で示される食事による有意な悪影響を示さない、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスもしくはその誘導体またはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0240】
7.(AUCfed/AUCfasted)の値が、例えば約0.95以上、約0.97以上または約1以上のような、約0.9である、項目6に記載の医薬組成物。
【0241】
8.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、ラパミューン(登録商標)の形態または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の、最大でも約85重量%の用量で投与されるとき、該医薬組成物がラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品と本質的に生物学的同等である、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0242】
9.用量が、ラパミューン(登録商標)の形態または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の、例えば最大で約75重量%、最大で約70重量%、最大で約65重量%、最大で約60重量%、最大で約55重量%または最大で約50重量%のような、最大でも約80重量%である、項目8に記載の医薬組成物。
【0243】
10.生物学的同等性が、次のパラメータ:tmax、cmax、AUC0-t、AUC0-infinity、W50、W75および/またはMRTの少なくとも一つの手段によって決定される、項目8または9に記載の医薬組成物。
【0244】
11.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、同じ条件下および同等な治療効果を与える用量で投与されるラパミューン(登録商標)と比較して胃腸管の副作用を低減させる、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0245】
12.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、同じ条件下および同等な治療効果を与える用量で投与されるラパミューン(登録商標)と比較して、個体間変動および/または個体内変動が低減された、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0246】
13.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、約24時間以内に放出する、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0247】
14.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内または約3時間以内のような、約10時間以内に放出する、項目13に記載の医薬組成物。
【0248】
15.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%を、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内もしくは約12時間以内、約10時間以内、8時間以内または約6時間以内のような、約24時間以内に放出する、項目13または14に記載の医薬組成物。
【0249】
16.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、約24時間以内に放出される、項目13に記載の医薬組成物。
【0250】
17.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約3時間以内または約2時間以内のような、約10時間以内に放出される、項目13〜16のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0251】
18.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約1時間以内、約0.75時間以内、約0.5時間以内または約20分以内のような、約1.5時間以内に放出される、項目17に記載の医薬組成物。
【0252】
19.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%が、例えば約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内または約6時間以内のような、約15時間以内に放出される、項目13〜18のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0253】
20.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%が、例えば約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内または約30分以内のような、約5時間以内に放出される、請求項13〜18のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0254】
21.インビトロの溶出試験が、USP溶出試験(パドル)および溶出媒体として2.5%SDSおよび1 g/mLのパンクレアチンを含むpH7.5の緩衝液を用いて行われる、項目16〜20のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0255】
22.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%または少なくとも約40重量%のような、少なくとも約20重量%が、例えば最初の2時間以内または最初の1時間以内のような、最初の3時間以内に放出される、項目13に記載の医薬組成物。
【0256】
23.医薬組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば最大で約7.5重量%または最大で約5重量%のような、最大でも約10重量%を、投与後、例えば最初の1時間以内のような、最初の2時間以内に放出するように、シロリムスまたはその類縁物質の遅延された放出を有する、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスまたはその類縁物質を含む微粒子の形態にある医薬組成物。
【0257】
24.例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロの溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%、最大で約15重量%または最大で約10重量%のような、最大でも約30重量%が2時間以内に放出される、項目23に記載の医薬組成物。
【0258】
25.例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロの溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約7.5重量%、最大で約5重量%、最大で約5重量%または最大で約2.5重量%のような、最大でも約10重量%が2時間以内に放出される、項目23または24に記載の医薬組成物。
【0259】
26.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロの溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約50重量%、最大で約40重量%または最大で約30重量%のような、最大でも約60重量%が、例えば約12時間以内のような15時間以内に放出される、項目23〜25のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0260】
27.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロの溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約30重量%、最大で約25重量%または最大で約20重量%のような、最大でも約40重量%が6時間以内に放出される、項目23〜26のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0261】
28.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような、最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロの溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%または最大で約15重量%のような、最大でも約30重量%が4時間以内に放出される、項目23〜27のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0262】
29.微粒子状物質が、例えば≧20 μmのような≧10 μm、約20〜約2000、約30〜約2000、約50〜約2000、約60〜約2000、例えば約100〜約1500 μm、約100〜約1000 μmもしくは約100〜700 μmのような約75〜約2000、または例えば50〜約350 μm、約50〜約300 μm、約50〜約250 μmもしくは約100〜約300 μmのような約50〜約400 μmのような、最大で約400 μmまたは最大で約300 μmの幾何学的重量平均直径dgwを有する、項目1〜28のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0263】
30.一以上の医薬的に許容される賦形剤が充填剤、崩壊剤、結合剤、希釈剤、滑沢剤およびグリダントからなる群から選択される、項目1〜29のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0264】
31.着香剤、着色剤、味覚マスキング剤、pH調整剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿潤調整剤、界面活性剤、懸濁化剤、吸収促進剤からなる群から選択される医薬的に許容される添加剤をさらに含む、項目1〜30のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0265】
32.少なくとも一以上の医薬的に許容される賦形剤が、ケイ酸またはシリケート、二酸化ケイ素おそびそれらのポリマーを含むそれらの誘導体もしくはそれらの塩;ケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび/またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ベントナイト、カオリン、三ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイトおよび/またはサポナイトからなる群から選択される、項目1〜31に記載の医薬組成物。
【0266】
33.ケイ酸もしくはその誘導体またはそれらの塩を含む、項目1〜32に記載の医薬組成物。
34.二酸化ケイ素またはそのポリマーを含む、項目1〜33に記載の医薬組成物。
【0267】
35.Aeroperl(アエロパール)(登録商標)300(ドイツ、フランクフルト、Degussaから入手可能)に相当する性質を有する二酸化ケイ素を含む、項目1〜34のいずれか一つに記載の医薬組成物。
36.油または油様物質を含む、項目1〜35のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0268】
37.組成物中の油状物質の濃度が、例えば約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上または約95重量%以上のような、約5重量%以上である、項目36に記載の医薬組成物。
【0269】
38.油状物の濃度が、例えば約25重量%〜約75重量%のような約20重量%〜約80重量%の範囲である、項目37に記載の医薬組成物。
39.シロリムスまたはその類縁物質の少なくとも一部が分子分散体および固溶体を含む固体分散体の形態にある、項目1〜38のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0270】
40.固体分散体が、シロリムスまたはその類縁物質の少なくとも一部を、固体分散体を形成するのに適した物質を含む有機溶媒に溶解し、次いで、例えば蒸発により有機溶媒を除去することにより製造される、項目39に記載の医薬組成物。
【0271】
41.固体分散体を形成するのに適した物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むセルロール誘導体、NaCMC、PVPおよびPVAからなる群から選択される、項目40に記載の医薬組成物。
【0272】
42.直径10.0 mmのノズルを有するロートからの物質の流速を測定する、Ph.Eur.に記載された方法により測定して、許容される流動性を有する、項目1〜41のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0273】
43.顆粒、ペレット、ミクロスフェア、ナノ粒子の製造における使用のための、項目1〜42のいずれか一つに記載の医薬組成物。
44.固体の投与形態の製造における使用のための、項目1〜43のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0274】
45.固体の投与形態が経口、口腔内または舌下投与ルートによる投与が意図される、項目44に記載の医薬組成物。
46.錠剤、カプセル剤またはサシェの形態の項目44または45に記載の医薬組成物。
【0275】
47.直接圧縮により得られる錠剤の製造における使用のための、項目1〜46のいずれか一つに記載の医薬組成物。
48.項目1〜47のいずれか一つに記載の医薬組成物を含む固体の投与形態。
【0276】
49.微粒子の形態での医薬組成物の濃度が、投与形態の、例えば約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20重量%〜約80重量%、約25重量%〜約80重量%、約30重量%〜約80重量%、約35重量%〜約80重量%、約40重量%〜約75重量%、約45重量%〜約75重量%または約50重量%〜約70重量%のような、約5〜100重量%の範囲である、項目48に記載の固体の投与形態。
【0277】
50.微粒子の形態での医薬組成物の濃度が、投与形態の50重量%以上である、項目48の固体の投与形態。
51.それを必要とする哺乳動物への経口投与で固体の投与形態が、AUC値が同様の条件下で測定されるとき、AUC/AUCControl値が少なくとも約1.3を示す、項目48〜50のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0278】
52.AUC値が同様の条件下で測定されるとき、AUC/AUCControl値が、約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上または約5.0以上のような、少なくとも約1.5である、項目51に記載の固体の投与形態。
【0279】
53.制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、より低い90%の信頼限界で少なくとも0.75を有する少なくとも約0.85の(AUCfed/AUCfasted)の値で明らかにされる食事による有意な悪影響を示さない、項目48〜53のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0280】
54.(AUCfed/AUCfasted)の値が、例えば約0.95以上、約0.97以上または約1以上のような約0.9以上である、項目53に記載の固体の投与形態。
【0281】
55.それを必要とする哺乳動物への経口投与で固体の投与形態が、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の最大でも約85重量%の用量で投与されたとき、その固体の投与形態が本質的にラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品と生物学的に同等である、項目48〜54のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0282】
56.用量が、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の、例えば最大で約75重量%、最大で約70重量%、最大で約65重量%、最大で約60重量%、最大で約55重量%または最大で約50重量%のような、最大でも約80重量%である、項目55に記載の固体の投与形態。
【0283】
57.生物学的同等性が、次のパラメータ:tmax、cmax、AUC0-t、AUC0-infinity、W50、W75および/またはMRTの少なくとも一つの手段により決定される、項目55または56に記載の固体の投与形態。
【0284】
58.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、同じ条件下および同等な治療効果を与える用量で投与されたラパミューン(登録商標)と比較して、胃腸管の副作用を低減させる、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともに、シロリムスまたはその類縁物質を含む固体の投与形態。
【0285】
59.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスまたはその類縁物質を放出し、同じ条件下および同等な治療効果を与える用量で投与されたラパミューン(登録商標)と比較して、個体間変動および/または個体内変動が低減された、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともに、シロリムスまたはその類縁物質を含む固体の投与形態。
【0286】
60.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、約24時間以内にシロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を放出する、項目48〜59のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0287】
61.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内または約3時間以内のような、約10時間以内にシロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%を放出する、項目60に記載の固体の投与形態。
【0288】
62.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内、約12時間以内、約10時間以内、8時間以内または約6時間以内のような、約24時間以内に、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%を放出する、項目60または61に記載の固体の投与形態。
【0289】
63.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内または約12時間以内のような、約24時間以内に放出される、項目60に記載の固体の投与形態。
【0290】
64.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約3時間以内または約2時間以内のような、約10時間以内に放出される、項目60〜63のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0291】
65.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の少なくとも約50重量%が、例えば約1時間以内、約0.75時間以内、約0.5時間以内または約20分間以内のような、約1.5時間以内に放出される、項目64に記載の固体の投与形態。
【0292】
66.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%が、例えば約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内または6時間以内のような、約15時間以内に放出される、項目61〜65のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0293】
67.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上または約80重量%以上のような、少なくとも約55重量%が、例えば約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間または30分間以内のような、約5時間以内に放出される、項目61〜66のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0294】
68.インビトロの溶出試験が、USP溶出試験(パドル)および溶出媒体として2.5%SDSおよび1 g/mLのパンクレアチンを含むpH7.5の緩衝液を用いて行われる、項目63〜67のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0295】
69.インビトロの溶出試験が行われ、pH7.5を有する緩衝液を含む溶出媒体を用いるとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%または少なくとも約40重量%のような、少なくとも約20重量%が、例えば最初の2時間以内または最初の1時間以内のような、最初の3時間以内に放出される、項目60に記載の固体の投与形態。
【0296】
70.固体の投与形態が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、シロリムスまたはその類縁物質の全量の、例えば最大で約7.5重量%または最大で約5重量%のような、最大でも約10重量%を、投与後、例えば最初の1時間以内のような、最初の2時間以内に放出するように、シロリムスまたはその類縁物質の遅延された放出を有する、項目48〜50のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0297】
71.例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%、最大で約15重量%または最大で約10重量%のような、最大でも約30重量が2時間以内に放出される、項目70に記載の固体の投与形態。
【0298】
72.例えば最大で約4.5、最大で約4、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような最大でも約5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験で、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば約最大で7.5重量%、最大で約5重量%または最大で約2.5重量%のような、最大でも約10重量%が2時間以内に放出される、項目70または71に記載の固体の投与形態。
【0299】
73.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約50重量%、最大で約40重量%または最大で約30重量%のような、最大で約60重量%が、例えば12時間以内のような15時間以内に放出される、項目70〜72のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0300】
74.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約30重量%、最大で約25重量%または最大で約20重量%のような、最大でも約40重量%が、6時間以内に放出される、項目70〜73のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0301】
75.例えば最大で約4.0、最大で約3.5、最大で約3、最大で約2または最大で約1.5のような最大でも約4.5のpHを有する溶出媒体を用いるインビトロ溶出試験が行われるとき、シロリムスまたはその類縁物質の、例えば最大で約25重量%、最大で約20重量%または最大で約15重量%のような、最大でも約30重量%が、4時間以内に放出される、項目70〜74のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0302】
76.ペレット、ビーズおよび/または顆粒のような複数の個々の単位を含む、項目48〜75のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
77.錠剤、カプセル剤またはサシェの形態の項目48〜76のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
78.錠剤の形態の項目77に記載の固体の投与形態。
【0303】
79.制御された様式でシロリムスを放出する目的で、個々の単位または固体の投与形態が、フィルムコーティング、修正される放出コーティング、腸溶コーティング、保護コーティングおよび抗付着性コーティングからなる群から選択されるコーティングで被覆される、項目77〜78のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0304】
80.固体の投与形態に含まれるシロリムスまたはその類縁物質の量が、それらの一日用量に相当する、項目48〜79のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
81.拡散によりシロリムスを放出するマトリックス中にシロリムスが埋め込まれる、項目48〜80のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0305】
82.放出の期間、マトリックスが実質的に損なわれない、項目81に記載の固体の投与形態。
83.侵食によりシロリムスを放出するマトリックス中にシロリムスが埋め込まれる、項目48〜81のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【0306】
84.シロリムスが実質的に水に不溶性のコーティングを通しての拡散により、その投与形態から放出される、項目48〜80のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
85.投与で、シロリムスが放出される複数の個々の単位に崩壊するポリデポーの投与形態の項目48〜80のいずれか一つに記載の固体の投与形態。
【図面の簡単な説明】
【0307】
【図1】有意な生物学的利用能を失うことなく、長期間、狭い治療ウインドー内に留まらせることができる血漿レベルをもった薬物の制御された放出を示した図である。
【図2】融点は、DSC曲線の線形増加が温度軸を横切る温度であることを示した図である。
【図3】経口投与による製剤Cのビーグル犬による血中濃度の経時変化を示した図である。
【図4】経口投与による製剤Dのビーグル犬による血中濃度の経時変化を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物が、哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、同じ条件下で投与されるラパミューン(登録商標)と比較して、個体間変動および/または個体内変動が低減された、一以上の医薬的に許容される賦形剤とともにシロリムスを含む医薬組成物。
【請求項2】
ビヒクルの融点に相当する温度でのシロリムスの溶解度が少なくとも0.5重量%であり、6人の健康な絶食対象者への投与後、Cmaxおよび/またはAUCinfの変動係数(CV)が最大でも30%である、80℃以下の融点を有するビヒクルを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ビヒクルの融点に相当する温度でのシロリムスの溶解度が少なくとも0.5重量%であり、4匹の健康な絶食犬への投与後、Cmaxおよび/またはAUCinfの変動係数(CV)が最大でも30%である、80℃以下の融点を有するビヒクルを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
AUCinfのCVが最大でも25%である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(CVcontrol−CV)/CVcontrol×100%の比が少なくとも20%であり、そのCVがCmaxおよび/またはAUCinfのCVであり、CVcontrolがコントロールとしてラパミューン(登録商標)錠を用いたCVとして同様の条件下で測定される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記の比が少なくとも25%である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
CVがCmaxのCVである、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記の比が、例えば少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%のような、少なくとも30%である、請求項5〜7のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項9】
CVがAUCinfのCVである、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ビヒクルが、リロMD50、ゲルシレ44/14、PEG 6000のようなPEG、ポロキサマー188のようなポロキサマー、モノムルス90 L12およびモノムルス90 35、ならびにそれらの混合物の少なくとも一つを含む、請求項1〜9のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項11】
固体の形態にある、請求項1〜10のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項12】
錠剤を含む固体の形態にある、請求項1〜11のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項13】
ビヒクル中のシロリムスの濃度が、最大で、70℃でのビヒクル中のシロリムスの溶解度に相当する、請求項1〜12のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項14】
ビヒクル中のシロリムスの濃度が、最大で約5重量%、最大で約4重量%、最大で約3重量%、最大で約2重量%または最大で約1重量%のような、最大でも約10重量%である、請求項1〜13のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項15】
組成物の製造が、シロリムスをビヒクル中に約50℃〜約80℃の範囲の温度で溶解する工程を含む、請求項1〜14のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項16】
固体の投与形態中に0.25 mgのシロリムスの一以上のマルチプラを含む、請求項1〜15のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項17】
約0.25 mg〜約5 mgのシロリムスを含む、請求項1〜16のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項18】
0.75 mg、1 mg、1.2 mg、1.5 mgまたは2 mgの用量のシロリムスを含む、請求項1〜17のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項19】
上記の用量の約50%〜約80%を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
組成物中のシロリムスの濃度が、例えば約0.05重量%〜約15重量%、約0.05〜約10重量%、約0.1重量%〜約10重量%のような、約0.05重量%〜約20重量%である、請求項1〜19のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項21】
組成物中のシロリムスの濃度が、約0.05重量%〜約5重量%、約0.1重量%〜約5重量%、約0.1重量%〜約2.5重量%、約0.5重量%〜約2.5重量%、約1重量%〜約2.5重量%または1重量%以下である、請求項1〜20のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項22】
ビヒクルが最大でも組成物の60重量%を構成する、請求項1〜21のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項23】
ビヒクルが、組成物の、例えば少なくとも約30重量%または少なくとも約40重量%のような、少なくとも20重量%を構成する、請求項1〜22のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項24】
シロリムスが、対象者に投与後、速い作用開始を与える様式で放出される、請求項1〜23のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項25】
T0.5hおよびTmaxが6人の健康な絶食の対象者または4匹の健康な絶食犬への投与後、平均値として測定されたとき、T0.5hが、例えばTmaxの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%のような、Tmaxの少なくとも50%である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
T0.5hおよびTmaxが6人の健康な絶食の対象者または4匹の健康な絶食犬への投与後、平均値として測定されたとき、T1hが、例えばTmaxの少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のような、少なくともTmaxの80%である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
Tmaxが、6人の健康な絶食の対象者に投与した後のTmaxの平均値として測定されたとき、例えば1.2時間、1.1時間または1時間のような、最大でも1.5時間である、請求項24〜26のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項28】
Tmaxが、4匹の健康な絶食犬に投与した後のTmaxの平均値として測定されたとき、例えば1.2時間、1.1時間または1時間のような、最大でも1.5時間である、請求項24〜27のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項29】
Tmax/Tmax, control×100%が、例えば最大で65%、最大で60%または最大で55%のような、最大でも70%である、請求項24〜28のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項30】
組成物が本質的にHPMCを含まない、請求項24〜29のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項31】
組成物がHPMCを含まない、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
米国薬局方(USP)によるインビトロの溶出試験で、シロリムスの少なくとも50重量%が24時間以内に放出される、請求項1〜31のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項33】
組成物が、哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、ラパミューン(登録商標)錠のCmaxの、例えば最大で約75%、最大で約70%、最大で約65%、最大で約60%、最大で約55%、最大で約50%、最大で約45%または最大で約40%のような、最大でも約80%のCmaxを示す、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でそのシロリムスを放出し、例えば約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約7時間以上、約8時間以上、約9時間以上、約10時間以上、約11時間以上、約12時間以上、約13時間以上または約14時間以上のような、約2時間以上のW50を示す、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、Cdiff= [Cmax - C (t=12時間)]でラパミューン(登録商標)錠のCdiffが100に設定されたとき、例えば約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下または約40以下のような、90以下のCdiffを示す、請求項32〜34のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項36】
組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、AUC値が同様の条件下で測定されたとき、AUC/AUCControl値が少なくとも約1.3である、請求項32〜35のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項37】
AUC値が同様の条件下で測定されたとき、AUC/AUCControl値が、約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上または約5.0以上のような、少なくとも約1.5である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
組成物が、それを必要とする哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、同じ条件下で投与されたラパミューン(登録商標)と比較して、胃腸管の副作用を低減させる、請求項32〜37のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項39】
組成物が、哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、少なくとも0.75のより低い90%の信頼限界を有する少なくとも約0.85の(AUC摂餌/AUC絶食)の値で示される食事による有意な悪影響を示さない、請求項32〜38のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項40】
(AUCfed/AUCfasted)の値が、例えば約0.95以上、約0.97以上または約1以上のような約0.9以上である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
組成物が、哺乳動物に経口投与されたとき、制御された様式でシロリムスを放出し、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の最大でも約85重量%の用量で投与されたとき、その組成物が本質的にラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品と生物学的に同等である、請求項32〜40のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項42】
用量が、ラパミューン(登録商標)または類似の市販のシロリムス含有製品の形態で投与されるシロリムスの用量の、例えば最大で約75重量%、最大で約70重量%、最大で約65重量%、最大で約60重量%、最大で約55重量%または最大で約50重量%のような、最大でも約80重量%である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
生物学的同等性が、次のパラメータ:tmax、cmax、AUC0-t、AUC0-infinity、W50、W75および/またはMRTの少なくとも一つにより決定される、請求項41または42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
ビヒクルが一以上の親水性、親油性、疎水性および/または両親媒性物質を含む、請求項1〜43のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項45】
シロリムスまたはその類縁物質の少なくとも一部が、分子分散体および固溶体を含む固体分散体の形態にある、請求項1〜44のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項46】
固体分散体が、シロリムスまたはその類縁物質の少なくとも一部を、固体分散体を形成するのに適した物質を含む有機溶媒に溶解し、次いで、例えば蒸発により有機溶媒を除去することにより製造される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
固体分散体を形成するのに適した物質がビヒクルである、請求項45または46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
固体分散体を形成するのに適した物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むセルロール誘導体、NaCMC、PVPおよびPVAからなる群から選択される、請求項45または46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
i)約50℃〜約80℃の温度でビヒクル中にシロリムスを溶解または分散させ、
ii)一以上の医薬的に許容される賦形剤を含む粉末または微粒子の形態の組成物に工程i)で得られる混合物を添加し、
iii)このようにして得られる粉末を医薬組成物に製造することを含む、請求項1〜48のいずれか一つに定義された医薬組成物の製造方法。
【請求項50】
工程ii)が、一以上の医薬的に許容される賦形剤含む粉末または微粒子の形態の組成物に、工程i)で得られる加熱された混合物を噴霧することを含む、請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−532953(P2008−532953A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500047(P2008−500047)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000135
【国際公開番号】WO2006/094507
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(504004315)ライフサイクル ファーマ エー/エス (5)
【氏名又は名称原語表記】LIFECYCLE PHARMA A/S
【Fターム(参考)】