説明

シンコナアルカロイド触媒不斉マンニッヒ反応

【課題】光学活性なカルバメートで保護されたキラルアルキルアミンの合成に適した触媒不斉マンニッヒ反応によるキラル非ラセミアミンの生成方法の提供。
【解決手段】有機触媒によって触媒される、安定なα−アミドスルホンからカルバメートで保護されたイミンのその場生成を伴う高エナンチオ選択的マンニッヒ反応。この反応は、芳香族および脂肪族アルデヒドを光学活性なアリールおよびアルキルβ−アミノ酸へと変換させる、簡潔で高エナンチオ選択的な経路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2006年12月20日に出願した、米国仮特許出願第60/875,900号の優先権を主張するものであり、ここに参照することにより、本明細書に援用する。
【政府の支援】
【0002】
本発明は、合衆国国立保健研究所により提供された政府支援番号GM61591の下で行われた。したがって、合衆国政府は本発明に特定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、有機触媒によって触媒される、安定なα−アミドスルホンからカルバメートで保護されたイミンをその場生成する高エナンチオ選択的マンニッヒ反応に関する。この反応は、芳香族および脂肪族アルデヒドを光学活性なアリールおよびアルキルβ−アミノ酸へと変換させる、簡潔で高エナンチオ選択的経路を提供する。
【背景技術】
【0004】
触媒エナンチオ選択的マンニッヒ反応は、光学活性キラルアミン生成のための最も用途が広く魅力的な手法の1つを提供する。参照:非特許文献1〜4。
【0005】
この数年に亘り、キラル金属触媒およびキラル有機触媒の両方が長足の進歩を遂げているのに対し、触媒不斉マンニッヒ反応は、カルバメートで保護されたアリールおよびアルキルイミンを基質とするものを含めて、ほんのわずかにすぎない。キラル金属錯体を触媒とする触媒不斉マンニッヒ反応の最近の報告については、非特許文献5〜18を参照。キラル有機触媒を触媒とする不斉マンニッヒ反応の最近の報告については、非特許文献19〜36を参照。相間移動触媒を触媒とする不斉マンニッヒ反応の最近の報告については、非特許文献37を参照のこと。
【0006】
パロモ(Palomo)、ならびに、エレーラ(Herrera)、ベルナルディ(Bernardi)およびリッチ(Ricci)のグループは、それぞれ、キラル相間移動触媒によって促進される、α−アミドスルホン1Aからカルバメートで保護されたアリールおよびアルキルイミンをその場生成する高エナンチオ選択的アザ・ヘンリー(aza-Henry)反応について報告し、それによって、安定なα−アミドスルホン1を対応するアザ-ヘンリー(マンニッヒ)付加物に直接変換させる不斉マンニッヒ反応を確立させた。非特許文献38、39。N−アシルイミノ誘導体の安定な前駆体としてα−アミドスルホンを利用する包括的な文献については、非特許文献40を参照。
【非特許文献1】Marques, M. M. B. Angew. Chem., Int. Ed. 2006, 45, 348
【非特許文献2】Shibasaki, M.; Matsunaga, S. J. Organomet. Chem. 2006, 691, 2089
【非特許文献3】Cordova, A. Acc. Chem. Res. 2004, 37, 102
【非特許文献4】Kobayashi, S.; Ueno, M. In Comprehensive Asymmetric Catalysis Supplement I; Jacobsen, E.N., Pfaltz, A., Yamamoto, H., Eds.; Springer: Berlin, 2003 Chapter 29.5
【非特許文献5】Sasamoto, N.; Dubs, C.; Hamashima, Y.; Sodeoka, M. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14010
【非特許文献6】Trost, B. M.; Jaratjaroonphong, J.; Reutrakul, V. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2778
【非特許文献7】Ihori, Y.; Yamashita, Y.; Ishitani, H.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 15528
【非特許文献8】Harada, S.; Handa, S.; Matsunaga, S.; Shibasaki, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4365
【非特許文献9】Hamashima, Y.; Sasamoto, N.; Hotta, D.; Somei, H.; Umebayashi, N.; Sodeoka, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 1525
【非特許文献10】Kobayashi, S.; Ueno, M.; Saito, S.; Mizuki, Y.; Ishitani, H.; Yamashita, Y. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101, 5476
【非特許文献11】Akiyama, T.; Itoh, J.; Yokota, K.; Fuchibe, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 1566
【非特許文献12】Josephsohn, N. S.; Snapper, M. L.; Hoveyda, A. H. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 3734
【非特許文献13】Marigo, M.; Kjaersgaard, A.; Juhl, K.; Gathergood, N.; Jorgensen, K. A. Chem. Eur. J. 2003, 9, 2359
【非特許文献14】Natsunnga, S.; Kumagai, N.; Harada, S.; Shibasaki, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4712
【非特許文献15】Kobayashi, S.; Matsubara, R.; Nakamura, Y.; Kitagawa, H.; Sugiura, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2507
【非特許文献16】Bernardi, L; Gothelf, a. Hazell, R. Jorgensen, K. A. J. Org. Chem, 2003, 68, 2583
【非特許文献17】Trost, B. Terrell, L. R. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 338
【非特許文献18】Kobayashi, S.; Hamada, T.; Manabe, K. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 5640
【非特許文献19】Zhang, H. L.; Mifsud, M.; Tanaka, F.; Barbas, III, C. F. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 9630
【非特許文献20】Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6048
【非特許文献21】Tillman, A. L.; Ye, J.; Dixon, D.J. Chem. Commun. 2006, 1191
【非特許文献22】Ting, A.; Lou, S.; Schaus S. E. Org Lett. 2006, 8, 2003
【非特許文献23】Mitsumori, S.; Zhang H.; Cheong, P. H.; Houk, K. N.; Tanaka, F.; Barbas, C. F., III. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 1040
【非特許文献24】Kano, T.; Yamaguchi, Y.; Tokuda, O.; Maruoka, K. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16408
【非特許文献25】Lou, S.; Taoka, B.M.; Ting, A.; Schaus, S. E. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11256
【非特許文献26】Poulsen T. B.; Alemparte, C.; Saaby, S.; Bella, M.; Jorgensen, K. A. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2896
【非特許文献27】Uraguchi, D.; Terada, M. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5356
【非特許文献28】Notz, W.; Tanaka, F.; Barbas III, C. F. Acc. Chem. Res. 2004, 37, 5801
【非特許文献29】Zhuang, W.; Saaby, S.; Jorgensen, K. A. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4476
【非特許文献30】Cordova, A. Chem. Eur. J. 2004, 10, 1987
【非特許文献31】Notz, W.; Watanabe, S.-I.; Chowdari, N. S.; Zhong, G.; Betancort, J. M.; Tanaka, F.; Barbas, III, C. F. Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 1131
【非特許文献32】Hayashi, Y.; Tsuboi, W.; Ashimine, I.; Urushima, T.; Shoji, M.; Sakai, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3677
【非特許文献33】Wenzel, A. G.; Lalonde, M. P.; Jacobsen, E. N. Synlett 2003, 1919
【非特許文献34】Wenzel, A. G.; Jacobsen, E. N. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12964
【非特許文献35】List B.; Pojarliev, P.; Biller, W. T.; Martin, H. J. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 827
【非特許文献36】List, B. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 9336
【非特許文献37】Okada, A.; Shibuguchi, T.; Ohshima, T.; Masu, H.; Yamaguchi, K.; Shibasaki, M. Angew Chem., Int. Ed. 2005, 44, 4564
【非特許文献38】Palomo, C.; Oiarbide, M.; Laso, A.; Lopez, R. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 17622
【非特許文献39】Fini, F.; Sgarzani, V.; Pettersen, D.; Herrera, R. P.; Bernardi, L.; Ricci, A. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 7975
【非特許文献40】Petrini, M. Chem. Rev. 2005, 105, 3949
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルバメートで保護されたアルキルイミンの不安定な性質が、光学活性なカルバメートで保護されたキラルアルキルアミンの合成に適した触媒不斉マンニッヒ反応の開発を大きく妨げている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
有機触媒によって触媒される、安定なα−アミドスルホンからカルバメートで保護されたイミンをその場生成する高エナンチオ選択的マンニッヒ反応が開発されている。この反応は、芳香族および脂肪族アルデヒドを光学活性なアリールおよびアルキルβ−アミノ酸へと変換させる、簡潔で高エナンチオ選択的経路を提供する。
【0009】
本発明の1つの態様は、キラル非ラセミアミンの生成方法であって、求核剤と、塩基と、キラル非ラセミ触媒と、N−アシルイミン、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、N−アラルケニルオキシカルボニルイミン、N−アルキルアミノカルボニルイミン、N−アリールアミノカルボニルイミン、N−アラルキルアミノカルボニルイミン、N−アミノカルボニルイミン、N−アルケニルアミノカルボニルイミン、N−アラルケニルアミノカルボニルイミン、N−アルキルチオカルボニルイミン、N−アリールチオカルボニルイミン、N−アリールオキシチオカルボニルイミン、N−アルコキシチオカルボニルイミン、N−アラルコキシチオカルボニルイミン、N−アリールアミノチオカルボニルイミン、N−アラルキルアミノチオカルボニルイミン、N−アルケニルオキシチオカルボニルイミン、N−アルケニルアミノチオカルボニルイミン、N−アミノチオカルボニルイミン、N−アルキルアミノチオカルボニルイミン、N−アラルケニルオキシチオカルボニルイミン、N−アラルケニルアミノチオカルボニルイミン、N−アルキルスルホニルイミン、N−アリールスルホニルイミン、N−アラルキルスルホニルイミン、N−アルケニルスルホリルイミン、N−アリールホスホリルイミン、N−アラルキルホスホリルイミン、N−アルケニルホスホリルイミンおよびN−アルキルホスホリルイミンからなる群より選択される基質とを反応させる工程を有してなり、前記キラル非ラセミ触媒は、第3級アミン、ホスフィン、またはアルシンであり、前記キラル非ラセミ触媒は、前記求核剤の前記基質への付加を触媒して、キラル非ラセミアミンを生じさせる、キラル非ラセミアミンの生成方法に関する。
【0010】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、またはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0011】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、またはN−アラルコキシカルボニルイミンであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0012】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アリルオキシカルボニルイミン、N−ベンジルオキシカルボニルイミン、N−t−ブトキシカルボニルイミン、N−2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルイミン、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニルイミンまたはN−9−フルオレニルメトキシカルボニルイミンであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0013】
ある実施の形態では、本発明は、さらに、N−α−ホスホニルアルキルO−アルキルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アルキルカルバメート、 N−α−ハロアルキルO−アルキルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アリールカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アリールカルバメート、N−α−ハロアルキルO−アリールカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキル O−アルケニルカルバメート、 N−α−ハロアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキル O−アラルキル カルバメート、 N−α−スルホニルアルキル O−アラルキル カルバメート、N−α−ハロアルキル O−アラルキルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキル O−アラルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アラルケニルカルバメート、またはN−α−ハロアルキルO−アラルケニルカルバメートと塩基を反応させて、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、またはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンを生成する工程を含む、前記方法に関する。
【0014】
ある実施の形態では、本発明は、さらに、N−α−スルホニルアルキルO−アルキルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アリールカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アラルキル カルバメート、またはN−α−スルホニルアルキルO−アラルケニルカルバメートと塩基を反応させて、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、またはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンを生成する工程を含む、前記方法に関する。
【0015】
ある実施の形態では、本発明は、前記求核剤がマロネート、ケトエステル、ニトロアルカン、アリールニトロアルカン、シクロアルキルニトロアルカン、およびヘテロサイクリックニトロアルカンからなる群より選択されることを特徴とする、前記方法に関する。
【0016】
ある実施の形態では、本発明は、前記求核剤がマロネートであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0017】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒が第3級アミンであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0018】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0019】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ、DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHN、DHQD−PHN、QD−PH、QD−AN、QD−NT、QD−AC、QD−CH、QD−IP、QD−(−)−MN、QD−AD、Q−PH、Q−AN、Q−NT、Q−CH、Q−AC、Q−IP、Q−(−)−MN、Q−AD、9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0020】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒が、9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0021】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒が、QDまたはQ:
【化1】

【0022】
で表されることを特徴とする前記方法に関し、
ここで、
Rは、水素、アルキル、アリール、アシル、アルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アラルケニルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アラルケニルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、アリールオキシチオカルボニル、アルコキシチオカルボニル、 アラルコキシチオカルボニル、アリールアミノチオカルボニル、アラルキルアミノチオカルボニル、アルケニルオキシチオカルボニル、アルケニルアミノチオカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルアミノチオカルボニル、アラルケニルオキシチオカルボニル、アラルケニルアミノチオカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルケニルスルホリル、アリールホスホリル、アラルキルホスホリル、アルケニルホスホリル、またはアルキルホスホリルを表す。ある実施の形態では、本発明は、Rがアリールアミノチオカルボニルであることを特徴とする、前記方法に関する。ある実施の形態では、本発明は、Rが3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルアミノチオカルボニルであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0023】
ある実施の形態では、本発明は、前記塩基が、水素化物、カーボネート、ホスフェート、アルコキシド、アミド、水酸化物、または有機塩基であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0024】
ある実施の形態では、本発明は、前記塩基が有機塩基であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0025】
ある実施の形態では、本発明は、前記有機塩基が、2,6−ルチジン、プロトン・スポンジまたはペンピジンであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0026】
ある実施の形態では、本発明は、前記塩基が、水酸化物であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0027】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0028】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0029】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0030】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒がキニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ、DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHN、DHQD−PHN、QD−PH、QD−AN、QD−NT、QD−AC、QD−CH、QD−IP、QD−(−)−MN、QD−AD、Q−PH、Q−AN、Q−NT、Q−CH、Q−AC、Q−IP、Q−(−)−MN、Q−AD、9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0031】
ある実施の形態では、本発明は、前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒が9−チオウレアQまたは9−チオウレアQDであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、スキームI:

【0033】
によって表されるキラル非ラセミアミンの調製方法に関し、
ここで、
前記キラル非ラセミ触媒は、第3級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり、
Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表し、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表し、
RおよびRは、全体で3〜10の原子を含む骨格で構成される、随意的に置換された環を形成して差し支えなく、前記環は、随意的に1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
およびRは、全体で4〜10の原子を含む骨格で構成される、随意的に置換された環を形成して差し支えなく、前記環は、随意的に、Rが結合している窒素のほかに、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
は、N−アシル、N−アルコキシカルボニル、N−アリールオキシカルボニル、N−アルケニルオキシカルボニル、N−アラルコキシカルボニル、N−アラルケニルオキシカルボニル、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アラルキルアミノカルボニル、N−アミノカルボニル、N−アルケニルアミノカルボニル、N−アラルケニルアミノカルボニル、N−アルキルチオカルボニル、N−アリールチオカルボニル、N−アリールオキシチオカルボニル、N−アルコキシチオカルボニル、N−アラルコキシチオカルボニル、N−アリールアミノチオカルボニル、N−アラルキルアミノチオカルボニル、N−アルケニルオキシチオカルボニル、N−アルケニルアミノチオカルボニル、N−アミノチオカルボニル、N−アルキルアミノチオカルボニル、N−アラルケニルオキシチオカルボニル、N−アラルケニルアミノチオカルボニル、N−アルキルスルホニル、N−アリールスルホニル、N−アラルキルスルホニル、N−アルケニルスルホリル、 N−アリールホスホリル、N−アラルキルホスホリル、N−アルケニルホスホリル、またはN−アルキルホスホリルを表し、
NuHは、マロネート、ケトエステル、ニトロアルカン、アリールニトロアルカン、シクロアルキルニトロアルカンまたはヘテロサイクリックニトロアルカンを表し、
塩基は、水素化物、カーボネート、ホスフェート、アルコキシド、アミド、水酸化物、または有機塩基を表す。
【0034】
ある実施の形態では、本発明は、Rがアルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0035】
ある実施の形態では、本発明は、NuHがマロネートを表すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0036】
ある実施の形態では、本発明は、塩基が水酸化物を表すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0037】
ある実施の形態では、本発明は、Rがアルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表し、NuHがマロネートを表すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0038】
ある実施の形態では、本発明は、Rがアルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表し、NuHがマロネートを表し、塩基が水酸化物を表すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0039】
ある実施の形態では、本発明は、前記キラル非ラセミ触媒がQDまたはQ:
【化2】

【0040】
で表されることを特徴とする前記方法に関し、
ここで、
Rは、水素、アルキル、アリール、アシル、アルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アラルケニルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アラルケニルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、アリールオキシチオカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アラルコキシチオカルボニル、アリールアミノチオカルボニル、アラルキルアミノチオカルボニル、アルケニルオキシチオカルボニル、アルケニルアミノチオカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルアミノチオカルボニル、アラルケニルオキシチオカルボニル、アラルケニルアミノチオカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルケニルスルホリル、アリールホスホリル、アラルキルホスホリル、アルケニルホスホリル、またはアルキルホスホリルを表す。ある実施の形態では、本発明は、Rがアリールアミノチオカルボニルであることを特徴とする、前記方法に関する。ある実施の形態では、本発明は、Rが3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルアミノチオカルボニルであることを特徴とする、前記方法に関する。
【0041】
ある実施の形態では、本発明は、キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が約50%よりも大きいことを特徴とする、前述のいずれかの方法に関する。
【0042】
ある実施の形態では、本発明は、キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が約70%よりも大きいことを特徴とする、前述のいずれかの方法に関する。
【0043】
ある実施の形態では、本発明は、キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が約90%よりも大きいことを特徴とする、前述のいずれかの方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
定義
便宜上、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に用いられる特定の用語をここにまとめる。
【0045】
「求核剤」という用語は当技術分野において認識されており、本明細書では、反応性の高い電子対を有する化学的部分を意味する。求核剤の例として、水、アミン、メルカプタンおよびアルコールなどの非荷電性化合物、アルコキシド、チオラート、カルバニオンなどの荷電性部分、ならびに様々な有機および無機の陰イオンが挙げられる。陰イオン求核剤の例として、水酸化物、アジド、シアン化物、チオシアン酸、酢酸、ギ酸またはクロロギ酸などの単純陰イオン、および亜硫酸水素が挙げられる。有機クプレート、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノラート、アセチリドなどの有機金属試薬が、適切な反応条件下では、適切な求核剤であろう。水素化物もまた、基質の還元が望まれる場合には、適切な求核剤であろう。水素化物もまた、基質の還元が望ましい場合には、適切な求核剤であろう。
【0046】
「求電子剤」という用語は当技術分野で認識されており、先に定義された求核剤から電子対を受容可能な化学的部分のことをいう。本発明にかかる方法に有用な求電子剤として、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、環状硫酸エステル、カーボネート、ラクトン、ラクタムなどの環状化合物が挙げられる。非環状求電子剤として、サルフェート、スルホネート(例えば、トシレート(tosylates))、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。
【0047】
本明細書で用いられる「求電子性原子」、「求電子中心」および「反応中心」という用語は、求核剤によって攻撃され、新たな結合を形成する基質の原子のことをいう。ほとんどの(すべてではない)場合、これはまた、離脱基が離れていく原子でもある。
【0048】
「電子求引基」という用語は当技術分野において認識されており、本明細書では、同一の位置における水素原子と比較して、自身へと電子を引き寄せる力が強い官能基を意味する。典型的な電子求引基として、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、塩素などが挙げられる。「電子供与基」という用語は、本明細書では、同一の位置における水素原子と比較して、自身へと電子を引き寄せる力が弱い官能基を意味する。典型的な電子供与基として、アミノ、メトキシなどが挙げられる。
【0049】
「ルイス塩基」および「ルイス塩基の」という用語は当技術分野において認識されており、特定の反応条件下において、電子対を供与する能力のある化学的部分のことをいう。ルイス塩基部分の例として、アルコール、チオール、オレフィン、およびアミンなどの非荷電性化合物、ならびにアルコキシド、チオレート、カルバニオンなどの荷電性部分、および様々な他の有機陰イオンが挙げられる。
【0050】
「ルイス酸」および「ルイス酸の」という用語は当技術分野で認識されており、ルイス塩基から電子対を受け入れ可能な化学的部分のことをいう。
【0051】
「メソ化合物」という用語は当技術分野において認識されており、少なくとも2つのキラル中心を持つが、その構造内に対称面または対称点を有するためにアキラルである化合物のことをいう。
【0052】
「キラル」という用語は、自身の鏡像相手と重ね合わせることが不可能な性質を持つ分子のことをいい、一方、「アキラル」という用語は、自身の鏡像相手と重ね合わせることができる分子のことをいう。「プロキラル分子」とは、特定の方法により、キラル分子に転化する可能性を有するアキラル分子のことである。
【0053】
「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、原子や基の空間配置が異なる化合物のことをいう。特に、「鏡像異性体」という用語は、互いに鏡像を重ね合わせることができない、化合物の2つの立体異性体のことをいう。一方、「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の不斉中心を有するが、互いに鏡像ではない、対となる立体異性体同士の関係をいう。
【0054】
さらには、「立体選択的方法」とは、生成物として生成しうる他の立体異性体に優先して、反応生成物の特定の立体異性体を生成する方法のことである。「エナンチオ選択的方法」とは、反応生成物の2つの生成しうる鏡像異性体のうち、一方の生成に有利に作用する方法のことである。本課題の方法は、キラル触媒の非存在下で行う同一の反応から得られる立体異性体の収率と比較して、生成物の特定の立体異性体の収率が、統計的に有意な量を上回る場合に、「立体選択的に豊富な」生成物(例えば、エナンチオ選択的に豊富な、または、ジアステレオ選択的に豊富な)を生成するといわれる。例えば、本課題のキラル触媒の1つによって触媒されるエナンチオ選択的反応では、キラル触媒を欠いた反応と比較して、特定の鏡像異性体のeeが大きくなるであろう。
【0055】
「位置異性体」という用語は、同一の分子式を有するが、原子の結合性が異なる化合物のことをいう。したがって、「位置選択的方法」とは、例えば、その反応によって、ある位置異性体が統計的に有意な優位性を保って生成するなど、特定の位置異性体の生成を他よりも優先させる方法である。
【0056】
「反応生成物」という用語は、求核剤と基質の反応から得られる化合物を意味する。一般に、「反応生成物」という用語は、本明細書では、安定で単離可能な化合物のことをいう場合に用いられ、不安定な中間体や遷移状態には用いられないであろう。
【0057】
「基質」という用語は、本発明に従って求核剤または環拡大試薬と反応し、立体中心を有する少なくとも1種類の生成物を生成可能な化合物を意味することを意図している。
【0058】
「触媒量」という用語は当技術分野において認識されており、反応物質に対するサブ化学量論的な(substoichiometric)量を意味する。本明細書では、触媒量は、反応物質に対して、0.0001〜90モル%を意味し、0.001〜50モル%がより好ましく、0.01〜10モル%がさらに好ましく、反応物質に対して0.1〜5モル%がさらになお好ましい。
【0059】
以下にさらに十分に述べるように、本発明が意図する反応として、エナンチオ選択的、ジアステレオ選択的、および/または位置選択的反応が挙げられる。エナンチオ選択的反応は、アキラルな反応物質を、1つの鏡像異性体が豊富なキラル生成物へと転化させる反応である。エナンチオ選択性は、一般に、下記に定義する「鏡像異性体過剰率」(ee)として数量化される:
%鏡像異性体過剰率A(ee) = (%鏡像異性体A) − (%鏡像異性体B)
ここでAおよびBは、生成した鏡像異性体である。エナンチオ選択性と併せて用いられるさらなる用語として、「光学純度」または「光学活性」が挙げられる。エナンチオ選択的反応では、ゼロよりも大きなeeで生成物が生成される。エナンチオ選択的反応は、20%よりも大きいeeで生成物を生成することが好ましく、50%よりも大きいことがより好ましく、70%よりも大きいことがよりさらに好ましく、80%よりも大きいことが最も好ましい。
【0060】
ジアステレオ選択的反応は、キラル反応物質(ラセミ体、または鏡像異性的に純粋であって差し支えない)を、1つのジアステレオマーが豊富な生成物に転化させる。キラル反応物質がラセミ体の場合は、キラル非ラセミの試薬または触媒の存在下で、一方の反応物質である鏡像異性体が、他方よりもゆっくりと反応するであろう。この類の反応は速度論的分割と称され、反応物質である鏡像異性体が反応速度の差異によって分割され、鏡像異性的に豊富な生成物と、鏡像異性的に豊富な未反応基質の両方を生じる。速度論的分割は、通常、1つの反応物質である鏡像異性体とだけ反応するのに十分な試薬(すなわち、1モルのラセミ基質に対して1/2モルの試薬)を使用することによって達成される。ラセミ反応物質の速度論的分割に用いられる触媒反応の例として、シャープレスのエポキシ化反応および野依の水素化反応が挙げられる。
【0061】
位置選択的反応は、1つの反応中心で、別の同一ではない反応中心よりも優先的に起こる反応である。例えば、不斉的に置換されたエポキシド基質の位置選択的反応として、エポキシ環の2つの炭素のうちの一方での優先的な反応が挙げられるであろう。
【0062】
キラル触媒に関する「非ラセミ」という用語は、特定の鏡像異性体が50%よりも大きい割合を占める触媒の調製を意味し、少なくとも75%であることがさらに好ましい。「実質的に非ラセミ」は、特定の鏡像異性体のeeが90%よりも大きい触媒の調製のことをいい、95%よりも大きいことがさらに好ましい。
【0063】
「ヘテロ原子」という用語は当技術分野で認識されており、炭素または水素以外の元素のいずれかの原子のことをいう。ヘテロ原子の例として、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレニウムが挙げられる。
【0064】
「アルキル」という用語は当技術分野において認識されており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキルで置換されたシクロアルキル基、およびシクロアルキルで置換されたアルキル基を含む、飽和脂肪族基が挙げられる。ある実施の形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に、約30個以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC〜C30、分岐鎖ではC〜C30)、あるいは、約20個以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造中に約3〜約10個の炭素原子を有し、あるいは、環構造中に約5、6または7個の炭素を有する。
【0065】
炭素数が別記されない限り、「低級アルキル」は、先に定義されたアルキル基であるが、その骨格構造に1〜約10個の炭素原子、あるいは、1〜約6個の炭素原子を有するもののことをいう。同じように、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」では同様の鎖長を有する。
【0066】
「アラルキル」という用語は当技術分野において認識されており、アリール基(例えば芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基のことをいう。
【0067】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は当技術分野において認識されており、上述のアルキルと鎖長および可能性のある置換については同様であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重結合または三重結合を有する不飽和脂肪族基のことをいう。
【0068】
「アリール」という用語は当技術分野において認識されており、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなど、0〜4個のヘテロ原子を含んでもよい、5、6または7員環の単環芳香族基のことをいう。環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールへテロ環」または「ヘテロ芳香族」とも称されるであろう。芳香族環は、環の1つまたはそれ以上の位置において、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの上述の置換基で置換されて差し支えない。「アリール」という用語は、また、隣接する2つの環が2つ以上の炭素を共有し(その環は「縮合環」である)、ここで、少なくとも環の一方が芳香族であり、例えば他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/または複素環であって構わない、2以上の環式環を有する多環式環系も含む。
【0069】
オルトメタ、およびパラという用語は当技術分野において認識されており、それぞれ、1,2−、1,3−および1,4−の2置換ベンゼンのことをいう。例えば、1,2−ジメチルベンゼンとオルト−ジメチルベンゼンという名称は同意語である。
【0070】
「複素環」、「ヘテロアリール」または「複素環(ヘテロサイクリック)基」という用語は当技術分野において認識されており、3〜約10員環構造、あるいはその環構造に1〜4個のヘテロ原子を有する3〜約7員環構造のことをいう。複素環もまた、多環式であって構わない。複素環基として、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンチン、フェノキサンチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、例えばアゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環は、1またはそれ以上の位置において、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの上述の置換基で置換されて差し支えない。
【0071】
「多環式」または「多環式基」という用語は当技術分野において認識されており、例えば「縮合環」などの、2個またはそれ以上の炭素原子を2つの隣接した環で共有している、2つまたはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/または複素環)のことを称する。隣接していない原子を介して結合している環は「架橋」環と称される。多環式の各環は、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの上述の置換基で置換されて構わない。
【0072】
「炭素環」という用語は当技術分野において認識されており、環の各原子が炭素である芳香族または非芳香族環のこという。
【0073】
「ニトロ」という用語は当技術分野において認識されており、−NOのことをいう;「ハロゲン」という用語は当技術分野において認識されており、−F、−Cl、−Brまたは−Iのことをいう;「スルフヒドリル」という用語は当技術分野において認識されており、−SHのことをいう;「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味する;「スルホニル」という用語は当技術分野において認識されており、−SOのことをいう;「ハロゲン化物」はハロゲンの対応する陰イオンを表し、「擬ハロゲン化物」は、コットン(Cotton)とウィルキンソン(Wilkinson)による"Advanced Inorganic Chemistry"の560頁に説明される定義を有する。
【0074】
「アミン」および「アミノ」という用語は当技術分野で認識されており、非置換または置換アミンの両方を称し、例えば、一般式:
【化3】

【0075】
で表される部分のことをいい、
ここで、R50、R51、およびR52は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61を表し、もしくは、R50およびR51が付加されているN原子と一体となって環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を完成し;R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し;mは0または1〜8の整数を表す。他の実施の形態では、R50およびR51(および随意的にR52)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−R61を表す。したがって、「アルキルアミン」という用語には、置換もしくは非置換のアルキルが付加された、すなわち、R50およびR51の少なくとも一方がアルキル基である、先に定義されたアミン基が含まれる。
【0076】
「アシルアミノ」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化4】

【0077】
で表される部分のことをいい、
ここで、R50は先に定義したとおりであり、R54は水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−R61を表し、ここでmおよびR61は先に定義したとおりである。
【0078】
「アミド」という用語は、アミノ基で置換されたカルボニルとして当技術分野で認識されており、一般式:
【化5】

【0079】
で表される部分のことをいい、
ここで、R50およびR51は先に定義したとおりである。本発明におけるアミドについてのある実施の形態には、不安定なイミドは含まれないであろう。
【0080】
「アルキルチオ」という用語は、硫黄ラジカルが付加された、先に定義されたアルキル基のことをいう。ある実施の形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH−R61のうちの1つで表され、ここでmおよびR61は先に定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基として、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0081】
「カルボキシル」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化6】

【0082】
で表されるような部分を含み、
ここでX50は結合、もしくは酸素または硫黄を表し、R55およびR56は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61または医薬品的に容認可能な塩を表し、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−R61を表し、ここでmおよびR61は先に定義したとおりである。X50が酸素であり、R55またはR56が水素ではない場合、その構造式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が先に定義したとおりの場合、その部分は、本明細書では、カルボキシル基と称され、特に、R55が水素のとき、その構造式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素のとき、その構造式は「ギ酸エステル」を表す。一般に、上記構造式の酸素原子が硫黄で置換されると、その構造式は「チオカルボニル」基を表す。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素ではない場合、その構造式は、「チオールエステル」を表す。X50が硫黄であり、R55が水素のとき、その構造式は「チオールカルボン酸」を表す。X50が硫黄であり、R56が水素のとき、その構造式は「チオギ酸エステル(thiolformate)」を表す。一方、X50が結合であり、R55が水素ではない場合、上記構造式は、「ケトン」基を表す。X50が結合であり、R55が水素のとき、上記構造式は「アルデヒド」基を表す。
【0083】
「カルバモイル」という用語は−O(C=O)NRR’のことをいい、ここでRおよびR’は、独立してH、脂肪族基、アリール基またはヘテロアリール基である。
【0084】
「オキソ」という用語は、カルボニル酸素(=O)のことをいう。
【0085】
「オキシム」および「オキシムエーテル」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化7】

【0086】
で表される部分のことをいい、
ここでR75は水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたは−(CH−R61である。RがHのとき、その部分は「オキシム」であり、Rがアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたは−(CH−R61のとき、その部分は「オキシムエーテル」である。
【0087】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は当技術分野で認識されており、酸素ラジカルが付加された、先に定義されたアルキル基のことをいう。代表的なアルコキシル基として、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」では、2つの炭化水素が1つの酸素と共有結合している。従って、アルキルをエーテルに変化させるアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−R61のうちの1つで表されるアルコキシルであるか、それに類似のものであり、ここで、mおよびR61は先に定義された通りである。
【0088】
「スルホネート(スルホン酸)」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化8】

【0089】
で表される部分のことをいい、
ここでR57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0090】
「サルフェート(硫酸)」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化9】

【0091】
で表される部分を含み、
ここでR57は先に定義した通りである。
【0092】
「スルホンアミド」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化10】

【0093】
で表される部分を含み、
ここでR50およびR56は先に定義した通りである。
【0094】
「スルファモイル」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化11】

【0095】
で表される部分のことをいい、
ここでR50およびR51は先に定義した通りである。
【0096】
「スルホニル」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化12】

【0097】
で表される部分のことをいい、
ここでR58は次のうちの1つである:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリール。
【0098】
「スルホキシド」という用語は当技術分野で認識されており、一般式:
【化13】

【0099】
で表される部分のことをいい、
ここでR58は先に定義した通りである。
【0100】
「ホスホリル」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化14】

【0101】
で表され、
ここでQ50はSまたはOを表し、R59は水素、低級アルキルまたはアリールを表す。例えばアルキルなどで置換して用いる場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は一般式:
【化15】

【0102】
で表され、
ここでQ50およびR59は、それぞれ独立して、先に定義したとおりであり、Q51はO、SまたはNを表す。Q50がSの場合、ホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
【0103】
アルケニル基およびアルキニル基に同様の置換を行い、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成してもよい。
【0104】
例えばアルキル、m、nなどの各表示の定義は、それが構造内で複数で用いられる場合、同じ構造中の他の箇所におけるその定義から独立していることが意図されている。
【0105】
「セレノアルキル」という用語は当技術分野で認識されており、置換されたセレノ基が付加されたアルキル基のことをいう。アルキル上で置換される典型的な「セレノエーテル」は、−Se−アルキル、−Se−アルケニル、−Se−アルキニルおよび−Se−(CH−R61から選択され、mおよびR61は先に定義されたとおりである。
【0106】
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリル(nonaflyl)という用語は当技術分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニルおよびノナフルオロブタンスルホニル基のことをいう。トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフラートという用語は当技術分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステルおよびノナフルオロブタンスルホン酸エステルの官能基、およびそれを含む分子のことをいう。
【0107】
略語Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。当技術分野における通常の技術を有する有機化学者に用いられる略語のさらなる総合的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の創刊号に掲載されており、このリストは、通常、Standard List of Abbreviationsという表題の表中に示されている。
【0108】
本発明にかかる組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何学的または立体異性体の形態で存在して差し支えない。さらには、本発明にかかるポリマーもまた光学活性であって差し支えない。本発明は、シスおよびトランス異性体、R−およびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体およびそれらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を含む、これらすべての化合物が本発明の範囲内に収まることを意図している。さらなる不斉炭素原子がアルキル基などの置換基内に存在しても差し支えない。これらすべての異性体およびその混合物が、本発明に包含されることを意図している。
【0109】
例えば、本発明にかかる化合物の特定の鏡像体が必要とされる場合は、不斉合成によって、あるいはキラル補助基から誘導することによって調製して差し支えなく、その際、得られるジアステレオマーの混合物を分割し、補助基を開裂して、純粋な所望の鏡像体を提供する。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基、または、カルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性な酸または塩基によってジアステレオマー塩を生成し、その後、当技術分野で周知の分別結晶またはクロマトグラフィーの手法によってジアステレオマーの分割を行い、次に、純粋な鏡像体を回収する。
【0110】
「置換」または「〜で置換された」には、これらの置換が、置換される原子および置換基の許容される価数に従っており、また、その置換によって、例えば、転位、環化、脱離または他の反応などによって自発的に変化しない、安定な化合物が得られる、という暗黙の条件が含まれることが理解されよう。
【0111】
「置換された」という用語には、また、有機化合物の許容されるすべての置換基が含まれることが意図されている。広範な態様において、許容される置換基として、有機化合物の、非環式および環式、分枝鎖および非分枝鎖、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。置換基の例として、例えば、前述のものが挙げられる。許容される置換基は、1つまたはそれ以上であって、適切な有機化合物と同一または異なっていて差し支えない。本発明の目的のため、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の価数を満たす、本明細書に記載の有機化合物の許容される置換基を有していて構わない。本発明は、有機化合物の許容される置換基によるいかなる方法によっても限定されることを意図しない。
【0112】
本明細書で用いられる「保護基」という用語は、望まれない化学変化から、潜在的な反応性官能基を保護する、一時的な置換基を意味する。これら保護基の例として、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびに、アルデヒドおよびケトンの、アセタールおよびケタールが挙げられる。保護基化学の分野は、精査されている(Greene,T.W.; Wuts,P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。本発明にかかる化合物の保護された形態は、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
本発明の目的のため、化学元素は、"Handbook of Chemistry and Physics", 67th Ed., 1986-87, CAS Versionの内表紙の元素周期表に従って認定されている。
【0114】
「1−アダマンチル」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化16】

【0115】
で表される部分を含む。
【0116】
「(−)−メンチル」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化17】

【0117】
で表される部分を含む。
【0118】
「(+)−メンチル」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化18】

【0119】
で表される部分を含む。
【0120】
「イソボルニル」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化19】

【0121】
で表される部分を含む。
【0122】
「イソピノカンフィル(isopinocamphyl)」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化20】

【0123】
で表される部分を含む。
【0124】
「(+)−フェンキル(fenchyl)」という用語は当技術分野で認識されており、構造式:
【化21】

【0125】
で表される部分を含む。
【0126】
「QD」という用語は、構造式:
【化22】

【0127】
で表される。
【0128】
「Q」という用語は、構造式:
【化23】

【0129】
で表される。
【0130】
反応条件
本発明にかかる不斉反応は、広範な条件下で行って差し支えなく、本明細書中で引用する溶媒および温度範囲は限定的ではないことが理解されよう。
【0131】
一般に、反応は、基質、触媒もしくは生成物に悪影響を与えない、穏やかな条件下で行われることが望ましいであろう。例えば、反応温度は、反応物質、生成物および触媒の安定性と同様に、反応速度にも影響を与える。反応は、通常、−78℃〜100℃の範囲の温度で行われ、−20℃〜50℃の範囲がさらに好ましく、−20℃〜25℃の範囲がさらになお好ましいであろう。
【0132】
一般に、本発明にかかる不斉合成反応は、液体の反応媒質中で行われる。反応は、溶媒を加えずに行ってもよい。あるいは、反応は不活性溶媒中で行ってもよく、その際、触媒を含めた反応材料は、実質的に溶解性であることが好ましい。適切な溶媒として、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化溶剤;ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタンなどの脂肪族または芳香族の炭化水素溶剤;酢酸エチル、アセトンおよび2−ブタノンなどのエステルおよびケトン;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン溶剤;もしくは2種類以上の溶剤の組合せが挙げられる。さらには、ある実施の形態では、例えば、エタノールが所望の求核剤である場合に、溶媒としてエタノールを使用するなど、用いられる条件下において、基質に対して不活性ではない溶媒を用いることは、有利であろう。水または水酸化物が好ましい求核剤ではない実施形態では、反応は、無水条件下で行うことができる。ある実施の形態では、エーテル溶媒が好ましい。水または水酸化物が好ましい求核剤である実施形態では、反応は、適切な量の水および/または水酸化物を含む混合溶媒中で行われる。
本発明は、溶媒の二層混合物中、乳濁液または懸濁液中、もしくは脂質ベシクルまたは脂質二重層中での反応をも意図している。ある実施の形態では、触媒反応を固相で行うことが、好ましいであろう。
【0133】
ある好ましい実施の形態では、反応は、反応ガス雰囲気下で行って差し支えない。例えば、求核剤としてシアニドを用いた不斉化反応は、HCNガス雰囲気下で行って構わない。反応ガスの分圧は、10.1325kPa〜1.01325×10kPa(0.1〜1000atm)であり、50.6625kPa〜1.01325×10kPa(0.5〜100atm)がさらに好ましく、1.01325×10kPa〜1.01325×10kPa(1〜10atm)の範囲が最も好ましいであろう。
【0134】
ある実施の形態では、反応を窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0135】
本発明にかかる不斉合成方法は、連続的、半連続的、またはバッチ方式にて行うことが可能であり、必要に応じて、液体循環および/またはガス循環操作を伴ってもよい。本発明にかかる方法は、バッチ方式で行われることが好ましい。同様に、反応材料、触媒および溶媒の添加の方法もしくは順番もまた重要ではなく、従来方式のいずかで達成して差し支えない。
【0136】
本反応は、単一の反応帯または複数の反応帯で、連続的にまたは同時進行で行うことが可能であり、もしくは、細長い管状の領域で、または一連のこれらの領域内で、バッチ方式または連続的に行って構わない。用いられる構成素材は、反応中は出発物質に対して不活性であるべきであり、装置は、反応温度および圧力に耐えうるように製作されるべきである。一連の反応の間、反応帯にバッチ式または連続的に導入される出発物質または材料の量の導入および/または調節手段を、特に、出発物質の所望のモル比を維持する方法に便利に活用することができる。反応工程は、出発物質の1つを他方に逐次的に加えることによってもたらされるであろう。また、反応工程は、出発物質を、光学活性な金属−配位子錯体触媒に共有付加(joint addition)することにより反応させることができる。完全な転換が望ましくないか、または得られない場合は、出発物質を生成物から分離し、再度、反応帯へ戻すことができる。
【0137】
本方法は、グラスライニングされたステンレス鋼、または類似の反応装置で行って差し支えない。過度の温度の変動を制御するため、または可能性のある反応温度の「暴走」を未然に防ぐため、反応帯に、1つまたはそれ以上の熱交換器を内蔵させ、および/または外部に取り付けてもよい。
【0138】
さらには、キラル触媒は、例えば、1つまたはそれ以上の置換基を介してポリマーまたは固体担体に共役結合することなどにより、ポリマーまたは他の不溶性の基材に固定または導入することが可能である。固定された触媒は、反応後、例えば、ろ過または遠心分離などによって、容易に再生して構わない。
【0139】
本発明の典型的方法
カルバメートで保護されたキラルアルキルアミンの前駆体として、カルバメートで保護されたキラルアルキルイミンは、不斉マンニッヒ反応にとって特に重要な種類のイミン基質を構成する。しかしながら、それらは不安定であるため、触媒不斉マンニッヒ反応への使用を極めて難しくしている。具体的には、2Aaおよび2AbのようなN−Bocアルキルイミンの、対応するエナミンへの自然発生的互変異性化が、典型的には、−20℃でさえも容易に起こる(スキーム1)。さらには、純粋な形態でのN−Cbzアルキルイミン(2B)の調製方法については、報告されていない。
【0140】

【0141】
特筆すべきことに、我々は、ニ官能性有機触媒によって触媒され、その際に、イミンが窒素からαの位置に離脱基を有する窒素含有出発物質からその場生成されて構わない、イミン窒素上に一連の電子求引基のいずれか1つを有する、効率的、一般的および実用的なイミンの不斉マンニッヒ反応を見出した。ある実施の形態では、カルバメートで保護されたイミン2は、α−アミドスルホン1から生成して差し支えなく、ニ官能性有機触媒(例えばQD−4)による触媒の下、求核剤と反応する。
【0142】
最近、9−チオウレアシンコナアルカロイド4(構造図1)が、マロネートおよびα−ケトエステルのN−Bocアリールイミンへのエナンチオ選択的付加のための効果的な触媒として、我々およびディクソン(Dixon)とその共同研究者によって、それぞれ別々に特定された。キニーネまたはキニジンから2段階で到達できる触媒4は、それぞれ、 (a) Li, B.; Jiang, L.; Liu, M.; Chen, Y.; Ding, L.; Wu, Y. Synlett 2005, 4, 603 および(b) Vakulya, B.; Varga, S.; Csampai, A.; Soos, T. Org Lett. 2005, 7, 1967で報告された。4を触媒とする不斉反応については、 (c) Wang, J.; Li, H.; Zu, L. Z.; Xie, H. X.; Duan, W. H.; Wang, W. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 12652. (d) Wang, Y.Q.; Song, J.; Hong, R.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8156. (e) Bernardi, L.; Fini, F.; Herrera, R. P.; Ricci, A.; Sagarzabu, V. Tetrahedron, 2006, 62, 375. (f) Mccooey, S. H.; Connon, S. J. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 6367. (g) Ye, J.; Dixon, D. J.; Hynes, P. Chem. Commun. 2005, 35, 4481を参照のこと。我々は、4がN−Bocアルキルイミンへのマロネートの付加に高エナンチオ選択性を与えることも実証した。20モル%のQD−4を触媒とするN−Bocフェニルイミン2Ac(R=Ph)とマロネート5のマンニッヒ反応は、室温で74%eeの所望のマンニッヒ付加物6Acを与えた。化学量論的な量のQD−4を用いて、室温で92%eeの6Acを生成することができた。あるいは、20モル%のQD−4を用いて、−60℃で36時間反応させることによって、非常に鏡像異性的に豊富な6Ac(97%ee)が得られた。2Aaおよび2AbなどのN−Bocアルキルイミンの反応は、0℃でQD−4の化学量論的充填を行った場合に、有用な光学純度および収率のマンニッヒ付加物を与えた。
【化24】

【0143】
安定なα−アミドスルホン1からカルバメートで保護されたイミン2のその場生成を伴う、4を触媒とするマンニッヒ反応は、これらの難点を克服するであろう(スキーム2)。それは、カルバメートで保護されたイミンの個別の調製を排除し、それによって非常に不安定なカルバメートで保護されたアルキルイミン2(R=アルキル)の調製および取扱いの必要性が回避されるであろう。さらには、1当量の触媒4を用いるマンニッヒ反応が、逐次的にその場生成されるN−カルバメートイミン2に対して触媒4の濃度を高く維持することにより、N−Bocアリールおよびアルキルイミン2Aの両方を、室温で高eeの対応するマンニッヒ付加物6へと変化させることが示されたように、低充填での触媒4を用いた室温でのマンニッヒ反応は、光学純度の高いマンニッヒ付加物6を与えることができた。
【0144】

【表1】

【0145】
特筆すべきことに、N−Bocアミドスルホン1Acとベンジルマロネート5を用いた、N−Bocフェニルイミン2Acのその場合成を伴う、4を触媒とするマンニッヒ反応について、様々なアミンおよび無機塩基を用いて調査した。表1にまとめたように、固体または水溶液のどちらかで反応に適用されたいくつかの無機塩基において、有望な結果が得られた(表1のエントリー4〜11)。とりわけ、室温および20モル%のQD−4によって促進された、NaCOの0.1M水溶液を用いた反応では、所望のマンニッヒ付加物6Acを95%eeで得られた。それに対し、同量のQD−4を充填し、前もって作製されたN−Bocフェニルイミン2Acを用いた室温マンニッヒ反応では、74%eeの6Acを与えた。さらなる最適化の研究により、0℃、5.0モル%のQD−4で、1Acから収率89%、96%eeの6Acへのワンポット変換が達成できることを確立した(表2のエントリー11)。
【表2】

【表3】

【0146】
重要なことに、多様な芳香族およびヘテロ芳香族アルデヒドから調製される、α−アミドスルホン1Aから開始する、4を触媒とするマンニッヒ反応は、対応するマンニッヒ付加物6を高eeおよび 高収率で与えた(表3)。芳香族環の置換基の位置および電子特性のどちらも、反応のエナンチオ選択性に重要な影響を持たないことが見出されたことは、注目に値する。
【表4】

【0147】
我々は、次に、不安定なカルバメートで保護されたアルキルイミン2(R=アルキル)のその場生成を伴う、4を触媒とするマンニッヒ反応に取り組んだ。カルバメートで保護されたアルキルイミンのその場生成、および、それに続く4を触媒とするマンニッヒ反応における消費の両方の速度が、カルバメートで保護されたアリールイミンの場合と大きく異なることから、最適化の研究には、脂肪族アルデヒドから誘導されるα−アミドスルホンから出発する反応にとって最適な塩基の検証が必要とされた。N−Bocα−アミドスルホン1Aaおよび1Abを用いた反応では、CsCO(0.1M)の水溶液を用いた場合に、好ましい結果が得られた。10モル%のQD−4および室温で、α−アミドスルホン1Aaおよび1Abの対応するマンニッヒ付加物6Aa〜6Abへのワンポット変換が、それぞれ88および90%eeで成し遂げられた(表4のエントリー1〜2)。その場生成されたN−Bocアルキルイミンのかなりの量が、自然発生的に互変異性化されることが認められたことにより、光学活性なマンニッヒ付加物6Aa〜6Abの収率は、44〜45%であった。特筆すべきは、我々が、非常に立体構造の変化に富む脂肪族アルデヒドから調製される、0.1MのCsOH水溶液を用いたN−Cbzα−アミドスルホン1Ba〜1Bfの、対応するマンニッヒ付加物6Ba〜6Bfへの直接変換は、素晴らしいeeおよび60〜80%の収率で、良好に達成できる(表4のエントリー3〜8)ことを見出したことである。これらの結果は、マロネートの、カルバメートで保護されたイミンとの、4を触媒とするマンニッヒ反応の範囲が著しく拡張されることを表している。
【実施例】
【0148】
本発明を一般的に説明してきたが、単に本発明の特定の態様および実施の形態の説明の目的で含まれ、本発明を制限することが意図されていない以下の実施例を参照することによって、本発明がより容易に理解されるであろう。
【0149】
一般情報
1Hおよび13C NMRスペクトルは、バリアン(Varian)機器で記録された(それぞれ、400MHzおよび100MHz)。Hスペクトルはテトラメチルシラン信号を内部基準とし、13CスペクトルはCDCl信号を内部基準とした(δ=77.0ppm)。H NMRに関するデータは以下のように報告される:化学シフト(δ、ppm)、多重度(s,一重;d,二重;t,三重;q,四重;m,多重)、結合定数(Hz)、積分。13C NMRに関するデータは化学シフト(δ、ppm)に関して報告される。赤外線スペクトルは、パーキン・エルマーFT−IR分光計で記録され、吸収周波数(cm−1)が報告される。新たな化合物全てに関する低分解能質量スペクトルは、70SE CI+で行われ、正確な質量スペクトルは、70−VSE−B高分解能質量分析計で記録した。比旋光度はジャスコ(Jasco)・デジタル旋光計で測定された。
【0150】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、ダイセルキラルセルOJ、ODカラム(250×4.6mm)またはキラルパックAD、ASカラム(250×4.6mm)、もしくはRegis Pirckle電子対共有型(covalent)(R,R)Whelk−O1カラム(250×4.6mm)を用いて、クォータナリポンプを備えたヒューレット・パッカード1100シリーズ機器で行われた。カラムはすべて、Agilent1100シリーズ温度自動調節器付きカラムコンパートメント内に納められた。UV検出は220nmでモニタされた。
【0151】
物質
文献の手法に従って、触媒QD−4およびQ−4を調製した。Vakulya, B.; Varga, S.; Csampai, A.; Soos, T. Org Lett. 2005, 7, 1976。
【0152】
文献の手法に従って、N−Bocα−アミドスルホン1Aを調製した。Wenzel, A. G.; Jacobsen, E. N. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12964。
【0153】
文献の手法に従って、N−Cbzα−アミドスルホン1Bを調製した。Pearson, W.; Lindbeck, A.; Kampf, J. J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 2622。
【0154】
窒素雰囲気下、水素化カルシウムからジクロロメタンを蒸留した。
他の試薬はすべて、入手したままの状態で用いた。
【0155】
マロネート5のN−Bocα−アミドスルホン1Aへのエナンチオ選択的マンニッヒ反応の一般的手法

0℃で、ジクロロメタン(1.0ml)中のN−Bocα−アミドスルホン1A(0.525mmol、1.05当量)、ジベンジルマロネート5(0.50mmol、1.0当量) およびQD−4またはQ−4(0.025mmol、5モル%)を、冷却した炭酸ナトリウム水溶液に1度に加えた。得られた2相の反応混合物を0℃で20時間、攪拌を保った。次に、反応混合物を水(10ml)で希釈し、エチルエーテル(25ml、3回)で抽出した。有機層を合わせて、食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。粗生成物を、下記に示す溶媒を用いて、シリカゲル・フラッシュ・クロマトグラフィーにより精製した。
【化25】

【0156】
(+)−6Aa:この生成物は、室温で24時間、QD−4(10モル%)を触媒とし、ジクロロメタン(0.20ml)中、N−Bocα−アミドスルホン1Aa(0.20mmol、1.0当量)、ジベンジルマロネート5(0.40mmol、2.0当量) および炭酸セシウム(0.10M水溶液、4.8ml)の反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=1/1でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率45%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=98/2、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=19.07分、t(副生成物)=17.32分]による測定で88%eeの無色の油状物質(40mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【化26】

【0157】
(+)−6Ab: この生成物は、室温で24時間、QD−4(10モル%)を触媒とし、ジクロロメタン(0.20ml)中、N−Bocα−アミドスルホン1Ab(0.20mmol、1.0当量)、ジベンジルマロネート5(0.40mmol、2.0当量) および炭酸セシウム(0.10M水溶液、4.8ml)の反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ジクロロメタン/ヘキサン=1.5/1)後の収率44%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=98/2、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=14.63分、t(副生成物)=13.04分]による測定で90%eeの無色の油状物質(41mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。
【化27】

【0158】
(+)−6Ac: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)後の収率89%、HPLC[Regis Pirckle電子対共有型(covalent)(R,R)Whelk−O1、ヘキサン/IPA=95/5、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=12.63分、t(副生成物)=15.62分]による測定で97%eeの白色固体(218mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0159】
(−)−6Ac: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率92%、92%eeの白色固体として得られた。
【化28】

【0160】
(+)−6Ad: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)後の収率96%、HPLC[ダイセルキラルパックAS、ヘキサン/IPA=95/5、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=12.07分、t(副生成物)=7.70分]による測定で96%eeの無色の油状物質(234mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0161】
(−)−6Ad: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率91%、90%eeの無色の油状物質として得られた。
【化29】

【0162】
(+)−6Ae: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/12)後の収率88%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=9.13分、t(副生成物)=7.65分]による測定で95%eeの無色の油状物質(249mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0163】
(−)−6Ae: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(10モル%)を触媒とした反応から、収率91%、88%eeの無色の油状物質として得られた。
【化30】

【0164】
(+)−6Af: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)後の収率97%、HPLC[Regis Pirckle電子対共有型(R,R)Whelk−O1、ヘキサン/IPA=98/2、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=22.65分、t(副生成物)=30.47分]による測定で94%eeの無色の油状物質(245mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0165】
(−)−6Af: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率88%、89%eeの無色の油状物質として得られた。
【化31】

【0166】
(+)−6Ag: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)後の収率99%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=12.88分、t(副生成物)=9.60分]による測定で94%eeの白色固体(251mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0167】
(−)−6Ag: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率95%、90%eeの白色固体として得られた。
【化32】

【0168】
(+)−6Ah: この生成物は、0℃で36時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)後の収率90%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=14.68分、t(副生成物)=11.44分]による測定で95%eeの白色固体(234mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0169】
(−)−6Ah: この生成物は、0℃で36時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率87%、90%eeの白色固体として得られた。
【化33】

【0170】
(+)−6Ai: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/12)後の収率90%、HPLC[ダイセルキラルパックAD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=25.36分、t(副生成物)=32.15分]による測定で96%eeの無色の油状物質(216mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0171】
(−)−6Ai: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(5モル%)を触媒とした反応から、収率91%、92%eeの無色の油状物質として得られた。
【化34】

【0172】
(+)−6Aj: この生成物は、0℃で20時間、QD−4(5モル%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)後の収率91%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=98/2、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=38.45分、t(副生成物)=33.02分]による測定で94%eeの白色固体(224mg)として得られた。スペクトル特性は、文献の報告と一致した。Song, J.; Wang, Y.; Deng, L. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (18), 6048-6049。
【0173】
(−)−6Aj: この生成物は、0℃で20時間、Q−4(10モル%)を触媒とした反応から、収率87%、85%eeの白色固体として得られた。
【0174】
マロネート5のN−Cbzアミドスルホン1Bへのエナンチオ選択的マンニッヒ反応の一般的手順

【0175】
0℃のジクロロメタン(0.80ml)中のN−Cbzα−アミドスルホン1B(0.40mmol、1.0当量)、ジベンジルマロネート5(0.60mmol、1.5当量)およびQD−4(0.040mmol、0.10当量)の溶液を、冷却した水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml、1.0当量)または炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml、1.2当量)に一度に加えた。得られた2相の反応混合物を0℃で20〜96時間、攪拌し続けた。次に、反応混合物を水(10ml)で希釈し、エチルエーテル(25ml、3回)で抽出した。有機層を合わせて、食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。粗生成物を下記に説明する溶離液を用いたシリカゲル・フラッシュ・クロマトグラフィーで精製した。
【化35】

【0176】
(+)−6Ba: この生成物は、0℃で20時間、ジクロロメタン(0.80ml)と水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml)中の、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率64%、HPLC[ダイセルキラルセルAD、ヘキサン/IPA=80/20、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=15.92分、t(副生成物)=12.31分]による測定で91%eeの無色の油状物質(121mg)として得られた。 [α]D25 = 17.9 (c = 1.02, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.25 (d, J = 6.8 Hz, 3H ), 3.69 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.46 (brs, 1H), 5.00-5.20 (m, 6H), 5.62 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.22-7.36 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ19.29, 46.82, 56.09, 66.90, 67.57, 67.67, 128.23, 128.29, 128.50, 128.54, 128.63, 128.71, 128.79, 128.82, 135.23, 135.27, 136.67, 155.71, 167.54, 168.06; IR (neat)γ3434, 17319, 1560, 1508, 1216, 1152; HRMS: (M+H)+ C27H28NO6Naの計算値: 462.1917; 測定値462.1929。
【0177】
(−)−6Ba: この生成物は、0℃で72時間、ジクロロメタン(0.80ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率70%、93%eeの無色の油状物質(132mg)として得られた。
【化36】

【0178】
(+)−6Bb: この生成物は、0℃で20時間、ジクロロメタン(0.80ml)と水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml)中、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率78%、HPLC[ダイセルキラルセルOD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=13.97分、t(副生成物)=12.80分]による測定で93%eeの無色の油状物質(163mg)として得られた。 [α]D25 = 28.4 (c = 1.01, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.84 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.15-1.38 (m, 6H), 1.40-1.60 (m, 2H), 3.71 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.26-4.38 (m, 1H), 4.98-5.16 (m, 4H), 5.15 (s, 2H), 5.62 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.24-7.36 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ13.88, 22.34, 35.78, 31.25, 33.41, 50.88, 54.89, 66.53, 67.19, 67.38, 127.87, 127.91, 128.25, 128.27, 128.35, 128.39, 128.45, 128.50, 134.96, 135.00, 136.51, 155.79, 167.39, 167.95; IR (neat)γ3420, 2930, 1734, 1722, 1507, 1499, 1218; HRMS: (M+H)+ C31H36NO6の計算値: 518.2543; 測定値518.2556。
【0179】
(−)−6Bb: この生成物は、0℃で20時間、ジクロロメタン(0.40ml)と水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml)中の、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率75%、91%eeの無色の油状物質(155mg)として得られた。
【化37】

【0180】
(+)−6Bc: この生成物は、0℃で20時間、ジクロロメタン(0.80ml)と水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml)中の、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率88%、HPLC[ダイセルキラルセルAD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=18.81分、t(副生成物)=16.44分]による測定で91%eeの無色の油状物質(178mg)として得られた。 [α]D25 = 33.2 (c = 1.00, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ0.86 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 0.87 (d , J = 6.0 Hz, 3H), 1.18-1.28 (m, 1H), 1.48-1.64 (m, 2H), 3.69 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.43 (m, 1H), 5.00-5.12 (m, 4H), 5.15 (s, 2H), 5.56 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.20-7.40 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ21.71, 22.88, 24.82, 42.22, 49.02, 55.21, 66.55, 67.12, 67.35, 127.88, 127.92, 128.28, 128.35, 128.39, 128.45, 128.50, 134.97, 135.04, 136.48, 155.71, 167.38, 167.91; IR (neat)γ2957, 1735, 1560, 1508, 1217; HRMS: (M+H)+ C30H34NO6の計算値: 504.2386; 測定値504.2383。
【0181】
(−)−6Bb: この生成物は、0℃で72時間、ジクロロメタン(0.40ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率81%、91%eeの無色の油状物質(163mg)として得られた。
【化38】

【0182】
(+)−6Bd: この生成物は、0℃で20時間、ジクロロメタン(0.80ml)と水酸化セシウム水溶液(0.10M、4.0ml)中の、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率70%、HPLC[ダイセルキラルセルAD、ヘキサン/IPA=80/20、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=12.50分、t(副生成物)=10.31分]による測定で85%eeの無色の油状物質(144mg)として得られた。 [α]D25 = 33.3 (c = 1.02, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.10-1.20 (m, 1H), 1.30-1.74 (m, 7H), 1.84-1.98 (m 1H), 3.73 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 4.21 (dt, J = 3.6, 10.4 Hz, 1H), 4.94-5.22 (m, 6H), 5.90 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 7.20-7.40 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ24.79, 25.26, 29.82, 30.18, 44.15, 54.28, 55.50, 66.47, 67.19, 67.47, 127.79, 127.84, 128.21, 128.25, 128.32, 128.35, 128.42, 128.50, 134.96, 135.01, 136.64, 155.93, 167.42, 168.35; IR (neat) γ3428, 2954, 1730, 1501, 1218; HRMS: (M+H)+ C31H34NO6の計算値: 516.2386; 測定値516.2402。
【0183】
(−)−6Bd: この生成物は、0℃で96時間、ジクロロメタン(0.80ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率67%、82%eeの無色の油状物質(134mg)として得られた。
【化39】

【0184】
(+)−6Be: この生成物は、0℃で96時間、ジクロロメタン(0.40ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率73%、HPLC[Regis Pirckle電子対共有型(R,R)Whelk−O1、ヘキサン/IPA=92/8、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=10.74分、t(副生成物)=12.80分]による測定で90%eeの白色固体(156mg)として得られた。[α]D25 = 35.6 (c = 1.04, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ0.84-1.14 (m, 5H), 1.26-1.40 (m, 1H), 1.48-1.86 (m, 5H), 3.81 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.12 (dt, J = 3.6, 10.0 Hz, 1H), 5.01 (dd, J = 12.4, 40.0 Hz, 2H), 5.03 (s, 2H), 5.17 (dd, J = 12.0, 28.0 Hz, 2H), 5.81 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 7.28-7.40 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ25.65, 25.72, 25.94, 41.03, 52.58, 55.72, 66.50, 67.19, 67.50, 127.86, 128.28, 128.32, 128.42, 128.51, 135.00, 136.64, 156.07, 167.83, 168.37; IR (neat)γ3424, 2929, 1730, 1501, 1214; HRMS: (M+H)+ C32H36NO6の計算値: 530.2543; 測定値 530.2546。
【0185】
(−)−6Be: この生成物は、0℃で96時間、ジクロロメタン(0.40ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率81%、87%eeの無色の油状物質(134mg)として得られた。
【化40】

【0186】
(+)−6Bf: この生成物は、0℃で96時間、ジクロロメタン(0.40ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、QD−4(10mmol%)を触媒とした反応から、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル:ヘキサン/ジクロロメタン=1/10でマロネートを除去し、次に、溶離液をヘキサン/酢酸エチル=10/1に変更)後の収率67%、HPLC[ダイセルキラルパックAD、ヘキサン/IPA=90/10、1.0ml/分、λ=220nm、20.0℃、t(主生成物)=19.92分、t(副生成物)=14.56分]による測定で85%eeの無色の油状物質(132mg)として得られた。[α]D25 = 31.2 (c = 1.01, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ0.89 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.94(d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.68-1.80 (m, 1H), 3.80 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.11 (dt, J = 3.6, 10.0 Hz, 1H), 4.95-5.01 (m, 4H), 5.16 (s, 2H), 5.82 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 7.28-7.40 (m, 15H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ19.24, 19.77, 31.93, 53.10, 56.65, 66.55, 67.30, 67.56, 127.88, 127.91, 128.26, 128.33, 128.38, 128.44, 128.47, 128.55, 134.93, 134.99, 136.66, 156.08, 167.70, 168.35; IR (neat)γ3420, 2929, 1729, 1218; HRMS: (M+H)+ C29H32NO6の計算値: 490.2230; 測定値490.2248。
【0187】
(−)−6Bf: この生成物は、0℃で96時間、ジクロロメタン(0.40ml)と炭酸セシウム水溶液(0.10M、4.8ml)中の、Q−4(10mmol%)を触媒とした反応から、収率70%、82%eeの無色の油状物質(138mg)として得られた。
【0188】
参考文献の援用
本明細書中で引用したすべての米国特許公報および米国特許出願公開公報のすべてを本明細書に援用する。
【0189】
均等
当業者は、本明細書中に記載された発明の特定の実施形態に関する多くの均等物について、認識し、また単なる所定の実験のみによって確認できるであろう。このような均等物が添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明の方法に使用する、いくつかの触媒の構造および本明細書における略称。
【図2】本発明の方法に使用する、いくつかの触媒の構造および本明細書における略称。
【図3】QD−PH、QD−AN、QD−NT、QD−ACおよびQD−CHの構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル非ラセミアミンを生成する方法であって、
求核剤と、塩基と、キラル非ラセミ触媒と、N−アシルイミン、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、N−アラルケニルオキシカルボニルイミン、N−アルキルアミノカルボニルイミン、N−アリールアミノカルボニルイミン、N−アラルキルアミノカルボニルイミン、N−アミノカルボニルイミン、N−アルケニルアミノカルボニルイミン、N−アラルケニルアミノカルボニルイミン、N−アルキルチオカルボニルイミン、N−アリールチオカルボニルイミン、N−アリールオキシチオカルボニルイミン、N−アルコキシチオカルボニルイミン、N−アラルコキシチオカルボニルイミン、N−アリールアミノチオカルボニルイミン、N−アラルキルアミノチオカルボニルイミン、N−アルケニルオキシチオカルボニルイミン、N−アルケニルアミノチオカルボニルイミン、N−アミノチオカルボニルイミン、N−アルキルアミノチオカルボニルイミン、N−アラルケニルオキシチオカルボニルイミン、N−アラルケニルアミノチオカルボニルイミン、N−アルキルスルホニルイミン、N−アリールスルホニルイミン、N−アラルキルスルホニルイミン、N−アルケニルスルホリルイミン、N−アリールホスホリルイミン、N−アラルキルホスホリルイミン、N−アルケニルホスホリルイミンおよびN−アルキルホスホリルイミンからなる群より選択される基質とを反応させる工程を有してなり、
前記キラル非ラセミ触媒が、第3級アミン、ホスフィン、またはアルシンであり、前記キラル非ラセミ触媒が、前記求核剤の前記基質への付加を触媒して、キラル非ラセミアミンを与えることを特徴とするキラル非ラセミアミンの生成方法。
【請求項2】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミンまたはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記基質がN−アリルオキシカルボニルイミン、N−ベンジルオキシカルボニルイミン、N−t−ブトキシカルボニルイミン、N−2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルイミン、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニルイミンまたはN−9−フルオレニルメトキシカルボニルイミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
N−α−ホスホニルアルキルO−アルキルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アルキルカルバメート、 N−α−ハロアルキルO−アルキルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アリールカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アリールカルバメート、N−α−ハロアルキルO−アリールカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキル O−アルケニルカルバメート、 N−α−ハロアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アラルキルカルバメート、 N−α−スルホニルアルキルO−アラルキルカルバメート、N−α−ハロアルキルO−アラルキルカルバメート、N−α−ホスホニルアルキルO−アラルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アラルケニルカルバメート、またはN−α−ハロアルキルO−アラルケニルカルバメートと塩基を反応させて、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、またはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンを生成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
N−α−スルホニルアルキルO−アルキルカルバメート, N−α−スルホニルアルキル O−アリールカルバメート, N−α−スルホニルアルキルO−アルケニルカルバメート、N−α−スルホニルアルキルO−アラルキルカルバメート、またはN−α−スルホニルアルキルO−アラルケニルカルバメートと塩基を反応させて、N−アルコキシカルボニルイミン、N−アリールオキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミン、N−アラルコキシカルボニルイミン、またはN−アラルケニルオキシカルボニルイミンを生成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記求核剤が、マロネート、ケトエステル、ニトロアルカン、アリールニトロアルカン、シクロアルキルニトロアルカンおよびヘテロサイクリックニトロアルカンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記求核剤がマロネートであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記キラル非ラセミ触媒が第3級アミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記キラル非ラセミ触媒が、キニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ、DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHN、DHQD−PHN、QD−PH、QD−AN、QD−NT、QD−AC、QD−CH、QD−IP、QD−(−)−MN、QD−AD、Q−PH、Q−AN、Q−NT、Q−CH、Q−AC、Q−IP、Q−(−)−MN、Q−AD、9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記キラル非ラセミ触媒が9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記キラル非ラセミ触媒が、QDまたはQ:
【化1】

で表され、
ここで、
Rが、水素、アルキル、アリール、アシル、アルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アラルケニルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アラルケニルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、アリールオキシチオカルボニル、アルコキシチオカルボニル、 アラルコキシチオカルボニル、アリールアミノチオカルボニル、アラルキルアミノチオカルボニル、アルケニルオキシチオカルボニル、アルケニルアミノチオカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルアミノチオカルボニル、アラルケニルオキシチオカルボニル、アラルケニルアミノチオカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルケニルスルホリル、アリールホスホリル、アラルキルホスホリル、アルケニルホスホリル、またはアルキルホスホリルを表す、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
Rがアリールアミノチオカルボニルであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
Rが3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルアミノチオカルボニルであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記塩基が水素化物、カーボネート、ホスフェート、アルコキシド、アミド、水酸化物、または有機塩基であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記塩基が有機塩基であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記有機塩基が、2,6−ルチジン、プロトン・スポンジまたはペンピジンであることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記塩基が水酸化物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒がシンコナアルカロイドであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒がキニジン、(DHQ)PHAL、(DHQD)PHAL、(DHQ)PYR、(DHQD)PYR、(DHQ)AQN、(DHQD)AQN、DHQ−CLB、DHQD−CLB、DHQ−MEQ、DHQD−MEQ、DHQ−AQN、DHQD−AQN、DHQ−PHN、DHQD−PHN、QD−PH、QD−AN、QD−NT、QD−AC、QD−CH、QD−IP、QD−(−)−MN、QD−AD、Q−PH、Q−AN、Q−NT、Q−CH、Q−AC、Q−IP、Q−(−)−MN、Q−AD、9−チオウレアQ、または9−チオウレアQDであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記基質がN−アルコキシカルボニルイミン、N−アルケニルオキシカルボニルイミンまたはN−アラルコキシカルボニルイミンであり、前記求核剤がマロネートであり、前記塩基が水酸化物であり、前記キラル非ラセミ触媒が9−チオウレアQまたは9−チオウレアQDであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約50%よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約70%よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約90%よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項28】
スキームI:

によって表されるキラル非ラセミアミンの調製方法であって、
ここで、
前記キラル非ラセミ触媒は、第3級アミン、ホスフィンまたはアルシンであり、
Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表し、
は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アラルキル、またはヘテロアラルキルを表し、
RおよびRは、全体で3〜10の原子を含む骨格で構成される、随意的に置換された環を形成して差し支えなく、前記環は、随意的に1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
およびRは、全体で4〜10の原子を含む骨格で構成される、随意的に置換された環を形成して差し支えなく、前記環は、随意的に、Rが結合している窒素のほかに、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、
は、N−アシル、N−アルコキシカルボニル、N−アリールオキシカルボニル、N−アルケニルオキシカルボニル、N−アラルコキシカルボニル、N−アラルケニルオキシカルボニル、N−アルキルアミノカルボニル、N−アリールアミノカルボニル、N−アラルキルアミノカルボニル、N−アミノカルボニル、N−アルケニルアミノカルボニル、N−アラルケニルアミノカルボニル、N−アルキルチオカルボニル、N−アリールチオカルボニル、N−アリールオキシチオカルボニル、N−アルコキシチオカルボニル、N−アラルコキシチオカルボニル、N−アリールアミノチオカルボニル、N−アラルキルアミノチオカルボニル、N−アルケニルオキシチオカルボニル、N−アルケニルアミノチオカルボニル、N−アミノチオカルボニル、N−アルキルアミノチオカルボニル、N−アラルケニルオキシチオカルボニル、N−アラルケニルアミノチオカルボニル、N−アルキルスルホニル、N−アリールスルホニル、N−アラルキルスルホニル、N−アルケニルスルホリル、, N−アリールホスホリル、N−アラルキルホスホリル、N−アルケニルホスホリル、またはN−アルキルホスホリルを表し、
NuHは、マロネート、ケトエステル、ニトロアルカン、アリールニトロアルカン、シクロアルキルニトロアルカンまたはヘテロサイクリックニトロアルカンを表し、
塩基は、水素化物、カーボネート、ホスフェート、アルコキシド、アミド、水酸化物、または有機塩基を表す、
キラル非ラセミアミンの調製方法。
【請求項29】
前記Rが、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表すことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記NuHがマロネートを表すことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記塩基が水酸化物を表すことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記Rが、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表し、前記NuHがマロネートを表すことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記Rが、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルを表し、前記NuHがマロネートを表し、前記塩基が水酸化物を表すことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記キラル非ラセミ触媒がQDまたはQ:
【化2】

で表され、
ここで、
Rが、水素、アルキル、アリール、アシル、アルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アラルケニルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アラルケニルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、アリールオキシチオカルボニル、アルコキシチオカルボニル、アラルコキシチオカルボニル、アリールアミノチオカルボニル、アラルキルアミノチオカルボニル、アルケニルオキシチオカルボニル、アルケニルアミノチオカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルアミノチオカルボニル、アラルケニルオキシチオカルボニル、アラルケニルアミノチオカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、アルケニルスルホリル、アリールホスホリル、アラルキルホスホリル、アルケニルホスホリル、またはアルキルホスホリルを表す、
ことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項35】
前記Rがアリールアミノチオカルボニルであることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記Rが3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルアミノチオカルボニルであることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約50%よりも大きいことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項38】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約70%よりも大きいことを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項39】
前記キラル非ラセミアミンの鏡像異性体過剰率またはジアステレオマー過剰率が、約90%よりも大きいことを特徴とする請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−163022(P2008−163022A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−328491(P2007−328491)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(502361511)ブランデイス ユニヴァーシティー (8)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】