説明

シングルモード光ファイバ

【課題】大容量のプリフォームからできる低減衰シングルモード光ファイバを提供する。
【解決手段】シングルモード光ファイバは、中心から周囲に、コア、少なくとも第1と第2の陥没クラッド、及び外側クラッドを有する。コアは、3.5μm〜5.5μmの半径(Rco)と、0〜3x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dnco−Dnout)とを有し、第1の陥没クラッドは、9μm〜15μmの半径(Rcl1)と、5.5x10−3〜−2.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dncl1−Dnout)とを有し、第2の陥没クラッドは、38μm〜42μmの半径(Rcl2)と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の第1の陥没クラッドとの屈折率差(Dncl2−Dncl1)とを有し、外側クラッドは、61.5μm〜63.5μmの半径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ透過の分野、より具体的にはシングルモード光ファイバ(SMF)の分野に関する。本発明は、大容量のプリフォーム(preform)から製造することができる低減衰シングルモード光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバについては、その屈折率分布が、一般に、屈折率をファイバの半径と関連付ける関数のグラフの形によって分類される。標準的なやり方では、ファイバの中心までの距離rが、x軸上に示され、y軸上に、ファイバ・クラッドの屈折率差が示される。これらの曲線は、一般に、ファイバの理論上又は規定分布を表すが、ファイバの製造上の制約によって、分布に僅かな差が生じることがある。光ファイバは、従来、光信号を伝達し場合によっては増幅する機能を有する光学コアと、コア内に光信号を閉じ込める機能を有する光学クラッドとからなる。この目的のため、コアの屈折率nと外側クラッドの屈折率nは、n>nのようになる。
【0003】
ステップ型屈折率ファイバは、SMF(「シングルモードファイバ」)とも呼ばれ、典型的には、光ファイバ伝送システムの線ファイバとして使用される。そのようなファイバは、特定の電気通信規格に従う波長分散及び波長分散勾配と、標準化された遮断波長及び実効面積値とを有する。
【0004】
様々なメーカーからの光学システム間の互換性の必要性に応じて、国際電気通信連合(ITU)は、SSMF(標準シングルモードファイバ)と呼ばれる標準光伝送ファイバが従うべき規格(基準ITU−T G.652)を定義した。
【0005】
例えば、G.652規格は、伝送ファイバに関して、波長1310nmでのモードフィールド径(MFD)に関して範囲[8.6;9.5μm]、ケーブル遮断波長の値に関しては最大1260nm、λと示されたゼロ分散波長の値に関して範囲[1300;1324nm]、及び波長分散勾配の値に関して最大0.092ps/nm−kmを推奨する。標準的なやり方では、ケーブル遮断波長は、国際電気標準会議の小委員会86Aによって規格IEC 60793−1−44で定義されたように、光信号が22メートルのファイバを伝搬後にシングルモードでなくなる波長として測定される。
【0006】
純粋なシリカ・コアを有するファイバも既知であり、純粋シリカ・コア・ファイバ(PSCF)と呼ばれる。PSCFのコア内にドーパントがないので、光損失と、特に波長1550nmでの減衰を制限することができる。したがって、PSCFは、慣例的に、屈折率を低くしかつコア内に光信号を閉じ込める機能を保証するためにフッ素がドープされたシリカのクラッドを有する。
【0007】
既知の方法では、実質的に、光ファイバは、ファイバ線引きタワーでプリフォームから線引きすることによって作成される。例えば、プリフォームは、ファイバのクラッドとコアの部分を作成するきわめて高品質のガラス管からなる一次プリフォームを含む。次に、この一次プリフォームは、その直径を大きくしかつ線引きタワーで使用できるプリフォームを形成するために、オーバークラッド又はスリーブ処理される。スケール調整された線引き操作は、プリフォームをタワー内に垂直方向に配置する段階と、プリフォームの端からファイバ素線を引き出す段階とからなる。この目的のため、シリカが軟化するまでプリフォームの一端を局部的に加熱し、次に、線引き速度と温度は、これらがファイバの直径を決定するので、線引き中にずっと監視される。プリフォームの形状は、線引きされたファイバが必要な分布を有するように、ファイバの屈折率と、コア及びクラッド径との比率に完全に従うようにしなければならない。
【0008】
一次プリフォームは、1層又は複数層のドープ/非ドープ・シリカを付着させてファイバのコアと内側クラッドを形成した基材管(一般に石英)からなることがある。基材管の内側の付着技術には、MCVD(改良化学蒸着法)、FCVD(炉化学蒸着法)、又はPCVD(プラズマ化学蒸着)が挙げられる。コアと内側クラッドに対応する層を付着させた後で、崩壊(collapsing)と呼ばれる操作中に管自体が閉じ込められる。CVD法は、OHピークがずっと低いままであり、したがって1385nmでの減衰が制限されることを保証する。
【0009】
一次プリフォームは、OVD(外部蒸着法)やVAD(気相軸付け法)などの外部蒸着法によって製造されたロッドから構成されてもよい。この場合は基材管が使用されず、ドープ及び/又は非ドープ・シリカ層は、開始ロッドに前駆体ガスとトーチを誘導することによって付着される。
【0010】
成分の付着は、一般に、「ドーピング」という表現で呼ばれ、即ち、シリカの屈折率を変化させるためにシリカに「ドーパント」が添加される。したがって、ゲルマニウム(Ge)又はリン(P)は、シリカの屈折率を高め、多くの場合、ファイバの中心コアをドープするために使用される。更に、フッ素(F)又はホウ素(B)は、シリカの屈折率を低下させ、フッ素は、多くの場合、陥没クラッド(depressed cladding)を形成するために使用される。
【0011】
一次プリフォームにきわめて大きく陥没したクラッドを作成するには、慎重を要する。実際には、例えば、特定の温度より高い温度の加熱シリカにはフッ素はあまり導入されないが、ガラスの作成には高い温度が必要である。PCVD法を効率的に使用して、付着管の内側に陥没クラッドを作成することができる。そのような製造法は、特許文献1と特許文献2に記載されており、この製造法によって、フッ素をシリカに大量に導入して大きく陥没したクラッドを形成することができる。純粋シリカ又はフッ素ドープ・シリカで作成された付着管を用意し、ガラス作業タワー内に取り付ける。次に、管を回転させ、シリカとドーパントのガス混合物を管に注入する。管は、ガス混合物が局所的に加熱されたマイクロ波キャビティを横切る。マイクロ波加熱によって、管に注入されたガスのイオン化によってプラズマが生じ、イオン化されたドーパントが、シリカ粒子と激しく反応し、その結果、管内側にドープ・シリカ層が付着する。マイクロ波加熱によって生成されたドーパントの高い反応性によって、高濃度のドーパントをシリカ層に導入することが可能である。
【0012】
図1は、従来のPSCFの規定屈折率分布を示す。図1の屈折率分布は、半径Rcoとシリカの屈折率に対応する屈折率Dncoの中心コアと、外径Rcl1と屈折率Dncl1の内側陥没クラッドとを示す。内側クラッドは、一次プリフォームのオーバークラッド化又はスリーブ化によって得られた外側クラッドDnoutの屈折率より低い屈折率を有するので、陥没したと言われる。この外側クラッドは、一般に、純粋なシリカ・ガラスのものであり、PSCFの中心コアと実質的に同じ屈折率を有する。典型的には、外側クラッドは、一次プリフォームを作成するために使用された基材管及び/又は必要な直径比になるように使用されるオーバークラッド又はスリーブで作成される。
【0013】
前述の構造では、中心コアと実質的に同じ屈折率を有する外側クラッドを有し、基本モードLP01は、完全には導かれず、漏れと呼ばれる追加損失を示す。これらの漏れ損失を最小にするには、外側の純粋シリカ・クラッド内を伝搬するエネルギーの割合を少なくしなければならない。したがって、フッ素ドープ内側クラッドの外径とコアの半径との比率(Rcl1/Rco)が、十分に大きくなければならず、即ち、内側陥没クラッド・シリカが、コア半径と、コア屈折率Dncoと内側クラッドDncl1の屈折率の屈折率差とに依存する値を有する臨界半径Rcl1まで少なくとも拡がっていなければならず、勧告G.652に準拠した規格SMFに関して、陥没クラッドの半径とコアの半径との比率が8以上(Rcl1/Rco>8)であれば、中心コア内の光信号の良好な閉じ込めと許容レベルの漏れ損失が保証される。
【0014】
MCVD法、FCVD法及びPCVD法は、高品質のコアと高度に陥没した大きな内側クラッドを得るには十分であるが、大容量のプリフォームが求められるときは高コストである。プリフォームの容量は、そのプリフォームから線引きできる光ファイバの長さの量と定義される。プリフォームの直径が大きいほど、この容量が大きい。製造コストを削減するには、同一のプリフォームから長い線形ファイバを線引きすることが望ましい。したがって、中心コアと陥没内側クラッドの直径に関する前述の制約に従うと同時に大きい直径のプリフォームを製造することが求められる。
【0015】
特許文献3又は特許文献4は、フッ素ドープ付着管を使用する一次プリフォームの作成を開示している。この解決策により、管の内側に付着されるフッ素ドープ層の量を制限することができる。特許文献5は、POD(プラズマ外部蒸着)又はOVDによるフッ素ドープ管の製作を開示している。
【0016】
フッ素ドープ付着管を使用するとき、一次プリフォームの陥没クラッドは、内側付着クラッドと管自体とからなる。それにより、管の内側の付着量を制限しながら、陥没クラッドの半径とコアの半径との比率を高めることができる。しかしながら、この解決策は、非ドープ・シリカ管の代わりにフッ素ドープ管を使用するときは付着条件が変化するので、きわめて太い管を使用することは難しく、最終的に、管の内側に付着される量の減少を制限する。
【0017】
特許文献6は、VAD又はOVDによってGeドープ・コア領域を構成するロッドを作成し、MCVDによって管の内側にクラッド領域を付着させる複合的な方法を開示している。次に、コア・ロッドとMCVDクラッド管は、ロッド・イン・チューブ法を使用して組み立てられる。しかしながら、この文献に開示されたファイバは、純粋シリカ・コアと陥没クラッドとの屈折率分布構造を有しておらず、その結果、固有の成果がなく、特に1383nmと1550nmの両方で低減衰を達成していない。
【0018】
特許文献7は、大きいプリフォームの製造方法を開示している。コアと内側クラッドは、後で完全に取り除かれる付着管内にCVDによって付着させられる。外側クラッドは、外部蒸着又はロッド・イン・チューブ法によって付着される。この文献は、非ゼロ分散シフト・ファイバ又は分散補償ファイバ用の1550nmでの減衰制御を目的とする。
【0019】
特許文献8は、きわめて大きいプリフォームの製造方法を開示している。コアは、後で完全に取り除かれる付着管内にMCVDによって付着される。次に、ドープしたオーバークラッド管を使用して、陥没領域を拡張することができる。
【0020】
しかしながら、上記文献はいずれも、漏れ損失が制御されかつ1385及び1550nmでの減衰が少ないPSCF又は少量アップドープ・コア・ファイバを開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国再発行特許発明第30,635号明細書
【特許文献2】米国特許第4,314,833号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0031582号明細書
【特許文献4】米国特許5,044,724号明細書
【特許文献5】国際公開第2010/003856号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0003198号
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0063878号
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0159124号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、特に1385nmと1550nmの両方で低減衰を有するPSCF又は少量アップドープ・コア・ファイバのために、ファイバの光学品質を維持しながら大容量の光ファイバ・プリフォームの製造を容易にすることを目的とする。
【0023】
この目的は、中心から周囲に、コア、少なくとも第1と第2の陥没クラッド、及び外側クラッドを有するシングルモード・ファイバによって達成され、コアは、3.5μm〜5.5μmの半径と、0〜3x10−3の外側クラッドとの屈折率差を有し、第1の陥没クラッドは、9μm〜15μmの半径と、−5.5x10−3〜−2.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差とを有し、第2の陥没クラッドは、38μm〜42μmの半径と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の第1の陥没クラッドとの屈折率差を有し、そして外側クラッドは、61.5μm〜63.5μmの半径を有する。
【0024】
一実施形態によれば、ファイバは、更に、第1と第2の陥没クラッドの間に位置決めされた第3の陥没クラッドを有し、前記第3の陥没クラッドは、15μm〜25μmの半径と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の第1の陥没クラッドとの屈折率差と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の第2の陥没クラッドとの屈折率差とを有する。
【0025】
実施形態によれば、ファイバは、更に、コアが、非ドープ・シリカで作成されること、外側クラッドが、非ドープ・シリカで作成されること、陥没クラッドがそれぞれ、フッ素ドープ・シリカで作成されること、ファイバが、1550nmの波長で0.18dB/km未満の減衰を有すること、ファイバが、1383nmの波長で0.35dB/km未満、より好ましくは0.32dB/km未満の減衰を有することの特徴のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0026】
本発明は、また、本発明によるシングルモード光ファイバを製造する方法を提案する。
【0027】
一実施形態によれば、本発明のファイバを製造する方法は、付着管を提供する段階と、付着管の内側に層付着を行なってコアと第1の陥没クラッドを構成する段階と、付着管を完全に取り除く段階と、第2の陥没クラッドを提供する段階と、外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを引き出す段階とを含む。
【0028】
付着管は、非ドープ石英で作成されてもよく、化学的エッチング又は火炎研磨によって、又は粉砕や研磨などの機械的技術を使用することによって除去されてもよい。これらの技術の組み合わせを使用して、付着管を取り除いてもよい。
【0029】
別の実施形態によれば、本発明のファイバを製造する方法は、フッ素ドープ・シリカで作成された付着管を提供する段階と、付着管の内側に層付着を行なってコアと第1の陥没クラッドを構成する段階と、第3の陥没クラッドを構成する付着管の周りに第2の陥没クラッドを提供する段階と、外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを線引きする段階とを含む。
【0030】
第2の陥没クラッドは、ドープ管によるスリーブ化、ドープ・シリカによるオーバークラッド化、及びドープ・シリカによる外部蒸着のいずれかによって作成することができる。
【0031】
別の実施形態によれば、本発明のファイバを製造する方法は、外部蒸着によってコア・ロッドを提供する段階と、少なくとも2つの連続した陥没クラッドを提供する段階と、外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを引き出す段階とを含む。
【0032】
連続した陥没クラッドはそれぞれ、ドープ管によるスリーブ化、ドープ・シリカによるオーバークラッド化、及びドープ・シリカによる外部蒸着のいずれかによって作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の特徴及び利点は、例として提供された本発明の実施形態の以下の説明を読み、添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0034】
【図1】先行技術の方法によるPSCFの既に述べた規定屈折率分布を示す図である。
【図2】本発明の第1と第3の実施形態によるファイバの規定屈折率分布を示す図である。
【図3】本発明の第1と第3の実施形態によるファイバの規定屈折率分布を示す図である。
【図4】本発明の第2と第3の実施形態によるファイバの規定屈折率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、低い伝送損失を有し、伝播特性の低下なしに低コストで製造することができるシングルモード・ファイバに関する。
【0036】
この目的のため、本発明は、減衰を制限し、特にゲルマニウム・ドーピングを伴うときの1550nmでの減衰を制限するために、非ドープ・シリカ・コア、又は少量アップドープ・シリカ・コアを有するファイバを提案する。コアの周りに幾つかの陥没クラッドが作成される。連続した陥没クラッドを提供することによって、きわめて大きいプリフォームを低コストで製造することができる。陥没クラッドの位置と寸法は、高次LP11モードの漏れ損失を、G.652勧告に従うケーブル遮断波長を保証するのに十分な高さに維持しながら、基本LP01モードの漏れ損失を最小にするように慎重に選択される。
【0037】
第1の実施形態では、本発明は、減衰を制限し特にOHピークによる1383nmでの減衰を制限するために、付着管の内側にCVDによってコアと内側陥没クラッドを作成することを目的とし、付着管は、次に完全に取り除かれ、外側陥没クラッドは、陥没領域を拡張するようにダウンドープ・スリーブ管又は外部蒸着法により作成される。そのような構成により、付着管の内側に付着された陥没内側クラッドの幅を小さくし、またこの基材管を中心コアにかなり近づけることができ、それにより、プリフォームの容量が大きくなり、製造コストが下がる。
【0038】
第2の実施形態では、本発明は、減衰を制限し、特にOHピークによる1383nmでの減衰を制限するために、ダウンドープされた付着管の内側にCVDによってコアと内側陥没クラッドを作成することを目的とし、陥没クラッドは、次に、ダウンドープ管又はOVDや他の外部蒸着法によって拡張される。この実施形態では、陥没クラッドは、ダウンドープ付着管の内側にCVDで作成された領域、ダウンドープ付着管により構成された領域、及びダウンドープ・スリーブ管又は外部蒸着法によって作成された領域の3つの異なる領域からなる。そのような構成により、ダウンドープ付着管の内側に付着された陥没内側クラッドの幅を小さくし、最終プリフォームの容量を高め、それにより製造コストを下げることができる。
【0039】
第3の実施形態では、本発明は、コアをOVD又はVAD法により作成してコア・ロッドを得ることを目的とする。コア・ロッドの上にスリーブ化されたドープ管によってかつ/又はOVDや他の外部蒸着法により、第1の陥没クラッド、第2の陥没クラッド、及び場合によっては第3の陥没クラッドを得ることができる。このようにして、フッ素ドープ・クラッドと共にVAD又はOVD法の使用と関連した1385nmでの固有の減衰問題が回避される。
【0040】
図2及び図3は、本発明の第1と第3の実施形態によるファイバの規定屈折率分布を示す。本発明のシングルモード・ファイバは、中心から周囲に向かって、コア、第1の陥没クラッド、第2の陥没クラッド、及び外側クラッドを有する。外側クラッドは、屈折率Dnoutを有する。外側クラッドは、非ドープ・シリカ又は少量ドープ・シリカでよい。コアは、3.5μm〜5.5μmの半径Rcoと、0〜3x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dnco−Dnout)とを有する。より好ましくは、コアは、0.5x10−3〜2.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差を有する。コアのドーピングが少し又は全くないと、1550nmでの減衰が確実に制限される。図2の実施形態では、コアは、外側クラッドと実質的に同じ屈折率を有する。この場合、コア及び/又は外側クラッドは、非ドープ・シリカ、少量ドープ・シリカ又は共ドープ・シリカで作成することができる。図3の実施形態では、コアは、外側クラッドより少し高い屈折率を有する。この場合、コアは、少量ドープ・シリカ又は共ドープ・シリカで作成されてもよく、外側クラッドは、コストを最小にするために非ドープ・シリカで作成されてもよい。
【0041】
第1の陥没クラッドは、9μm〜15μmの半径Rcl1と、−5.5x10−3〜−2.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dncl1−Dnout)とを有する。第1の陥没クラッドの半径は、図1の先行技術の内側陥没クラッドの半径より小さいので、CVDとコスト制御による蒸着が確実に制限される。2つの陥没クラッドだけが陥没領域を構成する場合(図2と図3に示されたような)、第2の陥没クラッドは、38μm〜42μmの半径Rcl2と、外側クラッドとの屈折率差(Dncl2−Dnout)とを有し、その結果、第1の陥没クラッドと第2の陥没クラッドの屈折率差(Dncl2−Dncl1)は、−0.5x10−3〜0.5x10−3になる。
【0042】
図4は、本発明の第2と第3の実施形態によるファイバの規定屈折率分布を示す。この実施形態によれば、第1と第2の陥没クラッドの間に第3の陥没クラッドが提供される。3つの陥没クラッドが、陥没領域を構成するときは(図4に示されたように)、第3の陥没クラッドは、15μm〜25μmの半径Rcl3を有し、即ち、第3の陥没クラッドは、9μm〜15μmの半径を有する第1の陥没クラッドと、38μm〜42μmの半径を有する第2の陥没クラッドとの間に追加される。第3の陥没クラッドは、外側クラッドとの屈折率差(Dncl3−Dnout)を有し、その結果、第1と第2の両方の陥没クラッドとの屈折率差(Dncl3−Dncl1とDncl3−Dncl2)は、−0.5x10−3〜0.5x10−3になる。
【0043】
第2及び第3の陥没クラッドのサイズと屈折率は、第1及び第2の陥没クラッドの半径及び屈折率に対して、G.652勧告にしたがって漏れ損失を制限しかつ遮断波長を保証するように選択される。
【0044】
外側クラッドは、シリカを主成分とする材料によるオーバークラッド化、石英管によるスリーブ化、又は任意の外部蒸着法によって得られる。例えば、APVD(強化プラズマ蒸着)を使用して外側クラッドを作成することができる。ファイバは、62.5μm±1μmの半径Routを有する外側クラッドにより標準化された外径を有する。
【0045】
第1の実施形態によれば、2つの陥没クラッド領域(図2又図3に示されたようた)を有する本発明のファイバを製造することができる。
【0046】
コアと第1の陥没クラッドは、付着管の内側に付着によって得られ、2の陥没クラッドは、ダウンドープ管でスリーブ化するか外部蒸着法を使用することによって得られる。したがって、第1の陥没クラッドの粘度及び/又は屈折率値は、第2の陥没クラッド内の粘度及び/又は屈折率値と異なることがある。
【0047】
より具体的には、付着管が提供され、ファイバのコアと第1の陥没クラッドが、前記管の内側にCVDによって付着させられる。次に、管は、コアと第1の陥没クラッドの付着が完了した後で完全に取り除かれる。したがって、非ドープ石英管を使用して、パラメータが制御された状態でCVDを実行することができる。特に、コアと第1の陥没クラッドは、PCVD、MCVD又はFCVDによって付着させることができる。管は、付着が完了した後で化学的エッチング及び/又は機械研磨によって除去することができる。
【0048】
付着管を除去した後で、コアと第1の陥没クラッドは、ドープ管(例えば、フッ素ドープ管)でスリーブ化される。フッ素ドープ管は、例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5から知られている。しかしながら、これらの文献は、内部付着にそのようなフッ素ドープ管を使用することを教示している。
【0049】
ドープ管によるスリーブ化は、第2の陥没クラッドを構成することによるプリフォームの陥没領域の拡張を可能にする。コアに最も近い第1の陥没クラッドだけが、CVDによって付着され、第2の陥没クラッドが、スリーブによって追加される。CVD付着の量が限定され、プリフォームのコストが低減され、同時に、大きい陥没領域が得られる。最後に、プリフォームは、要求された直径比を達成するように、シリカを主成分とする材料でオーバークラッドされるか石英管でスリーブ化される。大きいプリフォームの場合、原価管理にはオーバークラッドが好ましい。
【0050】
第2の実施形態によれば、3つの陥没クラッド領域(図4に示されたように)を有する本発明のファイバを製造することができる。
【0051】
コアと第1の陥没クラッドは、第3の陥没クラッドを構成するダウンドープ付着管の内側に付着によって得られ、第2の陥没クラッドは、ダウンドープ管でスリーブ化するか外部蒸着法を使用することによって得られた。第2の実施形態と同じように、コアに最も近い第1の陥没クラッドは、PCVD、MCVD又はFCVDによって付着させることができる。CVD付着の量が制限され、プリフォームのコストが低減され、同時に大きい陥没領域が得られる。
【0052】
フッ素ドープ管は、例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5で知られている。これらの文献が、内部付着のためにそのようなフッ素ドープ管を使用することを教示しているが、最終プリフォームの容量を大幅に高めることを可能にする付着管を取り囲む更に他の陥没クラッドについは示していない。プリフォームは、最終的に、要求された直径比に達するように、シリカ系材料でオーバークラッドされるか、石英管でスリーブ化される。大きいプリフォームの場合、原価管理にはオーバークラッドが好ましい。
【0053】
第3の実施形態によれば、2又は3つの陥没クラッド領域(図2、図3及び図4に示されたような)を有する本発明のファイバは、第1の陥没クラッド、第2の陥没クラッド及び第3の陥没クラッドを得るために外部蒸着法及び/又はドープ管を使用して製造することができる。したがって、各陥没クラッドの粘度及び/又は屈折率値は、他の陥没クラッドの粘度及び/又は屈折率値とは異なってもよい。
【0054】
より具体的には、コア・ロッドは、OVD又はVADによって得ることができ、各陥没クラッドは、任意の外部蒸着法又はドープ管によるスリーブ化によって得ることができ、また外側クラッドは、要求された直径比に達するようにシリカを主成分とする材料(例えば、APVDによる)を有するオーバークラッド化又は石英管によるスリーブ化によって得ることができる。
【0055】
下の表1は、本発明によるファイバの規定分布の例(実施例1〜5)、本発明の範囲外のファイバの規定分布の例(実施例2b及び3b)、及び比較例(図1に示されたような規定分布)を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
下の表2は、前述の7つの実施例と比較例のファイバの光学特性を示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表3は、前述の7つの実施例と比較例のファイバの曲げ損失(bending loss)と減衰を表す。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例2b及び3bは、第1と第2の陥没クラッド間の屈折率差(Dncl2−Dncl1)が大き過ぎ、即ち±0.5x10−3を超えるので、本発明の範囲外にある。表2から、実施例2bが、G.652勧告に準拠しない遮断波長を有し、実施例3bが、高漏れ損失、高曲り損失、及び高減衰量を有することは明らかである。
【0062】
表2から、本発明のファイバが、前述のG.652規格に完全準拠していることが分かる。また、表2から、漏れ損失が本発明のファイバ内で制御されることも分かる。
【0063】
表3から、マクロベンド損失が、本発明のファイバ内に制御されることが分かる。したがって、本発明のファイバをユーザに対する光ファイバ・システムに使用することができる。また、表2は、本発明のファイバの減衰が制限され、特に1383nmでの減衰が制限されることを示す。1550nmにおける減衰は、0.18dB.km未満であり、1383nmにおける減衰は、0.35dB/km未満、あるいは0.32dB/kmである。石英管を使用して少量ドープ・シリカ・コアを付着させることにより、OHピークを低下させることができ、付着管の除去は、ファイバの光学特性を脅かさない。
【0064】
本発明のファイバを大容量プリフォームから製造することができる。180mmの断面積を有する付着管は、崩壊後に第1の陥没クラッドの半径Rcl110mmになり、実施例1、4及び5では外径83.3mmの最終プリフォームが得られ、実施例2では外径90.6mmの最終プリフォームが得られ、実施例3では外径131.6mmの最終プリフォームが得られた。比較として、付着管が、外側クラッドの一部として保持されたとき(比較例)、外径30.5mmの最終プリフォームが得られ、付着管が、ダウンドープされ、更に他の陥没クラッドなしに使用されたときは、崩壊後に陥没クラッドの端が半径12.5mmになり(ファイバ上の40μm〜等価)、外径39mmの最終プリフォームが得られる。したがって、本発明のファイバを最小コストで製造することができる。実際には、付着管(Rcl1)の内側に付着された陥没クラッドの幅は、本発明のファイバの規定分布の状態ではかなり小さくなる。
【0065】
本発明が、実施例として示された実施形態に限定されないことに注意されたい。詳細には、図の規定分布は、例として提供され、説明された製造方法は限定ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から周囲に、コアと、少なくとも第1と第2の陥没クラッドと、外側クラッドと、を有するシングルモード光ファイバであって、
前記コアは、3.5μm〜5.5μmの半径(Rco)と、0〜3x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dnco−Dnout)を有し、
前記第1の陥没クラッドは、9μm〜15μmの半径(Rcl1)と、5.5x10−3〜−2.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dncl1−Dnout)を有し、
前記第2の陥没クラッドは、38μm〜42μmの半径(Rcl2)と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の第1の陥没クラッドとの屈折率差(Dncl2−Dncl1)を有し、
前記外側クラッドは、61.5μm〜63.5μmの半径を有するシングルモード光ファイバ。
【請求項2】
前記シングルモード光ファイバは、更に、前記第1と第2の陥没クラッドの間に配置された第3の陥没クラッドを有し、
前記第3の陥没クラッドは、15μm〜25μmの半径(Rcl3)と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の前記第1の陥没クラッドとの屈折率差(Dncl3−Dncl1)と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の前記第2の陥没クラッドとの屈折率差(Dncl3−Dncl2)とを有する、請求項1に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項3】
前記コアが、非ドープ・シリカで作成された、請求項1又は2に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項4】
前記外側クラッドが、非ドープ・シリカで作成された、請求項1〜3のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項5】
前記陥没クラッドがそれぞれ、フッ素ドープ・シリカで作成された、請求項1〜4のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項6】
1550nmの波長で0.18dB/km未満の減衰を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項7】
1383nmの波長で0.35dB/km未満の減衰を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項8】
1383nmの波長で0.32dB/km未満の減衰を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの特徴を有するシングルモード光ファイバを製造する方法であって、
付着管を提供する段階と、
前記付着管の内側に層付着を行って前記コアと前記第1の陥没クラッドを構成する段階と、
前記付着管を完全に取り除く段階と、
前記第2の陥没クラッドを提供する段階と、
前記外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、
前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを線引きする段階とを含む方法。
【請求項10】
前記付着管が、非ドープ石英で作成された、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記付着管を除去する段階は、化学的エッチング、火炎研磨、粉砕、研磨、又はこれらの組み合わせによって行われる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項2の特徴を有するシングルモード光ファイバを製造する方法であって、
フッ素ドープ・シリカで作成された付着管を提供する段階と、
前記付着管の内側に層付着を行って前記コアと前記第1の陥没クラッドを構成する段階と、
第3の陥没クラッドを構成する付着管の周囲に前記第2の陥没クラッドを提供する段階と、
前記外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、
前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを引き出す段階とを含む方法。
【請求項13】
前記第2の陥没クラッドは、
ドープ管によるスリーブ化、ドープ・シリカによるオーバークラッド化、ドープ・シリカによる外部蒸着のうちの1つによって作成された、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかの特徴を有するシングルモード光ファイバを製造する方法であって、
外部蒸着によってコア・ロッドを提供する段階と、
少なくとも2つの連続した陥没クラッドを提供する段階と、
前記外側クラッドを提供し、それにより光学プリフォームを提供する段階と、
前記光学プリフォームからシングルモード光ファイバを線引きする段階とを含む方法。
【請求項15】
前記連続した陥没クラッドはそれぞれ、
ドープ管によるスリーブ化、ドープ・シリカによるオーバークラッド化、ドープ・シリカによる外部蒸着のうちの1つによって作成された、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247780(P2012−247780A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−115438(P2012−115438)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【出願人】(507112468)ドラカ・コムテツク・ベー・ベー (39)
【Fターム(参考)】