説明

シースルー型太陽電池モジュール

【課題】透過光量の調整が容易なシースルー型太陽電池モジュールを得る。
【解決手段】シースルー型太陽電池モジュール(10)は、旋光性を有する基板(1)と、前記基板(1)上に形成された光電変換部(2)と、前記光電変換部(2)を含んで前記基板(1)を被覆する偏光特性を有する第1のポリマーフィルム(3)と、前記基板(1)の前記光電変換部(2)の形成される面とは反対側の面を被覆する偏光特性を有する第2のポリマーフィルム(4)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シースルー型太陽電池モジュールに関し、特に透過光量の調整が容易なシースルー型太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題を含む環境問題への関心の高まりから、太陽電池発電のニーズが年々増加している。太陽電池は、一般には住宅の屋根に設置して利用されている。しかしながら、住宅全体に注がれる太陽光をさらに有効利用するために、太陽電池を住宅の壁面材料として使用する試みが為されており、最近では、窓材として利用が可能な採光性を有するシースルー型太陽電池モジュールが開発されている。
【0003】
シースルー型太陽電池モジュールは、ガラスなどの透明基板上全体にアモルファスシリコンなどを受光層とする薄膜光電変換ユニットを設け、その後、エッチングなどでこの光電変換ユニットに多数の開口を設けて構成される。即ち、この太陽電池モジュールでは、薄膜光電変換ユニットによって発電すると共に、モジュール全体に設けた多数の開口により外光の一部を透過させることにより、全面的な光の透過性、即ち採光性を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、上記のように、モジュール全体に多数の開口を設ける代わりに、複数の矩形状光電変換ユニットを集積して複数の光電変換セグメントを形成し、これらのセグメントを透明基板上に離間して配置する構成のシースルー型太陽電池モジュールも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このシースルー型太陽電池モジュールでは、セグメントの離間部によって透光部が形成され、これによってモジュール全面の採光性が確保されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−152593
【特許文献2】特開2002−299666
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窓材などにシースルー型太陽電池モジュールを使用する場合、採光性のみならずデザイン性が要求され、ユーザの多様な要求に応じて異なる透過光量を有する種々の太陽電池モジュールを用意しなければならない。従来のシースルー型太陽電池モジュールでは、上記何れのタイプであっても、その透過光量の調整のためには、光電変換部と、開口部あるいは離間部との面積比を変える必要がある。そのためには、薄膜太陽電池モジュールの製造の時点で、開口形成のためのエッチングにおけるマスクパターンを変えること、あるいは、光電変換セグメントの大きさ、配置方法を変えることなど、製造工程自体を変えなければならず、製造のために手間と時間がかかり、その結果、シースルー型太陽電池モジュール自体のコストを上昇させる。
【0007】
本発明は、従来のシースルー型太陽電池モジュールの上記のような欠点を解決する目的でなされたもので、製造工程を変えることなく透過光量の制御が容易な、新規な構造を有するシースルー型太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のシースルー型太陽電池モジュールは、旋光性を有する基板と、前記基板上に形成された光電変換部と、前記光電変換部を含んで前記基板を被覆する偏光特性を有する第1のポリマーフィルムと、前記基板の前記光電変換部の形成される面とは反対側の面を被覆する偏光特性を有する第2のポリマーフィルムとを備えて構成される。
【0009】
また、上記シースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記基板を、旋光性を有する光学活性ポリマーフィルムで形成する。この光学活性ポリマーフィルムは、例えば、光学活性なL体ポリ乳酸フィルムである。
【0010】
また、前記基板を、印加電圧によって旋光性を変化させる液晶を含むセル基板で構成する。
【0011】
さらに、前記第1、第2のポリマーフィルムを、1軸延伸ポリマーフィルムで構成する。この1軸延伸ポリマーフィルムは、例えば、ポリビニールアルコール延伸フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
上記シースルー型太陽電池モジュールでは、光電変換部を形成するための基板が旋光性を有し、かつ光電変換部を含んだ基板上に偏光特性を有する第1のポリマーフィルムを形成し、基板裏面に偏光特性を有する第2のポリマーフィルムを形成しているので、基板の旋光角、第1、第2のポリマーフィルムの偏光方向を適宜設定することによって、本モジュールを透過する光量の制御が可能となる。このため、面積を含めた光電変換部の構造を変えることなく透過光量の制御が可能な、低コストのシースルー型太陽電池モジュールを提供することが可能となる。
【0013】
また、前記基板を、旋光性を有する光学活性ポリマーフィルムで形成することにより、フィルムの厚さを変えることによって、基板の旋光角を制御することができる。この光学活性ポリマーフィルムを、生分解性樹脂である光学活性なL体ポリ乳酸フィルムで形成することにより、材料面でも環境にやさしい太陽電池モジュールを実現可能である。
【0014】
また、基板を印加電圧によって旋光性を変化させる液晶を含んだセル基板で構成することにより、太陽電池モジュール製造後であっても、その透過光量の制御を印加電圧の調整により行うことが可能となる。
【0015】
さらに、第1、第2のポリマーフィルムを、1軸延伸ポリマーフィルムで形成することにより、偏光子、検光子の機能を低コストで実現することができる。これによって、本発明のシースルー型太陽電池モジュールをさらに低コストで提供することができる。また、この1軸延伸ポリマーフィルムを、生分解性樹脂であるポリビニールアルコール延伸フィルムで形成することにより、材料面でも環境にやさしい太陽電池モジュールを実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施形態1]
図1(a)および(b)は、本発明の実施形態1にかかるシースルー型太陽電池モジュール(以下、太陽電池モジュール)の平面図およびそのA−A線上断面図である。図示するように、本太陽電池モジュール10では、旋光性を有する透明基板フィルム1上に複数の互いに離間した光電変換領域2a、2b、2cが形成されている。光電変換領域2a、2b、2cは太陽光を受光して発電を行う領域であり、通常、光を透過しない。透明基板フィルム1上の光電変換領域以外の領域(透明領域)1a、1b、1c、1dは透明性を有し、この領域の存在によって太陽電池モジュール10がシースルー特性を有する。
【0017】
図(b)に示すように、太陽電池モジュール10は、旋光性を有する基板フィルム1上に光電変換領域2を形成し、光電変換領域2(光電変換領域2a、2b、2cを含む)を含んだ基板フィルム1上全体に偏光特性を有するカバー用フィルム3を設け、さらに、基板フィルム1の下面を、偏光特性を有するシェードフィルム4で被覆した構成を有する。基板フィルム1を、旋光性を有する光学活性ポリマーフィルムで形成した場合、その旋光角はフィルムの厚さに依存して変化する。また、カバー用フィルム3およびシェード用フィルム4を、1軸延伸ポリマーフィルムによって形成することによって、偏光子、検光子の機能を低コストで実現することが可能である。
【0018】
光電変換領域2(2a、2b、2cを含む)は、例えばアモルファスシリコンを材料とする薄膜の受光層を、透明導電材料で形成される表面電極とアルミニウムなどの金属で形成される裏面電極とで挟んだ構成を有する。裏面電極は基板フィルム1上に形成される。受光層を、焼却廃棄が可能な薄膜カーボンによって形成しても良い。なお、光電変換領域2の構造は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0019】
図2は、基板フィルム1、カバー用フィルム3およびシェード用フィルム4の光学特性を示す図である。基板フィルム1は、旋光性を有する光学活性ポリマーフィルム、例えばPLLA(光学活性なL体ポリ乳酸)の1軸延伸フィルムで構成され、その場合、その旋光性は7.2°/μmである。したがって、基板フィルム1の厚さが112.5μmの場合は、その旋光角5は810°、即ち2回転と90°となる。カバー用フィルム3は、例えば、ヨウ素系PVA(ポリビニールアルコール)延伸フィルムで形成され、フィルム延伸方向6と同じ方向に偏光方向を有する。したがって、カバー用フィルム3に入射した自然光のうち、フィルム延伸方向6と同じ方向に偏光した一部光(直線偏光)のみがこのフィルム3を通過する。即ち、カバー用フィルム3は偏光子として機能する。
【0020】
シェード用フィルム4もカバー用フィルム3と同様に、例えば、ヨウ素系PVA(ポリビニールアルコール)延伸フィルムで形成され、フィルム延伸方向7と同じ方向に偏光方向を有する。したがって、シェード用フィルム4に入射した光のうち、フィルム延伸方向7と同じ方向に偏光した光(直線偏光)のみがこのフィルム4を通過する。即ち、シェード用フィルム4は、偏光子であるカバー用フィルム3に対して検光子として機能する。
【0021】
カバー用フィルム3、基板フィルム1およびシェード用フィルム4の光学特性が、図2に示すような関係を有する場合、太陽電池モジュール10の透明領域1a、1b、1cおよび1dは光を透過させない領域となる。そのため、本太陽電池モジュール10の光透過性は最小となる。一方、基板フィルム1の厚さの調整によって、基板フィルム1の旋光方向が、カバー用フィルム3およびシェード用フィルム4の偏光方向と平行になった場合、太陽電池モジュール10に入射した光は、透明領域1a、1b、1c、1dを通過する。これによって、本モジュール10の光透過性は最大となる。
【0022】
また、基板フィルム1の旋光角を、カバー用フィルム3およびシェード用フィルム4の偏光方向に平行な方向と垂直な方向との中間とした場合、その角度に応じて透明領域1a、1b、1c、1dの透過光量が、上記の最大値と最小値の間で変化する。
【0023】
図1の構造の太陽電池モジュール10では、以上のように、基板フィルム1の旋光角を制御することによって、透明領域1a、1b、1c、1dの透過光量、即ち、太陽電池モジュール10の透過光量を制御することが可能である。旋光角の制御は、基板フィルム1が旋光性を有する光学活性ポリマーフィルム、例えばPLLA(光学活性なL体ポリ乳酸)の1軸延伸フィルムである場合、フィルム厚を変えることによって行うことができる。
【0024】
なお、図2で示す場合は、カバー用フィルム3およびシェード用フィルム4がパラレルニコルの関係に配置されているが、これをクロスニコルの関係に配置することも可能である。その場合は、基板フィルム1の旋光角がカバーフィルム3の偏光方向に対して直交するものとなった場合に透明領域1a、1b、1c、1dの透過光量が最大となる。
【0025】
このように、カバー用フィルム3、シェード用フィルム4の偏光方向は、図2に示されるものに限定されるものではなく、基板フィルム1の旋光角との関係で任意に設定することが可能である。しかしながら、カバー用フィルム3、シェード用フィルム4の偏光方向を一旦決定した場合、太陽電池モジュール10の透過光量の調整は、基板フィルム1の厚さの調整によって可能となる。
【0026】
以上のように、実施形態1の太陽電池モジュール10では、透明領域の面積の調整を行うことなく、基板フィルム1の厚さの調整のみでその透過光量を調整することができる。したがって、透過光量の異なる太陽電池モジュール10を製造しようとする場合であっても、製造工程を大幅に変更する必要なくその製造が可能である。
【0027】
[実施形態2]
図3は、本発明の実施形態2にかかる太陽電池モジュール20の構造を示す図であり、図(a)はその平面図、図(b)は図(a)のB−B線上断面図である。図(a)に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール20は、基板フィルム21の全面に渡って光電変換領域22を形成したことを特徴とする。この場合、光電変換領域22を簿層とすることによって、光電変換領域22自体を半透明とし、太陽電池モジュール20の採光性を確保している。あるいは、光電変換領域22全体にエッチングにより複数の開口を形成するようにしても良い。
【0028】
太陽電池モジュール20の断面構造は、基本的に実施形態1の太陽電池モジュールの光電変換部分の構造と同じである。即ち、図2(b)において、21は旋光性を有する基板フィルムであって、PLLA1軸延伸フィルムなどの光学活性ポリマーフィルムによって構成される。22は薄膜の受光層を備える光電変換領域、23はPVA延伸フィルムなどの1軸延伸ポリマーフィルムで構成されるカバー用フィルム、24は同様にPVA延伸フィルムなどの1軸延伸ポリマーフィルムで構成されるシェード用フィルムである。
【0029】
本実施形態にかかる太陽電池モジュールも、実施形態1の場合と同様に、カバー用フィルム23、シェード用フィルム24の偏光方向、基板フィルム21の旋光角の調整により、その透過光量の調整が可能となる。さらに、カバー用フィルム23、シェード用フィルム24の偏光方向を固定した場合は、基板フィルム21の厚さを調整することにより、透過光量の制御が可能となる。
【0030】
[実施形態3]
図4は、本発明の実施形態3にかかる太陽電池モジュール30の断面構造を示す。なお、本実施形態の太陽電池モジュール30は、実施形態1の平面構造を有していても、あるいは実施形態2の平面構造を有していても何れでも良い。本実施形態にかかる太陽電池モジュール30の特徴は、実施形態1および2の基板フィルム1、21に代えて、旋光性を有する液晶を含んだセルによって、太陽電池モジュール30の基板31を形成したことである。図示はしていないが、液晶セル基板31には透明導電膜によってその上下面に電極が形成され、これらの電極を介して電圧印加手段が接続されている。したがって、液晶セル基板31の旋光性は、セルの上下の電極から液晶層に印加する電圧を調整することによって制御することができる。
【0031】
太陽電池モジュール30の、液晶セル基板31以外の構造は、実施形態1または実施形態2にかかる太陽電池モジュールと同様である。即ち、32は受光層を含む光電変換領域、33はPVA延伸フィルムなどの1軸延伸ポリマーフィルムで構成されるカバー用フィルム、34は同様にPVA延伸フィルムなどの1軸延伸ポリマーフィルムで構成されるシェード用フィルムを示す。
【0032】
本構成の太陽電池モジュール30では、液晶セル基板31に印加する電圧を調整することによって、本モジュールの透過光量を調整することができる。印加電圧の調整は、モジュール30を形成した後に可能であるため、本モジュールでは、実施形態1または2にかかる太陽電池モジュールとは異なって、太陽電池モジュールを製造した後の透過光量の調整が可能となる。したがって、太陽電池モジュール30は、ユーザによる透過光量の調整が可能な、いわゆるブラインドとしての機能を有するものである。
【0033】
以上の各実施形態において、偏光子、検光子として機能するカバー用フィルム、シェード用フィルムを1軸延伸フィルムによって形成することによって、低コストで偏光子、検光子を形成することができる。また、PVA、PLLA共に生分解性プラスティックであり、これらを用いることによって、材料としても環境にやさしい太陽電池モジュールが実現できる。さらに、受光層の材料をカーボンとすることによって、太陽電池モジュールを廃棄する場合他の材料から分離することなく焼却処分が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1にかかるシースルー型太陽電池モジュールの構成を示す図。
【図2】図1に示すシースルー型太陽電池モジュールの光学特性を示す図。
【図3】本発明の実施形態2にかかるシースルー型太陽電池モジュールの構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態3にかかるシースルー型太陽電池モジュールの構造を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1 基板フィルム
2 光電変換領域
3 カバー用フィルム
4 シェード用フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋光性を有する基板と、
前記基板上に形成された光電変換部と、
前記光電変換部を含んで前記基板を被覆する偏光特性を有する第1のポリマーフィルムと、
前記基板の前記光電変換部の形成される面とは反対側の面を被覆する偏光特性を有する第2のポリマーフィルムと、を備える、シースルー型太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のシースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記基板は旋光性を有する光学活性ポリマーフィルムで形成されていることを特徴とする、シースルー型太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のシースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記光学活性ポリマーフィルムは、光学活性なL体ポリ乳酸フィルムであることを特徴とする、シースルー型太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のシースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記基板は、印加電圧によって旋光性を変化させる液晶を含むセル基板で構成されていることを特徴とする、シースルー型太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のシースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記第1、第2のポリマーフィルムは、1軸延伸ポリマーフィルムで形成されていることを特徴とする、シースルー型太陽電池モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のシースルー型太陽電池モジュールにおいて、前記1軸延伸ポリマーフィルムは、ポリビニルアルコール延伸フィルムであることを特徴とする、シースルー型太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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