説明

シンチレータ部材及びその製造方法並びに放射線測定装置

【課題】棒状のシンチレータに遮光膜を設ける技術を提供する。
【解決手段】遮光膜20は、幅がLの帯状の膜であり、熱転写処理により、円柱状のファイバシンチレータ10の側面に螺旋状に巻き付けられる。まず、第1周目の遮光膜20(1)が巻き付けられ、1回転だけ巻き進められると、第2周目の遮光膜20(2)が第1周目の遮光膜20(1)に重ねて巻き付けられる。その際、第2周目の遮光膜20(2)は、第1周目の遮光膜20(1)に対して、幅方向にL/4だけずらされて重ねられる。同様に、第3周目の遮光膜20(3)が、第2周目の遮光膜20(2)に対して、幅方向にL/4だけずらされて重ねられ、第4周目の遮光膜20(4)が、第3周目の遮光膜20(3)に対して、幅方向にL/4だけずらされて重ねられる。こうして、遮光膜20が、幅方向にL/4だけずらされながら巻き進められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータ部材及びその製造方法並びに放射線測定装置に関し、特に、シンチレータ部材についての遮光技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータ部材は、表面汚染測定器、体表面モニタなどの様々な放射線測定装置に用いられている。シンチレータ部材に放射線が入射すると、そこで生じた光が光電子増倍管(PMT)などの光検出器によって検出される。シンチレータ部材で生じた光は極めて微弱であるため、シンチレータ部材で生じた光を高感度で検出するための様々な遮光技術が存在する。
【0003】
特に、本願の出願人は、シンチレータ部材の放射線入射面側における遮光に関する画期的な技術を提案している(特許文献1参照)。その技術によれば、転写技術を用いて極めて簡便に、シンチレータの放射線入射面に直接的に皮膜を形成することができる。その皮膜は、シンチレータの外部から進入する放射線を透過させ且つ外部からの光の進入を遮断する。
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0151706号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者らは、特許文献1に記載された画期的な技術をさらに改良した遮光技術について研究開発を重ねてきた。特に、棒状に形成されたシンチレータについての遮光技術に注目した。
【0006】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、棒状のシンチレータに遮光膜を設ける技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様であるシンチレータ部材は、放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜と、を有し、前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられて当該シンチレータの側面を覆うことを特徴とする。
【0008】
上記態様において、シンチレータは、例えば円柱状に形成される。なお、シンチレータは、角柱状やそれ以外の細長い形状であってもよい。また、遮光膜は、例えばアルミニウムを含有する薄い層を備えており、放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する。また、複数の棒状のシンチレータを束ねて、そのシンチレータの束に遮光膜を巻き付けてもよい。
【0009】
上記態様によれば、遮光膜が帯状に形成されてシンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられるため、比較的容易に、放射線の入射面として機能するシンチレータの側面を遮光膜で覆うことができる。例えば、シンチレータの側面を当該側面全体の形状に対応した比較的大きな1枚の遮光膜で包み込む方法の場合、その遮光膜を巻き付けるための比較的大掛かりな装置などを必要とするのに対し、本発明の上記態様においては、そのような大掛かりな装置などを必要としない。
【0010】
望ましい態様において、前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に複数に重ねて巻き付けられることを特徴とする。この態様によれば、例えば、シンチレータの側面が露出しないように遮光膜を隙間無く巻き付けることが可能になる。また、例えば、帯状の遮光膜の幅や厚さを一定とし、その遮光膜を螺旋状に均一に巻き付けることにより、シンチレータの側面を覆う遮光膜の厚さを側面全体に亘って比較的均一にすることができる。特に、シンチレータの軸を中心とする回転方向に沿って、遮光膜の厚さを均一にすることが容易になる。
【0011】
望ましい態様において、前記遮光膜は、幅がLの帯状の膜であり、幅方向にL/nだけずらされて重ねられつつ前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられることを特徴とする。この態様において、nは自然数であることが望ましい。nが自然数、例えばn=4の場合、帯状の遮光膜がL/4だけずらされながら重ねられて螺旋状に巻き付けられる結果として、遮光膜がシンチレータの側面に4層に重ねられる。このように、nを自然数とすることにより、遮光膜をn層に重ねることが可能になる。
【0012】
望ましい態様において、前記遮光膜は、転写シートから前記シンチレータの側面に転写されることを特徴とする。この態様における転写は、例えば、熱転写または感圧転写である。
【0013】
また上記目的を達成するために、本発明の好適な態様であるシンチレータ部材の製造方法は、放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜を含んだ転写シートとを用いて、前記シンチレータに前記遮光膜を巻き付けたシンチレータ部材を製造する方法であって、前記シンチレータの側面に沿って転写位置を螺旋状に移動させつつ前記転写シートから当該シンチレータの側面に前記遮光膜を転写する転写工程を含むことを特徴とする。
【0014】
望ましい態様において、前記転写工程では、前記シンチレータをその軸を中心に回転させつつ当該シンチレータをその軸に沿って移動させることにより転写位置を螺旋状に移動させることを特徴とする。
【0015】
望ましい態様において、前記遮光膜は、幅がLの帯状の膜であり、前記転写工程では、前記シンチレータを1回転ごとにその軸に沿ってL/nに対応した距離だけ移動させることを特徴とする。
【0016】
また上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である放射線測定装置は、放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜と、前記シンチレータの軸方向の端部に設けられる光検出器と、を有し、前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられて当該シンチレータの側面を覆い、前記光検出器は、前記シンチレータから出た光を当該シンチレータの端部で検出することを特徴とする。
【0017】
上記態様の放射線測定装置は、例えば、筒状の測定対象物の内部の放射線測定に適している。例えば、原子力発電所などで利用されて廃棄される配管の放射線測定に特に適しており、配管を切り開くことなく筒状の形状のままで放射線測定を行うことが可能になる。そのため、例えば、多数の配管を切り開く作業を省くことができ、配管の放射線測定のための作業労力や作業時間を激減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、棒状のシンチレータに遮光膜を設ける技術が提供される。例えば本発明の好適な態様により、比較的容易にシンチレータの側面を遮光膜で覆うことができる。また、例えば本発明の好適な態様により、シンチレータの側面を覆う遮光膜の厚さを側面全体に亘って比較的均一にすることができる。また、例えば本発明の好適な態様により、配管の放射線測定のための作業労力や作業時間を激減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るシンチレータ部材の好適な実施形態を説明するための図である。図1のシンチレータ部材30は、放射線測定装置において放射線検出器として用いられるものであり、ファイバシンチレータ10と遮光膜20によって形成されている。
【0021】
ファイバシンチレータ10は、例えばプラスチックシンチレータ材料などによって円柱状に形成される。ファイバシンチレータ10に放射線が入射すると、それによって発光が生じ、生じた光が図示しない光電子増倍管などの光検出器によって検出される。放射線としては、X線(γ線)、β線、α線などをあげることができ、本実施形態に係るシンチレータ部材30は特にβ線の検出に好適なものである。
【0022】
遮光膜20は、帯状に形成されており、円柱状のファイバシンチレータ10の側面に螺旋状に巻き付けられている。遮光膜20は、外部からファイバシンチレータ10へ向かって進む放射線を透過させる機能と外部からの光を遮断する機能とを有する。遮光膜20は、幅(ファイバシンチレータ10の軸方向の長さ)がLの帯状の膜であり、幅方向にL/4だけずらされて重ねられつつ、ファイバシンチレータ10の側面に螺旋状に巻き付けられる。図1において、遮光膜20は、左側から右側に向かって巻き進められている。
【0023】
つまり、まず、第1周目の遮光膜20(1)がファイバシンチレータ10の側面に巻き付けられ、側面に沿って、ファイバシンチレータ10の軸を中心として1回転だけ巻き進められると、第2周目の遮光膜20(2)が第1周目の遮光膜20(1)に重ねて巻き付けられる。その際、第2周目の遮光膜20(2)は、第1周目の遮光膜20(1)に対して、幅方向(ファイバシンチレータ10の軸方向)にL/4だけずらされて重ねられる。
【0024】
さらに、第2周目の遮光膜20(2)から1回転だけ巻き進められると、第3周目の遮光膜20(3)が、第2周目の遮光膜20(2)に対して、幅方向にL/4だけずらされて重ねられる。同様に、第4周目の遮光膜20(4)が、第3周目の遮光膜20(3)に対して、幅方向にL/4だけずらされて重ねられる。こうして、遮光膜20が、幅方向にL/4だけずらされながら巻き進められることにより、ファイバシンチレータ10の側面に、図1の左側から右側に向かって遮光膜20が巻き付けられていく。
【0025】
遮光膜20が幅方向にL/4だけずらしながら重ねられているため、第4周目の遮光膜20(4)以降は、ファイバシンチレータ10の側面上に、遮光膜20が4層に重ねて巻き付けられる。遮光膜20を複数に重ねることにより、遮光膜20を物理的あるいは構造的に保護、強化することができる。
【0026】
なお、ファイバシンチレータ10の軸方向の端部、つまり遮光膜20の巻き始めの付近や巻き終わりの付近では、遮光膜20が4層となっていない部分が存在する。例えば、図1において、第4周目の遮光膜20(4)よりも左側の部分は、遮光膜20が4層となっていない。このように、層数が所望の数となっていない部分は切断して、遮光膜20が所望の層数となっている部分のみを残してシンチレータ部材30を形成してもよい。
【0027】
本実施形態において、遮光膜20は、熱転写方式によってファイバシンチレータ10に巻き付けられる。
【0028】
図2は、図1のシンチレータ部材30の製造方法を説明するための図である。シンチレータ部材30は、ファイバシンチレータとその側面に巻き付けられる遮光膜とによって形成されている(図1参照)。本実施形態において、遮光膜は、熱転写方式によって熱転写シート50から剥離されてファイバシンチレータに巻き付けられる。
【0029】
つまり、ファイバシンチレータの側面に熱転写シート50が重ねられ、図示しない熱転写ローラなどによって、重ねられた状態のファイバシンチレータと熱転写シート50に局所的に加熱が行われ、その後、ガイドローラ44によって熱転写シート50のベースフィルムが巻き取られる。こうして、熱転写シート50のベースフィルム上から遮光膜20が剥離して、遮光膜20がシンチレータ部材30側に残存することになる。
【0030】
熱転写処理において、回転転写治具42は、シンチレータ部材30をその軸を中心に回転させつつその軸に沿って移動させる。これにより、熱転写の位置が、シンチレータ部材30の側面に沿って螺旋状に移動する。なお、回転転写治具42は、シンチレータ部材30を1回転ごとにその軸に沿ってL/4だけ移動させる。これにより、遮光膜が、幅方向にL/4だけずらされながら巻き進められる(図1参照)。
【0031】
図3は、図1のシンチレータ部材30の遮光膜20を説明するための図である。先に説明したように(図1参照)、ファイバシンチレータ10は円柱状に形成され、そして、ファイバシンチレータ10の側面に遮光膜20が巻き付けられて、シンチレータ部材30が形成される。図3には、ファイバシンチレータ10の側面部分の拡大断面が示されており、その側面部分に遮光膜20が1層だけ積層されている。なお、遮光膜20は、ファイバシンチレータ10の側面上に複数層に重ねて巻き付けられることは先に説明したとおりである。
【0032】
遮光膜20は、本実施形態において、熱転写方式によって、熱転写シート50から剥離された剥離膜である。遮光膜20は、放射線の入射側から見て、保護層24、アルミ層26及び接着層28を有している。各層はそれ全体として均一の厚みを有する。
【0033】
保護層24は透明な材料あるいは着色された材料からなるものであり、アルミ層26の表面の全体を覆ってアルミ層26を物理的な作用から保護する機能を発揮する。保護層24は例えばアクリルエポキシ系の材料によって構成され、その厚みは例えば0.5〜3μmの範囲内に設定される。望ましくは保護層24は1.0μmの厚みを有する。保護層24は堅い材料によって薄く均一に形成されており、これによって上述したようにアルミ層26が物理的な作用から保護されている。保護層24を着色層として構成すれば、例えば黒色あるいは白色の層として構成すれば、それ自体に遮光性を持たせることができる。一般に、アルミ層26を構成するアルミニウム材料などに比べて樹脂系の材料の方が放射線の減弱作用が弱いために、アルミ層26よりも保護層24の方を厚くするのが望ましい。
【0034】
保護層24は、後述するベースフィルム52上に所定材料を塗布し、それを硬化することによって形成された塗膜(塗布層)である。塗布処理によれば、均一で薄い層を比較的に容易に形成できるという利点がある。
【0035】
本実施形態では、熱転写前の状態では、遮光膜20が後述するベースフィルム52に一体化されてその強度が確保され、熱転写後の状態では遮光膜20がファイバシンチレータ10に一体化されてその強度が確保される。遮光膜20を単体で存在させる必要がないので、その取扱いが極めて容易である。
【0036】
アルミ層26はアルミニウム材料あるいはそれを含む混合材料によって構成され、そのアルミ層26は保護層24の裏面側に形成された蒸着層として形成されている。すなわちアルミ層26は熱転写シート50の形成段階において蒸着によって形成されたものである。その厚みは、例えば0.01〜1.5μmの範囲内に設定され、望ましくは0.05μmである。熱転写シート50の形成段階において蒸着法以外を用いてアルミ層26を形成するようにしてもよい。アルミ層26は、測定対象となる放射線を通過させ、その一方において、外来光がファイバシンチレータ10へ到達することを防止する遮光機能、及び、ファイバシンチレータ10側からの光を反射する反射機能、を有する。なお、蒸着層をアルミニウム材料以外の材料で構成することも可能である。
【0037】
接着層28は、本実施形態において、熱可塑性接着材によって構成され、例えばオレフィン系の材料(PP系接着材、アクリル系接着材、等)によって構成される。接着層28は、遮光膜20をファイバシンチレータ10上に接着するためのものである。その厚みは例えば2〜3μm程度である。接着層28を構成する材料としては加熱後に硬化する材料を用いるのが望ましい。もちろん、それ以外にも様々な接着材料を利用することが可能である。但し、あまり接着層28の厚さを厚くするとそこでの放射線の減弱が無視できなくなるため、そのような放射線の減弱を考慮しつつできる限り薄い接着層28を形成するのが望ましい。複数の接着層を形成するようにしてもよい。本実施形態において、接着層28には、白色を呈する酸化チタンの粉末が添加されている。その粉末は、ファイバシンチレータ10側から進入した光を反射(乱反射)する反射材として機能する。酸化チタンに代えて他の材料を用いることもできる。
【0038】
次に、熱転写シート50について詳述する。熱転写シート50は、ベースフィルム52と、そのベースフィルム52に対して離型層54を介して設けられた上記の遮光膜20と、を有している。すなわち、熱転写時において、熱転写シート50に対して加熱が行われると、離型層54の作用により、ベースフィルム52から遮光膜20が剥がれることになる。それと同時に、遮光膜20は上記の接着層28の作用によってファイバシンチレータ10上に接着される。ベースフィルム52は、例えばポリエステル樹脂によって構成され、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムによって構成される。その厚みは例えば10〜20μmの範囲内に設定され、望ましくは16μmの厚みを有する。離型層54は例えばワックス系あるいはアクリル系の材料によって構成され、その厚みは例えば0.3〜0.8μmの範囲内に設定され、望ましくは0.5μmである。上記の離型層54を有しない熱転写シート50を用いることもできる。
【0039】
なお、上記で掲げた各数値は一例であって、諸条件に応じて各種の数値を採用し得る。例えば、アルミ層26の厚みを遮光性が十分担保される限りにおいてより薄くしつつ、その一方において保護層24の厚みをより厚くするようにしてもよい。また薄いアルミ層26と薄い保護層24とで遮光膜20を構成し、そのような遮光膜20を複数積層することによって、全体として厚いアルミ層及び厚い保護層を構成するようにしてもよい。いずれの場合においても、放射線に応じてそれを十分な感度をもって検出できるように、しかも物理的な保護が十分に図られるように、各材料の厚みを適宜設定するのが望ましい。
【0040】
ファイバシンチレータ10に遮光膜20を巻き付ける際には、先に説明したように(図2参照)、ファイバシンチレータ10上に熱転写シート50が重ね合わされ、重ね合わされた部分に局所的な加熱が図示されていない熱転写ローラなどによって行われた後、ガイドローラ44によってベースフィルム52が巻き取られる。すると、上述したようにベースフィルム52上から遮光膜20が剥離して、遮光膜20がシンチレータ部材30側に残存することになる。これによって熱転写処理が完成する。
【0041】
図4は、本発明に係る放射線測定装置の好適な実施形態を説明するための図であり、図4には、図1のシンチレータ部材30を利用した放射線測定装置が示されている。シンチレータ部材30は、先に説明したように(図1参照)、円柱状のファイバシンチレータの側面に遮光膜を螺旋状に巻き付けたものであり、シンチレータ部材30も円柱状となる。
【0042】
放射線測定装置内において、シンチレータ部材30は、その軸方向が鉛直方向となるように立てられており、シンチレータ部材30の軸方向の一端(上端)には、光電子増倍管60が設けられている。つまり、シンチレータ部材30の外部から放射線が飛来すると、その放射線がシンチレータ部材30の遮光膜を通ってファイバシンチレータに到達し、そこで生じた発光が光電子増倍管60によって検出されることになる。シンチレータ部材30には物理的な保護が図られた遮光膜が形成されているため、その遮光機能によって外部からの光の進入は効果的に防止される。
【0043】
また、シンチレータ部材30の軸方向の他端(下端)には、反射部材80が設けられており、シンチレータ部材30内に発生して反射部材80側へ向かう光が、反射部材80によって光電子増倍管60側へ反射される。これにより、シンチレータ部材30内で発生した光の殆ど全てを、望ましくは全ての光を、光電子増倍管60で検出することができる。なお、反射部材80に換えて、他端側にも光電子増倍管60を設けてもよい。
【0044】
図4に示す放射線測定装置は、配管(パイプ)70内の放射線を測定するのに適している。例えば軸方向の長さが70cm程度の配管70の筒状の内部にシンチレータ部材30が挿入され、配管70の内部で発生する放射線がシンチレータ部材30に入射し、放射線の入射に伴う発光が光電子増倍管60によって検出される。このように、図4に示す放射線測定装置では、配管70を円筒形の状態で測定することができる。したがって、例えば、円筒状の配管70を切り開く作業などを必要としない。
【0045】
なお、図4には、放射線を検出するための主要部分である光電子増倍管60、シンチレータ部材30、反射部材80と、測定対象である配管70のみを図示しているが、これら図示された構成は、例えばアルミニウムや鉛などによって形成された放射線測定装置の外壁で覆われる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るシンチレータ部材の好適な実施形態の説明図である。
【図2】シンチレータ部材の製造方法を説明するための図である。
【図3】シンチレータ部材の遮光膜を説明するための図である。
【図4】本発明に係る放射線測定装置の好適な実施形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
10 ファイバシンチレータ、20 遮光膜、30 シンチレータ部材、50 熱転写シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、
放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜と、
を有し、
前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられて当該シンチレータの側面を覆う、
ことを特徴とするシンチレータ部材。
【請求項2】
請求項1に記載のシンチレータ部材において、
前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に複数に重ねて巻き付けられる、
ことを特徴とするシンチレータ部材。
【請求項3】
請求項2に記載のシンチレータ部材において、
前記遮光膜は、幅がLの帯状の膜であり、幅方向にL/nだけずらされて重ねられつつ前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられる、
ことを特徴とするシンチレータ部材。
【請求項4】
請求項3に記載のシンチレータ部材において、
前記遮光膜は、転写シートから前記シンチレータの側面に転写される、
ことを特徴とするシンチレータ部材。
【請求項5】
放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、
放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜を含んだ転写シートと、
を用いて、前記シンチレータに前記遮光膜を巻き付けたシンチレータ部材を製造する方法であって、
前記シンチレータの側面に沿って転写位置を螺旋状に移動させつつ前記転写シートから当該シンチレータの側面に前記遮光膜を転写する転写工程を含む、
ことを特徴とするシンチレータ部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、
前記転写工程では、前記シンチレータをその軸を中心に回転させつつ当該シンチレータをその軸に沿って移動させることにより転写位置を螺旋状に移動させる、
ことを特徴とするシンチレータ部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法において、
前記遮光膜は、幅がLの帯状の膜であり、
前記転写工程では、前記シンチレータを1回転ごとにその軸に沿ってL/nに対応した距離だけ移動させる、
ことを特徴とするシンチレータ部材の製造方法。
【請求項8】
放射線の入射により発光する棒状のシンチレータと、
放射線を透過させ且つ光の透過を阻止する帯状の遮光膜と、
前記シンチレータの軸方向の端部に設けられる光検出器と、
を有し、
前記遮光膜は、前記シンチレータの側面に螺旋状に巻き付けられて当該シンチレータの側面を覆い、
前記光検出器は、前記シンチレータから出た光を当該シンチレータの端部で検出する、
ことを特徴とする放射線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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