説明

シートの切り裂き構造とその作製方法

【課題】 切り裂き方向にかかわらずにシートを容易に切り裂きでき、切り裂き後では手指等を傷付けることがないようにする。
【解決手段】 プラスチック製シートケースまたは紙製シートケースに使用されるシート(1)を切り裂くことが可能な切り裂き構造Pとして、山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するよう互いに波の位相をずらした状態で略並行して近接配置した波線状の上下一対の切り込み部2と、上側の切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側の切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3とを備える。また、上側の切り込み部2の谷部分2Bの底点、下側の切り込み部2の山部分2Aの頂点それぞれを円弧状に湾曲形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラスチック製シートまたは紙製シート等によって形成された例えば菓子箱、化粧品箱、薬箱等のシートケースを箱状のままで切り裂き、開封が可能なシートの切り裂き構造とその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばクリアパッケージ等のプラスチック製シート、または紙製シート等によって形成された密閉性のあるシートケース1として、開封されたか否かがわかるように切り裂き構造による開封手段を備えたものが提案されている。その切り裂き構造としては、当該シートケース1の例えば中央部分を周回するようにして形成された図4(a)に示すような上下に近接した一対のミシン刃形状の連続した切り込み部2、もしくは図4(b)に示すような窄まり部分を不連続に配したジッパー形状の連続した切り込み部2等による切り裂き構造P部分を一端側から引き裂くことにより、当該シートケース1を破断して(図1参照)二つに折るようにあるいは切り分け、中身を取り出すのであった。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来における上記の切り裂き構造Pでは、シートケース1を箱状のまま上下もしくは左右等に切り裂くことは材料の性質上、容易には切り分けることができないものであった。例えばミシン刃状の形状の切り込み部2による切り裂き構造Pの場合では、切り裂き時にかかる力が切り裂き方向と同上側向にかかるために切り裂き難いものであった。また、ジッパー状等の形状の切り込み部2による切り裂き構造Pの場合では、切り裂き方向が一定方向でないと切り分け難いものとなり、しかも切り分けた時に切り残したシートのバリと称するノコギリ刃状の突起部分が残るため、シート自体がやや硬質な素材であるプラスチック製シートである場合は特に、これに手指を引っ掛けて当該手指を怪我してしまう虞れがあった。
【0004】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、各種の硬質材質によるシート、特に紙箱よりも切り裂き難い硬質な材料による例えばプラスチック材質によるクリアパッケージ等のシートケースを形成するシートであっても、切り裂き方向にかかわらずに容易且つ安全に当該シートを切り分けることができ、しかも切り分けた後で手指等を傷付けることがないようにしたシートの切り裂き構造とその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、シート(1)を切り裂くことが可能な切り裂き構造Pであって、山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するよう互いに波の位相をずらした状態で略並行して近接配置させた波線状の上下一対の切り込み部2と、上側の切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側の切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3とを備えたものである。
そして、上側の谷部分2Bの底点、下側の山部分2Aの頂点それぞれは円弧状に湾曲しているものとすることができる。
また、シート(1)は、プラスチック製または紙製のシートケース1に使用されるものとできる。
さらに、シート(1)を切り裂くことが可能な切り裂き構造Pの作製方法であって、連続した波の各頂点における刃先部分を切除して成る不連続波型状の抜き型刃Qを、互いに波の位相をずらして山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するようシート(1)に対して略並行配置した状態で押し込んで上下一対の切り込み部2を形成し、上側に形成される切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側に形成される切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3を配置形成するものである。
【0006】
以上のように構成された本発明に係るシートの切り裂き構造Pにあって、切り込み部2を形成しない不連続部分3を有する切り裂き構造Pは、切り裂き時にかかる力が切り裂き方向と略直角に作用するため、シート(1)に対し方向性にかかわらない切り分けを可能にさせると共に、切り裂き後には、波形に形成された破断縁部の窪み部分である下側の谷部分2B、上側の山部分2Aにバリが形成されて手指に対する接触を防止させ、また下側の山部分2Aの頂点、上側の谷部分2Bの頂点それぞれが湾曲しているため、手指に対する接触をソフトにさせる。
また、本発明に係るシートの切り裂き構造Pの作製方法にあって、連続した波の各頂点における刃先部分を切除して成る不連続波型状の抜き型刃Qは、互いに波の位相をずらした状態で上下一対となるようにシート(1)に押し込むことで、当該シート(1)に対する波状の切り込み部2の不連続部分3を連続形成させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種の硬質材質によるシート(1)、特に紙箱の素材に比し硬質で、切り裂き難い硬質な材料による例えばプラスチック材質によるクリアパッケージ等のシートケース1を形成するシート(1)であっても、切り裂き方向にかかわらずに容易且つ安全に当該シート(1)を切り分けることができ、しかも切り分けた後の切裂線である破断縁部における突部分は、下側では円弧状に湾曲した山部分2A、上側では谷部分2Bそれぞれが連続するから、手指等を傷付けることがないようにすることができる。
【0008】
すなわちこれは本発明が、山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するよう互いに波の位相をずらした状態で略並行して近接配置させた波線状の上下一対の切り込み部2と、上側の切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側の切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3とを備えたからであり、これにより、切り裂き時にかかる力が切り裂き方向と略直角に作用するものとなって、シート(1)に対し方向性にかかわらずに切り分けが可能となる。また、切り裂き後には、波形に形成された破断縁部の窪み部分である、下側の谷部分2B、上側の山部分2Aそれぞれにバリが形成されるから、これらのバリは手指に触れ難いものとなって手指を傷付けるのを未然に防止でき、一方、破断縁部となる上側の谷部分2B、下側の山部分2Aそれぞれは円弧状で、何等の突起部が形成されないため、手指にはソフトに接触させるのである。
【0009】
また、シート(1)は、プラスチック製または紙製のシートケース1に使用されるので、材質の硬度に依らずに当該シートケース1を箱状のまま上下もしくは左右等に容易に切り裂くことができる。
【0010】
さらに、連続した波の各頂点における刃先部分を切除して成る不連続波型状の抜き型刃Qを、互いに波の位相をずらして山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するようシート(1)に対して略並行配置した状態で押し込んで上下一対の切り込み部2を形成し、上側に形成される切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側に形成される切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3が配置形成されるので、切り裂き方向にかかわらずにシート(1)を切り分けることができる切り裂き構造Pが容易に形成することができる。
【0011】
また、シート(1)は箱を構成するシートケース1に適用するのみならず、一般的な平坦状のシート部材に適用することも可能である。
【0012】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項夫々において付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は、例えばプラスチック製シート、または紙製シート等によって密閉性のある箱状に形成されたシートケースであり、このシートケース1を箱状のまま上下もしくは左右等に切り裂くことで当該シートケース1を二つに折ったり、切り分けたりして開封することができるよう、箱体組立時のシートケース1を貫通するような不連続波線の破断部となって形成された切り裂き構造Pを備えている。
【0014】
尚、本実施の形態においては、シートケース1に対して本発明の切り裂き構造Pを使用しているが、このようなケースとなるシートのみでなく、ケース以外に使用される各種のシートにおける切り裂き構造Pとしても利用可能であることは勿論である。
【0015】
この切り裂き構造Pは、図1に示すように、矩形箱状に形成されたシートケース1側面の例えば中央部分もしくは左右いずれか側寄り部分において互いに略並行となって周回付設するようにした上下一対の不連続波線による切り込み部2によって形成されていて、この切り込み部2は、図2のシートケース1の展開図に示すように、例えばシートケース1中央における前面、左右側面、後面にわたって、例えば上下に近接した山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するように互いに波の位相をずらした状態で近接配置するように設けてある。
【0016】
作製に際しては、図3に示すように、連続した波の各頂点における刃先部分を切除して成る不連続波型状の抜き型刃Qを、箱展開状態のシートケース1面に対し、互いに波の位相をずらした状態で、組立後における箱体の上下で一対にして近接配置されるように、作製するときの当該シートケース1の上方側に配した例えばプレス機(図示せず)等によって押し込むことで、ケース上側に形成配置される切り込み部2の山部分2Aの頂点、下側に形成配置される切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3が配置形成されるようにしてある。尚、上下は、組立後における箱体における上下位置を示すのみであり、箱体が左右のものとなれば左右部として認識されるもので、相対的なものである。
【0017】
そして、少なくとも上側の切り込み部2の谷部分2Bの底点、下側の切り込み部2の山部分2Aの頂点それぞれ、すなわち切裂縁部において突状に突出する部分は円弧状に湾曲しており、手指等が触れることがあっても手指等が引っ掛からないようにしてある。
【0018】
このとき切り込み部2は、シートケース1を貫通した波線の破断部となって形成されていても、切り込み部2を介しての上下側が前記不連続部分3によって繋がっているため、外部から強制的に切り裂き力をかけなければ容易に切離されないようにしてある。
【0019】
また、シートケース1の糊代縁片部1Aに対応する抜き型刃Q部分は、当該糊代縁片部1Aを直線状に破断するための直線刃Rとして形成しておく。この糊代縁片部1Aは箱体組立時に箱体壁内面に接着されるから、切り裂き構造P位置に対応する部分は、切り裂きと同時に切離されるように切離線で区画された切離部1Bとなっている。また、切り裂き構造Pの一部には箱体の縁部に位置させて切り裂き開始端となるフラップ1Cを形成してある。
【0020】
次に、本構成による切り裂き構造Pの作製方法について説明すれば、図3に示すように、連続した波の各頂点における刃先部分を硬度の高いカッター刃等で傷付け切欠する等適宜切除して成る不連続波型状の抜き型刃Qを例えばプレス機(図示せず)等のチャック部に装着しておく。そして、プレス機下方側にシートケース1を箱展開状態にして配置してておく。
【0021】
プレス機下方側に配置させた展開状態のシートケース1に対し、抜き型刃Qが例えばシートケース1中央における前面、左右側面、後面にわたって対向配置し、抜き型刃Qの直線刃R部分がシートケース1の糊代縁片部1Aに対向配置するようにしておく。そして、抜き型刃Qを、互いに波の位相をずらして上下で山部分2A、谷部分2Bそれぞれが合致対向するよう対となる配置状態で押し込む。
【0022】
こうして箱展開状態のシートケース1面に対し、互いに波の位相をずらした状態で上下一対の切り込み部2が略並行した状態で近接配置されると同時に箱体上側に位置して形成される切り込み部2の山部分2Aの頂点、箱体下側に位置して形成される切り込み部2の谷部分2Bの底点それぞれに切り込み部2を形成しない不連続部分3が形成された状態となる。
【0023】
また、シートケース1の糊代縁片部1Aにおける切り込み部2は、抜き型刃Qの直線刃R部分によって直線状に破断可能な切離線で区画された切離部1Bとされ、箱体のいずれかの縁部位置に波線の切り込み部2を端から引き裂くための延長部となるフラップ1Cを形成する。
【0024】
こうしてシートケース1は、箱形に組み立てられた状態で中身を取り出す際には、切り裂き構造Pにおける切り込み部2をフラップ1Cから引き剥がすことで当該シートケース1を二つに折ったり、切り分けたりするのである。このとき切り込み部2を形成しない不連続部分3によって、切り裂き時にかかる力が切り裂き方向と略直角に作用するものとなるため、シートケース1に対し方向性にかかわらずに切り裂きが可能となり、切り裂き後には、波形に形成された破断縁部の窪み部分、すなわち上側の切り込み部2ではその山部分2Aに、下側の切り込み部2ではその谷部分2Bにバリが形成されるため、手指に対する鋭利部分の接触を防止させ、また、破断縁部に突出する部分、すなわち上側の切り込み部2ではその谷部分2Bに、下側の切り込み部2ではその山部分2Aが湾曲状に突出されているために、手指にソフトに接触し、損傷させないのである。
【0025】
尚、図示を省略したが、必要があれば、対状に並行配置される切り込み部2における山部分2A、谷部分2Bそれぞれは全く並行状態に配置することも可能であるも、切り裂き構造Pの切離に際し、十分に注意しなければ切り込み部2外を不意に切裂させたり、切裂作業に若干の困難性を伴ったりするおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示すシートケースの斜視図である。
【図2】同じくシートケースの展開図である。
【図3】切り裂き構造の作製方法を説明するための斜視図である。
【図4】従来例における切り裂き構造を示すもので、(a)は一対のミシン刃形状の連続した切り込み部による切り裂き構造の一部切欠平面図、(b)はジッパー形状の連続した切り込み部による切り裂き構造の一部切欠平面図である。
【符号の説明】
【0027】
P…切り裂き構造 Q…抜き型刃
R…直線刃
1…シートケース(シート) 1A…糊代縁片部
1B…切離部 1C…フラップ
2…切り込み部 2A…山部分
2B…谷部分 3…不連続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを切り裂くことが可能な切り裂き構造であって、山部分、谷部分それぞれが合致対向するよう互いに波の位相をずらした状態で略並行して近接配置させた波線状の上下一対の切り込み部と、上側の切り込み部の山部分の頂点、下側の切り込み部の谷部分の底点それぞれに切り込み部を形成しない不連続部分とを備えたことを特徴とするシートの切り裂き構造。
【請求項2】
上側の谷部分の底点、下側の山部分の頂点それぞれは円弧状に湾曲している請求項1記載のシートの切り裂き構造。
【請求項3】
シートは、プラスチック製または紙製のシートケースに使用されるものである請求項1または2記載のシートの切り裂き構造。
【請求項4】
シートを切り裂くことが可能な切り裂き構造の作製方法であって、連続した波の各頂点における刃先部分を切除して成る不連続波型状の抜き型刃を、互いに波の位相をずらして山部分、谷部分それぞれが合致対向するようシートに対して略並行配置した状態で押し込んで上下一対の切り込み部を形成し、上側に形成される切り込み部の山部分の頂点、下側に形成される切り込み部の谷部分の底点それぞれに切り込み部を形成しない不連続部分を配置形成することを特徴としたシートの切り裂き構造の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−36340(P2006−36340A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222975(P2004−222975)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504292004)株式会社ユタカパッケージ (3)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【出願人】(303018034)明和抜型株式会社 (6)
【Fターム(参考)】