説明

シンチレータプレート

【課題】放射線の入射面およびその裏面から出射されるシンチレーション光の観察を可能
にすることにより、エネルギー分別性の高い放射線検出画像を取得させること。
【解決手段】このシンチレータプレート1は、対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を放射させる板状の部材であり、シンチレーション光を撮像する画像取得装置に用いられるシンチレータプレートにおいて、放射線を透過する平面状の仕切板2と、仕切板2の一方の面2a上に配置され、放射線をシンチレーション光に変換する板状のシンチレータ3と、仕切板2の他方の面2b上に配置され、放射線をシンチレーション光に変換する板状のシンチレータ4とを備え、仕切板2は、シンチレータ3,4がそれぞれ配置された板部材を、シンチレータ3,4に対して反対側の面を接合することによって作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を透過した放射線をシンチレーション光に変換するシンチレータプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像の検出技術に関しては、検出器に入射する放射線により生じた電荷を検出することにより、放射線を直接検出する方式である直接変換方式と、放射線をシンチレータ材料などの放射線変換部材を用いて光に変換してから検出器で検出する方式である間接変換方式が知られている。このような間接変換方式を採用した装置に用いられるシンチレータとしては、基板上に蛍光体層が形成された蛍光体パネルを備えるシンチレータプレートが開示されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−139604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のシンチレータプレートでは、蛍光体層の片面側に基板が存在するため、放射線の入射面およびその裏面の両面から出射されるシンチレーション光を観察することは困難であった。すなわち、比較的高エネルギー帯の放射線によって蛍光体層の裏面側で発生するシンチレーション光を観察することは難しい。また、仮にシンチレータプレートの裏面側から出射されるシンチレーション光が観察できたとしても、シンチレータプレートの入射面側で発生したシンチレーション光もシンチレータプレートを透過して裏面側から出射される。従って、比較的低エネルギー帯の放射線によって蛍光体層の入射面側で発生するシンチレーション光と、比較的高エネルギー帯の放射線によって蛍光体層の裏面側で発生するシンチレーション光とを分けて観察することはできず、観察する放射線のエネルギー分別性が高くない傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、放射線の入射面およびその裏面から出射されるシンチレーション光の観察を可能にすることにより、エネルギー分別性の高い放射線検出画像を取得させることが可能なシンチレータプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のシンチレータプレートは、対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を放射させる板状の部材であり、シンチレーション光を撮像する画像取得装置に用いられるシンチレータプレートにおいて、放射線を透過する平面状の仕切部材と、仕切部材の一方の面上に配置され、放射線をシンチレーション光に変換する板状の第1の波長変換部材と、仕切部材の他方の面上に配置され、放射線をシンチレーション光に変換する板状の第2の波長変換部材と、を備え、仕切部材は、第1の波長変換部材及び第2の波長変換部材がそれぞれ配置された板部材を、第1の波長変換部材及び第2の波長変換部材に対して反対側の面を接合することによって作製される。
【0007】
このようなシンチレータプレートによれば、放射線をシンチレーション光に変換する2つの板状の波長変換部材が、放射線を透過する平面状の仕切部材を挟んで配置されているので、対象物を透過した放射線が、一方の波長変換部材によってシンチレーション光に変換されるとともに、その波長変換部材および仕切部材を透過した後に他方の波長変換部材によってシンチレーション光に変換される。このとき、仕切部材の存在によって、2つの波長変換部材において発生したそれぞれのシンチレーション光が、2つの波長変換部材の仕切部材に対して反対側の面から出射されやすくなる。その結果、このシンチレータプレートを、シンチレータプレートの両面から出射されたシンチレーション光を撮像する画像取得装置に使用することにより、高エネルギー帯の放射線画像と低エネルギー帯の放射線画像を効率良く分別することができる。
【0008】
仕切部材は、シンチレーション光に対して遮光性を有する、ことが好ましい。かかる仕切部材を備えれば、一方の波長変換部材において発生したシンチレーション光の他方の波長変換部材への入射を確実に防止することができ、放射線画像のエネルギー分別性を高めることができる。
【0009】
また、仕切部材には、シンチレーション光を反射する反射面が形成されている、ことも好ましい。かかる構成を採れば、一方の波長変換部材において発生したシンチレーション光の他方の波長変換部材への入射を確実に防止することができるとともに、画像取得装置によるシンチレーション光の効率的な検出が可能にされる。これにより、放射線画像のエネルギー分別性を高めつつ高コントラストの放射線画像を取得することができる。
【0010】
さらに、第1の波長変換部材と第2の波長変換部材とは異なる材料で形成されている、ことも好ましい。この場合、異なるエネルギー帯の放射線に感度の高い波長変換部材を使用することで、放射線画像のエネルギー分別性をより高めることができる。
【0011】
またさらに、第1の波長変換部材と第2の波長変換部材とは厚さが異なる、ことも好ましい。かかる構成を採れば、異なるエネルギー帯の放射線画像の検出感度を互いに調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線の入射面およびその裏面から出射されるシンチレーション光の観察を可能にすることにより、エネルギー分別性の高い放射線検出画像を取得させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係るシンチレータプレート1の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のシンチレータプレート1を使用した放射線画像取得装置11の概略構成図である。
【図3】図2の放射線画像取得装置11における放射線源12及び検出器13,14の配置例を示す正面図である。
【図4】図2の放射線画像取得装置11における放射線源12及び検出器13,14の配置例を示す正面図である。
【図5】図1のシンチレータプレート1を使用した別の放射線画像取得装置31の概略構成図である。
【図6】本発明の変形例に係るシンチレータプレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシンチレータプレートの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0015】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係るシンチレータプレート1の概略構成を示す正面図である。同図に示すように、シンチレータプレート1は、対象物を透過したX線等の放射線をシンチレーション光に変換する部材であり、平面状の仕切板(仕切部材)2の両面に接するように2枚の平板状のシンチレータ3,4が配置されて構成されている。
【0016】
シンチレータ3,4は、放射線の入射に応じてシンチレーション光を生成する波長変換部材であり、その材料は検出する放射線のエネルギー帯によって選択され、その厚さも数μm〜数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。例えば、シンチレータ3,4の材料としては、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等が用いられる。
【0017】
この2つのシンチレータ3,4は同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。異なる材料で形成した場合は、放射線の波長に対する変換効率が異なるように設定される。例えば、シンチレータ3,4の材料としては、Gd2O2S:TbとCsI:Tl、Gd2O2S:TbとCdWO4、あるいはCsI:TlとCdWO4などの組み合わせが挙げられる。また、2つのシンチレータ3,4は同じ厚さに形成されてもよいし、異なる厚さに形成されてもよい。厚さが異なるように形成することで、2つのシンチレータ3,4を透過する放射線に対する感度や波長に対する応答特性を相対的に調整することができる。例えば、シンチレータ3の厚さを数μm〜300μmに設定し、シンチレータ4の厚さを150μm〜数mmの範囲でシンチレータ3よりも厚くなるように設定することができる。
【0018】
仕切板2は、2つのシンチレータ3,4のそれぞれに接する2つの平面2a,2bが形成されたシンチレータ3,4を支持するための厚さが0.5μm〜5mmの平面状の部材であり、検出対象の放射線を透過し、かつシンチレータ3,4によって生成されるシンチレーション光を遮光する性質を有する。この仕切板2としては、例えば、カーボン板、FOP(Fiber Optic Plate)等のガラス製の板部材、アルミニウム板、ベリリウム板の他にチタン、金、銀、鉄等の金属板部材、又はプラスチック板等の樹脂製板部材が使用される。
【0019】
上記構成のシンチレータプレート1は、シンチレータ3,4がそれぞれ配置された板部材をシンチレータ3,4と反対側の面を接合することによって作製される。この場合、比較的容易にシンチレータプレートを作成できる。また、シンチレータプレート1は、一層構造の仕切板2の両面のそれぞれにシンチレータ3,4を配置することによって作製されてもよい。
【0020】
次に、本実施形態のシンチレータプレート1を使用して、半導体デバイス等の電子部品や食料品等といった対象物Aの放射線画像を取得する放射線画像取得装置の構成について説明する。
【0021】
図2は、シンチレータプレート1を使用した放射線画像取得装置11の概略構成図である。同図に示すように、放射線画像取得装置11は、対象物Aに向けて白色X線等の放射線を出射する放射線源12と、放射線源12から出射されて対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させるシンチレータプレート1と、シンチレータプレート1の放射線の入射側の検出面1aから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する表面観察用光検出器13と、検出面1aとは反対側の面である検出面1bから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する裏面観察用光検出器14と、を備えている。ここで、シンチレータプレート1は、シンチレータ3の検出面1aを対象物Aに向けた状態で配置される。すなわち、シンチレータプレート1は、シンチレータ3の仕切板2と反対側の面1aを表面観察用光検出器13に対向させ、シンチレータ4の仕切板2と反対側の面1bを裏面観察用光検出器14に対向させるように配置されている。これらの放射線源12、シンチレータプレート1、表面観察用光検出器13、及び裏面観察用光検出器14は、図示しない筐体に収容され、筐体内で固定される。
【0022】
表面観察用光検出器13(以下、「表面検出器13」と称する)は、シンチレータプレート1から出射されたシンチレーション光をシンチレータプレート1の検出面1a側から撮像することにより、対象物Aの比較的低エネルギーの放射線透過像を取得する間接変換方式の撮像手段である。表面検出器13は、シンチレータプレート1の検出面1aから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部13aと、集光レンズ部13aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部13bと、を有するレンズカップリング型の検出器である。集光レンズ部13aは、検出面1a上の所定範囲を含む視野15のシンチレーション光を集光する。撮像部13bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等が用いられる。
【0023】
裏面観察用光検出器14(以下、「裏面検出器14」と称する)は、シンチレータプレート1から出射されたシンチレーション光をシンチレータプレート1の検出面1b側から撮像することにより、対象物Aの比較的高エネルギーの放射線透過像を取得する間接変換方式の撮像手段である。裏面検出器14は、シンチレータプレート1の検出面1bから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部14aと、集光レンズ部14aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部14bと、を有するレンズカップリング型の検出器であり、上記の表面検出器13と同様の構成を有している。集光レンズ部14aは、検出面1b上の所定範囲を含む視野16のシンチレーション光を集光する。
【0024】
さらに、放射線画像取得装置11は、表面検出器13および裏面検出器14における撮像タイミングを制御するタイミング制御部17と、表面検出器13および裏面検出器14から出力された画像信号を入力し、入力した各画像信号に基づいて画像処理等の所定の処理を実行する画像処理装置18と、画像処理装置18から出力された画像信号を入力し、放射線画像を表示する表示装置19とを備えている。ここで、画像処理としては、入力された比較的低エネルギーの画像と比較的高エネルギーの画像との差分画像や加算画像を作成する画像間演算などがあげられる。タイミング制御部17および画像処理装置18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。表示装置19としては、公知のディスプレイが用いられる。なお、タイミング制御部17および画像処理装置18は、単一のコンピュータにより実行されるプログラムとして構成してもよいし、個別に設けられるユニットとして構成してもよい。
【0025】
ここで、放射線源12は、放射線の光軸Xがシンチレータプレート1の検出面1aの法線Bに対して所定の角度θ(0度<θ<90度)をなすように配置されている。すなわち、放射線源12は、対象物Aおよび検出面1aに対峙すると共に、検出面1aの法線Bから外れた位置に配置されている。ここで、法線Bとは、検出面1a上のある点から検出面1aに対して垂直に伸びる直線である。
【0026】
また、表面検出器13は、シンチレータプレート1の検出面1aから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部13aの光軸が検出面1aに対して直交するように配置されている。ここで、集光レンズ部13aの光軸は、検出面1aの法線Bに一致している。すなわち、表面検出器13は、検出面1aに対峙すると共に、検出面1aの法線B上に配置されている。この集光レンズ部13aは、検出面1aから法線B方向に出射されたシンチレーション光を撮像部13bに向けて集光する。
【0027】
上記のようにして、表面検出器13は、放射線源12の光軸X上から外して配置されている。すなわち、表面検出器13は、放射線源12からの放射線の出射領域(放射線束20が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源12からの放射線による表面検出器13の被曝が防止され、表面検出器13の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。
【0028】
さらに、裏面検出器14は、シンチレータプレート1の検出面1bから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部14aの光軸が検出面1bに対して直交するように配置されている。ここで、集光レンズ部14aの光軸は、検出面1bの法線Cに一致している。すなわち、裏面検出器14は、検出面1bに対峙すると共に、検出面1bの法線C上に配置されている。ここで、法線Cとは、検出面1b上のある点から検出面1bに対して垂直に伸びる直線である。放射線画像取得装置11では、法線Cは、法線Bに一致している。集光レンズ部14aは、検出面1bから法線C方向に出射されたシンチレーション光を撮像部14bに向けて集光する。
【0029】
続いて、上記の構成を有する放射線画像取得装置11の動作について説明する。まず、放射線源12から対象物に向けてX線が照射されると、検出面1aから放射されるシンチレーション光は、入射した放射線のうちの主に低エネルギー成分から変換されたものとなる。その一方で、検出面1bから放射されるシンチレーション光は、入射した放射線のうちの主に高エネルギー成分から変換されたものとなる。これは、低エネルギー帯の放射線はシンチレータプレート1のシンチレータ3の内部の検出面1a側でシンチレーション光に変換されやすいのに対して、高エネルギー帯の放射線は、シンチレータプレート1のシンチレータ3及び仕切板2を透過してシンチレータ4の内部の検出面1b寄りでシンチレーション光に変換されやすいためである。ここで、対象物Aと対面する比較的低エネルギー帯の放射線を変換するシンチレータ3は、比較的高エネルギー帯の放射線を変換するシンチレータ4より厚いほうがよい。この場合、シンチレータ3により低エネルギー帯の放射線をカットしやすく、シンチレータ4の検出面1b側でより高エネルギー帯の放射線がシンチレーション光に変換されやすいので、表面検出器13および裏面検出器14で取得される放射線画像のエネルギー分別がより向上する。また、放射線源12のエネルギーが全体的に低い場合には、シンチレータ3の厚さを薄くすることにより、より低いエネルギーの変換効率を高めるとともに、高いエネルギーの放射線の透過率を高くし、シンチレータ4における変換効率を高くし、エネルギー分別性能を高めることができる。一方、放射線源12のエネルギーが全体的に高い場合には、シンチレータ3の厚さを厚くすることにより、シンチレータ3において低いエネルギーから中程度のエネルギーの放射線を変換されやすくするとともに、低エネルギー帯の放射線をカットさせる割合を変化させ、シンチレータ4において高いエネルギー帯の放射線が変換されやすいようにし、エネルギー分別性能を向上させることができる。
【0030】
このようなX線の照射時に表面検出器13および裏面検出器14による撮像が同時に行われるよう、タイミング制御部17による制御が行われる。タイミング制御部17のタイミング制御により、対象物Aの放射線画像の表裏両面におけるデュアル撮像が行われる。このデュアル撮像では、表面検出器13によって比較的低いエネルギー帯の放射線画像が取得され、裏面検出器14によって比較的高いエネルギー帯の放射線画像が取得される。これにより、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得され、デュアルエナジー撮像が実現される。
【0031】
表面検出器13および裏面検出器14の機能に関し、換言すると、表面検出器13によって、検出面1a側の蛍光像が検出される。検出面1a側の蛍光像の検出は、蛍光のボケが少なく、また、蛍光の輝度が高いといった特長を有する。これは、表面観察においては、シンチレータプレート1の内部で生じるボケの影響が少なく、また、シンチレータプレート1の内部における拡散や自己吸収の影響が少ないためである。一方、裏面検出器14によって、シンチレータプレート1を厚み方向に進行して検出面1b側に表れた蛍光像が検出される。
【0032】
次に、表面検出器13および裏面検出器14のそれぞれによって、表裏両面の放射線画像に対応する画像信号が画像処理装置18に出力される。表面検出器13および裏面検出器14のそれぞれから出力された画像信号が画像処理装置18に入力されると、画像処理装置18によって、入力した画像信号に基づいて所定の処理が実行され、画像処理後の画像信号が表示装置19に出力される。そして、画像処理装置18から出力された画像処理後の画像信号が表示装置19に入力されると、表示装置19によって、入力した画像処理後の画像信号に応じた放射線画像が表示される。
【0033】
なお、放射線画像取得装置11においては、放射線源12が検出面1aの法線Bからずれた位置に配置され、表面検出器13および裏面検出器14が、それぞれ、法線B,C上に配置されているので、放射線透過像に検出器の影が映り込まないため、ノイズ成分の発生が抑制されると共に、検出器による放射線の減衰も生じないため、信号成分の減少が抑制される。さらには、放射線による表面検出器13及び裏面検出器14の被曝が防止され、表面検出器13の内部におけるノイズの発生が抑制される。その結果、ワンショットで低エネルギー画像と高エネルギー画像を同時に取得でき、同時性の確保、被爆量の低減、撮像時間の短縮及び画素ずれ(ミスレジストレーション)の解消が図られる。加えて、表面検出器13および裏面検出器14によっていずれもあおりがない放射線画像を取得することができ、検出面1a側および検出面1b側の画像間における演算が容易になる。
【0034】
ここで、上述した放射線画像取得装置11では、放射線源12、表面検出器13、及び裏面検出器14の位置関係が以下のように変更されて構成されてもよい。
【0035】
具体的には、図3に示すように、放射線源12が、検出面1aの法線上で対象物A及び検出面1aに対峙するように配置され、かつ、表面検出器13が、集光レンズ部13aの光軸Bが検出面1aの法線に対して所定の角度θ(0度<θ<90度)をなすように、すなわち、検出面1aに対峙すると共に検出面1aの法線から外れるように配置されていてもよい。この場合も、放射線透過像に検出器の影が映り込まないため、信号成分の減少が抑制される。さらには、放射線による表面検出器13の被曝が防止され、表面検出器13の内部におけるノイズの発生が抑制される。加えて、裏面検出器14によってあおりがない放射線画像を取得することができ、表面検出器13によって得られた放射線画像を、裏面検出器14によって得られた放射線画像を基準画像としてあおり補正を行うことができ、検出面1a側および検出面1b側の画像間における演算が容易になる。
【0036】
また、図4に示すように、図3に示した配置例に対して、裏面検出器14を、集光レンズ部14aの光軸Cが検出面1bの法線に対して所定の角度θ(0度<θ<90度)をなすように、すなわち、検出面1bに対峙すると共に検出面1bの法線から外れるように配置されていてもよい。この場合、放射線による裏面検出器14の被曝も防止され、裏面検出器14の内部におけるノイズの発生が抑制される。加えて、表面検出器13及び裏面検出器14によってあおりが同じ放射線画像を取得することができ、検出面1a側および検出面1b側の画像間における演算が容易になる。なお、画像間演算をより容易にするためには、角度θと角度θを同じにすることが望ましい。
【0037】
また、図5は、シンチレータプレート1を使用した別の放射線画像取得装置31の概略構成図である。同図に示す放射線画像取得装置31は、1つの検出器によって低エネルギー画像と高エネルギー画像を取得できるものであり、放射線源12と、放射線源12の放射線の出射方向に検出面1aが略垂直になるように配置されたシンチレータプレート1と、シンチレータプレート1によって変換された光を撮像する光検出器34と、シンチレータプレート1によって変換された光を放射線透過像として光検出器34に向けて導光する光学系35とを備えている。この光検出器34は、図2の検出器13,14と同様に、集光レンズ部34aと撮像部34bとを有する間接変換方式の検出器である。
【0038】
光学系35は、シンチレータプレート1から放射されたシンチレーション光の光路を制御する光学部材としての5つのミラー36a,36b,37a,37b,38と、ミラー38を回転させる回転駆動機構39とによって構成されている。光学系35のうちのミラー36a,36bは、シンチレータプレート1の検出面1a側に配置されて、検出面1aから放射されたシンチレーション光Lを、シンチレータプレート1から検出面1aの延長方向に沿って離れた位置に配置されたミラー38に向けて導光する。光学系35のうちのミラー37a,37bは、シンチレータプレート1の検出面1b側に配置されて、検出面1bから放射されたシンチレーション光Lを、ミラー38向けて導光する。光学系35のうちのミラー38は、その反射面38aの法線がシンチレーション光L,Lの光路を含む平面に略平行となるように配置されている。また、ミラー38は、モータを内蔵する回転駆動機構39によって、シンチレーション光L,Lの光路を含む平面に略垂直な軸を中心にして回転可能に支持されている。このような回転駆動機構39によって支持されたミラー38により、シンチレーション光L,Lが、ミラー38から検出面1aの延長方向に沿ってさらに離れて配置された光検出器34に向けて選択的に導光される。すなわち、回転駆動機構39によって反射面38aをミラー36b側に向けるようにミラー38を回転させる(図1の実線)と、シンチレーション光Lが光検出器34の集光レンズ部34aに向けて反射される。その一方で、回転駆動機構39によって反射面38aをミラー37b側に向けるようにミラー38を回転させる(図1の二点鎖線)と、シンチレーション光Lが光検出器34の集光レンズ部34aに向けて反射される。
【0039】
さらに、放射線画像取得装置31は、回転駆動機構39の回転を制御する回転制御部41と、ミラー38によるシンチレーション光L,Lの選択のタイミングと光検出器34の撮像のタイミングとを制御するタイミング制御部42と、光検出器34から出力された画像信号を処理する画像処理装置18とを備えている。詳細には、回転制御部41は、タイミング制御部42からの指示信号に応じて回転駆動機構39に制御信号を送出してミラー38の回転角度を制御する。タイミング制御部42は、シンチレーション光Lを光検出器34に反射させるようにミラー38の回転角度を切り替えるために回転制御部41に指示信号を送出すると同時に、光検出器34に対して、ミラー38の切り替えと同期してシンチレーション光Lを撮像するように指示信号を送出する。さらに、タイミング制御部42は、シンチレーション光Lを光検出器34に反射させるようにミラー38の回転角度を切り替えるために回転制御部41に指示信号を送出すると同時に、光検出器34に対して、ミラー38の切り替えと同期してシンチレーション光Lを撮像するように指示信号を送出する。画像処理装置18は、光検出器34からシンチレーション光L,Lを撮像した結果得られた2つの画像信号を取得し、それらの2つの画像信号を処理することによって対象物Aに関する放射線透過像データを生成する。
【0040】
このような放射線画像取得装置31によれば、シンチレータプレート1の両面から放射されたシンチレーション光L,Lは、光学系35を経由して光検出器34に導光されるので、放射線の出射領域から光検出器34を離すことが可能になる。これにより、対象物Aの放射線投影像に検出器の影が映り込むことなく、検出器による放射線の低エネルギー成分の減衰も無くなる。また、検出器自体に放射線が入射することによる直接変換ノイズの発生も少ない。また、1つの検出器によって低エネルギー成分の放射線透過像と高エネルギー成分の放射線透過像を取得することができるので、容易に装置の小型化を図ることができる。
【0041】
以上説明したシンチレータプレート1の作用効果について説明する。
【0042】
シンチレータプレート1においては、放射線をシンチレーション光に変換する2つの平板状のシンチレータ3,4が、放射線を透過する平面状の仕切板2を挟んで配置されているので、対象物Aを透過した放射線が、一方のシンチレータ3によってシンチレーション光に変換されるとともに、そのシンチレータ3および仕切板2を透過した後に他方のシンチレータ4によってシンチレーション光に変換される。このとき、仕切板2の存在によって、2つのシンチレータ3,4において発生したそれぞれのシンチレーション光が、2つのシンチレータ3,4の仕切板2に対して反対側の面1a,1bから出射されやすくなる。その結果、このシンチレータプレート1を、シンチレータプレート1の両面1a,1bから出射されたシンチレーション光を集光して撮像する放射線画像取得装置11,31に使用することにより、高エネルギー帯の放射線画像と低エネルギー帯の放射線画像を効率良く分別することができる。
【0043】
また、仕切板2はシンチレーション光に対して遮光性を有するので、シンチレータ3,4のうちの一方において発生したシンチレーション光が、シンチレータ3,4のうちの他方に入射することを確実に防止することができ、放射線画像のエネルギー分別性を高めることができる。
【0044】
また、シンチレータ3及びシンチレータ4の材料として異なるエネルギー帯の放射線に感度の高い波長変換部材を使用することで、放射線画像のエネルギー分別性をより高めることができる。さらに、シンチレータ3の厚さとシンチレータ4の厚さとが異なるように構成されることで、異なるエネルギー帯の放射線画像の検出感度を互いに調整することができ、レベル補正等の画像処理が簡素化される。
【0045】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、図6に示す本発明の変形例であるシンチレータプレート101のように、仕切板102の両面又は片面に、シンチレータ3,4によって発生するシンチレーション光を反射する反射面102a,102bが形成されてもよい。このような反射面102a,102bは、仕切板102の両面又は片面に、アルミニウムを蒸着したり、アルミニウムの薄膜を貼り合わせたり、放射線を透過する金属粒子を厚さ0.1μm以下でコーティングしたり、白色塗料を塗布したりすることによって形成される。また、仕切板102自体をアルミニウム板等の金属板で構成し、その両面又は片面を鏡面研磨することで反射面102a,102bを形成してもよい。さらに、シンチレータ3,4の表面に反射面102a,102bを形成した後に仕切板102にシンチレータ3,4を接合することによって、仕切板102の両面又は片面に反射面102a,102bを配置させてもよい。このような構成により、シンチレータ3,4のうち一方において発生したシンチレーション光が、他方のシンチレータ3,4へ入射することを確実に防止することができるとともに、放射線画像取得装置11,31によるシンチレーション光の効率的な検出が可能にされる。これにより、放射線画像のエネルギー分別性を高めつつ高コントラストの放射線画像を取得することができる。
【0047】
また、シンチレータプレートの仕切板2は、シンチレータ3,4で発生するシンチレーション光に対して遮光性を有するものには限定されず、シンチレーション光の一部の波長域を遮蔽するようなフィルタ機能を持たせてもよい。このような構成によっても、高エネルギー帯の放射線画像と低エネルギー帯の放射線画像を、所望の範囲で効率良く分別することができる。また、仕切板2は、入射する放射線の全てのエネルギー成分を透過するものには限定されず、低エネルギー領域の放射線を遮蔽するような性質を有していてもよい。この場合、裏面側のシンチレータ4にて、低エネルギー領域の放射線によって発生したシンチレーション光の入射を低減できるので、エネルギー分別性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,101…シンチレータプレート、2,102…仕切板、2a,2b…配置面、3,4…シンチレータ、11,31…放射線画像取得装置、102a,102b…反射面、A…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を透過した前記放射線の入射に応じてシンチレーション光を放射させる板状の部材であり、前記シンチレーション光を撮像する画像取得装置に用いられるシンチレータプレートにおいて、
放射線を透過する平面状の仕切部材と、
前記仕切部材の一方の面上に配置され、前記放射線をシンチレーション光に変換する板状の第1の波長変換部材と、
前記仕切部材の他方の面上に配置され、前記放射線をシンチレーション光に変換する板状の第2の波長変換部材と、
を備え、
前記仕切部材は、前記第1の波長変換部材及び前記第2の波長変換部材がそれぞれ配置された板部材を、前記第1の波長変換部材及び前記第2の波長変換部材に対して反対側の面を接合することによって作製される、
ことを特徴とするシンチレータプレート。
【請求項2】
前記仕切部材は、前記シンチレーション光に対して遮光性を有する、
ことを特徴とする請求項1記載のシンチレータプレート。
【請求項3】
前記仕切部材には、前記シンチレーション光を反射する反射面が形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のシンチレータプレート。
【請求項4】
前記第1の波長変換部材と前記第2の波長変換部材とは異なる材料で形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシンチレータプレート。
【請求項5】
前記第1の波長変換部材と前記第2の波長変換部材とは厚さが異なる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータプレート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−37011(P2013−37011A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230076(P2012−230076)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2011−13206(P2011−13206)の分割
【原出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】