説明

シーアンカーの収納構造

【課題】シーアンカーの水中での展張を安定的に行うことを可能とするとともに、展張後に不要となるケースを展張後に分離させて、構成として残さないようにすることが可能なシーアンカーの収納構造を提供する。
【解決手段】シーアンカー1を収納する収納空間を有する半割のケース10を備え、ケース10を構成する2つのケース本体11、12のそれぞれの内面側に、シーアンカー1を載置する載置面11a,12aを設け、各載置面11a,12aは、互いに係合してケース本体11、12同士を係止するための係合部を有し、水中に投下された際に作用する外力によりシーアンカー1が回転すると、その回転力が載置面11a,12aに作用して係合部の係合が外れ、ケース10が解体するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等から海洋に投下されて水中に位置される水中音響機器が、波による動作防止を行うためのシーアンカーの収納構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、「ブイからケーブルを介して吊下される吊下体に引き出し索を介してシーアンカーを連結し、これらを筒状の沈降用容器内に収納し、海洋投下後、前記ブイを海面に浮遊させると共に、前記吊下体とシーアンカーを沈降用容器と共に海中に沈降させ、前記ケーブルの伸長後も前記沈降用容器を沈降させることで前記吊下体とシーアンカーを前記沈降用容器から引き出して、シーアンカーを展張させる場合のシーアンカー収納装置」において、2分割されたケース本体、及びこのケース本体の上面を塞ぐ蓋体から成るケースを備え、前記ケースのケース本体内に前記シーアンカーを折り畳んで収納しておき、海洋投下後、ケース本体を2分割し、シーアンカーを海中に沈降させて展張する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、電子機器(水中音響センサ)を筒状の収納容器に収納し、水中に投下された後、水中において展張される技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−52595号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2002−174678号公報(第2頁、第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、シーアンカーに接続される引き出し索が、ケースの外側に存在するため、動作中に予期しない部分に引っかかる等して所望の展張動作が行なわれないおそれがある。
【0005】
また、特許文献2の技術では、水中で水中音響センサを繰り出す際に収納容器を下方に落下させるようにするが、落下時に収納容器がセンサケーブルに引っ掛かってしまい、完全に落下しないことがある。落下せずに収納容器がセンサの近傍に位置する場合、水流によって雑音を発生し、正確な測定を妨げる恐れがあるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、シーアンカーの水中での展張を安定的に行うことを可能とするとともに、展張後に不要となるケースを展張後に分離させて、構成として残さないようにすることが可能なシーアンカーの収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシーアンカーの収納構造は、シーアンカーを収納する収納空間を有する半割のケースを備え、ケースを構成する2つのケース本体のそれぞれの内周面側に、シーアンカーを載置する載置面を設け、各載置面は、互いに係合してケース本体同士を係止するための係合部を有し、水中に投下された際に作用する外力によりシーアンカーが回転すると、その回転力が載置面に作用して係合部の係合が外れ、ケースが解体するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、海洋投下された際にシーアンカーに作用する回転力によって係合部の係合が外れてケース本体が解体するため、シーアンカーの水中での展張を安定的に行うことが可能となるとともに、展張後に不要となるケースが展張後に構成として残さないようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態のシーアンカーの収納構造を示す図で、ケース内にシーアンカーが収納された状態を示す模式図である。図2及び図3は、ケースを示す図であり、図2は、ケースが組み立てられた状態を示す図、図3は、ケースが解体された状態を示す図であり、図2及び図3のそれぞれの図において、(a)は縦断面図、(b)は(a)を矢印A方向から見た図である。
これらの図において、1は、布製のシーアンカー、10は、シーアンカー1を収納するケースで、このケースは、左右に半割の一対のケース本体11,12から構成されている。
【0010】
ケース10は、シーアンカー1の収納空間を内部に有する筒状を成している。収納空間は、本例では断面形状が円形状であるが、長円形、多角形等に構成してもよい。また、ケース本体11,12のそれぞれの内周面側には、内周面から内方に垂直に延出し、シーアンカーを載置する載置面11a,12aが形成されている。この載置面11a,12aは、ケース本体11,12において、上下方向の位置が互いにずれた位置から延出されており、両者を組み付けたときに、左右方向の一部がオーバラップするように構成されている。図2の(b)及び図3の(b)に、オーバラップ部分をハッチングで示している。
【0011】
そして、載置面11a,12aに設けられた係合部20によって、ケース本体11,12同士が固定されている。係合部20は、オーバラップ部分の一方に設けられた分離防止突起21aと、他方に設けられた係止穴22aとから構成され、これらによりケース本体11,12同士が固定されるようになっている。また、ケース本体12にはスリット23が設けられている。このスリット23は、載置面12aの自由端からオーバーラップ部分を超えて更に長く形成されており、組み立てられた際に、他方のケース本体11の載置面11aに覆われず、後述の分離索を通すための通過孔23aを形成している。
【0012】
以上のように構成されたケース10内に、シーアンカー1が押し込まれた状態で収納される。これにより、ケース10には図1の矢印に示すように外向きの力が作用し、ケース10とシーアンカー1とが一体的に保持されている。また、シーアンカー1の上面と下面には、それぞれ分離索31,32が接続されており、上面側の接続位置と下面側の接続位置とを結んだ線が、ケース10の中心軸に対して傾斜するようにシーアンカー1に接続されている。
【0013】
図4は、収納状態を示す概略側断面図である。
図4において、40は沈降用容器、50は水中音響センサ、60はブイである。図4に示すように、沈降用容器40の最下部に水中音響センサ50が収納され、その上に、シーアンカー1を収納したケース10が収納されている。そして、シーアンカー1の上方にブイ60が配置されている。そして、分離策31によってシーアンカー1とブイ60とが接続され、また、シーアンカー1の下面と水中音響センサ50とが分離索32により接続されている。
【0014】
次に、図4に示した収納状態の沈降用容器40を、航空機あるいは船舶から海洋に投下した際の動作について説明する。
図5は、沈降用容器40を投下してからケース10が分解されるまでの一連の動作説明図、図6及び図7は、図5の(c)と(d)との間の詳細動作説明図である。なお、図5〜図7においてブイの図示は省略している。
(a)沈降用容器40が、航空機あるいは船舶から海洋に投下されると、ブイ60は、その浮力により沈降用容器40から離脱し、海面に浮上する。(b)その一方で、沈降用容器40及びケース10は海中に沈降していく。そして、(c)に示すように、分離索32が、撓んだ状態から、ぴんと張った状態となる。その後、更に水中音響センサ50は自重により沈んで行くため、分離策32に引っ張る力が作用する。ここで、分離策31,32は、シーアンカー1の上面及び下面において略対角を成す位置で接続されているため、分離策32に重力方向の引っ張り力が働くと、図6に示すようにシーアンカー1に図示矢印で示す回転力が作用する。これにより、分離防止突起21aが押し下げられて図7に示すように係止穴22aとの係合が外れ、(d)ケース本体11,12同士の結合が分離して解体する。その結果、(e)ケース本体11,12がそれぞれ自重により沈降していくとともに、沈降用容器40が更に沈降していき、(f)水中音響センサ50の周囲にケース本体11,12及び沈降用容器40が無い状態となる。
【0015】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シーアンカー1に作用する回転力によって係合部20の係合が外れてケース本体11,12が解体し、ケース本体11,12が水中音響センサ50の近傍から離れて沈降していくため、水中音響センサ50の近くにケース10が残存することによる不都合を防止することができる。
【0016】
また、ケース本体11,12同士は、分離防止突起21aと係止穴22aとによる簡単な構造で係合されているため、海洋投下時に確実に解体が行われ、シーアンカー1の水中での展張を安定的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態のシーアンカーの収納構造を示す図である。
【図2】ケースが組み立てられた状態を示す図である。
【図3】ケースが解体された状態を示す図である。
【図4】収納状態を示す概略側断面図である。
【図5】沈降用容器40を投下してからケース10が分解されるまでの一連の動作説明図である。
【図6】図5の(c)の動作時に作用する力の説明図である。
【図7】図5の(c)と(d)との間の詳細動作説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 シーアンカー
10 ケース
11 ケース本体
11a 載置面
12 ケース本体
12a 載置面
20 係合部
21a 分離防止突起
22a 係止穴
23 スリット
23a 通過孔
31 分離策
32 分離策
40 沈降用容器
50 水中音響センサ
60 ブイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーアンカーを収納する収納空間を有する半割のケースを備え、該ケースを構成する2つのケース本体のそれぞれの内周面側に、前記シーアンカーを載置する載置面を設け、該各載置面は、互いに係合してケース本体同士を係止するための係合部を有し、海洋投下された際に作用する外力により前記シーアンカーが回転すると、その回転力が前記載置面に作用して前記係合部の係合が外れ、前記ケースが解体することを特徴とするシーアンカーの収納構造。
【請求項2】
前記載置面は、前記ケース本体の内周面において上下方向の位置が互いにずれた位置からから内方に延出し、且つ、ケース本体同士を組み付けたときに、左右方向の一部がオーバラップするように構成されており、前記係合部は、前記載置面のオーバラップ部分に設けられた分離防止突起と、該分離防止突起が係止される係止穴とから構成されていることを特徴とする請求項1記載のシーアンカーの収納構造。
【請求項3】
前記載置面に設けた通過孔を介してシーアンカーの下面と水中音響センサとが第1の分離策により連結される一方、前記シーアンカーの上面とブイとが第2の分離策により連結され、前記ケース内に前記シーアンカーと前記ブイとが収納された状態で海洋投下された際に、前記第1の分離策及び第2の分離策のそれぞれに引っ張る力が作用することで前記シーアンカーに回転力が作用し、前記係合が外れることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシーアンカーの収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−298211(P2009−298211A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152718(P2008−152718)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】