説明

シングルナノ粒子担持化合物の製造方法、及び、当該製造方法により得られるシングルナノ粒子担持化合物

【課題】シングルナノ粒子担持化合物の製造方法、及び、当該製造方法により得られるシングルナノ粒子担持化合物を提供する。
【解決手段】平均粒径が10nm以下のセリア複合酸化物微粒子コロイドを、pH=4.5〜7.0にpH調整する工程、アルミナスラリーを、pH=6.0〜8.0にpH調整する工程、並びに、前記セリア複合酸化物微粒子コロイド及び前記アルミナスラリーを混合し、アルミナにセリア複合酸化物シングルナノ粒子が担持された、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程、を有することを特徴とする、シングルナノ粒子担持化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルナノ粒子担持化合物の製造方法、及び、当該製造方法により得られるシングルナノ粒子担持化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーに対する期待が高まっており、その内の一つの研究分野としてナノコンポジット材料を用いた材料開発が盛んに行われている。従来のコンポジット材料における分散相のサイズはせいぜいミクロンオーダーであり、そこから予測できる性能は複合則で予測できるレベルでしかなかった。しかし、ナノコンポジット材料においては、バルク材料とは異なる量子サイズ効果が現れ、原子間又は分子間相互作用が材料の特性に強く影響すること、及びマトリックスとの界面が飛躍的に増大すること等から、従来のコンポジット材料を遥かに凌駕する機能の発現が期待できる。
【0003】
ここで、ナノメートルサイズとは、一般的には、1nm〜数十nmのサイズのことを指す。これに対し、近年注目を集めているシングルナノメートルサイズとは、1nm〜10nmのサイズを指し、このようなサイズを持つシングルナノ粒子は、数十nmのサイズを持つナノ粒子と比較して、量子サイズ効果が大きく、新規材料としての機能発現効果が期待されている。
【0004】
金属複合酸化物微粒子を作製する技術は、その応用を含めてこれまでにもいくつか知られている。特許文献1には、一次粒子として活性アルミナ粒子を含み該一次粒子が凝集してなる二次粒子の表面に、Ceと、Zrと、Nd及びPrのうちの少なくとも一種の希土類金属Rとを含有するCeZr系複合酸化物の一次粒子が分散して担持されており、上記CeZr系複合酸化物の一次粒子にはCeOが15mol%以上60mol%以下の割合で含まれていることを特徴とする排ガス成分浄化用触媒材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された排ガス成分浄化用触媒材は、二次粒子である活性アルミナの表面に一次粒子を分散させて担持させた材料である。当該文献の明細書中の段落40乃至43によると、希土類金属Rのイオンを含む酸性溶液中に二次粒子粉末を分散させ、その後、当該酸性溶液中に塩基性溶液を添加混合することにより、CeZr系複合酸化物の前駆体の沈殿を二次粒子粉末の表面に析出させ、さらに、水洗、脱水、乾燥、焼成等を行うことにより、二次粒子表面にCeZr系複合酸化物の一次粒子が分散して担持されたサポート材粉末が得られる、と記載されている。しかし、当該文献には、単純な沈殿操作により生成したCeZr系複合酸化物が、二次粒子粉末の表面上でシングルナノメートルサイズであることを示す実験結果は、全く記載されていない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、シングルナノ粒子担持化合物の製造方法、及び、当該製造方法により得られるシングルナノ粒子担持化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシングルナノ粒子担持化合物の製造方法は、平均粒径が10nm以下のセリア複合酸化物微粒子コロイドを、pH=4.5〜7.0にpH調整する工程、アルミナスラリーを、pH=6.0〜8.0にpH調整する工程、並びに、前記セリア複合酸化物微粒子コロイド及び前記アルミナスラリーを混合し、アルミナにセリア複合酸化物シングルナノ粒子が担持された、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程、を有することを特徴とする。
【0008】
このような構成のシングルナノ粒子担持化合物の製造方法は、平均粒径を10nm以下に維持できるpHの範囲における前記セリア複合酸化物微粒子コロイドのゼータ電位と、前記アルミナスラリーのゼータ電位とが、同符号とならないように前記セリア複合酸化物微粒子コロイドのpH及び前記アルミナスラリーのpHを調整することにより、アルミナ担体とセリア複合酸化物微粒子とが反発することなく、アルミナ担体へのセリア複合酸化物微粒子の担持効率を向上させることができる。
【0009】
本発明のシングルナノ粒子担持化合物は、上記製造方法により製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平均粒径が10nm以下の、いわゆるシングルナノオーダーに維持できるpHの範囲における前記セリア複合酸化物微粒子コロイドのゼータ電位と、前記アルミナスラリーのゼータ電位とが、同符号とならないように前記セリア複合酸化物微粒子コロイドのpH及び前記アルミナスラリーのpHを調整することにより、アルミナ担体とセリア複合酸化物微粒子とが反発することなく、アルミナ担体へのセリア複合酸化物微粒子の担持効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】pH=3.4〜7.0にpH調整した際の、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子の粒径を示したグラフである。
【図2】pH=3〜12にpH調整した際の、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子、及び、実施例2のアルミナスラリーのゼータ電位を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.シングルナノ粒子担持化合物の製造方法
本発明のシングルナノ粒子担持化合物の製造方法は、平均粒径が10nm以下のセリア複合酸化物微粒子コロイドを、pH=4.5〜7.0にpH調整する工程、アルミナスラリーを、pH=6.0〜8.0にpH調整する工程、並びに、前記セリア複合酸化物微粒子コロイド及び前記アルミナスラリーを混合し、アルミナにセリア複合酸化物シングルナノ粒子が担持された、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程、を有することを特徴とする。
【0013】
上述した特許文献1のように、含浸法により一次粒子を金属酸化物に担持する場合は、溶媒だけでなく分散剤を除去する必要があるため、分散剤が分解する温度、通常の場合200〜500℃程度まで昇温する必要がある。ところが、発明者らが検討した結果、このような手法では、後述する比較例1及び比較例2において示すように、シングルナノ粒子は金属酸化物に担持されず、当該ナノ粒子同士で凝集してしまうことが明らかとなった。
また、従来法においては、シングルナノ粒子と担体である金属酸化物との電気的反発について、詳細な検討はされていなかった。発明者らは、シングルナノ粒子と担体のpH−ゼータ電位相関を検討し、当該相関によって、シングルナノ粒子と担体の混合前のpHの条件を導き出した。
【0014】
本発明のシングルナノ粒子担持化合物の製造方法は、セリア複合酸化物微粒子コロイドのpH調整工程と、アルミナスラリーのpH調整工程と、セリア複合酸化物微粒子コロイド及びアルミナスラリーを混合し、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程とを有する。このうち、上記2つのpH調整工程は、いずれを先に行っても構わないし、同時に行ってもよい。
以下、上記3工程について、順に説明する。
【0015】
1−1.セリア複合酸化物微粒子コロイドのpH調整工程
本工程に用いることができるセリア複合酸化物は、少なくともセリウム(Ce)元素及び酸素元素を含み、さらに他の元素を含む化合物であれば特に限定されない。この場合、当該他の元素としては、スカンジウム、イットリウム等の希土類元素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の第4族元素等を用いることができる。セリア複合酸化物の具体例としては、セリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物(CeO−ZrO−Y)、CeO−ZrO−Pr、CeO−ZrO−La−Y、CeO−ZrO−La−Y−Nd等が挙げられる。
【0016】
以下、本工程に用いることができる、セリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物の調製方法の典型例について詳細に述べる。なお、本調製方法は必ずしも当該典型例にのみ限定されるものではなく、結果として平均粒径が10nm以下のセリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物が得られる調整方法であれば、本典型例と異なる方法を用いてもよい。なお、本工程において、セリア複合酸化物微粒子コロイドの平均粒径とは、分散剤を添加した後の平均粒径であることが好ましい。
【0017】
まず、原料液としてセリウムイオンを有する溶液、ジルコニウムイオンを有する溶液、イットリウムイオンを有する溶液をそれぞれ用意する。なお、以下「溶液」という場合には、溶媒は特に限定されないが、例えば、水等を溶媒とする水溶液を挙げることができる。
セリウムイオンを有する溶液としては、具体的には、酢酸セリウム溶液、硝酸セリウム溶液、塩化セリウム溶液、シュウ酸セリウム溶液、クエン酸セリウム溶液、ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム((NHCe(NO)溶液等が挙げられる。
ジルコニウムイオンを有する溶液としては、具体的には、オキシ酢酸ジルコニウム溶液、オキシ硝酸ジルコニウム溶液、オキシ塩化ジルコニウム溶液、シュウ酸ジルコニウム溶液、クエン酸ジルコニウム溶液等が挙げられる。
イットリウムイオンを有する溶液としては、具体的には、酢酸イットリウム溶液、硝酸イットリウム溶液、塩化イットリウム溶液、シュウ酸イットリウム溶液、クエン酸イットリウム溶液等が挙げられる。
次に、セリウムイオンを有する溶液、ジルコニウムイオンを有する溶液、イットリウムイオンを有する溶液を、分散剤、中和剤及びpH調整剤等と混合・攪拌して、平均粒径が10nm以下のセリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物溶液を調製する。
【0018】
この時使用できる分散剤としては、ポリエチレンイミン(PEI)等のポリアルキレンイミン系の分散剤、ポリビニルピロリドン等のアミン系の分散剤や、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の、分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、或いは、1分子中に、ポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の、極性基を有する高分子分散剤等が挙げられる。また、その分子量は、100,000以下であるのが好ましい。
この時使用できる中和剤としては、無機塩溶液、無機酸又は無機塩基であれば特に限定されないが、具体的には、酢酸アンモニウム若しくはその水溶液、硝酸アンモニウム若しくはその水溶液、過酸化水素水、アンモニア若しくはその水溶液、塩化アンモニウム若しくはその水溶液、水酸化ナトリウム若しくはその水溶液、水酸化カリウム若しくはその水溶液、塩酸、シュウ酸、クエン酸等又はこれらの混合溶液が挙げられる。また、この時使用できるpH調整剤としては、無機酸又は無機塩基であれば特に限定されないが、具体的には、酢酸、硝酸等又はこれらの混合溶液が挙げられる。なお、pH調整法としては、中和剤に予めpH調整剤を混合しておくことが好ましい。
【0019】
上記セリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物溶液の調製時における混合・攪拌には、高速攪拌装置を用いることができる。当該高速攪拌装置を用いることによって、コロイド中のセリア複合酸化物微粒子同士が凝集せず、平均粒径を10nm以下に保つことができる。
ここで、高速攪拌装置とは、少なくとも、2以上の異なる微粒子コロイド又はその溶液を別々に装置内に導入できる機構(以下、導入機構と称する場合がある。)と、2以上の異なる微粒子コロイドを反応させる反応室と、合成された金属複合酸化物微粒子に所定のせん断力を与える機構(以下、せん断機構と称する場合がある。)を備える装置であれば、特に限定されない。
【0020】
導入機構としては、具体的には、2以上の異なる微粒子コロイド又はその溶液を独立に供給できる装置、及び、当該溶液供給装置から供給される原料溶液を反応室へと運搬するノズルという構成が例示できる。
反応室とは、異なる微粒子コロイドを反応させる微小空間を有していれば、特に限定されない。ここで、「微小空間」とは、少なくとも1つのセリア微粒子と、少なくとも1つのジルコニア微粒子と、少なくとも1つのイットリア微粒子とを反応させ、セリア複合酸化物微粒子を得ることができるのに十分な容積を持つ空間をいう。反応室は、具体的には、原料である微粒子の導入路及び目的生成物である微粒子の排出路を除いて密閉された空間であることが好ましく、また、数ナノ立方メートル〜数マイクロ立方メートルの容積を持つ空間であることが好ましい。
せん断機構としては、具体的には、高速攪拌機構を例示することができる。高速攪拌機構の具体例としては、高速回転可能なローターとステーターを備えたホモジナイザーを挙げることができる。ローターの回転数は可変であることが好ましく、且つ、少なくともローターの攪拌回転数が3200rpm以上(せん断速度に換算して17000sec−1に相当)に設定できることが好ましい。
【0021】
このように調製した分散剤を添加したセリア複合酸化物微粒子コロイドの平均粒径が、実際に10nm以下であることは、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いることによって確認できる。
【0022】
上記平均粒径が10nm以下のセリア複合酸化物微粒子コロイドを、上述した中和剤又はpH調整剤を用いて、pH=4.5〜7.0の範囲内とするようにpH調整する。後述する実施例において示すように、当該pHの範囲は、セリア複合酸化物微粒子コロイドが平均粒径10nm以下を維持することができるpH範囲である。
セリア複合酸化物微粒子コロイドのpHは、pH=5.0〜7.0であることが好ましく、6.0〜7.0であることが特に好ましい。
【0023】
1−2.アルミナスラリーのpH調整工程
アルミナスラリーのpH調整工程は、特に限定されないが、例えば、原料液としてアルミニウムイオンを有する溶液を、分散剤、中和剤又はpH調整剤等と混合・攪拌することにより調製することができる。なお、混合・攪拌には上述した高速攪拌装置を用いることもできる。調製したアルミナスラリーは、後述する実施例において示すように、セリア複合酸化物微粒子のゼータ電位と同符号とならないゼータ電位とするために、pH=6.0〜8.0にpH調整することが必要である。
この時使用できるアルミニウムイオンを有する溶液としては、硝酸アルミニウム溶液、塩化アルミニウム溶液、酢酸アルミニウム溶液、シュウ酸アルミニウム溶液、クエン酸アルミニウム溶液等が挙げられる。
また、この時使用できる分散剤、中和剤、pH調整剤としては、上述したものを用いることができる。なお、pH調整は、中和剤に予めpH調整剤を混合しておくことが好ましい。
アルミナスラリーのpHは、pH=6.5〜7.5であることが好ましく、7.0であることが特に好ましい。
なお、セリア複合酸化物微粒子コロイドのpHと、アルミナスラリーのpHとは、略同一のpHであることが、混合時にpHが変動しないという観点から好ましい。セリア複合酸化物微粒子コロイドのpHと、アルミナスラリーのpHとが、いずれも7.0であるのが最も好ましい。
【0024】
1−3.セリア複合酸化物微粒子コロイド及びアルミナスラリーを混合し、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程
本工程においては、特に混合方法は限定されず、具体的な混合方法としては含浸法等を用いることができる。混合には、上述した高速攪拌装置を用いることもできる。
【0025】
以下、含浸法を用いる場合について詳細に説明する。
まず、アルミナスラリーに対し、セリア複合酸化物微粒子コロイドを略一定の速度で滴下する。この時、滴下速度としては、1.0〜5.0mL/分の速度が好ましい。混合比は、所望のシングルナノ粒子担持化合物の元素比に合わせて、適宜調節できる。滴下終了後は、5〜24時間攪拌し、攪拌終了後にコロイド溶液を静置する。
【0026】
上記含浸法により得られたコロイド溶液から、遠心分離等により上澄を除去し、沈殿物を得る。当該沈殿物を100〜250℃の温度条件で乾燥させることにより、目的のシングルナノ粒子担持化合物が得られる。
【0027】
2.シングルナノ粒子担持化合物
本発明のシングルナノ粒子担持化合物は、上記製造方法により製造されることを特徴とする。
本発明のシングルナノ粒子担持化合物は、ナノ微粒子をシングルナノオーダーに維持した状態で担体上に保持しているため、シングルナノ粒子の特異な物性を発現させることが可能である。本発明のシングルナノ粒子担持化合物の具体的用途としては、大気浄化触媒の他、燃料電池用電極触媒、消臭・脱臭剤等が例示できる。
【実施例】
【0028】
1.セリア複合酸化物微粒子コロイドの製造
[実施例1]
セリア−ジルコニア−イットリア複合シングルナノ粒子の合成を行った。原料液として酢酸セリウム(Ce(CHCO・HO)(キシダ化学株式会社製)、オキシ酢酸ジルコニウム(ZrO(CHCO)(キシダ化学株式会社製)、酢酸イットリウム(Y(CHCO・4HO)(和光純薬工業株式会社製)からなる混合溶液を、中和剤としての酢酸アンモニウム溶液(CHCONH)(和光純薬工業株式会社製)に分散剤としてのポリエチレンイミン(PEI)と過酸化水素水(H)(和光純薬工業株式会社製)を加えた溶液を、それぞれ調製した。pH調整は、中和剤・分散剤混合溶液に酢酸を加えることにより行った。原料液及び中和剤・分散剤混合溶液を、高速攪拌装置で混合・攪拌することでセリア−ジルコニア−イットリア複合シングルナノ粒子コロイドを得た。動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置(ELS−Z:大塚電子株式会社製)により、このコロイド中に、粒径2.1±0.6nmの単分散なシングルナノ粒子が生成していることを確認した。
この高速攪拌装置は、高速攪拌機構、ノズル、溶液供給装置から構成され、高速攪拌機構は高速回転可能なローターとステーターを備えたホモジナイザーであり、ノズルは高速攪拌領域に配置され、原料液及び中和液・分散剤混合溶液を独立に導入できる機能を有し、溶液供給装置はノズルに接続されている。
【0029】
2.アルミナスラリーの製造
[実施例2]
針状Al(WRグレース(株)製、MI386)粉末をイオン交換水に分散させ、実施例2のアルミナスラリーを製造した。
【0030】
3.シングルナノ粒子担持化合物の製造
[実施例3]
実施例1で製造したセリア複合酸化物微粒子コロイドのpH、及び、実施例2で製造したアルミナスラリーのpHを、酢酸又はアンモニア水を加えることにより、いずれも7.0に調整した。
アルミナスラリーを攪拌しながら、セリア複合酸化物微粒子コロイドを2.5mL/分の速度で滴下した。混合比は、酸化物固体の質量比としてアルミナ:セリア複合酸化物微粒子=50:50とした。滴下終了後は12時間攪拌を続け、その後静置した。
静置後のコロイド溶液から、遠心分離により上澄を除去し、沈殿物を得た。当該沈殿物を120℃で乾燥させた後、実施例3のナノ粒子担持化合物を得た。
【0031】
[比較例1]
実施例1で製造したセリア複合酸化物微粒子コロイドのpH、及び、実施例2で製造したアルミナスラリーのpHを、酢酸又はアンモニア水を加えることにより、いずれも4.5に調整した。
後は、実施例3と同様に含浸法によるコロイド溶液の作製、遠心分離、乾燥を行い、比較例1のナノ粒子担持化合物を得た。
【0032】
[比較例2]
実施例1で製造したセリア複合酸化物微粒子コロイドのpH、及び、実施例2で製造したアルミナスラリーのpHを、酢酸又はアンモニア水を加えることにより、いずれも5.0に調整した。
後は、実施例3と同様に含浸法によるコロイド溶液の作製、遠心分離、乾燥を行い、比較例2のナノ粒子担持化合物を得た。
【0033】
4.粒径測定
実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合シングルナノ粒子に、酢酸又はアンモニア水を加えることでpHを調整しながら、動的光散乱法を用いた粒度分布測定装置により、pHごとの粒径を測定し、pHと粒径との相関を調べた。
図1は、pH=3.4〜7.0にpH調整した際の、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子の粒径を示したグラフである。なお、同じpHにおける異なる粒径のプロットは、同じpHに調整した異なるバッチのシングルナノ粒子についての測定結果を示している。
【0034】
図1から分かるように、セリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子は、pHが4.5未満の場合、特にpHが4未満の場合には、粒径が10nmを超えてしまい、シングルナノオーダーを維持することができない。これに対して、pH=4.5〜7.0の場合には、セリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子は1〜4nmの粒径を保っており、シングルナノ粒子として存在することが分かる。なお、pHが7を超える場合には、粒径が20を超えてしまい、したがって、セリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子は、シングルナノオーダーを維持することができない。
【0035】
5.ゼータ電位測定
実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合シングルナノ粒子、及び、実施例2のアルミナスラリーに、酢酸又はアンモニア水を加えることでpHを調整しながら、ゼータ電位測定装置(株式会社マイクロテック・ニチオン製、ZC−2000)により、pHごとのゼータ電位を測定し、pHとゼータ電位との相関を調べた。なお、アルミナスラリーは、PEIの有無でゼータ電位が変動することに留意し、本ゼータ電位測定に用いた実施例2のアルミナスラリーとしては、予めPEIを添加したものを用意した。
図2は、pH=3〜12にpH調整した際の、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子(黒丸のプロット)、及び、実施例2のアルミナスラリーのゼータ電位(白丸のプロット)を示したグラフである。
図から分かるように、pH=7.0以外のpHにおいては、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子のゼータ電位、及び、実施例2のアルミナスラリーのゼータ電位の符号は、いずれも同符号である。しかし、pH=7.0においては、実施例1のセリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子のゼータ電位が+40mVであるのに対し、実施例2のアルミナスラリーのゼータ電位は0mVであり、セリア複合ナノ粒子とアルミナスラリーのゼータ電位は、同符号とならない。したがって、pH=7.0の条件において、セリア−ジルコニア−イットリア複合ナノ粒子及びアルミナスラリーを混合することによって、当該セリア複合ナノ粒子とアルミナ粒子とが反発することなく、均一に混ざり合うことが示唆される。
【0036】
6.担持化合物の質量分析
実施例3、比較例1及び比較例2のナノ粒子担持化合物について、ICP−MS(Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry)分析を行った。
下記表1は、実施例3、比較例1及び比較例2のナノ粒子担持化合物のICP−MS分析結果をまとめたものである。なお、表1中、「CZY」とは、原料とした実施例1のセリア複合酸化物微粒子を、「Al」とは、原料とした実施例2のアルミナスラリー中のアルミナを、それぞれ指す。また、表1中の値の単位はすべて質量%であり、セリア複合酸化物微粒子とアルミナの質量の合計を100質量%として換算した値である。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から分かるように、比較例1及び比較例2のナノ粒子においては、セリア複合酸化物微粒子とアルミナの存在比が、仕込み時の存在比と大きく異なっていることから、セリア複合酸化物微粒子が効率よくアルミナに担持されず、遠心分離時に上澄に分散して除去されてしまったことが分かる。これに対し、実施例3のナノ粒子においては、セリア複合酸化物微粒子とアルミナの存在比(35.1:64.9)と、仕込み時の存在比(50:50.0)とが、比較例1又は比較例2の場合よりも大きく異ならないことから、セリア複合酸化物シングルナノ微粒子が効率よくアルミナに担持されていることが分かる。
【0039】
以上のpHと粒径との相関、pHとゼータ電位との相関から、pH=7.0において、セリア複合酸化物ナノ微粒子がシングルナノオーダーを維持し、且つ、セリア複合酸化物ナノ微粒子とアルミナとが、電気的に反発することなく均一に混合・分散することが明らかとなった。また、担持化合物の質量分析によって、本発明の方法により、セリア複合酸化物シングルナノ微粒子が効率よくアルミナに担持されていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が10nm以下のセリア複合酸化物微粒子コロイドを、pH=4.5〜7.0にpH調整する工程、
アルミナスラリーを、pH=6.0〜8.0にpH調整する工程、並びに、
前記セリア複合酸化物微粒子コロイド及び前記アルミナスラリーを混合し、アルミナにセリア複合酸化物シングルナノ粒子が担持された、シングルナノ粒子担持化合物を合成する工程、を有することを特徴とする、シングルナノ粒子担持化合物の製造方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載のシングルナノ粒子担持化合物の製造方法により製造されることを特徴とする、シングルナノ粒子担持化合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−144083(P2011−144083A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7083(P2010−7083)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】