説明

シートの送風制御装置及びそれを用いた車両用シート

【課題】着座者の姿勢により送風の騒音が大きくなることを抑制する送風制御装置、及びそれを用いた車両用シートを提供する。
【解決手段】本送風制御装置は、送風機2と、着座面に設けられ送風機により送られた風を通す通風穴62とを備えたシート6の送風制御装置であって、送風機の回転数又は電流値を送風機計測値として計測する計測手段3と、計測手段により計測された送風機計測値に応じて通風穴が塞がれている程度を判断し、該程度に基づいて送風機の駆動電圧により回転を制御する制御手段4と、を備える。送風機の送風機計測値を計測し、制御手段により、送風機計測値に応じて着座面に設けられた通風穴が塞がれている程度を判断し、送風機の回転が制御されるため、着座者の姿勢が変化しても、シートの空調を効果的に保ち、且つ着座者の耳に届く送風機及び送風による騒音を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート内から着座者に送風を行うシートの送風制御装置であって、着座者の姿勢により送風の騒音が大きくなることを抑制する送風制御装置、及びそれを用いた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者に送風を行うため、シートのクッション部材の内部に設けられた空洞に送風機を備え、その送風機により送られる空調風を、シートの表皮部材に設けられた微少な通路部を通してシート表面側に送風する車両用シート空調装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1に記載された車両用シート空調装置では、送風機の吹出側に、車両用シート側の多数の微少通路部に向かって断面積を拡大する円錐状送風通路を形成することによって、吹出空気の流れをスムーズにし、送風騒音を抑制できるとともに吹出風量を増加できるとされている。
一方、車両に搭載されるオーディオ・ビジュアル装置やナビゲーション装置等、車載電子機器では、一般に発熱による破壊を防止するために冷却ファンが備えられている。しかし、冷却効果を高めるように冷却ファンを高速回転させると風切り音等のノイズが大きくなり、搭乗者に不快感を与えることもある。このような冷却ファンのノイズによる不快感を搭乗者に与えることなく、冷却効果を高める車載電子機器の冷却ファン制御装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34345号公報
【特許文献2】特開2003−326961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例のような空調装置を備えた車両用シートでは、着座者に充分な冷感を与えるとともに、着座者に不快感を与える送風騒音を低減することが求められる。特に、シートの背もたれ部に空調装置が設けられる場合には、送風機やシート表皮部材に設けられた送風の通路部(通風穴)と着座者の耳の位置とが近くなるため、空調装置による騒音が着座者の耳に届き易いという問題がある。
また、通常、着座者の姿勢は変動し、着座姿勢によって着座者の身体とシートとの密着度や密着部位・面積も変化する。例えば、シートの背もたれ部の表層に多数の微少な通風穴が設けられている場合、着座者が背をシートに密着させて座っているときは、大半の通風穴が着座者の背によって塞がれるため、送風機及び送風による騒音は小さい。
しかし、着座者が姿勢を変化させて背とシートとの間に隙間が生じると、通風穴が塞がれる程度は減少し、通風穴から洩れ出す騒音が大きくなって着座者に不快感を与えてしまうこととなる。すなわち、送風機の回転を略一定としても、着座者の姿勢によって、着座者が感じる騒音のレベルは大きく変化する。
特許文献1に記載された前記車両用シート空調装置では、送風騒音が上記のような着座者の姿勢によって変化することは検討されていない。その他、送風機からシート表面までの送風経路の構造を複雑にすることによって騒音を抑制することも考えられるが、最も重要な送風性能に影響を及ぼしたり、質量の増加を招いたりするという問題が生じる上に、着座者の姿勢によって送風騒音が増加するという問題の対策とはならない。
また、特許文献2に記載された前記冷却ファン制御装置では、車速を検出し、その車速に応じて車載電子装置の冷却ファン(電動モータファン)の回転速度が可変制御されている。すなわち、車速が早くなると車外から入ってくる騒音が大きくなるため、車速が速いときに冷却ファンの回転速度を速くすることによって、冷却ファンの騒音が周りの騒音に紛れて搭乗者の耳に届かないように制御される。しかし、車速等に応じた送風機の回転制御は、着座者の姿勢により変化する騒音の対策とはならない。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、シート内から着座者に送風を行うシートにおいて着座者の姿勢により送風の騒音が大きくなることを抑制する送風制御装置、及びそれを用いた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本第1発明は、送風機と、着座面に設けられ前記送風機により送られた風を通す通風穴とを備えたシートの送風制御装置であって、前記送風機の回転数又は電流値を送風機計測値として計測する計測手段と、前記計測手段により計測された送風機計測値に応じて前記通風穴が塞がれている程度を判断し、該程度に基づいて前記送風機の駆動電圧により回転を制御する制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0007】
本第2発明は、前記第1発明において、前記送風機計測値により前記着座面に人体がないと判断するための第1閾値、及び前記着座面に人体が密着していると判断するための第2閾値が設定されており、前記制御手段は、前記着座面に人体がないと判断したときは前記送風機の回転を停止し、前記着座面に人体が密着していると判断したときは前記送風機の回転を高速にすることを要旨とする。
本第3発明は、前記第2発明において、前記制御手段は、前記送風機計測値が前記第1閾値と前記第2閾値との間の値であるときは、該送風機計測値に応じて前記送風機の回転を低速又は高速にすることを要旨とする。
また、本第4発明の車両用シートは、本第1乃至第3発明のいずれかに記載のシートの送風制御装置を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシートの送風制御装置によれば、送風機の回転数又は電流値を送風機計測値として計測し、制御手段により、その送風機計測値に応じて、着座面に設けられた通風穴が塞がれている程度が判断される。例えば、着座者の身体がシートの着座面に密着している状態では大半の通風穴が塞がれており、この状態では着座者の耳に届く送風の騒音レベルは低くなる。一方、着座者が身体をシートから浮かせている状態では通風穴が塞がれている度合が低く、この状態では着座者の耳に届く送風の騒音レベルが高くなる。通風穴が塞がれている程度によって送風機の回転数や電流値は相違するため、回転数や電流値を送風機計測値として計測することによって、着座者とシートの着座面との密着の程度即ち着座者の姿勢を判断することができる。
そして、その判断に基づいて、制御手段により送風機の回転が制御されるため、着座者の姿勢が変化しても、シートの空調を効果的に保ち、且つ着座者の耳に届く送風機及び送風による騒音を抑制することができる。
【0009】
送風機計測値により着座面に人体がないと判断するための第1閾値、及び着座面に人体が密着していると判断するための第2閾値が設定されており、制御手段は、着座面に人体がないと判断したときは送風機の回転を停止し、着座面に人体が密着していると判断したときは送風機の回転を高速にする場合には、検出された送風機計測値から容易に着座者の有無及び着座姿勢を判断し、送風機を適切な回転とするように制御することができる。
また、制御手段は、送風機計測値が第1閾値と第2閾値との間の値であるときは、該送風機計測値に応じて送風機の回転を低速又は高速にする場合は、着座者が着座面から身体を浮かせている程度や、着座面に接している程度によって、送風機を適切な回転とするように制御することができる。
【0010】
以上のシートの送風制御装置を備える車両用シートは、通風穴が塞がれている程度を判断し、該判断に基づいて送風機の回転が制御されるため、着座者の姿勢が変化しても、シートの空調を効果的に保つとともに、着座者の耳に届く送風機及び送風による騒音を抑制することができる。また、送風機や、送風機から着座面までの送風経路の構造を複雑化せず、少ない部品数によって送風装置を備えた車両用シートを構成することができる。これにより、着座者に送風騒音による不快感を与えない車両用シートを、軽量且つ低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本シートの送風制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本送風制御装置が配設されている車両用シートの例であり、着座者により通風穴が塞がれている状態を示す模式図である。
【図3】本送風制御装置が配設されている車両用シートの例であり、着座者の背の上方が着座面から離れ、一部の通風穴が塞がれていない状態を示す模式図である。
【図4】本送風制御装置による制御例を説明するための図であり、送風機計測値と通風穴の閉塞度、及びその閉塞度に応じた送風機の駆動電圧の関係を示すグラフである。
【図5】本送風制御装置による別の制御例を説明するための図であり、送風機計測値と通風穴の閉塞度、及びその閉塞度に応じた送風機の駆動電圧の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜5を参照しながら本発明のシートの送風制御装置及びそれを用いた車両用シートを詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0013】
(1)送風制御装置及びそれを備える車両用シートの構成
本発明のシートの送風制御装置は、送風機、及び着座面に設けられ前記送風機により送られた風を通す通風穴を備えたシートに適用される送風制御装置であって、送風機の回転数又は電流値を送風機計測値として計測する計測手段と、計測手段により計測された送風機計測値に応じてシートの通風穴が塞がれている程度を判断し、その程度に基づいて前記送風機の駆動電圧により回転を制御する制御手段と、を備える。
【0014】
本送風制御装置が配設されるシートは、車両用、屋内用、屋外用等の任意の用途の空調シートとすることができる。本シートの送風制御装置は、特に自動車等の車両用シートに好適に用いることができる。
前記「着座面」は、着座者の身体と接するシート表面を意図しており、着座者の尻部・腿部を支えるシートクッション部の表面、及び着座者の腰部・背部を支える背もたれ部の表面を含む。
前記「送風機」の種類や配設場所、送風機により送られた風をシート内部で導くダクト構造等は、特に問わない。
前記「通風穴」は、シートの着座面に設けられ、送風機により送られた風をシート外側へ通すための穴又は空隙であり、その形状、大きさ、数等は特に問わない。例えば、着座面に当たるシートの表層部材を連通するように多数設けられた微少な穴、通気性をもった織物の空隙等とすることができる。また、通風穴を、着座面以外の位置(例えば、足載せ部、肘掛け部等)に別途設け、そこから送風機の風を着座者の身体に送るようにしてもよい。
【0015】
通風穴は、その通風穴上に着座者の身体があれば塞がれる。したがって、通風穴の全体は、そのシートに着座者がいるかいないか、また着座者がいる場合にはその着座姿勢により、塞がれている程度(以下、「閉塞度」という。)が異なる。送風機の作動やダクト内の気流等により生じる騒音は通風穴を介して外部に洩れ出ることとなり、閉塞度が低いほど、即ち着座者の身体部分が密着していない着座面の面積が大きいほど、騒音が着座者の耳に届き易い。
【0016】
図1は、本実施形態に係るシートの送風制御装置の構成を示している。シートには、ファン21及びモータ(直流モータ)22からなる送風機2が備えられている。本シートの送風制御装置1は、送風機2の回転数又は電流値等を送風機計測値として実測する計測回路(計測手段)3と、計測手段3により計測した送風機計測値に基づき送風機2のモータの回転を制御する制御手段4と、を備えている。
また、本シートの送風制御装置1には、着座者等が送風のオン・オフや送風の強さを指示するための操作スイッチ7を接続することができる。
【0017】
前記「送風機計測値」は、モータ22の回転数、モータ22に流れる電流値、電力値等のうちいずれかの測定値とすることができる。モータ22は、例えば一定の電圧により駆動した場合にも、負荷の大きさにより、その回転数や電流値が変化する。また、ファン21及びモータ22の回転数が増加する程、送風機2の発生する騒音(風切音等)やダクト内の気流により生じる騒音が大きくなる。
送風機計測値は、任意の方法により取得することができる。例えば、モータ22の軸の回転に伴う信号を計数するカウンタを備えれば、回転数を検出することができる。また、モータ22に流れる電流の検出回路とADコンバータ等を備えれば、容易に電流値を検出することができる。
【0018】
前記制御手段4は、ハードウェアのみで構成されてもよいし、マイクロプロセッサ等を使用してハードウェアとソフトウェアとによって構成されてもよく、好適には、CPU、メモリ(ROM、RAM)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)及び周辺回路によって構成することができる。これに限らず、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路によって構成されてもよい。
制御手段4は、計測手段3により送風機計測値を取得して、その値により通風穴の閉塞度を判断し、その閉塞度と操作スイッチ7によって設定された動作指示とに基づいて、モータ22の回転を変化させるように構成することができる。
【0019】
前記モータ22は、モータ用電源から電力の供給を受け、制御手段4により、駆動回路5を介して回転が制御されるように構成されている。例えば、制御手段4から駆動回路5に所定の駆動信号を出力し、その駆動信号によりモータ22に対する駆動電圧が制御され、回転速度を変化させるように構成することができる。駆動電圧の制御方法は任意に選択することができ、例えば、パルス状の電圧を印加したり、印加する電圧値を変化させたりする方法が挙げられる。
【0020】
好適には、前記駆動信号をパルス幅変調(PWM)信号とし、PWM制御によってモータ22に対する駆動電圧を制御するように構成ことができる。PWM制御は、デューティ比(パルス信号の周期に対するオン時間の比)を変えることによりモータに印加する電圧の平均値を変化させ、それによってモータの回転速度を変化させる制御方法であり、制御手段4によりパルス幅変調された駆動信号が駆動回路5に送られる。
駆動回路5は、トランジスタ、FET等によって構成され、制御手段4から出力される駆動信号に対応してモータ22に駆動電圧を印加する回路である。駆動回路5により駆動電圧の大きさを変化させることにより、モータ22へ供給される電力が調整される。PWM制御においては、駆動信号によって駆動回路5を構成するトランジスタ等スイッチ素子がスイッチングされることにより、モータ用電源が断続的にモータ22に印加される。この駆動信号のデューティ比に応じてモータ22に印加される電圧が変化するため、モータ22の回転速度が調整される。
【0021】
シートの送風制御装置1及び送風機2には、図示しない電源により必要な電力が供給される。例えば車両用シートの場合には、電源は車両のバッテリから給電を受けるようにすることができる。
【0022】
図2及び図3は、シートの送風制御装置1を備える車両用シートの例を示している。送風機2は車両用シート6の背もたれ部61内に形成されている空洞部63に設けられている。また、空洞部63は、背もたれ部61の下方等に設けられる吸入口64から、着座者9と接触する着座面に設けられる複数の通風穴62に気流を導くダクトを構成している。これにより、複数の通風穴62を通して着座者9に向けて送風が行われる。
図2は、着座者9の身体が着座面に密着して、通風穴62が着座者9の身体によって塞がれている状態(密着状態)を表わし、図3は、着座者9の身体上方が着座面から離れて、通風穴62の一部が塞がれていない状態(非密着状態)を表わしている。また、シート6上に着座者がいないような場合(非着座状態)には、通風穴62がすべて開放された状態となる。
【0023】
車両用シート6には、送風制御装置1が接続されている。送風制御装置1は、車両の電子制御ユニット(ECU)として構成することができる。送風制御装置1の各部の位置や配設方法は問わない。送風制御装置1の制御手段4は、計測手段3により送風機2の回転数又は電流値を検出する。そして、制御手段4は駆動回路5を介して送風機2のモータ22を動作させる。ファン21は、吸入口64から空気を吸引し、通風穴62から着座者9の背中に向けて送風を行う。
【0024】
(2)送風制御方法と送風制御装置の動作
以下では、制御手段4はPWMによりモータ22の駆動電圧を制御するものとして説明する。ファン21の回転数は、PWMのデューティ比により調整することができる。
あるデューティ比によって送風機2を駆動した場合に、着座者が着座面に密着して通風穴62が塞がれるほど負荷が増し、送風機2の回転速度は低下する。
一方、着座者と着座面との密着性が低下して通風穴62が開放されるほど負荷は小さくなり、送風機2の回転速度は速くなる。通風穴が塞がれて負荷が大きいほどモータ22の回転速度は遅くなり、モータ22に流れる電流が増すため、モータ22の回転数又はモータ22の電流を検出することによって、通風穴の閉塞度を推定し、それにより着座者の有無や着座姿勢を判断することができる。
【0025】
そして、制御手段4は、着座者と着座面との密着度が高い(密着状態)と判断されるときには、デューティ比を増してモータ22の回転速度を速くするように制御する。回転速度を増すと送風騒音は増加するが、通風穴62が塞がれているためシート外に洩れる騒音は少なく、着座者の耳には届きにくい。これによって、着座者に不快な騒音を感じさせることなく、送風による清涼感を増すことができる。
一方、着座者と着座面との密着度が低い(非密着状態)と判断されるときには、デューティ比を低下させてモータ22の回転速度を遅くするように制御する。塞がれていない通風穴62を介して送風騒音がシート外に洩れる状態であるが、回転速度を減少させることによって送風騒音を減らし、着座者に不快な騒音を感じさせることを抑制することができる。
また、着座者がいない(非着座状態)と判断されるときは、モータ22の回転速度を更に遅くしたり回転を停止させたりすることによって、送風騒音を防止することができる。
なお、モータ22の回転速度は、操作スイッチ7によって設定された送風の強さを基準として、高速又は低速にする程度を制御するようにすることができる。
【0026】
図4及び図5は、シートの送風制御装置1による制御の具体的な例を示す図である。いずれの図も、横軸は通風穴の閉塞度であり、閉塞度が低いとき(軸の左方)は通風穴が塞がれていない非着座状態に対応し、閉塞度が高いとき(軸の右方)は通風穴が塞がれている密着状態に対応する。本例は、その閉塞度に応じて、密着状態、非密着状態及び非着座状態の3つの状態に区分する場合を表わしている。
この区分方法は、適宜定められればよい。また、各図(a)は、計測手段3により送風機計測値として送風機2の回転数を検出する例であり、各図(b)は、計測手段3により送風機計測値としてモータ22の電流を検出する例である。なお、負荷によるモータ22の回転数や電流の変化の具合は、使用するモータ等によって異なるが、本例では直線で表わしている。
【0027】
通風穴の閉塞度が高いときは、モータ22の回転数は低くなり、モータ22の電流は大きくなる。このような場合、着座者9が図2に示したように着座面に密着して座っていると判断することができる。一方、通風穴の閉塞度が低いときは、モータ22の回転数は高くなり、モータ22の電流は小さくなる。このような場合は、シートに人が非着席の状態であると判断することができる。また、通風穴の閉塞度が密着状態と非着席状態の間の値であるときは、着座者9が図3に示したように着座面から身体を浮かせて座っている非密着状態であると判断することができる。
そこで、図4及び5の(c)に示すように、制御手段4は、着座者9の有無及び着座姿勢の判断に基づき、デューティ比(駆動電圧)を変化させてモータ22の回転速度を調整することができる。
【0028】
上記のような閉塞度の変化に対応する駆動電圧の制御方法として、例えば、閉塞度に対応して、送風機計測値について閾値を任意の数設け、その閾値を基準として駆動電圧を変化させるように制御することができる。
図4(c)は、送風機計測値により着座者がいない非着座状態と判断するための第1閾値、及び着座者が着座面に密着している密着状態と判断するための第2閾値を予め設定し、制御手段4は、非着座状態と判断したときは送風機2の回転を停止又は低速にし、密着状態と判断したときは送風機2の回転を高速にする例を示している。第1閾値及び第2閾値は、実際の送風装置の特性や着座者の姿勢と通風穴の閉塞度との相関等に応じて、適宜設定することができる。
【0029】
例えば、図4(a)に示すように、計測手段3によってモータ22の回転数を計測する場合には、回転数が第1閾値を超えるときは非着座と判断し、回転数が第2閾値を下回るときは密着状態と判断する。また、回転数が第1閾値と第2閾値の間であるときは、非密着状態と判断する。
同様に、図4(b)に示すように、計測手段3によってモータ22の電流を計測する場合には、電流値が第1閾値を下回るときは非着座と判断し、電流値が第2閾値を超えるときは密着状態と判断する。また、電流値が第1閾値と第2閾値の間であるときは、非密着状態と判断する。
【0030】
制御手段4は、上記判断に基づき、ステップ状に駆動電圧を変化させる。非着座と判断したときには、駆動電圧をV0(最小値又はゼロ)として、送風機2の回転速度を低速又はゼロとするように制御する。一方、密着状態と判断したときは、駆動電圧をV2(最大値)に上昇させ、送風機2の回転速度を高速にするように制御する。
また、非密着状態と判断したときは、駆動電圧を中間のV1として、送風機2の回転速度を中間に維持するように制御(C1)してもよいし、第1閾値と第2閾値の間との間に更に第3閾値を設定して、その第3閾値を境として駆動電圧をV1及びV2とするように制御(C2)してもよい。
【0031】
図5(c)は、制御手段4により、送風機計測値が第1閾値と第2閾値との間の値であるとき即ち非密着時は、その送風機計測値に応じて駆動電圧を増減し、それにより送風機の回転を低速又は高速にするように制御する例である。閉塞度(送風機計測値)と制御すべき駆動電圧との関係は適宜設定することができる。本例では、閉塞度に略比例して駆動電圧を変化(閉塞度が増すほど駆動電圧を増す)させるように制御を行っている。閉塞度の値を更にいくつかの範囲に区分して、その範囲毎に駆動電圧をステップ状に変化させるように制御してもよい。
【0032】
以上のように、通風穴の閉塞度に応じて駆動電圧を制御することにより、着座者がいない場合には操作スイッチの設定にかかわらず送風を停止し、送風騒音の発生を防止することができる。一方、着座者がシートに密着して座っている場合には送風騒音の洩れが少ないため送風を強くするように制御し、着座者に充分な空冷感を与えることができる。また、着座者が身体を浮かせてシートに座っている場合には、その密着程度に応じて送風の強さを調整することにより送風騒音を抑制し、着座者の耳に不快な騒音が届かないようにすることができる。
【0033】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。
例えば、本シートの送風制御装置は、実施形態に示した背もたれ部に限らず、シートクッション部等に設けられる送風装置にも適用することができる。また、通風穴の閉塞度は、回転数や電流の他、例えば、ダクト内の圧力等を検出することによって判断されてもよい。また、通風穴の閉塞度に基づく駆動電圧の制御方法は、種々変形して適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1;送風制御装置、2;送風機、21;ファン、22;モータ、3;計測回路(計測手段)、4;制御手段、5;駆動回路、6;シート、61;背もたれ部、62;通風穴、63;空洞(ダクト)、64;吸入口、7;操作スイッチ、9;着座者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、着座面に設けられ前記送風機により送られた風を通す通風穴とを備えたシートの送風制御装置であって、
前記送風機の回転数又は電流値を送風機計測値として計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された送風機計測値に応じて前記通風穴が塞がれている程度を判断し、該程度に基づいて前記送風機の駆動電圧により回転を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするシートの送風制御装置。
【請求項2】
前記送風機計測値により前記着座面に人体がないと判断するための第1閾値、及び前記着座面に人体が密着していると判断するための第2閾値が設定されており、
前記制御手段は、前記着座面に人体がないと判断したときは前記送風機の回転を停止し、前記着座面に人体が密着していると判断したときは前記送風機の回転を高速にする請求項1記載のシートの送風制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送風機計測値が前記第1閾値と前記第2閾値との間の値であるときは、該送風機計測値に応じて前記送風機の回転を低速又は高速にする請求項2記載のシートの送風制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシートの送風制御装置を備える車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111987(P2013−111987A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256754(P2011−256754)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】