シートクッションエアバッグ装置
【課題】吹出口からの空調用空気の吹出しを妨げることなく、座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制する。
【解決手段】シートクッションエアバッグ装置は、シートフレームの支持部Bにより下側から支持される座クッションを有する座部と、座クッションよりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19とを備え、空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出す車両用シートに適用される。上記エアバッグ装置は、インフレータ51からの膨張用ガスGにより、支持部B及び座クッション間でエアバッグ40の膨張部Cを膨張させて座部の座面を隆起させ、座部上で乗員の腰部が前方へ移動する現象を抑制する。エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、被折り畳み部45を折り畳まれた状態にされて、吹出口22の手前(前側)の位置に配置され、膨張時には、吹出口22を越える位置(後側の位置)まで被折り畳み部45を展開させる。
【解決手段】シートクッションエアバッグ装置は、シートフレームの支持部Bにより下側から支持される座クッションを有する座部と、座クッションよりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19とを備え、空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出す車両用シートに適用される。上記エアバッグ装置は、インフレータ51からの膨張用ガスGにより、支持部B及び座クッション間でエアバッグ40の膨張部Cを膨張させて座部の座面を隆起させ、座部上で乗員の腰部が前方へ移動する現象を抑制する。エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、被折り畳み部45を折り畳まれた状態にされて、吹出口22の手前(前側)の位置に配置され、膨張時には、吹出口22を越える位置(後側の位置)まで被折り畳み部45を展開させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの座部内に配置されたエアバッグを膨張用ガス等の膨張流体により膨張させて座面を隆起させ、座部上の被拘束対象物が前方へ移動する現象を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに着座している乗員の快適性を向上させる技術として、例えば、特許文献1に記載された「車両用シート空調装置」がある。この車両用シート空調装置は、座部の座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトを備えており、送風ダクト内を流れる空調用空気(冷風・温風等)が吹出口から上方へ吹出される。この空調用空気が座クッションを通過し、乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0003】
一方、車両では、前突等により同車両に前方から衝撃が加わった場合、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員の腰部が、ラップベルト部から外れて前方へ移動(前滑り)してしまう現象(サブマリン現象)が問題となる。そこで、このサブマリン現象を抑制するために種々の対策が講じられたり提案されたりしている。
【0004】
その1つとして、座クッションをシートフレームの支持部によって下側から支持してなる座部を有する車両用シートに適用されるシートクッションエアバッグ装置がある。支持部は、座クッションを下側から弾性支持するばね部材(ワイヤフレーム部)、そのばね部材が掛け止められる係止爪等からなる。
【0005】
上記シートクッションエアバッグ装置では、インフレータ(膨張流体発生源)の内装されたエアバッグが上記支持部及び座クッション間に配置される(特許文献2及び特許文献3参照)。このエアバッグは、一般には、展開させられた状態(折り畳まれていない状態)で配置される。そして、インフレータから噴出された膨張用ガス(膨張流体)によりエアバッグが膨張されて、座部の座面が隆起させられる。この座面の隆起により、乗員の大腿部において膝部の後側の近傍部分が上方へ押圧されてラップベルト部に押付けられる。同ラップベルト部の拘束力が高められ、腰部の前方への動き(前滑り)が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−48772号公報
【特許文献2】特開2002−79861号公報
【特許文献3】特開2005−306252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記車両用シート空調装置が組込まれた車両用シートに上記シートクッションエアバッグ装置を適用すると、送風ダクトの位置によっては、展開させられた状態(折り畳まれていない状態)のエアバッグが吹出口の上側に位置する。この場合には、吹出口がエアバッグによって塞がれ、空調用空気が乗員に届かなくなって、快適性が損なわれるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吹出口からの空調用空気の吹出しを妨げることなく、座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制することのできるシートクッションエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグの一部は被折り畳み部とされ、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、前記吹出口の手前の位置に配置されており、膨張時には、少なくとも前記吹出口を越える位置まで前記被折り畳み部を展開させるものであることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、送風ダクトの吹出口の手前の位置において支持部及び座クッション間に配置される。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出される空調用空気が座クッションを通過して乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0011】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグの少なくとも一部が、支持部及び座クッション間で膨張する。この膨張時には、エアバッグは、少なくとも吹出口を越える位置まで、被折り畳み部を展開(折りを解消)させる。そして、上記のように膨張するエアバッグによって座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被折り畳み部が折り畳まれた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制するとともに、前記被折り畳み部が展開させられた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制する接触抑制シートをさらに備えることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、被折り畳み部が折り畳まれた状態のエアバッグについても、被折り畳み部が展開させられた状態のエアバッグについても、すなわち、被折り畳み部の状態に拘らず、エアバッグが支持部と接触することを接触抑制シートによって抑制される。その結果、エアバッグが支持部の尖った部分との接触により傷付けられることが抑制される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記折り畳まれた状態の前記被折り畳み部を少なくとも対象とし、前記エアバッグの膨張前に前記対象を包むラッピングシートをさらに備えることを要旨とする。
【0015】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、被折り畳み部が折り畳まれた状態とされるが、この被折り畳み部はラッピングシートによって包まれることで、折り畳まれた状態に保持される。そのため、輸送時や車両用シートへの取付け前に、被折り畳み部の折りがほどけることが抑制される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記被折り畳み部は、内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれていることを要旨とする。
【0017】
ここで、内折りは、エアバッグの端の部分を、残部の内側に位置するように折り返す折り態様である。
ロール折りは、エアバッグの一方の端部を中心とし、その周りに他の部分を巻き付けて渦巻き状とする折り態様である。
【0018】
蛇腹折りは、エアバッグを、一定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返す折り態様である。
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、被折り畳み部において内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれた状態にされて、送風ダクトの吹出口の手前の位置に配置される。
【0019】
車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、上記の態様で折り畳まれている被折り畳み部は、支持部及び座クッション間で、折りを解消(展開)しながら膨張する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、前記エアバッグについて前記吹出口の上方となる箇所には、同吹出口から吹出された空調用空気の通過を許容する通気部が設けられていることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で支持部及び座クッション間に配置される。この状態では、エアバッグに設けられて、空調用空気の通過を許容する通気部が、吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れ、吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、エアバッグによって流れを妨げられることなく通気部及び座クッションを通過する。この空調用空気が乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0022】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグが、支持部及び座クッション間で膨張する。このエアバッグにより座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグの一部には環状の隔壁部が設けられ、前記隔壁部により囲まれた領域は、前記膨張流体発生源からの前記膨張流体が供給されず膨張しない非膨張領域とされており、前記通気部は前記非膨張領域に設けられていることを要旨とする。
【0024】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、同エアバッグの一部に設けられた環状の隔壁部が吹出口の上方に位置する。これに伴い、エアバッグにおいて、上記隔壁部により囲まれた非膨張領域に設けられた通気部が吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、エアバッグの通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0025】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、エアバッグでは、隔壁部の外側の領域が支持部及び座クッション間で膨張する。このとき、隔壁部により囲まれた非膨張領域は、膨張流体が供給されず膨張しない。そして、上記エアバッグ(非膨張領域を除く)により座部の座面が隆起させられる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、前記膨張部は、前記吹出口を避けた箇所に設けられており、前記通気部は、前記非膨張部において前記吹出口の上方となる箇所に設けられていることを要旨とする。
【0027】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部は、吹出口を避けた箇所に位置する。また、非膨張部に設けられた通気部が吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0028】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体により、エアバッグでは、膨張部が支持部及び座クッション間であって、吹出口を避けた箇所で膨張する。エアバッグの非膨張部は膨張しない。そして、上記膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記膨張部は、前記吹出口を、前記座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を有しており、前記非膨張部は、前記エアバッグの外縁部から前記吹出口へ向けて延びて前記両膨張片部間に入り込む非膨張片部を有しており、前記通気部は、前記非膨張片部について、前記エアバッグの外縁部から離れた箇所に設けられていることを要旨とする。
【0030】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部の一対の膨張片部は、吹出口に対し、座部の幅方向についての両側に位置する。また、非膨張部において、エアバッグの外縁部から吹出口へ向けて延びて両膨張片部間に入り込んだ非膨張片部は、吹出口の上方に位置する。これに伴い、非膨張片部について、吹出口の上方に設けられた通気部は、エアバッグの外縁部から離れた箇所に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0031】
なお、エアバッグの外縁部と通気部との間には、非膨張部における非膨張片部の一部が位置する。この非膨張片部は、吹出口を、座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を相互に連結する。そのため、両膨張片部が、それらの間隔を拡げる方向へ動くことが非膨張片部によって規制される。
【0032】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグでは、膨張部の一対の膨張片部が、支持部及び座クッション間であって、吹出口に対し、座部の幅方向についての両側となる箇所で膨張する。膨張部の残部(膨張片部を除く部分)もまた支持部及び座クッション間で膨張する。エアバッグの非膨張片部を含む非膨張部は膨張しない。そして、上記一対の膨張片部を有する膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、前記非膨張部には、同非膨張部の外縁部から少なくとも前記吹出口の上方となる箇所まで延びる切欠き部が設けられ、前記切欠き部の一部により前記通気部が構成されていることを要旨とする。
【0034】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部は、吹出口を避けた箇所に位置する。また、非膨張部に設けられた切欠き部が吹出口の上方に位置する。これに伴い、切欠き部の一部によって構成される通気部が、吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0035】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体により、エアバッグでは、膨張部が支持部及び座クッション間であって、吹出口を避けた箇所で膨張する。エアバッグの非膨張部は膨張しない。そして、上記膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、さらに、前記エアバッグには、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられていることを要旨とする。
【0037】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、送風ダクトの吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で支持部及び座クッション間に配置される。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出される空調用空気が、座クッションを通過し乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0038】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグの少なくとも一部が、支持部及び座クッション間で膨張する。この際、エアバッグの上方への膨張は、同エアバッグに設けられた上方膨張促進部によって促進される。この促進により、エアバッグは上方膨張促進部の設けられない場合よりも高い位置まで膨張する。そして、この膨張するエアバッグによって座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0039】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の布部を備え、前記両布部は、同両布部の周縁部に設けられた周縁結合部において結合されて袋状をなしており、前記周縁結合部による前記結合は、前記両布部の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれており、前記両布部について内側へ折り曲げられた箇所により前記上方膨張促進部が構成されていることを要旨とする。
【0040】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、両布部の一部が上方膨張促進部として、残部の内側へ折り曲げられた状態で入り込んでいる。そのため、エアバッグは上下方向に偏平な状態となる。
【0041】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグが支持部及び座クッション間で膨張する。この際、折り曲げられた状態の上方膨張促進部が、その折りを解消して面状となることで、エアバッグの上方への膨張が促進される。
【0042】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の本体布部と、前記両本体布部の相対向する外縁部間に配置されて、前記両本体布部の外縁部を繋ぐ前記上方膨張促進部としての中間布部とを備え、前記膨張流体による前記エアバッグの膨張前には、前記中間布部が折り曲げられることにより前記両本体布部が互いに接近させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されていることを要旨とする。
【0043】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、中間布部が上方膨張促進部として折り曲げられていて、両本体布部が互いに接近している。
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグが支持部及び座クッション間で膨張する。この際、折り曲げられた状態の中間布部(上方膨張促進部)が、その折りを解消して面状となることで、エアバッグの上方への膨張(両本体布部が上下方向へ離れる方向の膨張)が促進される。
【発明の効果】
【0044】
本発明のシートクッションエアバッグ装置によれば、膨張前のエアバッグによって送風ダクトの吹出口が塞がれないようにしたため、吹出口からの空調用空気の吹出しを妨げることなく、座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置が適用された車両用シートを、乗員及びシートベルト装置とともに示す側断面図。
【図2】第1実施形態を示す図であり、車両用シート及びシートベルト装置の一部を示す斜視図。
【図3】第1実施形態を示す図であり、車両用シートにおけるシートフレーム及び収容ケースを示す部分斜視図。
【図4】図1におけるX部を拡大して示す部分側断面図。
【図5】第1実施形態を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の構成部品(インフレータアセンブリの内装されたエアバッグ、ラッピングシート及び接触抑制シート)を示す平面図。
【図6】第1実施形態におけるシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図7】第1実施形態を示す図であり、エアバッグの被折り畳み部が折り畳まれてラッピングシートによって包まれる前のシートクッションエアバッグ装置を示す平面図。
【図8】第1実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図。
【図9】本発明を具体化した第2実施形態を示す図であり、(A)はシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図10】本発明を具体化した第3実施形態におけるシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図11】第3実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図。
【図12】第1実施形態の変更例を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の部分側断面図。
【図13】同じく、第1実施形態の変更例を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の部分側断面図。
【図14】第2実施形態の変更例を示す図であり、(A),(B)はともにシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図15】第3実施形態の変更例を示す図であり、エアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図16】第3実施形態の変更例を示す図であり、(A)は図15のY−Y線断面図、(B)は図16(A)のエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。また、各図において、「前」は車両前側を、「後」は車両後側を、「内」は車両内側を、「外」は車両外側をそれぞれ示している。車両内側は、車両の幅方向についての中央位置に近づく側であり、車両外側は上記中央位置から遠ざかる側である。
【0047】
まず、本実施形態のシートクッションエアバッグ装置が適用される車両用シートSの概略構成について説明する。
図1及び図2に示すように、車両用シートSは、座部(シートクッション)10と、座部10の後端側に傾き調整可能に配置された背もたれ部(シートバック)25と、背もたれ部25の上側に配置されたヘッドレスト26とを備えている。
【0048】
座部10は、シートクッションエアバッグ装置によって拘束される対象物(被拘束対象物)である乗員Pが着座する箇所である。図3に示すように、座部10の骨格部分をなすシートフレーム11は、一対のサイドフレーム部12、一対の連結フレーム部13,14、複数本のワイヤフレーム部15、及び収容ケース16を備えている。両サイドフレーム部12は、それぞれ前後方向に延びる板状をなしており、車幅方向(左右方向)に互いに離間した位置に配置されている。両連結フレーム部13,14はそれぞれ車幅方向に延びる棒材により形成されており、前後方向に互いに離間した位置において、上記両サイドフレーム部12間に架設されている。複数本のワイヤフレーム部15は、座り心地向上用の引っ張りばねとして機能するものであり、S字を連続させたような形状に屈曲形成されている。これらのワイヤフレーム部15は、車幅方向に互いに離間した位置に配置されており、両連結フレーム部13,14間に張り渡されている。より詳しくは、連結フレーム部13,14には係止爪(図示略)が設けられており、この係止爪にワイヤフレーム部15が掛け止めされている。そして、これらのワイヤフレーム部15と係止爪とによって、後述する座クッション17を下側から支持する支持部Bが構成されている。
【0049】
収容ケース16は、連結フレーム部13の前側に隣接して配置されており、車幅方向に延びている。収容ケース16は、上面が開放された状態で車幅方向に延びる収容凹部16Aを有している。収容凹部16Aは、後述するエアバッグモジュールAMの前部が収容される箇所である。収容ケース16は、その車幅方向についての両端部において両サイドフレーム部12に固定されている。
【0050】
図4に示すように、シートフレーム11上には座クッション17が配置されている。表現を変えると、座クッション17はシートフレーム11の支持部Bによって下側から支持されている。座クッション17は、布製、皮革製等のカバー18によって被覆されている。
【0051】
図3及び図8(A),(B)に示すように、座部10内において、座クッション17よりも下側には、送風ユニット(図示略)と、その送風ユニットから供給される空調用空気Aを座部10の座面10Aに導く送風ダクト19とが配設されている。送風ダクト19の下流側部分は上下方向に延びており、その下流端は略四角環状に開口されている。この送風ダクト19の下流端には、ゴム、エラストマー等の弾性材料によって略四角環状に形成された環状弾性部材21が上側から装着されている。この環状弾性部材21は、上記ワイヤフレーム部15の上側に位置している。送風ダクト19の下流端において環状弾性部材21によって囲まれた領域は、吹出口22となっている。そして、送風ユニットから供給される空調用空気Aが、送風ダクト19内を流れ、吹出口22から上方へ吹出されるようになっている。
【0052】
車両には、車両用シートSに着座した乗員Pを拘束するために、以下のシートベルト装置30が設けられている。
<シートベルト装置30>
図1及び図2に示すように、シートベルト装置30は、乗員Pを拘束する帯状のウェビング31と、ウェビング31に対しその長さ方向への移動可能に取付けられたタング32と、座部10の車内側に配置されてタング32が係脱可能に装着されるバックル33とを備えている。ウェビング31は、その一端部が、座部10の車外側に固定され、他端部が同車外側に配設されたベルト巻取り装置(図示略)により巻き取られる構成とされている。シートベルト装置30では、ウェビング31に対してタング32を摺動させることで、ラップベルト部34及びショルダベルト部35の各長さを変更可能である。
【0053】
ラップベルト部34は、ウェビング31において、タング32からウェビング31の端部(固定端)までの部分であり、着座した乗員Pの腰部PPの一側方から同腰部PPの前を経由して他側方に架け渡される。ショルダベルト部35は、ウェビング31において、タング32からベルト巻取り装置までの部分であり、着座した乗員Pの肩部PSから斜めに胸部PTの前を経由して腰部PPの側方に架け渡される。
【0054】
上記車両には、サブマリン現象を抑制するためのシートクッションエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)が設けられている。サブマリン現象は、前突等により、車両に対し前方から衝撃が加わった場合に、シートベルト装置30によって車両用シートSに拘束されている乗員Pの腰部PPが、ラップベルト部34から外れて前方へ移動(前滑り)してしまう現象である。
【0055】
上記図4には、エアバッグ装置の概略構成が示されている。ただし、同図4では、細部についての図示が割愛されている。この図4に示すように、上記エアバッグ装置は、エアバッグモジュールAM、衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。
【0056】
エアバッグモジュールAMは、エアバッグ40、インフレータアセンブリ50、接触抑制シート55及びラッピングシート60を備えている。次に、エアバッグモジュールAMの各構成部材について説明する。
【0057】
<エアバッグ40>
エアバッグ40は、膨張により座部10の座面10Aを隆起させるためのものである。エアバッグ40は、図5及び図8(A)に示すように、前後方向に細長い平面長方形状をなす1枚の布(以下「基布42」という)を、その中央部分に設定した折り線43(図7参照)に沿って折り返して上下に重ね合わせ、周縁結合部44で結合(本実施形態では縫合)することによって袋状に形成されている。
【0058】
基布42は、ポリエステル糸、ポリアミド糸等からなる織布によって形成されており、高い強度と可撓性とを有している。エアバッグ40では、周縁結合部44によって囲まれた箇所(内側の箇所)が、インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cとなっている。また、エアバッグ40において周縁結合部44よりも外側となる箇所(膨張部Cの周りの箇所)は、膨張用ガスGが供給されず膨張しない非膨張部Dとなっている。
【0059】
また、エアバッグ40の前端部は縫合されておらず、エアバッグ40内の前部に配置されるインフレータアセンブリ50のハーネスをエアバッグ40の外部へ引き出すこと等が可能となっている。
【0060】
本実施形態では、上記周縁結合部44は、太い破線で図示されることで、通常の破線(隠れ線)と区別されている(図5等参照)。後述する隔壁部75(図9(B))、周縁結合部86(図10)及び側縁結合部90(図15)についても同様である。
【0061】
上記エアバッグ40は、膨張用ガスGが充填されることなく、上記折り線43が後端部に位置するように平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)では、前端部が、座部10に着座した乗員Pの膝部PNの下方に位置し、後端部が臀部PBの下方に位置する大きさを有している(図1参照)。このように、後端部が座部10の後部に位置することに伴い、エアバッグ40が前後に長く、容量の多いものとなっている。
【0062】
上記エアバッグ40の一部(後部)は被折り畳み部45とされている。該当する部分は、エアバッグ40が上記非膨張展開状態にされたとき、上記送風ダクト19における吹出口22の前端よりも後側となる部分である。この被折り畳み部45は、エアバッグ40の膨張部Cが膨張する前には折り畳まれた状態にされる。第1実施形態では、被折り畳み部45は、「内折り」と呼ばれる折り態様で折り畳まれている。内折りは、エアバッグ40の端の部分、この場合、被折り畳み部45を、残部(被折り畳み部45よりも前側の部分)の内側に位置するように折り返す折り態様である。このように被折り畳み部45が内折りされることで、エアバッグ40は、上記非膨張展開状態にされたときよりも前後方向に長さの短い、コンパクトな形態となる。
【0063】
<インフレータアセンブリ50>
インフレータアセンブリ50は、エアバッグ40内に膨張流体としての膨張用ガスGを供給するためのものであり、膨張流体発生源としてのインフレータ51と、そのインフレータ51を覆うリテーナ52とを備えている。
【0064】
インフレータ51は略円柱状をなしており、その内部にはガス発生剤(図示略)が収容されている。このタイプ(パイロタイプ)のインフレータ51では、ガス発生剤の発熱を伴う化学反応によって膨張用ガスGが発生される。インフレータ51には、生成した膨張用ガスGを噴出するガス噴出口(図示略)が設けられている。インフレータ51の一方の端部には、同インフレータ51への制御信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0065】
なお、インフレータ51として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0066】
一方、リテーナ52は、その大部分が金属板等の板材を曲げ加工等することによって、座部10の幅方向(図5の上下方向)に細長い略筒状に形成されている。リテーナ52の下面において、座部10の幅方向に互いに離間した複数箇所には、下方へ延びるボルト53が固定されている。
【0067】
なお、上記インフレータ51は、リテーナ52と一体に設けられた構成を有するものであってもよい。
<エアバッグ40に対するインフレータアセンブリ50の係止態様>
インフレータアセンブリ50は、エアバッグ40内の前部において、座部10の幅方向に延びる姿勢で配置されている。リテーナ52の各ボルト53は、エアバッグ40の前下部に対し挿通されている。この挿通により、インフレータアセンブリ50がエアバッグ40内に係止されている。各ボルト53は、エアバッグ40の前下部から下方へ露出している。
【0068】
<接触抑制シート55>
図4に示すように、接触抑制シート55は、被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するとともに、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するためのものであって、支持部B上に配置されている。接触抑制シート55は、支持部Bのなかでも、特に、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分を接触抑制の対象としている。
【0069】
接触抑制シート55は1枚のシートからなる。本実施形態では、この接触抑制シート55として、ポリエチレン等の合成樹脂からなる軟質の樹脂シート上にフェルトを積層したものが用いられている。フェルトは、繊維を製織、編成によらず、繊維自体を絡ませて布状にしたものであって、可撓性に富む。
【0070】
図4及び図5に示すように、接触抑制シート55は平面矩形状をなしており、エアバッグ40と同程度の幅(第1実施形態では、エアバッグ40よりも若干広い幅)を有している。また、接触抑制シート55の前端部は、収容ケース16の上端部の後方付近に位置し、後端部は、座クッション17の後部に位置している。接触抑制シート55の後端部は、前後方向については、膨張状態のエアバッグ40の後端部と同じ箇所、又は若干後方となる箇所に位置している。
【0071】
上記接触抑制シート55は、フェルトが上側(エアバッグ40側)となり、樹脂シートが下側(支持部B側)となる姿勢で配置されている。また、接触抑制シート55は、図5〜図7に示すように、エアバッグ40における非膨張部Dの複数の箇所56に対し、熱溶着により結合されている。この熱溶着に際しては、接触抑制シート55がエアバッグ40の下側に配置される。そして、接触抑制シート55の上記箇所56に対応する部分が加熱されて、圧力を加えられることにより、同部分が溶けてエアバッグ40の非膨張部Dに強固に結合される。
【0072】
接触抑制シート55において上記送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所には、同吹出口22よりも若干大きな略四角形状の通気孔57があけられている。
<ラッピングシート60>
ラッピングシート60は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45を少なくとも対象とし、エアバッグ40の膨張前にこの対象を包み、エアバッグモジュールAMの輸送中や、車両用シートSへの取付け前等に被折り畳み部45を折り畳まれた状態に保持するためのものである。
【0073】
ラッピングシート60は、可撓性を有する材料からなる略矩形状の1枚の布(第1実施形態では不織布)61を用いて、前端が開放された袋状に形成されている(図8参照)。このラッピングシート60は、座部10の幅方向について、上述した接触抑制シート55と同程度の寸法を有している。
【0074】
上記袋状のラッピングシート60は、上記布61を、その前後方向についての中央部分において、座部10の幅方向に延びるように設定した折り線62(図5、図8(A)参照)に沿って二つ折りして上下に重ね合わせ、周縁部において結合することにより形成されている。より詳しくは、二つ折りされた布61の上側部分と下側部分とが、座部10の幅方向についての両側において、それぞれ前後方向に延びるように設けられた一対の側縁結合部63によって結合されている。側縁結合部63は、縫合、接着、溶着等の手段によって形成されている。これらの側縁結合部63は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45に対し、座部10の幅方向についての外側となる箇所に設けられている(図6、図7参照)。
【0075】
ラッピングシート60は、前後方向については、上記送風ダクト19の吹出口22よりも僅かに前側となる箇所に配置されている。ラッピングシート60は、座部10の幅方向について、側縁結合部63よりも外側の箇所64において、上記接触抑制シート55に対し熱溶着により結合されている。
【0076】
そして、上記のように被折り畳み部45が内折りされた状態のエアバッグ40の後部が上記ラッピングシート60内に前側から挿入されている(図6、図8(A)参照)。この挿入により、折り畳まれた状態の被折り畳み部45の後部と、エアバッグ40において被折り畳み部45の上下に位置する部分とがラッピングシート60によって包まれている。
【0077】
なお、ラッピングシート60には、エアバッグ40が膨張したときに、その膨張するエアバッグ40によって押圧されて破断させられる破断予定部(図示略)が設けられている。破断予定部は、例えば、ラッピングシート60に形成されたスリットによって構成されている。
【0078】
上記のように被折り畳み部45が内折りされたエアバッグ40、インフレータアセンブリ50、接触抑制シート55及びラッピングシート60によって構成されたエアバッグモジュールAMは、次の態様で車両用シートSの座部10内に配置され、組付けられている。
【0079】
<エアバッグモジュールAMの配置態様>
図4及び図8(A)に示すように、エアバッグモジュールAMは、エアバッグ40においてインフレータアセンブリ50の配置された前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように配置されている。エアバッグモジュールAMの上記配置に伴い、接触抑制シート55は、支持部B上であって、収容凹部16Aの後方付近から座部10の後端部に近接した箇所に至る広い領域に配置されている。接触抑制シート55の通気孔57は、送風ダクト19の吹出口22の上側に位置している。エアバッグ40の内折りされた被折り畳み部45と、この被折り畳み部45を包むラッピングシート60とは、吹出口22よりも前側に位置している。
【0080】
<エアバッグモジュールAMの組付け態様>
エアバッグ40の前下部において下方へ露出する各ボルト53は、収容凹部16Aの底部に挿通されている。そして、各ボルト53にナット54が螺合されることにより、インフレータアセンブリ50がエアバッグ40と一緒に収容凹部16Aに締結されている。
【0081】
上述したように、エアバッグ装置は、上記エアバッグモジュールAMのほかに図4に示す衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。衝撃センサ71は加速度センサ等からなり、車両のフロントバンパ(図示略)等に取付けられており、車両の前突を検出すべく、フロントバンパ等に前方から加わる衝撃を検出する。制御装置72は、衝撃センサ71からの検出信号に基づきインフレータ51の作動を制御する。
【0082】
上記のようにして、第1実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について説明する。
このエアバッグ装置では、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらないときには、制御装置72からインフレータ51に対し、これを作動させるための指令信号が出力されず、同インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されない。エアバッグ40では、図1及び図4に示すように被折り畳み部45が内折りされ、かつラッピングシート60によって包まれた状態で支持部B及び座クッション17間に配置され続ける。被折り畳み部45はラッピングシート60によって包まれることで、内折りされた状態に保持され、折りがほどけにくい。
【0083】
図8(A)に示すように、エアバッグ40及びラッピングシート60は、送風ダクト19の吹出口22よりも前側に位置する。そのため、吹出口22はエアバッグ40及びラッピングシート60によって塞がれない。また、接触抑制シート55は折り畳まれず、平面状に展開させられた状態で支持部B上に配置されているが、上記吹出口22の上側では通気孔57が位置している。そのため、吹出口22は接触抑制シート55によっても塞がれない。送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出される空調用空気Aは、座クッション17を通過して乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは、快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0084】
また、このときには、エアバッグ40の支持部Bとの接触が接触抑制シート55によって抑制される。エアバッグ40が支持部B、特に、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分との接触により傷付けられることが抑制される。
【0085】
車両の前突等により、同車両に対し前方から衝撃が加わった場合、乗員Pは慣性によって前方へ移動しようとする。この乗員Pは、シートベルト装置30の保持作用によって座部10上に引き留められる。しかし、乗員Pの姿勢によっては、腰部PPがラップベルト部34から外れて前方へ移動しようとすることがある。
【0086】
しかし、上記前方からの衝撃により、車両に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ71によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置72からハーネスを通じてインフレータ51に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じ、インフレータ51では、高圧の膨張用ガスGが生成・噴出される。
【0087】
そして、図8(B)に示すように、インフレータ51からの膨張用ガスGの供給に伴い、エアバッグ40(膨張部C)が支持部B及び座クッション17間で膨張する。この膨張するエアバッグ40によって押圧されるラッピングシート60は、破断予定部において破断される。なお、図8(B)では、破断された状態のラッピングシート60の図示が割愛されている。その後もエアバッグ40は、インフレータ51に近い側である前側から後側へ向けて、吹出口22を越える位置まで、被折り畳み部45を展開(折りを解消)させながら順に膨張(展開膨張)する。
【0088】
この展開膨張するエアバッグ40により、座クッション17が押上げられて、座部10の座面10Aが隆起させられる。シートベルト装置30によって車両用シートSに拘束された乗員Pの膝部PNの裏から臀部PBまでの領域が、隆起した座面10Aによって上方へ押圧される。この押圧により押上げられた乗員Pの特に腰部PPが、シートベルト装置30のラップベルト部34に押付けられ、そのラップベルト部34の拘束力が高められる。座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)が抑制される。特に、上述したようにエアバッグ40は前側から後側へ向けて順に膨張するため、座面10Aもそれに対応した順に隆起し、着座した乗員Pは膝部PNから持ち上げられる。そのため、サブマリン現象の発生が好適に抑制される。
【0089】
また、上記のように被折り畳み部45が展開しながら膨張するときには、上記非膨張時と同様にして、同被折り畳み部45の支持部Bとの接触が接触抑制シート55によって抑制され、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分との接触により被折り畳み部45が傷付けられることが抑制される。
【0090】
なお、接触抑制シート55は折り畳まれておらず、平面状に展開させられた状態で配置されているため、エアバッグ40の被折り畳み部45と一緒になって展開するものに比べ、その被折り畳み部45の展開膨張を阻害しにくい。
【0091】
ここで、エアバッグ40及び支持部B間に配置された接触抑制シート55では、エアバッグ40側部分(上側部分)がフェルトによって形成されている。このフェルトは、エアバッグ40を構成する基布42ほどではないにせよ、樹脂製のシート等よりも可撓性に富む。そのため、接触抑制シート55の可撓性が確保され、同接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張に追従して撓みやすい。そのため、接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張を妨げる程度は小さくてすむ。
【0092】
また、上記接触抑制シート55では、支持部B側部分(下側部分)が軟質の樹脂シートによって形成されている。この樹脂シートは、フェルト等よりも高い強度を有する。そのため、この軟質の樹脂シートにおいて接触抑制シート55が支持部Bと接触することで、エアバッグ40の膨張期間には、エアバッグ40が支持部Bに接触することが好適に抑制される。
【0093】
また、軟質の樹脂シートは、布、フェルト等ほどではないにせよ可撓性を有するため、エアバッグ40の膨張に追従して撓む。そのため、接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張を妨げる程度は小さくてすむ。
【0094】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40の一部を被折り畳み部45とし、膨張用ガスGによる膨張前には、この被折り畳み部45を折り畳んだ状態にしたうえで、エアバッグ40を、吹出口22の手前(吹出口22よりも前側)の位置に配置する。そして、エアバッグ40の膨張時には、吹出口22を越える位置まで被折り畳み部45を展開させるようにしている(図8(A),(B))。
【0095】
そのため、膨張前のエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げることなく、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動(前滑り)する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0096】
(2)被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するとともに、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制する接触抑制シート55を、少なくともエアバッグ40及び支持部B間に配置している(図4)。
【0097】
そのため、被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40についても、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40についても、すなわち、被折り畳み部45の状態に拘らず、エアバッグ40が支持部Bと接触するのを接触抑制シート55によって抑制することができる。その結果、エアバッグ40が支持部Bの尖った部分との接触により傷付けられるのを抑制することができる。
【0098】
また、接触抑制シート55はエアバッグモジュールAMの構成部材の1つをなし、エアバッグ40(非膨張部D)に結合されているため取り扱いやすい。エアバッグモジュールAMの組付けに際し、エアバッグ40の前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように同エアバッグモジュールAMを配置することで、接触抑制シート55を支持部B上の所定の箇所に配置することができる。
【0099】
(3)折り畳まれた状態の被折り畳み部45をラッピングシート60によって包んでいる(図4、図8(A))。
そのため、エアバッグ40の膨張前には、被折り畳み部45を折り畳まれた状態に保持することができ、エアバッグモジュールAMの輸送時や、車両用シートSへの取付け前等に被折り畳み部45の折りがほどけるのを抑制することができる。
【0100】
また、ラッピングシート60はエアバッグモジュールAMの構成部材の1つをなし、エアバッグ40(非膨張部D)に結合されているため取り扱いやすい。エアバッグモジュールAMの組付けに際し、エアバッグ40の前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように同エアバッグモジュールAMを配置することで、ラッピングシート60を所定の箇所に配置することができる。
【0101】
(4)被折り畳み部45を内折りにより折り畳んでいる(図8(A))。
そのため、被折り畳み部45を、エアバッグ40の残部(被折り畳み部45よりも前側の部分)の内側に位置するように折り返すといった簡単な作業を行なうだけで、被折り畳み部45を折り畳まれた状態にすることができ、また、エアバッグ40を、非膨張展開状態となったときよりも前後方向に長さの短いコンパクトな形態にすることができる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図9(A),(B)を参照して説明する。
【0103】
第2実施形態の第1実施形態との大きな相違点は、次の2点である。
(i)エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前には、展開させられた状態(非膨張展開状態)で支持部B及び座クッション17間に配置されている。このエアバッグ40は、第1実施形態で説明した非膨張展開状態でのエアバッグ40と同様のものである。
【0104】
(ii)非膨張展開状態のエアバッグ40の膨張部Cについて、送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所に、同吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容する通気部が設けられている。より詳しくは、非膨張展開状態のエアバッグ40について、上記吹出口22の上方となる箇所には、その吹出口22よりも若干大きな略四角環状の隔壁部75が設けられている。隔壁部75は、前述したように上下に二つ折りされた基布42を、上記周縁結合部44と同様にして、縫合することによって形成されている。エアバッグ40において隔壁部75によって囲まれた領域は、インフレータ51からの膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張領域77となっている。この非膨張領域77には、隔壁部75よりも若干小さく、かつ吹出口22よりも若干大きな略四角形状の孔76があけられており、この孔76によって上記通気部が構成されている。
【0105】
ここで、第1実施形態とは異なり、被折り畳み部45が存在せず、エアバッグ40は折り畳まれていないため、ラッピングシート60は使用されていない。
また、非膨張展開状態のエアバッグ40は、第1実施形態よりも多くの箇所56で接触抑制シート55に対し熱溶着により結合されている。
【0106】
なお、第2実施形態において、前述した第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のようにして、第2実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0107】
前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらず、インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40(膨張部C)に供給されないときには、エアバッグ40は、非膨張展開状態で支持部B及び座クッション17間に配置される。この状態では、エアバッグ40(膨張部C)に設けられた略四角環状の隔壁部75が吹出口22の上方に位置する。これに伴い、エアバッグ40(膨張部C)において、上記隔壁部75により囲まれた非膨張領域77に設けられた通気部(孔76)が吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19の吹出口22はエアバッグ40(膨張部C)によって塞がれない。また、接触抑制シート55は折り畳まれず、平面状に展開させられた状態で支持部B上に配置されているが、上記吹出口22の上では通気孔57が位置している。そのため、吹出口22は接触抑制シート55によっても塞がれない。
【0108】
送風ダクト19内を流れ、吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、エアバッグ40や接触抑制シート55によって流れを妨げられることなく、通気孔57及び通気部(孔76)を順に経て座クッション17を通過し、乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0109】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40(膨張部C)に供給されると、その膨張用ガスGによりエアバッグ40(膨張部C)が、支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40(膨張部C)において隔壁部75によって囲まれた非膨張領域77は膨張しない。そして、上記のように膨張するエアバッグ40(膨張部C)によって座クッション17が押上げられて、座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0110】
特に、エアバッグ40は、インフレータ51に近い側である前側から後側へ向けて順に膨張するため、座面10Aもそれに対応した順に隆起し、着座した乗員Pは膝部PNから持ち上げられる。
【0111】
従って、第2実施形態によれば、上述した(2)に加え、次の効果が得られる。
(5)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40を、膨張用ガスGによる膨張前には、非膨張展開状態で支持部B及び座クッション17間に配置する。さらに、上記非膨張展開状態のエアバッグ40について吹出口22の上方となる箇所には、同吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容する孔76からなる通気部を設けている(図9(A),(B))。
【0112】
そのため、膨張前にも膨張時にもエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げることなく、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0113】
(6)非膨張展開状態のエアバッグ40について、送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所に略四角環状の隔壁部75を設ける。エアバッグ40において、隔壁部75によって囲まれ、かつインフレータ51から膨張用ガスGが供給されず膨張しない非膨張領域77に孔76を設け、この孔76を通気部としている。
【0114】
そのため、膨張部Cに隔壁部75及び孔76を設けるといった簡単な作業を行なうだけで、エアバッグ40(膨張部C)に通気部を形成することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について図10及び図11(A),(B)を参照して説明する。
【0115】
第3実施形態の第1及び第2実施形態との大きな相違点は、次の2点である。
(I)エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、吹出口22からインフレータ51側(前側)へ離れた箇所において展開させられた状態で支持部B及び座クッション17間に配置されている。こうした構成を採ったことにより、エアバッグ40は、第1及び第2実施形態のエアバッグ40に比べ、前後方向に短くなる。そのため、エアバッグ40の容量を確保すべく、同エアバッグ40をより高い位置まで膨張させるために、次の(II)の構成が採用されている。
【0116】
(II)エアバッグ40には、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられている。
より詳しくは、エアバッグ40は、上下に重ね合わされた一対の布部85を備えている。両布部85は、同両布部85の周縁部に設けられた周縁結合部86において結合されて袋状をなしている。この周縁結合部86による結合は、両布部85の一部(後部)が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれている(図11(A)参照)。そして、両布部85について内側へ折り曲げられた箇所(以下「折り曲げ部87」という)により、上方膨張促進部が構成されている。
【0117】
ここで、エアバッグ40が吹出口22よりも前側で膨張することから、接触抑制シート55としては、第1及び第2実施形態よりも前後に短いもの(接触抑制シート55の後端部が吹出口22よりも前側に位置するもの)が用いられている。
【0118】
なお、第3実施形態において、前述した第1及び第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のようにして、第3実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について、第1及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0119】
図11(A)に示すように、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらず、インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されないときには、エアバッグ40は、送風ダクト19の吹出口22から前方へ離れた箇所において、展開させられた状態で支持部B及び座クッション17間に配置される。そのため、吹出口22はエアバッグ40によっても接触抑制シート55によっても塞がれない。送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出される空調用空気Aが、座クッション17を通過し乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0120】
また、このときには、両布部85の一部(折り曲げ部87)が上方膨張促進部として、残部の内側へ折り曲げられた状態で入り込んでいる。そのため、エアバッグ40は上下方向に偏平な状態となっている。
【0121】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、図11(B)に示すように、その膨張用ガスGによりエアバッグ40の少なくとも一部(膨張部C)が、支持部B及び座クッション17間で膨張する。この際、上記折り曲げられた状態の上方膨張促進部(折り曲げ部87)が、その折りを解消して略鉛直状態の面状となることで、エアバッグ40の上方への膨張が促進される。この膨張の促進により、エアバッグ40は、上方膨張促進部(折り曲げ部87)が設けられない場合よりも高い位置まで膨張する。なお、図11(B)は、座部10の幅方向中央部におけるエアバッグ40の膨張状態を示している。エアバッグ40は、座部10の幅方向については、両周縁結合部86から最も離れた箇所である中央部において、また、前後方向については、上方膨張促進部(折り曲げ部87)が緊張状態となる箇所である後端部において最も高くなるように膨張する。そして、この膨張するエアバッグ40によって座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0122】
従って、第3実施形態によれば、上述した(2)に加え、次の効果が得られる。
(7)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40を、膨張用ガスGによる膨張前には、支持部B及び座クッション17間で、吹出口22から前方へ離れた箇所において展開させた状態で配置する。さらに、エアバッグ40には、上方への膨張を促進する上方膨張促進部(折り曲げ部87)を設けている(図11(A),(B))。
【0123】
そのため、膨張前にも膨張時にもエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、エアバッグ40が吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げるのを抑制することができる。
【0124】
また、上方膨張促進部(折り曲げ部87)により、エアバッグ40をより高い位置まで膨張させることができ、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0125】
(8)上下に重ね合わされた一対の布部85を周縁結合部86において結合させることで、袋状のエアバッグ40を形成する。この周縁結合部86による結合を、両布部85の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なっている。そして、両布部85について内側へ折り曲げられた箇所(折り曲げ部87)を上方膨張促進部としている(図11(A))。
【0126】
このような簡単な構成でありながら、エアバッグ40の上方への膨張を促進する上方膨張促進部を同エアバッグ40に形成することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0127】
<第1実施形態について>
・第1実施形態では、被折り畳み部45の折り態様として、内折りを採用したが、これに代えて、ロール折り又は蛇腹折りによって被折り畳み部45が折り畳まれてもよい。
【0128】
ロール折りは、図12に示すように、エアバッグ40の被折り畳み部45の端部を中心とし、その周りに他の部分を巻き付けて渦巻き状とする折り態様である。
ロール折りの態様としては、上記図12に示すように、ロール折りされた部分の中心が、被折り畳み部45とエアバッグ40の残部(前部)との境界部分よりも下側となる態様と、上側となる態様(図示略)とがあり得る。
【0129】
どちらの態様が採用されてもよいが、前者の場合には、展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷がより小さくなるものと考えられる。被折り畳み部45が展開する場合、その上側には座クッション17が位置し、下側にはワイヤフレーム部15が位置している。被折り畳み部45は、これら座クッション17及びワイヤフレーム部15の間隔を広げながら、後方へ展開することとなる。この際、座クッション17には乗員Pによる荷重が加わっている。これに対し、ワイヤフレーム部15はばね弾性を有している。そのため、展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷は、座クッション17を押上げて上記間隔を広げるよりも、ワイヤフレーム部15を下方へ撓ませて同間隔を広げる方が小さくてすむ。
【0130】
一方、ロール折りされた部分の中心が、被折り畳み部45とエアバッグ40の残部(前部)との境界部分よりも下側にある場合、このロール折りされた部分は下方へ向けて折りを解消しながら展開する。そのため、この展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷が小さくてすむ。
【0131】
蛇腹折りは、図13に示すように、エアバッグ40の被折り畳み部45を、一定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返す折り態様である。
・ラッピングシート60の大きさ、形状等は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45を少なくとも対象とし、エアバッグ40の膨張前に上記対象を包むものであることを条件に、第1実施形態とは異なる大きさ、形状等に変更されてもよい。
【0132】
・ラッピングシート60は、接触抑制シート55に代えて、インフレータ51に固定されてもよい。例えば、二つ折りされたラッピングシート60の上側部分、及び下側部分の少なくとも一方が、第1実施形態よりも前方へ延出され、リテーナ52のボルト53に係止されてもよい。
【0133】
・被折り畳み部45は、展開されたときに、その後端部が吹出口22の上方に位置するものであってもよい。
<第2実施形態について>
・インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cと、同膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張部Dとに区画されたエアバッグ40において、膨張部Cが、吹出口22を避けた箇所に設けられ、通気部が、非膨張部Dについて吹出口22の上方となる箇所に設けられてもよい。
【0134】
その一例を図14(A)に示す。膨張部Cは、吹出口22を、座部10の幅方向(図14(A)の上下方向)についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を有している。非膨張部Dは、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から吹出口22へ向けて延びて両膨張片部78間に入り込む非膨張片部80を有している。非膨張片部80において、吹出口22の上方となる箇所には、その吹出口22よりも若干大きな略四角形状の孔81があけられており、この孔81によって上記通気部が構成されている。
【0135】
こうした構成によれば、エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前に、支持部B及び座クッション17間に展開させられて配置された状態では、膨張部Cは、吹出口22を避けた箇所に位置する。すなわち、膨張部Cの一対の膨張片部78は、吹出口22に対し、座部10の幅方向についての両側に位置する。また、非膨張部Dに設けられた通気部が吹出口22の上方に位置する。すなわち、非膨張部Dにおいて、エアバッグ40の外縁部79から吹出口22へ向けて延びて両膨張片部78間に入り込んだ非膨張片部80は、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から前方へ離れた箇所において、吹出口22の上方に位置する。これに伴い、非膨張片部80について、エアバッグ40の外縁部79から離れた箇所に設けられた通気部(孔81)もまた吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、非膨張部Dの通気部(孔81)及び座クッション17を順に通過して乗員Pに触れる。
【0136】
なお、エアバッグ40の外縁部79と通気部(孔81)との間には、非膨張部Dにおける非膨張片部80が位置する。この非膨張片部80は、吹出口22を、座部10の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を、それらの後部において相互に連結する。そのため、両膨張片部78がそれらの間隔を拡げる方向へ動くことは、非膨張片部80によって規制される。
【0137】
一方、インフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、その膨張用ガスGにより、エアバッグ40では、膨張部Cの一対の膨張片部78が、支持部B及び座クッション17間であって、吹出口22に対し、座部10の幅方向についての両側となる箇所(吹出口22を避けた箇所)で膨張する。膨張部Cの残部も支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40の非膨張片部80を含む非膨張部Dは膨張しない。そして、上記のようにして膨張する膨張部Cにより座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0138】
その結果、このように変更された場合にも上述した第2実施形態と同様の効果が得られるほか、両膨張片部78が、それらの間隔を拡げる方向へ動くのを抑制することができる。
【0139】
・インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cと、同膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張部Dとに区画されたエアバッグ40において、非膨張部Dには、同非膨張部Dの外縁部(後縁部)79から少なくとも吹出口22の上方となる箇所まで延びる切欠き部82が設けられ、この切欠き部82の一部が通気部とされてもよい。
【0140】
その一例を図14(B)に示す。膨張部Cは、吹出口22を、座部10の幅方向(図14(B)の上下方向)についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を有している。非膨張部Dは、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から吹出口22の上方となる箇所まで延びて両膨張片部78間に入り込む非膨張片部80を有している。上記切欠き部82は、この非膨張片部80の略全領域にわたって形成されている。
【0141】
なお、非膨張部D及び切欠き部82は、吹出口22よりも前側となる箇所まで延びるものであってもよい。
こうした構成によれば、エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前に、支持部B及び座クッション17間に展開させられて配置された状態では、膨張部Cは、吹出口22を避けた箇所に位置する。また、非膨張部Dに設けられた切欠き部82の一部が吹出口22の上方に位置する。これに伴い、切欠き部82の一部によって構成される通気部が、吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、非膨張部Dの通気部(切欠き部82)及び座クッション17を順に通過して乗員Pに触れる。
【0142】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、その膨張用ガスGにより、エアバッグ40では、膨張部Cが支持部B及び座クッション17間であって、吹出口22を避けた箇所で膨張する。膨張部Cの残部も支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40の非膨張部Dは膨張しない。そして、上記のようにして膨張する膨張部Cにより座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0143】
その結果、このように変更された場合にも上述した第2実施形態と同様の効果が得られる。
なお、上記の場合、接触抑制シート55にも、その外縁部から少なくとも吹出口22の上方となる箇所まで延びる切欠き部58が設けられてもよい。また、図示はしないが、接触抑制シート55の上記切欠き部58に代えて、第1実施形態と同様に、接触抑制シート55において吹出口22の上方となる箇所に通気孔57が設けられてもよい。
【0144】
また、上記図14(B)において二点鎖線で示すように、座部10の幅方向について、非膨張部Dにおいて上記切欠き部82の両外側となる部分が、吹出口22よりも後方で連結部材83によって連結されてもよい。連結部材83としては、例えば帯状の布片が用いられてもよい。また、連結部材83の両端部は、非膨張部Dに対し、縫合、接着等の手段によって固定されてもよい。このようにすれば、非膨張部Dにおける切欠き部82の両外側部分や、同切欠き部82の両側の両膨張片部78が、それらの間隔を拡げる方向へ動くのを連結部材83によって規制することができる。また、連結部材83が吹出口22よりも後方に配置されているため、同連結部材83が吹出口22を塞ぐこともない。
【0145】
・通気部は、吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容するものであればよい。従って、エアバッグ40の非膨張領域77に設けられた孔76に通気性を有するシート(図示略)が張られ、このシートが通気部とされてもよい。
【0146】
<第3実施形態について>
・上方膨張促進部は、図15及び図16(A),(B)に示すように変更されてもよい。この場合、エアバッグ40は、一対の本体布部88と、上方膨張促進部としての一対の中間布部89とによって構成される。両本体布部88は上下に重ね合わされる。両中間布部89は、両本体布部88の相対向する外縁部間のうち、座部10の幅方向に相対向する2箇所の外縁部間にそれぞれ配置されて、側縁結合部90によって両本体布部88の外縁部に結合される。
【0147】
そして、エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、各中間布部89が折り曲げられることにより両本体布部88が互いに接近させられた状態で支持部B上に配置される。この場合、各中間布部89は両本体布部88間の内側へ入り込むように折り曲げられてもよいし、両本体布部88間から外側へ突出するように折り曲げられてもよい。
【0148】
このように構成されたエアバッグ装置によれば、膨張用ガスGによるエアバッグ40の膨張前には、各中間布部89が上方膨張促進部として折り曲げられていて、両本体布部88が互いに接近している。
【0149】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、同エアバッグ40が支持部B及び座クッション17間で膨張する。この際、上記のように折り曲げられた状態の各中間布部89(上方膨張促進部)が、その折りを解消して鉛直状態の面状となることで、エアバッグ40の上方への膨張(両本体布部88が上下方向へ離れる方向の膨張)が促進される。
【0150】
従って、上方膨張促進部が上記のように変更された場合でも、第3実施形態と同様の効果が得られる。
・上記の場合、中間布部89は、両本体布部88の相対向する外縁部間において、1箇所又は3箇所以上に配置されてもよい。
【0151】
<第1〜第3実施形態、及びそれらの変更例に共通する事項について>
《結合部について》
・各種結合部(周縁結合部44,86、側縁結合部90)は、縫糸を用いた縫合とは異なる態様、例えば接着剤を用いた接着、溶着等によって形成されてもよい。
【0152】
《エアバッグ40について》
・エアバッグ40は、上下に重ねられた複数枚の布を、それらの中央部分に共通して設定した共通の折り線に沿って折り返して上下方向に積層し、周縁結合部で結合することによって形成されたものであってもよい。用いられる布の数が多くなるに従い、エアバッグ40の強度が高くなる。
【0153】
・エアバッグ40は、上下に重ねられた複数枚の布を、折り返すことなく周縁結合部で結合することによって形成されたものであってもよい。
・エアバッグ40は、その略全体が膨張部Cによって構成されるものであってもよい。
【0154】
《接触抑制シート55について》
・前記各実施形態では、接触抑制シート55として、エアバッグ40側のみがフェルトによって形成されているものが用いられたが、全体がフェルトによって形成されているものが接触抑制シート55として用いられてもよい。
【0155】
・前記各実施形態では、接触抑制シート55として、支持部B側のみが軟質の樹脂シートによって形成されているものが用いられたが、全体が軟質の樹脂シートによって形成されているものが接触抑制シート55として用いられてもよい。
【0156】
・接触抑制シート55は、上述したフェルト及び軟質の樹脂シートとは異なる材料、例えば、布、紙、クッション材等によって形成されたものであってもよい。
・接触抑制シート55は、エアバッグ40の膨張部Cに固定されてもよいし、膨張部Cと非膨張部Dの両方に固定されてもよい。
【0157】
・接触抑制シート55は、複数枚のシートによって形成されてもよい。この場合、エアバッグ40において支持部Bとの接触により特に傷が付きやすい箇所にのみ接触抑制シート55が設けられてもよい。
【0158】
・接触抑制シート55は、熱溶着以外の固定手段によってエアバッグ40に固定されてもよい。
・接触抑制シート55は、エアバッグ40に加え、又は代えて、支持部Bに係止されてもよい。
【0159】
《その他》
・本発明は、エアバッグ40として、前記各実施形態とは異なる構成を有するものが用いられたシートクッションエアバッグ装置にも適用可能である。
【0160】
・本発明は、エアバッグ40の少なくとも一部が膨張部Cによって構成され、同膨張部Cが、支持部B及び座クッション17間で膨張するシートクッションエアバッグ装置について広く適用可能である。
【0161】
・本発明では、乗員P以外のもの、例えば荷物等が被拘束対象物とされてもよい。この荷物等が被拘束対象物として座部10の上に置かれた場合にも、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0162】
・本発明のシートクッションエアバッグ装置は、乗員Pが着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように車両用シートSの配置された車両にも適用可能である。
【0163】
・本発明のシートクッションエアバッグ装置は、車室内に前後方向に配列された複数の車両用シートのいずれについても適用可能である。
・膨張流体発生源として、上記インフレータ51とは異なる構成を有するものが用いられてもよい。また、膨張流体として膨張用ガスG以外の流体が用いられてもよい。
【0164】
・本発明は、ワイヤフレーム部15に代えて、板状をなす部材であるシートパンによって座クッション17を支持するようにした車両用シートSにも適用可能である。
【符号の説明】
【0165】
10…座部、10A…座面、11…シートフレーム、17…座クッション、19…送風ダクト、22…吹出口、40…エアバッグ、44,86…周縁結合部、45…被折り畳み部、51…インフレータ(膨張流体発生源)、55…接触抑制シート、58,82…切欠き部、60…ラッピングシート、75…隔壁部、76,81…孔(通気部)、77…非膨張領域、78…膨張片部、79…外縁部、80…非膨張片部、85…布部、87…折り曲げ部(上方膨張促進部)、88…本体布部、89…中間布部(上方膨張促進部)、A…空調用空気、B…支持部、C…膨張部、D…非膨張部、G…膨張用ガス(膨張流体)、P…乗員(被拘束対象物)、S…車両用シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの座部内に配置されたエアバッグを膨張用ガス等の膨張流体により膨張させて座面を隆起させ、座部上の被拘束対象物が前方へ移動する現象を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに着座している乗員の快適性を向上させる技術として、例えば、特許文献1に記載された「車両用シート空調装置」がある。この車両用シート空調装置は、座部の座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトを備えており、送風ダクト内を流れる空調用空気(冷風・温風等)が吹出口から上方へ吹出される。この空調用空気が座クッションを通過し、乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0003】
一方、車両では、前突等により同車両に前方から衝撃が加わった場合、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員の腰部が、ラップベルト部から外れて前方へ移動(前滑り)してしまう現象(サブマリン現象)が問題となる。そこで、このサブマリン現象を抑制するために種々の対策が講じられたり提案されたりしている。
【0004】
その1つとして、座クッションをシートフレームの支持部によって下側から支持してなる座部を有する車両用シートに適用されるシートクッションエアバッグ装置がある。支持部は、座クッションを下側から弾性支持するばね部材(ワイヤフレーム部)、そのばね部材が掛け止められる係止爪等からなる。
【0005】
上記シートクッションエアバッグ装置では、インフレータ(膨張流体発生源)の内装されたエアバッグが上記支持部及び座クッション間に配置される(特許文献2及び特許文献3参照)。このエアバッグは、一般には、展開させられた状態(折り畳まれていない状態)で配置される。そして、インフレータから噴出された膨張用ガス(膨張流体)によりエアバッグが膨張されて、座部の座面が隆起させられる。この座面の隆起により、乗員の大腿部において膝部の後側の近傍部分が上方へ押圧されてラップベルト部に押付けられる。同ラップベルト部の拘束力が高められ、腰部の前方への動き(前滑り)が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−48772号公報
【特許文献2】特開2002−79861号公報
【特許文献3】特開2005−306252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記車両用シート空調装置が組込まれた車両用シートに上記シートクッションエアバッグ装置を適用すると、送風ダクトの位置によっては、展開させられた状態(折り畳まれていない状態)のエアバッグが吹出口の上側に位置する。この場合には、吹出口がエアバッグによって塞がれ、空調用空気が乗員に届かなくなって、快適性が損なわれるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吹出口からの空調用空気の吹出しを妨げることなく、座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制することのできるシートクッションエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグの一部は被折り畳み部とされ、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、前記吹出口の手前の位置に配置されており、膨張時には、少なくとも前記吹出口を越える位置まで前記被折り畳み部を展開させるものであることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、送風ダクトの吹出口の手前の位置において支持部及び座クッション間に配置される。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出される空調用空気が座クッションを通過して乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0011】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグの少なくとも一部が、支持部及び座クッション間で膨張する。この膨張時には、エアバッグは、少なくとも吹出口を越える位置まで、被折り畳み部を展開(折りを解消)させる。そして、上記のように膨張するエアバッグによって座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被折り畳み部が折り畳まれた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制するとともに、前記被折り畳み部が展開させられた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制する接触抑制シートをさらに備えることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、被折り畳み部が折り畳まれた状態のエアバッグについても、被折り畳み部が展開させられた状態のエアバッグについても、すなわち、被折り畳み部の状態に拘らず、エアバッグが支持部と接触することを接触抑制シートによって抑制される。その結果、エアバッグが支持部の尖った部分との接触により傷付けられることが抑制される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記折り畳まれた状態の前記被折り畳み部を少なくとも対象とし、前記エアバッグの膨張前に前記対象を包むラッピングシートをさらに備えることを要旨とする。
【0015】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、被折り畳み部が折り畳まれた状態とされるが、この被折り畳み部はラッピングシートによって包まれることで、折り畳まれた状態に保持される。そのため、輸送時や車両用シートへの取付け前に、被折り畳み部の折りがほどけることが抑制される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記被折り畳み部は、内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれていることを要旨とする。
【0017】
ここで、内折りは、エアバッグの端の部分を、残部の内側に位置するように折り返す折り態様である。
ロール折りは、エアバッグの一方の端部を中心とし、その周りに他の部分を巻き付けて渦巻き状とする折り態様である。
【0018】
蛇腹折りは、エアバッグを、一定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返す折り態様である。
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、被折り畳み部において内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれた状態にされて、送風ダクトの吹出口の手前の位置に配置される。
【0019】
車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、上記の態様で折り畳まれている被折り畳み部は、支持部及び座クッション間で、折りを解消(展開)しながら膨張する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、前記エアバッグについて前記吹出口の上方となる箇所には、同吹出口から吹出された空調用空気の通過を許容する通気部が設けられていることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で支持部及び座クッション間に配置される。この状態では、エアバッグに設けられて、空調用空気の通過を許容する通気部が、吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れ、吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、エアバッグによって流れを妨げられることなく通気部及び座クッションを通過する。この空調用空気が乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0022】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグが、支持部及び座クッション間で膨張する。このエアバッグにより座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグの一部には環状の隔壁部が設けられ、前記隔壁部により囲まれた領域は、前記膨張流体発生源からの前記膨張流体が供給されず膨張しない非膨張領域とされており、前記通気部は前記非膨張領域に設けられていることを要旨とする。
【0024】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、同エアバッグの一部に設けられた環状の隔壁部が吹出口の上方に位置する。これに伴い、エアバッグにおいて、上記隔壁部により囲まれた非膨張領域に設けられた通気部が吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、エアバッグの通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0025】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、エアバッグでは、隔壁部の外側の領域が支持部及び座クッション間で膨張する。このとき、隔壁部により囲まれた非膨張領域は、膨張流体が供給されず膨張しない。そして、上記エアバッグ(非膨張領域を除く)により座部の座面が隆起させられる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、前記膨張部は、前記吹出口を避けた箇所に設けられており、前記通気部は、前記非膨張部において前記吹出口の上方となる箇所に設けられていることを要旨とする。
【0027】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部は、吹出口を避けた箇所に位置する。また、非膨張部に設けられた通気部が吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0028】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体により、エアバッグでは、膨張部が支持部及び座クッション間であって、吹出口を避けた箇所で膨張する。エアバッグの非膨張部は膨張しない。そして、上記膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記膨張部は、前記吹出口を、前記座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を有しており、前記非膨張部は、前記エアバッグの外縁部から前記吹出口へ向けて延びて前記両膨張片部間に入り込む非膨張片部を有しており、前記通気部は、前記非膨張片部について、前記エアバッグの外縁部から離れた箇所に設けられていることを要旨とする。
【0030】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部の一対の膨張片部は、吹出口に対し、座部の幅方向についての両側に位置する。また、非膨張部において、エアバッグの外縁部から吹出口へ向けて延びて両膨張片部間に入り込んだ非膨張片部は、吹出口の上方に位置する。これに伴い、非膨張片部について、吹出口の上方に設けられた通気部は、エアバッグの外縁部から離れた箇所に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0031】
なお、エアバッグの外縁部と通気部との間には、非膨張部における非膨張片部の一部が位置する。この非膨張片部は、吹出口を、座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を相互に連結する。そのため、両膨張片部が、それらの間隔を拡げる方向へ動くことが非膨張片部によって規制される。
【0032】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグでは、膨張部の一対の膨張片部が、支持部及び座クッション間であって、吹出口に対し、座部の幅方向についての両側となる箇所で膨張する。膨張部の残部(膨張片部を除く部分)もまた支持部及び座クッション間で膨張する。エアバッグの非膨張片部を含む非膨張部は膨張しない。そして、上記一対の膨張片部を有する膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、前記非膨張部には、同非膨張部の外縁部から少なくとも前記吹出口の上方となる箇所まで延びる切欠き部が設けられ、前記切欠き部の一部により前記通気部が構成されていることを要旨とする。
【0034】
上記の構成によれば、エアバッグが、膨張流体による膨張前に、支持部及び座クッション間に展開させられて配置された状態では、膨張部は、吹出口を避けた箇所に位置する。また、非膨張部に設けられた切欠き部が吹出口の上方に位置する。これに伴い、切欠き部の一部によって構成される通気部が、吹出口の上方に位置する。そのため、送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出された空調用空気は、非膨張部の通気部及び座クッションを順に通過して乗員に触れる。
【0035】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体により、エアバッグでは、膨張部が支持部及び座クッション間であって、吹出口を避けた箇所で膨張する。エアバッグの非膨張部は膨張しない。そして、上記膨張部により座部の座面が隆起させられる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、さらに、前記エアバッグには、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられていることを要旨とする。
【0037】
上記の構成によれば、エアバッグは、膨張流体による膨張前には、送風ダクトの吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で支持部及び座クッション間に配置される。そのため、送風ダクトの吹出口はエアバッグによって塞がれない。送風ダクト内を流れて吹出口から上方へ吹出される空調用空気が、座クッションを通過し乗員に触れることで、快適な冷房感や暖房感が得られる。
【0038】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、その膨張流体によりエアバッグの少なくとも一部が、支持部及び座クッション間で膨張する。この際、エアバッグの上方への膨張は、同エアバッグに設けられた上方膨張促進部によって促進される。この促進により、エアバッグは上方膨張促進部の設けられない場合よりも高い位置まで膨張する。そして、この膨張するエアバッグによって座部の座面が隆起させられ、座部上の被拘束対象物の前方への移動(サブマリン現象)が抑制される。
【0039】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の布部を備え、前記両布部は、同両布部の周縁部に設けられた周縁結合部において結合されて袋状をなしており、前記周縁結合部による前記結合は、前記両布部の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれており、前記両布部について内側へ折り曲げられた箇所により前記上方膨張促進部が構成されていることを要旨とする。
【0040】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、両布部の一部が上方膨張促進部として、残部の内側へ折り曲げられた状態で入り込んでいる。そのため、エアバッグは上下方向に偏平な状態となる。
【0041】
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグが支持部及び座クッション間で膨張する。この際、折り曲げられた状態の上方膨張促進部が、その折りを解消して面状となることで、エアバッグの上方への膨張が促進される。
【0042】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の本体布部と、前記両本体布部の相対向する外縁部間に配置されて、前記両本体布部の外縁部を繋ぐ前記上方膨張促進部としての中間布部とを備え、前記膨張流体による前記エアバッグの膨張前には、前記中間布部が折り曲げられることにより前記両本体布部が互いに接近させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されていることを要旨とする。
【0043】
上記の構成によれば、膨張流体によるエアバッグの膨張前には、中間布部が上方膨張促進部として折り曲げられていて、両本体布部が互いに接近している。
一方、車両への衝撃に応じて膨張流体発生源から膨張流体がエアバッグに供給されると、同エアバッグが支持部及び座クッション間で膨張する。この際、折り曲げられた状態の中間布部(上方膨張促進部)が、その折りを解消して面状となることで、エアバッグの上方への膨張(両本体布部が上下方向へ離れる方向の膨張)が促進される。
【発明の効果】
【0044】
本発明のシートクッションエアバッグ装置によれば、膨張前のエアバッグによって送風ダクトの吹出口が塞がれないようにしたため、吹出口からの空調用空気の吹出しを妨げることなく、座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置が適用された車両用シートを、乗員及びシートベルト装置とともに示す側断面図。
【図2】第1実施形態を示す図であり、車両用シート及びシートベルト装置の一部を示す斜視図。
【図3】第1実施形態を示す図であり、車両用シートにおけるシートフレーム及び収容ケースを示す部分斜視図。
【図4】図1におけるX部を拡大して示す部分側断面図。
【図5】第1実施形態を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の構成部品(インフレータアセンブリの内装されたエアバッグ、ラッピングシート及び接触抑制シート)を示す平面図。
【図6】第1実施形態におけるシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図7】第1実施形態を示す図であり、エアバッグの被折り畳み部が折り畳まれてラッピングシートによって包まれる前のシートクッションエアバッグ装置を示す平面図。
【図8】第1実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図。
【図9】本発明を具体化した第2実施形態を示す図であり、(A)はシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図10】本発明を具体化した第3実施形態におけるシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図11】第3実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図、(B)はエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置を送風ダクトとともに示す部分側断面図。
【図12】第1実施形態の変更例を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の部分側断面図。
【図13】同じく、第1実施形態の変更例を示す図であり、シートクッションエアバッグ装置の部分側断面図。
【図14】第2実施形態の変更例を示す図であり、(A),(B)はともにシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図15】第3実施形態の変更例を示す図であり、エアバッグが膨張する前のシートクッションエアバッグ装置の平面図。
【図16】第3実施形態の変更例を示す図であり、(A)は図15のY−Y線断面図、(B)は図16(A)のエアバッグが膨張したときのシートクッションエアバッグ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。また、各図において、「前」は車両前側を、「後」は車両後側を、「内」は車両内側を、「外」は車両外側をそれぞれ示している。車両内側は、車両の幅方向についての中央位置に近づく側であり、車両外側は上記中央位置から遠ざかる側である。
【0047】
まず、本実施形態のシートクッションエアバッグ装置が適用される車両用シートSの概略構成について説明する。
図1及び図2に示すように、車両用シートSは、座部(シートクッション)10と、座部10の後端側に傾き調整可能に配置された背もたれ部(シートバック)25と、背もたれ部25の上側に配置されたヘッドレスト26とを備えている。
【0048】
座部10は、シートクッションエアバッグ装置によって拘束される対象物(被拘束対象物)である乗員Pが着座する箇所である。図3に示すように、座部10の骨格部分をなすシートフレーム11は、一対のサイドフレーム部12、一対の連結フレーム部13,14、複数本のワイヤフレーム部15、及び収容ケース16を備えている。両サイドフレーム部12は、それぞれ前後方向に延びる板状をなしており、車幅方向(左右方向)に互いに離間した位置に配置されている。両連結フレーム部13,14はそれぞれ車幅方向に延びる棒材により形成されており、前後方向に互いに離間した位置において、上記両サイドフレーム部12間に架設されている。複数本のワイヤフレーム部15は、座り心地向上用の引っ張りばねとして機能するものであり、S字を連続させたような形状に屈曲形成されている。これらのワイヤフレーム部15は、車幅方向に互いに離間した位置に配置されており、両連結フレーム部13,14間に張り渡されている。より詳しくは、連結フレーム部13,14には係止爪(図示略)が設けられており、この係止爪にワイヤフレーム部15が掛け止めされている。そして、これらのワイヤフレーム部15と係止爪とによって、後述する座クッション17を下側から支持する支持部Bが構成されている。
【0049】
収容ケース16は、連結フレーム部13の前側に隣接して配置されており、車幅方向に延びている。収容ケース16は、上面が開放された状態で車幅方向に延びる収容凹部16Aを有している。収容凹部16Aは、後述するエアバッグモジュールAMの前部が収容される箇所である。収容ケース16は、その車幅方向についての両端部において両サイドフレーム部12に固定されている。
【0050】
図4に示すように、シートフレーム11上には座クッション17が配置されている。表現を変えると、座クッション17はシートフレーム11の支持部Bによって下側から支持されている。座クッション17は、布製、皮革製等のカバー18によって被覆されている。
【0051】
図3及び図8(A),(B)に示すように、座部10内において、座クッション17よりも下側には、送風ユニット(図示略)と、その送風ユニットから供給される空調用空気Aを座部10の座面10Aに導く送風ダクト19とが配設されている。送風ダクト19の下流側部分は上下方向に延びており、その下流端は略四角環状に開口されている。この送風ダクト19の下流端には、ゴム、エラストマー等の弾性材料によって略四角環状に形成された環状弾性部材21が上側から装着されている。この環状弾性部材21は、上記ワイヤフレーム部15の上側に位置している。送風ダクト19の下流端において環状弾性部材21によって囲まれた領域は、吹出口22となっている。そして、送風ユニットから供給される空調用空気Aが、送風ダクト19内を流れ、吹出口22から上方へ吹出されるようになっている。
【0052】
車両には、車両用シートSに着座した乗員Pを拘束するために、以下のシートベルト装置30が設けられている。
<シートベルト装置30>
図1及び図2に示すように、シートベルト装置30は、乗員Pを拘束する帯状のウェビング31と、ウェビング31に対しその長さ方向への移動可能に取付けられたタング32と、座部10の車内側に配置されてタング32が係脱可能に装着されるバックル33とを備えている。ウェビング31は、その一端部が、座部10の車外側に固定され、他端部が同車外側に配設されたベルト巻取り装置(図示略)により巻き取られる構成とされている。シートベルト装置30では、ウェビング31に対してタング32を摺動させることで、ラップベルト部34及びショルダベルト部35の各長さを変更可能である。
【0053】
ラップベルト部34は、ウェビング31において、タング32からウェビング31の端部(固定端)までの部分であり、着座した乗員Pの腰部PPの一側方から同腰部PPの前を経由して他側方に架け渡される。ショルダベルト部35は、ウェビング31において、タング32からベルト巻取り装置までの部分であり、着座した乗員Pの肩部PSから斜めに胸部PTの前を経由して腰部PPの側方に架け渡される。
【0054】
上記車両には、サブマリン現象を抑制するためのシートクッションエアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置という)が設けられている。サブマリン現象は、前突等により、車両に対し前方から衝撃が加わった場合に、シートベルト装置30によって車両用シートSに拘束されている乗員Pの腰部PPが、ラップベルト部34から外れて前方へ移動(前滑り)してしまう現象である。
【0055】
上記図4には、エアバッグ装置の概略構成が示されている。ただし、同図4では、細部についての図示が割愛されている。この図4に示すように、上記エアバッグ装置は、エアバッグモジュールAM、衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。
【0056】
エアバッグモジュールAMは、エアバッグ40、インフレータアセンブリ50、接触抑制シート55及びラッピングシート60を備えている。次に、エアバッグモジュールAMの各構成部材について説明する。
【0057】
<エアバッグ40>
エアバッグ40は、膨張により座部10の座面10Aを隆起させるためのものである。エアバッグ40は、図5及び図8(A)に示すように、前後方向に細長い平面長方形状をなす1枚の布(以下「基布42」という)を、その中央部分に設定した折り線43(図7参照)に沿って折り返して上下に重ね合わせ、周縁結合部44で結合(本実施形態では縫合)することによって袋状に形成されている。
【0058】
基布42は、ポリエステル糸、ポリアミド糸等からなる織布によって形成されており、高い強度と可撓性とを有している。エアバッグ40では、周縁結合部44によって囲まれた箇所(内側の箇所)が、インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cとなっている。また、エアバッグ40において周縁結合部44よりも外側となる箇所(膨張部Cの周りの箇所)は、膨張用ガスGが供給されず膨張しない非膨張部Dとなっている。
【0059】
また、エアバッグ40の前端部は縫合されておらず、エアバッグ40内の前部に配置されるインフレータアセンブリ50のハーネスをエアバッグ40の外部へ引き出すこと等が可能となっている。
【0060】
本実施形態では、上記周縁結合部44は、太い破線で図示されることで、通常の破線(隠れ線)と区別されている(図5等参照)。後述する隔壁部75(図9(B))、周縁結合部86(図10)及び側縁結合部90(図15)についても同様である。
【0061】
上記エアバッグ40は、膨張用ガスGが充填されることなく、上記折り線43が後端部に位置するように平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)では、前端部が、座部10に着座した乗員Pの膝部PNの下方に位置し、後端部が臀部PBの下方に位置する大きさを有している(図1参照)。このように、後端部が座部10の後部に位置することに伴い、エアバッグ40が前後に長く、容量の多いものとなっている。
【0062】
上記エアバッグ40の一部(後部)は被折り畳み部45とされている。該当する部分は、エアバッグ40が上記非膨張展開状態にされたとき、上記送風ダクト19における吹出口22の前端よりも後側となる部分である。この被折り畳み部45は、エアバッグ40の膨張部Cが膨張する前には折り畳まれた状態にされる。第1実施形態では、被折り畳み部45は、「内折り」と呼ばれる折り態様で折り畳まれている。内折りは、エアバッグ40の端の部分、この場合、被折り畳み部45を、残部(被折り畳み部45よりも前側の部分)の内側に位置するように折り返す折り態様である。このように被折り畳み部45が内折りされることで、エアバッグ40は、上記非膨張展開状態にされたときよりも前後方向に長さの短い、コンパクトな形態となる。
【0063】
<インフレータアセンブリ50>
インフレータアセンブリ50は、エアバッグ40内に膨張流体としての膨張用ガスGを供給するためのものであり、膨張流体発生源としてのインフレータ51と、そのインフレータ51を覆うリテーナ52とを備えている。
【0064】
インフレータ51は略円柱状をなしており、その内部にはガス発生剤(図示略)が収容されている。このタイプ(パイロタイプ)のインフレータ51では、ガス発生剤の発熱を伴う化学反応によって膨張用ガスGが発生される。インフレータ51には、生成した膨張用ガスGを噴出するガス噴出口(図示略)が設けられている。インフレータ51の一方の端部には、同インフレータ51への制御信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0065】
なお、インフレータ51として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0066】
一方、リテーナ52は、その大部分が金属板等の板材を曲げ加工等することによって、座部10の幅方向(図5の上下方向)に細長い略筒状に形成されている。リテーナ52の下面において、座部10の幅方向に互いに離間した複数箇所には、下方へ延びるボルト53が固定されている。
【0067】
なお、上記インフレータ51は、リテーナ52と一体に設けられた構成を有するものであってもよい。
<エアバッグ40に対するインフレータアセンブリ50の係止態様>
インフレータアセンブリ50は、エアバッグ40内の前部において、座部10の幅方向に延びる姿勢で配置されている。リテーナ52の各ボルト53は、エアバッグ40の前下部に対し挿通されている。この挿通により、インフレータアセンブリ50がエアバッグ40内に係止されている。各ボルト53は、エアバッグ40の前下部から下方へ露出している。
【0068】
<接触抑制シート55>
図4に示すように、接触抑制シート55は、被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するとともに、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するためのものであって、支持部B上に配置されている。接触抑制シート55は、支持部Bのなかでも、特に、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分を接触抑制の対象としている。
【0069】
接触抑制シート55は1枚のシートからなる。本実施形態では、この接触抑制シート55として、ポリエチレン等の合成樹脂からなる軟質の樹脂シート上にフェルトを積層したものが用いられている。フェルトは、繊維を製織、編成によらず、繊維自体を絡ませて布状にしたものであって、可撓性に富む。
【0070】
図4及び図5に示すように、接触抑制シート55は平面矩形状をなしており、エアバッグ40と同程度の幅(第1実施形態では、エアバッグ40よりも若干広い幅)を有している。また、接触抑制シート55の前端部は、収容ケース16の上端部の後方付近に位置し、後端部は、座クッション17の後部に位置している。接触抑制シート55の後端部は、前後方向については、膨張状態のエアバッグ40の後端部と同じ箇所、又は若干後方となる箇所に位置している。
【0071】
上記接触抑制シート55は、フェルトが上側(エアバッグ40側)となり、樹脂シートが下側(支持部B側)となる姿勢で配置されている。また、接触抑制シート55は、図5〜図7に示すように、エアバッグ40における非膨張部Dの複数の箇所56に対し、熱溶着により結合されている。この熱溶着に際しては、接触抑制シート55がエアバッグ40の下側に配置される。そして、接触抑制シート55の上記箇所56に対応する部分が加熱されて、圧力を加えられることにより、同部分が溶けてエアバッグ40の非膨張部Dに強固に結合される。
【0072】
接触抑制シート55において上記送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所には、同吹出口22よりも若干大きな略四角形状の通気孔57があけられている。
<ラッピングシート60>
ラッピングシート60は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45を少なくとも対象とし、エアバッグ40の膨張前にこの対象を包み、エアバッグモジュールAMの輸送中や、車両用シートSへの取付け前等に被折り畳み部45を折り畳まれた状態に保持するためのものである。
【0073】
ラッピングシート60は、可撓性を有する材料からなる略矩形状の1枚の布(第1実施形態では不織布)61を用いて、前端が開放された袋状に形成されている(図8参照)。このラッピングシート60は、座部10の幅方向について、上述した接触抑制シート55と同程度の寸法を有している。
【0074】
上記袋状のラッピングシート60は、上記布61を、その前後方向についての中央部分において、座部10の幅方向に延びるように設定した折り線62(図5、図8(A)参照)に沿って二つ折りして上下に重ね合わせ、周縁部において結合することにより形成されている。より詳しくは、二つ折りされた布61の上側部分と下側部分とが、座部10の幅方向についての両側において、それぞれ前後方向に延びるように設けられた一対の側縁結合部63によって結合されている。側縁結合部63は、縫合、接着、溶着等の手段によって形成されている。これらの側縁結合部63は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45に対し、座部10の幅方向についての外側となる箇所に設けられている(図6、図7参照)。
【0075】
ラッピングシート60は、前後方向については、上記送風ダクト19の吹出口22よりも僅かに前側となる箇所に配置されている。ラッピングシート60は、座部10の幅方向について、側縁結合部63よりも外側の箇所64において、上記接触抑制シート55に対し熱溶着により結合されている。
【0076】
そして、上記のように被折り畳み部45が内折りされた状態のエアバッグ40の後部が上記ラッピングシート60内に前側から挿入されている(図6、図8(A)参照)。この挿入により、折り畳まれた状態の被折り畳み部45の後部と、エアバッグ40において被折り畳み部45の上下に位置する部分とがラッピングシート60によって包まれている。
【0077】
なお、ラッピングシート60には、エアバッグ40が膨張したときに、その膨張するエアバッグ40によって押圧されて破断させられる破断予定部(図示略)が設けられている。破断予定部は、例えば、ラッピングシート60に形成されたスリットによって構成されている。
【0078】
上記のように被折り畳み部45が内折りされたエアバッグ40、インフレータアセンブリ50、接触抑制シート55及びラッピングシート60によって構成されたエアバッグモジュールAMは、次の態様で車両用シートSの座部10内に配置され、組付けられている。
【0079】
<エアバッグモジュールAMの配置態様>
図4及び図8(A)に示すように、エアバッグモジュールAMは、エアバッグ40においてインフレータアセンブリ50の配置された前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように配置されている。エアバッグモジュールAMの上記配置に伴い、接触抑制シート55は、支持部B上であって、収容凹部16Aの後方付近から座部10の後端部に近接した箇所に至る広い領域に配置されている。接触抑制シート55の通気孔57は、送風ダクト19の吹出口22の上側に位置している。エアバッグ40の内折りされた被折り畳み部45と、この被折り畳み部45を包むラッピングシート60とは、吹出口22よりも前側に位置している。
【0080】
<エアバッグモジュールAMの組付け態様>
エアバッグ40の前下部において下方へ露出する各ボルト53は、収容凹部16Aの底部に挿通されている。そして、各ボルト53にナット54が螺合されることにより、インフレータアセンブリ50がエアバッグ40と一緒に収容凹部16Aに締結されている。
【0081】
上述したように、エアバッグ装置は、上記エアバッグモジュールAMのほかに図4に示す衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。衝撃センサ71は加速度センサ等からなり、車両のフロントバンパ(図示略)等に取付けられており、車両の前突を検出すべく、フロントバンパ等に前方から加わる衝撃を検出する。制御装置72は、衝撃センサ71からの検出信号に基づきインフレータ51の作動を制御する。
【0082】
上記のようにして、第1実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について説明する。
このエアバッグ装置では、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらないときには、制御装置72からインフレータ51に対し、これを作動させるための指令信号が出力されず、同インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されない。エアバッグ40では、図1及び図4に示すように被折り畳み部45が内折りされ、かつラッピングシート60によって包まれた状態で支持部B及び座クッション17間に配置され続ける。被折り畳み部45はラッピングシート60によって包まれることで、内折りされた状態に保持され、折りがほどけにくい。
【0083】
図8(A)に示すように、エアバッグ40及びラッピングシート60は、送風ダクト19の吹出口22よりも前側に位置する。そのため、吹出口22はエアバッグ40及びラッピングシート60によって塞がれない。また、接触抑制シート55は折り畳まれず、平面状に展開させられた状態で支持部B上に配置されているが、上記吹出口22の上側では通気孔57が位置している。そのため、吹出口22は接触抑制シート55によっても塞がれない。送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出される空調用空気Aは、座クッション17を通過して乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは、快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0084】
また、このときには、エアバッグ40の支持部Bとの接触が接触抑制シート55によって抑制される。エアバッグ40が支持部B、特に、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分との接触により傷付けられることが抑制される。
【0085】
車両の前突等により、同車両に対し前方から衝撃が加わった場合、乗員Pは慣性によって前方へ移動しようとする。この乗員Pは、シートベルト装置30の保持作用によって座部10上に引き留められる。しかし、乗員Pの姿勢によっては、腰部PPがラップベルト部34から外れて前方へ移動しようとすることがある。
【0086】
しかし、上記前方からの衝撃により、車両に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ71によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置72からハーネスを通じてインフレータ51に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じ、インフレータ51では、高圧の膨張用ガスGが生成・噴出される。
【0087】
そして、図8(B)に示すように、インフレータ51からの膨張用ガスGの供給に伴い、エアバッグ40(膨張部C)が支持部B及び座クッション17間で膨張する。この膨張するエアバッグ40によって押圧されるラッピングシート60は、破断予定部において破断される。なお、図8(B)では、破断された状態のラッピングシート60の図示が割愛されている。その後もエアバッグ40は、インフレータ51に近い側である前側から後側へ向けて、吹出口22を越える位置まで、被折り畳み部45を展開(折りを解消)させながら順に膨張(展開膨張)する。
【0088】
この展開膨張するエアバッグ40により、座クッション17が押上げられて、座部10の座面10Aが隆起させられる。シートベルト装置30によって車両用シートSに拘束された乗員Pの膝部PNの裏から臀部PBまでの領域が、隆起した座面10Aによって上方へ押圧される。この押圧により押上げられた乗員Pの特に腰部PPが、シートベルト装置30のラップベルト部34に押付けられ、そのラップベルト部34の拘束力が高められる。座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)が抑制される。特に、上述したようにエアバッグ40は前側から後側へ向けて順に膨張するため、座面10Aもそれに対応した順に隆起し、着座した乗員Pは膝部PNから持ち上げられる。そのため、サブマリン現象の発生が好適に抑制される。
【0089】
また、上記のように被折り畳み部45が展開しながら膨張するときには、上記非膨張時と同様にして、同被折り畳み部45の支持部Bとの接触が接触抑制シート55によって抑制され、ワイヤフレーム部15の係止爪との掛け止め部分等、尖った部分との接触により被折り畳み部45が傷付けられることが抑制される。
【0090】
なお、接触抑制シート55は折り畳まれておらず、平面状に展開させられた状態で配置されているため、エアバッグ40の被折り畳み部45と一緒になって展開するものに比べ、その被折り畳み部45の展開膨張を阻害しにくい。
【0091】
ここで、エアバッグ40及び支持部B間に配置された接触抑制シート55では、エアバッグ40側部分(上側部分)がフェルトによって形成されている。このフェルトは、エアバッグ40を構成する基布42ほどではないにせよ、樹脂製のシート等よりも可撓性に富む。そのため、接触抑制シート55の可撓性が確保され、同接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張に追従して撓みやすい。そのため、接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張を妨げる程度は小さくてすむ。
【0092】
また、上記接触抑制シート55では、支持部B側部分(下側部分)が軟質の樹脂シートによって形成されている。この樹脂シートは、フェルト等よりも高い強度を有する。そのため、この軟質の樹脂シートにおいて接触抑制シート55が支持部Bと接触することで、エアバッグ40の膨張期間には、エアバッグ40が支持部Bに接触することが好適に抑制される。
【0093】
また、軟質の樹脂シートは、布、フェルト等ほどではないにせよ可撓性を有するため、エアバッグ40の膨張に追従して撓む。そのため、接触抑制シート55がエアバッグ40の膨張を妨げる程度は小さくてすむ。
【0094】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40の一部を被折り畳み部45とし、膨張用ガスGによる膨張前には、この被折り畳み部45を折り畳んだ状態にしたうえで、エアバッグ40を、吹出口22の手前(吹出口22よりも前側)の位置に配置する。そして、エアバッグ40の膨張時には、吹出口22を越える位置まで被折り畳み部45を展開させるようにしている(図8(A),(B))。
【0095】
そのため、膨張前のエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げることなく、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動(前滑り)する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0096】
(2)被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制するとともに、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40の支持部Bとの接触を抑制する接触抑制シート55を、少なくともエアバッグ40及び支持部B間に配置している(図4)。
【0097】
そのため、被折り畳み部45が折り畳まれた状態のエアバッグ40についても、被折り畳み部45が展開させられた状態のエアバッグ40についても、すなわち、被折り畳み部45の状態に拘らず、エアバッグ40が支持部Bと接触するのを接触抑制シート55によって抑制することができる。その結果、エアバッグ40が支持部Bの尖った部分との接触により傷付けられるのを抑制することができる。
【0098】
また、接触抑制シート55はエアバッグモジュールAMの構成部材の1つをなし、エアバッグ40(非膨張部D)に結合されているため取り扱いやすい。エアバッグモジュールAMの組付けに際し、エアバッグ40の前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように同エアバッグモジュールAMを配置することで、接触抑制シート55を支持部B上の所定の箇所に配置することができる。
【0099】
(3)折り畳まれた状態の被折り畳み部45をラッピングシート60によって包んでいる(図4、図8(A))。
そのため、エアバッグ40の膨張前には、被折り畳み部45を折り畳まれた状態に保持することができ、エアバッグモジュールAMの輸送時や、車両用シートSへの取付け前等に被折り畳み部45の折りがほどけるのを抑制することができる。
【0100】
また、ラッピングシート60はエアバッグモジュールAMの構成部材の1つをなし、エアバッグ40(非膨張部D)に結合されているため取り扱いやすい。エアバッグモジュールAMの組付けに際し、エアバッグ40の前部が収容ケース16の収容凹部16A内に収容されるように同エアバッグモジュールAMを配置することで、ラッピングシート60を所定の箇所に配置することができる。
【0101】
(4)被折り畳み部45を内折りにより折り畳んでいる(図8(A))。
そのため、被折り畳み部45を、エアバッグ40の残部(被折り畳み部45よりも前側の部分)の内側に位置するように折り返すといった簡単な作業を行なうだけで、被折り畳み部45を折り畳まれた状態にすることができ、また、エアバッグ40を、非膨張展開状態となったときよりも前後方向に長さの短いコンパクトな形態にすることができる。
【0102】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図9(A),(B)を参照して説明する。
【0103】
第2実施形態の第1実施形態との大きな相違点は、次の2点である。
(i)エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前には、展開させられた状態(非膨張展開状態)で支持部B及び座クッション17間に配置されている。このエアバッグ40は、第1実施形態で説明した非膨張展開状態でのエアバッグ40と同様のものである。
【0104】
(ii)非膨張展開状態のエアバッグ40の膨張部Cについて、送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所に、同吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容する通気部が設けられている。より詳しくは、非膨張展開状態のエアバッグ40について、上記吹出口22の上方となる箇所には、その吹出口22よりも若干大きな略四角環状の隔壁部75が設けられている。隔壁部75は、前述したように上下に二つ折りされた基布42を、上記周縁結合部44と同様にして、縫合することによって形成されている。エアバッグ40において隔壁部75によって囲まれた領域は、インフレータ51からの膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張領域77となっている。この非膨張領域77には、隔壁部75よりも若干小さく、かつ吹出口22よりも若干大きな略四角形状の孔76があけられており、この孔76によって上記通気部が構成されている。
【0105】
ここで、第1実施形態とは異なり、被折り畳み部45が存在せず、エアバッグ40は折り畳まれていないため、ラッピングシート60は使用されていない。
また、非膨張展開状態のエアバッグ40は、第1実施形態よりも多くの箇所56で接触抑制シート55に対し熱溶着により結合されている。
【0106】
なお、第2実施形態において、前述した第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のようにして、第2実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0107】
前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらず、インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40(膨張部C)に供給されないときには、エアバッグ40は、非膨張展開状態で支持部B及び座クッション17間に配置される。この状態では、エアバッグ40(膨張部C)に設けられた略四角環状の隔壁部75が吹出口22の上方に位置する。これに伴い、エアバッグ40(膨張部C)において、上記隔壁部75により囲まれた非膨張領域77に設けられた通気部(孔76)が吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19の吹出口22はエアバッグ40(膨張部C)によって塞がれない。また、接触抑制シート55は折り畳まれず、平面状に展開させられた状態で支持部B上に配置されているが、上記吹出口22の上では通気孔57が位置している。そのため、吹出口22は接触抑制シート55によっても塞がれない。
【0108】
送風ダクト19内を流れ、吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、エアバッグ40や接触抑制シート55によって流れを妨げられることなく、通気孔57及び通気部(孔76)を順に経て座クッション17を通過し、乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0109】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40(膨張部C)に供給されると、その膨張用ガスGによりエアバッグ40(膨張部C)が、支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40(膨張部C)において隔壁部75によって囲まれた非膨張領域77は膨張しない。そして、上記のように膨張するエアバッグ40(膨張部C)によって座クッション17が押上げられて、座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0110】
特に、エアバッグ40は、インフレータ51に近い側である前側から後側へ向けて順に膨張するため、座面10Aもそれに対応した順に隆起し、着座した乗員Pは膝部PNから持ち上げられる。
【0111】
従って、第2実施形態によれば、上述した(2)に加え、次の効果が得られる。
(5)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40を、膨張用ガスGによる膨張前には、非膨張展開状態で支持部B及び座クッション17間に配置する。さらに、上記非膨張展開状態のエアバッグ40について吹出口22の上方となる箇所には、同吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容する孔76からなる通気部を設けている(図9(A),(B))。
【0112】
そのため、膨張前にも膨張時にもエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げることなく、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0113】
(6)非膨張展開状態のエアバッグ40について、送風ダクト19の吹出口22の上方となる箇所に略四角環状の隔壁部75を設ける。エアバッグ40において、隔壁部75によって囲まれ、かつインフレータ51から膨張用ガスGが供給されず膨張しない非膨張領域77に孔76を設け、この孔76を通気部としている。
【0114】
そのため、膨張部Cに隔壁部75及び孔76を設けるといった簡単な作業を行なうだけで、エアバッグ40(膨張部C)に通気部を形成することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について図10及び図11(A),(B)を参照して説明する。
【0115】
第3実施形態の第1及び第2実施形態との大きな相違点は、次の2点である。
(I)エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、吹出口22からインフレータ51側(前側)へ離れた箇所において展開させられた状態で支持部B及び座クッション17間に配置されている。こうした構成を採ったことにより、エアバッグ40は、第1及び第2実施形態のエアバッグ40に比べ、前後方向に短くなる。そのため、エアバッグ40の容量を確保すべく、同エアバッグ40をより高い位置まで膨張させるために、次の(II)の構成が採用されている。
【0116】
(II)エアバッグ40には、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられている。
より詳しくは、エアバッグ40は、上下に重ね合わされた一対の布部85を備えている。両布部85は、同両布部85の周縁部に設けられた周縁結合部86において結合されて袋状をなしている。この周縁結合部86による結合は、両布部85の一部(後部)が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれている(図11(A)参照)。そして、両布部85について内側へ折り曲げられた箇所(以下「折り曲げ部87」という)により、上方膨張促進部が構成されている。
【0117】
ここで、エアバッグ40が吹出口22よりも前側で膨張することから、接触抑制シート55としては、第1及び第2実施形態よりも前後に短いもの(接触抑制シート55の後端部が吹出口22よりも前側に位置するもの)が用いられている。
【0118】
なお、第3実施形態において、前述した第1及び第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のようにして、第3実施形態のエアバッグ装置が構成されている。次に、このエアバッグ装置の作用について、第1及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0119】
図11(A)に示すように、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わらず、インフレータ51から膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されないときには、エアバッグ40は、送風ダクト19の吹出口22から前方へ離れた箇所において、展開させられた状態で支持部B及び座クッション17間に配置される。そのため、吹出口22はエアバッグ40によっても接触抑制シート55によっても塞がれない。送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出される空調用空気Aが、座クッション17を通過し乗員Pに触れる。この空調用空気Aにより、乗員Pは快適な冷房感や暖房感を得ることとなる。
【0120】
また、このときには、両布部85の一部(折り曲げ部87)が上方膨張促進部として、残部の内側へ折り曲げられた状態で入り込んでいる。そのため、エアバッグ40は上下方向に偏平な状態となっている。
【0121】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、図11(B)に示すように、その膨張用ガスGによりエアバッグ40の少なくとも一部(膨張部C)が、支持部B及び座クッション17間で膨張する。この際、上記折り曲げられた状態の上方膨張促進部(折り曲げ部87)が、その折りを解消して略鉛直状態の面状となることで、エアバッグ40の上方への膨張が促進される。この膨張の促進により、エアバッグ40は、上方膨張促進部(折り曲げ部87)が設けられない場合よりも高い位置まで膨張する。なお、図11(B)は、座部10の幅方向中央部におけるエアバッグ40の膨張状態を示している。エアバッグ40は、座部10の幅方向については、両周縁結合部86から最も離れた箇所である中央部において、また、前後方向については、上方膨張促進部(折り曲げ部87)が緊張状態となる箇所である後端部において最も高くなるように膨張する。そして、この膨張するエアバッグ40によって座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0122】
従って、第3実施形態によれば、上述した(2)に加え、次の効果が得られる。
(7)座クッション17よりも下側に吹出口22を有する送風ダクト19を備え、送風ダクト19内を流れる空調用空気Aを吹出口22から上方へ吹出すようにした車両用シートSを適用対象とする。エアバッグ40を、膨張用ガスGによる膨張前には、支持部B及び座クッション17間で、吹出口22から前方へ離れた箇所において展開させた状態で配置する。さらに、エアバッグ40には、上方への膨張を促進する上方膨張促進部(折り曲げ部87)を設けている(図11(A),(B))。
【0123】
そのため、膨張前にも膨張時にもエアバッグ40によって送風ダクト19の吹出口22が塞がれないようにすることができる。その結果、エアバッグ40が吹出口22からの空調用空気Aの吹出しを妨げるのを抑制することができる。
【0124】
また、上方膨張促進部(折り曲げ部87)により、エアバッグ40をより高い位置まで膨張させることができ、座部10上で乗員Pの腰部PPが前方へ移動する現象(サブマリン現象)を抑制することができる。
【0125】
(8)上下に重ね合わされた一対の布部85を周縁結合部86において結合させることで、袋状のエアバッグ40を形成する。この周縁結合部86による結合を、両布部85の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なっている。そして、両布部85について内側へ折り曲げられた箇所(折り曲げ部87)を上方膨張促進部としている(図11(A))。
【0126】
このような簡単な構成でありながら、エアバッグ40の上方への膨張を促進する上方膨張促進部を同エアバッグ40に形成することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0127】
<第1実施形態について>
・第1実施形態では、被折り畳み部45の折り態様として、内折りを採用したが、これに代えて、ロール折り又は蛇腹折りによって被折り畳み部45が折り畳まれてもよい。
【0128】
ロール折りは、図12に示すように、エアバッグ40の被折り畳み部45の端部を中心とし、その周りに他の部分を巻き付けて渦巻き状とする折り態様である。
ロール折りの態様としては、上記図12に示すように、ロール折りされた部分の中心が、被折り畳み部45とエアバッグ40の残部(前部)との境界部分よりも下側となる態様と、上側となる態様(図示略)とがあり得る。
【0129】
どちらの態様が採用されてもよいが、前者の場合には、展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷がより小さくなるものと考えられる。被折り畳み部45が展開する場合、その上側には座クッション17が位置し、下側にはワイヤフレーム部15が位置している。被折り畳み部45は、これら座クッション17及びワイヤフレーム部15の間隔を広げながら、後方へ展開することとなる。この際、座クッション17には乗員Pによる荷重が加わっている。これに対し、ワイヤフレーム部15はばね弾性を有している。そのため、展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷は、座クッション17を押上げて上記間隔を広げるよりも、ワイヤフレーム部15を下方へ撓ませて同間隔を広げる方が小さくてすむ。
【0130】
一方、ロール折りされた部分の中心が、被折り畳み部45とエアバッグ40の残部(前部)との境界部分よりも下側にある場合、このロール折りされた部分は下方へ向けて折りを解消しながら展開する。そのため、この展開時に被折り畳み部45に掛かる負荷が小さくてすむ。
【0131】
蛇腹折りは、図13に示すように、エアバッグ40の被折り畳み部45を、一定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返す折り態様である。
・ラッピングシート60の大きさ、形状等は、折り畳まれた状態の被折り畳み部45を少なくとも対象とし、エアバッグ40の膨張前に上記対象を包むものであることを条件に、第1実施形態とは異なる大きさ、形状等に変更されてもよい。
【0132】
・ラッピングシート60は、接触抑制シート55に代えて、インフレータ51に固定されてもよい。例えば、二つ折りされたラッピングシート60の上側部分、及び下側部分の少なくとも一方が、第1実施形態よりも前方へ延出され、リテーナ52のボルト53に係止されてもよい。
【0133】
・被折り畳み部45は、展開されたときに、その後端部が吹出口22の上方に位置するものであってもよい。
<第2実施形態について>
・インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cと、同膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張部Dとに区画されたエアバッグ40において、膨張部Cが、吹出口22を避けた箇所に設けられ、通気部が、非膨張部Dについて吹出口22の上方となる箇所に設けられてもよい。
【0134】
その一例を図14(A)に示す。膨張部Cは、吹出口22を、座部10の幅方向(図14(A)の上下方向)についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を有している。非膨張部Dは、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から吹出口22へ向けて延びて両膨張片部78間に入り込む非膨張片部80を有している。非膨張片部80において、吹出口22の上方となる箇所には、その吹出口22よりも若干大きな略四角形状の孔81があけられており、この孔81によって上記通気部が構成されている。
【0135】
こうした構成によれば、エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前に、支持部B及び座クッション17間に展開させられて配置された状態では、膨張部Cは、吹出口22を避けた箇所に位置する。すなわち、膨張部Cの一対の膨張片部78は、吹出口22に対し、座部10の幅方向についての両側に位置する。また、非膨張部Dに設けられた通気部が吹出口22の上方に位置する。すなわち、非膨張部Dにおいて、エアバッグ40の外縁部79から吹出口22へ向けて延びて両膨張片部78間に入り込んだ非膨張片部80は、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から前方へ離れた箇所において、吹出口22の上方に位置する。これに伴い、非膨張片部80について、エアバッグ40の外縁部79から離れた箇所に設けられた通気部(孔81)もまた吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、非膨張部Dの通気部(孔81)及び座クッション17を順に通過して乗員Pに触れる。
【0136】
なお、エアバッグ40の外縁部79と通気部(孔81)との間には、非膨張部Dにおける非膨張片部80が位置する。この非膨張片部80は、吹出口22を、座部10の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を、それらの後部において相互に連結する。そのため、両膨張片部78がそれらの間隔を拡げる方向へ動くことは、非膨張片部80によって規制される。
【0137】
一方、インフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、その膨張用ガスGにより、エアバッグ40では、膨張部Cの一対の膨張片部78が、支持部B及び座クッション17間であって、吹出口22に対し、座部10の幅方向についての両側となる箇所(吹出口22を避けた箇所)で膨張する。膨張部Cの残部も支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40の非膨張片部80を含む非膨張部Dは膨張しない。そして、上記のようにして膨張する膨張部Cにより座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0138】
その結果、このように変更された場合にも上述した第2実施形態と同様の効果が得られるほか、両膨張片部78が、それらの間隔を拡げる方向へ動くのを抑制することができる。
【0139】
・インフレータ51から膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部Cと、同膨張用ガスGが供給されずに膨張しない非膨張部Dとに区画されたエアバッグ40において、非膨張部Dには、同非膨張部Dの外縁部(後縁部)79から少なくとも吹出口22の上方となる箇所まで延びる切欠き部82が設けられ、この切欠き部82の一部が通気部とされてもよい。
【0140】
その一例を図14(B)に示す。膨張部Cは、吹出口22を、座部10の幅方向(図14(B)の上下方向)についての両側から挟み込む一対の膨張片部78を有している。非膨張部Dは、エアバッグ40の外縁部(後縁部)79から吹出口22の上方となる箇所まで延びて両膨張片部78間に入り込む非膨張片部80を有している。上記切欠き部82は、この非膨張片部80の略全領域にわたって形成されている。
【0141】
なお、非膨張部D及び切欠き部82は、吹出口22よりも前側となる箇所まで延びるものであってもよい。
こうした構成によれば、エアバッグ40が、膨張用ガスGによる膨張前に、支持部B及び座クッション17間に展開させられて配置された状態では、膨張部Cは、吹出口22を避けた箇所に位置する。また、非膨張部Dに設けられた切欠き部82の一部が吹出口22の上方に位置する。これに伴い、切欠き部82の一部によって構成される通気部が、吹出口22の上方に位置する。そのため、送風ダクト19内を流れて吹出口22から上方へ吹出された空調用空気Aは、非膨張部Dの通気部(切欠き部82)及び座クッション17を順に通過して乗員Pに触れる。
【0142】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、その膨張用ガスGにより、エアバッグ40では、膨張部Cが支持部B及び座クッション17間であって、吹出口22を避けた箇所で膨張する。膨張部Cの残部も支持部B及び座クッション17間で膨張する。エアバッグ40の非膨張部Dは膨張しない。そして、上記のようにして膨張する膨張部Cにより座部10の座面10Aが隆起させられる。
【0143】
その結果、このように変更された場合にも上述した第2実施形態と同様の効果が得られる。
なお、上記の場合、接触抑制シート55にも、その外縁部から少なくとも吹出口22の上方となる箇所まで延びる切欠き部58が設けられてもよい。また、図示はしないが、接触抑制シート55の上記切欠き部58に代えて、第1実施形態と同様に、接触抑制シート55において吹出口22の上方となる箇所に通気孔57が設けられてもよい。
【0144】
また、上記図14(B)において二点鎖線で示すように、座部10の幅方向について、非膨張部Dにおいて上記切欠き部82の両外側となる部分が、吹出口22よりも後方で連結部材83によって連結されてもよい。連結部材83としては、例えば帯状の布片が用いられてもよい。また、連結部材83の両端部は、非膨張部Dに対し、縫合、接着等の手段によって固定されてもよい。このようにすれば、非膨張部Dにおける切欠き部82の両外側部分や、同切欠き部82の両側の両膨張片部78が、それらの間隔を拡げる方向へ動くのを連結部材83によって規制することができる。また、連結部材83が吹出口22よりも後方に配置されているため、同連結部材83が吹出口22を塞ぐこともない。
【0145】
・通気部は、吹出口22から吹出された空調用空気Aの通過を許容するものであればよい。従って、エアバッグ40の非膨張領域77に設けられた孔76に通気性を有するシート(図示略)が張られ、このシートが通気部とされてもよい。
【0146】
<第3実施形態について>
・上方膨張促進部は、図15及び図16(A),(B)に示すように変更されてもよい。この場合、エアバッグ40は、一対の本体布部88と、上方膨張促進部としての一対の中間布部89とによって構成される。両本体布部88は上下に重ね合わされる。両中間布部89は、両本体布部88の相対向する外縁部間のうち、座部10の幅方向に相対向する2箇所の外縁部間にそれぞれ配置されて、側縁結合部90によって両本体布部88の外縁部に結合される。
【0147】
そして、エアバッグ40は、膨張用ガスGによる膨張前には、各中間布部89が折り曲げられることにより両本体布部88が互いに接近させられた状態で支持部B上に配置される。この場合、各中間布部89は両本体布部88間の内側へ入り込むように折り曲げられてもよいし、両本体布部88間から外側へ突出するように折り曲げられてもよい。
【0148】
このように構成されたエアバッグ装置によれば、膨張用ガスGによるエアバッグ40の膨張前には、各中間布部89が上方膨張促進部として折り曲げられていて、両本体布部88が互いに接近している。
【0149】
一方、車両への衝撃に応じてインフレータ51から高圧の膨張用ガスGがエアバッグ40に供給されると、同エアバッグ40が支持部B及び座クッション17間で膨張する。この際、上記のように折り曲げられた状態の各中間布部89(上方膨張促進部)が、その折りを解消して鉛直状態の面状となることで、エアバッグ40の上方への膨張(両本体布部88が上下方向へ離れる方向の膨張)が促進される。
【0150】
従って、上方膨張促進部が上記のように変更された場合でも、第3実施形態と同様の効果が得られる。
・上記の場合、中間布部89は、両本体布部88の相対向する外縁部間において、1箇所又は3箇所以上に配置されてもよい。
【0151】
<第1〜第3実施形態、及びそれらの変更例に共通する事項について>
《結合部について》
・各種結合部(周縁結合部44,86、側縁結合部90)は、縫糸を用いた縫合とは異なる態様、例えば接着剤を用いた接着、溶着等によって形成されてもよい。
【0152】
《エアバッグ40について》
・エアバッグ40は、上下に重ねられた複数枚の布を、それらの中央部分に共通して設定した共通の折り線に沿って折り返して上下方向に積層し、周縁結合部で結合することによって形成されたものであってもよい。用いられる布の数が多くなるに従い、エアバッグ40の強度が高くなる。
【0153】
・エアバッグ40は、上下に重ねられた複数枚の布を、折り返すことなく周縁結合部で結合することによって形成されたものであってもよい。
・エアバッグ40は、その略全体が膨張部Cによって構成されるものであってもよい。
【0154】
《接触抑制シート55について》
・前記各実施形態では、接触抑制シート55として、エアバッグ40側のみがフェルトによって形成されているものが用いられたが、全体がフェルトによって形成されているものが接触抑制シート55として用いられてもよい。
【0155】
・前記各実施形態では、接触抑制シート55として、支持部B側のみが軟質の樹脂シートによって形成されているものが用いられたが、全体が軟質の樹脂シートによって形成されているものが接触抑制シート55として用いられてもよい。
【0156】
・接触抑制シート55は、上述したフェルト及び軟質の樹脂シートとは異なる材料、例えば、布、紙、クッション材等によって形成されたものであってもよい。
・接触抑制シート55は、エアバッグ40の膨張部Cに固定されてもよいし、膨張部Cと非膨張部Dの両方に固定されてもよい。
【0157】
・接触抑制シート55は、複数枚のシートによって形成されてもよい。この場合、エアバッグ40において支持部Bとの接触により特に傷が付きやすい箇所にのみ接触抑制シート55が設けられてもよい。
【0158】
・接触抑制シート55は、熱溶着以外の固定手段によってエアバッグ40に固定されてもよい。
・接触抑制シート55は、エアバッグ40に加え、又は代えて、支持部Bに係止されてもよい。
【0159】
《その他》
・本発明は、エアバッグ40として、前記各実施形態とは異なる構成を有するものが用いられたシートクッションエアバッグ装置にも適用可能である。
【0160】
・本発明は、エアバッグ40の少なくとも一部が膨張部Cによって構成され、同膨張部Cが、支持部B及び座クッション17間で膨張するシートクッションエアバッグ装置について広く適用可能である。
【0161】
・本発明では、乗員P以外のもの、例えば荷物等が被拘束対象物とされてもよい。この荷物等が被拘束対象物として座部10の上に置かれた場合にも、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0162】
・本発明のシートクッションエアバッグ装置は、乗員Pが着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように車両用シートSの配置された車両にも適用可能である。
【0163】
・本発明のシートクッションエアバッグ装置は、車室内に前後方向に配列された複数の車両用シートのいずれについても適用可能である。
・膨張流体発生源として、上記インフレータ51とは異なる構成を有するものが用いられてもよい。また、膨張流体として膨張用ガスG以外の流体が用いられてもよい。
【0164】
・本発明は、ワイヤフレーム部15に代えて、板状をなす部材であるシートパンによって座クッション17を支持するようにした車両用シートSにも適用可能である。
【符号の説明】
【0165】
10…座部、10A…座面、11…シートフレーム、17…座クッション、19…送風ダクト、22…吹出口、40…エアバッグ、44,86…周縁結合部、45…被折り畳み部、51…インフレータ(膨張流体発生源)、55…接触抑制シート、58,82…切欠き部、60…ラッピングシート、75…隔壁部、76,81…孔(通気部)、77…非膨張領域、78…膨張片部、79…外縁部、80…非膨張片部、85…布部、87…折り曲げ部(上方膨張促進部)、88…本体布部、89…中間布部(上方膨張促進部)、A…空調用空気、B…支持部、C…膨張部、D…非膨張部、G…膨張用ガス(膨張流体)、P…乗員(被拘束対象物)、S…車両用シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグの一部は被折り畳み部とされ、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、前記吹出口の手前の位置に配置されており、膨張時には、少なくとも前記吹出口を越える位置まで前記被折り畳み部を展開させるものであることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項2】
前記被折り畳み部が折り畳まれた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制するとともに、前記被折り畳み部が展開させられた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制する接触抑制シートをさらに備える請求項1に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項3】
前記折り畳まれた状態の前記被折り畳み部を少なくとも対象とし、前記エアバッグの膨張前に前記対象を包むラッピングシートをさらに備える請求項1又は2に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項4】
前記被折り畳み部は、内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項5】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、前記エアバッグについて前記吹出口の上方となる箇所には、同吹出口から吹出された空調用空気の通過を許容する通気部が設けられていることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグの一部には環状の隔壁部が設けられ、前記隔壁部により囲まれた領域は、前記膨張流体発生源からの前記膨張流体が供給されず膨張しない非膨張領域とされており、
前記通気部は前記非膨張領域に設けられている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、
前記膨張部は、前記吹出口を避けた箇所に設けられており、
前記通気部は、前記非膨張部において前記吹出口の上方となる箇所に設けられている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項8】
前記膨張部は、前記吹出口を、前記座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を有しており、
前記非膨張部は、前記エアバッグの外縁部から前記吹出口へ向けて延びて前記両膨張片部間に入り込む非膨張片部を有しており、
前記通気部は、前記非膨張片部について、前記エアバッグの外縁部から離れた箇所に設けられている請求項7に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、
前記非膨張部には、同非膨張部の外縁部から少なくとも前記吹出口の上方となる箇所まで延びる切欠き部が設けられ、前記切欠き部の一部により前記通気部が構成されている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項10】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、
さらに、前記エアバッグには、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられていることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項11】
前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の布部を備え、前記両布部は、同両布部の周縁部に設けられた周縁結合部において結合されて袋状をなしており、
前記周縁結合部による前記結合は、前記両布部の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれており、
前記両布部について内側へ折り曲げられた箇所により前記上方膨張促進部が構成されている請求項10に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項12】
前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の本体布部と、前記両本体布部の相対向する外縁部間に配置されて、前記両本体布部の外縁部を繋ぐ前記上方膨張促進部としての中間布部とを備え、
前記膨張流体による前記エアバッグの膨張前には、前記中間布部が折り曲げられることにより前記両本体布部が互いに接近させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されている請求項10に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項1】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグの一部は被折り畳み部とされ、前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記被折り畳み部を折り畳まれた状態にされて、前記吹出口の手前の位置に配置されており、膨張時には、少なくとも前記吹出口を越える位置まで前記被折り畳み部を展開させるものであることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項2】
前記被折り畳み部が折り畳まれた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制するとともに、前記被折り畳み部が展開させられた状態の前記エアバッグの前記支持部との接触を抑制する接触抑制シートをさらに備える請求項1に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項3】
前記折り畳まれた状態の前記被折り畳み部を少なくとも対象とし、前記エアバッグの膨張前に前記対象を包むラッピングシートをさらに備える請求項1又は2に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項4】
前記被折り畳み部は、内折り、ロール折り及び蛇腹折りのいずれかの態様で折り畳まれている請求項1〜3のいずれか1つに記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項5】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、前記エアバッグについて前記吹出口の上方となる箇所には、同吹出口から吹出された空調用空気の通過を許容する通気部が設けられていることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグの一部には環状の隔壁部が設けられ、前記隔壁部により囲まれた領域は、前記膨張流体発生源からの前記膨張流体が供給されず膨張しない非膨張領域とされており、
前記通気部は前記非膨張領域に設けられている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、
前記膨張部は、前記吹出口を避けた箇所に設けられており、
前記通気部は、前記非膨張部において前記吹出口の上方となる箇所に設けられている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項8】
前記膨張部は、前記吹出口を、前記座部の幅方向についての両側から挟み込む一対の膨張片部を有しており、
前記非膨張部は、前記エアバッグの外縁部から前記吹出口へ向けて延びて前記両膨張片部間に入り込む非膨張片部を有しており、
前記通気部は、前記非膨張片部について、前記エアバッグの外縁部から離れた箇所に設けられている請求項7に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグは、前記膨張流体発生源から前記膨張流体が供給されて膨張する膨張部と、同膨張流体が供給されず膨張しない非膨張部とに区画されており、
前記非膨張部には、同非膨張部の外縁部から少なくとも前記吹出口の上方となる箇所まで延びる切欠き部が設けられ、前記切欠き部の一部により前記通気部が構成されている請求項5に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項10】
シートフレームの支持部により下側から支持される座クッションを有する座部と、前記座クッションよりも下側に吹出口を有する送風ダクトとを備え、前記送風ダクト内を流れる空調用空気を前記吹出口から上方へ吹出すようにした車両用シートに適用されるものであり、
膨張流体発生源からの膨張流体により、前記支持部及び前記座クッション間でエアバッグの少なくとも一部を膨張させて前記座部の座面を隆起させ、前記座部上の被拘束対象物の前方への移動を抑制するようにしたシートクッションエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には、前記吹出口から離れた箇所において展開させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されており、
さらに、前記エアバッグには、上方への膨張を促進する上方膨張促進部が設けられていることを特徴とするシートクッションエアバッグ装置。
【請求項11】
前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の布部を備え、前記両布部は、同両布部の周縁部に設けられた周縁結合部において結合されて袋状をなしており、
前記周縁結合部による前記結合は、前記両布部の一部が残部の内側へ折り曲げられた状態で行なわれており、
前記両布部について内側へ折り曲げられた箇所により前記上方膨張促進部が構成されている請求項10に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【請求項12】
前記エアバッグは、上下に重ね合わされた一対の本体布部と、前記両本体布部の相対向する外縁部間に配置されて、前記両本体布部の外縁部を繋ぐ前記上方膨張促進部としての中間布部とを備え、
前記膨張流体による前記エアバッグの膨張前には、前記中間布部が折り曲げられることにより前記両本体布部が互いに接近させられた状態で前記支持部及び前記座クッション間に配置されている請求項10に記載のシートクッションエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−75599(P2013−75599A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216163(P2011−216163)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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